GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》  

A.:GiorGia

〜ダブルフェイス〜黒豹と法と秩序の契り編〜



 第6話:プロローグ〜優花編 Part2




プロローグ〜優花編 Part1の続きです。



《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)

          


〜???の世界〜(【paradiso】歴1999年12月15日。)

〜カラーン…カラーン♪

「zzz……!!……!?…な!?……一体何よ!?ここは!?」

優花は目を覚ました。中はとても狭く、周りには白い薔薇が囲まれており、顔の前にはドット状の穴があった。豹策は、一度前の扉を押し出してみる。

「…ん?開くわね…」(ガタン!)

優花は扉を開け、身体を起こして周囲を確認する。下を見るとそれは案の定、棺で眠っていた。周りは空間は薄暗く、もやがかかった空間が広がり、目の前には白い道が続いていた。そして天井は高さが見えない。その時優花は、何かの物音と気配を感じ、周囲を警戒する。

ガタッ… ゴゾッ…

「……だ、誰かいる!?」

「呼びました?」(ひょっこり!)

「…!?」

「……ん?」

「ええ!?こんなとこにお、女の子〜!?」

「やっほ〜♪」(ニパ〜!)

「…ああどうも…」(って!?何でよ!?そもそもここ一体どこなのよ〜!?)

「こんにちは〜♪初めましてってやつです!」

優花は目の前の少女を確認すると、それはシルバーブロンドの髪色でロングヘアー、肌は白く、胸元に十字架のワンポイントに青白のワンピースを着た笑顔の一人の少女がそこにいた。そして少女はすかさずニコニコと挨拶をした。

「私の名前は、導き人の一人、オロア!よろしく〜♪…そしてあなたをユートピアの世界へと勧誘に来ました!」

「……え?…ユートピアって何よ!?…つか一体ここどこなのよ〜!?」

「あらあら割としっかりしている印象で鈍ちんなのですね〜♪」(クスクス!)

「むっ!?」(このガキンチョ〜!!)

「ではではお教えしますね〜♪…後私はこう見えてもう何千年と生きていますので子供じゃあないんですよ〜♪」

「心読むな〜!!…って!?何でわかったのよ!?」

「ユートピアの世界とはいわゆる天国と地獄ではないもう一つの死後の世界があります。あなた達の現世で【paradiso】という言葉聞いたことありませんか〜♪」

「…ないわね。…そっか…やっぱ私…あの時死んでいたか〜…」

「はい♪あなたはあの時、現世で犯罪組織の親玉の方にハンマーでどつかれた結果死にました〜♪」

「そんな物騒なことを平然と言わないの!!…たくっ!!親の顔を見たくなるわ!!」

優花はオロアの自由奔放な様を見ては、碌な育ち方をしていないと感じている。するとオロアは笑顔に素直に答えた。

「ふっふ〜ん♪そこはご想像にお任せしますよ〜♪槇原優花さん♪」(ワクワク♪)

「…!!…なんで私の事を知ってるのよ!?…心も読めたりするし、なんか薄気味悪い子ね〜!!」

「はい♪!!…私たち導き人にはあなたの現世での行いについての記憶を全て知っていますよ〜!も・ち・ろ・ん!あなたの兄の宣行さんのこともですよ〜!」

「!!…はぁ…もういいわ…んでオロアでいいのよね?…その【Paradiso】というのは…一体何処にあるのよ?」

「こちらになりま〜す♪ご案内しますのでしっかりついて来てくださいね〜♪」(ピューー!!)

「!!…足早っ!?」

「早くしないと日が暮れますよ〜♪」(ダダダダっ!!)

「…ダァ〜もう待ちなさいよ〜!!」(タッタッタ!)

「〜♪」(ふっふ〜ん♪なかなかしっかりしてはいますが頑固頭といえばいいのか脳筋と言えばいいのですかね〜♪)

優花は走り続けた。すると視界は真っ暗闇になり、目的地に辿り着いたようだ。

「…ハァ…ハァ…だいぶ走ったな…」

「ご苦労様です優花さん!!ではでは〜…あれをご覧くださ〜い♪」

「え?…なっ何よあれ!?」

優花はオロアに指を刺された場所を見る。そこにはスポットライトのような光が三つもあり、先に続いている。その優花の問いにオロアは答える

「あれは現世の世界の光の一部です!光を浴びると、あなたの生前の様子だとか、その他の人の身体を借りて、いろんな追体験できたりと…まあとにかく色々な価値観に触れるのがありますね〜♪あ、特に害はないのでご安心ください!」

「へぇ〜…不思議ね〜…!?」(クルッ!)

「〜♪…えい!」(ドン!)

「……!?ええっ!!」(ビュー!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「…ちょっちょっと不意打ち〜!?……」(シュン!)

優花はオロアの不意打ちを受け、光の中へと消えていった。オロアはその様子を見てはこう思った。

(現世では刑事さんの妹さんですか〜!!…生きのいい人ではありますが、その威勢もどこまで続くか実物ですね〜♪)

・・・
・・



🎼Back Ground Music 》》》



〜ある高校・6月上旬〜

《!!…ここは一体…?…あっ!?もしかしてあの人!?》

優花は誰かの高校時代の記憶を観測しているようである。そこに見覚えのある人物の若かりし日の姿があった。

「……」(スタッ!…タン!)

「よぉっ!!」(トン!)

「!?…ああ。お前か…新聞部の斎藤…」

《やっぱり霧矢さんだ〜!!…へぇ〜!昔から顔が濃い人だったのね〜!!》

そこには当時高校三年生の霧矢がいた。三木川の事件を解決した後、新聞部の者達と繋がりができたからか、斎藤が仲睦まじく話しかけにきた。

「あはは!…相変わらずクールだね!…また屋上に行くのかい?」

「…ああ。昼休みになると…どうしても行きたくなるんだ。」

「…天野の事だよね?」

「…ああ。」

《…天野?…もしかして霧矢さんの彼女なのかな?》

優花は天野という名前に、霧矢の彼女であるという事を感づいていた。会話の内容から失恋やら別れでもしたのだと感じていた。

タンタンタン!

「……」「……」

「?…ついてくるのか?」「まあね…なんだかんだ君を一人には出来ないし…そうしていたら天野に怒られるからね〜!!」
 
新聞部の斎藤は、霧矢と一緒についてくる様子である。話していくうちに屋上の扉が見えてきた。

「着いたな…」「じゃ!お先〜!!」

バタン!

「あ、斎藤〜!それに!?」「あら、霧矢くんも一緒じゃあない〜♡」

「あ。井山、大宮!来てたんだ!?」「…新聞部勢揃いってやつか…」

そこには先客として、新聞部の女子生徒である井山と大宮が見えていた。そして霧矢の姿を見たからか、すかさず声を掛ける。

「ねえねえ!?…霧矢くん!一緒にご飯食べようよ♪」「一緒にどお?」

「…一人で食べ…!?」

「固いことは言わない!今日は楽しく!」「さっ!一緒に食べよう!」「歓迎するわね〜♪」

「…わかった。」

《へぇ〜!…霧矢さんって昔からクールだけど、兄貴は鉄仮面とか言ってたけど、こういう友達がいたんだね〜!》

優花は、霧矢の高校時代の交友関係を見ても、理想的な高校生活をしているようにも感じていた。

もぐもぐ…

「あっ!…そうだヴェノ君!…作りすぎたからはいこれ!!」「私もよ…はい!ヴェノ君♡」

《プッ!…ヴェノ君って…!!》

井山は霧矢をあだ名で言いながら、サンドイッチを一枚渡し、大宮もおかずの玉子焼きを渡した。あだ名で言われ慣れていないからか、不機嫌そうにいった。

「…霧矢で結構だ。妙なあだ名をつけるな。」

「え〜?」「私はいいと思うけど〜?」「僕もだよ!なんかコードネームっぽくてカッコいいし!!」

《あ〜!なるほどあだ名ね!?…私も何かあだ名で言われたかったけど、そんなものなかったからね〜♪》

優花は仲睦まじく会話しては昼休みを謳歌する霧矢が輝いて見えていた。その様子を暖かく見守っていた。

「…さて、そろそろやるか…」

ペラペラ…

「おおっ!?早速勉強かい?」「真面目ね〜!」「流石はマトリを目指すために薬学部に入ろうとする男は違うね〜!!」

霧矢は参考書を持っては志望する大学の過去問の参考書を見ては勉強していた。それだけ目標である麻薬取締官への憧れは強いと感じていた。

「……」

「ねえ?霧矢!?…もし良かったら…私達も…」「手伝うわよ〜♪」「いいかな?」

「…どうしてだ?」

霧矢はその疑問に対して、新聞部一同はこう言い放った。

「「「仲間だから!!」」」

「…!!」

《熱いわね〜!…なんか青春ね〜♪》

新聞部一同の目は、本気だった。おそらく天野がいなくなってから、自分を信頼してくれる者がいなかったからか、一人にはさせてやれないという使命感もあったのだろう。その様子を見ては霧矢もうすら笑みを浮かべては言った。

「…ついて来れるのか?」(フッ…)

「うん!」「もちろんよ〜♪」「任せて!…こう見えて新聞部は成績上位の猛者ばかりだからきっと君の力になれるよ!!」

「…わかった。」

《霧矢さんいい友達を持ったわね〜!…というかこの新聞部の人達、なんかまるで霧矢さんとその天野って人に感謝しているようね。》

・・・

その後ある休日…

ピンポ〜ン!

