GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》
 

A.:GiorGia

〜第二章:ダブルフェイス・黒豹と法と秩序の契り〜




第3話:プロローグ〜豹策編 Part1




名古屋市に住む一人の男。その男の名前は霧矢豹策。厚生労働省の麻薬取締官(通称:マトリ)として所属する違法薬物を専門として取り締まるスペシャリストの捜査官。様々なところで快楽と誘惑が潜む違法ドラッグ、大麻、エス・スピード、合成麻薬(MDMA)、覚醒剤────それらを法により取り締まる生真面目な一人の青年の男が、自分が死を目の当たりにした時に大切なものは何か、本当に守るべきものは何なのか───────自分の人生の価値観と他者の人生の価値観がぶつかり合い、自分の進むべき本当の男としての生き様の真意が、現世人【Veno・nix】という一人の男として新しい人生の始まりとなり、その真意が明らかになる───────



《Capitalo・1》 
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



In a prejudiced social environment, only a limited number of people can express their calm opinions. On the contrary, most people can't even have an opinion.
(偏見のある社会環境で、冷静な意見を述べられる人は限られている。それどころか、意見を持つことさえ出来ない人がほとんどだ。)

I am confident in any condition. God never rolls the dice.
(どんな条件であれ、私には確信がある。神は絶対にサイコロを振らない。)

Albert Einstein
(アルベルト・アインシュタイン)



※麻薬の効能は、自分の人生を確実に破壊します!…麻薬!ダメ!ゼッタイ!!

♪〜ダブルフェイスより・メインテーマ【Piano】

〜愛知県・名古屋市

「……今日も曇りか。…あの連中への追い上げの時期だというのに…雨が降るかもな…」

霧矢豹策───────25歳はマンションの一室のベランダで外の景色を見ながら、上はテーラードジャケット、中はドット柄の白ワイシャツ、ネクタイはループタイ、下はお気に入りのジーンズで曇天の曇り空を見上げていた。そしてある刑事ドラマのピアノの曲を流しながら、自分の仕事リストが映し出されていたスマホ画面を確認していた───────

「…何で麻薬は無くならないんだろうな。……天野。…お前はあの事件の後…今一体…どこで何をしてるんだ?…元気にしてるのか?」

ピンポーン!

「……?」

「こんにちは〜!…宅配便です!」

玄関から宅配業者の声が聞こえたため、豹策は玄関に向かう。そして玄関の窓を覗き込む。すると、青年の宅配業者が立っていることに気づく。確かだと安心し、そのまま荷物を受け取ろうと玄関の扉を開けた。

「…はい」

「こちらにサインいいですか?」

「………」

カキカキ…

「どうもありがとうございました〜!」

バタン!

「……母さんからか。……野菜。…またイタリアンでもして消化するか。……?…何だ?…同窓会…」

豹策が見たのは、親が畑で作っている野菜を詰め込んでおり、その下には自分の母校の高校の同窓会の案内のハガキが入っていた。しかし、それをゴミ箱に入れ、ベットへと寝転がる。

ポイ!…グデン…

「……」(……今更何の用があって…学校側も薄情じゃあないのかよ…天野の事…見捨てやがったくせに!!…ま…そのおかげか、俺は進路を明確に決めて、今こうしてマトリをやっている…)

豹策の職業は、厚生労働省に存在する組織の一つ、《麻薬取締官》である。世間からはマトリと呼ばれ、主に犯罪組織に潜入し、麻薬の密入ルートを押さえて摘発し、刑事法により麻薬取締法違反の罪状で逮捕する。その為に警察と連携し、体術訓練や銃火器の射撃の腕前と、様々な適正試験の基準をクリアし、晴れてエリートの道を歩もうとしていた。しかし彼は、自ら志願してその道を歩んだエリートとは程遠く、昔からある深い闇に関わってしまった住民の一人である。

「…三木川…アイツは、今頃刑務所だろうな。………天野。…あの時お前の事…守ってやれなくて…すまなかったな。………コンビニにでも行くか」

ガチャ…バタン!!

豹策は、昔の高校時代の事を思い出に浸りながら、歩みを始める。彼自身の高校生活とは一体なんなのか?何故彼は麻薬取締官になり、違法薬物を管理する者として遵守する立場になったのか───────



ーーーーーーーーーーーーーーーー
   〜ダブルフェイス〜
 〜黒豹とアンチドラッガー編〜
ーーーーーーーーーーーーーーーー


・・・
・・




🎼Back Ground Music 》》》



♪〜PSYCHO-PASSより・光

〜時は戻り、豹策17歳の高校時代・高校二年生〜

「……」

豹策は昼休み、学校の屋上で空を眺めていた。彼自身は、昔から人と関わらず、孤独を好む孤高な生真面目な青年であった。しかし、それでも人嫌いというわけでもない。それは自分と性格は違えど本質が似ているのか、彼にもかけがえの無い一人の友人がいたからだ。

「お〜っす!…豹!」

「…豹策だよ…天野。…!!…おっと!」

「ナイスキャッチ〜!」(ゲラゲラ!)

豹策には、中学時代からのクラスメイトの天野(あまや)という女子がいた。とても天真爛漫な性格ではあるが、強気かつ真面目であり、周りとは何か違うものがあった。そしてすかさず、一口の天然水のペットボトルを口に運んでいく。

「…ぷは〜!…んで豹、君またブラックコーヒー飲んでんの〜?」

「…まあな。この景色を眺めながら見るのが好きなんだ。」

「へぇ〜!…ま、私も同じ理由かな〜♪」

「…そうかい」

「もう!豹!ノリが悪いよ〜!!ここは、俺も同じ気持ちだとか言って優しく抱きしめてよ〜♡」

「…はぁ〜……んなとこ見られたら変な噂になるだろう………」

スクッ!スタスタ…

「?ん〜?」

豹策は踵を裏にし、近くに設置されていたベンチに座り、ケースから何かを取り出すと、暗記書類を見つめていた。

「………」(ジィ〜……)

「!?…へぇ〜!……勉強、好きなんだね〜♪」

「…そうじゃあない。ただ…俺の親父は…覚醒剤に手を出して…ヤク中になっちまってな…それで母さんが俺を育ててくれて、それもあって…」

「俺は俺の為に勉強する!!」(キリッ!)

「………」

「とか考えてるんでしょ〜!?♪あはははは!!」(ケラケラ!)

天野は豹策の言葉を取って笑顔で笑う。天野は距離を詰めて話を続けていく。

「でもさ〜!…本当豹って笑わないよね〜!?」

「…そうか?」

「そうだよ〜!!…結構顔の濃いソース顔だから笑顔で笑えば俳優面のダンディーな男になるのに〜すっごく勿体ないよ〜!」

「…そうかい…」(しれっ…)

「あ〜!!またそうやってそっぽ向く〜!」(プク〜!)

豹策と天野のやりとりはこの屋上だけではない───────

〜放課後…

「お〜っす!豹!」

「…どうした?」

「一緒に帰ろう!」

「…悪いな。…これから学習塾なんだ」

「え〜っ!…ま、いいよ!じゃあまったね〜!」

タッタッタ…

「………」

・・・

「であるからして…この公式は〜…」

「………」

カキカキ…

・・・

「…終わったな…」

ピトッ!

「!?……」

突然豹策の隣から温かいものが頬に押し付けられる。それはブラックの缶コーヒーであった。視線を見ると、そこには満面の笑みを浮かべていた天野がいた。そして元気に挨拶する。

「ヤッホ〜!こんばんは〜豹♪また会ったね〜♪」

「…お前…ついて来てたのか?」

「まぁね〜♪…へぇ〜!でも有名塾通いか〜!?お金持ちなんだね〜♪」

天野は豹策に迫り、真面目な雰囲気を醸し出している模範的な好青年のような眼差しで見つめている。しかし彼自身はそれを思っているものとはかけ離れた境遇の者のような素振りを見せる。

「……そんなことはない。その金は、俺がシノギでな…」

「ん?どゆこと〜?」

「…ついてこい」

「〜?」

〜あるスーパーの水産コーナー〜

「…ここはここでっと…」

豹策は、徐に水産の商品を整理する。その姿を見た天野はピンと来たのか微笑みを浮かべて口を開く。

「…そっか〜!…君ここでバイトしてたんだね♪」

「…ああ。本来なら長めに働きたいが、学生の身分であるから現実的ではないんだ。大学に行く金くらい、自分で貯めていかないとと思って、こうして地道に働いている…」

「偉いね!…そっか〜!ホントに生真面目なんだね〜君って!…ねえねえ!?明日は休みなんでしょ!?」

「…いや…晩からここで仕事だ。………一体何だ?」

天野の問いに豹策はそっぽもない返事をとる。すると、あるチケットを渡してきた。

「じゃじゃ〜ん!映画のチケットだよ〜!!…どう?」

「……一緒に観に行こうという事か?」

「そだよ〜♪ねえねえいいでしょ〜?」

天野はこれでもかというくらいに強請ってくる。それを見て観念したのか、妥協したかの表情を見せてはこういった。

「…わかった」

「わ〜い♪約束だよ〜♪」

「……」(ハァ…まあバイト前の気分転換にはなるか…)

その後、品物の陳列整理を終えた霧矢は天野と一緒に繁華街を歩き、帰路へ向かっていた。すると目の前の離れた道の先にクラスメイトの女子の一人が碌でもない者達と連んでいる姿を目撃する。

ゲラゲラ!ギャハハハハハ!! アッハハハ!

「…ん?…アイツは確か…!?」「行くよ…豹!!」

グイッ…スタスタスタ!

「……」(…アイツは確か…同じクラスのマドンナの…三木川か。…こんな遅くまであんな連中と夜遊びとはな…)

「……ッ!!」(三木川…!!)

天野は三木川という女子とは仲が良い雰囲気だとは言えなかった。そして二人の自宅付近に近い道に辿り着くとその事情を知らされる。

・・・

🎼Back Ground Music 》》》





「!!…三木川が…クスリを…本当なのか?」

「ええ…間違いないの…三木川!…アイツは間違いなく麻薬と関わっているの!…だから私もあまり彼女とは関わりたくはないの!」

「…確かにあの刺青をしていた連中と連んでいては説得力はあるか…なるほど…普段はクラスでマドンナのように装っていたが、裏ではそんなことをな…だがいつそんな事を知った?」

豹策は、三木川という女の裏の顔を知った。普段はクラスに馴染む人気者の潔白のイメージを持ちつつ、裏では汚い事をし人を陥れる悪女の存在であるというもう一つの顔を知った。その理由について天野から聞こうとする。しかしそれを首を振る。

「今ここでは言えない。…でもあとから必ず連絡するね。じゃあこれで…豹…おやすみ!」

タタタタタ……

「…!!…天野……」

天野は後ろ姿を見せ距離をとっていく。その光景を豹策はじっと見つめていた。そして、豹策も家に戻りシャワーを浴びた後、天野から送られてきたメッセージを確認する。そこには写真で一枚一枚書類が添付されてあり、これまで天野の友人だった者も、三木川と関わりを持った為《覚醒剤》に手を出し、自主退学に追い込まれたという事実を知らされた。しかし一つ不可思議なのは、その事件は結果的に《未解決事件》として処理されていたのだ。それは、学校側が身の潔白のイメージを保つ為に行った《隠蔽工作》によるものであり、決して公にはせず公表もせず、覚醒剤に手を出した生徒自身が起こしたと言う一概の責任を押しつけた他にならない。それを知った豹策は、学校の対応や、生徒の未来を潰した覚醒剤そのものに対し、静かなる怒りを見せていた。

「…そういうことかよ…クソったれが!…でも…天野…お前も大変だったんだな…」

豹策は悩んでいても仕方ないのでそのままベットで横になり、就寝の時を過ごす。そして時というものは残酷であり、時間だけが過ぎていく───────

・・・

〜地元の映画館〜

「ヤッホ〜豹!おっまたせ〜♪」(フリフリ!)

翌日になり、天野は豹策のバイトの事を気遣い、朝早くから映画を見る約束をした。天野の服装は、紫のブラウスに、下はベージュのスカートに普段愛用している黒タイツを着た大人っぽい女性の服装であった。

「…おう」

それを見た豹策は淡々と返事をする。

「何〜?そっぽもない返事だね〜♪じゃ!いこ!」

「…そうだな」(フッ!)

「!!…おおっ!!笑った〜♪いいじゃ〜ん♪そんなに私とのデートが楽しみだった〜?」

「…別に」

「も〜う!」(プク〜!)

タッタッタ…

俺は、天野と一緒に映画鑑賞をする。映画のジャンルは刑事ドラマ系の《海外洋画》であった。主人公はマフィアに潜む《潜入捜査官》として、様々な正義が交差する二人の男の生き様を描いた物語であった。そして、見ていると孤高の男の生き様が何故か自分と重なるように見え、感情移入した映画だったのか、その瞳にはその者のイメージが根強く残っていた様子であった。彼自身こうして影では人に称賛されることもなく、人助けの道に行くのも悪くないと実感する。映画を見終えた二人は、ファミレスで昼食を食べることにした───────

ガヤガヤガヤ…

「…ん〜でさ!?どうだった!?今日の映画!?」

「…いいと思う。主人公にも感情移入できた」

「あ〜分かる〜!…まあ確かに豹はあの主人公のようにクールぶってるとこ、あるからね〜♪」

「…そうだな…んっ…」(モグモグ…)

「…豹って食べ方何となくだけど〜…綺麗だね!」

天野は豹策の食事風景を観察していた。すると、豹策は天野の観察する姿勢を見てこう答える。

「…まあ小さい頃から、両親が教育にうるさかった時期があった。…それでいつの間にか身についてな…」

「ふぅ〜ん!…でさ〜!次どこ行こっか〜?」(ニコニコ!)

