🎼Back Ground Music 》》》
ジリリリリリ〜
「ん…ああよく寝た〜!どうやらそのまま寝てしまった様だな」
〜ピンポンパンポ〜ン♪
どこからかアナウンスが聞こえた。するとオロアの声が聞こえた様だ。
「ご乗車ありがとうございま〜す!まもなく待望の〜【paradiso】へ到着しま〜す♪しかし、この列車は順番にフロアの扉が開く様になっているため、開いた方から順番に出る様にしてくださいね〜♪…もしルールに従えない様であればあなた達の身柄は執行者に引き渡すので悪しからず〜♪」
「え〜と俺はフロア5だから…もう少し先だな〜」
そう言いつつ、隆一は順番が車で待った。待つこと数分後に扉が開いた。
「お〜やっとか…待ちくたびれたぜ〜!」
隆一は電車から降り、その周囲を確認する。そこには灯台があり、海が見えていた。眺めの良い場所であり隆一自身、気分が良かった。
「ふ〜っ着いた着いた〜海が近くにあって気分がいい…ってあの世でも海は存在するんだな…」
背伸びをして気分良くしていると、オロアがやってきて声をかけてきた。
「も〜隆一さん!海をじっと眺めている場合ではありませんよ!さ〜早くいきましょう♪」
「あ〜分かった!よしいくか!」
隆一はオロアに着いていく。すると、いきなり駅員事務所の様な場所に案内された。
「はい。ではここに入ってください!」
「ここにか?じゃあ遠慮なく、失礼します。」
隆一は落ち着いて事務所へ尋ねた。するとそこには容姿は10代後半の女性が座っていた。髪色はオロアと同じで眼鏡をかけている。そして真面目な感じがする雰囲気を醸し出していた。そしてその女性は声をかけてきた。
「初めまして。あなたは皆川隆一様でいいですね?」
「ああ!」
「私は導き人の一人、イールです。…うちのところのオロアがご迷惑をかけてすみませんでしたね」
「大丈夫だ!結構ヤンチャな所はあったけど…問題ない!」
イールはオリアとは違い、坦々な事務的な性格をしている。二人はかなり対極的な性格をしていると、隆一は思った。
「ではこの書類をよく確認し、承諾の上でサインしてください」
「どれどれ?…!?」
隆一はその内容を確認し、驚くべきことが書かれていた。
【paradiso】Entrance examination procedure
(【paradiso】入界審査手続き書)
( )
【1】In this [paradiso], you cannot use the name in this world, so please decide a new name.(Be sure to use the alphabet! Any number of characters)
(この【Paradiso】では現世での名前は使えないので新しく名前を決めてください。《必ずアルファベットで!文字数は自由》)
※原則です。違反した場合、不法入界者として一ヶ月以内に執行者を派遣し、身柄を拘束します。
【2】[Paradiso] has a rank system, and the higher the rank, the more status you have and the wider your range of home and work. At first you start with the lowest F rank. Points will be paid to all residents living in [paradiso] every month. You can have free time to eat, which promises an equal life for the citizens.
(【Paradiso】にはランク制度があり、階級が上であるほど、地位を持ち、家や仕事での幅が広がります。最初あなたは最低値のFランクから始まります。一ヶ月毎に【paradiso】に生活する住民全員にポイントが支給されます。ご飯も自由な時間に取れますので、市民に対し平等な生活を約束されています。)
※【paradiso】では(F→E→D→C→B→A→AA→AAA→S→S1→S2→S3→S4→S5)という順にランク付けされています。
【3】In order to rank up, you can earn reward points at the request of the Labor Guild and raise it when you reach the standard value. We recommend that you work voluntarily and rank up.
(ランクアップするためには、労働ギルドからの依頼を受けて報酬ポイントを獲得し、基準値まで達すればアップすることができます。自主的に労働してランクアップする事を推奨しています。)
【4】No bleeding is seen in the body even if it is cut in this world. Since your body itself is composed of a posthumous soul, if you take a certain amount of damage, it will be difficult to form a soul, and in the worst case ... your soul will disappear, and even in heaven and hell. We cannot guarantee that you can send your soul!
