🎼Back Ground Music 》》》
I want to work in the soul of a craftsman,
If you stick to your old values and rules of thumb too much, you will soon be left behind in the times.
The only way to avoid it is to desperately continue self-transformation and learning.
(僕は職人の魂で仕事をしたいと思いますが、自分の昔の価値観や経験則にこだわり過ぎるとたちまち時代に取り残される。
それを避けるためには必死に自己変革や学習を続けるしかないのです。)
Where there is no way to live other than writing a songI think I have to drive myself all the time.
(曲を書く以外に生きる道はないところに、いつも自身を追い込んでいなければと思うのです。)
Tatsuro Yamashita
(山下 達郎)
〜【paradiso】の世界・貧民街〜
〜♪
遠く翳る空から
たそがれが舞い降りる
ちっぽけな街に生まれ
人混みの中を生きる
数知れぬ人々の
魂に届く様に〜♪
「…今となってはこの歌の意味、少しだけ分かった気がするかもな…親父…母ちゃん…なぁ〜クウ…」
「…ワン!」
隆一は、感傷に浸りながら、野良犬の黒柴犬の子犬のクウの頭を撫でながら、山下達郎の蒼氓を歌っていた。彼はこの【paradiso】へ来た時からこの歌を口ずさんでいる。その歌には深いものがあると隆一自身なんとなく感じていた。
(…今思えば夢だと思うよ…あの族同士の抗争に巻き込まれて俺はてっきり死んだと思えば、オロアって導き人ってやつから、この世界に招かれて色々試練とか、執行者とかいう黒いのに追われて…楽国駅の電車に乗って…色々あった。ここまでくるのは…今となっては毎月金がもらえて、食事もタダ。宿は…地位がなかったら家は持てないからダメと言われ、最悪誰かの元で住み込みでないとダメだと言われた。だが探していたら今にも誰も住みそうではない家をとりあえず住処にして、仕方なく仕事して地位向上を目指して働いている。それだけではなくクウのために少しでも働いている自分がいる。)
pipipipi!
すると腕時計型デバイスからアラームが鳴り、隆一はすぐにアラームを止めて着替えをする。
「よし、そろそろ行くか…じゃあクウ!留守番よろしく!」
「ワン!」
「行ってきます!」
隆一は、仕事場に出かけた。その仕事は至って単純。汚れた街を清潔にする仕事であったり、配りをする仕事にあとは肉体労働。色々と隆一は請け負っている。そしてその街の景色は全身ガラス張りの建物が右に左にあちこちと存在し、そして巨大なディスプレイが存在している。その世界観はまるでSF映画にある近未来的な世界である。福岡出身の隆一にとっても西の都と言われる街の生まれのイメージであるが、実際はかなりの田舎育ちだ。そしてちっぽけな街に生まれたことも彼によって山下達郎の蒼氓の歌が親近感を感じるのだろう。
〜仕事場〜
「……」(…ふぅ〜あの世とは言えど身体の疲労は感じる!…でもなんかそこまで悪い気がしない!別にこき使われて働くようなものでもないし…それに一人でコツコツできる。まあ族やってたけど、そこまで悪をしたわけではないしな…酒…タバコ…シンナー遊びはしていない…ただ、親父のことを…いや、今はいいか…)
「あ〜【Bill】さん…」
「ん?どうしたんですか?」
「これをそこに持っていっといてくれんかね〜?」
「ああ、お安い御用だ!!」
隆一のことを【Bill】と呼ぶ者はこの世界に住むユートピア【Paradiso】の住人の一人、いわゆるユートピア人である。何故現世での名前ではなく違う名前で名乗らないといけないのは、この【Paradiso】でのルールの一つでもあるからだと隆一は知っている。現世でのネームを名乗ると、この世界では厳しく罰せられるという決まりがこの世界での入界審査にて言われた為、今は仕方なくこの名前に隆一はした。名前のきっかけは何かの戦争映画の軍曹がこの名前だったのでそれに影響され、この名前になったらしい。
「……」(…今思えば実名を伏せろとは言われてたけど、普通に名乗ってもアイツらが来る気配もないし……まあ【Bill】(ビル)って名前は洋画に出てきたある人から取った名前だし!ネトゲーでもあるような感じだし、嫌いじゃない!!)
カラン!カラン!