「…はい。…お前達!?」

「ヤッホ〜!」「ウフフ♪遊びに来たわ〜!」「こんにちは!ヴェノさん!」

「…はぁ…一体何のようだ?」

「今からプールに行くんだ!」「良かったら…」「霧矢くんもどお〜?」

「…プールか…別に構わない。今日は暑いからな…」

「やった〜♪」「決まりだね!」「ウフフ♡嬉しいわ〜ヴェノ君♪」

「ヴェノというな…」(…まあいいか。…それに仲良くしないと天野も報われないだろうしな。)

《へぇ〜!…霧矢さんって意外と人付き合いがよかったのね〜!》

〜市民プール〜

バシャバシャ!!

「……」(バシャバシャ!)

「へぇ〜!霧矢って泳ぐの早いのね〜!」「あら素敵〜♪」「やるね〜!」

《泳ぐのも早いのね〜!霧矢さんって何でもこなすいい男って感じね〜♪》

霧矢は市民プールで人気のない場所を思いっきり泳ぐ。そしてしばらくしては休憩する。

「…ふぅ」

ピトッ!

「!!…大宮」

「…ウフフ♡…ちょっと大宮姉さんと話をしない?」

《…大宮さんか〜!…なんか色っぽい人ねぇ〜!…あの漫画に出てきそうなセクシーなモッコリ美人って感じよね〜!…霧矢さんと並ぶと絵になるわ〜!》

霧矢の頬にスポーツドリンクの缶を持ってきた黒い水着姿の自称セクシー担当新聞部部員女性の大宮が声を掛けてきた。

「まあ別に構わない。…いいよ」

「ウフフ…じゃあ失礼するわね」

ピトッ!

「…近い」

「気にしない気にしない♪」

大宮は霧矢に接近してはボディタッチする。そして肝心な事を話し出す。

「…ねえ。霧矢くん?」

「何だ?」

「…あなたって…あの子の事。……天野の事…好きなの?///」

「…!!…なぜそんな事を聞く?」

《キャ〜!!…これってこれってまさかまさかまさか!!??///》

自称大人のレディーな優花はこの会話から、大宮は、霧矢に好意を抱いているようであった。

「…もう鈍感ね〜!…こんな事を聞いてもまだ分からないの〜?…ウフフ♡」

チュッ♡

「!!…はぁ……わかった。……思い切って言うゾォっと」

「!!…どうなの?///」

「…好きだ。…天野のこと…」

「!!…そう…」(シュン…)

「…すまないな」

「…いいのよぉ〜…別に…!!…うぅ…グスッ!!」

「……」

なでなで!

「!!///」

《き…霧矢さん!?///》

大宮は試練を実感しては涙を流す。それを見ては、見過ごせなくなったからか、霧矢は大宮の頭を優しく撫でては慰める。

「…男として…泣き止むまで付き合う」

「…もう!…それが振った男の台詞かしら!?///…でも…悪くないわね。…ウフフ♡…グスン…」

《…へぇ〜大人ね〜!霧矢さんって…でも…大宮って女の人には少し同情するかな〜…》

「…はぁ…振られたわね〜…あ、そうだ霧矢くん。…あなたに渡したい物があるの」

「…何だ?」

大宮はそういうと、荷物から何かを出した。それは一枚の封筒であった。

「…ウフフ♡開けてみて♪」

「…!?…これは…撮っていたのか!?」

その写真は、天野と霧矢が二人で過ごしていた時、ブラックコーヒーと水を飲んでリラックスしていた時の写真であった。

《へぇ〜!この人がもしかして天野さんかな〜!?…結構可愛くて明るそうな人ね〜!…きっと今…すっごく美人になってそうね〜!》

ペラッ!

「…ふふ♡…伊達に新聞部は伊達ではないからね〜♪…どう?」

「…悪くないな。…安心する」

「でも…霧矢くん…あなたも笑うのね〜♡…素敵よ…本当に♪」

「…褒め言葉として受け取っておくよ。…だがありがとうな」(フッ…)

霧矢は天野の写真をもらったからか、嬉しそうに微笑みを浮かべていた。すると大宮は嬉しそうに言い放った。

「…どういたしまして♡…大事にしなさいよ♪」

ダキッ♡

「!!」(…はぁ〜…等価交換ってやつか…)

「…ふふ♪」

《霧矢さんてモテモテね〜♪…まあ高校生の頃からこんなソース顔の顔の濃い人いると誰でも惚れそうだもんね〜♪》

二人はお互いに抱きしめあった。そして夕陽が見えてきた。

🎼Back Ground Music 》》》



〜夕方〜

「夕方だね〜!」「ええ…本当に…まさにこれは…」「青春ってやつだね!」

「…今日も1日が終わるか…」

《夕陽の小川かぁ〜!…確かに青春って感じがするわね〜!!》

プールを後にし、霧矢は新聞部一同と橋に延びる小川の景色を眺めていた。すると、井山が何かを渡してきた。

「は〜いみんな!…これ!」

「ん?…コンビニチキン?」「どうして?」

「お腹が減ったから!!…はい霧矢も〜!泳ぎ疲れてお腹ペコペコでしょ!?」

「…まあな。…頂こう」

《すっかり仲良しね〜!…霧矢さんって不器用なとこもあるけれど、それでも人付き合いは嫌いってわけじゃあないのね!》

優花は霧矢の高校三年の学生生活を見ていくうちに、こう見えても人付き合いはする性格の人なのだと実感した。心なしか、頬も緩んでいる様子である。

「でも。もう来年で卒業か〜!」「そうよね〜!私はとりあえず就職かしら〜♪」「うちのセクシー担当だからモデル関係とか行きそうだよね〜!大宮って!」

あら〜♡それってどう言う意味かしら〜♪!!?? い、いだだだだ!!やっぱ女子プロレスラー目指した方が〜!?ぎ!?ぎゃーーーー!!!!

「……フッ」(天野。……離れ離れになっても。俺は。…俺達はこうして夕日を眺め。…仲良く馬鹿やって過ごしているよ。)

「んも〜う霧矢く〜ん笑わないでよ〜♪…でも、その顔も素敵〜♡」

ダキッ♡

「…離れろ」

「だ・め♪」

「!!…へぇ〜!霧矢くんと大宮って付き合ってるんだね〜♪」「確かにお似合いかもね〜♪」

「…違う」「んも〜う照・れ・な・い・の♡」

《大宮さんて大胆ね〜♪…振られたのにそれでも掴んだら離さないと来たか〜!…でもそれでも動じない霧矢さんは…それだけ天野さんのことが好きなのね〜!…一途ね〜♪》

霧矢は大宮に抱きつかれながらもブレずに自分の意志を持っている様子であった。そして数少ない青春の時間はあっという間に過ぎていく。

・・・

〜8月・夏祭り〜

ピィーードンドン!!