(この世界で斬られても身体には出血は見られません。あなたの身体そのものは死後の魂として構成されているため、一定数のダメージを負った場合、魂の形成が困難な状態になり、最悪の場合…あなたの魂は消滅し、天国や地獄にも魂を送ることができるのかの保証はできません!)
※後ほど、自分の基準となる魂の量を計測できる腕時計型デバイスを進呈します。
【5】This world of [paradiso] is also a utopia depending on how you perceive it, and in many cases you will be tested for your ability to be called a dystopia. We hope that you will spend your days not forgetting that we are in a society that is unequal and has a difference between rich and poor.
(この【Paradiso】という世界は個人の捉え方によってはユートピアでもあり、ディストピアとも言えるくらいの実力が試されることが多いです。不平等かつ貧富の差もある社会の中だという事を忘れない様に日々を過ごしていただければ幸いです。)
We recommend that you sign after understanding the above.
以上のことを理解した上でサインされる事を推奨します。
現在時間:【paradiso】歴1999年 6月16日 名前:()
「…こ…細かい!」
「この世界では弱肉強食です。ルールは基本的に無視する輩もいます。その様な怠惰をする現世人は遅かれ早かれ破滅の道を辿るでしょう」
「…とりあえず名前どうしよ?…【Paradiso】にまで来て執行者にまた追われるのは懲り懲りだ!」
隆一は悩んでいた。するとある洋画に出てきた軍曹の名前が頭によぎった。その軍曹は仲間を無残にやられ、それでも屈する事なく悪党に対し、突っ走っていったのが当時印象に残った。それを思い出し、隆一はその軍曹の名前を書いてみた。
(Bill)
「この名前でも大丈夫か?」
眼鏡を持ちながらその名前を確認する素振りを見せるイール。確認し終えた後、隆一に対し淡々と返答する。
「…問題ありませんね。良しとします。あと食事についてはFランクの場合は、あなた方の現世にある様な飲食店への入店をお断りされることが多いですね。その際は無人販売機の方にて食事するか、もしくは定期的にやっている炊き出しに並ぶか…そこは自由にしてください。」
「!?」(…え!?…あの世まで来てそんな生活!?…仕方ない!…とは言っても、死んでいるからあまり空腹感が感じない!)
「…フフッ以外ですね。その見た目だと、割とハングリーな感じだと思いましたが…」(…クスクス!)
「…あっ!笑った!…意外だ!…案外そのほうがいいんじゃあないか!」(カキカキ!)
隆一はイールに意外な一面があることに驚いたのか、書き終わった書類をイールに渡す。まんだらでもない様子のイールは少し落ち着いてから隆一に話しかける。
「…こほん。それはともかくとして…確かに書類は承諾とさせていただきました。これであなたの入界手続きは終了とし、貴方はこれから現世人【Bill】(ビル)として名乗っていただきます。こちらはあなたが現世人であることの証明となる勲章です。あとはこれを身につけていただきます。」
「ん?何だ?腕時計?」
【Bill】はイールに渡されたものを確認した。勲章には【Questo mondo】と書かれており、もう一つは見た感じ腕時計であった。そしてそれについてイールから説明を受ける。
「それは通称【P-Watch】腕時計型デバイスです。手に着けてディスプレイを見てください」
「!?何だ、これ!?…なんかハートが書かれてる!」
【Bill】は初めての【 P-Watch】の画面を確認した。すると、自分の現時点のランクに、ハートの様なものが表示されている。
【Bill】 ランクF
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
現在は【Paradiso】歴1999年6月です。
「俺たちの世界でも腕時計はあった!…けどこんなのは初めてだ!…何なんだよこれ!?」(キラキラ!)
