GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》

A.:GiorGia


ダブルフェイス〜黒豹と法と秩序の契り〜


第14.5話:掃除屋兼便利屋ギルド【Hopera】維新事変勃発間近───────悲しき戦い───────終焉を呼ぶ【Demister】6幹部集結───────



【Veno・nix】は目的地である【D島】のユートピア創造士隊支部基地に辿り着く。そこに【D島】の真・ユートピア創造士隊支部の長の立場にいる男【Lognas】が目の前に現れ、【Nelson】と共闘して追い詰めるも、最期は【Varisk】の中でも、イレイザーの異名を持つ殺戮の腕に長けた者【嵐豹】───────その者による奇襲により、敵対していた【Lognas】───────そして、最後の仲間である【Nelson】を失う。【Veno・nix】は無事に【D島】から脱出を試みようとするが、そこに再び障害が立ち塞がる───────









《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



The important point about truth is to capture and express the truth as a subject, not as an entity.
(真理をめぐる重要な点は、真理を実体としてでなく、主体としてもとらえ表現することである。)

To comprehend what is, is the task of philosophy: and what is is Reason.
(何であるかを理解することは哲学の課題であり、何が理性であるかを理解することである。)

Georg Wilhelm Friedrich Hegel
(ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル)



♪〜黒き猫


〜【Paradiso】歴【D島】地下トンネル内6/17日・夜型〜

・・・

「…………」

シャーー……

「………」

【Veno・nix】は暗闇のトンネルを【V・prestina】に乗って疾走していく。辺りには天井の照明がうすら光が差し込んでおり、やむを得ず照明をつけ、前へと進んでいく。しかし、目の前を進んでいくも、散っていった者達の面影を思い返していた様子であった。

「………」

『…ヴェノおじ様……どうかご無事で…』

『ヴェノちゃん♪………突っ走れやぁ〜〜!!!!』

「………!!」(わかっている!!……わかっているゾォッ!!!……だがぁ………)

ポタポタ………

【Veno・nix】の頬に涙が流れていた。彼自身、半年前クールかつ朴念仁で誰かの温かみを噛み締める事はまずなかった。しかし彼自身涙を流しているーーー

「……っ!!」(この涙は……一体なんなんだ!?……あの時…以来だっ!!……クソがぁっ!!)

『……豹…大好き♡』

『優花の事を頼んだぞ…相棒……』

「!!……」(……天野……!!槇原!!)

シャーーッ!!!

ブォンブォン!!ブォンブォーーーーーン!!!

「……!?…大型……トレーラー!!??」

キキーーーッ!!!!

【Veno・nix】の目の前に、大型のトレーラーが目の前の行手を阻む。するとトレーラーからやや大柄の男が飛び降り目の前に立ち塞がるーーー

ガチャン!!……バタン!!………

スタンッ!!

「ようよう!……派手にやってくれたじゃあねえか!」

「………何者だ?貴様は?」

「【Varisk】主力メンバーの一人。んで、お前とおんなじ【現世人】の【Bran】(ブラン)!!……そう言わせてもらうぜ〜!!!」

「………そうか…」

チャキッ!!!

ヘルメットを被り素性を隠している相手の身分を知った【Veno・nix】は、覚悟を決めた目で相手に対し、【Edith】から託され、そして【Nelson】から受け継がれた両双剣【Fen・Gril】を相手に向ける。双方の意味として、【Fend】の意である孤独から自立へ向けた言葉、その先にある意味的に厳しく尋問し、真実を追及する意味を込めた【Grill】という言葉が埋め込まれており、法を犯した者を躊躇なく断罪する意志をも感じられる。その武器が珍しかったのか、【Bran】は声をかける。

「?………ほぉ〜!……なかなか珍しい武器持ってんじゅあねえか!!」(ニカニカ!)

「………」

「んだよ〜?無視か?噂通りコミュ障な野郎のようだな〜♪」

「………一体何が目的だ?」

すると、相手はこう問いかける。

「全く、急かせかと言い出すんじゃあないぜぇ〜へへっ!!……【D島】内の支部であれ程の騒ぎを起こした男の一人だ!……ならいうまでもないよな〜?」

「……始末するといいたげのようだな」(キッ!)

「へへっ!!……【Jeik】の野郎はどっかの死に損ないとリベンジがしたいと言ってパスしたようだが………俺はそう簡単には行かねえ〜ぜ〜♪」

「………そうか……!!」

ガキィん!!

「…!?」(拳…?……ガントレットか!?)

「ゲヘヘ!……オラオラどうしたよ〜ヴェノちゃんよ〜♪……ほや〜としてると、俺のオラオララッシュの餌食に……!!」

なるんだぜぇ〜〜!!!!

オラオラオラオラオラ!!!!!

「………」(ヒョイヒョイ!)

ゲシッ!!

「グハァっ!!」

「……隙だらけだ……」

「へぇ〜♪……やるじゃあねえか〜♪」

【Veno・nix】は相手の攻撃を躱し、足元に強い蹴りを加える。相手はよろめくがすぐに体勢を整え、すぐさま反撃に乗り出す。

「おらよ!」

「……甘い!」

「なんてなぁ〜♪……」

ドゴォッ!! ザシュッ!!

「!!…うぐっ!!………」(ば…バカな…見えなかった……だと?)

「へへっ!…どうやら喰らいやがったようだな。……その死を呼ぶ毒つきをまともにな〜♪」

「…!?」(…毒……だと?)

【Veno・nix】は負傷した箇所を確認する。しかし、そこには何も起こっていない様子であった。すると【Bran】は笑いを込めた笑みでこう語り出す。

「テメエは一度深い眠りについたら最後…確実に《死》が訪れるんだな〜♪!……どうよ?…俺の薬の効果すげえだろ〜?」

「……っ!!」

グラグラ……

「ほほ〜う♪効き始めてきたみてえだなぁ〜!」(ニヤニヤ!)

「………っ!!」(意識が………!!)

バタンっ!!

「そこで寝てるんだな〜♪……俺達はこれから…デカい花火を打ち上げないといけないからよ〜♪…精精…気持ちよく寝てるんだな〜♪」

「……っ……」(デカい……花火……だと…)

【Veno・nix】はそのまま地べたに寝転がり、深い眠りにつく。そしてしばらくして【Hopera】のメンバーが後に現れて身柄を保護され、夢の中の世界にて【Lawrence】との会話に繋がっていく。

・・・
・・


───────そして、彼が眠りについている間、その数日後の【E島】の花の街で、主力ギルドの者達が、大きな争いを勃発させていた様子であった───────

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜FF6より〜幻獣を守れ

〜【Paradiso】歴2000年6/20・夜方【E島】【Velkana】市民街〜

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

「うぉりゃあ〜〜!!!」

「とぉ〜〜!!!」

べキッ!! バキャッ!!

「ゲハぁっ!!」「お、おのれぇ〜!!」「貴様らぁ〜!!……我々を一体誰だと思っているのだ!?……この街を牛耳り、上神官に君臨され、世界を統べる素質のあるお方!!あの【Dail】様直属の憲兵なる者なるぞ!!」

ピラリッ!!

「?」「?」「な、なんだそれは?………!?」

《〜逮捕状!〜───────罪状───────雇いメイドに対する、違法な《人身売買行為》・《婦女及び性的暴行》・《強姦・猥褻罪》また様々なギルドの者達を誘拐・監禁───────【Varisk】の殺戮部隊との密接な関わりのある重要な証拠を発見ス!!《強行法的措置適用の執行対象》と見做し、直ちに捕らえよ!!!》

「!?」「!?」「!?」

「……そのダイル?って悪党がぁ〜!メイドさんに対してこんな風にモッコリでやらしい事してるって噂聞きつけて、こうして【B島】のサバイバー達が派遣されたって聞いたらどうなるかしらねぇ〜?」

ピラッ!!

【Aria】が目の前に出したのは、【Dail】邸で雇われ、麻縄によって辱めの類を受けていた亜麻色髪が特徴の女性の一枚の写真であった。その光景に心当たりがあったのか、憲兵隊一同は驚愕して青ざめる。

「!?げげっ!?///」「さ…サバイバー……だとぉ〜!?何故、他国の島に我々の情報が!?」「馬鹿な!?情報は閉鎖隔離して流せないようにしている筈だ!?」

【E島】の【Velkana】の街では、【B島】の【Survivor】の者達が応戦している状態であった。そこには多数の仲間を引き入れていた【Wilvia】・【Lucna・B】そして逮捕状を持っている【Siel】所属の【Aria】が目の前に立ちはだかり、相手に対して《逮捕状》と《証拠写真》、彼女自慢の武器であるハンマーを持っていた。その情報を知った相手は引き下がるどころか、より闘志を燃やして反発してきた様子であった。

ゴゴゴゴゴゴゴ………

「よし!!ここで止めてやる!!」「野郎……!!ここで捕まってたまるか!!」「せっかくメイド女共を捕まえてあんな事やこんな事をしてじっくり味わってきたってのに〜!!」(台無しとなっちゃあこれまであのデブに支えて頑張ってきた甲斐が〜!?)

べキャッ!!!

「ゲハぁ〜〜〜!!!」

ダァーーーン!!!!!

「!?」「お、おい!?モブ敵C!?…しっかりしろ!!……げげっ!?右の頬に拳の痣(あざ)が………」

突如、モブの敵が強い打撃によって身体を吹き飛ばされる。右頬にはくっきりと拳の後が残っており、無惨にも倒れ伏せていた。そしてその拳を奮ったのは、【Wilvia】であった。彼女の顔にはこの世の悪は断じて許さんと言わんばかりの格闘家の血が騒いでいたようであった。

ドドドドドドド……………

「おいたが過ぎますわね〜!…レディーの前で汚らしい言葉を一言も二言も吐き捨てないでいただけます〜?…さて、ではあなた方に質問ですが、真ん中か左……何処にアザを作って欲しいのでございましょう?」

「!?」「ヒッ……じゃあ一思いで……左……だけで…」(ビクビク……)「!!」(コクコク!)

