🎼Back Ground Music 》》》
God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)
Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)
Rene Descartes
(ルネ・デカルト)
♪〜TODより・Holy light
〜???の世界〜
〜カラ〜ンカラン♪
「zzz…んっ…!!……!?え、なんですか!?…ここ!?…確か私…あの時…息を…」
鐘の音が聞こえ、ゆいは目を覚ました。中はとても狭く、周りには白い薔薇が囲まれており、顔の前にはドット状の穴があった。どうやら窒息を防ぐための措置かとゆいは考え、一度前の扉を押し出してみる。
「ここから開けれますね…!」(ガタン!)
ゆいは扉を開け、身体を起こして周囲を確認する。下を見るとそれは案の定、ゆいは棺で眠っていたようだ。周りは空間は薄暗く、もやがかかった空間が広がり、目の前には白い道が続いていた。そして天井は高さが見えない。そんな時、ゆいは何か物音の気配を感じたのか周囲を警戒した。
ガタッ… ゴゾッ…
「…!…だ、…だれ…!?」
「呼びました?」(ひょっこり!)
「!?」
「ん?」
「…え?…女の子…?でもなんで?」(キョトン)
「やっほ〜♪」(ニパ〜!)
「…こ、こんにちは…」
「こんにちは〜♪初めましてってやつです!」
ゆいは挨拶するとそれはシルバーブロンドの髪色でロングヘアー、肌は白く、胸元に十字架のワンポイントに青白のワンピースを着た笑顔の一人の少女がそこにいた。そして少女はすかさずニコニコと挨拶をした。
「私の名前は、導き人の一人、オロア!よろしく〜♪…そしてあなたをユートピアの世界へと勧誘に来ました!」
「え?導き人のオロア…さん?…あの〜ユートピアの世界ってなんですか?」
「あ〜知らないんですね〜では教えちゃいま〜す♪」
するとオロアは口頭で懇切丁寧に説明した。
「ユートピアの世界とはいわゆる天国と地獄ではないもう一つの死後の世界があります。あなた達の現世で【paradiso】という言葉聞いたことありませんか〜♪」
「い、いえ初めて聞きました。それで、私はなんでここに?」
するとオロアはどうやらゆいは自分が死んだ事は気づいているようだが、なぜここに呼ばれたのかのことで混乱しているようだ。だが導き人のオロアは死者を何度も送ってきたベテラン。こういうのは慣れっこなのだという気分で説明した。
「鈍いですね〜♪あなたは現世で死にましたね。そういうのは自覚ありますか〜?西野ゆいさん♪」
「は、はい。息を引き取ってしばらくして、意識がないように眠った?かのような感覚に襲われて…それで気がついたらここに…ってあれ?どうして私の名前を!?」
「ふふふ、私たち導き人にはあなた達死者の情報は全てお見通しなのですよ〜♪もし他の死者の人の中に知り合いがいるとしてもその人の情報提供をする事はプライバシーで守られているためお教えする事はできませ〜ん!そこはお忘れなきようお願いしま〜す♪」
「ああ…そうですか。」(あかりちゃんがここに来ているか知りたかったのですが…ここに来てるのかしら…?)
「まあでもそれだけ覚えていれば上出来です!ではあなたが起きたところで早速いきましょう♪ついてきてくださいね〜♪」(二コッ!)
「えッ!?」
「ではではよ〜いドン!!♪」(ピュー!!)
「えっえぇーっ!?」
オロアは勢いづいてスタートダッシュし、猛スピードで走り抜ける。そのスピードにゆいは驚く。どこにあの小さい身体でこんなスピードが出るのかと。
「は、はやいですよ!?」
「はっやく♪はっやく〜♪」(タッタッタ!)
「…仕方ありませんね…でも私、走れますかね…身体の方は大丈夫なのでしょうか…」(タッタッタ…)
ゆいは走り出す。しばらく走っているとあることに気づいていた。
「…え…?あれだけ走っていますが…疲れは感じているのに…発作が起こらない…それに身体がすごく軽いです…!!…もしかして…私の病弱体質が…なくなっている!?」
ゆいは実感した。どうやら、昔から抱えていた病弱体質はなくなり、この感覚は9歳の時一番活発であったあの頃を思い出していた。それを知り、調子が出てきたゆいは、すかさずもう少し早く走ってみようと試してみる。
「よ〜し!ではもう少し早く走っていきますね!はぁぁぁ〜!」(タッタッタ!)