「それは貴方の魂の値です。計測した数値は大体のものですが、もしそれが無くなれば貴方の魂は消滅するという事をお忘れなき様お願いします」
「わかった!…この世界が出来て1999年なんだな…」
するとイールは少し笑みを浮かべて隆一に説明した。
「この【Paradiso】には最初、時間の概念はありませんでした。元々この世界は真っ白な世界でした。そんな時に、ある人には創造神とも言われ、中には重罪者とも言われた女性と、その女性を守り勇敢に守護して戦った男性。そしてその二人に付き従い、二人のために戦った一人の少年の言い伝えがあります。その人達の頑張りがこの世界に時間の概念を創り出し、この世界を作ったというのは昔から伝えられている伝承の歴史があります」
「おお〜!…ん、待った!…もしかしたら、この時代にも。…その〜創造神を憎む悪い奴がこの【Paradiso】にも潜んでいるのかも知れないのか!?」
「おそらくは。…そしていつしか貴方達の様な現世人の者達に危害を企てるやも知れません。もしそのような時にその者達と対抗するための術を私達は貴方に素質があるか…試すことができますが…やってみますか?」
「…え!?そんなことできるのか!?」
その言葉に【Bill】は驚き、イールは会話を続けた。
「はい。この【Paradiso】は極めてあなた方が住んでいた世界とは非現実的な価値観で構成されている世界ですから。貴方の実力を問い、この【Paradiso】に生き残れるか判断させていただきます」
「おぉ〜……」(…なんか色々面倒が多い!)
「別に試練を受けずに素通りしても構いません。少しでもこの世界から早めに去るおつもりでしたらお好きに…」
「…わかった。この試練受ける!」
「確かに承りました。こちらへどうぞ」
「…お、おう!」
【Bill】はイールの後をついていく。するとそこには広大な空間が広がっていた。
「な、何だここ!?ここってまるで洋画でよく観ていたコロシアムと言えばいいのか!?」
「はい、そして目の前に立って見てください。相手の方が来ます」
「ん?…!?…な…あれって…!?…俺…なのか…」
【Bill】は驚いた。自分の目の前に立っていたのは、かつて現世で特攻服を着た自分、つまり隆一であったことに。その際、イールから説明を受ける。
「あそこにいるのは現世での貴方自身です。どうやら現世での別れから、後悔の念が具現化して成仏できず、魂の集合体として人の形をして存在しています。」
「あれが…俺…!!」
すると、相手の隆一が声をかけてきた。
『お前が【paradiso】の俺か…お前を倒して、何としてでも現世に帰るんだ!あいつら…山崎、涼子ちゃん、そして親父の元に帰るためにな…!!』
「…!!」
【Bill】は現世での隆一だった者の言葉に怯みそうになった。相手の声には、まるで現世での未練を残し、後悔の念が混じり合った強い責任感に満ちた苦痛のある悲しみにも暮れた声を出していた。
「この試練の意図はかつての現世での自分自身と向き合い、見事に打ち勝つことで合格と致します。覚悟はいいですか?【Bill】さん?」
すると【Bill】は頷き、覚悟のこもった目をしていた。
「…ああ!やってやる。俺の拳でこいつの目を覚まさせてやる!大丈夫!わかってくれるよ!…こいつは、俺自身なんだからよ!!」
【Bill】は拳を握り、相手隆一もそれを見たのか、ファイティングポーズをとる。
「ではこれより、【Bill】vs隆一との勝負を開始します。では両者共…」
「グッ!!」「グッ!!」
イールは始まりの合図の準備をしていた。周りは静かだ。風もなく無音の状態が続いている。その中でイールは目を瞑りながら両者の勝負の合図をじっと待っていた。すると無慈悲にも戦いの合図が開始される。
「始め。」
🎼Back Ground Music 》》》
♪〜TOXより・己を信じて
「うぉぉぉ!!」(ブン!)
「うぉぉぉ!!」(ブン!)
バキッ!!!
無音の空間が飛び交うコロシアムの中、両者の拳と拳がぶつかり合う音が聞こえた。
「グッ!いてぇ〜なあさすがは俺だな」
「グッ!お前も、今のは痛かった。…だがこんな痛み…置いていったあいつらに比べれば屁でもないだろうがな〜!!!」(ブン!!)
「…ちっ!!」
「…がら空きだ!!」(ブン!)
「グハッ!!」(べキッ!)
「まだまだ行くぞ〜」(シュッシュ!!)
「…ちぃ!!」
【Bill】は隆一の攻撃にひたすら耐え、反撃のチャンスを伺っていた。すると、隆一から心の声のような呟きの声が聞こえてきた。
(…な、何だ…)
(……あいつら…山崎…他の仲間達…俺がいなくてもちゃんとやっていけるのかよ…親父も最初は嫌いだったが後から母さんのことを知って死んだ後で迷惑をかけて…俺はどうしたら償えるんだよ…もうあんな死に方して死んじまって…あの世に行ってもうそんなこともできないのによ…くそっ!)