「………」(グキゴキ……)

「あ〜あ〜……また出たようだね〜この展開。…まあ〜あたしも好きで読んではいる現世の奇妙な漫画みたいな拷問法……」

「あぁ〜!シティーハンターが連載してた頃にあったあの漫画の事よねぇ〜♪」(ニヤニヤ!)

【Wilvia】の拷問法とは、《新約聖書》にある言葉に当てはめて言うのであれば、相手に対し、右の頬に媚を叩き込んだら、次は左を差し出す。無論拒否権は無い。といった《専売特許》を持て囃されているが彼女の場合、そのような生ぬるい方法では決して許すことはなかった。寧ろ拳が満足しないと言わんばかりに拳を鳴らし続け、更に迫ってきていた。

ザッザッザ………

「………ま、まさか………!?」「両方ですか〜!!??」

「〜♪………イエス・アイ・アム♪よく出来ましたわね〜♪」

「あららのら〜……」

「オーマイガッ!!…御愁傷様〜……」

ドカッ!! ベキャッ!! ボキィッ!!! 

・・・
・・


「ほぉ〜〜はぁ〜〜〜!!!」

《バァーーン!!!!》

「」「」「」

【Wilvia】は敵を一網打尽にした。すると更に増援が増えてきた───────

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

「!?……全く!こりゃあ前に進ませてくれないようね!」「今度は、真・ユートピア創造士隊の面々が押し寄せてきたようでありますわね!」

「さぁ〜て………」「よくも〜!」「ここから先には進ませないぜぇ〜!!」「【Makiras】様の殺戮を邪魔立てする奴は生かしておかないのだ〜!!」

「?」「!?」「ま…【Makiras】!?……そうでありますの………なら尚更でありますわね……」(まさか罪人の【Dail】のバックに、そのような大物ゲストがいるとは予想外ですわね。……ですが、ここで引くわけには………!?)

ビシュッ!!

カンカン!!

「!?……」「うわ!!」「これは……ボウガンの矢でありますの!?」

二人の目の前にボウガンの矢が飛んできた様子である。そのボウガンは複数の矢で構成されており、【Wilvia】・【Lucna・B】・【Aria】に対して向けたものではない為、協力関係にある者達であった。

タッタッタ………

「………ようやく見つけました。…ルビアさん」

「!?……あら、ルーヴェス!?」「へぇ〜!アンタも来てたのかい!?」「?」(だ…誰?)

ざわ……ざわ……

「こ、こいつは!?法の番人ギルド【Xiol】の【Ruves】!?」「な、何故この者が………!?」「ま、まさか………」

「………ふむ、成歩道(ナルホミチ)…【Dail】に賄賂をもらって雇われていた者達は、私の顔を見るなり青ざめていると……メモメモ………その通り、我々はこの街を牛耳っている【Dail】邸の主…《色欲の大罪人》の者を確保に来たのです。…ですが私は忙しい身。…代わりにアガルタからの命で派遣部隊をお連れしました。………皆様……出番です」

パチーーン!!

「!?」「!?」「!?」

とぉ〜〜う!!!

「《波紋ノ呼吸法》に因み、約半年間!!憎きあの男が珍妙な夢の中の世界で我々の無罪を見事晴らし、いつの間にやら我々と熱い友情で結ばれ!眠りから目覚めて会得していた必殺目眩し!我が師範代【Tigel】(タイゲル)の進化した《唾ノ舞》をその身に受けるがいいィィ!!!」

ぺぺぺぺぺぺ!!!!!

ぺチャッ!! べちゃん!!

ジュジュ〜〜!!!!

「!?ぐあぁ〜!!め、目がぁ〜!!」「目がぁ〜〜!!!!沁みる〜!!」

「ふん!!!」(シュッ!!)

バキッ!!!!

べキィー!!!

「ふふふ。……寝ている隙にこれでも喰うがいい!!」

ゴクゴク……!!

ボアァアアア!!!!

「?………!?あぁツゥゥぅ〜〜!!!」(じたばた!!)

「タイゲル四天王の一人【Indi】(インディー)……スパイスが絶妙に効いたカレールーを俺の口の中に送り込んでドラゴンのような《灼熱の炎》を、貴様の身体に炙った後にじっくり煮込ませ……絶品でグツグツのカレールーまみれみてえに……!!とくと火力を味わうがいいぜぇ〜!!ハッハハハ!!!!」
ジュジュ〜〜!!!!

「ハァ〜…全く、暑苦しいのはやめろやインディー……あぁ〜【Kagoya】の町の素麺はうめえよなぁ〜♪」(ズズ〜!!)

《ちゃるめ〜ら〜♪》

「!?…お、おいアイツら一体何者だ!?」「なんか一人ラーメンの音楽流しながら、一人寂しくクールに流し素麺してズルズルと喰ってる奴がいるぅ〜〜!?」「どっからあんなの準備した〜!?」

「………ふんっ♪」

ガシャーーン!!!

バシャーーン!!!

「あつぁ!!!……!?や、火傷だとぉ〜!!」「お、おい!?……まさか熱々のお湯か!?」「いや違う!?…こいつは……!?凍傷!?……ば……馬鹿なぁ〜っ!?あれは、熱による湯気なんかじゃあ〜ない……!?…ま…まさか……」

ブクブクブク………

「あぁ〜♪……俺は【Ilk】(イルク)って言うんだけどよ〜………【現世人】とユートピア人の間から誕生したからか、生まれつき《特異体質》だからよ〜……なんかよく分かんねえけど冷えたもんしか口に出来ねえ身体なんだよなぁ〜。……ドライアイスで冷えて冷え切った素麺の味ってのはよぉ〜……すげぇ〜格別なんだよな〜……だが、素麺ってのは細い食べ物なんだよな〜?夏に食べるくらい涼しい食べ物なんだよな〜?…まあそれはわかる……!!だがぁよぉ〜………!!」

《何でぇっ!?湯麺って熱い料理があったりすんだよ〜〜!!??てめえら【創造派】みてえぇ〜に目的定まってねえくらいに《矛盾》してるんだよぉ〜〜〜!!》

ヒエヒエ…!!…ガシャーーン!!!!!

あぎゃ〜〜〜〜!!!!!!

「………全く、騒がしい奴らだ。………うぅ〜〜………はぁ〜〜!!!!!」

ビギューーン!!!!

「!?」「なぁっ!?こ、これはまさか……」「【龍球】(ドラタマ)でお馴染みの……あのロマン技かぁ〜っ!?」

「……ター……トル…ター………!!」

《キャノォーン!!!!》

バシューーン!!!!!!!!

ダァーーーン!!!!

ガラガラガラ………

「お、おいおい【Kido-ra】(キドーラ)!!……流石に街中でその気功を使ったトリック技はやり過ぎだぁ〜っ!…また妹にどやされるぞ〜〜っ!」

「ハハハハ!!!でぇ〜丈夫〜!細けえこと気にするな!!」(ケラケラ!)

「……あら、あれは武道派ギルド【Daralia】(ダラリーア)のタイゲル【Tigel】さんと……」「その四天王の面子ね。………なんか以前会った頃より戦力増強してないかしら?」「……!!」(あれって!少年漫画のあの有名な技よね〜♪!?)(キラキラ!!)

【Survivor】一同の前に現れたメンバーは、武道派ギルド【Daralia】(ダラリーア)所属の【Tigel】とその面子の【Indi】(インディー)【Ilk】(イルク)【Kido-ra】(キドーラ)という名の者達であった。しかし四天王の最後の一人の所在はいない様子であった。

「?…あれ?でも四天王なのよね?…何で一人足らないわけ?」

「…ああ〜それはですわね。…あの四天王の中でも特にずば抜けた肉体派の力を持つ、理想の女性らしい美貌を持ったお方…名を【Akane】(アカネ)という……」

「だが…男だ。…!!……ゲフンオッホン!!……あぁ〜どうやらどっかの島の町にある治安部隊にね。…無理矢理ヘッドハンティングされて今は欠番でいないって訳なのよ。……だけどね。…後継者ならいたらしいわよ〜!……とびきりのがね……」

「?……それって誰なの?ルクナリーダー?」

「それはね……アンタがよく知ってる……」

ダダダダダダダ…………!!!

「!?」「!?」「!?」

ジャキン!!

「【R・P】社騎士ギルド!!【Soldate】(ソルダーテ)到着しました!!……!?……ルビア!!あなたも来ておりましたか!?」

「あら、ご機嫌ようデカール。見ない間に随分立派になられましたわね。……ロランは元気でありますの?」

「……そのロラン達が今、【Dail】邸で戦っている最中なのですよ。……ですが、相手の軍勢が未だに優勢なのか前へ進むのも至難の技のようですね」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「………はぁ〜……しゃあないか。……アリア!…手伝いなさい!!」

「!?…は、はい!!ルクナリーダー!!」

チャキッ!!

「!?ルクナ!!」「ルク…ナ?……!?」(あれがルーシス室長の言っておられた……古来より《武》を司どる貴族の末裔のお方ですか…)

【Lucna・B】は目つきを変え、突破口を開くかのように前に立ち塞がる。

「………道は!私のこの拳で覚悟を持って切り開いてあげるわ。……この鬱陶しい蛆虫共を一匹残らず掃除してね。……アリア!!捕まっていなさい!!」

ガシッ!!

「!?うわぁっ!?///え、えぇ〜っ!?///」

【Lucna・B】は【Aria】の身体を持ち、まるで健闘を祈るかのように言い放った。

「……アーメン。……!!」

パシゥーーーーーン!!!

「え…?……!?えぇ〜〜〜〜〜!!!???」

「あらあら、大きな花火ですこと〜……」

「!?おい!こいつら相手にしても勝てねえから投げ飛ばされたあの女を追いかけるぞ〜!!」「異論はないな!?」「賛成!!」

ダダダダダダダ!!!!