「これからバイトだから程々にしてくれ。…それにお前にもお前の時間があるだろう。…いつまでも俺みたいな奴と関わっても楽しくないだろ?」

豹策は天野との距離を取ろうとする。しかし、天野はその返答に対し、避けるどころかむしろどんとこいという姿勢で詰め寄ってきた。

「私は楽しいよ〜♪!」

「……?」

「こうして君と喋ってる時間が♪!…ふふっ♡!」(ニコニコ!)

「…そうか。…なんか変わってるな…お前…」(フッ…)

「おおっ笑った!…やっぱいいじゃ〜ん♪…でも君の満面な笑顔……見てみたいな〜♪」

天野は豹策の笑顔をもっと見たいと迫ってくる。しかし、豹策は頑なに拒否する。

「……もう俺はあまり笑えないさ。親父が起こしてしまった…あの事件から…」

「え…あ、なるほどね。……でも〜…やっぱり君と私ってなんか似てるよね!?」

「?…どういう所が?」

その返答に天野は笑顔でこう話した。

「え?だって君と私も、あの高い屋上に登ってあの満点の大空見上げてるじゃん!」

「?……それだけか?」

「うん♪…だからさ!いつか君もあの大空のように広い心で笑える日が来るよ!!」

「…そうか。…肝に銘じておく」

「も〜う!そこはありがとうとか言って私にハグするとかでしょ〜!?」

「…こんな大人数が見てる前でんな大胆なことできるか…」

「ちぇ〜っ!」(ブーブー!)

暫くして、豹策と天野はファミレスを後にし、商業施設の書店を訪ねていた。そこには豊富な本の種類があった。

「……」

スッ!

「ん〜?…へえ〜!…豹も薬学とかの本読んでるんだ〜!」

「…まあな。親父のこともあって大学は薬学部に入ろうと思ってな…」

「いいじゃん!…じゃあさ〜!おおっ!…これなんかどお〜!?」(キラキラ!)

ピラッ!

「ん?…なんだ…《マトリデカ》?…これは漫画か?」

天野が出してきたのは、麻薬取締官(通称:マトリ)と呼ばれる厚生労働省に属する組織であり、主に犯罪組織から麻薬を取り締まることを題材にした漫画である。それを見て何やら興味深そうに豹策へと勧める。

「どう!?どう!?面白そうでしょ!?」

「…麻薬取締官…厚生労働省所属の機関で警察とは違うんだな。…てっきりさっきの映画のように警察が管理している組織のようなものだと思っていた」

「一つ勉強になったね〜♪…君…もしかしたらこんな主人公のようなマトリとかの道もいいかもね♪」

「…冗談はよしてくれ。…麻薬と関わるかなり危険な仕事だ。それに薬学部そのものも競争率は高い。…かなり狭き門だ…」

「え〜っ!…カッコいいと思うけどな〜!マトリ〜!…それに薬学部目指すのなら尚更だよ〜!ほらほら!…ここに書いてあんじゃ〜ん♪」

「…本当だ。…そうなのか…初めて聞いた…」

豹策は、麻薬取締官の職業について漫画を見て知った。麻薬取締官になる為の最短のルートかつエリートコースとしての道として《薬剤師》の資格は必須であるという事。その職務の性質上、大学の薬学部出身者のものは重宝される。麻薬取締官の逮捕術は、少林寺拳法を基礎としており、権限によって特別司法警察職員犯罪捜査が出来る為、捜査に係る刑事手続きや逮捕や捜索差押、送検等を行う権限も、漫画の内容に記載されている。

「………」

「ねえねえ!?…どう!?行けそうじゃん?」

「…わからん。もしかしたら研究職になるかもしれないし、医療分野に飛ばされるかも知れない。それに夢を持ったとしても…」

「叶わないかはどうかは自分で判断してみて、そのチャンスがあったらその手で掴み取ったらいいじゃん!!」

「!!」

天野は強く笑顔でそう発言した。思わず周りの人はざわつき、何だ何だと騒ぎ始める。

ざわ…ざわ…

「…はぁ…静かにしとけ。…つまみ出されるぞ」

「…そだね〜♪」(ルンルン♪)

その後、書店を後にした豹策と天野は今度はリサイクルショップを訪ねていた。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ある俳優の曲

「へぇ〜!この曲ってさ〜!ここでも流れてるんだねぇ〜♪」

「…昔聞いたことがあるな。……天野。…この曲好きなのか?」

「うん!♪…でもこの俳優さんが歌う曲がさ〜…なんか君に似合うと思うんだ〜♪」

「?…どうして?」

豹策の問いに対し、彼女はこう言った。

「だって君ってさ、真面目装ってるけど、本当は言いたいことも言えないんじゃあないのかってね〜♪…なんか我慢しっぱなしでハメを外す事を知らなくて人生無駄にしてるような〜なんていうか…《取り越し苦労》が多いというかね〜!!」

「……そうか」

「も〜う!ま〜たそうやって人の話を聞き流す〜!」(プク〜…)

豹策は淡々とリサイクルショップの商品を見物している。すると天野は、ある一枚のCDを渡してきた。

「見つかったよ〜♪ほらほ〜ら♪」

「ん?…これか?…渋い顔の俳優だな」

「きっと君もそうなると思うよ〜♪…だってこの俳優さんさぁ〜♪…君のようにソース顔で男前じゃん!…あぁ〜♡この人〜♡…私はタイプで……好きだよ///♡」

「…遠回しで…俺に好意をぶつけるな…」

「え〜?……嫌だった…??」(うるうる…)

「……」

天野は涙目になり、上目使いで豹策をじっと見つめる。しかし豹策は、それを面倒くさそうな顔で、渡された一枚のCDを持ち、会計する。

「これ下さい」

「はいどうも〜♪」

「も〜う!無視しないで〜!!」(プンプン!)

・・・

そして夕方近くになり、豹策はバイト先のスーパーへと向かう。

「じゃあそろそろバイトだ。…気をつけて帰ろよ」

「うん!あ〜楽しかった〜!…じゃあまたね〜!」(フリフリ!)

タッタッタ…

「…はぁ…乗り切れるかな…今日のバイト…まあ…こんな日も悪くはないか…」(フッ…)

トボトボ…

豹策はそういうと、すぐさま自分の勤めるバイト先へと向かった。その顔には、うすらと笑みがあった。そしてお互いが別の道を歩くが、そこから運命は残酷にも歯車が狂い始めていき、後に悲劇が起こるとは二人は知る由もなかった。


・・・
・・


B. いいえ
《Capitalo・2》 
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



時は戻りーーー豹策25歳。

「あの時から、天野と交流があって、俺はこうして、少しずつ前向きになれたんだよな…」

豹策は昔撮った天野の写真を見て不意に思い出に浸っていた。そして、その結末を思い出したかのように寂しそうな表情をしていた。

「…だけどそれでも…そんなアイツとの日々は続かなかったな。その一年後…三木川に嵌められて…アイツは…天野は…」

豹策は天野のことに対し、苦い思い出であったから険しい顔つきであった。しかしその後に、救いの手を差し伸べられたかのように平常心を保っていた。

「だがそんな時、天野の友人の奴らが急に現れてはチームになったんだよな。…本当に突然だった。…三木川だけではなく、麻薬密売組織の親玉を潰すために、俺がクラブハウスにまで潜入捜査してしまうとはな…」


・・・

時は戻り、高校三年生5月中旬の季節…豹策18歳。

「…な…何なのよ!?突然!?」

「しらばっくれるなぁっ!!…アンタ見たんでしょぉっ!?…あのポーチの中を!?」

天野は三木川に恐喝され、脅されていたようであった。しかし、天野は強気な発言でこう言った。

「…証拠は?」

「……ハァ?」

「…証拠もないんじゃあ立証のしようもないじゃあない♪…感情的にもなって見苦しい女ね〜♪…じゃ♪」

スタスタ…

「…っち!!…天野…ムカつく…あの女ぁ!!」

ガシャン!!

三木川はどうやら自分が麻薬を所持し、手を染めている決定的証拠を天野に目撃されていたことに対し、危機感を持っていた様子である。そして翌日事件が起こった。

・・・

キーンコーンカーンコーン〜♪

「ふぅ〜!終わった〜!!…さ〜て豹も待っているし、屋上に行くかな〜♪…ん?え…先生?」

授業が終わり、早速屋上に向かおうと教室に出ては階段に登ろうとする天野であったが、目の前には教員が立っており、深刻そうな顔をしていた。すると重々しくこう話した。

「天野…ちょっと職員室に来てもらおうか?」

「…え?一体なんですか?」

「いいからちょっと!!」

ガシッ!!

「ええっ!?あのちょっと!?な…何ですか一体!?」

ざわ…ざわ…な…何だ一体? 

「警察を呼んでいるんだ!!お前…心当たりがあるんだろう!?」

「!!…はぁっ!?」

タタタ!!

教員から強引に手を引かれて連れて行かれた場所は、職員室ではなく実際は学校裏であり、そこには一台配備していたパトカーがあった。すると、教員はまるで犯罪者を見るかのような目でこう言い放った。

「ここだ!…入れ!!」

「え!?な…何でパトカーへ!?…ちょ…ちょっと!?」

天野は強引にパトカーの車内に強引に乗せられる。そこには警官とスーツを着た刑事の男が険しそうな表情をしては強く言い放った。

「天野だな!!お前を麻薬及び覚醒剤取締法違反また違法薬物売買の現行犯で逮捕する!」

カチャリ!!

警官は天野に手錠をかける。すると天野は涙を流し、強く反論する。

「!!…そんな。私は何もやっておりません!!」(ポロポロ!)

「しらばっくれるな!!…お前のロッカーの中にこれが見つかった!!…これは一体何だ!?」

警官が天野に見せたのはMDMA(合成麻薬)であった。それも約10粒の量があった。

「お前…自分でも乱用して飲んでいるのか!?…どうなんだ!?」

「いい加減はけ!!」

「飲んでいません!!…そもそもそんな薬を売る事など…私はやっていません!!それも…全部…!!全部三木川がやったことなんです!!」(ポタポタ…)

天野は涙を流しながら自分の身の潔白を証明しようと三木川の名前を出す。しかしそのワードを聞き、警官がまるで確信的な証拠であるということを聞いたのか、このように伝えた。

「その三木川という女子生徒から、全部電話で通報して話してくれたのだよ…」

「君が隠れて薬を売る…密売業者だということを!!」

「!!」(そ…そんな…)

「ともかく事情は署で聞こう。発車しろ!」

「ハッ!!」

ブロロロロ…

ブーーーーーン!!

「!!…グス…えぐっ!…いやぁ……いやぁああーーーーー!!!!」(豹…助けて…!!…助けてよおおぉおぉーー!!!!)

・・・

「……」(ペラ…ペラ…)

豹策は、屋上のベンチに座り、本を読んでいた。そして一枚の桜の花びらが風に乗っては、豹策の本のページに舞い降りた。

「…桜か…それにしても遅いな。…天野。…一体何してるんだ…?」

豹策は、普段屋上に来て元気よく挨拶する天野の姿が見えない為、安否を心配していた。そしてその真実を後日知ることになる。

その一週間後…

「…!!」

ダーーン!!

!! 何だ何だ!? あれって確か霧矢じゃね!? そういえば天野と連んでるとこ見たことあるな〜…

豹策が見たのは、そこには退学通知書に書かれた天野の名前であった。それを見ては衝撃のあまりに壁を叩きつけ、悔しさのあまりに涙を流していた。更には、その現場を発見した三木川を表彰し、称えるような記事があり、更に怒りを覚えた。

「……ッ!!」(いや…今ここで怒りを露にしてしまったらマズイ…だが覚えていろよ…三木川!!…絶対に化けの皮剥がしてやる!!…そして待っていろ天野!…絶対にお前の無実の罪を晴らしてやる!!)

タッタッタ…

「…霧矢くん…あの人もあの子と関わりがあるのね。……どうする?」

「助けてあげようよ♪」

「お互い、協力して黒幕を潰そうぜ〜い!!」

・・・

その夜・あるクラブ

「あはははマジで最高〜♪いい気味よね〜アイツ〜♪」

ゲラゲラ!! ギャハハ!! 

三木川はあるクラブの一室にいては天野を貶す言葉を持ちかけては、ある仲間の男が話しかけた。

「でもよ〜三木川〜…何でその天野って女嵌めたんだ〜?」

「あの女は前から気に入らなかったから!!…あんな気が強くて私の言うことを聞こうとしない女は〜…こうして粛清してはお仕置きさせてあげないとね〜♪アハハハハ!!…あ〜これで私は高校で密売業者を捕まえては救った英雄扱い!!…誰も私に逆らえる奴はい・な・い・の♡」

「へへへへ…悪どいこと考える女だな〜!」

「まぁね〜♪この世は弱肉強食よ〜♪」

「んじゃ〜…へぇ〜!この薬は高く売れるわね〜♪」

「安くしとくよ〜!!」

「…じゃあ買った♪…ウフフ♡」

「……」

カチッ!