(…!!…そうか…無念にもあんな死に方したんだ。それに俺もあの試練を受けて、親父のことを知ってそれから…確かに後悔の念があるんだろうな…)
「…オラ!!なに考え事してんだよ!!」
「…」
すると、【Bill】はそのまま立ち尽くしていた。
「…テメェ〜ふざけているのか!?…見損なったぜ…それでもお前は……俺かよ〜!!」(ダッ!)
「…!!」(グッ!!)
ドゴーッ!!
「…ぐハァ…ああ!!」
隆一は【Bill】目掛けて突進してくる。そして【Bill】は思いっきり、拳を握り、隆一の顔面を殴り、地面へと倒した。
「…て、テメェ…!」
「…来いよ…俺…今からお前の目を覚まさせてやる!」
「ほざけや、くそったれが〜!」(ブン!)
「甘いぜ!!オラよ!」(シュッ!)
「ぐほっ!!…何で…何でお前は…」(グググッ!)
「勘違いするなよ。俺はあいつらのことをどうでもいいと思っているわけじゃない。ただいつまでも引きずるのは俺としてどうかって話なんだよ…!それをお前にわからせてやる!」
「…ふざけんなよ…あいつらのこと見捨てて、こんな都合の良いユートピアの世界に逃げたお前が…あいつらのことを気安く口に出すんじゃあねえよ!!」(ブン!)
「…ああそうかもな…お前から見れば都合のいい世の中かも知れないさ。だがな、いつまでもウジウジと現在の別れが悲しくて、前を向けずに自分自身に嫉妬みてえに当たり散らすような奴に…あいつらの気持ちが本当に理解できたのかよ!?」(ヒョイ!)(シュッ!)
「…ぐはっ!!…俺は…俺は…!!くそがー!!」(ブン!)
「…ちっ!まだ向かってくるのか…!?まあそれも俺らしいか…」(ヒョイ!)
2人の戦う姿を見守るイールは思った。2人は自分自身、お互いは認めなくても戦っていれば、なにかしら共通したものが見えてくると、必ず和解は出来るとそう思い、2人の戦いを見守っていた。
「…ちっまたか…」
すると、【Bill】からまた隆一の心の声が聞こえたように感じた。
(俺があの時、もし生きていたら何か人の役に立つ仕事ができたのか…いやこの学歴社会になって、俺の居場所はどこにも…)
「…そうだな俺も、そんな気持ちになって不安になったこともある。だがなぁ…俺自身、それでも前に進もうとした。こんな俺でも誰かの役立てるんじゃあないかって…だから俺は自分を信じてる!!…自分を信じてな!!」
「…うぉぉぉらぁぁぁぁ!!」
「…最後にしてやるよ…!!うぉぉぉぉらぁぁぁ!!」
バキイィィ!!!
「「ウグゥ…!!」」
「…ふむ」
「くっ…ハァ…ハァ…」(フラッ!)
「……くそが…」(フラッ!)
バタン!
「…!!…」
激闘の末、隆一はその場で倒れ伏せた。そしてイールが勝敗の行方の審判を下した。
「そこまで。勝者【Bill】」
「…勝った…のか…俺…」
【Bill】はそのまま立ち尽くしていた。すると隆一は立ち上がり、【Bill】の前に来た。だがその目には敵意は無く清々しい表情をしていた。
🎼Back Ground Music 》》》
「…参ったといいたくないが…それでも負けは負けだ…認めるよ。だからユートピアの世界でも負けずに頑張れよ俺…」
「ああ!…俺もお前も、親父と母さんに産んで育って限られた時間の中、あいつらに会ってきたことに変わりないんだ…忘れないよ…いつまでも俺は…」
「…頼んだぞ!……【Bill】!!」(コクッ!)(ガシッ!)
「お前もな、隆一!」(ガシッ!)