「夏祭り〜♪」「ウフフ♡浴衣よ〜霧矢くん♪」「どうかな〜?」

「…いいんじゃあないか。…だが人混みが多い。逸れないようにな。」

8月になり、一同は地元の夏祭りに来ていた。心なしか、霧矢の青春は、三人の新聞部とか変わっていくうちに充実しては霧矢の学生生活は輝いているようにも見えた。

「おっ!?…金魚掬いがあるね〜!」「綿飴もあるわね〜!」「たこ焼きも気になるかな〜!」

「…あまりはしゃぐな。…高校生なんだから少し落ち着け。」

「え〜!?」(ブーブー!)「今くらいよ〜♪こんなことできるの〜!」「霧矢!…あまり固いこと言わない!」(めっ!)

「…はぁ…」

《霧矢さんは落ち着きすぎだね〜!…もう少しはしゃいでもいいと思うのにな〜!》

優花は霧矢の様子を暖かく見守っている。するとそうしていくうちに、大宮がベンチに座っていた霧矢に対し、何かを持ってきてくれたようである。

「はい霧矢くん♪…ラムネよ〜!」

「…ああ。…すまんな」

「どういたしまして…ふふ…」

ストン…

「…隣に座るのか?」

「ええ…」

《へぇ〜!大宮さんも振られたのに猛アタック続けるのね〜!》

大宮は座っては、霧矢にこう答えた。

「…もう半年もしないうちに受験ね」

「…そうだな」

「あの子、どうしているのかしら?」

「…わからん。…元気だといいけどな」

霧矢は天野の安否を気にしていたようである。すると、大宮は大胆にもこのように言った。

「…もしかして、違う男ができていたりしてね〜♡」

「…どうだろうな。」

「んもう!…そこは絶対に天野は誰にも渡さないって言わなきゃ!!」

「…そんなこと、こんな人混みの中では言わん」

「ウフフ♡意外とウブなのね♡」

ドーーン!パーーン!!

「…花火か」

「そうね〜♡ウフフ♡」

チュッ♡

「!?」

「ウフ♡どう?」

《あれま!大胆なことするわね〜!///》

大宮は花火が上がった瞬間に接吻を交わす。霧矢は少し驚いた表情をするが、すぐに抑える。

「…別に」

「もう、素直じゃあないんだから〜!…天野とはキスはしたの?」

「!?」

🎼Back Ground Music 》》》



大宮は切なしげな表情で霧矢を見つめている。すると、霧矢は少し寂しげな表情で答えた。

「…していない」

「…告白もまだだったのね…?」

「…ああ」

「…切ないわね。なんだか一方的な別れになってしまったようで」

大宮は少し落ち込んだ表情をしてそういうと、霧矢は前を向き、こう言った。

「…だが、天野は…死んだわけじゃあない」

「…え?」

「…もし俺が…あの事件を公表していなかったら…天野…アイツは三木川と関わりのある麻薬の密売業者の奴らに危害を加えられていたかもしれない。…だから…俺はこの別れを…後悔していない」

「!!」

《あの事件…?…え?天野さんって一体…それに三木川って…!?》

キィーーーン!

「!?…頭の中に何かが!?」

優花の頭の中に何かが流れ込んできていた。するとそこには記者会見がされていた。

🎼Back Ground Music 》》》



「…この度はウチに在籍している生徒がこのような不祥事を起こしてしまい、誠に申し訳ありませんでした!」

パシャパシャ!!

《ええ!?ここって学校!?》

そこには霧矢の在学している高校の教員と校長と理事、そして三木川の両親が記者会見をしては謝罪していたようである。そしてマスコミや報道関係者は更に追求する。

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「三木川さん!…あなた達の親としての教育は…一体何を考えているつもりなのですか!?…なぜ麻薬所持という道に歩ませたのですか!?」

《!?…ま…麻薬!?…それに三木川って…あの時、犯罪組織の親玉の男の助手席に座っていた名前と…同じ名前…!?》

「この度は本当に申し訳ございませんでした」

「まさか私の娘が隠れてそのようなことを…本当に皆様にはご迷惑をおかけしました。娘にはそれ相応の社会的責任の措置を取らせていただきます!」

「こちらもウチの生徒がこのような事件を起こしてしまい申し訳ございませんでした」

パシャパシャ!

その後、スキャンダルでもこの事件の全貌は大きく報道され、話題となった。それに飽き足らず、マスコミによる騒ぎもあり、炎上するが如く大きく取り上げられた。

・・・

《そんなことが…霧矢さん…あなたの学校生活って…あれ?…!?あの新聞に載っているのって…霧矢さん!?…うわ〜!全然知らなかった!》

「…霧矢くんすごいわね〜!」「あの三木川が黒幕だったとはな〜!!」「麻薬か〜!!」「…それで天野…濡れ衣着せられた挙句に転校したってことかよ…」

「…」

(こうなってしまっても、学校生活は変わるわけではない。そして、学校側は追求されたとはいえ逃げていくばかり…解決には至らない。)

《そっか…霧矢さん…その事件があったからマトリをやっていたのね〜!……辛かったのね…苦しい思いをしていたのね。……だから、あんなにクールな……》

優花は申し訳なさそうな表情をして記憶を見つめていた。すると霧矢はそのまま屋上へと向かい、空を見上げる。

「……天野…お前が引っ越し。…あれからどれだけの月日が経ったのだろうか。…でも俺は…夢を諦めない…必ず」

《お前の人生はまだ終わってはいないんだ。俺も諦めず、前に進んでいく…約束だ!》


・・・
・・


「ハッ…!?」

「あっ!?…気づかれましたか〜?」

「…ええ。…そっか…霧矢さん…高校時代。……あんな事件に関わっていたのね…そんな事情があったのね。…あの人も青春を送れたつもりが、あんな闇にも関わりがあったのね」

「そうですね〜♪人は見かけによらないってやつですよ〜♪」


優花は第一の試練で霧矢の事を知り、ただの青春を過ごすだけではなく、表とは真逆の裏の事情もあることを知った。そして自分の夢を実現しようとする自己実現の意思を優花は学んだ。そして霧矢自身にも、愛する彼女がいるということも知った。するとオロアは急いでいたからか、次の試練を進めようとする。

「ではでは〜…第二の試練張り切っていきましょ〜う♪」

「…えぇ!?…早いわね〜…」

「はい♪…もしかして…歳を取ってるわりにビビってるんですか〜?」(プークスクス!)

「……むっ!?」(カチーン!)


B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?



「上等じゃあないのっ!!こうなりゃあ〜やってやるわよ!!」

「ちょろいですね〜♪…ふっふ〜ん♪」

「おっとその手に乗るか〜!!そのふくよかなほっぺを伸ばしてやる〜!!」(クワッ!)

ヒョイ♪ ドン!

「!!…ええっ!?」(ビューーン!!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「…むか〜!!」(シュン!)

優花はオロアのほっぺを触ろうと襲いかかるも容易く避けられ、軽くヒップアタックをかます体当たりをお見舞いされ、悔しそうな表情をしながら身体が吹き飛ばされ、光の中へと消えていった。オロアはその様子を見てこう思った。

(第一の試練はクリアしましたね〜♪…次の試練が一体どうなるか…見物ですね〜♪…ふっふ〜ん〜♪…意外と精神的に幼いところがあるんですね〜♪)


・・・
・・



🎼Back Ground Music 》》》



〜ある家〜

《…ここは…?…あれ?…でもなんか見覚えがあるような…》

優花は気がつくとそこには古民家の家であり、その周囲の様子から、どこか懐かしく感じていたようである。するとそこに一人の少女が出てきた。

「千尋〜!そろそろいくわよ〜!」

「あ、はいお母さん!」

《…今度は何処かの親子の記憶。…でも何でだろう…なんか見覚えがあるのよね…》

タッタッタ…

「…ねえ…お母さん?」

「……」

「?…どうしたの?」

「…いえ。…何でもないのよ。…何でも…」

「?」

ダダダダダ!!