「さて、せっせと済ますか〜!」
そう言いながら黙々と作業をする隆一こと【Bill】は、今日の仕事を終え、今回の報酬を腕時計型デバイスで内容を確認する。
「ん〜とどれどれ…おっ!」
【Bill】 ランクF
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ランクアップまであと※※です。
すると、【Bill】はその結果に笑みを浮かべた。
「よーし!あと少しでランクが上がる。そうすれば今の家よりもまだマシな家に住むことができる!…やったぜ〜!」
【Bill】は喜んでいた。そしてウキウキと自分の帰路へと戻る。だがそこで、思いがけない出来事に遭遇する。
🎼Back Ground Music 》》》
「…ん?…!?…な!?なんだっ!?あれ!?」
【Bill】はその光景を目にして驚いた。それは自分の貧困街に住んでいるユートピア人がある白の服を着た者達によって連行されていく姿を目撃した。その様子に、【Bill】は何か嫌な予感がしたので、集団に見つからないように隠れながら慎重に進み、自分の家に戻ろうとした。だがそこで思わぬ事態に遭遇したーーー
ガラガラガラ……
「…!?…俺の家が…」
【Bill】は目を疑った。その家は跡形もなくなり撤去されていた。そして誰かの気配がしたので振り返った。
ジャキッ!!
「…!!…だ、誰だ!?」
「…【Bill】とはお前のことか?…そして…その妙な勲章…情報通り【現世人】だな…」
その男はどうやら【Bill】のことを知っていた。男は黒い肌をした黒髪で長めの黒コートを着用していたいかにも殺し屋のような風貌を漂わせており、腰には西洋のような一本のサーベルにも似た刀がぶら下がっていた。その男から敵意を感じたのか、【Bill】は答える。
「…これは一体どういう事だ!?あの人たちに一体何をしたんだ!?…!!…クウをどうした!?」
「…クウ?」
「ここにいた子犬だ!?…あいつになにしやがった!?」
すると男は真面目そうな口調でこう答えた。
「ああ、あの犬か…ユートピアにはいないからな…犬は珍しく高く売れるから業者に引き取ってもらった。どこにいるかは知らない…そしてこのゴミのような家は…俺が潰した」
「…!!」(ギリギリ!)
【Bill】は、目を鋭く睨みつけ、男に抵抗する素振りを見せる。
「…今の話の内容で大体わかった!…お前が敵であることを…!!」
「……」
「うぉぉーー!!」
「…はぁ〜…」
男は呆れたかのようにため息をつき、突進してくる【Bill】の身体を思いっきり掴み、強く地面に叩きつけた。
ダーーーン!!
「かはっ!!…あ…あが…」
すると男は鎮圧させた【Bill】に対し、懇切丁寧に説明した。
「…方針が変わったんだよ…今日からここはお前の知る貧困街ではなくなる…文句ならあの白い連中に言うんだな…」
「…白い連中…あいつらは一体…」
「【真・ユートピア創造士隊】を名乗る宗教団体だ。中には俺達よりも最上位のランクの地位にいる集まりの集団…今のお前のような底辺が、奴らに反逆するようならお前は間違いなく処刑される。それに奴らはお前のようなこのユートピア出身ではない別の世界から来たものを忌み嫌う者達…何より…Eらなまだしも一年間のままFランク続きで結果を出せないのなら尚更だ…そして俺は…」
「…お前…一体何もんだ!?」
すると男は、腰にあった西洋の刀を抜刀し、わかりやすく【Bill】にこう伝える。
「…俺はその組織に属する殺戮専門の傭兵…つまり奴らの…犬…一年間で結果の出せなかったFランクの【Bill】。……お前を始末に来た!」
「…!!」
ブン!
「…くっ!!死んでたまるか!!…くそが…!」(サッ!)
「…逃げたか…まあいい…ここではどのみちお前には逃げる場所などないのだからな…」
〜数時間後〜
「はぁ…はぁ…!!くそ!…だめだ、ゲートが封鎖されている……」
見つけたぞーー!!奴が現世人の【Bill】だ!!確保に移れ!!
「…!!くっ…!」(ダダダッ!)
【Bill】はユートピアの世界に来て史上初、最悪の危機に瀕していた。突然な平凡な日々が奪われ、この世界で結果を出せなかった自分が処分される日が来るとは思わなかったのであるーーー
「く…くそ…なんとか逃げ切れば…どこかで就労につければ…!」
「…!!いたぞ」
ガシッ!!