2人は握手すると、隆一は光に包まれて粒状になり、【Bill】の周りを包んだ。
「な、何だ!?」
するとイールは【Bill】に対してこう伝え、説明した。
「どうやら貴方は自分自身と向き合い、【fiducia】と呼ばれる神託の恩恵を受けました。これより貴方にはこの【paradiso】の世界で使用できる隠れ持った潜在能力が開花しました。」
「…なんかゲームとかであるような設定だな…まあここにつけてる腕時計も似たようなものか…んで俺の魂の量はと…おっ!?」
【Bill】 ランクF
【♡♡♡♡】
「だいぶ減っているな〜なあこれってどうやって回復するんだ?」
イールは【Bill】の問いに対しこう答える。
「睡眠を取るなり、中には魂を補充する薬、また食事にも魂が補充される作用のものがあります。ですが今回は特別です。私が補充して差しあげます。」
「えっ!?」
するとイールは何かの本を取り出し、お札のようなものを【bill】の身体に貼り付ける。すると【Bill】の周りに光が宿り、心なしか体が軽くなったように思った。
「確認してみてください」
【Bill】は恐る恐る腕時計を確認する。するとディスプレイの表示が変わっていた。
【Bill】 ランクF
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
「!?…回復している…これは一体…!つかお前ら導き人は何者なんだよ!?…オロアは怪力だし、イールだっけ?あんたは回復できるし…一体…」
するとイールは少し笑みを浮かべ、その問いに答えた。だがそれは先程のような親切なものではなく、何かを試すかのような笑みである。
「それは…これから貴方自身が知ることになりますよ…では次へと参ります。」
「…え!?まだ何かあるのか!?」
「は〜い♪せっかく貴方は【Fiducia】に目覚めたのでその実力を試させてもらいま〜す♪」
すると【Bill】は聞き覚えのある声がしたので声のした方を向く。そこにはオロアが立っていた。
「なっ!?オロア…」
「オロア…それは私のセリフなのですが…」(やれやれ)
「まあまあいいじゃないですかイール姉様〜♪」
「姉様ってあんたら姉妹関係なのか!?」
たわいも無い会話をしていると、誰かがこちらに歩み寄ってくる者が現れた。【Bill】は確認すると、イールとオロアと同じ髪色の長髪で顔面にカフスを着けた一人の騎士が現れた。見た感じ、女騎士と言えばいいのか【Bill】は少し混乱した。すると、女騎士はこう語りかけた。
「お初にお目にかかります。私は彼女達の長を務めていますオーラルという者です」
オーラルと名乗る導き人は丁寧に【Bill】に挨拶する。
「あ、これはどうも。んでイール、一体何を始めようっていうんだ?」
するとイールは少し笑みを浮かべて【Bill】に返答する。
「これから貴方にはオーラル姉様と戦っていただきます。言い分は問いませんので速やかに前に来てください」
「…なっ!?」
するとそれを聞いた【Bill】は突然のことでわからず、イールに対して、抗議をした。
「ちょっと待て!?相手剣持ってるんだぞ!手ぶらの俺には明らかに不利だろ!?」
「は〜い♪それではこれよりオーラル姉様とさっきから騒々しい【Bill公】によるエキシビョンマッチを開始しま〜す♪」
それを聞いてイライラしたのか、【Bill】はオロアに詰め寄った。
「話を聞け〜!俺はやると言ったわけじゃないぞ!そもそも【Bill】公ってなんだよ!?」(イラッ!)
「問答無用で〜す♪さあ男なら正々堂々行ってください〜♪」(トン!)
「な!?…うぉ〜!!」(ビュ〜ン!)
するとオロアの人押しで、真ん中に【Bill】が配置された。そしてそれを待ち構えていたオーラルはこう話す。
「うちの妹達が無礼な態度をお取りしてどうもすみません…」
「本当にだ!…俺も言えた義理じゃあない!けど!ちゃんと教育してんのかあんた!?」
するとオーラルは笑みを浮かべながら、真ん中へと歩み出す。そして、【Bill】に対して、こう言い放った。
「ふふふ、あれでも私の可愛い妹達なので多めに見てあげてください…では…!これより貴方の実力を試させていただきます。…覚悟は良いですか…?」(ゴゴゴゴ!!)
「…!?」(ゾクッ!!)