・・・

「ただいま…」

「おかえり豹策。…なんか最近疲れている様子だけど、何かあったの?」

「…別に何もないよ、母さん。…ちょっと勉強があるから…」

「…豹策…」

ガチャ…バタン!

シャーーー!

カチッ…キィーーー…

「……」(待ってろ…天野…お前の無実…絶対に晴らしてやる!!…お前にも心強い仲間がいたんだな…大事にしろよ)

豹策はPCの電源を起動する。すぐさまネット接続し、チャットルームのサイトを開いて、ヘッドセットにてネット通話を開始し、ある者達とチャットを開始する。



🎼Back Ground Music 》》》



prrrrr!!

【豹策】(…霧矢だ!今クラブから出て帰宅したところだ。…三木川が売人から薬を手渡した証拠の音声データをボイスレコーダーで録音した。今から共有してチャット内に送る。)

【???】(ご苦労〜♪私達も近くで貼っていた時に撮影した写真も添付するね♪)

【豹策】(助かる。…あとの書類作成は俺が担当する。)

【???2】(でも霧矢さんもごめんなさいね…あの子の為にこんなことに巻き込んで。)

【豹策】(…お互い様だ。名前と素性は分からんが、アンタらと俺との目的は一致している。天野の無実を晴らすためだ。俺は何だってする。)

【???3】(んで作戦はいつ決行するんで?)

【豹策】(早いうちが良い…と言いたいところだがもう少し待て…)

【???】(どういうこと?)

【豹策】(ここは…物的証拠を元に…裁判で立証させよう。俺が証人尋問を引き受ける。法に基づいては奴を…三木川の悪行を立証して…裁く!!)

【???2】(なるほど……そうすれば新聞にもニュースにも掲載されては、顔も実名も…そして今回罠に嵌めたという事も…立証されると…)

【???3】(それいい作戦ぜよ!!…ま、学校が大ごとになりそうではあるかもな…)

【豹策】(…遅かれ早かれ…怠惰な保身に走った学校側は…いずれこうなるといったところだ。)

【???2】(そうね…実際に三木川の被害によって、何人も生徒が食い物にされては罠に嵌められたのは確かね…)

【???】(天野…あの時に三木川と衝突して、運悪く…)

【豹策】(音声データが却下された時に備えての証拠書類はとっくに出来上がっている。後は被害者の証言と日時とか明確な証拠があれば、奴の罪を立証することができるはずだ。…力を貸してくれるか…?)

【???】(もちのろん!)

【???2】(あたり前田のクラッカー…)

【???3】(了解ぜよ!!…ヴェノさん!!)

【豹策】(?…ヴェノ…誰のことだ?)

【???3】(いんや〜…ついね!豹策さんを海外の刑事ドラマの主人公にヴェノって人がいて、なんか雰囲気が似てるからそこから取ったんぜよ!)

【???2】(クールキャラってやつね…弄りがいがありそうね…)

【???】(じゃま…よろしくヴェノさん!)

【豹策】(…変なあだ名をつけるな。)

【???2】(いいんじゃあないの…コードネームぽくて、身分を隠せるわよ〜♪…ヴェノくん♡)

【???1】(よろしくね!ヴェノさん!!)

【???3】(ヴェノさん!)

【豹策】(…普通に豹策と言ってくれ。)

・・・

チャットの者達と、会話をしては情報交換を終えた後、しばらくの月日が流れてはいよいよ裁判の日が近づいてきた。


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜逆転裁判より・尋問〜アレグロ2001

カンカン!!

ある地元の裁判所〜

「では被告人。…前に」

「……」

ジャラジャラ…タッタッタ…

「……っ!?」(!?…天野…くっなんて姿に…!!)

豹策は、久しぶりに見た天野の姿を見て驚愕した。そこには以前のような明るい表情とは違い、手錠をかけられては顔は痩せこけてはやつれ、拒食症患者のような表情をしており、ここ何日も食事をしていない状態のようであった。以前のような活気が一切見られず、生気の感じられない表情をしていた。それを見ては傍聴席に座る豹策は悲しみを覚え、三木川はその様子を内心、嘲笑っていた。

「………」(フフッ♪)(ふふ…ざまあ〜ないわね〜♪…そろそろお迎えも近そうね〜♪…今ここで引導を渡して…すぐ楽にしてあげるわ〜♪)

「それでは…これより開廷します!」

カン!

今回の事件の審議は、天野が何処で覚醒剤を所持し、ロッカーの中に入れていた合成麻薬(MDMA)をいつ何処で入手し、出回ったのかという容疑について審議する内容であった。そして証言台には被告人として天野が立ち尽くし、弱々しい表情で見上げる。それを確認し終えた裁判長は被告人天野に身分を聞き出す。

「被告人。…あなたの名前は?」

「…××天野です」

「学生ですか?」

「…高校三年生でした……」

「あなたは覚醒剤との関わりは?」

「……黙秘します」

ガヤガヤガヤ…

「静粛に…では証言者は前に出てきてください」

裁判長はそういうと、最初に寄越してきたのは三木川であった。彼女は堂々とそのまま証言台に立ち、裁判長と視線を合わせる。

「あなたの名前は?」

「三木川××です!」

「学生ですか?」

「高校三年生です!」

三木川は、裁判長の前でありのままの事を話した。そして遂に尋問が始まった。

「では、三木川さん。貴女が天野さんが覚醒剤を隠し持ち、隠れて売買していたことに気づいていましたか?」

「…はい。そしてその現場を知り、気づいた私が警察に通報しました」

「いつから気づきましたか?」

「5月の初めに、高校の中で便所内で集まってこそこそして怪しかったのでその時にポーチの中で天野さんが何かを整理していました。その際に隙間から、何か色がついた薬があったので確認したら、保健体育の授業で学んだMDMA…合成麻薬と言えばいいんでしょうか。…それが見つかりました」

「!!…ち…違う!!それはアンタじゃあないの!!…うっ!!…ゲホッ!…ゴホッ!…くっ!」

「!!…」(天野!…今は落ち着け!…)

「…では、あなたは天野さんのロッカーの中を除いたことは?」

「…ありません」

その三木川の発言から検察側から、一つの立証が出た。

「裁判長……ひとついいだろうか?」

「!!」

「検察側。…異議を申し立てなさい」

「先程の三木川氏の発言から、一つ質問させてほしい」

「…え?」

ざわ…ざわ…

「これを確認してもらえるだろうか?」

すると、裁判所のモニターから、何か指紋が付着したシートがあった。それを見せては更に話を進めていく。

「これは、天野氏のロッカーを鑑識に調べさせたものである。すると妙なことに、天野氏の者とは別の指紋が見つかった」

「!!」

「!!」(検察官…鋭いところを見たな…)

「…そこで質問をさせてもらおう。……証言人の三木川さん…あなたの利き腕は?」

「…右利きです」(…まさか…疑われている!?)

「裁判長、いいですか?」

「弁護人。異議を認めます」

裁判所の中は異議の嵐が巻き起こる。検察の尋問内容に対し、次は弁護人が異議を申し立てる。

「指紋なんですが、彼女と一致するものではないようです」

「?…どういうことですかな?」

「事件現場でのロッカー周りの方を確認するも、天野さんと三木川さんの距離とは五つほど離れた位置にあります。そんなに離れているのに、普通ロッカーを間違えたりするでしょうか?」

「!!…っ!!」

「ふむ。……確かにそうですね」

「!!」(そ…そんな…)

「…!!」(…確かにそうだ!…っ!…くそっ!!)

「……っ…〜♪」(ふふ…助かったわ〜♪)

「………?」(…あの笑みは?…あの様子では…彼女…何か隠しているな…)

尋問の時間はかれこれ長く続く。三木川は心に余裕の表情を見せていた。そしていよいよ裁判も終盤に差し掛かってきた時、確信的な証拠で動き出す。

「では三木川さん。……あなたはそれ以外にも、天野氏に対し何か不審な動きはありましたか?」

裁判長の言葉に三木川は自信を持ち、こう答えた。

「…はい。彼女が夜遅くに繁華街に出ては、歩いていた姿をよく目撃したと聞いておりました」

三木川は裁判長に対し、自分の事実を真っ向から否定するかのようにはぐらかし、偽証して主張する。

「では、あなたはその現場には居合わせていなかったと…夜遅く繁華街には普段出歩いていないと言いたいのですね?」

「はい!」

「裁判長…いいでしょうか?」

三木川の証言に対し、今度は弁護人から異議を申し立てる。

「弁護人の異議を認めます」

「……」(さっきのちょろい弁護士さんね…ふふっ♪…何処からでも来なさい!)

弁護人は裁判長に許可をもらった後、このように発言した。

「三木川さん…あなたは本当にその現場を見ていない。そして、夜遅く繁華街には普段出歩いていないというのですね?」

「はい!」(ちょろいわね〜♪)

三木川は余裕があるからか、自信ありげに発言した。すると弁護側は、三木川の思惑とは違い、このように異議を申し立てた。

「三木川さん。…貴女今……嘘をつきましたね?」

カンカーン!

「…!?」(ええっ!?)

「!!」(…え…?)

「!!」(なぁっ!?…弁護側は…一体…!?…まさか!?)



🎼Back Ground Music 》》》



♪〜逆転裁判5より・異議あり!2013

「…どういう事ですかな?…弁護人?」

「どういう事なのだ?…弁護側?」

「証拠をお見せします!こちらをご覧ください!」

ザザーー…

弁護側は三木川の発言した証言に対し、決定的な矛盾を立証する証拠としてある証拠品をつきつける。それは三木川が夜遅くにある怪しげなクラブに出入りしている記録が写った監視カメラのビデオである。そして、その数は一ヶ月に10回以上は出入りしており、その隣には刺青やタトゥーを彫った派手な服装をした者と一緒に行動し、近くのホテルに立ち寄った明確な記録があった。

「…!?」(あ…あれは!?)

「!!」(カメラ…!!)

「!!」(そうか…監視カメラだ!!…それに決定的な人物が写っている!…これなら!!)

「今回の通報者である三木川さん。…事件の関係者としてあなたの事も調べさせていただきました。そして聞き込みもしました。すると彼女は、この繁華街を何度か彷徨いていたからか、キャッチやその他の人からも怪しい人物と一緒に行動していたという目撃証言が多数寄せられました。そしてその隣の者との関係には、裏業者とも手を引いているという証言もありました」

「…!?」(あ…ああ…)

ざわ…ざわ…

三木川はその発言を聞き、心当たりがあったのか困惑の表情を見せていた。その表情を見た弁護側は、確信的な証拠だと感じ、更に追求する。

「…これは一体どういう事なのですか…三木川さん?……答えなさい!!」

ダンッ!!

「!!…っ!?」(まずい!…迂闊だったわ……)

「検察側、宜しいだろうか?」

弁護側が問い詰めようとした時、まるで助け舟を渡すかのように検察側が主張を遮り、裁判長に異議を申し立てる。裁判長は検察側に対する異議を許可する。

「検察側の異議を認めます」

「このビデオの内容は、今回の天野氏の覚醒剤所持の事件のものとはかけ離れるものである。よってこの証拠は無効だ」

「!!…〜♪」(…ふふそうよ。…これで…)

三木川は首の皮が一枚繋がった表情をして安堵した。しかしその安堵の表情を一人の青年の発言によって遮られる。

待ってください!!

「!?」

「…む?」

「!!…なぁっ!?」(あ…アイツは…確か同じクラスの…!?)

「!!…え…ひ、豹…?」(…来てたんだ…ごめんね…こんな姿で…)

「…あなたは…?」

裁判長が豹策の身分を聞く。すると豹策は誠実に誠意を見せ、その覚悟を一同に見せる。

「失礼します。私は…天野の同級生……霧矢豹策と言います。天野の冤罪を晴らすと同時に、この三木川の疑いを立証できる確定的な証拠を持っております。証言台に立たせてください。…どうか…よろしくお願いします…」

スッ…ザッ!!…!!…コツ〜〜ン!!

「!!」(ど、土下座ぁっ!?)

「!!」(ひ……豹…)

「……」(この土下座の姿勢…誠意や誠実さをも感じられる。…それに彼の目は、本当に何かを持っているようだ。)

「……」(ふむ…検事側からしても気になる。…一体それは何なのだ…)

豹策は誠意を持って目の前で証言の許可をもらえるように頭をつけ、土下座をしてでも許可を貰おうとする。その様子に裁判長は頷く。

「ふむ。……わかりました。では霧矢さん。…証言台に立ってください」

「!!……はい。……失礼します」

タン!…タン!…タン!…スタッ!

霧矢は初めての証言台に立った。その重々しい空間は、気を引き締めるには最適の空間であった。心の準備が出来たのか、裁判長は豹策に対し、証言を提出するように促す。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜逆転裁判VSレイトン教授より・追求・魔法をかけて

「では、証言してください」

「それは、こちらに録音されています。ご静聴ください」

霧矢が取り出したのは一本のボイスレコーダーであった。そしてその内容は、重低音の響く空間の中とはいえ、聞き取りがとても良いのかプロ仕様の高性能ボイスレコーダーであった。そこには、先程証言台に立った三木川の音声が鮮明に録音されていた。

ジジ〜……ジジ〜……〜♪

『あはははマジで最高〜♪いい気味よね〜アイツ〜♪』

ゲラゲラ!! ギャハハ!! 