「!?いたぞ!!」「捕まえろ!!」「逃すな!!」

「!!千尋!!行きなさい!!」

「!!え!?…ちょ、ちょっとお母さん!?」

「樋川○○だな!…お前を殺人容疑で逮捕する!…署まで来てもらおうか。」

《!?…え……樋川…って…ま…まさか。…じゃああの千尋って子は……樋川さん…だったの!?》
 
樋川の連れていた子供は千尋という名前で当時6歳の年齢であり、後に優花の恩人になる樋川本人であった。  

「!!お母さん!!…おかあさァーーーン!!!!!」

警察は、千尋の母の身柄を拘束し、そのままパトカーに乗車させては車を走らせる。するともう一台のパトカーも、千尋を車内に乗せようとする。

「…お母さんのとこに行くかい?」

「いく!…一体お母さんが何したの!?…何で捕まらないといけないの!?」

すると、警官が重々しくこのように答える。

「それは言えない。まだ小さい君には言えないことだよ…」

「!?…そんな。…なんで…」

《!!樋川さん…》

・・・

ある警察署内

「…事実を認めるんだね?」

「…はい。…間違いありません。…私があの人を…夫の命を奪ったあの人を…私は…この手でっ!!…でも…娘の千尋には…どうか内緒にしておいてください!」

「…身の回りに親戚の方は?」

「…おりません。」
 
樋川の母親はそういうと、警察官は首を横に振ると重く口を開いては言い放った。

「…仕方ありませんね。あなたの娘の千尋さんを児童養護施設に預けます。…よろしいですね?」

「!?………わかりました……うぅ…グスッ!!」(千尋…ごめんなさい…本当にごめんなさい!!)

《…そっか…樋川さんは…児童養護施設に預けられてはこうしてお母さんとも離れ離れに。…でもあんなに優しそうなお母さんなのに…そんな過ちを犯すなんてね…》

優花はその様子をじっと見守っていた。自分が幼い頃に世話をしてくれた恩人の樋川の両親が、取り返しのつかない過ちを犯しているという過去を持っていることを知った。
 
・・・

〜その後、児童養護施設内〜

「…そっか…千尋ちゃん両親いないんだね…」

「う、うん。…お父さんもお母さんも…私が小さい頃に病気でね…」
 
樋川は一緒に過ごしていた住居人と話していた時であった。自分の生い立ちを聞かれては、この歳になって自分の母親が何をしているのかを知り、それを他人に言えるわけもなく、はぐらかすように答える。

「そうなんだ…大変なんだね。」

「…うん。…でもいつまでもクヨクヨはしていられないんだ。これからは、自分の力で生きていかないといけないから!」

《!!…樋川さん…まだ小さかった私のように元気で過ごしているように見せては、すっごく無理しているみたいね…》

スタッ! スタ…スタ…

「…うぅ…お母さん…お母さァーーん!!」(ポタポタ!)

《……樋川さん…》

千尋は泣いていた。すると、更に追い打ちをかける知らせが届く。

タッタッタ…!!

「樋川さん!!…ハァ…ハァ…大変よ!!」

「!?…先生…一体どうしたんですか?」

教員の口から、樋川の両親の事について話す。それは、絶望を与える知らせであった。

「あなたのお母さんが…急性の脳梗塞で…今朝…刑務所内で亡くなったらしいの…」

「!?………え……」

「ごめんなさいね…でも、本当なの…うぅ…」

「…そ…そんな……うぅ…グスッ!!…わぁーーーーん!!!」

《!!…樋川さん…グスッ!…そうよね。…まだこんなに小さいのに…病気でお母さんが亡くなるなんて…本当に辛いわよね…》

優花は、まだ幼い樋川が突然の母の訃報を聞いては涙を流さずにはいられなかった。しかし、涙を流しても帰ってるのは自分の声だけしか響かず、非情にも母親が帰って来ることは決してなかった。

・・・

〜そして年数が経ち、千尋12歳〜

「…あの〜すみません」

「はい。…あの〜…どちら様でしょうか?」

「ああ失礼しました。あのですね…」「あの、私達は槇原という者でして、そちらに保護されている樋川さんという子の面会に来た所存であります。」

《…ええっ!?ま、槇原!?…じゃ…じゃあ…あれがまさか…私の父さんと…母さん…》

優花は記憶の中で自分の両親の顔を確認する。すると昔のアルバムを見ていたからか、その時の顔の面影もあり、自分達の生みの親の両親である事がわかった。すると聞きつけたのか、一人の子供が姿を現す。

「…あの…どちら様ですか?」

そういうと、児童養護施設の受付近くで当時12歳の樋川が訪ねてきた。すると槇原夫妻が笑顔でこう言った。

「あら。千尋ちゃん久しぶりね〜!とはいえ、まだ2歳だったから覚えていないようね〜!」「ああ。まあ仕方ないよな。…でも大きくなったな〜!見違えたぞ〜!!」

アハハハハハ!!!

∧( 'Θ' )∧・・・・・・・

「?」

《…私の両親て、私と兄貴とも似ているのか、笑うのが好きだったのね〜…やっぱり親子だわ…》

優花は当時の両親の様子を見ては、少し引いては冷や汗をかいている感覚になった。すると槇原夫妻は笑顔でこう伝える。

「ねえ千尋ちゃん!?…よかったら私達と一緒に住まない?」「歓迎するよ!!…それに俺達も子供がいないから、すっごく暇でな〜!!」

「!!…でも…私…」

千尋は悩んでいた。自分は、今は亡き母親の犯した罪を背負っている樋川の娘であるということ。その娘を引き取るということは、二人を不幸にさせるのではないのかと考えていた。すると、槇原夫妻はそれを見て安心させるかのように伝える。

「大丈夫よ〜!あなたの事情も聞いている!…安心して!!…こう見えても私達は一端の大人なんだからちゃんと責任持つわよ〜!!」「それお前がいうか!?…結婚してもまだ俺にべったりなくせして〜!」

あ〜!!言ったな〜!! お、おいその手刀チョップやめろって!!みんな見てるから!! 問答無用!!

バキィーーー!!! あんぎゃーーーー!!!!

「…ふふ。あはは!!!」(クスクス!)

「ん?」「おお笑った!!…でもいって〜!!」

千尋は面白おかしく笑った。そして槇原夫妻に笑顔でこのように言った。

「うん!…わかりました!じゃあ自己紹介しますね!…私は樋川千尋と言います。…もしよかったらその話…喜んでお受けします!!」

「!!そっか〜!!」「わかった!…じゃあこれからよろしくな!千尋ちゃん!」

「はい!」

こうして千尋は槇原夫妻に引き取られ、しばらく姓は槇原と名乗っては生活する。その生活ではいつも温かい家庭に包まれており、笑顔の絶えない生活環境であった。


🎼Back Ground Music 》》》


 
〜千尋14歳〜

「おばさん!洗濯終わったよ〜!」

「あら!!…いつもごめんなさいね〜!」

「いいんですよ!…困った時はお互い様です!」

「…へぇ〜!自分から進んで家事をしてくれるなんてな〜!!」(ニカニカ!)

千尋は槇原家に住み始めては、自主的に家事を一通りやってくれているようである。その様子を槇原夫妻は温かく見守っているようである。

「…でも…本当にいつもありがとうね〜千尋ちゃん!…わざわざ進んでやってくれるなんて〜!…ほらアンタも見習ってたまには自分の部屋とか片付けなさいよ〜!!」

「そうだなぁ〜!よし俺も千尋ちゃんを見習ってたまには部屋の掃除でもするか!」

そういうと、槇原父は立ち上がっては自分の部屋に入っては掃除機の音に布団叩きの音が聞こえてきた。どうやら千尋が来てから、家庭内の環境も変わってきているようである。

「千尋ちゃんは何かやりたいことある?」

「…う〜ん…今は特には…でもね。私、早く大人になりたいのはあるかな!」

「…えっ!?」

そういうと、千尋はこのように答える。

「早く大きくなって、折角お母さんが私を産んでくれたのだから。…今はもういないけど…でもお母さんの分まで…私がしっかり働いて、新しい家庭を持って…家族を支える立派な大人になる!」

「!!…千尋ちゃん…!!…そうね!…楽しみだわ〜!!…きっと千尋ちゃんならいい大人になれるわよ!…いつまでも応援してるわね!!」

「うん!…ありがとうねおばさん!」

「……ッ!」(千尋ちゃんは強いな〜!…きっと君ならいい大人になれる日が来るよ!…きっとね!)

《…そっか…それで樋川さん…こんなに辛い経験があって…私の事も、自分の境遇と似せてはこんな気持ちになっては支えてくれていたのかもしれないのね…本当に…ありがとう。》

優花は千尋の生い立ちを知り、そこには彼女の壮絶な人生がある事を知った。そして月日が流れる。

・・・

〜樋川千尋18歳〜

「…では…行ってきます!…今までありがとうございました!!」(ぺこり!)