【Bill】は相手のオーラルの桁違いの気迫に驚いた。生まれて初めて、ここまで相手を威圧させる相手は初めてであると【Bill】は驚きを隠せなかった。
🎼Back Ground Music 》》》
♪〜TOEより・Ability Test
「…では…行きますよ!」(シュッ!)
「…なっ…消え…!?ごはっ!!」(メキッ!)
ヒューーン!
【Bill】はオーラルの神速の如く早い特攻に対応出来ず、【Bill】の脇腹にオーラルの拳が炸裂し、宙へと飛んでいく。
(み…見えなかった…しかもなんて重い一撃だよ!)
「うふふ。流石に素手の貴方に剣を抜くことは致しません…ですが…ここまでのようですね!」(ゲシッ!)
「グハァー!!」
ドゴーーーン!
【Bill】はとてつもない轟音と共に地面に倒れ伏せてしまった。その力はオロアのものと比べ、桁違いに重い蹴りを味わった。
「あ、あが…」
「あらあらもう寝る時間ですか…せっかく貴方の習得した【fiducia】を試していただかないと…仕方がない人ですね…」(シャキン!)
「あらら〜!オーラル姉様が抜刀しましたね♪」
「…そのようですね、オロア…あのままでは彼…まずいですね…」
(グッ…なんつー威力だよ…このままじゃ…くそ、刃物を持ちながらこっちへ迫ってくる…こんな時、俺の身体が鋼みたいに固ければ…いんや…できれば拳だけでもだ。手だけでも鋼鉄のように固ければ…あれ!?…何だ!?腕に光が…!!)
「…!?」
「あらあら…もしやこれは…」
「…そうですか…これが貴方の【Fiducia】といったものですか…これはまた面白いですね」
「…な、なんだこれ…両手の腕に光が…!?」
【Bill】の手が怪しく光っていた。どのような効果があるのかは本人自体自覚がないようである。すると、オーラルは興味深そうに前に近づいてくる。
「ふふふ…なるほど。それが貴方の適正に合った能力ということですか…でも、この私の斬撃を回避することができますでしょうか…?」(シュッ!)
「…!!」
キンッ!!
「…!!」
「…ほぉ…!」
【Bill】は腕をクロスにし、防御の姿勢をしていた。すると、剣は腕を切れておらず、弾かれたままであった。すると反撃と言わんばかりに【Bill】は刃を掴み、拳を握りしめ、オーラルの顔面を思いっきり殴り込んだ。
「うぉらぁぁぁぁ!…!なっ」(パシッ!)
「…!!…うふふ。そうですか…貴方はどうやら肉体強化系統の能力といったところでしょうか…面白いですね…」(グググ!)
オーラルは別の手でそれを防いだ。そして思いっきり蹴りを一発入れた。
「はぁっ!」(ドゴッ!)
「ぐあぁぁ!!」
ドゴーーン!!
あまりの凄まじい蹴りに、【Bill】の身体は飛んでいき、壁へと激突した。あまりの衝撃により気を失い、腕時計端末から魂の量が減っていたのかアラームが鳴っていた。
「なるほど…肉体強化…ですか…♪」(ツンツン!)
「まあまあですね…ま、この殿方が使いこなせるかはわかりませんが…」(ツンツン!)
(…使い方次第では、力になる能力ですね…将来どうなるか…ですね…)
導き人達は、【Bill】を連れて、検査室へと運び、手当てをした。
🎼Back Ground Music 》》》
「ん…ハッ!?…ここは…どこだ?」
「あ、目が覚めましたか?」
「え?…あれ?…あんたは…」
「ああ…あの時仮面をつけていましたからね…先ほどはどうも…オーラルです」
「…え、ええ!?あ、あんたが…」
「どうも初めまして…」(二コッ)
「」(…一体こんな美人さんからどこからあんな人外的な力が出るんだ!?…《人間重戦車》か!?)
「うふふ♪…なら今から腕相撲でもいかがですか〜♪?」(ニコニコゴゴゴ!)
「あ。…いやいや!遠慮しとく!!」(ブンブン!)