「!!…っ!?」(これは…私の声…!?…マズイそれ以上はぁ!?)

「!!」(…!!…あのボイスレコーダー…まさか!?…そっか…新聞部のみんな…ありがとう!)

「……」(確かにこの女性は三木川さんの声だ…それにこの独特の重低音のような雑音もある。これは間違いなくクラブハウスの中だ)

「……」(ふむ…証拠はまさかボイスレコーダーとはな)

『でもよ〜三木川〜…何でその天野って女嵌めたんだ〜?』

『あの女は前から気に入らなかったから!!…あんな気が強くて私の言うことを聞こうとしない女は〜…こうして粛清してはお仕置きさせてあげないとね〜♪アハハハハ!!…あ〜これで私は高校で密売業者を捕まえては救った英雄扱い!!…誰も私に逆らえる奴はい・な・い・の♡』

『へへへへ…悪どいこと考える女だな〜!』

『まぁね〜♪この世は弱肉強食よ〜♪』

沈黙する裁判所内で再生されるボイスレコーダー。そして音声が流れるにつれ、いよいよ三木川が禁忌を犯した確信的な証拠がレコーダーの会話内容から再生される。

ジジ〜……ジジ〜……〜♪

『んじゃ〜…へぇ〜!この薬は高く売れるわね〜♪』

『安くしとくよ〜!!』

『…じゃあ買った♪…ウフフ♡』

カチッ!

「…これが証拠です…三木川…やっとお前の本性を…化けの皮を剥がせたよ…」

「…くっ!!」(ギリギリ…)(霧…矢ぁぁあ!!…アンタぁぁ…!!)

「……グスッ!!」(豹…!!ありがとう…!!…ありがとう!!)

「証言者…この音声はいったい何処で?」

裁判長は肝心な音声データをどこで入手したかを問う。すると、豹策は堂々と言い放った。

「私が変装して…怪しげなクラブに潜入し……隠れてこのやり取りを録音しました」

「…その時の服装は?」

「黒の服にフードのあるパーカーで、下はジーンズを履いていました。入店したのは午後21時52分頃。店を出たのは午後22時05分頃。…その間に録音を終え、速やかに外に出ました」

豹策は裁判長に当時の服装と細かい入店時間とクラブハウスを出た明確な時間を証言した。そして裁判長は弁護側に意見を求める。

「ふむ。…では弁護人。監視カメラの記録を…」

「はい」

弁護側はビデオを確認する。するとそこには豹策の証言通り、その時間帯に先程話した内容通りの服装で、怪しげなクラブから出入りをした証拠が映し出されていた。

「…霧矢さんの証言通りのようですね。…三木川さん…何か弁明はありますか?」

弁護側は三木川の方をジッと見る。すると、三木川は豹策に抵抗しようと感情を顕にする。

「…くっ!!…あーーっ!!もううるさいうるさいうるさーーい!!!!/////…ハァ…!!ハァ…!!ハァ…!!…それだと霧矢!!アンタもそんな遅い時間にほっつき歩いたから同罪なんじゃあないの!?それにアンタもあのクラブに入ってあの現場を見て聞いたってことは、私と同じように隠れて密売業者から薬を買ってたんじゃあないの!!あのフロアに入ったってことは……はっ!?」(クワッ)

感情的になった三木川は思わず口を止められず豹策に追及する。そして自ら墓穴を掘ったのか自分の行った罪を盛大に言い放った。その発言を聴き逃さなかった豹策と弁護側と検察側は、鋭く真面目な目で見つめ、その決定的瞬間を見逃さなかった。法を遵守する者として徹底的に追及しようと、強く言い放つ。

「…認めたようだな…三木川…」(ギロッ!!)

「……認めましたね!!」(キッ!)

「……認めたな…!!」(ギラァ!!)

「あ…ああ…ぁ…」(グラグラ…ポロポロ…)

「…ッ!!」(ポロポロ…)(お願い…豹!!…あとは…頼んだよ…)

天野は涙を流し、自分の身の潔白を祈るかのように涙を流して祈る。弁護側、検察側は共に鋭い眼光で三木川を追い詰め、睨みつける。今回の事件の黒幕であり真犯人だということを法の元で遵守した上で真実を追求し、立証された。もう三木川の弁明の余地は無くなり、逃げ道が絶たれた。そして証言側に立っていた豹策は誠意のある態度で三木川に対し、重々しく口を開く。

「道を誤ったな…三木川。…お前は自分の背負っている麻薬所持の罪を天野のみならず、これまで様々な生徒に覆い被せては陥れて…人として許されない事をした。お前は学校のヒーローでも…英雄ですらない。…違法薬物所持という法を犯し…女子高生の皮を被った…立派な犯罪者だ。誰も…もうお前に味方する奴はいない」

「!!…ぐっ!?」(グラグラ…ポロポロ…)

「…そして…あんなに明るく元気だった天野を…気に入らないからという個人の感情一つで卑劣にもロッカーの中に合成麻薬(MDMA)を忍ばせ。…罪をでっちあげた暁に…こんなに弱々しい顔にさせるまで徹底的に精神的に追い詰めようとした。…そして…何よりも一番許せないのは…そんな目に遭わせた元凶でもある…お前と大きく繋がり…裏で糸を引き、獲物が来るのをじっと待っている麻薬密売組織の闇市業者だ。……だからこそだ。……一つだけ言える真理がある…お前は…いや…」

豹策は、天野が勧めてくれた麻薬取締官を題材にした漫画。マトリデカに登場する麻薬取締官の主人公が犯罪組織に言い放った言葉を思い出し、まるで裁きの鉄槌を振りかざすかのように三木川に対し、腕を振り上げて指を刺し、力強い発言で宣言した。

《お前らが麻薬に手を出しちまった以上…とっくに行くところは決まっていた!…大人しく投降しろ!》

ダーーン!! ビギィーーーーン!!!!

「!!!???…あ…あぁぁ………いやぁ……!!…そんなの……!!…い…いやあぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!………」(ポロポロ!…グラグラ…フッ…)

豹策の放った強い主張が一気に三木川を追い詰める。決定的な証拠によって本当の事件の真相が明るみになり真実に辿り着く。裁判所という法廷の場で自分の犯した罪が公になり、立証され犯したその罪の重さに対する重圧に耐えられず、三木川は絶望のあまりに涙を流しショックを受けて悲鳴を上げ出す。そしてプツリと糸が千切れたかのように、意識を失いそのまま腰を抜かした。

ガクンッ!!!

「確保ぉおおお!!!」

ガチャン!!!

「…グスッ!!…うぅ…うう…!!!!」(…ありがとう…!!…本当にありがとう…豹!!!!)

天野は歓喜の涙を流し、豹策の後ろ姿を見ている。そして弁護側も検察側もまるで豹策を称賛するような声を心の中で語りかけている。

「…フッ!」(法を遵守する僕達の立場がないね…霧矢豹策くんか…一人の女子生徒を助ける為に…か。…全く大した青年だよ!…でも危険な事だから、もうこんな無茶な事はしちゃあだめだよ!)

「…うむ…」(大した度胸のある青年だ。もしかしたら将来、法の裏側から合理的に基づいては、いや…法を冒してでも何かを守り通す男になるやもしれないな。)

豹策の放った覇気のある言霊のような言葉が、不利な法廷の状況を一気に逆転へと導いた。そして裁判長から、天野の判決が今言い渡される。

「では、これより判決を言い渡します。被告人天野氏の判決は………」

「……」

「……」

「……」

「……」

ざわ…ざわ…

裁判所の中は沈黙する。そして裁判長から判決が下される。

「被告人天野氏の判決は……《無罪》とします」

《無・罪!》

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「!!…勝った…」(天野…やったぞ…俺は…勝った!)

「…豹…ありがとう…!!…ありがとう!!…う…ぅぅ!!……!!あぁあああああーーーー!!!!!」

「そして。…三木川氏の裁判は後日改めて開廷と致します。…ではこれより…」

「閉廷!!」

カーーン…

その後日、三木川の裁判が開始され、三木川はこれまでの麻薬所持の罪もあり、また周りからの証言や証拠となる写真や書類データがあったことから、最終的に懲役10年以下の判決が下された。その後の三木川の行方は未だ分かっていない。そして、三木川と関わりのあった麻薬密売組織もこの事件をきっかけに協力者から渡されたデータによって証拠が明確化され、一斉検挙される事となった──────


・・・
・・


B. いいえ
《Capitalo・3》 
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》




その後の学校生活…

ざわ…ざわ…

「!!おお〜来たぞ〜!!我が校のヒーロー!!」

霧矢さぁ〜ん!! キャー♡!! 渋い俳優さんみてぇだよなぁ〜!! 憧れのせんぱ〜い♡!! よっ!逆転弁護人霧矢!!

「…ハァ…疲れる…」

トン!

「!!…アンタらは…」

「どもども〜!」「新聞部よ〜♡」「見事勝利したな〜ヴェノくん!」

豹策の目の前には、二人の女子生徒と一人の男子生徒がいた。それぞれの名前には井山・大宮・斎藤と書かれており、会話の内容と声から何かを察したのか、三人に話し出した。

「…そうか。…下駄箱の中に手紙があってはネットIDが書かれていて、一体誰かと思ったら…新聞部…お前達だったのか…」

豹策は今回の事件のことについて振り返った。

〜時は戻り…天野の退学通知書が張り出された放課後

「…?…なんだ?…封筒?」

『開けて♡天野の友達より!』

「…!!」(ペラ!)

豹策はその封筒の内容を見て確認する。そこにはこれまで三木川の侵してきた悪行。そして夜ぶらついては、様々な男と交友関係の者との黒い情報があった。そして行きつけのクラブの店の情報について詳しく記載されていた豊富な捜査資料が記載されていた。

「…一体誰が…?…ネットIDか…家に戻ってみてみるか…」

・・・

〜豹策の家

「PCは起動させた。…アカウント…友達登録…」

豹策はPCを起動し、チャットサイトに封筒に書かれていたIDを入力する。

友達申請を送りました。

ピコン!

【井山】「合言葉をどうぞ!」

友達申請を送ると数秒後井山というものから、合言葉の申請を申し込まれる。豹策は冷静になりつつ、合言葉を入力する。

「…合言葉は…天野の友達と…」

ピコン!

【井山】「ありがとう!…じゃあ早速連絡するね♪」

prrrrrrr!

「!!…突然だな…」

井山というものから突然ネット通話によるチャットが開始される。豹策は迷ったが、すぐに連絡に応じた。

【豹策】(…霧矢だ!)

【井山】(初めまして霧矢くん!私達が天野の友達だよ!)

【豹策】(…一体誰だ?…何者なんだ?)

【大宮】(堅い話は抜きでね♡)

【豹策】(!!…増えた。)

【斎藤】(安心してよ!…僕達は君の事をよく知っているよ!)

【豹策】(!?…どういうことだ?…生徒の誰かか?)

【井山】(とにかく単刀直入に言うわ!…私達、天野を助けたいの!)

【大宮】(あの子があんなことするはずがないもの!…だから…)

【斎藤】(協力してくれないかな!?君があの退学通知書の前で悔しそうに流した涙は…天野を心から信頼していた証拠さ…だから僕達は君を信用できる!!)

【豹策】(…その口ぶりからすると、確かに生徒の誰かのようだな…分かった。俺とアンタ達の目的は同じのようだ。…打倒三木川に協力してくれるなら…助かる…)

【井山】(!!…ありがとう!)

【大宮】(…ありがとね!…あと豹策くん…無理を言って御免なさい。)

【斎藤】(ありがとう!…一緒に天野を救おう!)

【豹策】(…ただし、この一件はかなり危険だ。…それだけは肝に銘じておけ。)

【井山】(うん!)

【大宮】(了解〜♪)

【斎藤】(全力を尽くすよ!…じゃあ作戦をいうね。…封筒の中にあるそのボイスレコーダーがあるでしょう。)

【豹策】(…そういうことか。潜入捜査なら喜んでする。幸い俺はこんな顔だ。…怪しまれず、クラブハウスの中なら容易く潜入可能だ。)

【大宮】(確かにダンディーなお顔の貴方なら怪しまれずね♡)

【豹策】(…場所は…ここか。…分かった。ここの会員証は何故か親父が持っていた。…運がいい。もしも聞かれた際にはそれを使って誤魔化す。)

【斎藤】(でも麻薬を取り扱っている連中が屯する場所で、身分がバレるとかなり危険ぜよ。…それでもやるんけ?)

【豹策】(…ああ。…もしもの時はお前達が警察に連絡してくれたらいい。その時に写真を撮っておけば暴行罪で…奴らは御用だ。)

【井山】(なるほどね!…じゃあその役はこちらが引き受けるよ!…ついでに三木川やその連れがクラブの出入りした明確な時間をメモしておくね!…貴重な証拠になるはずだから。)

【豹策】(…分かった。…じゃあ決行はこの日付通りに実行する。いいか?)

【井山】(うん!)

【大宮】(頼むわね♪)

【斎藤】(ああ。…じゃあ気をつけてね!…霧矢くん!!…健闘を…祈る。)

・・・

ドンジャドンジャ〜♪

「……」(いた。三木川…それに…怪しい奴等…あのカーテンの中に潜り込み…あの隙間なら奴らの音声を盗めるか。)

スーッ……

「……」

豹策はバレないようにフードを深く被っては隠密行動を行い、ゆっくり接近しては三木川の座っているソファーの背後にて音声を録音した。

カチッ!