「ぐぁっ!!…くっ…離せぇっ!!」
「こちら!!……【Bill】を確保しました!これより、直ちに処分を実行します!」
するとその男はナイフを取り出し、【Bill】の背中に突きつけ、滅多刺しにした。
「ぐあぁぁっ!!あ…がぁ…!」
【Bill】は悲鳴をあげた。痛覚はあるが、ここはあの世の世界であるため、血は流れず、傷口から胞子状の光が一粒一粒空へと散っていく。そしてあれから2分以上の時間が過ぎ、腕時計型のデバイスから警告音が鳴り響いた。思わず【Bill】はメモリを確認する。
【Bill】 ランクF
【♡♡】
(!!…嘘だろ…確かここで体力が無くなれば…【導き人】のオロア達から!…天国とか地獄にいける保証はないと聞いた…くそ!!ここまでなのか!!)
【Bill】は絶望した。そして今までの詳細の出来事が脳内に再生されたーーー
・・・
・・
・
🎼Back Ground Music 》》》
隆一は幼少期から福岡県の田舎で育ち、昔からやんちゃであり、悪ガキとも言える悪行もした。しかし時に上の立場の横暴なことに屈することもなく友を庇うこともあった。親子関係では父とはあまり仲は良くない。中学校時代から喧嘩をして困らせたりもしていた。そんな日々が過ぎ、高校生の時にある出来事が起こるーーー
〜隆一高校時代〜
「あれ、おかんどこにいるんだ?」
隆一は父に母の所在を伝えたが、そこには衝撃の事実を告げる。
「…あいつは出て行った…」
「な、なんでだよ…なんでおかんが…おい!どう言うことなんだよ!?」
「…元々俺とは不釣り合いだった。……だから…!!」
バキッ!!
すると、隆一の父親は激しく身体を飛ばされた。
「ふざけるなよ…なんでおかん蔑ろなんだよ!!…どこにいるんだよ!?」
「…わからん…」
「…!!くそが…」
隆一は家を飛び出し、母親を探しに行った。しかし必死に探すも、それでも母の行方を知ることはできなかった。
「おかん…どこいっちまったんだよ…」
〜翌日〜
「おい、貴様!!これはなんだ!?」(手にタバコ)
「す、すみません…これは…」
「口答えするな!!」(パン!)
「…ぐっ!」
「あ!あいつ…!…またあいつらか…」
〜学校裏〜
「あいつおっせ〜な〜」
「どうせ生徒指導のやつに捕まったんだろうよ…ったく使えないな〜」
「…ん?」
学校裏で不良3人が屯していた。すると、そこに隆一が強い目で不良の方を見る。
「…んだテメェ…」
「おい、こいつ二年の皆川じゃないか〜!おい…何のようだよ!!」
「お前らか…あいつにタバコを持たせてお前らの運び屋ごっこさせてたのは…」
すると、不良のリーダー格の人間が笑いながら、隆一に接近してきた。
「だったら何だよ〜」(ケラケラ!)
「…!!」
ベキッ!!
すると隆一は拳を強く握り、リーダーを思いっきり殴り飛ばした。
「「てめえ!!おいやっちまえ〜!!!」」
オオ〜ッ!!
「…来いよ!!お前ら〜!!!」
・・・
・・
・
「全くとんでもないことをしてくれたな!!皆川…あぁ!?」
「…」
隆一はあの騒ぎの後、生徒指導に呼ばれた。
「タバコの運び屋をやらせていたのはあいつらが自供した。だがそれでも、手足を骨折させて病院送りにするのは異常だ!やり過ぎだ!!おかげで、相手の親御さんはカンカンなんだぞ…」
「…」
「何とか言ったらどうなんだ皆川!?」
「…!!」
すると皆川は指導担当の教員の胸ぐらを掴み、思いっきり殴り飛ばした。
「…な!?」
「あんたこそどこに目をつけてるんだ!?あいつらの親がそんなに偉いのかよ!?あいつらのせいで虐められてこき使われて、自分の居場所を見失うことをしてるあいつの気持ち…考えたことあるのかよ!?お前のような節穴だらけの教師がいるから、いじめとかこんな問題に気付けないんじゃないのかよ!?」
「…貴様…!!こんなことをしておいて…許せん!!」
その後、隆一は停学となり、その後に自分から自己退学した。だがそれでも隆一は後悔していない。その後は早急に家を出て一人暮らしを始めた。その一年後─────
ブブンブンブン〜パラリラパラリラ〜♪
「隆一〜!!今日もぶっ飛んでんな〜!!」
「まぁな〜山崎!でも俺達は真面目が一番を貫く!!!外道な事はしない真面目な族を目指すのが取り柄だ!!」
「さっすが正義感だけはあるな〜!!まあ俺はそれでお前に惹かれたのはあるな〜!!」
隆一は気がつけば暴走族になり、歳は18歳になっていた。そして居場所がない若者を引き連れ、決して非行に走らせないように未成年のうちはタバコ、酒、シンナー遊び、あとは人を蹴落とすような下衆なやり方をさせないよう厳しく取り締まるよう教育し、硬派を貫く暴走族として有名なチームを作っていた。
「ヘッド、大変です!!」
「どうした!?」
「今敵対してるチームが、俺の部下を一人拉致して、今ボコられているようなんです!…今すぐに来いと…」
「…下衆なことを!…よし分かった!!助けに行くぞ!おいお前ら〜戦だ〜!!置いてかれるなよ!!」
「「「「「オォーー!!」」」」」」
ブーーーーーン!!