ゆいはスピードを上げていく。そして後ろを見ていたオロアはその様子を見ていた。
(ふふふ…どうやら自分が病弱体質がなくなった今、自分が思うように走ることができて嬉しそうなんですね〜♪)
「どうやら大丈夫そうですね!でもこんなに思いっきり走るのは久しぶりな感じです!!…でもなかなかつきませんね…まあいいでしょうか!…ふふふ!こんなに走れる事はあの時に比べれば奇跡のようなものです!あ〜本当に気持ちがいいです…!お姉ちゃんが見たらびっくりするでしょうね〜♪」
ゆいは楽しそうに走っていた。現世での入院生活では少し歩くだけでも息切れの発作が起こった時があった。だが死後の世界となった今となっては病弱体質はなくなり、思う存分走れることにゆいはとにかく喜びを感じでいた。走っているとどんどん視界が暗くなり、ある場所についた。
「お〜到着しましたか〜♪どうですか思いっきり走ってきた感想は〜?」(ニコニコ〜!)
「はい!!とても気持ちがよかったです!生前では走る体力もなかったので…でも今となってはこれが普通なのだと思いましたね!」
「そうですか〜♪では準備体操が終わったところであれをご覧くださ〜い♪」
「え?…!?…なんですか…あれ?…スポットライトですか?」
オロアが指差したところをゆいが確認するとそこには真っ暗闇な道に天井に小さな光が等間隔に、スポットライトのように広がっている道が続いている。その道を見てゆいはオロアに問いかけた。
「あれは現世の世界の光の一部です!光を浴びると、あなたの生前の様子だとか、その他の人の身体を借りて、いろんな追体験できたりと…まあとにかく色々な価値観に触れるのがありますね〜♪あ、特に害はないのでご安心ください!」
「なるほど…という事はあの光に入れば言いという事なんですね。」
「は〜い♪では時間が押していますのでそろそろいきますか〜えい♪」(トン!)
「え?…!えぇぇ〜!」(ビューン!)
「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)
「あ、あの!…あ…」
オロアは、ゆいの背中を軽く叩くとその直後、とてつもない突風が吹いたかのようにゆいの身体が吹き飛ばされる。そしてスポットライトのある方に近づき、ゆいが光に接触すると、光の中に消えていった。
(ふっふっふ。どうやら現世では世間知らずのお嬢様といったところですか…見たところあまり精神的に強いわけでなく不安定なように見受けられます。…今回の試練ではその弱さが命取りにならなければいいのですがね〜♪)
・・・
・・
・
There is also a high-ranking charity that behaves like malicious intent on the table.
(表にはさながら悪意のごとく振舞う、気位の高い慈愛もある。)
Few people do not reveal the secrets of their friends when they are in trouble.
(話題に窮したときに、自分の友人の秘密を暴露しない者は稀である。)
Friedrich Wilhelm Nietzsche
(フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ)
〜誰かの家の部屋〜
《んん…ここは…?あれ?…誰かの家?》
「あかり〜おいで〜!」
《あかり…ってまさかこれってあかりちゃんの記憶…》
「は〜いお母さん〜何〜?」
「ふっふ〜んはいこれ!」
するとあかりの母はあかりに何かを渡した。それは何かの袋に入っていた。
「開けていい?」
「ええ。いいわよ〜」
すると、中にはひまわりのヘアピンが入っていた!
「ひまわりだ〜でもなんで〜?」
《へぇ〜あのひまわりのヘアピン、お母さんからのプレゼントだったんだね!》
「うふふ。あなたに似合うと思ってね。どう?気にいってくれた?」
「うん!ぴったりだよん〜と…ほら!」
「あら本当よく似合っているわ!」(なでなで!)
「えへへ〜!」(ニコニコ!)