「本当に…6年間もありがとうね〜!…おかげで助かったわ〜!」

「また何か困ったことがあればいつでも言ってくれ!」

「はい!…では…二人共…お元気で…」

スタ…スタ…

「…行ってしまったね…うぅ…ぐすん!」

「泣くな…と言いたいけど…俺も涙が出そうだ…!!」

槇原夫婦は、千尋を見送るも、涙が出てはお互い抱きしめ合いながら、別れを惜しんでいる。そしてその様子を傍観していた優花も涙が出そうになっていた。

《…お元気でと言いたいけど…それも叶わないのよね…うぅ…ぐすん!!…もう…貰い泣きしてしまうわね〜…》

〜そして歳月が流れる…〜

「…はぁ…もう私も三十路の歳か〜…早いものね〜…でも独り身なのね…まさか…私…不妊症だなんて…」

樋川は不妊症を患っており、彼氏もいたが不妊症の為、子供にも恵まれず別れては独り身の生活をしている。しかし、それでも彼女は決して一人ではなかった。

ピンポーン♪

「千尋ちゃ〜ん!!槇原夫妻と子供も一緒で〜す!!」

「〜♪…あ、は〜い!!…まあ宣行くん!!…大きくなったわねぇ〜!!」

「…ああ!樋川さん!…どうも!ご無沙汰です!」(ぺこり!)

《槇原宣行当時11歳》

《!!あ、兄貴〜!!…へぇ〜!!…昔の兄貴ってこんなだったんだ〜!》

優花は記憶の中で自分の兄の姿を見る。そこには当時11歳の槇原宣行の姿があり、意外そうにその光景を見ていた。

「あはは!…でもごめんなさいね〜千尋ちゃん!突然お邪魔しちゃって…」

「いえいえいいんです!…あら?…おばさんまた…赤ちゃんが…」

「ああ!…そうなのよ!でねでね〜!今度は女の子なのよ〜!…って…あ〜!!ごめんなさい!ごめんなさい!千尋ちゃん!!」

「え!?…な…何ですか?」

槇原の母は突然千尋に向かって謝り出した。すると槇原母はこう答える。

「あなたが不妊症で苦労しているというのに、こんな事を言ってしまって!…本当に御免なさいね〜!!」

「そうだぞお前!…おそらくお腹の中にいる赤ん坊も失礼な母ちゃんだって言っては怒っているぞ!!」

∧( 'Θ' )∧・・・・・・・・

「…親父…その表現は少し無理があるように思うよ…プッ!」

「…え?…すべった?…プッ!」

「もうアンタ〜!!そんな近くで話したらお腹の子供がびっくりするでしょうが〜!…プッ!」

アハハハハハハ!!!

「…ふふ!」(だって私にはこうして、こんな素敵な家族がいるんですもの…お母さん…私を産んでくれて…ありがとう!…本当に…ありがとう!!)

《…樋川さん…よかったですね。…じゃあお母さんのお腹の中にいる子供が私なのね…》

〜そしてさらに数年後〜

「…嘘だろ?……母さん!!」(ポタポタ…)

「……」

「……ぐすん…えぐ!!」(ポタポタ…)

《!!…え…ここは…病室…そうか…この時、兄貴はもう18歳で…私が6歳…2年前に父さんが病気で亡くなって、その2年後には…母さんも…》

病室には、槇原兄妹が母親が息を引き取った状態でベットに横になっている姿を見届けては涙を流していた。

「…くっ!!…父さん…母さん…これから俺達は…一体どうしたら…」

「…兄さん…」

「…こんにちは…」

「「!!」」

《!!…樋川さん…そうだわ。…それでこの時に、樋川さんが、私達を慰めてくれて…それで…私を引き取ってくれるように行ったんだわ。》

槇原兄妹は、樋川の姿を見ては声を出して挨拶した。

「…樋川さん。こんにちは…」(ペコリ!)「…こんにちは。」(ペコリ!)

「二人共…本当に辛そうね……うぅ…グスッ!!…あぁっ…槇原さん…!!」(ダキッ!)

「!!…樋川さん…」「おばさん…」

《…そうよね。…母親のこともあっては今までひとりぼっちで、12歳の時に私の両親に手を差し伸べられては…6年間もお世話になったのよね。…本当に、辛いことですよね…樋川さん…》

優花は樋川の流している悲しみの涙の姿をじっと見ている。この時、優香の心の中には、恩人の人には、耐え難い苦労があったのだとしみじみに感じていた。そして本題の場面に記憶に差し掛かる。

・・・

「…へぇ〜…宣行くんは警察官になりたいのね?」

「はい!…もう内定も決まっては進路は決めているんです。…でも…優花の問題です…アイツを一人ぼっちにするのは不安で…」

《…兄貴…》

宣行は警察官としての試験に合格しては進路は決まっているようである。すると、樋川は微笑んではこう言い放った。

「なら!…私の家に預けておきましょうか?」

「…!?…ええっ!?…いいんですか!?」

「もちろん!…それにあなた達の両親の方に…昔お世話になってね〜!…本当に…感謝したいくらいに…」(ポタポタ…)

《…そっか。…私の両親のこともあるし、樋川さん自身の境遇もあるから、お互い様といった感じで…でもありがとう樋川さん。おかげで私はすくすくと育ちました。》

「…わかりました。一度優花にも聞いてみますね。」

「…うん。…宣行くんも…どうか頑張って」

キィーーーン!

《!!また頭の中から何かが…》

するとそこには樋川が、道路前で倒れていた映像が流れ込んできた。


🎼Back Ground Music 》》》



とうりゃんせ〜♪

「……♪」(…うふふ♪…今日は久しぶりにあの子達…槇原ブラザーズに電話をかけようかしら〜!!)

《!?…ここは横断歩道…そっか〜!買い物帰りの樋川さんね〜!!》

優花は、樋川が今横断歩道に立っては信号待ちしている場面にいる。その時の樋川は何かいい事があったのか上機嫌であった。

「……」

ドン!!

「キャッ!…!!」

キキーーーッ!!

ダァーーン…シャラシャラ

《!!…樋川さん!!……これって。……!!まさか……樋川さんの…事故の…記憶》

「!!」「ああ!!誰かが撥ねられたぞ!!」「!!…ひどい怪我だぞ!!…それに出血もひどい!!」

「これはひどいな…」「でも…ここって信号があるよな…」

樋川はどうやら横断歩道の信号を無視し、そのまま身体を突っ込み車に撥ねられてしまった。しかしその目撃者の中には黒い服に身を包んだ、帽子を深く被りし怪しげな雰囲気のある者がいた。

《…?…あれ?…何かしら?…あの黒い服を着た男…電話で誰かと喋っているわね。》

その男は人気のいない場所である事を確認すると、相手先に淡々と話し出した。

「警察の公安に所属している槇原宣行の妹…槇原優花を保護していた樋川という女を処分しました。…はい。…わかりました。…次は槇原の兄の方の情報を探ろうと思います」

《!!…え…》

この時、優花は戦慄した。樋川が巻き込まれたのは決して事故ではなかった。何者かによる陰謀で、樋川は身体を突き飛ばされ、そのまま横断歩道に入り、車に跳ねられて死亡したという真実を知った。そして自分達の兄妹の仲を引き裂いた存在がいるという事を知った。

「…槇原…優花…それに…宣行…か…」

スタ…スタ…

《…一体…何が…くっ!!…うぅ…樋川さん…!!樋川さあーーーーーーん!!!!》


・・・
・・


「ハッ…!?」

「あっ!?…気づかれましたか〜?」

「…何であの男は…私達のことを…それに何で樋川さんが…でも…あれは事故じゃあなかったのね…誰かの陰謀で…樋川さんが…」

「そのようですね〜!」

優花は第二の試練で樋川の壮絶な過去を知った。そして自分の両親が樋川を引き取っては育て、まるで恩返しのように樋川が優花に手を差し伸べては育て上げては、慈愛の心について学んだ。そしてその最後に、樋川の死は事故死ではなく、誰かの陰謀によって始末されたということも優花は知った。するとオロアは急いでいたからか、次の試練を進めようとする。

「ではでは〜…次で最後の試練です!…張り切っていきましょ〜う♪」

「…いよいよね〜…」

「はい♪…準備はいいですか〜?」

「……」



B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?