「ほら、まるでフリスビーを欲しがるワンコのように散ったようだね〜♪!」(ケラケラ!)

「全く、ルクナ!……少しばかり加減なさい!……まあ彼女はこの任務を解かれて無事に【G島】の【Olfes】に送られる予定でありますし……ですが伝えなくてよかったんですの?…四天王の最後の候補のお方の名前を……」

「……ええ。…こいつは思った以上に闇が深いようだからね〜。……まさかあの二人が【J島】の【御用見廻組】…武力組織【狼志組】十傑メンバー・一番隊隊長ソガミ(【Sogami】)さんとも面識があるとは《人類の夜明け》が来るのってなんのって言いたいわよ。………まさか【Eimi】って名前の【現世人】で…その《性同一性障害?》っていう疾患持ちで皮肉にもこの街のメイドとして雇われていた彼女が………あんな深い闇の集団を復活させる鍵の一人だなんて思いもよらなかったわ…」

「……そうですわね。……ルーシスリーダーやアガルタさんによる報告書でもありましたが……あの《10年前》の大戦を引き起こしたあの者達が復活したとするのならば………それは……」

「「波乱の嵐が来るようね。(ようでありますわね)」」

・・・

いたぞ〜!!捕まえろ〜!!

「あぁ〜!!もう早すぎだってのアンタら〜!!」

タッタッタッタ!!!!

「…………」

ガシッ!!

「!?…むぐう〜!!」(つ、捕まった!?)

【Aria】は突如誰かに捕まり、口を塞がれる。するとその者は身の毛のよだつ声を声高々に上げて笑い出した。

「デュフ。…!!デュフフフフ!!…掴めたなり〜♪」

「!?…げげっ!!…うぅ!!く、くさぁい!!」

ダダダダダダダ!!!!

チャキッ!!!

「!?……」(や、ヤバッ!!)

どうやら男は追っ手の一人であった。【Aria】は振り解こうにも相手の拘束が強い為、びくともしない。すると、集団の者達が、八つ裂きにしようと武器を構えてチラつかせる。

チャキッ!!

「おうおう、ついに追い詰めたぜ〜♪嬢ちゃんよ〜!」

「覚悟するんだな〜♪」「出来したぞ〜モブデブ隊員!」「よ〜しやっちまえ〜!!」

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

ドドドドドド………

「!?」(や…ヤバい!!)

タタタ……!!

ブジャッ!!ザシュッ!!

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜JOJO:3部より・高潔なる教皇

いぎゃー!!! のぎゃーー!!!

「!?……デュフっ!?…お、おい!?」

目の前に特攻を仕掛けて来た【真・ユートピア創造士隊】の隊員は、無惨にも《空間殺法》の如く、細切れとなる。その様子に肥えたモブの男隊員は、唖然となった───────

トントン!

「……!!」

バキャッ!!

「こふ〜っ!!……!!」

ザシュザシュ!!!

「………」

ダキッ!!

「!?………え……?///」

ファサ〜………

「………」

その男は、醜い光景を直視させないように優しく目隠しし、そして月明かりに照らされたのを見計らうとその男は正体を明かす。その男性は男性であり、髪の色はやや濃いめの茶髪に、所々赤髪を混ぜたメッシュを効かせる何処か現世に存在する《宝塚》の雰囲気を醸し出す、高原に咲く華々しいイメージを持つような男性であった。服は、真紅のマントに制服は濃いグリーンカラーが特徴的である。するとその者は優しく高潔な口調で彼女に声を語りかける。

「……怪我はありませんか?」

「は。……はい///」(ドキン♡)(うわ。…イケボ♡///……まるで花のような人…)

「…そうですか」

ポテっ!

「あでっ!!…!?え、ええっ!?」

∧( 'Θ' )∧・・・・・・・・

「………」

チャキッ!!

安全を確認したその男は、【Aria】を地面にそっぽもなく臥床させると刀を抜刀し、相手を見つめ、彼女に対してこう言い放つ。

「…すぐそばに車を止めてあります。そこにあなたの顔を知る人がいますので。…ご安心を。その場所には私の【Fiducia】能力は張り巡らせてはおりませんので。…ではご武運を…」

チャキッ!!

「あ、あの!あなたの…名前を……」

「………」(シーン……)

返事がない、ただの屍のようだ────

∧( 'Θ' )∧・・・・・・・・

相手は、『二言は言わないから早く行け。』そうと言わんばかりの情熱の赤い薔薇のような熱く、非情にも目を瞑りし視線をただ彼女に送るだけであった。どうやら彼自身、一々同じ事を言う面倒を省く淡々なイメージがあった。【Aria】はすかさず立ち上がり、少しばかり困惑しつつも相手の指示に従った。

「あ〜!!もう仕方ないわね〜!覚えてなさいよ〜!!」

ダダダダダ!!!!

「……」(やれやれ…)

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「……?」

「テメェ〜!!」「一体何しやがった〜!?」「よくも、俺達のダチを輪切りにしやがって〜!」

何て酷い悪党だ〜いや、悪魔だ…!!悪の化身だ〜!!……

ジャキッ!!

「!?」

「………」(ヒィーン……)

ブン!!

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュッー!!

あんぎゃーーーー!!!!

ボトっ!! ボトボト!!

「………」

ジャキッ!!

「……な…んだと」「な、一体…何が」「奴の人太刀目で……まるで千切り大根のように……!!」

「………この程度なのかい?」

ジャキッ!!

ドクン…ドクン……ドクン…ドクン……

「!?」

グチュッ!!……!!

グチュグチュ!!!

「……!!」(肉体が…再生するのか)

男は、【真・ユートピア創造士隊】の中に、自らの身体が引き裂かれようとも再生する者が一人いる事に気づく。するとその者は、他の引き裂かれた者達の身体を縫合するかのように、復活を果たす。

「デュフフ♪…僕を甘く見たようだね〜チミ〜♪…無駄だよ、無駄無駄無駄無駄〜!!…僕は何度体を引き裂かれようとも再生するのさ、こんな風にね!!」

ブン!!

スパン!!

「!?」

ドクン…ドクン……ドクン…ドクン……

シュバッ!!

相手は空間に、思い切って腕を振り下ろす。すると腕が何かに当たって斬り落とされる。しかし、相手はすぐ様能力を発動して体力を回復する。

「……オートリバース。…肉体再生能力といったところかな?」

「デュフフ〜♪…その通り〜♪…チミの力はどうやら鋭利なワイヤーを空間に召喚させる能力と来たね〜♪…渋いね〜♪……まるで、人形劇でも見ているような滑稽な気分だね〜♪……この力を一体誰に分け与えられたかご存じ〜♪…ま、知ってても教えな〜い♪…何たって………!!」

この僕の身体を傷つけてくれたんだからね〜!!このブサ男〜!!

ドドドドドド………

「………」

チャキッ!!

……リィーーン♪【冥鐘】

相手はさぞご立腹であった。しかし、謎の男は決して後ずさる事はなかった。寧ろ、『減らず口はいいから華麗にミンチにされて成敗されろ』と言いたげなその者の目は、淡々としているも、心の奥底にはまるで高潔さに満ち溢れ、住民を守る為ならばこの刀の真髄を駆使してでも、世の中の悪を断ち斬ると言わんばかりの目を瞑りし《狼》のような表情をしていた。そして靡くマントの中の制服には、背中に【七・狼】と刻まれた文字が印字されていたのだった───────

・・・
・・



タッタッタッタ!!!

「ったく、突然現れて一体なんだってのよ〜アイツ〜!」

プップ〜!!

ガチャッ!!……バタン!!

ガシッ!!

「!?……んん〜!!」(ちょっとぉ〜!?///今度は何〜!?)

突如、【Aria】の目の前に車が横切り、乗用していた者達に突然捕まり、拉致された様子である。すると、車内に乗車していた女性は、すぐさまドライバーに声をかける。

「発車してください!」

ハッ!!

ブロロロロロ……!!!

「!?……!!あ〜!!もう一体何なのよ……!?」

「…………っ!!」

パァーーーン!!!!

「っ!?…ぐっ!!」

「【Aria】さん…!!あなたは。…!!本当に無茶をする、身勝手極まりない救えない救済者気取りのようですね……!!」

「!?…えっ。…!!…お、オリアナ救済長!?…!?」

パシーーン!!!

車内には、【G島】の【Olfes】にて、救済長の役割を担っている【Oriana】が乗車していた。その彼女には大粒の涙を流しており、【Aria】の事を心配する母親の如く、心の底から心配していたからか、まずは左の頬を叩き、そして右の頬にもう一発と軽い罰を与える。そして彼女を優しく、温かく抱き寄せて頭を撫でる。

「本当に愚かしい事を…!!恥を知りなさい!!…本来救済の手を、救いの手を差し伸べるのが我々の仕事であるというのに、その《与奪》の権利を奪うとは…!!実に愚かしいとは思えませんでしょうか!?」

「…!!…では言わせてもらえますけどオリアナさん!!…【Miresia】…!!ミレイさんはどうして半年前の12月25日。…クリスマスの日に殺されなくてはならなかったんですか!?…【狼志組】一番隊隊長…!!ソガミさんの手によって!!」

「!!……アリアさん…あなたどこでそれを!?」

「エイミさんという【Siel】で保護していた彼女が最後にこれを置いていきました!…一体どう言う事なんですか!?」

《ホウコクス───────ロウシグミイチバンタイタイチョウノテニヨッテ───────シエルショゾクミレイシア───────クリスマスノヒニテ───────サツガイサレタシ───────》

【Aria】が【Oriana】に見せつけたのは電報であった。しかし彼女はそれに対し、首を振る。

「…私はこの電報書に見覚えは一切ございません。…ですがソガミさんは極悪にも、彼女を斬ろうとしたのではございません」

「っ…!!……じゃあ一体どういう事なのよ!?」

「…まだしつこく彼女の本性に気づく事が出来ず、未だ《虚飾》に彩られた《幻想》に騙されているのですかあなたはっ!?…ミレイさんは……!!【Siel】のギルドのみならず、この【Paradiso】の世界全土に《叛逆》を起こそう目論んでいた罪深き犯罪者なのですよ!!」

「!?」

【Aria】は【Oriana】の発言により、驚愕の表情をしていた。それだけ、【Aria】は【Mireisia】に対し、心底心酔しきっていた様子であった。彼女自身、【Mireisia】に対する友情が芽生えていたとばかりに思えていたが、それは大きなミステイクであり、本当は彼女の善意につけ込み、【Oriana】の監視の目を盗んで、この【Paradiso】を支配しようと着実に事を運ぼうとしていた。緻密に完成された《救済計画》は、まるで現世でいう《ピカソのゲルニカ》の絵画が描かれているかのようにドス黒い欲望を心の底に持ち合わせる《罪深き者》が彼女の精神に潜伏し、取り憑かれていたかのように語り出す。それでも【Aria】は頑なに【Oriana】の《語る真実》からは逃げ、《自らの真実》のみしか語ろうとしなかった。

「…そんな話、信用できない…!!もしかしたらミレイさんは!!」(ポロポロ!)