《あかりちゃん…うん…よく似合っているよ!…でも…》
そして記憶は進んでいき、急にあかりが倒れてしまった場面を見てしまったようだ。
「…!あ、あかり!?…どうしたの!」
《あかりちゃん!…まさかこの時に…!》
「う〜んなんかフラフラして…あと頭が痛いんだ〜…」
「!!ちょっと病院へ診てもらおう!」
「え〜大丈夫だよ〜…うぅ…痛い…!」
《あかりちゃん…そうか…あかりちゃんも明るくしていたけどやっぱりこんなに痛がるところがあるんだね…》
「やっぱり!ほら、私も今日は時間あるし行きましょう!」
「…うん…」
🎼Back Ground Music 》》》
〜竹内総合病院〜
あかりは竹内総合病院で精密な検査をした。検査終了後、医師は、とても険しい表情をしていた。
「お母さん…落ち着いて聞いてください…」
「はい。あのあかりはどうなんですか?」
「…どうやら脳に腫瘍が見つかりました。」
「!!」
《…脳腫瘍だったんですね…それで一年後には…足が…うぅ…グスッ!》
「なんとかできるんですよね先生!?」
「それが思った以上に深刻です。場所がとても複雑な場所にあり、摘出は困難です。無理して摘出すれば、神経を傷つけて重い後遺症が残るでしょう。おそらく一年後には…」
「ああ、そんな…そんな!」
《…あかりちゃん…》
その夜にあかりの母は父と相談した。父も険しい表情をしていた。
「…あかりがか…」
「はい。後一年だと…私、どうすればいいかと…うぅ…」
「…入院させよう!少しでも希望があるなら」
「…えっ…でも」
「あの子もまだ6歳だ。これからなんだ!…だから…」
あかりの父はとても悲しい声で話していた。愛する一人娘が突然のがん宣告を受け、ショックが隠しきれなかったのだ。
「…私も、あの子には生きていて欲しい。どうにかできるならしてあげたい!」
「…!お前…!」
「私も覚悟を決めるわ…入院させてあげないと…」
「ああ、二人であの子を支えていこう!親なんだから!」
《やっぱりあかりちゃんの両親…それだけあかりちゃんが好きなんですね。私の時もそうだったんでしょうね…》
そして両親が合意の上で、あかりが入院することになった。病院内ではあかりの明るいところは患者にとって励ましになっていた。だが実際のあかりはいつも明るいわけではなかった。
🎼Back Ground Music 》》》
「うぅ…いたた…でもみんなにいたい姿は見せたくない。元気に振る舞おうっと!それにゆいちゃんは、気を使うとこあるし、気をつけとかないとね…」
《あかりちゃん…ずっと我慢してたんだね…》
「ねえゆいちゃん!みてこれ!」
「ん?あ〜猫ちゃんですね〜!…へ〜ゆいちゃん絵描くの好きなんですね〜。他に何か書いて見せて!」
「う〜ん今日はこれくらいかな!時々描こうかなって決めているんだ!」
「そうですか…また何か描けたら見せてくださいね!」
「うん!」(本当は今日はなんか手が痺れてうまく描けないって事を内緒にしておかないと…)
《…そうだったんですか…時々手が動かなくなる時が…そういえば食べている時も、箸ではなくスプーンを使用する事が多かったですね…》
そして時が経ち、いよいよ歩行状態や手足の痺れが目立ってきたため、ゆいとは別室の個室への移動となった。
(う〜んうまく足が上がらない…なんか重りついているみたい…でも出来ないわけじゃ…あ!!)
バターン!!
《あ…あかりちゃん!!うぅ…こんなになるまで…》
物音が聞こえたのか、看護師が声をかけてきた。
「あかりさん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫!ただよろけただけだから心配ないよ…!」(…こんなとこゆいちゃんに見られたら心配するだろな〜しばらく会ってないからすごく寂しんだろなあ…会いに行きたいけど…そうだ!)
《ん?なんでしょう?…あ、もしかして…!》
〜ゆいの病室〜
「ゆいさん少しいいですか?」
「はい。なんでしょうか?」
「これあかりさんから渡されたので。後血圧計らせていただきます。」
「…なんでしょうか?」
血圧測定を終えた後、ゆいは手紙を見た。すると手紙にはこう書かれていた。
「今日の昼の14時ぐらいに外のベンチで待ってて。お話ししようよ!」
「うふふ。わかりました。」
〜そして昼の14時〜
「ゆいちゃん久しぶり〜!」
「あ〜あかりちゃんお久しぶり!元気でしたか!?」
「うん!ゆいちゃんは?」
「私は…最近検査でどうも良くないと言われて…後骨髄注射がすごく痛みまして…」
「大変だね〜でも安心した〜!それでも、ゆいちゃんが元気そうで!」
「ふふ。ありがとうねあかりちゃん!」(なでなで!)
「えへへへ♪」(二コッ!)