「ええ!!やってやろうじゃあないのっ!!」

「…ふっふ〜ん♪」(そろーり〜♪)

「…そこだ〜!!」(クワッ!)

ヒョイ♪ ドン!

「!!…またもや〜っ!?」(ビューーン!!)

「ふっふ〜ん♪残念でした〜♪ではではいってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「…くっそ〜!!覚えてなさいよ〜!!!」(シュン!)

優花はオロアの奇襲を勘づいたのか避け、捕まえようとする。しかし、それを容易に避け、再び軽くヒップアタックをかます体当たりをお見舞いされ、またもや悔しそうな表情をしつつ、光の中へと消えていった。オロアはその様子を見てこう思った。

(いよいよ最後の試練ですね〜♪…ふっふ〜ん♪どうなることでしょ〜♪)


・・・
・・



🎼Back Ground Music 》》》



〜ある高校〜

「…!!ここって…高校ね。…あれ?…でも初めて見るわね…」

優花はその光景を見て感じたのは、見覚えのないどこかの高校であるという事である。そこに見覚えのある顔があった。

「…やあ高志くん!」

「ああ上谷くん!…早いね!」

《お〜!高志くん!…へぇ〜!じゃあここは美術の高等学校といったとこね〜!…確かに石膏のデッサンが多いわ〜!》

優花は今度は高志の高校時代の思い出を傍観していた。そこには友人の上谷が声をかけていた。

「…どう?進んでる?」

「…う〜んそれがなかなか進まなくてね〜!…高志くんは?」

「僕もだよ〜!…う〜ん…特に手を描くのってすごく難しいよね…」

「…手を?…一体何を描いてるの?」

「…ちょっとモナ・リザのような絵を描きたくてね。その為に手を参考にしたかったんだけど、なかなか上手く描けなくてね…」

《…へぇ〜…モナリザのような絵をね〜!…なんか上谷くんって変わってるわね〜…》

優花はこの上谷という高校生の様子を見ては、少し興味が湧いているようであった。

「…う〜ん確かに手を広げるものとかは影の影響もあっては、それを表現するのは難しいかもね…」

「だよね〜!…高志くんは、人物画を描くときに、特に力を入れるところはどういう所なんだい?」

上谷は高志にそう質問した。すると、高志はこう答える。

「…僕は、やっぱり笑顔とかかな。」

「…笑顔…何で?」

「…だってその方がなんか気持ちが明るくなるからさ!…気分が沈み気味なのは、なんか辛いしさ!」

「…!!」

《へぇ〜!高志くん!高校に入っては、なんか一皮剥けたって感じがするな〜!…もしかして私のおかげかな〜!?》

高志はどうやら、昔のようにいじめられているようではないようでゆうかはホッとしていた。だが上谷の方は少し不満げな様子であった。

「…笑顔…か。」

「…ん?どうしたの?上谷くん?」

「!!あ〜!いやいやなんでもないんだ。…なんでも…」

「?」

《…なんか挙動不審ね〜!上谷くんて…》

優花は神谷の様子を見て何か怪しげかつミステリアスな雰囲気を持つ少年であることを知った。その理由についてはその先の記憶で知ることになる。

・・・

「…ただいま。…って…僕一人だよな。」

《!!…え…上谷くんって独りなの!?…両親は…一体…?》

「…あの…クソ親父…そして…あの女…大っ嫌いだ…!!…あいつらの見下した笑顔なんか…大っ嫌いだ!!」

《!!…一体何が…あったのかしら…》

上谷は一人で大きな声をあげては、世の中のやるせなさや不満を感じていた。しばらくすると落ち着きを取り戻し、画材の前に来ては自分の途中の絵を見ていた。

「…手…手…やっぱりうまく描けないや。…どうしようかなぁ〜…」

《!!…いやぁっ!!…な…何よ…これ!?》


🎼Back Ground Music 》》》



優花が見たのは、人が解剖されては足の筋肉の内部、そして骨の空洞が鮮明に描かれた絵であった。他にも手足がバラバラにされては人の生首が描かれたものまで、様々な作品が部屋中に貼っていた。

「…これじゃあスランプだな〜…流石に人体解剖の本ではリアリティーに欠けるな〜。…とはいえ、あの腐ったアイツらも何処かに行ってはいないから確認のしようがないし…まあいいか…よしこうなったらアレをやるか!」

《!!…あれ…って一体何するつもりなのよ!?…それにしても…上谷くん…かなり狂っているわね。…こんなに生々しく描けているのに、それでも追求しようとするなんて…》

カタカタカタ…

上谷は徐にパソコンを起動させ、何処かのサイトにアクセスしていた。するとそこは闇サイトであり、殺害しては身体中を解剖しては一枚一枚皮膚をめくっては引き剥れては、指の筋肉から血管まで鮮明にされていた写真をじっと観察していた。徐に呟くかのように語った。

「…美しいな。…芸術だよ…本当に…」

《…上谷くん…これって俗にいう犯罪者的思考の持ち主…サイコパスってやつね。…何か私が昔読んでいた漫画の敵キャラにそっくりな奴がいたわね。》

優花は上谷の記憶を傍観しては、その行動を起こす思考の異常さを見て何か恐ろしいものが見えたようにも感じていた。そして次第に月日が経過していく。

・・・

〜上谷大学時代〜

「…講義終了と…」

《…大学生活も変わらずか…でもまさか芸術学部から生物学やらとにかく医療系の分野を勉強しているわね…一体何を目指しているのかしら…》

「……」

カキカキ…

上谷は美術系の高校を卒業しては、医療系の大学へと進学し、医療系、生物学、語学や法律等、様々な分野を勉強していた。しかしこれと言っては友人はいる様子もない。

タッタッタ…

「おい…上谷だぜ!」「一人か〜!…よ〜し!」「ちょっと遊んでやろうぜい!」

「……」

ダダダダ!

《あっ!逃げた!…勘がいいのね〜!》

上谷はタチの悪い男達から逃亡を開始する。すると路地があった為、その場へ逃げ込む。

「ああっ!逃げたぞ!」「追え!」「捕まえてやんよ〜!」

「……」

ササッ!

「!!」「どこ行きやがったんだ!?」「ったくチキン野郎が…よ…?」

グラグラグラ……ガシャーー!!!

《!!て…鉄筋の雨!?》

「!!」「うわぁああ!!!」「あが…あがが…!!」

男達の頭上から鉄筋や鉄パイプの雨が降り注ぎ、男達を下敷きにした。その光景を上谷は確認した上て、積み重なった鉄筋に馬乗りになっては、まるで人を見下すかのように見つめてこう言った。

「…全く。…愚かしいといえばいいのか…嘆かわしいといえばいいのか…君達には一体僕が何に見えていたのかな?…ある近未来系の刑事に出てくる小説の人の台詞を気取って行ってみたけど、彼も、こんな風に思っているのかな?」

《…ひ…酷い。…じゃあ最初から仕組んで…上谷くん。…何でこんな事を…》

上谷は遂に超えてはならないラインへと超えてしまっていた。その笑みは笑って見せているが、それは仮の姿を象徴としており、その心の裏側にはとても冷酷であり、冷たい心が宿しているかのように冷え切った笑みであった。

「…さて。…次へ行くとするかな。…ん?」

「…テメェ。よくもやってくれたな!!」「ハメやがったな〜!!」「覚悟しやがれ!!」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

《!!…か…囲まれた!?…でも…こんな時なのに、なんで…なんで上谷くんはこんなにも落ち着いているのかしら…》

光景を見ていた男の仲間達が報復措置として、上谷を潰そうと待ち構えていた。しかしその様子を上谷は涼しい顔をしては怖気付くことがなく、男を見つめていた。

「……」

「やっちまえ!!」

「「「ウォラアアアアア!!!!」」」

「…」

ドカッ!! バキッ!! べキィ!!!

「ぐあっ!!」「はええ!!…ぐはっ!!」「げふ!!…!!…グオッ!」

「!!」

べキィーー!!!…ぐぎり!!…ゴキゴキ!!…ブシャーーー!!!

「あぎゃああ!!!!………」

バタン!!