「……アリアさん…!!仕方ありませんね。感情的になっている以上、これでは議論のしようも出来そうに……」


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜大逆転裁判2より・プロフェッサー

「じゃあ、もしソガミが殺したのではないとしたのなら……!!昔《ヘイケ・ホタル》と名乗っていた人殺しのテロ集団の残党みたいな連中に……!!殺されたんじゃあないのっ!?」

「!?」

「……っ!!」(キッ!!)

【Aria】が発した組織名《ヘイケ・ホタル》という言葉に【Oriana】は驚く。その表情は、決して関わってはいけない深い《闇》への入口の扉を開けてしまったのだという険しい表情をしていた。

「…どこでその組織《名》を聞いたのですか!?」

「知っていたようね。……答えなさい!!」

「………もう悪い夢の見過ぎですよ、あなたは……」

プスっ!!

「!!………」

クテッ!!

「……オリアナ様」

「………」

【Oriana】は【Aria】に液体注入型の注射器を打ち込み、彼女を鎮圧させる。すると【Oriana】は少しばかり《心労》を抱えている様子であり、そしてこう言い放った。

「……問題はありません。ここを脱出次第、彼女ときちんと話を致します。…私もどうかあの場所へ…刑罰房行きにして頂けませんでしょうか?」

「!?…お、オリアナ様!?…一体何を!?」

【Oriana】の突然の発言に【Siel】の者達は驚いた。しかし彼女はその理由を告げる。

「…真実をうやむやにしていても、彼女は偽の《真実》を知ろうと他の島へ渡るくらいの無茶をします。…ですので、一度彼の方と共にお顔を合わせて…出来る限り対等の立場で彼女と向き合う事と致します。…どうかご理解いただけますようお願いいたします……」

「!?……わかりました。……でも助かりましたね。まさかこの街でルーヴェスさんともう一人。……【狼志組】の方が応援に駆けつけてくださるなんて……」

「はい。……どうやらアガルタさんから話を聞く限りでありますが、【狼志組】内に在籍しているとある女性の方が、今回の首謀者【Dail】氏の中にいる取り巻きの者による《辱め》を受けられた事が…何やら大きな原因だと考えられます。……所属する副長のフカベさんとアガルタさんの要請により、今回ルーヴェスさんが応援に駆けつけてくださりました。……無論【Surviver】(サバイバー)の方々も協力を惜しみなく、引き受けてくださりました。…そして、ルーシスさん率いる【R・P】社【Agente】御一行様による情報で、全て解決に導いてくれるかと………ですが……」

【Oriana】は胸の内に秘め、閊(つか)えている何かを言葉にして吐き出そうとするが、今一度それを発言する事を控える───────

「……大丈夫です!…今回の騒動は必ずカタがつきます!…何故かといえば…あの【狼志組】の中でも乱世の続く【Paradiso】の世界において【十傑】メンバーと呼ばれる実力者である一人…七番隊隊長…《宝塚ノ華》の異名を持つ【Nalsame】(ナルサメ)さんが今回派遣されましたから!…そのおかげでアリアさんも無事に保護して下さりましたし。……ただ……」

・・・



「デュ………ふふ………」

「………」

「ば………ばか…………な……何故…………再……生され………な………助け…………!!」

ザシュンッ!!!!!

「…………」(シャー………)

キン!!…リィーーン♪【冥鐘】

「結局………口だけ?……吠える弱い犬は嫌いだよ……」

相手の者は、無数のワイヤーに締め上げられ、無惨にも花びらが舞い散るかのように肉塊と鮮血を散らし、その様はまるで現世でもてはやされている《世紀末を舞台にした漫画の悪役バリの散り際》と同等の不名誉な醜い死を遂げた。男の正体は、【狼志組】の中でも【十傑】と呼ばれており、七番隊隊長の命を受けている【Nalsame】であった。敵を一網打尽し、何処か《高潔》なオーラを持ち、涼しい顔をする彼は、この街での自らの役割を終えると───────

「…副長の命による…【Velkana】の寄り道のお使いはここで終了しました。…準備運動も終え、速やかに《偽善》を名乗る者がいると予想される次の現場へと向かいましょう」

スタッ!!タッタッタ………

───────あの人達…本当に悪者に対する配慮も、加減を知りませんから…………

《バァーーーン!!!!!》









・・・
・・


ピッ!

「……成歩道。…ナルサメさん。お使いご苦労様でした。…どうやら二人のみならず、彼を含む【狼志組】の【十傑】メンバーの中には、既にあの《偽善者》達の存在が動き出している前兆を知っておりましたか。……メモメモ。……我々貴族との関わりの深い者達アガルタ、不在になっているセリルに代わるフカベ……そしてあの偽善を目的とした救済の者達とまともに戦う術を持っていたルーシスと………っ……!!久しい再会ですね。……我が四人の友……マイリーダー……《ベルナ》…お元気でしたか?」

ポタポタ……

「…!?おっと。…私とした事が涙を流して取り乱すとは……大丈夫です。……我々はこれからこの街を牛耳っている【Dail】邸の主を必ず確保し、法の下で裁きを与えます。……そして、我々との因縁のある…【救済派】……この世界で一体何を企んでいるのか…不明瞭な点がいくつか多い謎の集団……」

《【Demister】!!》

「あの者達の思惑は必ず阻止します。………そして…その者達と敵対する戦力のある者が…最近見つかりました。……あの時の…昔の私達のように、この世界を守ろうとする強い意志を持った目を持つ者を。…彼の名は………」

《【Veno・nix】》

場所は街外れの教会の内部。月明かりに照らされていた【Ruves】は目の前にあるかつての自分達の同胞である【Bellna】の墓に祈りを捧げていた様子であった。この祈りが、彼女に届いたのかは分からない。墓は白い月によって輝きを一層強くさせており、武運を祈るかのような強く、気高い意志を感じ取れたーーー

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?

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♪〜大逆転裁判より・プロローグ


This is a memory of one day────
(これは、ある日の記憶である────)

Flower town on [E island] [Velkana] The man who dominated the town [Dail]
(【E島】にある花の街【Velkana】その街を牛耳っていた男【Dail】)

The man's identity was a devilish being possessed by lust and greed, and the hired housekeeper had become the man's livestock.
(その男の正体は色欲と強欲に取り憑かれた悪魔のような存在であり、雇われていた家政婦は、その男の家畜と成り果てていた)

His devil's hands eventually became public, and those who controlled them were secured one after another and were to be judged by law.
(彼の魔の手はいずれ世間に公となり、それらを牛耳っていた者達も次々に確保され、法によって裁きを受けることとなった─────)

A person who uses a rope, is obscene and restrains and ties up a housekeeper and a maid, and runs as a sadist
(縄を使い、家政婦もといメイドに対して卑猥かつ拘束を強行し、縛り上げるサディストに走る者)

Existence of a corrupt knight who has the title of a former knight but has a dictatorial ambition, ran into the darkness, and ran to slash
(元騎士の肩書きを持つも独裁的な野心を持ち、闇に身を委ね人斬りに走った堕落の騎士の存在)

They are defeated by those in an intelligence guild, and their wrongdoing is also revealed and secured by guild executives on each island.
(それらの者達は、ある諜報ギルドの者達により敗れ去り、その悪行も各島のギルド幹部によって証拠が顕となり、確保される)

A guild that complies with the law [Xiol] ... It is written in the tradition that the aristocrat [D. Dior family] who values ​​the law and order contributed greatly to the closing.
(法を遵守するギルド【Xiol】…その元締めは法と秩序を重んじる貴族【D・ディオール家】が大きく貢献したと遙か伝統にそう記されている─────)

They are also said to be guardians of the law, and were famous for giving appropriate punishment to those who committed great sins.
(彼らは法の番人とも言われており、大罪を犯した者達にはそれ相応の処罰を下すことで有名とされていた─────)

It was the death penalty that was revealed and sentenced to them.
(罪を明らかにされ、その者達に下されたのは死刑判決であった)

There were no criticisms of that opinion, and they were to wait until the day it was executed.
(その意見に対し、批判的意見はなく、彼らは執行されるその日まで待つ予定であった)

Until that mysterious incident happened ...
(あの不可解な事件が起こるまでは─────)

Author ・ [Ruves]
(執筆者・【Ruves】ルーヴェス)

・・・
・・





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〜【Paradiso歴】2000年7月1日・昼方【c島】法と秩序のギルド【Xiol】刑務所管内〜

♪〜大逆転裁判より・サスペンス

タッタッタ!!