「あはははマジで最高〜♪いい気味よね〜アイツ〜♪」

ゲラゲラ!! ギャハハ!! 

・・・

「……」(…任務完了だ。…いや…まだだ…これだけでは終わらせない…三木川の裏で麻薬を扱う連中を…確実に奴らを一人残らず駆逐してやる!…もう天野のような犠牲者は出させない…絶対にだ!!)

タッタッタ…

〜時は戻り…高校三年の学校生活。

「…だが…天野は…」

「…うん…釈放はされたけど…引っ越してしまったね…」

「この町で噂になるくらいだったから…余程非難を浴びたのよね…別れの挨拶もなしは…寂しいものね。」

「…でも!あの事件をピックアップしてもうあの犯罪組織は逮捕されて…この町にはもういないんだ!…これで僕達も安心して暮らしていけるよ。」

天野はこの名古屋の町を引っ越しては三人と豹策に別れを言わないまま、そのまま旅立ってしまった。三人からは寂寥感(せきりょうかん)を感じては考えに耽っていた。その中で、豹策は決意した。

「…俺…進路を決めた。」

「え?」

「豹策くん?」

「一体何を?」

三人は、豹策の突然の発言に疑問を感じていた。すると豹策は少しばかり笑みを浮かべては、三人に強く宣言した。

「…俺は薬学部の大学に進学して…厚生労働省の組織の…麻薬取締官…通称マトリになる。…もう天野のような犠牲を増やさないためにも…俺は…必ず成し遂げる!…この日本国内から…麻薬の無い世界を作っていきたい!」(フッ)

「麻薬取締官か〜!…かっっこいい!!…なんか刑事みたいだね!!」

「いいんじゃあないかしら!…今回の事件も…あなたの潜入捜査で解決したんだから〜♪」

「ヴェノ・マトリ捜査官…!!…うん!いい響きだね!!…じゃあ記念に写真で大きく取り上げるよ!!」

カシャ! カシャ! カシャ!

三人は激励しては写真を撮る。それを豹策は手を覆い、フラッシュを止めるように促す。

「…やめろ。」(サッ!)

「恥ずかしがらな〜い♪」

「もっといい笑顔で〜♡本当に俳優面なのかダンディーよね〜♪豹策くんって♡」(私…霧矢くんすっごく好みだわ〜♡)

「この歳にしては顔も濃いし、俳優面だよね〜!これは写真集にすれば売れそうだよ!!」

「…はぁ…全く…」

その後、豹策は、新聞部の三人達と最後の三年の高校生活の青春を送っては充実した日々を過ごした。その来年には、ある薬学部の大学の試験を受け、見事合格しては晴れて大学生となった。薬学部の勉強はとにかく忙しく、内容も難問であったため、苦労をしたようではあった。しかし、それでも豹策は日々勉学に励んでは6年制の大学を無事に卒業し、薬剤師の国家資格を取得する。その後、24歳になっては厚生労働省の定める麻薬取締官の狭き門の試験を無事に突破し、晴れてマトリとしての勤務に就くことになる。ここから、豹策が麻薬取締官として本格的な道へと歩んでいく。

・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》




〜その数年後、ある路地裏〜

「ハァ…ハァ…くそっ!?…何でバレたんだ!?」

「そこまでだ。…観念しろ!!」(キッ!)

「!!」

バックを持っていた男は、ある路地裏に逃げ込んでいた。するとそこから、何処となく暗い路地から黒のジャケットを羽織り、ドット柄のシャツ、下はタイトなストレッチデニムを着用してはまるで黒豹を連想するかのような俳優のような濃い顔の男が姿を現した。そして真面目な表情をしては、目の前の男を追い詰めていく。

「麻薬取締官の霧矢だ。…お前を麻薬密売の容疑で確保する!!」

《厚生労働省麻薬取締官:霧矢豹策25歳》

「…う…く…来るなぁー!!」

ジャキッ!!

「……」

相手の男は、サバイバルナイフを使って威嚇する。そして徐に笑みをこぼし、余裕の表情をする。がしかし、霧矢はそれに動じることもなく前に進む。

スタッスタ…

「!!…あはは…馬鹿なやつだ…うぉらああ!!!」

「……だぁりゃ!!」(ブン!)

クルン!!

べキィーー!!!

「あぎゃああ!!!!は…歯が…!?…う!?…うぉわあああ!!!!」

ブン!!…ダァアアアンンン!!!

豹策は犯人の攻撃を容易く避けては勢いよく回し蹴りを繰り出し、犯人の顔面を正確に蹴り上げる。重く入ったからか歯が抜け、激痛でもがいている。しかし、それで終わらず犯人を背負い投げしたまま、手を後ろにして縄を使い犯人の身柄を拘束すると、トランシーバーにて連絡を行う。

「…確保!…こちら霧矢!…逃亡中の麻薬の密輸組織の主犯となる男の身柄を拘束しました!…至急応援を!」

『了解した。お手柄だな!…まだ2年目と日が浅いのに…大したものだ霧矢!!』

「…お褒めに預かりまして。ブツもこちらで責任を持って回収しておきます。…では…」

ファウファウ!!

「…と思いきや、もうお出ましのようだな…」

警官のサイレンが鳴り響き、覆面のパトカーが到着しては若い刑事と熟年の刑事と警官が現れては、豹策に向かっては銃口を向けて威嚇する。しかし豹策の顔を見た途端に銃口を下ろし、フランクに声をかけた。

「止まれ!手を挙げ!…!?…なんだ…霧矢。…お前だったのか!?」

「おう…霧矢。…早速マトリとしての大仕事をこなしたか。…ご苦労だっだな」

「…こっちは済ませた…これは奴らから押収した薬だ。…槇原。南原さん…後の事はアンタら公安警察の出番ですよ。…槇原。…しっかりな」(グッ…)

「…おう。相棒!…へへ!!」(グッ!)

コーン!!

豹策と公安警察に所属している槇原宣行という男は、歳は10歳も離れている。知り合ったきっかけは、職務の遂行として警察官から、格闘術や拳銃・特殊警棒・棒術のスキルを叩き込まれる日々の中で、公安警察所属のベテラン刑事の南原とそのバディであり、公安警察所属の刑事の槇原と出会ったのがきっかけであった。槇原自身フレンドリーだからか、槇原自らが豹策に名刺を渡しては連絡先を交換し、その後チャットやらで連絡が積極的に来たり、プライベートでもよく会い、お互いの信頼関係を築いていってはこうして相棒と呼ぶ仲となった。

「…と言いたいところだが…まだいるようだな。霧矢。槇原。構えておけ」

「!!」「!!」

ベテランの公安警察刑事の南原は長年の経験から相手は奇襲を仕掛けてくると睨み、豹策、槇原に警戒するように促す。すると麻薬組織の残党がこちらを恨めしそうに睨みつけていた。

ザザザザザザッ!!!

「よくも俺達のボスを…」「覚悟はできてるんだろうなぁ…」「生かして返さねえぞぉ〜〜!!!!」

ジャキ!! チャカッ! ジャキン!!

「いけるか霧矢!?」

「…問題ない。…一人残らず…連中を確保するまでだゾォっと!」

ダダダ!!

バキィ! バキョン!!

「あんぎゃー!!」「ぐはっ!?」「な…なんだコイツら…つ…つえぇなんてもんじゃあねええ!!!…おい!もっと援軍を呼べぇええ!!!」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

豹策と槇原の息のあったコンビネーションで、敵を殲滅していく。すると相手は援軍をよこし、二人を追い詰めていく。それを傍観していた南原は霧矢に長い棒を手渡した。

「…はぁ…ったく…若いから加減てのを知らんようだな…まあいいだろ。…霧矢。こいつを使え」

ブン!

「…!!…南原さん…これは…木材ですか?」(パシッ!)

「お前自慢の棒術を連中共に見せてやれ」

「なるほど…確かに霧矢の棒術は一級品だ!…頼んだぞ相棒!」

「……分かった」

「何仲良く喋ってんだ〜w?」「遺言でも唱えてるのか〜?」「なら仲良くあの世にいかせてやるよ〜!!」

ダダダダダダ…

「…だぁりゃああ!!!」

ブォーーン!!

バキィーーーー!!!

「ぐはっ!」「い!?…いでぇよ〜!!」「な…なんだ!?全く飛んでくる方角が見えな…!?」

ブン!!ブン!!…バキィーーー!!!

「「「ギャーーーー!!!!!」」」

豹策は巧みな棒術で相手を殲滅する。その攻撃が見えない早技に数々の組織の人間が倒れ伏せる様を見て恐怖を感じていた。それを見ていた槇原は豹策を賛美する声を上げた。

「やっぱりいつ見てもあいつの棒術は一級品の腕だ。……流石は俺の相棒!」「奴の訓練風景を見ていた時、肉弾戦も申し分ないが、やはり棒術が一番長けていたからな」

「…止めだ!!」

ブン!!ダーーーン!!


🎼Back Ground Music 》》》




・・・

厚生労働省・麻薬取締部

「…ご苦労だったな…霧矢」

「…はい。しかしながら今回は私のみならず、応援に駆けつけた公安警察の槇原さんと南原さんの協力もあっての事です。…私だけの活躍ではありません…」

「…分かった。もう下がってもいいよ。…行きなさい」

「は。失礼しました」

タッタッタ…

任務を終えた豹策は、上に今回の事件の報告を済ませる。そして建物内から外のビルの景色を眺めていた。

「……」(今日も青空が広がっている。だが、いまだに麻薬に対する犯罪は消えない。こうしている間にも、様々な犠牲が増える一方だ。)

タッタッタ…

「ん?おう霧矢!!お手柄だったな!」

「…ああ。関口か…」

豹策は休憩室にて、コーヒーを飲んでいると、部署の同僚の職員関口から声をかけられる。どうやら今回の事件の活躍を聞き、励ましに来たらしい。

「これでお前の昇進も上手く行きそうだな〜!」

「…どうかな…未だにこの町名古屋は麻薬は減らない。またいつ事件が起こってしまうか…」

豹策は、麻薬の事件を解決することに頭がいっぱいになっていた。元々生真面目だからか、羽目を外すことを知らないからか、頑に意地っ張りな姿勢を見せる。それを見かねたのか、同僚関口は明るく声をかける。

「なんだよ〜!折角成果出したのにつれないなぁ〜…なっ!?今度飲みに行こうぜ!!」

「…今は大事な時だ。…それに酒に溺れて業務に支障が出たら困るので遠慮しておく。…じゃあ非番だから俺はこれで…」

スタッスタッ…

「あっ!?おい霧矢!!…はぁ〜…入ったばっかで筋金入りの生真面目気質。…もしくはコミュ障か…全く…あれじゃあ長くは務まらねえぞ…」

・・・

「……ん?」(チラッ)

『薬物・ダメゼッタイ!!』

豹策は白と黒の空間に彩られた厚生労働省の建物内に設置されていた掲示板に貼られていた薬物乱用防止のポスターを見ていた。そこには全国の学生がコンクールで入賞した様々なイラストが掲載されたものであった。それを見ては、豹策自身はまるで哲学じみた事を口に出す。

「このような作品を学生に描かせても、裏では未だに薬物に手をつける…もしくはつけてしまう奴らはゴロゴロいる。…もしそうさせるとするなら…人の抑えきれないという欲望の感情の現れなのかもしれないな…」

コツン…コツン…コツン…コツン…

豹策は生真面目な性格である。故に笑顔をあまり見た人も少ないという。彼にとってはこの麻薬捜査官は何のためにあるのか、誰のためにあるのかという目標を常に考えており、楽しみや娯楽などは捨て、ただひたすらに仕事をこなすという人生の境目に来ているともいえる。しかし、その豹策にも身近な人との繋がりが、自分自身の生き方についての答えを手助けしてくれる者と関わり、一歩を踏み出すきっかけになっていくーーー


B. いいえ
《Capitalo・4》 
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♪〜TOX2より・平穏なる証

・・・

名古屋市内のコンビニ〜

「…今日もコンビニコーヒーだな…」(ゴクゴク…)

ある日の休日、豹策はコンビニでコーヒーを頼み、店の外で飲み、街行く人々を眺めながら空を見て一服していた。するとそこに、一人の女性の悲鳴が聞こえてきた。

「いやぁ〜っ!!…ちょ、ちょっとアンタら!!…いい加減離しなさいよ〜!!」

「…ん?」(チラッ!)

ガラガラ…

「へへ〜ん!」「ちょっと遊ぼうで〜!!」「男勝りな女だが…なかなか可愛い声してんじゃねぇの〜♪」

「ちょっ!…もう一体なんなのよ〜アンタ達!?…私今からすっごく忙しいんだから〜!!」

そこにはチンピラ達が、一人の女性に絡んでいたのを発見する。すると、それを見かねたのか、豹策は三人のチンピラの前に立ちはだかる。

「…その女性を今すぐに離せ…」

「ああん?」「なんだテメェ…!?」「やんのかこらあ!!……!?」

ドカ! バキィ! べキィ!