《うぅ…グスッ!…あかりちゃん…でもやっぱり寂しいものですね…記憶といえど…》
「あ、そうだゆいちゃん!…次。何日の何時って決めとこっか?」
「そうですね。では2日後のこの時間でいいですか?」
「大丈夫だよ〜♪じゃあその日の時間によろしくね〜バイバイ!」
「はい…さよなら…」
〜その夜〜
(うぅ…前よりも痛みがひどくなってきたかな…もしかしたら…そうだ…明日フネばあちゃんに会って話しておかないと…)
《…!そうですか…ああ…あかりちゃん…うぅ…そうなる前にフネおばあちゃんに私を元気付けるように言ってくれたのですね…》
〜翌日〜
「ん?私にかい?」
「うん。こんな話はフネばあちゃんにしかいえないから。もし私に何かあってここに来れなくなったらベンチに亜麻色の髪をしたゆいって人が来るから!!頼んだよフネばあちゃん!」
「まあ覚えていたら考えとくわね…」
「絶対だよ!もしゆいちゃんが落ち込んでいたら絶対元気付けてね!!…約束だよ!」
「はいはい。もう年寄りはもう少し気を使ってくれたらいいだがね〜本当この子は空元気もいいとこだよ〜カッカ!」
「お願いしたからね!じゃあね〜」
「…ゆいさんね〜」
《…あかりちゃん…ありがとね…でも…明日は…ああ…ゆいちゃん…》
〜その夜〜
「けほ、けほっ!!…うぅ…苦しいよ…お母さん、お父さん…」
「!ゆいさん大丈夫ですか!!…先生!!ゆいさんが!」
〜翌日〜
「うぅ…足が動かない。でも手は動いてる…口も動いてる…まあ仕方ないよね。よし、車いすに乗ってゆいちゃんのとこに行こ!」
《…ゆいちゃん》
「ん?おんや…」
「フネばあちゃん…」
「確かに、これは深刻だねぇ〜」」
「昨日の約束、覚えてるよね!?」
「ああ!ほらはよいかんせ。あの子じゃろ。約束してる子。」
「そうだよ。相部屋の時は手袋作ってくれたり、絵を褒めてくれたり、食べ物とか色んなことを話したんだ。…後はお姉ちゃんがきてくれないからすごく寂しそうなの。そのせいか時々夜に泣いている日があるからすっごく寂しがり屋だと思うのゆいちゃんは…だから…」
《…見ていたのですね…内緒にして弱いところを見せないようにしていましたが…あかりちゃん…》
「ああわかったわかった!アンタさんがいなくなった後、あの子にガツンと言わせたるさかいにな、ほらはよ行きなはれや。」
「うん!じゃあお願いね!!」(スーッ……)
「ハァ〜全く最後に仕事を押し付けてくるんだからね〜まあお先の短い私だ。たまには人の役に立つことをしてみるかね…」
《あかりちゃん…フネおばあちゃん…ありがとう…!》
「あ、ゆいちゃ〜ん!」(フリフリ!)
「あ、あかりちゃん!…あれ?…!!」
「…あかりちゃん、足どうしたの?」
「うん、それが最近足が動きにくくなってね…私、どうやら頭に病気があるらしいの…でも大丈夫!まだ口と腕は元気だから!…ゆいちゃんは?なんか元気ないね…」
(そっか。…そうなんだ。)「あ、私は大丈夫!今日あかりちゃんと会えて嬉しいのか、身体の調子がすごく良いから!」
「そっか!それなら良かった!じゃ、お話しよ!!」
「…うん!何から話す?」
「ん〜?じゃあお姉ちゃんの薙刀の話!」
「え!?…ゆいちゃん渋いですね。もっと女の子らしい話の方が…」
「ううん、私は薙刀の話がいい!どうして、ゆいちゃんが薙刀を覚えたくなったのか知りたくなってね…話してくれるかな?」
「…あかりちゃんが言うならわかりました。前にも少し話したけど…薙刀はあかりちゃんと同じ歳くらいにね、私のおばあちゃんに教えてもらったの…少しでもこの病弱な身体を乗り越えようとしてね…でも、その薙刀術の見極めがすごく大変で…」
🎼Back Ground Music 》》》
(フワァーッ!!!)
《な、何ですか!?…頭の中に何が…》
ゆいの頭の中に何かが入り込んでくる。すると、あかりの昔体験した過去の出来事が再生された。
「ひっぐえっぐ!」(ポロポロ!)