「!?………死刑確定の大罪人ダイルが…ですか?」

「はい!!……独房内で何者かによって首を斬り落とされ……死亡しておりました。……しかしそれだけではありません……」

「!?…まだ何かあるのですか?」

「はい。……どうやらもう一人の罪人…【Jeil】が所持していた我々のモノクルが再び盗まれたようなのです。………あれ程厳重に管理していたのでありますが……ルーヴェスさん…」

「ふむ。……どうやら、我々の予想もできない事態が起ころうとしているとは。………?……おや?あなた?その背中にある紙はなんですか?」

「!?……え……」

ピラッ!

場所は法と秩序を重んじる【Xiol】のギルド本部ーーーその中に存在する刑務所管内で、以前色欲による大罪を犯し確保され、法によって裁かれ《死刑宣告》となった罪人の者が、独房内という密室の中で、何者かに首を斬り落とされ、生首が発見された状態で発見される不可解な事件が起こった。それに留まらず、証拠品であるモノクルが盗難に遭い、更に闇が深い事実が判明した。ギルドに所属する隊員が背中に何か張り付いたブツをむしり取ってそれを確認する。それは電報であり、現世の言葉であるカタカナ文字が刻まれ、その内容の初めにはこう記されていた。

「い、いつの間に!?…?…ヨコクジョウ?……!?これは……予告状です!」

「?予告状ですか?……何が書かれているのですか?」

「……読み上げます…」


《ヨコクジョウ》

《ワレワレハココニセンゲンス─────コヨイワノクニニテイマフタタビ─────アノカクメイヲオコスタメチャクジツニ─────ワレラサツリクシュウダンノナニオイテシクジッタツミビトモノノイキツクサキハ─────タダキリステルノミ─────》


「……以上です」

【Xiol】に所属するギルドメンバーの隊員が読み上げると【Ruves】は電報の内容から、何かを察した。

「……成歩道。……そうですか。…これはあくまで空想に過ぎませんが…ダイルは権力者として彼らを雇っていたつもりであるも……その裏で何者かによる使い用の良い手駒として扱われ、我々に捕まって真実を知らせないように口封じとして独房内に侵入し葬った…といった所でしょう。…………そしてこの文の内容からするに……あの惨劇を再び起こそうと目論んでいる者達による犯行ですか…」

「?…ルーヴェスさん?」

「……過去に私はこの事件と関連する事変に遭遇しました。……我々のギルドリーダーを統括する長となっている令嬢…アガルタさんも然りです」

「事変?……!?……それって!?」

ギルドメンバーの者が、その出来事について心当たりがあった様子である。【Ruves】は口を開く。

「【J島】…【Kagoya】の町で起こった大火……人はこう呼んでおりました」

《維新事変・大火ノ正門事件》

「……暫くぶりですね。……その事件の事は……今でも忘れません。……1988年…【J島】の【河原木亭】の主人である現世人【Kawara】…現世での本名は《亞秀毅陛太》(アシュウギ・ヘイタ)…そう名乗る者が……この【Paradiso】の世界にて《子爵》と名乗る者が今から10年以上前に【Senno】という名の女性を庇う為に胸を打たれ…その直後大火が起こった。…その後に……謎の…」

「はい。……雨がひたすら降り続ける異常気象に見舞われ、その後水害が起こりました。それも、【Kagoya】の町全てが飲み込まれる大規模な水害が発生。………それは後世にも語られる大きな傷跡を歴史上に残し…その後…」

「…【R・P】社ギルドで初の諜報ギルド……【Agente】を設立したばかりのリーダールーシスとその副リーダーのベルナがその場を取り仕切り、災害の犠牲者を見事避難させ、復興に協力を要請。……そして昔から交流があった【御用見廻組】に属する武力集団【狼志組】の活躍によって現在もあの町の治安は守られている。……そして…」

「……再びあの大事件が………10年以上という歳月の中で、今再び掘り起こされ……引き金を起こそうとしているとは………ですが一体なんの為に?」

【Xiol】の者達は、その思惑に何を意味しているのか不明瞭なままであった。そしてその推察は、ある事件によって大きく動くこととなった。

・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》



〜【Paradiso歴】2000年6/28・夕方【J島】【Kagoya】大江戸通りにある城〜

〜大逆転裁判2より〜プロフェッサー〜

ザシュッ!!

「……!?……ぐっ!!」

バタッ!!

「………」(シャーー………)

キン!!

「………クックック。………流石は【Varisk】屈指の辻斬り!……なかなかの腕前なりけりのようだ。…【Cize】(シーゼ)!!」

「……」(コクッ!!)

「ホッホッホ!……では引き続き我の護衛を頼んだぞ〜!…用心棒の仮面の者よ!!」

「………」(コクッ……)

タッタッタ………

・・・

「………?【Cize】…終わったでござるか?」

「………」

タッタッタ………

「………む?」(無視でござるか……)

時は【Paradiso歴】2000年7/1ーーー【J島】【Kagoya】の町にある大江戸通りにて何者かによる暗躍が行われていた。そこには髑髏の仮面を着けた仲間の男性の者を引き連れ、金髪が印象的で仮面を着けていた女性の者がいた。その者には自我がなく、ただ命令に従い、聞くだけの魂の抜け殻状態として使命を全うするような素振りを見せていた。

「………」

ザッザッザ………

・・・

ザザ………!!ザザーーーーッ!!!!

《【Tobame】(トバメ)…どうした?》

《トバメちゃん!!……一体何ぼーっとしてるの?……早く行こうよぉ〜〜!!》

「っ!!」(ズキッ!!)

バタッ!!

「ムムッ!?……大丈夫でござるか!?…シーゼ!?」

突如【Cize】(シーゼ)と呼ばれている仮面の者は頭痛によってその場に倒れ伏せる。その様子を見て心配になった仲間の一人は歩み寄って状態を確認する。すると彼女の口が開いた。

「……!!……大丈夫……です……問題…ありません……ただ頭痛がしただけで…す……どうか…お気になさらず…」

「!?」(ぬっ!?……普段寡黙な女人斬り……シーゼが……口を開き……まともに言葉を発して喋るとは……!?……これは一体何が起こったでござるか…?)

仲間の一人が【Cize】の突然の発言に戸惑っていた。普段喋る姿を見た事がない彼女の突然の様子に動揺して戸惑いを隠せなかった。髑髏の仮面の者は話を続ける。

「……うむ。……それならば良いのでござる。……では指令を下すでござるよ。これは【Capo】(キャポ)の命令でござる。……これからお主は【C島】内にあるこの町へと出向き、潜伏するのでござる」

「………はい」

「しばらくは、お主の代わりに拙者がこの町の仕事……我々の主君のお代官…【Kunizu】(クニズ)氏の護衛を頼まれたでござる……では急ぎでござるので……拙者はここで失礼するでござるよ」

ザッザッザ……ボン!!

【Cize】の仲間の一人、髑髏の仮面を被った男の者はそう言い残し、所持していた煙幕で姿を消す。そして彼女は先程の記憶について疑問の念を抱いていた。

「………」(一体さっきの記憶は…何?……そもそも私は一体……何者でしょうか……いえ…私はただ…記憶を失い、それでも剣の実力を認めてくださった(【Zeal】)ジィール殿に付き従う従者の身分……あくまで自分の使命を全うするまで……では…指令の方は…?【C島】の【Xiol】にて……ドクボウニテシクジッタメイドウリノタイザイニンハナマクビニサラシーーーデンポウヲシノバセテオケ………ですか……)

彼女自身は道の中で自分の記憶について自問自答する。一体自分はどうしてこの場所に立っているのか、何故殺害の命を受けているのか、何の為に主君を守ろうとしているのかと疑問を感じていた。しかし指令書を読んで非情にも腰に巻いていた剣をチラつかせる。

チャキッ!……キンッ!!

……リィーーン♪【冥鐘】

「………」(鈴の音……何故?……いつも持っているこの剣を収めると鳴り響くこの音………ですが……一体?……誰からこの剣の心得を?)




・・・
・・

 

🎼Back Ground Music 》》》

 



♪〜KH・BBSより〜Ventus

〜【Paradiso歴】2000/7/1・夕方【c島】【Mikrio】〜

ザッザッザ………

「………ここか。……副長の勅命状は……あるな」

ピラッ!!

場所は【Mikrio】ーーー時間帯は朝方ーーーそこにはグリーンのマントに、現世で言う学生服のような軍服に150Cm代と小柄で髪色は黒髪の尖りヘアーが特徴的で目つきはまるで狼のように鋭くも、冷静であり頭が切れるような雰囲気があった。年齢的にも20代前半と見られていた。すると街の中に存在する法と秩序を重んじるギルド【Xiol】の本部が見えてきた様子であるーーー

「……止まれ!!…何者だ!?」

「…【J島】御用見廻組【狼志組】二番隊隊長【Niyano】(ニヤノ)……通称ニノ。…年齢は25歳。……我々の副長【Fukabe】氏によって勅命状を渡しに来た次第だ」

男の名前は【Niyano】(ニヤノ)という名前でニノという愛称があるらしい。その身分を知った【Xiol】に所属する者達は相槌を打ち、報告通りと捉え、返答する。

「…これはこれはよくおいでくださいました。【狼志組】の使いのお方が来るという報告は【Ruves】さんから聞いておリました。……ではどうぞ」

「……失礼する」

ザッザッザ……

ギィー……バタン!!

「……」(相も変わらず堅苦しい場所のようだ。……考えが纏まりやすい………)

コツン…コツン…スタッ!