「あんぎゃ!」「いでぇ!」「ぐはぁっ!!」

バタン…ドサッ! グダン…

「あれまっ!?…兄さん強いんですね〜!!」

「…まあな。…大丈夫か?」

豹策が助けた女性は、もみあげが長めのロングヘアーの女性であり、両サイドは紐で髪をまとめている。上下はデニムで統一されている20代前半の女性であった。すかさず女性はお礼の言葉を伝える。

「私はなんとも。あ、そうだ!助けて頂いてありがとうございます!あの、私!“槇原優花”と言います!!…あの!よろしければお礼しますのでうちに来てください!」

「…?…いいのか?」(ん?…槇原…)

「はい!お礼もしたいので〜!!…では行きましょ〜う!!」

ギュッ!

「…!!…お…おい…」

タッタッタ…

・・・

「ここです!…どうぞ上がってください!」

「…自宅なのか?…結構大きいな。…お邪魔します。」

スタッ…スタッ…

「さあさあ!どうぞどうぞ座って待っててください。」

「……」(内装はしっかりしている。それにしても、独り身にしては…大きな家だ。)

豹策は家の周りを見ていた。家はかなり広く、金に不自由もなく暮らしている家であるように感じた。すると玄関から誰かの声が聞こえた。

ガチャ!!

「ただいま〜!!ふぅ〜仕事終わった〜!!…優花いるか〜?…ん?誰かの靴か?…お客さんが来てるのか〜!?」

「…!!」(こ…この声!?…槇原って…まさか…!?)

「あ〜!!兄貴おかえり〜!そうそう!…今ねぇ〜お客さん来てるんだ〜!!この町のチンピラを蹴散らしては私の事守ってくれてね〜♪」

ガチャン!

「そうか〜!…って!?…おう、霧矢じゃあないか〜!!」

「…!!…やはり…槇原、お前だったのか。…なるほど…縁があるな…」

槇原優花の兄は公安警察所属の槇原宣行であり、彼女はその宣行の妹であった。

「いや〜びっくりした!…まさか霧矢が優花を助けてくれたんだな!…礼を言うよ!」

「…まあ成り行きだ。俺もコンビニでコーヒーを飲んでいた時にいきなり悲鳴が飛び交ってな。…すまないな、勝手に家に上がり込んでしまったようだな…」

「ハハハ!!んな事気にするなって!お前と俺との仲だよ!むしろ大歓迎だ!…相棒!!」(ググッ!)

「…離せ。…暑苦しいだろ」(グィッ!)

「!!…へぇ〜!?…じゃあ兄貴〜!!その人が相棒の霧矢さんなんだね〜!!改めて霧矢さん!!私は槇原優花(23歳)です!!兄貴からも話は聞いてるよ〜!!厚生労働省に勤めるマトリなんだよね!?」

「…まあ。…それにしても元気のある妹さんだな。槇原」

「まぁ〜な!!何てったって俺の自慢の妹だ!!どうだ〜しっかりしてるだろう!?…大きなお世話かも知れないけど…お前もこれくらい明るくなったほうがいいぞ〜!!」

「ちょ!兄貴!!恥ずかしいっての!?///」

「…兄妹仲は良いんだな…いい事だと思う」(フッ)

豹策は薄ら笑いを浮かべる。それを見た優花は笑みを浮かべ、こう言い放った。

「へぇ〜!!霧矢さんって意外と笑うんだね〜!?…なんだよもお〜兄貴〜!!…普段霧矢さんを《鉄仮面》だとか言ってたから、笑わない人だと思ってたよ〜!!」

「…鉄仮面…か…」

「あはは!!だってそうだろう!?お前プライベートの時とかもあんまり笑わないだろう!!…仕事が休みの時くらい羽目外したらどうだ?…それじゃあストレスも溜まるだろう?」

宣行は霧矢の事を気遣ってそう話す。しかし霧矢は頑固なのか、羽目を外すという意味を理解出来ていないような発言をする。

「どうすればいい?」

「!!…どうするって…ハァ〜…!……優花…こりゃあ…」(頭抱え…)

「相当重症のようだよ〜兄貴〜…」(頭抱え…)

「?」

槇原兄妹の二人は、頭を抱えながら豹策の方を見る。そして夕方が近づくにつれて、優花が夕食を作り、食卓へと運ばれて来た。

「はいは〜い!兄貴〜!霧矢さん!お待たせ〜♪」

コトッ!

「へぇ〜!…今日はカレーか〜!!」

「…カレーか…久しぶりかもな」(フッ)

「おおっ!!霧矢さん笑った〜!!…ささっ!どうぞ食べてよ〜!!」

「ありがとな優花…じゃあ…いただきます!」

「…いただきます」

パクッ!

宣行と豹策はカレー一口を口に入れる。その様子を優花はじっと見つめていた。

「ふっふ〜ん!!…どお?」

「うん。うまいな〜!!…久しぶりに優花のカレーを食べたけど…やっぱりうまい!!なっ霧矢!?……霧矢?」

「……!!!」(ムシャムシャ…)

「あら〜〜っ!なんか霧矢さん…美味いからか、私の作ったカレー食べるのに夢中になってる!?」

「ハハハ!…へぇ〜!意外とカレー好きなんだな〜霧矢!!」

「………」(ムシャムシャ…)(カレーか…一度天野が作っては持ってきてくれたことを思い出すな…)

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》



〜♪東山奈央より・初恋

〜時は高校3年生5月中旬の季節・霧矢18歳〜

ピンポーン!

「…?…誰だ?…こんな夜に…」

ガチャ…

「ヤッホ〜♪こんばんは〜豹♪」

「…天野か。…一体どうした?…こんな夜に…?」

夜分遅くに豹策の家の玄関から呼び鈴が鳴り響く。誰かと思い玄関を開けると、そこには顔馴染みの女性である天野が笑みを浮かべて立ち尽くしていた。すると彼女の差し入れなのかカレーを詰めたタッパーが持たれていた。

「ふふ〜ん♪…!!ジャジャ〜ン!!カレーだよ〜♪…多く作りすぎて余ってしまったからどうかな〜と思ってさぁ〜!」

「…カレーか。…いいのか?」

「うん♪…じゃさっ!?折角だし、お邪魔してもいいかな〜?」

「…まあ…今母さんはいないから…上がってもいい」

「やた〜♪おっ邪魔〜♪」

「…はぁ…」

バタン!

豹策は、訪問してきた天野を親身に家へと招き入れる。そして貰ったカレーの中身を電子レンジで温める。

チィーーン!

「おっ!?…は〜い召し上がれ〜♪」

「…これ…手作りか?」

「うん♪…私のね〜♪ささっ!召し上がってよ♪」

「…いただきます」

パクッ!

「…どお?…!!…えぇっ!?」

「…!!!」(ムシャムシャ…!!)

豹策は徐に、天野の作ってくれたカレーを目を見開き、勢いよくスプーンを進ませて口に含んでいく。その様子から美味であることが伺える。

「…ふふ♪…そっか〜!!そんなに美味しかったんだね〜♪私のカレー♪」(ルンルン〜♪)

「……」(ムシャムシャ…)

カチャン!

「…ご馳走様」

「お粗末様でした!…んで…どうだった?」

天野はカレーの味の感想を聞く。すると豹策は微笑し、こう語った。

「…美味かった」(フッ…)

「…それだけ〜?」

「…ああ」

「んも〜う!本当に寡黙なんだから〜!!…そ・こ・は♡…天野!!毎日俺の為に、カレーを作ってくれ!!って〜言ってくれたらいいのに〜!!」

「……それだと告白になるだろ……」

「!!…え…///」(ドキン♡)

「?…どうした?」

「な…何でもないよ…べ、別に///」(カァ〜ッ!…アセアセ///)

「?……まあいい…さてと…」

天野は豹策の突然の発言に顔を赤くする。すると、豹策は立ち上がり、台所に足を運んで徐にタッパーを洗う。

ジャーーーッ…

「!!…豹……」

「…折角ご馳走になったんだ……洗っておく」

「……へぇ〜!…君も…家庭的なんだねぇ〜♪」

豹策はタッパーを洗い、それを天野に手渡す。その後、玄関まで見送る。

「…ご馳走様」

「…うん♪ありがと〜♪……じゃあ、私はこれで…え?」

「…折角だし送っていく。…最近は物騒だ」

「!!///…う…うん♪…ありがとう…///」

ガチャ…バタン!

タッタッタ…

「あ〜豹〜!空見てよ〜!…星だよ!」

天野は指を指す。そこには満点の夜に星空が鮮明に浮かび上がっていた。それを見た豹策も、思わず声を出した。

「そうか。……今日は一段と見えるんだな…」

「綺麗だよねぇ〜♪」

「…そうだな…でも…」

「?…でも〜?」

「…!!」

ダキッ!!

「!!///」(えっ!?///)(カァ〜!!///)

ピピーーー!!…ブーーーン!!

前方から車が近づいていた為、豹策は天野を抱き抱えて彼女の身を守る。そして、注意するように促す。

「…前見ないと危ないぞ。…?…どうした…大丈夫か?」

「…う…うん…///…そうだね///……私は大丈夫だよ…///」(ドキドキ///)

タッタッタ…

「…着いたな…ここでいいだろ?」

「う…うん…ありがとう…///…ねえ…豹?///」

「…なんだ?」

「…あのさ。……私ね…///」(ドキドキ…)

「……」(……そういうことか…だがもう夜も遅い。)

天野は顔を赤らめながら豹策に自分の伝えたい事を言おうとしていた様子であった。しかし、それを豹策は、まるで遮るかのようにタッパーを手渡す。

スッ!

「!!…え?」

「今日は夜も遅い…続きは後日改めて聞いてやる。…おやすみ…天野…」

クルッ!…タッタッタ…

「…あ。…もう…ずるいよ〜豹!!…そんなの…うぅ…グスッ…バカッ!!///…うわぁーーーん!!!」(ポタポタ…)

天野はまるで失恋したかのように涙を流した。そして後日、その話の続きを伝えようと階段に上がろうとした時に教師に止められ、合成麻薬(MDMA)の所持の疑いで警察に連行される。この事実がきっかけで、天野にとって豹策に対し、彼に対する好意の想いを伝えることが出来ず、とても残酷であり、切ない別れの時間の流れを辿る。

・・・
・・




🎼Back Ground Music 》》》



時は戻り、槇原の家

「zzz…zzz…」

優花は疲れていたのかそのままベッドに寝ていた。ベッド周りには、優花が好きなのか北条司の代表作【CITY HUNTER】の文庫本が置かれていた。その様子を宣行は温かく見守っていた。

「よく寝てるな〜…よっぽど、疲れていたんだな…」

「…シティーハンターか。…昔、天野にも勧められた事があった。…たまには息抜きしなさいって…」

「漫画か〜!…確かに息抜きにはなるな。……んっ…」(カランカラン…)

宣行はそういうと、ロックにしていた酒を飲んでいく。その光景を温かいコーヒーを飲み、見守っている豹策の姿があった。

ゴクゴク…カラン…

「…よく飲むな。……槇原」

「ハハっ!…まあ…仕事柄…南原さんとよく飲みに行くからだな〜!」

「…なるほど」

豹策は淡々と返事する。すると宣行は、豹策の交友関係から、これまでの人生の事を尋ねる。

「…そうか。…お前にも高校時代、天野っていう明るい女の子がいたんだな。……それも、お前の事を誰よりも気に入っていた仲のいい友人…か。……その子が巻き込まれた事件で、お前は麻薬取締官の道を志したんだな」

「…ああ。だがもう7年も前の話だ。…今更、あの時の事を悔やんでいない。…だが、時々思うんだ。…天野…アイツが今何処で何をしているのか。……元気でいるのかとな」

豹策は宣行に、天野の安否やこれまでの自分がどういった経緯で麻薬取締官になろうとしたのかを腹を割って事の事情を伝える。そして槇原も、自分の事を伝えた。

「…お前がそこまで言うのなら俺も伝えよう。この槇原一家の事を………そして…お前の相棒として…今俺が仕事で背負っていることを…」

「……」

槇原はそういうと、自分の抱えている事情を隠さずに堂々と告げる。

「…俺達の両親はな。……俺が高校三年生くらいの頃に……病気で亡くしたんだ」

「!!…そうだったのか。…それで槇原…お前は警察官に…」

「ああ。だがそれでも生活は苦しかったよ。俺は警察学校で寮暮らしで、まだ当時6歳と小さかった優花を親戚に預けて…一人ぼっちにしてしまって。…それでもアイツは明るかったよ。…いつも私のことは心配しないでとよく言われたもんだ。…逆に鬱陶しがられるくらいだったかな!!」

「…そうだったのか。…槇原…お前…それで成績や実績を上げ……叩き上げでキャリアを積み…《公安警察》へ配属となったのか。…苦労したんだな…」

豹策は、宣行の人生を知り、今までの彼の道には果てしなく険しく、壮絶な人生があったのだと実感した。そして宣行は、真剣な表情をして本題に入る。

「…無論、公安になれば…今、お前が関わっているようなブツにも手を染めなくてはならないんだ…」

「!!槇原……まさか…お前は…!?」

その言葉に豹策は、心当たりのあるものを感じた。そして宣行は堂々と、現在抱えている身分を言い放った。

「…そうだよな…麻薬取締官として勤務しているお前ならわかるよな。…そう。…俺は麻薬を扱う犯罪組織に潜入している…《潜入捜査官》だ!!」

「…!!」

豹策はそれを聞き、正気でいられなかったからか立ち上がり、宣行を真剣な目で見つめ、その真意を探る。

「…南原さんは……その事を知っているのか!?」(キッ!!)