するとオーラルは今回の試練の合否を説明した。
「ウフフ!では【Bill】さん。今回の貴方は見事、【Fiducia】の一つである肉体強化を使えるようになりました。よって試験は合格とします」
「ほ、本当か!?」
「ですが乱用は禁物です。貴方の能力は。…思った以上に肉体への負荷が大きいため、最悪自分の身を危険に晒すだけですからもしもの時にだけお使いくださいね…」
「わ、分かった!ちなみに導き人のアンタの力も肉体強化系なのか?」
「いえ、これは元々の体質です。まあもしかしたら私達は誕生と同時に肉体強化を施されているのかもしれませんね…」
「そ、そっか。……でもこれで俺もようやく【Paradiso】へと行けるってことか…」
能力を手に入れ、【Bill】は少しホッとしていた。これで何かあれば自分の身を守れるという事を思っていた。
「では、貴方を【Paradiso】の入り口まで案内します。こちらに来てください」
「おう!」
オーラルの指示通り、【Bill】は駅の外の扉までついた。そしてオーラルは旅立つ前に【paradiso】について話した。
「では【Bill】さん。よく聞いてくださいね…【Paradiso】の世界は13の島で構成されています。もちろん一つ一つの島は文化も価値観が違います。そして貴方はFランクなのでまず13の島のうちに存在するFランク向けの始まりの町へと移されます。そこで実績を積んでいき、Eランクから目指して頑張っていただけると幸いです。」
「一つ質問いいか!?オーラルさん!」
「なんでしょうか?」
「さっきイールにも聞いた!この【Paradiso】に俺達が敵対するその悪企みを起こす奴らは、今も存在してるのか?」
その質問にオーラルは首を縦に振った。
「はい。そしてその動きは着実に勢力を強めていますね…ですがご安心を…その者達と対抗しているギルドもこの【Paradiso】にも存在しています。その人達は特に人種関係なく、支援も快く受け入れて雇用も受け付けております。そのために今回の試練をお受けさせた次第であります。きっとあなたの役に立つのではないのかと思います」
「分かった!……じゃあ俺の能力もその人達にとってすっごく貴重なんだな!!」
「はい!もしかしたらその能力を見込んでスカウトに駆けつけにくると思いま〜す♪」
「おお〜!!…って!?…この声!!」
【Bill】は後ろを振り返ると、案の定オロアが立っていた。
「オロア!!み、見送りか!?」
「は〜いその通り〜♪」
「フフッもうほんとこの子ったら〜」(なでなで!)
「えへへ〜お姉さま〜♪」
「!?」(シ…シスコンか!?)
「そうですが何か?」(二コッ!)
「いや〜なんか微笑ましいなって!!…俺には妹とかいなかったから」
「あら、そうでしたね…なんかごめんなさい…私達の熱い姉妹愛のあまりに嫉妬させてしまいましたね〜」
「【Bill】公…元気出してくださいね〜♪」
「人を《エテ公》みたいに言うな!…はぁ〜……!!…じゃあ、行ってくる!!」
【Bill】は扉を開けてこれから外へ出ようとする。すると、誰かから呼び止められた。
「【Bill】さん、お待ちください」
「ん?あれイールもこちらを見送りか?」
「当たり前です。これを持っていってください。もしものための魂の補充薬の入った袋の詰め合わせです」
イールは親切にも、もしもの時のための救急用品の入った袋を【Bill】に渡した。その様子から、三姉妹の中でも常識があってしっかりとした印象を持っていた。
「ありがとな!!俺はなんか、三姉妹の中で、イールが一番まともだ!!すげえ嬉しい!!」
「…そうですか」(フッ…)
イールは少し嬉しそうに笑っていた。だが他の二人はその会話の内容に対し、穏便に話を聞いてくれそうになかった様である。
「「…それどういう意味(でしょうか〜♪)ですか!?」」(ゴゴゴゴ!)
「あ。……!!グホォー!!」(メリッ!)
ピューーーン!!
オーラルは軽い蹴り、オロアはドロップキックをお見舞いし、【Bill】を思いっきり外へと飛ばした。
「全く、失礼なことを言いますね!ね〜オロア♪」
「はい、オーラル姉様〜♪」
(…【Bill】さん、ここから本番ですよ…【paradiso】では貴方の生きてきた世界での常識が通用する世界ではありません。それをお忘れなき様…)
イールは少し心配そうに【Bill】のことを思い、見守る。
・・・
・・
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