「よく来てくれましたね。…ニノさん」

「…ルーヴェスさん。……久方ぶりです。……【Alvia】(アルヴィア)の方は見つかりましたか?」

「……我々も迅速に対応しているのですが……未だに足取りは掴めていないのですよ……」(フリフリ)

「…そうですか。…それで、一体何が起こったというのですか?」

「……気づいておいででしたか」

【Niyano】は【Xiol】内の妙な予感を感じ取っていた様子であった。それを評価するように【Ruves】は彼を褒め称える。

「流石は、この空気を瞬時に見透かしてその頭脳明晰な所…彼が所属して統括している【狼志組】二番隊隊長を請け負っているようですね。…ニノさん」

「勘違いしないでもらいたいですよ。……サイガ局長が仕切っているのであってフカベ氏ではありません」

「…酷い事を言うようですね」

「あなた程、腹黒ではありませんよ……っ」(フッ!)

「…ハハッ。……では単刀直入に言いましょう。……色欲の大罪を犯した罪人【Dail】氏が何者かによって首を斬り落とされ……殺害されました」

「……」



🎼Back Ground Music 》》》


FF15〜What Lies Within〜♪



【Ruves】は事の所在を【Niyano】に伝える。今回斬り付けられた【Dail】は、密室の監獄の中で首を斬り飛ばされ、そのまま絶命していた。見張りの者がいたが、無論その場所には誰も中に入って訪れていなかったようだ。よって独房内での殺害は不可能であるという見識が報告されていた。

・・・

「……なるほど。……死体現場はその後、どうしましたか?」

「……手厚くこちら側で処理し……供養させていただきました。その後、死亡報告と診断書を明記して重要な証拠品として管理しています。……ですが、殺害現場を収めた写真を鮮明に残し、死因も記載してデータを残しております。…今から送信します」

ピロリーン♪

「………!?」(こ……これ……は………)

【Niyano】はその死体現場を収めた写真の光景を見て驚愕した。そこには、瞳孔を開いた状態で首を斬り落とされ、処刑された飢えと欲望に塗れた色欲の大罪人【Jeil】が無惨な姿で刑務所の独房内で死亡していた場面を収めていた。すると【Niyano】はその光景を見て驚愕の表情を見せていた。

「彼の首の斬り口からするに、剣の実力に長けているようですね。…そして首周囲には毒によるものなのか、腐敗も酷い様子です。……どうですか、ニノさん?……何か分かりましたか?」

「………」(フルフル…)

【Niyano】は、首を横に振った。しかしその手は強く握られていた。それは、事実であって欲しくないという願いもあった。彼自身、【Dail】の首を斬った黒幕が一体何者なのかについて心当たりがあったのか既に察していたかのように心の中で確信を募らせていた。しかしその姿を【Ruves】に見せないように必死だった。彼ら【Xiol】の者による法と秩序を重んじるその重圧から、彼自身肌で何やらピリつくものを感じ取っていたのだろう。また、現在請け負っている問題もあるからか、一度冷静になり、先に頭の中を整理して迅速に優先順位を組み直す。

「………なんでもない」

「……そうですか。…後はこちらも。…どうやら事は重大な方向に来ているみたいです」

ピラッ!

「これは?……!?」

【Ruves】が見せたのは電報。忍ばされていた予告状であった。内容を確認した【Niyano】は何やらその出来事に心当たりがあったのかそのワードを伝える。

「……《大火ノ正門事件》の再来を狙っているのか…」

「知っておりましたか。……なら話は早いようですね。……では時間です。…そろそろ行きましょう」

「……?何処に?」

「…一緒に同行をお願いできますか?…これから各ギルド幹部を【Mist Garden】に召集し、緊急の幹部会を開きます。ニノさん……あなたのお力添えを願いたいのですが……」

「……わかりました」

「事が済み次第…再びフカベくんの指令の元……【Kagoya】に帰還していただいても構いませんので」

「……了解した」

・・・
・・


ヒヒ〜ン!!

「……馬車を使うのか?」

「ええ。…ではまずは、目標を【G島】にある救済ギルド…【Siel】へ向かいます」

「…そうか。現救済長のオリアナさんを迎えに行くんだな」

「はい。…それに。…少しばかり気になる存在の者達が二人保護されていますので…」

「……?誰の事だ?」

【Niyano】はその者の存在について聞こうとするが、それを【Ruves】がはぐらかす。

「いえこちら側の話です。……では出発しますよ。……運行中に喋ると、口の中を斬り飛ばす羽目になりますよ」

「……ああ。……」

ザシュっ…!!!

ヒヒ〜〜〜ンン!!!!!





🎼Back Ground Music 》》》


♪〜FF15〜Hunt or Be Hunted


「……!?」

「……!?ルーヴェスさん逃げろ!!!……っ」

敵襲だーーー!!!!

ドォーーン!!!!!

「……っ!!」

「……くっ!!」

スタンッ!!!

突如、馬車が炎上し爆音が響き渡った。爆風によって吹き飛ばされた物体が、二人の目の前に落ちてきた様子である。
 
ボトっ!!

「……っ!……この斬り口は……」(ゾクッ!!)

二人の目の前には、馬の生首が落ちてきた。その光景を見て【Niyano】は戦慄した。その剣の斬り口には見覚えがあったのか、彼自身顔を青ざめていた様子であった。

「大丈夫ですか?ニノさん?」

「問題ない。……やはりそうか……ルーヴェスさん…どうやら俺達は、標的にされたようだ。……隠れていないで出てきたらどうだ?……今…現在進行形で【J島】の【Kagoya】の町中を騒がさせている【Varisk】屈指の辻斬り……」

《【Cize】シーゼ!!》

ザッザッザ……

「……」(ジャキッ…)

《リィーーン♪》

「……!?」(………な………)(ゾクッ!!)

「……仮面を被っている。…それに……髪色。…そうですか。…極秘の情報は真実の通り。……という事でしたか」

「!?…極秘……だと……ルーヴェス!……一体どう言う事だ!?」

【Ruves】の放った言葉に【Niyano】は冷静さを少しばかり失い、その事実を明るみにしようとしていた。すると彼自身は、万策尽きたかと言わんばかりに彼にありのままの事実を伝える。

「……昼方。…刑務所敷地内にて仮面を着けた金髪の女性らしき姿を目撃したとの報告があったのですよ。………そして、ニノさん。……その顔の焦り具合。……成歩堂。全ては繋がっていたという事でしたか」(メモメモ)

「……っ!!」

ガシッ!!…ジャキッ!!!!

「……っ!!」

「いいから答えろ!!……いや……これでは埒が明かない!……今度はこちら側から言わせてもらう!……貴様……副長にも隠し…俺達十傑メンバーの隊長に対し…!!…一体何を隠している!?………何故……あそこにいるのがぁっ!!!」

「……君の親友の一人……トバメ(【Tobame】)さんなのだと。…そう言いたげなようですね」

「!?」




🎼Back Ground Music 》》》


♪〜テイルズオブデスティニーより〜 Idle Fears


「あのように親友の顔を仮面を隠した所とて……髪色と…記憶を失っても今なお漂わせる女騎士の雰囲気にその特徴的な斬り口……そして決定的な音が聞こえましたでしょう?…相手が帯刀した時に鳴り響く…あなた達【狼志組】特有の真剣と向かい合ってこそ聞き取れる……」

《冥鐘を……》

「………っ!!……何……で……!!何でトバメがそこに立ち尽くしているんだ!!??…アイツは確か2年前にぃっ!!」

「戦死したと報告があった筈です。……しかしながら、その当時のあなた自身……認めようとしなかった。……彼女の死と向き合ってあげられなかった。しかしどう足掻いても彼女はあの時戦死したのは事実なのです。……それを今になってやっと受け止めた事でしょう。……だが、何かの因果であのような姿で復活を果たした。……いや……彼女の亡骸を利用され…死を冒涜され蘇ってしまったのですよ。……真のユートピアの世界を創造し…実現する為に手段を選ばない…長きに渡り我々【自由派】と敵対し、ようやくその準備を整え……終止符を打つ為、着実にユートピア人を隔離する為に施していた措置……【標本見聞解体新書】を悪用し……準備を進めていた【創造派】の手によって!」

「!?……【標本見聞解体新書】……」(ゾクッ!)

そのワードを聞いた【Niyano】は何やら聞き覚えがあり、心当たりがあったのか顔を青ざめる。すると仕切りに【Ruves】は掴まれていた手を強引に払い除け、事の事情を大まかに説明する。

「……自称便利屋ギルド…【Hopera】という名のギルドの者が先月に起こった【D島】での爆破事件……その時に対峙した真・ユートピア創造士隊支部での出来事を……そしてそこで一体何が行われていたのか。……全て真相を語ってくれました。……世間に公表されず……情報を隠し通すのには苦労をかけましたがね。……この事実はできる限りならブラックノートとして保管するべきでした。……ですが時既に遅しなのか。……決して開けてはならない【パンドラの匣】をどうやら我々は自らの力で開けてしまったのです……大きな闇を…彼…【Veno・nix】…そして。……【狼志組】に所属するあなた自身も…」

「!?……ヴェ……ノ……?」

「……これから…予想だにも出来ない大きな動きがあるのは事実な事でしょう。…既にあなた自身分かっておいででしょうが……私のみならずあなたの副長でかつて私の仲間の一人であるフカベ君……【R・P社】のルーシス…癒しを重んじる貴族の令嬢アガルタさんが敵対した《救済を目的とする謎の一派》が……目撃されて復活を果たしたようです。……【J島】の【Kagoya】の町にて隠密の情報から報告が来ました。…彼らは、自らを六幹部と名乗っていたそうです」

「……!?」(……復活したという……のか……噂で聞いてはいたが……今から約10年前に大きな大戦を引き起こしたあの存在そのものが奇妙な集団………)

《【Demister】と名乗る者達が!!》

二人がその話題を持ちきっている中、相手の女性は、すかさず馬を呼び寄せて逃走を開始する。

「………」

ピィ〜♪……

ヒヒーーーンッ!!!!

「!?…しまった!」

「いけませんね。……私としたことが感情的になるあまりに、相手の動きを疎かにしておりましたね」

「……まだ馬は一頭残っている。……追うぞ!」

バシン!!