《あかりちゃん!…えっ!?…泣いてる…》
「や〜い!ここまでこいよ〜アッハッハ〜!」
「ま、待って〜」
《あかりちゃん…どうやら男の子にいじめられているみたいなんですね…ひどいことをしますね…》
「…!!コラ!アンタ達!!またその子泣かして!その子のもの返しなさい!…返さないと…!」(ゴゴゴ…!)
「は、はい…!…ほ、ほらよ」(ビクッ!)
「あ、うん…!」
すると、いじめっ子達はあかりのものを返し、一目散に去っていった。すると声を掛けた細長のバックを背負った道着を着た女性がゆっくりあかりに近づいてくる。
《あれは、薙刀の方?女性》
「大丈夫けんの?」
「う、うん。大丈夫。庇ってくれてありがとね。お姉ちゃん…」
「いいわ別に…でもあいつらも懲りないわね〜」
「きっと私のこと嫌いなんだ。だからいつも…」
すると女性は首を横に振り、あかりにこう伝えた。
「逆よ!本当はアンタの事好きで遊びたいんやろ!」
「…!そうなの…!でも…うぅ…!」
「あ、ほらまた泣いて!はいハンカチ!」
「…ありがとう。」
「もうそんな悲しくて辛気臭い顔やめとき〜な。女の子なんやから笑っとかないかんけんの!ほらニカーッ!」
「…ニー!」
「まだ足りへんがね!…ほら!!ニー!!」
「ニー!!」
「そーそ〜!!やればできるやんか!それに女の子は簡単に涙見せるもんやないんよ。人に笑われようといつでも明るく、元気に!それが一番やねんがね!」
「元気にか…私できるんかな!?」
「ええきっと出来る!私も、いつも明るく過ごすことがモットーやから、あんた名前は?歳はいくつなん?」
「あかり。歳は5歳。」
「あかりちゃんね〜!明るい名前やないの〜大事にしとき!せっかく親がつけてくれた名前なんやし!アンタもいつまでもメソメソしていたらだめやで!人は笑ってナンボやねんがな!アンタは笑わんせ!あかりの名前が似合うような子になってね!」
「うん!…ところでお姉ちゃんの持ってるそれ何〜?」
「ああ…これね〜薙刀ちゅうやつ。あかりちゃん、牛若丸と弁慶の話知ってるやろ?」
「うん。それはご本で知ってる。」
「んで私はその弁慶さんの持ってる武器を習ってるんや。とは言っても刃物とは違って木で出来てる。でもそれを人にぶつけていじめたり、蹴落とすために習ってるんと違う。これは自分の大切な人を守るためでもあるし、そのために自分が強くなるためにやってるようなもんやね。昔…うちもあかりちゃんみたいに弱かったし、よく泣いてたよ。」
「お姉ちゃんみたいな人が!?そうなんだ!?…なんか意外!」
「そんな時、これじゃああかんな思って近くの薙刀道場に通って、薙刀術習ってそこから中高もずっと薙刀一筋って事!後は笑顔は欠かさず大切って事やね!とにかく人ってのは笑える生きもんやから生きてるうちは笑っとかなあかんよ。死んでもうたらもう笑えんようになる。今のうちに笑うもんよ!!笑ったもの勝ち!!」(ニッカリ!)
《その気持ち…なぜかわかります。私も似たようなもので薙刀を習いましたから…本当明るい人ですね。そうですかそれで薙刀の話をして興味が湧いていたんですね〜おそらくあかりちゃんが明るくなったのはこの人のおかげなのでしょう…!》
「…うん。…うん!そうだね〜私もいつまでもメソメソしたらいけないよね!わかった私お姉ちゃんみたいに強くなる!それで困っている人たちを助けれるような人になりたい!それといつでも笑えて笑顔でいる私になりたい!」(ニコ〜ッ!)
「お〜いい笑顔するやんけアンタ!!期待してるで!!」
「うん!あ…ところでお姉ちゃんの名前は…?」
「名乗るほどのもんじゃないよ〜私の名はね…」
『誰よりも強くなって活躍してたら私の名前はいつか日本中、世界に届いて分かるもんやから…私は自分から名前は教えへんねん!!』
〜時は過ぎ…〜
「うぅ…いたい!!…頭が!!…あぁ…!!」
(…やっぱり頭が…もうこれで…でもフネばあちゃんに伝えることは伝えた!…後は任せたよ!!…ゆいちゃんを…うぅ!!)