「ヒィッ!!」「や…やりやがったコイツ!!…首を…」「へし折っては回して…」「捥ぎ取った…」

《い…いやァアアアアア!!!!》

上谷は躊躇もなく人を殺害した。その顔からはまるで残酷な心の無い天使が舞い降りたかのように、清々しい表情をしては、男達を見ては、捥ぎ取った仲間の男の生首の髪を掴んでは持ちながらゆっくり迫ってくる。

「……」

タン!…タン!…タン!

「ヒィッ!!」「に…逃げろぉお!!」「う…うわぁあああ!!!!」

カチャ!…ピピピ!!

Prrrrr!

「…あ、すみません!警察ですか!?…実は路地裏で人が倒れていまして、それに生首が…目の前にあって…先程怪しい人物が入っている所を確認し…」

《…罪を…隠蔽した!…な…なんて事を…》

上谷は自分のしでかした罪を相手に擦りつけるがために警察に通報し、自分はその現場から立ち去った。犯行時路地裏は監視カメラも無く、手袋をしては服もビニールで出来たガウンを着用していたため、指紋も血痕は発見できず、誰がやったのかは迷宮入りとなり、捕まった犯行グループは嵌められたというが、相手側も、暴力関係の犯罪をしでかしているもの達であるため、言い分は聞き入れてもらえず、仲間内での争いであるというように処理され、上谷の完全犯罪は実現した。そして歳月が流れる。

〜上谷・大学卒業後から3年後〜

「……」

カチャカチャ…

上谷は大学卒業後、あるコンサルタントとして起業して会社を作っては、顧客リストを覗き込んでいた。

「…この組織は後に特定されると厄介か。…潰しておいた方がいいかもしれないな。」

《…大学卒業後に3年で会社を自分で立ち上げたの…!?…一体何をしているのかしら…》

「…上谷の旦那さん…」

「…大井。…君か。」

《!!…お…女。…パートナーなのかしら?》

上谷の背後には、パートナーなのか、一人の女性が仕事の様子を見物に来たようである。

「どう?進んでる?」

「…まあね。…でも思った以上に顧客が増えるとは驚いたよ。」

「…見た感じ、犯罪を犯している傭兵が続々と集まっているようね。」

《!!…まさか…上谷くんって…犯罪専門の…!?》

優花は上谷が一体どんな仕事に就いているのかの実態を知った。上谷の仕事は犯罪専門のコンサルタント業を起業しては、全世界の犯罪者や殺し専門の者達とコネクションを持っては、情報を交換しているスペシャリストになっていた。そしてある組織について目が止まった。

「…麻薬組織か…」

「!!…へぇ〜!…出来て間もないのに、ここまで力をつけるなんてね〜!」

《!!…コイツらの顔…まさか…じゃあ…あの事件で仕組んだのって…》

「…!!…この組員の顔は…見覚えがあるな…確か槇原宣行と聞いていたね。」

《!!…あ…兄貴!!…まさか…潜入…捜査官って…事だったの…私に迷惑をかけないように…内緒で…》

優花は宣行からは内緒で潜入捜査官として組織内部に潜入していたことを内緒にしていた。危険を及ばせないようにという意思もあるからか、その事について一切触れさせないように、情報を隠し通していた。しかし、それを知っているのは麻薬取締官の霧矢ともう一人、上谷という犯罪専門のコンサルタントのものであるという事である。それを知った上谷は早速部下に連絡する。

prrrrrr!!

「…はい。」

「…至急槇原宣行という男のことを調べてくれるかな?…ただし武力行使はなしで。…情報さえわかればそれでいいんだ。」

「…わかりました。」

ピッ!

「……ッ」

「…どうしたの上谷くん?…なんか笑っているわね…?」

「…笑っていないよ。…別に。…僕は生まれてこの方…人生で心から笑えたことなんてないよ。」

「…どうすれば笑顔になれるのだろう…というような言い方ね…何だか哲学ね…」

上谷は昔から、両親との折り合いが悪いのか、もしくは機能不全家族のもとで育ったのか、愛情というものや心から笑える人生を送れたとは程遠いような複雑な感情が混じり合ってはそう発言した。その育ちからか、ねじ曲がった思想にも入っているような歪んだユーモアの持ち主のようでもある。

「…君は心から笑えたことはあるかい?」

「…あまりないわね。…人をいたぶっても後味が悪いだけだし。…でも上谷。…それを聞くということはあなたは…」

「…僕自身も、この町に生まれては、碌な両親に恵まれなくてね。毎日暴力を振るわれていたよ。…手足が痺れては、声も発せなくて苦しい思いをひたすらしてね…」

「!!」

《!!…そうか…上谷くん…まあ薄々分かってはいたけど、両親に暴力を振るわれて…それで性格が歪んで…》

「…それでも両親は僕の様子を見てはまるでそれを揶揄うように楽しんではひたすら暴力を続けては、次第に僕自身はね、人が心から笑えるとは何だろうと感じて、もう何も感情をなくしてはこうしては作り笑いをするだけさ。…まるで人形のようにね…」

「…」(心神喪失っていうのかしらね…)

《…狂っている…そんなの…おかしいよ!!…何なのよ…一体!!》

上谷の生い立ちには、壮絶な闇がある事を感じ取った。そしてそれを報復も容易に出来るほどの武力と残虐性、そして何よりも人を殺めても感情一つも変えず、善悪の判断が正常に行うことができない状態であるようにも感じていた。しかし、上谷自身、罪に対する意識付けをこのようにも語り出している。

「…それに、人というのは罪に敏感だ…」

🎼Back Ground Music 》》》



「…え?」

「…君も心当たりがあるんだろ?…罪と罰について…」

「…まあ、私も一度…人を…」

「…樋川といったかな…君の初仕事…で交通事故として始末した…」

「!!」

《!!…こ…この人が…樋川さんを!?》

優花は初めて実行犯の存在を知った。樋川を交通事故として処理したものが、上谷の目の前に話している女性であることを知った。そしてすかさず上谷はこう言った。

「…一つ残念な事だよ。…そのせいで、大ごとになったからか、槇原宣行は君を追っている。」

「!!…そ…そんな。」

「だけど安心してよ。…君は絶対に捕まらないよ。…この僕がいるから。」

「…上谷の旦那…」

「…行きたまえ。…仕事なのだろう?…引き続き、槇原宣行の情報を探って来てくれるかな?」

「…ッ…!!」

バタン!!

《…何なの…一体この人は…何が目的なのかしら…》

優花は、上谷という男の完全に犯罪を成し遂げる執着心が本物であるという事を知る。

「……はぁ…」

ピッ!

「…はい。」

「…女は…おそらく裏切る。…そっちで処理しておいてもいいかな?」

《!!…何ですって!?》

「…いいんですか?」

「ああ。彼女には捕まらないと言っておいたからね。…彼女も承知の上だよ。…遠慮はしなくてもいい。…だけど彼女の代わりに、槇原宣行の事を調べてもらってもいいかな?」

「…はい…承知しました。」

ピッ!

「……」(本来笑うところであるのに、笑えない。…何でだろうね。…どうしても…)

《満たされない!!》

キィーーン!!

《!!…見てやるわよ…アンタの過去って奴を!!》

優花は、頭の中に流れ込んでくる映像を傍観する。そこは古い家であった。

〜上谷の過去〜

ガシャーーン!!

「…!!」

「おい!!…何笑ってんだよ!?…こっちはなあ!!イライラしてんだよ!!」

バキィーー!!!

「!!グッ!!」

「アンタなんか!!…アンタなんかぁーー!!!!」

パーン!!パシン!!

「!!…やめてよ!!父さん!母さん!!」

「口答えするなあ!!!」

「なんでアンタだけ笑うのよ!!…ああ!!憎たらしい憎たらしい!!私達はこんなにも辛い思いしているのに!!穀潰しのアンタは何でそんなにヘラヘラしてるのよ!!」

パァーーーン!!!!