ヒヒ〜〜ン!!!

【Niyano】は、無事であったもう一頭の【Paradiso】の世界特有の馬【P・Cavallo】(ピ・キャベーロ)を操り、逃走中の人斬り【Cize】を追跡しようとする。幸い相手との距離は離れておらず、馬の脚力で追いつける距離にいた。その後部には【Ruves】を乗馬させ二人で追跡を行う。【Niyano】自身は脳裏にこびりついた忌々しい思いを抱えながらも、ひたすら進んでいく。




・・・
・・




B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?

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♪〜聖剣伝説3より〜Political Pressure

その頃、【Paradiso】の世界は長きに渡り観測している【導き人】と、その者達と因縁がある者達の存在は影で暗躍し、着実に完全なる【Paradiso】の救済計画を進めようと行動していたのだった─────

【Paradiso】には、かつて種族間での醜い争いの歴史があった─────

1990年代、この【Paradiso】の世界に存在するある島にて大きな大戦が勃発。引き金となった原因は、この世界に住むユートピア人と現世人との間に大きな人種差別の問題が起こり、長きに渡り命題として目をつけられていた。

ユートピア人は時の概念に縛られており、完全なる肉体を持ち合わせるも代償として加齢に伴う老いが訪れ、必ず命の尊厳がある事を守られている─────

対となる【現世人】は、現世から輪廻転生して【Paradiso】の世界に訪れた屍人の存在であり、現世の世界にて実体が既に喪った為、生まれつき患っていた疾病や肉体の不調といった概念は一切なく、心身の生命維持の為に行われていたメカニズム、排泄面の概念に縛られる事がない─────

ただ一つ、特殊なケースがあるのは定かである。【現世人】には【Fiducia】と言われる特殊能力があり、その源となっている魂の身体のコアに蓄えられている極めて特殊な聖水──────

人はそれを《魂の蜜》または《魂の水》とも呼ばれ、異性同士の性行為をする事で、互いの《魂の蜜》が混じり合い【Dea Acqua Santa】(女神の聖水)となり、新たな【現世人】同士の子を宿すことで子孫を残している者も少なからず存在している─────

ただ魂のみが存在し、それが人としての形を成し具現化して存在する極めて特殊な種族であり、歳は取らずそのままの姿で維持し、長年延命して存在し続けることが可能。しかし、致命的なダメージを受ければ【昇華】という現象が起こり、魂の粒子となりて─────

この【Paradiso】の世界への別れを告げる。この点だけは共通している─────

ギルドの人間側からは、時間に限りのあるユートピア人よりも、無限の時を過ごしキャリアを積みやすい【現世人】を一から雇い入れた方が、彼らにとってギルドの功績を伸ばしていけるのではないのかと過信し、年老いた者、実力のないユートピア人は雇わず、ただ迫害する者達までいた─────

その者達は、いつの間にか闇に堕ちていき、不条理な世界を一から創造し、誰にも迫害されず、悩む事のない世界を想像し目的とする【創造派】に身を投じ、時には殺戮をも厭わない集団が派生したのも事実である─────

その不満が一気に解放され、悲劇の一弾として放たれた一つの事件が存在した─────

1980年代───────【自由派】と【創造派】に所属する者は、自分達の存在意義を見出そうと野心を持ち、日々争いを強いられていた─────

その【自由派】の中には、昔から自分達の居場所がなく迫害され、批難される立場とされ自らを闇に浸かってしまった者達が後を絶たなくなっていたのも事実である──────

孤独に耐えられなくなった彼らは、いつしかテロリズムとしてクーデターを企てようとある組織の者達と手を結び、身を投じて同盟を締結し、名のある《殺戮集団》の部隊が結成された──────

それが【Varisk】─────闇の組織としてその名を世界に知らしめた─────

創設者は、【Paradiso】でも名を知らない凶悪な殺人者───────部の人間からは、武神と讃えられる程、武器に対する執念と知識、扱う為に必要とされる武術の適応能力がずば抜けており、彼自身の力で幾多の者達に力を与え─────

【Varisk】の基盤を作り出したものと言っても過言ではないと所属する者達の大半はそう答える─────



そして、時は【Paradiso】歴2000年6月15日以降─────

語り継がれる歴史において、【創造派】の者達が所属する者達───────ユートピア創造士隊は武力を持つ殺戮集団【Varisk】と同盟を結び、【真・ユートピア創造士隊】としてここに君臨し、不要な【現世人】とユートピア人を選別し─────

彼らを新たに作り替え、完全なる人類を創り出そうとする非人道的な者達が存在するのも、【Paradiso】の世界においても闇に等しいと言えるだろう─────

しかし、闇はもう一つ限りなく近づいている───────

現世でいうならば、ただの平和的な家族写真に、ある日心霊写真として写り込んだ一人の女性の背後に、赤く光る霊体─────

霊能者曰く、それは《怨霊》だった─────この世に対する恨みや憎しみ、妬み─────この世に生を受けるも満足に生きられず、ただ醜く、辛い世界でしか生きる事を許されなかった者達─────

それらの負の感情が起源とし、自らの罪を認めず隠蔽し、正義の名の下に世界を牛耳ろうと企もうとしている存在───────

彼らには、愛を育んで育つ事が出来なかった─────しかしながら命は欲しい─────

死にたくないという感情が存在する───────自らが人を殺めておいてそれでも命乞いをする者が後を絶たない─────

人の感情と本能だからなのか、それは受け止めようにも《死》を受け止める事が出来ないのだ─────

たとえ罪を認めようとも結局訪れる結末は《言語道断》《因果応報》《自業自得》《笑止千万》─────

その言葉が発せられ、死刑が執行されて滅んだ者達がいるのは事実─────

中には大罪を犯して葬られている者達が含まれているのも事実無根─────

彼らにはそれぞれ【虚飾】・【傲慢】・【暴食】・【色欲】・【強欲】・【憂鬱】・【憤怒】・【怠惰】【嫉妬】といった【七つの大罪】による概念の罪の属性を与えられ、それは自らの罪を断罪の為という目的であらず───────

自らの欲を満たす【傲慢】・【強欲】の限りを尽くす者─────

自らの身が潔白であるがために裏方で暗躍し、自らは傍観者でありたいと言い放ち【怠惰】の限りを尽くし、不要にも手を汚さずチェスのコマの如く誰かに行動を委ね【憂鬱】な気持ちでいる者───────

【暴食】の限りを味わい尽くす為、自らが好む特殊な性癖を持ち、ただ【色欲】に飢えている者─────

誰からも愛されず、他人の幸せにただ【嫉妬】するだけに生まれた者─────

報復と妬みを持ち合わせ、【憤怒】の感情を持ち合わせる者─────

上辺だけ強く見せ、ありのままの真実を語らせずに阻む【虚飾】に縋る者─────

それらの大罪の属性を持つ者達が、一体何の因果で復活を果たし─────この【Paradiso】の世界に対し、どのような影響を与えようとしているのか───────

・・・
・・





〜【Paradiso歴】2000/7/1・夜方【J島】【Kagoya】下町通り〜

「……アウロ?」

「はいドスな〜♪ジィールさん……ウフフ♡」

「………」

時は遡り、場所は【Kagoya】の町中にある下町通り─────殺戮集団【Varisk】に所属する者の一人【Zeal】が、ある女性と出会う。その女性の特徴はロングヘアーの銀髪が特徴であり、前髪はぱっつん髪で整えられており、黒のヘアバンドにアクセントとして黒色の朝顔が備え付けられていた。

「……何の用ですか?……その色目を使った態度…解せませんね。…悪ふざけで言っているのでしたら、ここで斬り殺させていただきますが?」

「ウフフどす〜♪……お生憎様ですけど、私は殿方を拘束してあんな事やこんな事…所謂Hな事をして味わい尽くす趣味はないんどす〜♪……そ・れ・は【標本見聞解体新書】による恩恵で作られた薬を投与され、強化されたその肉体で……あなたさん自身が自分の実力に酔ってるようでありんすから、少しばかり忠告も兼ねてこうして訪ねに来たんドスな〜♪」

「……!?…どうしてそれを?」

おっと。…それは、僕から説明するよ〜!

ザッザッザ……

「?……お仲間ですか?」「ウフフ♡……ロウディ…遅いドスよ〜♪」

【Auro】は機嫌よくもう一人の仲間を出迎える。そこには白衣を見に纏い、銀髪の青年の姿をした男【Rowdy】がゆっくりと歩み寄って【Zeal】に対し、律儀に挨拶をする。

🎼Back Ground Music 》》》


♪〜ゼルダの伝説・スカイウォードソードより〜ギラヒムのテーマ

「やぁ。…初めましてだね〜人斬りジィールくん♪」

「……今度は誰なのですか?……二人して仲良くここで斬り殺されたいのですか?」

ジャキン!!

【Zeal】は意地でも二人に対し、敵意丸出しで切り捨てようと睨みをつけ警戒している様子である。それに対し、やれやれと言わんばかりに穏便に済ませようと、【Rowdy】は武器の一つであるナイフの鞭を取り出す。

「やれやれ。……全く、仕方ないね……」

ジャラジャラジャラジャラ………

シュン!!

「……そこですね」

ブン!!

「!?……避けた……!?」

ザシュッ!!…!!

ザシュザシュザシュ!!!!

「!?……ぐうっ!!」(ば……馬鹿な!!……奴は一体どこから攻撃を……!?)