《あかりちゃん!!…しっかりして!!…ああ無駄なんですよね。これは記憶の中なんですよね…でも…でも!!(ポタポタ!)》
「あかりちゃん…来てないな〜今日会うって約束したのに…あれ?」
「…こんにちは…ゆいさん…」「…こんにちは…」
「あ、こんにちは。あかりさんのお父さんとお母さん。…お久しぶりです。…あの…どうかされましたか?…あかりちゃんは。」
「…あかりは…今朝…亡くなった…」「…うぅ…あかり…!」
「…………え?……」
《…だめ、一度体験したこととはいえ、涙が止まりません!》
(聞いたかねーああ聞いたーあかりちゃんだったかね!ー小児ガンの子ー今日の今朝亡くなったらしいんだよ!!ーかわいそうに!!ー元気な姿をよくここで見かけたのにね)
「嘘…うそよあかりちゃん……嘘…だよね…昨日あんなに元気だったのに…今日も会うって約束したのに…いや…そんなのいや…いやーーーーー!!」(ポタポタ!)
「…くっ!!…なんで…!」(ポタポタ!)「あ、あぁぁぁ!!」(ポタポタ!)
《…あかりちゃん、さぞこの時両親も大変辛かったんでしょうね…私もです…!(ポロポロ!)》
「…これを…」「…もらってあげてください。」
「…これは……!あかりちゃんの髪につけていたひまわりのヘアピン……それとあかりちゃんの写真!」
「…あかりからゆいさんにと…」「手袋のお礼ですと…」
「あ…ああ…!…あかりちゃん…!!」
《…くっ…》
(もう!ゆいちゃんのお父さんお母さんおばあちゃん!…せっかくゆいちゃんの顔を見に来たんだからなんか元気づけてあげなよ〜!もうこんな時ぐらいだよ!元気そうで良かったと笑い合えるの!だから笑おうよ!!笑っていたら明るく前向きになって元気になれるよ。気持ちもスッキリするから!っね!!)(二パ〜ッ♪)
「う…うぁぁぁぁああああああ!!!」
《…うぅ…ああぁぁ…!》
・・・
・・
・
「……はっ!」(フッ!)
「あ、気付きました?どうでしたか〜?」
「…はい…導き人さん…思い返すととても辛かったです。でも悲しいからという理由で止まるのはそれではダメなんだと…でも私は…うぅ…」(ポロッ!)
「あれま!」(あらあら泣いてしまいましたか〜♪そうですか〜そんなに涙が出るほどの体験でしたか…♪)
ゆいはあかりの事を思い返し、涙を流していた。だがあかりはゆいに悲しみや苦痛を与えるために亡くなったのではない。それには意味があることをフネから教えられ、その言葉でゆいは立ち直ることができた。ゆい自身はそれを自覚していたが今回の試練で再びあかりの出来事を見て、涙はこみ上げてきた。その様子を導き人のオロアは非情にも選択を迫る。
「ではどうしましょうか!?そんなに辛い思いをするのでしたら〜次の試練をあきらめますか〜?」
ゆいは導き人の発言に対し、泣くのはすぐに止めてまっすぐ前を見つめた。
「いえ、いつまでも泣いてそこで進まないわけにはいきません!…あかりちゃんの分まで…私は…私は!!…行きます。必ず辿りついてみせます!その【paradiso】という世界へと!」
ゆいの意思は固かった。今回の試練であかりから命の尊さ、そして日々を前向きに生きることの大切さを学んだ。そして、【paradiso】へ絶対にたどり着いて見せるという意思表示を導き人に伝える。するとオロアは笑みを浮かべ、こう語った。
「わかりました〜♪では張り切って次の試練パート2!!どんどん行ってみましょ〜う♪よっ!どんどんパフパフ〜♪」
「えっ!?…忙しくないですか…?」
「はい♪こちらも忙しいので〜!そ・れ・と・も・辞めますか〜?」
「……」(…この導き人のオロアって子…割とせっかちなのですね…)
「はい♪よく言われます〜♪!別に言われても結構ですよ〜♪」
「…!!心が読めるんですね!……さて…」
ゆいは次の試練に足を運ぶのに躊躇していた。もしかしたら先ほどよりも悲しい出来事が待っているかもしれないと思っている様子であった。