豹策は、彼の真実を知り、衝撃を覚えた。潜入捜査官になるということは、いやでも麻薬と向き合わなくてはならない。そして犯罪組織から宣行が裏切り者だと発覚した場合、即座に始末されるという死と隣り合わせの窮地にいる場所に立たされていることを知らされる。宣行は、酒を飲んでいるも、それでも彼は冷静であり、表情も一端の刑事のような面構えをしていた様子である。

「…ああ。公安警察ではよくある話だ。とっくに伝達で部署内で知れ渡っている。…だが安心しろ。俺は必ず生き残る。絶対に公安警察としての…刑事として…俺自身の人生の誇りにかけて…麻薬には染まらない!!…命を手放さない!!…優花の為にもな!!」

ザザザーーーー!!

外は雨が強く降り注ぐ。外は青白い光に包まれ、それは、まるでここからが正念場だとも言える演出になっている。そして、豹策は重々しくこう言い放った。

「…お前…もし、それがうまくいかなかった時は…」

「…その時は…お前に優花を託す!…頼んだぞ!…相棒!!」(トントン!)

タッタッタ…ガチャ…バタン!!

宣行は真剣な表情で、自分に何かあれば優花を頼むと言い放ち、豹策の肩を叩いてそのまま家を出た。豹策は、先程の後ろ姿を思い返して、とても嫌な予感を感じ取っていた。

「…!!…槇原…まさかアイツ!!…くっ!!」

ガチャ…バタン!!

「zzz…兄貴…zzz…寂しいよぉ〜…zzz…」

外は雨が降り続いている。そして豹策の運命の時間は刻一刻と迫ってきていたーーー

・・・
・・


B. いいえ
《Capitalo・5》 
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♪〜ダブルフェイス・メインテーマ

ブゥーーーーン!!!

「…!!」(くっ!雨だからか…視界が悪い!!)

豹策は打ちつける雨の中、自分の愛用の大型自動二輪のバイクへ乗り、周辺を探っている。しかし何処にも宣行の姿は見当たらない。

「……」(次に考えられるなら、昔あの麻薬事件が起こった繁華街か?だがもうあのクラブハウスは閉業している!……そもそも槇原のような公安警察が探りを入れる程の麻薬密売の犯罪組織の情報!…俺達マトリの中でもそんな話は聞いたことがない!)

豹策は頭の中が複雑になっていた。自分の敵対するものとは違い、警察関係のものが極秘で調査している組織の線とする、極めて未知な可能性だということも念頭に置いた。

「…手当たり次第…探るか。…俺達の部署の情報はあてには出来ない。…絶対に突き止めてやる。…待っていろ…槇原!!」

ブォーーーー!!

豹策は手当たり次第宣行を探していく。更に雨は強くなり、視界も見えづらくなっていく。

「…っ!!…思った以上に雨風が激しくなってきた!…一体何処にいるんだ!?…とりあえず雨宿りして体制を立て直すか!!」

ブォーーーー!!

・・・

豹策はひたすらに、大型自動二輪に乗っては捜索を続ける。そして橋の下のトンネルが見つかったので一度バイクを停車し、雨宿りも兼ねて立ち寄る。すると地面から何やら見覚えのあるものが落ちていた。

「!!…これって…槇原の愛用の…腕時計!!…まさか……槇原ああぁぁーーーー!!!!!」

ピチャピチャピチャピチャ!!

「!!」

豹策はトンネル内を走り抜ける。するとそこには見覚えのある背広を着た男が座りこんでいたのを発見する。

「槙原…!?…まさかお前…!!…撃たれたのか!?…一体何があったんだ!?」

そこには、胸部や頭には多量の出血があり、意識が朦朧としていた宣行の姿があった。そして豹策の姿を見たのか安堵の表情を浮かべていた。」

「…霧矢…来てくれたんだな…」

「もう喋るな槇原!!…いいから早く病院へ行くぞ!!…このままじゃあ…お前は!!」

「もう…俺はだめだ…それに…何だよお前…やればそんだけしゃべれる…じゃあ…ないかよ…」

「いいから!!…お前が死んだら…誰が妹の優花を守ってやるんだよ!?」(ブワッ!!)

豹策は初めて目の前にいる相棒が死の淵へ足を踏み入れる瀬戸際の場面へと直面し、涙を流す。すると宣行は肝心な事を伝えた。

「…お前は俺と関わった組織の連中とは…手を切れ!…奴らとは決して関わるな!…奴らは…意地でも…俺と密接に関係している人を…一人残らず消す気だ!!」

「!!…言ってくれ!…そいつらはどんな組織なんだ!?…奴らのアジトは!?…場所はどこにあるんだよ!?」

「!!…お前…まさか…!?…潰す気なのか…組織を…!?」

豹策は人生で初めて犯罪組織に対する本当の殺意を向けていた。そして、強く宣言した。

「…今俺は初めての気持ちだよ…ここまで殺意が込み上げてくるなんてよぉ!!…お前をこんな目に遭わせた組織の連中を…確実に一掃して…この手で始末してやる!!…もし邪魔だてするんだったら…法の外でも出る覚悟だよ…俺はぁぁ!!」

「!!…お前…はは…最後にその威勢を聞けて…相棒として嬉しく思うよ…だがな霧矢…お前に頼みがある」

「!!…馬鹿!!一体何を!?」

「いいから聞けぇ!!」

ガシッ!!ダーーーン!!

「!!…槇原…お前……」

槇原は最後の力を振り絞り、強く主張して豹策の胸ぐらを掴んでそのまま勢いよく地面に叩きつけた。そして、覆い被さり、涙を流して伝えたーーー

「頼む…優花を…頼んだ!…親愛なる…相棒よ!!」(ポタポタ…)

フッ……バタリ…

「……おい…槇原…おい!!」

「………」

豹策は問いかけるも宣行は返答せず、安らかに微笑んだ笑顔で絶命した。豹策はそれを実感し、悲しみの大粒の涙が込み上げていた。

「!!……槇原ぁああアアア!!!!!!」(ブワぁああ!!!!)

ポタポタ…ポタポタ…ザザーーーーーー!!!!!!

外は更に激しく雨が降り注いでいる。そして豹策は立ち上がり、青白い空間の籠るトンネルの中で宣行の拳銃と電話を持って立ち上がり、前を向き、トンネル内に誰かが潜んでいるのを予測してか、遠吠えをするかのように大声で叫んだ。

スタスタスタ…

「…くっ!!…一体何処にいるんだぁぁぁ!!!!…姿現せやぁああ!!!!!」

シーーーン…ピチャ…ピチャ…

帰ってくるのは沈黙である。しかしその声が聞こえたからか、電話の着信が鳴り響いた。

prrrrrrr!!

「!!…見たこともない番号のようだな…」

ピッ。

【???】(…槙原か?)

【豹策】(…霧矢だ。…お前達は一体誰だ?…何者で今何処にいるんだ?)

【???】(!!…そうか。お前が…相棒の霧矢ってやつか!!…なら話は早い。…おい!!お前の兄さんの相棒の霧矢さんやぞ〜!!しっかり挨拶しろ〜!!)

【優花】(霧矢さん!!…!?…んん!?ん〜!!)

【豹策】(!!…優花!!…お前らぁ…早く居場所を吐け!!!!…こっちはなぁ!!…お前ら殺したくてウズウズしてるんだよぉ!!!!)

【???】(ア〜ハハハハ!!!これはおもしれぇ〜わ!!!それがマトリ捜査官の男の言葉かよ〜!!!…いいぜ〜!!なら教えるわ!!…繁華街のクラブハウスの目の前に今おるから案内してやるよ!!あと警察に言ったらこの優花って女の命はないぞ〜!!…まあ…せいぜい頑張りな!…それまでお前がくたばらんか…実物なんだがよぉ〜ハッハッハ!!!!)

ブチッ!!…ツーッ!…ツーッ!…

「クラブハウスか…およそ7年ぶりか。…だが行くしかない!…槙原安心しろ!…必ず仇を取るから。…お前の誓いにも賭けて…必ず妹を助けてやるからな!!」

タッタッタッタ…

豹策は最期に宣行から託された一言を胸に、大雨の降る中、犯罪組織に一人で立ち向かおうとする。その心の中には熱い怒りの感情が芽生えており、普段無口で素朴な豹策とは違ったもう一つの一面があった。まるで《呪いの仮面》をつけているかのような殺意を表に出し、顔も険しく、確実に一人残らず刈り取る一匹の《黒豹》のようなオーラを放っていた。豹策はバイクを走らせ、目的地のクラブハウスのある繁華街までバイクを走らせる。

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜PSYCHO-PASSより・メインテーマ

名古屋市・繁華街・深夜

タッタッタ…スタッ…

「…着いたようだな。…!?」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

深夜の人気のない繁華街には犯罪組織の集団が待ち構えていた。豹策はそれを見ては来る途中に拾い上げた厚さのある鉄パイプを持って相手を威嚇する。

「…クソが!!…だがいい棒を見つけたからな…!!…さぁ来いよお前ら…お望み通り…地獄の底まで…!!引き摺り込んだるゾォぉぉ!!!!!」

ザワァーーーー!!!!!

「「「!!!」」」

豹策は今までにないくらいのとてつもない殺気に満ち溢れていた。その迫力に犯罪組織の下っ端相手は思わず圧倒されるも、怯まずに敵対する姿勢を見せる。

「な…なんて奴だ!…てめえら!!たかがマトリ一人だ!!…やっちまえ!!」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「…ラァアアア!!!!」

ドカッ!! バキィッ!! べキィー!!

「ぐあああ!!!」 「う…腕がぁあ!!!」「げふ!!!ゴホッ!!」

ざわ…ざわ…

「な…何だと!?」

「……」(ギラァッ!!)

豹策は次々と部下を鉄の棒を巧みに使っては蹴散らしていく。そして目の前にいる幹部クラスの者をとてつもない獰猛な野生動物のような目で威嚇する。その顔からは、本気で叩き潰すと言わんばかりにジワジワと歩み寄ってくる。しかし、幹部は怯まずに銃口を向ける。

「う…動くな!!」

「……」(キッ!)

スタ…スタ…ダダダダダ!!!

「くっ!!」

ダン!!

スカッ!!

「……っ!!」(ブン!!)

べキィーー!!! 

「ぐああ!!…あ…あが…が…!!うぉわぁ!!」

「……!!」(ブン!)

ダーーン!!

豹策は幹部の男の顔面を鉄の棒で叩きつけた後、そのまま背負い投げしては地面に叩きつけた。そして、殺意のこもった目で見下ろしていた。

ゾワァーーーー!!!!!

「……ひ…ヒィっ…」

「…優花の居場所は何処だ?…まだ抵抗するようならお前の脳天を撃つ!!!」

チャキッ!!

「ま…待ってくれ…そこのクラブハウスの中だよ!!」

幹部の男は、命が欲しかったからか、正直にクラブハウスの方角に指を向ける。それを見て納得したのか、豹策は返事し、クラブハウスに向かう。

「…わかった」

ザッ…ザッ…

豹策はクラブハウスに向かうため、幹部の男に背を向ける。それを狙ったかのように幹部の男はナイフを取り出して奇襲をかける。

「死ねやボケぇええ!!!」

ダーン!!…カラン…カラン…

「あ…ああぁ…!!うわ…ち…血がぁ!!」(ポタポタ…)

「…安心しろ…お前は後だ。お前を殺して銃弾がなくなるのは困る。…お前殺すのはなぁ…お前らの親玉の首を取った後に確実に地の果てまでも追っては殺したるから覚悟しとけヤァ!!!」(クワッ!)

ザワァーーー!!!

「…!!………」

バタリ…

幹部の男は、豹策の圧倒的な殺意の篭もった威圧感の重圧に耐え切れず、そのまま倒れ伏せた。そして走り抜けると目の前には閉業しているクラブハウスが見えてきた。

「…ここか。…覚悟しろよ。…槇原の命奪った分…そして妹の優花まで巻き込んだ分まで…しっかり報復措置を取らせてもらう。」

バターン!!

「な…なんだ!?…おいお前ら!!」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「…おいでなすったか。…だが容赦はしない…徹底的に…」

「うぉらああ!!」「くたばれやぁボケェ!!」「静めてやるわぁ!!」

バキッ!! べキィ!! グキリ!!

「うぐ!!」「ぐはっ!!」「な…なんだ…と…」

バタン! バタッ! ドサッ!

「確実に…始末してやるゾォォォッッ!!」

豹策はいとも容易く奇襲を仕掛けてきた部下を一網打尽にした。その気迫に圧倒され、部下は青ざめていた。

ゴゴゴゴゴゴゴ…
 
「!!…一体…何だ!?…こいつは…!?」「ば…化け物だ…オレ達よりも狂ってやがる…」「ひ…怯むな!!やっちまえ!!」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「…耳障りになってきた。…夜らしく…いい加減に…」

「うぉらああ!!」「もう許さねぇ!!」「あの世で詫びろぉ!!」

ブン!!

バキィーーー!!!!

「「「グァアアあ!!!」」」

バタン!!

「寝てろ!!!…お前らのような下っ端には用はない!!!」

スタッ…ザッザ…

豹策は鉄の棒を使っては相手を一網打尽にする。そして奥のフロアが見えてきたので蹴りをかましては突き破り、フロア内へと侵入した。

ダーーーン!!!