《!!…ひどい…こんな仕打ちを…毎日…上谷くん…あなたは…》

優花は上谷自身が性格を歪ませた発端となった原因はわかったようにも感じた。そこには自由がなく心にも余裕が持てず、作り笑顔をしては、乖離的になっては心を捨てその苦痛の日々を過ごす毎日を過ごしていた。その苦痛の日々を過ごしているうちにある事件が起こった。

〜ある日〜

「…えっ!!…な…何で…」

《え…い…いやあああっ!!!》

中学生の歳になった上谷が家の前で警官が玄関から顔を出した光景を見た。事情を聞くと、両親が何者かによって殺害されていたという通報があった。そして、このようにも話す。

「…君はまだ中学生だろ?…一人暮らしは出来ないだろ?」

「…問題はありません。…ここを手放したら、僕は行くところがありません。児童養護施設に行くつもりもありません。」

「!!」

《…上谷くん…》

タッタッタ…ガチャ!…バタン!

「……笑うべきなのに…笑えないや…」

上谷は、地獄の日々から解放されては安堵の表情をしていた。しかしその顔からは笑みはなく無表情の状態であった。そして独り言のようにこう言った。

「人は何故笑うのだろう?」

「笑っていてそれが本当に幸せなのだろうか?」

「人を蹴落としてヘラヘラとしているのは何故なんだろう?」

「楽しいからなのか?」

「じゃあ今の僕は…本当に…楽しい…」

「…嬉しい…でも…」

「…笑えない。…笑えない…笑えない笑えない…!!!!」

「…笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない……笑えない…笑えない笑えない…!!!!…笑顔って一体…何のためにあるのかな…本当に…」

《!!…もう…何なのよ…これ…!!》

・・・

prrrrr!!

「…ん〜?…電話か?…見たこともない番号だな…」

ピッ!

「…誰だ。」

「…お初にお目にかかります。反原さんですね?…実はあなた達の仲間内に、警察の公安が潜り込んでいるようです。…ご注意ください。…その犬は…あなた方に最近入ってきた新人さんです。」

「!!…お前…本当に誰なんだ!?…何者だよ!?」

「私は犯罪専門のコンサルティングです。名前は槇原宣行…妹は優花といい、住んでいる場所はーーーーーーー」

・・・
・・






B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?


🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)




「……あっ!!」

「あ、気付きました?どうでしたか?」

「……上谷くん…彼が…兄貴や私を…でも…何だか…何故彼があんなになってしまったのか、分かった気がするわ。…愛情を受けずに育ってしまったのね…」

「そのようですね〜♪」

優花は最後の試練で、上谷自身が何故笑顔という感情を持つことができず、犯罪者的思想に入り込んでしまったのかについて知り、機能不全家族の元で育つと、道を踏み外すという事を知り、自己防衛の必要性と家族に対する愛についての意味を今回の試験で学んだ。それを見てオロアは笑みを浮かべ、こう答えた。

「では、あなたはもし上谷さんがこの【Paradiso】に来ていたとしたら、…殺めるおつもりですか?」

「…!!」

優花の答えは当に決まっている。

「…いえ。…それではダメ!…彼は何としてでも法の元で裁かれるべきだわ!…報復で返しても、彼はなんだか納得なんかしないと思う」

優花は上谷が自ら犯した罪を認めさせる為にと、向き合わせる姿勢を見せていた。その表情を見たオロアは笑みを浮かべた。

「わっかりました〜♪さ〜て、これであなたの三つの試練は全て乗り越えました!おめでとうございま〜す♪…そ・し・て…これを身に付けていただきま〜す♪」(サッ!)

「?何これ?…勲章?」

優花はオロアに渡されたものを確認した。それは勲章であり、確認すると十字架のマークが刻まれ、下にはSpecific deadという文字が刻印されていた。

「これであなたも無事に死者から特定死者へとランクアップですね〜♪次は現世人を目指して頑張ってくださいね〜♪」

∧( 'Θ' )∧・・・・・・・・

「え?…特定死者?…現世人??…何よそれ?」

「特定死者は、わかりやすくいえば先ほど体験した三つの試練で、現世での行いを振り返り、何を学び、何を感じたのかを知り、その記憶と向き合い、試練を無事乗り越えたものに与えられるものです。階級は死者よりも上で、ユートピアの世界【paradiso】へ行くための試練を受けることができる資格の者といった立場ですね〜♪現世人とはユートピアの世界【paradiso】でのあなた達の種族の俗称となる名前です!…つまり今度は、その現世人の地位になるための試練を受けていただきま〜す♪」

「ええ〜…じゃあ【paradiso】の世界へはまだ先なのね〜!?」

試練を全て乗り越え、優花自身はこれでユートピアの世界に行けると安堵していた。しかし導き人オロアの返答は予想外のものであり、ユートピアの世界は思った以上に過酷な道だということを知る。

「ではでは…最初の三つの試練はあくまで準備段階です!あなたにはこれから最終試練に挑んでもらいますよ〜♪」(ニッコリ)

「…わかったわ!!」

「最終試練会場はすぐそこです!ではついて来てくださ〜い♪」(ピューーッ♪)

「!!…ああっ!!コラァ!!まちなさぁーーい!!!」(タッタッタ!)

優花は、神速の如く走り抜けるオロアを追いかける。そうしていくうちに一枚の扉が見えて来た。

「ここがその最終試練の扉で〜す♪」

「ここが…」

「ですがその前に後ろをご覧ください〜♪」(ビシッ!)

「え?…!?」

導き人オロアが指を刺した方向を見ると、今まで眠っていた白い棺が天井にある満月に吸い込まれている。それは豹策だけのものではない。とてつもない数の棺が宙を舞い、螺旋状に満月の模様に吸い込まれていく。

「あの棺桶って私が眠っていた…それに…巨大な月が…」

「あれは冥界の満月っていうもので、直接あの世とつながっています。中には私たちの言い分を無視して寝過ごしたものや、私のような導き人の試練に乗り越えられなかった人もいくつか混じっています♪」

「何よそれ!?じゃあ私が棺の中で眠り続けていたり、あの試練を乗り越えられなかったら…連れて行かれていたっていうの!?」

「その通りですよ〜♪あ〜!あとあれをご覧くださ〜い♪」

「?……!?…なっ!?…なんか黒い服を着た者達が浮いているわね…」

「あれは執行者です。どうやら私達の試練に乗り越えられず連行されたようですね!主に死者を平等に裁いてもらうために、今から閻魔大王の元へ行き、裁いてもらう途中のようですね〜♪ちなみに私達のことを毛嫌いしていて、執行者の部署はあなたたちの現世での言い方だとブラックな部署でもありますよ〜♪」

「…ブラックなのね…」

「さて、本題に戻りまして…あなたは今回の試練を乗り越えて普通の死者から特定死者として認定されました!次の試練はいよいよ【paradiso】へと行くための重要な試練です!とても過酷な試練になりますが大丈夫でしょうか?」

「………」

優花はさっきの試練とここまでの経緯を思い返していた。おそらくこの試練を受けさせるからには自分の行く【paradiso】という世界は、ユートピアの世界とはかけ離れた反対のディストピアのようなものではないのかと思っている。だが行くからには、もう後戻りはしない。自分には、事件に巻き込まれた兄がいる。そして自分自身の因縁もあり、人は何のために人を愛し、その時間を守っていかないといけないのかを今回の試練で知った。そしてこの言葉が、胸によぎった。

(私は逃げないわ。そして後戻りもしない!…絶対に前に進んでやるわ!)

「準備はできているわ…行くわよ!!」

「はぁ〜い。では行きますよ〜…って〜ッ♪!!」(ゲシッ!)

ドゴーーーン!!

「」

導き人のオロアはその扉を思いっきり蹴り飛ばし、粉々にした。その光景に人とは思えぬ恐ろしい怪力を見たあまり、優花は驚愕した。

「あ、これ扉に見せかけた壁なので〜!では行きましょう〜♪」

∧( 'Θ' )∧・・・・・・・・・

「…オロア…」(…そもそも導き人って一体何者なのよ?)

優花はオロアの後を追う…そして出た外の光景は信じられない非現実な光景が広がっていた。

「…えっ!?…周辺に雲が広がっている…これって…雲の世界!?」

優花が見た景色はまるで昔、何か探し物をする本でみたことがあるファンタジー的で幻想的な雲の世界の光景が広がっていた。そしてこの世界で、優花は壮絶な逃走劇の戦いが幕が開けるーーー
























《To Be Continued…→》











第5話:プロローグ〜優花編 Part2
《完読クリア!!》



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