隆一はバイクを走らせて、チームを引き連れて河原へと向かう。その場所で、隆一の運命が大きく左右する出来事が起こる事を、まだ彼自身知る由がなかったーーー
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♪〜湘南乃風より・黄金魂
〜ある河原〜
「…おっ!…来やがったな〜♪」
「おまえが……!!よくもこいつの部下を痛ぶったな!?絶対に報いを受けさせる!!」
隆一は怒りに震えていた。自分の大事な仲間である部下の配下を人質に取り、挙句に暴行を働いた事に対し、相手への嫌悪感を示す。
「コイツは悪かったな。…だけどウチとしては族の長であるあんたと少し話したくてな…!」
「だったら正々堂々俺の前にくれば良いだろ!?なんで部下を巻き込むんだ!?」
すると相手のヘッドは隆一に自信よくこう発言する。
「お前のような男はこうでもしないと、燃えないんだろう?…俺はあんたと一回本気で拳を交えて話しをしたかったんだよ…全力でな!…だが俺も部下に対して流石にやりすぎだと思ってな…このけじめは必ずつけさせる…だからこの通りだ!!」
隆一は相手のヘッドの顔を確認する。確かに誠意が伝わる面構えをしている。そう思うと、隆一は相手のヘッドに宣言する。
「…そうか。…じゃあしっかりけじめつけさせないとな…あんたの血と汗を流させてな!!!」
すると相手のヘッドは高笑いしてこう返答した。
「はっは!!こいつは面白えな…おいお前ら!!…大丈夫だ!…こいつとは一騎打ちにする!!」
へ、ヘッド!?
「…男らしいヘッドだ!!お前気に入った!!」
ザッザッザ………
「ふふふ…さて…準備はできたかリーダーさんよ〜?」
「…お互い様だろう?」
「ふふふ」
「ククク…!」
「うぉぉ〜ら〜!!!」
「…ふふふ。まんまとかかりやがったなぁ〜♪…おいお前ら〜!こいつ轢き殺せ〜!!!」
ブーン!!ブンブン!!
「……!!なぁっ!?」
ドーーン!!
すると相手の暴走族の部下が、バイクにて猛スピードで隆一に接近し、轢き飛ばされてしまった隆一の身体はあたかも宙に飛んだ。そして、首から真っ逆さまへ落ちてしまった─────
ドサッ!!
「あ…あがが…!!」
するともう一台のバイクが、非道にも隆一の頭部を轢いてしまい、重傷を負わされ、そのまま意識を失った。その光景を見ていられなかったのか、他の族員が前に出てきて声をあげた。
「!!この外道共がァァ〜!!よくもヘッドを〜!!絶対に許さねえ〜!!」
「!!!…テメエらぁ〜〜!!!!生きて返さねえぇぇ!!!!!!」
「隆一……!!!…この山﨑!!…《副総長》として…絶対にけじめつけさせてやる!!」
ワーーーーー!! ワーーーーー!!
・・・
・・
・
その翌日、隆一は息を引き取った。その顔はとても安らかだった。とても清々しく葬式はひっそりと行われ、その葬式には暴走族の身分を隠し、参りに来るものまでいた。それだけ隆一に惹かれたものがいたのだろう。そしてここから隆一は奇妙な出来事と遭遇することになるーーー