「…!!何だ…これは…!?」
 


🎼Back Ground Music 》》》



中島みゆき〜糸


フロア内の室内は散乱してはクッションに穴が空いては白い羽が散っていた。そこには椅子に縛り付けられては身体の数カ所の部位に暴行を加えられては血を流し、意識が朦朧としていた宣行の妹、優花がいた。豹策はすぐさま歩み寄り、縄を切っては身体を掴んでは状態を確認した。

「!!優花!!おい!!しっかりしろ!!」

「…霧矢…さん…兄貴は…?」

優花は豹策の言葉が届いたようだ。しかしその声はもう虫の息の状態であった。そして豹策はありのままを伝える。

「…!!…すまない…槇原は…奴ら組織に…お前の兄は…手を下された!!…でも…これを持ってきた…」

スッ…

豹策はそれを手渡した。それは、宣行の愛用している腕時計であった。それを見ては、優花は安堵の表情を見せる。

「!!…これって兄貴の!…ありがとう!…霧矢さん……」(ポタ…ツーッ…)

「ああ。…だから…俺は槇原の分まで…絶対お前を守っていく!…だからぁ!!…優花…頼むから!!……!?」

「…………」

グダッ……ツーッ…ポタポタ…

「…おい…おい!!優花!!…な…何で…!?」(ポタポタ…)

「………」

「おい!!頼むから!!目を開けてくれ!!…なぁ!!」(ポタポタ…)

「………」

「優花ぁぁぁぁーーーーー!!!!!…ああああぁぁぁ!!!!!」


豹策は必死になって優花を起こす。しかし彼女はいつまでも問いかけても、返答はなかった。あるのは沈黙のみであった。豹策の頭の中には別れの人に対する切ない女性アーティストの歌が流れ込んできていた。そしてそれを傍観していた者が姿を現したのを察知したからか、豹策は素早く宣行の銃を持っては銃口を相手に向ける。

カチリ!!

「…よくここまでこれたな〜!…褒めてやるよぉ〜!!」

「…その声…どうやらお前が犯罪組織の親玉かぁっ!!…自分が一体…何をしたのか…わかってんのかぁああ!!??」

豹策は亡骸になった優花を抱えては感情を露わにして相手を威嚇する。しかし相手はそれを嘲笑うかのようにニタニタとした笑みを浮かべては言い放った。

「おいおい…たかが女一人じゃあねえか!?…いや俺達にとっては敵で憎き邪魔でしかない公安の犬のスパイの妹とあっては今までのツケを身体で返してもらうしかな…!!」(ニタニタ)

チャキ!!…ダーーン!!…カランカラン…

「………」

「!!…ぐああ!!目が…目がぁあ!!!…て…テメェ…!!…なぁっ!?」(ギラッ!)

豹策は相手に発砲した。相手は右目を貫かれては激痛のあまり抑え込み、豹策を睨みつける。だが豹策はそれに動じず、満面の微笑みを浮かべて言い放った。

「…もういいだろお前らは…良いほど楽をしては十分楽しんでは笑ったんだろ。だから…お前のような麻薬を使っては人を食い物にする社会の下衆は…そろそろいい加減黙っとけ。…その代わりに…お前らの分まで…俺が笑うようにするからよ!」(ニッ!)

ゾワァーー!!

「…!!…やろぉぉぉ!!」

ダーーン!!

「………」

豹策は躊躇無く相手の脳天を撃ち落とした。しかし、その背後から誰かの銃撃を浴びた。

ダーーン!! プス!!

「!!…くっ!!…誰だ…?」

豹策は撃たれた方角を見るとそこには、豹策とは同年代の女性が銃口を向けていた。その女性からは親玉の愛人だからか、仇と言わんばかりに怒りの表情を見せていた。すかさずもう一発を発砲しようとしたため、豹策は躊躇無く女性に向かってトリガーを引いては発砲する。しかし、相手も同時のタイミングで銃口から銃弾が発砲される。

ダーーン!!

プス!! ブシャ!!

「…!!…カハッ!」

「あぐ!!…く…そ……うぅ…!!」

バタン! バタン!!

散乱するクラブハウスの中、豹策の放った銃弾で、犯罪組織の者達を宣言通りに一網打尽にした。しかし、豹策に当たった銃弾は脳天を貫かれ、視界が暗闇になってはそのまま地面に倒れ伏せ、女性の方も、胸の心臓を貫かれ、血を流してはそのまま倒れ伏せる。そして翌日には警察の者が現れ、この事件は大きく報道された。

・・・
・・


B. いいえ
《Capitalo・6》 
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜PSYCHO-PASSより・光

『ニュースの時間です。今日未明名古屋市内にある繁華街にて閉業したクラブハウス内で、犯罪組織の者達による抗争が発生しました。その事件に関わった警察関係者として名古屋市に住む公安警察所属の刑事。槇原宣行35歳が名古屋市内付近のトンネル内で銃を数カ所撃たれた状態の死体で発見され、また繁華街のクラブハウス内ではその槇原氏の妹槇原優花さん23歳と、麻薬取締官の霧矢豹策氏25歳が二箇所を銃で撃たれた痕跡があり、いずれも死亡が確認されました。』

そのニュースの報道は全国ニュースとなり、相次ぐ関わりのある者に広く知れ渡った。

〜名古屋市警察署公安部〜

「…槇原…それに霧矢!!…お前までもが…ぐ…くそっ!!」(ポタポタ…)

ダーーン!!

「南原さん…」「無理もないよ…南原さんは槇原のバディーだったんだ…」「霧矢は…そうか。…槇原の相棒の…確かマトリだったんだよな…誠に残念だ。」

南原は涙を流しては槇原の死を悔やんだ。自分の信頼しているバディーを失った喪失感は計り知れないものだと感じては、一同は同情する者が多く、それだけ槇原の事を信頼していたものが多いのだろう。

「…いや…いつまでも槇原の死を悔やんでも仕方ない。さあ仕事だ。お前達も、槇原のように誰かを守り通すために勤務に励んでほしい。…いいな!?」

「「「はい!」」」

南原は部下に指示を仰ぐ。そしてベテランの目からは、今回の事件の真意を見抜いていたようである。

「……」(霧矢…お前が槇原とその妹を守るために犯罪組織と立ち向かっては…法の外を突き破ってでも、奴らを壊滅させたのだな。…本当にすまなかったな。…だが後のことは任せろ!…霧矢!槇原!…お前達の活躍を無駄にはしない!…決して!)

ベテラン刑事の南原は豹策と宣行に敬意を評しては職務を遂行しようと勤務に戻る。その眼差しは、まるで正義の名の下に法と秩序を重んじる目をしていた。そして善良な市民の安全と治安を維持していくため、今日も公安警察は活動していく。

・・・

〜厚生労働省・麻薬取締部〜

「…霧矢が!?…そ…そんな…」

「この犯罪組織の名前…初めて聞くな…新手の組織だったのか?…だがコイツら…」

「…おそらく警察の公安が極秘で追っていた麻薬を売り捌いていた犯罪組織の連中なのだろう…まさかそこに足を踏み込むとはなぁ…霧矢め…バカと言えばいいのか…無謀にも程が…!?」

バキィッ!!

「ぐあっ!!…な…何をするんだテメェ!?」

「おい落ち着けよ!!」「…!!関口…お前…」

ポタポタ…

突然新聞を読んでいた中年の職員をいきなり殴りつけたのは、霧矢に気を遣っていた同僚の職員の関口であった。そしてすかさず、こう言い放った。

「アイツはなぁ!!…少なくともアンタみてぇに椅子にへばりついてるような腰抜けとは違うんだよ!!…アイツはなぁ…全力で誰かを守ろうと必死になっては麻薬を世界各地に売り捌く犯罪組織に立ち向かったんだ!!…その思いを踏み躙るようなら俺は容赦しない!!…一体人の命を…」

《何だと思ってるんだ〜!!??》

「!!関口…お前」

「…クソが!!」

ガチャ…バタン!!

関口はそういうとドアを開けては扉を閉める。そして、休憩室で大きな窓の景色の空を見上げながら、豹策のことを思い立っていた。

「霧矢…お前は本当に大したやつだよ。俺にはお前の行動の真実が分かる!…お前にはお前の…大切な者を守るために強大な麻薬密売の犯罪組織と…一人で立ち向かったんだな!…ここにいる奴よりも仕事熱心で、素朴なとこがあるけど…この心の中には熱いものがあるじゃあねえか!…どうやらお前にも守り通すもんが出来たんだな…本当にお前から学ばせてもらったよ…男の生き様ってやつを…俺も頑張るから…お前も…もし死後の世界に生きていける場所があるなら…そこで頑張って生きろ!…もし出来ることなら…笑顔でいろよ!…ははは!」

関口は笑い、豹策をまるで相棒のように慕うかのように、敬意を称しては空を見上げては豹策のことを見送った。

・・・

〜ある地方の地域包括支援センター〜

「天野さん…いつもすまないねぇ〜…」

「いえいえ、私に出来ることならまたいつでも相談に来て下さいね!」

スタ…スタ…

「…ハァ…」(…豹…私は大丈夫よ。…あれから私はね。…こうして生活相談員として働いているから。…でもそんなあなたは一体今何してるのかな〜?♪)

ある地方の地域包括支援センターで天野は生活相談員として勤務していた。あの事件後、退学となって地方に引っ越しては通信制の高校と大学を出ては数々の苦労も重ね、晴れて社会福祉士の資格を取得し、現在は生活に困っている人達の手助けをしている。そして天野が仕事を終えた時にスマホを取り出しては今日のニュースの通知から、衝撃のニュースが飛び込んでくる。

ピコン♪

「ん?…!?…え…う…嘘!?…そ…そんな……何で………」(ポロ…)

カランカラン…

天野は地面にスマホを落としてはそのまま膝を折っては落胆する。思わず悲しみの涙を流しては豹策の名前を叫び続ける。

「…豹…!!…豹!!!…どうして…どうしてこんな事に!?…あぁあああははあああああぁ!!!!」(ポタポタ!)

天野は泣いた。ひたすら泣いた。昔好意を抱いていた中学時代から顔馴染みの男子で俳優面のソース顔が自慢であり、高校時代に裁判では自分の無実を証明してくれたあの男は将来の目標通り、薬学部の大学を無事に卒業し、薬剤師になっては厚生労働省に勤める麻薬取締官になることができた。しかし、それを突然、犯罪組織の抗争に巻き込まれては命を絶たれてしまった。この真実を知っては、天野は衝撃のあまりに落胆し涙を流した。しかし暫くしては涙を止めてはある決意をして、まるで誓いのような言葉を交わす。

「…大丈夫だよ…豹!…私達はいつも一緒だよ!…どんなに君が亡くなって…離れ離れになったとしても…この空を見上げれる場所にいるのなら、君はそこに居るんだもの。…もし何かの縁で会うことが出来たら、あの時の話の続きを…必ずしましょうね♪…そっか。君の夢…叶ったんだね♪でも驚いたよ〜♪見ない間に…本当の俳優のような男前なダンディーになっちゃって〜♡…ま、私も道は違えど、君が所属していた厚生労働省が定めている資格を元に、今こうして働いているよ。本当にあの時…三木川から私を助けてくれて…本当に…」

《ありがとう!!…豹♪…大好き♡!!…いつまでも…君を…忘れない♪!!》

天野は豹策に好意を寄せる言葉も踏まえ、感謝の意を述べる。しかし、世の中は時に現実ともあれば、このように非現実であり、奇妙な世界の入り口にもつながっているということを、誰一人予想もできなかった。そして豹策もまた然り、一人の運命を辿る一人の男として、その死後の世界【Paradiso】に足を踏み入れる一人の住民として、一歩を踏み出していく。


・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)



〜???の世界〜(【paradiso】歴1999年12月15日。)

〜カラーン…カラーン♪

「zzz……!!……!?…なんだ…ここは?」

豹策は目を覚ました。中はとても狭く、周りには白い薔薇が囲まれており、顔の前にはドット状の穴があった。豹策は、一度前の扉を押し出してみる。

「…開くな…」(ガタン!)

豹策は扉を開け、身体を起こして周囲を確認する。下を見るとそれは案の定、棺で眠っていた。周りは空間は薄暗く、もやがかかった空間が広がり、目の前には白い道が続いていた。そして天井は高さが見えない。その時豹策は、何か物音の気配を感じたのか周囲を警戒した。

ガタッ… ゴゾッ…

「……誰だ?」

「呼びました?」(ひょっこり!)

「…!?」

「……ん?」

「………」

「?」(首かしげ?)

豹策はとっさに目の前にいる少女に語りかけた。

「…女の子供か?…だがなぜこんなとこに…?」

「やっほ〜♪」(ニパ〜!)

「…ああ。」

「こんにちは〜♪初めましてってやつです!」

豹策は目の前の少女を確認すると、それはシルバーブロンドの髪色でロングヘアー、肌は白く、胸元に十字架のワンポイントに青白のワンピースを着た笑顔の一人の少女がそこにいた。そして少女はすかさずニコニコと挨拶をした。   

「私の名前は、導き人の一人、オロア!よろしく〜♪…そしてあなたをユートピアの世界へと勧誘に来ました!」

そのように少女はにこやかに挨拶を交わす。そしてここから、豹策の【Paradiso】への挑戦の幕が始まろうとしていたーーー
















《To Be Continued…→》








第3話:プロローグ〜豹策編 part1 
《完読クリア!!》



《Storia Successiva!!》 
次の話へ進みますか?
A. はい 
B. いいえ