【Zeal】の斬撃は容易く回避され、身体中にはナイフの鞭が絡みつき、刃が深く刺さり込む。すると、今度は【Auro】が微笑んで彼に接近し、女神のよう振る舞っていた。

「ウフフどす〜♪……どうドス〜?…少しは落ち着きはったドスか〜?……どうぞ、ご心配せんで欲しいのでありんすよ〜♪…別にあなたさんの人斬り家業を邪魔する事を拒んでる訳ではないのどすよ〜オホホ♪……寧ろ……《勝利の女神》として、あなたに栄光の勝利を与えてあ・げ・る・ド・ス♡」

「………」

【Zeal】は冷静さを取り戻し、ひとまずは相手の話を聞こうとする。すると、【Rowdy】の方が先に口を開き、現世でいう速報ニュースのようにすらすらと口頭で報告する。

「…君が先月……【E島】で色欲の限りを尽くしていた大罪人の大掃除の件だけど……既に手は打たせてもらったよ〜♪」

「…!?……一体…どういう事なのですか!?」

「ウフフドス〜♡……私達六幹部のメンバーの中に、虫や動物の意思疎通に精通してる童ちゃんがいるんどすな〜♪……後は、もうお分かりどす♪」

「…始末したというのですか?…。彼女の代わりにあなた達の同胞が自ら?……しかし、何故そのような事を……」

【Zeal】は唖然としていた。自らのボスである【Capo】直々の命令であり、下手をすれば【Xiol】の者に知られれば【Cize】は無事では済まされない危険な任務であったからだ。しかし自分達の仕事を先に相手に横取りされ、奪われたと思い立ったのか、【Zeal】は意地でも反抗の姿勢を見せつけ、尚も睨みつける。

「ま、これにはね」

「戦略があるんどすな〜♪…そうしないといけない、大きな大作に仕上げるに欠かさない事なのドスよ〜オホホ♪」

「………そうですか。…それでも我々の邪魔だてをしたのは事実な事でしょう?……そのケジメは一体……!!どうしてくれるのでしょうか!?」

ジタバタ……

「ウフフ♡ご安心をドス〜♪……だ・か・らそのお詫びとして、取引をするんどすな〜♪」

「……?…取引?」

「そうさ。…取引だよ。…これから2日後…7/3日に君の部下シーゼ(【Cize】)はね。…その童君によってこの町で活動している【御用見廻組】内に存在し、【現世人】のみを集めた精鋭の武力集団…【狼志組】の二番隊隊長の者を始末するように行動し、殺害計画を立てているのさ」

「!?…未来を見据えて行動していると言うのですか!?……もしそれが本当であるのならば……信じても良いのでしょうか?……あなた方二人が…あの《救済の者達》であるという事を?」

その問いに二人は信じてもらえたからか、【Zeal】の事を褒め、更に話を進める。

「だからそう言ってるじゃあないのさ。……それに、君の実力は十分評価しているよ。…この町の人斬り家業をしていた中で…彼と戦ったはずだよね?…【Hux・row】元よりハクロー君とさ」

「!?…ハクス・ロー……」(キッ!!)

「ウフフドス〜♡……その目……余程【Dail】邸の主人に支えていた元黒く血に汚れた騎士様の方にと〜っても心酔しきってたことどすな〜?♡…ウフフ…まさかボーイズラブが趣味なんどすか〜?///」(クスクス!)

「……世迷言を……!!…その減らず口を黙らせ……!?」

シュルルr……!!

グキっ!!

「…ッ!!」(ズキズキ……)

【Auro】は朝顔を召喚し、蔓を【Zeal】の足に絡ませると、そのまま思いっきり足を逆に捻らせた。激痛のあまりに苦い顔をする。その様子に【Auro】はクスクスと笑いながら【Zeal】の顔を掴み、ある行動に出た。

ピトっ!!

「!?……放しなさ……!?」

チュッ♡…レロレロ♡

「!?……っ!!」

バッ!!

【Auro】は【Zeal】に対し口付けして接吻を交わす。しかし、断じて羨ましくもなく、ただ奇妙な気分になった為、すかさず離れるように顔を豪快に振って接吻から逃れる。

「あぁんん〜っ♡……もう……強引な殿方さんどすな〜!…レディーの扱いは丁重にと、剣と一緒に教わらなかったんどすか〜?…まるでロウディーと同レベルどすな〜!…はぁ〜……少しばかり腹立たしいドスッ!!///」(プンプン!)

「ハーッ!ハハハハ!!…馬鹿言っちゃあいけないよ〜アウロ♪…君のような悪趣味かつ奇怪な行動は……能力を会得する為だとはいえ……女性に対して、とても《非情》な事だろうからね。…僕の処刑法と同等にね……そう、こんな風に……」

シュン!!!……ジャキン!!

「!?」(…これは…空間転移能力!?……このような能力…【Fiducia】の能力を持つ者達の中でも…未だ見たことがない……こんな能力が発現する事が出来るとするのであれば………)

ジャキッ!

【Zeal】の目の前に空間転移したのか一本のサーベルが目の前にあった。【Rowdy】は背後を取り、再び転移させ、武器であるサーベルの剣先を突き立てる。

「…それはさっきも言った事だよね?…君のご存じの…あの存在だよ。……人の肉塊と臓物……そして【現世人】の魂からブレンドして抽出して創り出された……あの奇怪な未知の力と同じようなものさ…」

「!?…悪用したというのですか…」(ゾクッ!!)

「ウフフ♡…あの時の【Rowdy】はホンマ大手柄だったドス〜♪……それに、まさかこの瓶に入ってた、《奇跡の恵み》の液体を回収しとくとは……ホンマ、豪運なのか運が良かったどすな〜♪」

コトッ!

「!?……それは?」

【Auro】が取り出したのは一つの空き瓶であった。その中には雫の一滴だけが取り残されていた。するとその中身について【Rowdy】が説明する。

「この瓶の中身については、僕達の長が丁寧に説明してくれてね〜♪……どうやらここには、【絶対治癒能力】を完成させる鍵になっていたのさ。……今から半月前に、地下水道でこの空き瓶が落ちていて、おまけに《催し物》の研究レポートが置かれていてね。……どうやら類い稀なる治癒能力の錬成方法を生み出す、まるで《賢者の石》でも生み出すかのような、一つの方法だったよ。ま、名前の方はぼやけていて読めなかったんだけどね〜…」(やれやれ……)

「!?……絶対…治癒…能力?」

「君……現世で持てはやされている《火鳥(ヒドリ)》の血の話……そう言えばピンとくるだろ?」

「?…火の鳥…?」(首かしげ?)

「もうロウディー!!…本当にカルチャー好きの引きこもりさんなんどすからっ!!……ゴホン!!///…つまり、どんなに斬られても身体が再生し、決して消滅もしない不死の身体を手にする事が出来るのどす♪…あなた方の催しているあの展示物から…所謂《屍人》として再生し、記憶が消去されることもなく、ユートピア人も…そして【現世人】も昇華せず……ず〜〜っと《永劫》の時を生き続ける事が出来るんどすよ〜♪……でも条件があるんどすな〜♪」

「………」

二人はまるでこの【Paradiso】の世界に対し、宣戦布告するかのように強く主張した。

「僕達に忠誠を誓い、この世界を美しい世界に変える為……その実現の為に忌まわしいあの存在……」

「【導き人】をこの世界から完全に消し去り、誰もが幸せとなる世界を創造し、あなた達と共に築き上げていくのドス〜♡……それこそまさにユートピアの世界!!…誰にも邪魔されず、嫌な事や辛い事を考えずに無理な労働に従事して励まなくてもいい……そんな《理想郷》の実現を……その為にも彼らの存在が必要なんどすな〜♪」

「……彼らとは?」

「そういえば言い忘れていたね〜♪……ハクロー君の他にももう一人レディーを連れていたはずだよね?……名をリーネ。…これは運命なのか?……君の元将軍の彼が仕えていた主人のメイドだった娘だよ」

「……情報は聞いております。……確か【Fiducia】の能力は【治癒能力】であると。……なるほど。……そのような話になれば全て辻褄が合いますね」

「ほぉ〜う!……もう気づいたようだね〜!」

「ウフフ♡…さすがジィールさん♪……後はあなたが何を為すのか、もうわかったドスでしょう?」

シュルル……

ガシャンガシャン………

「!?…き、傷が治って…それに先程の足の負傷も……」

「ウフフ♡…どうどす〜?……私の【治癒能力】の恩恵は?……ウフフ♡…これからもっと大きな力を得ることになっとるんどすから、これで驚いていてはこの先、適応できなくなるどすよ〜♪…ほな、夜も遅いことどすし、そろそろ切り上げるドス〜♪…これからの健闘を祈っとくど・す♡」

シュン!!

「…ああ、あともう一つ、これだけ言っておくよ。…君は再び、あのハクロー君と戦う運命にあるようだから、精々その剣の腕……上げておいた方がいいかもね〜♪…まあ恥じることもないだろうさ。君も僕と同じように彼の木刀にやられて屈服させられたんだからね〜♪…アハハ!」

シュン!!

「………っ!!」(あの時、【御用見廻組】の囚われの身になったのは、…替え玉として牢で捕らえられていた彼女……【Cize】を救出する事が目的だったのですよ。……勘違いも色々と。…問題の多い集団のようですね。……過去に”救済”を目的として活躍していた集団【Demister】…つくづく話せば話す程、奇妙に思えてきました。……まあいいでしょう。……とことん利用させてもらいましょうか。……飼い犬に手を噛まれるという恐ろしさが一体どんな味なのか……!!)

《その身で受け入れる事ができるのか。…ふふ……実物ですね!》

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》


♪〜氣志團より・One Night Carnival

〜【J島】内のある草原内〜

「……ホンマにあの子を仲間に引き入れて良かったんどすか〜?ロウディー?」

「ま、今回はお試し期間さ。……それに彼自身のハクロー君に対する殺意は本物だよ。……心配ないさ。……彼は必要以上に活躍してくれそうだよ。……?」

ブォンブォンブォン………

「?……あら、【Calban】(カルバン)さん。…もう自称集会とやらが終わったんどす〜?」

ブォンブォン!!パラリラ♪パラリラ♪……キキーーッ!!

「おうアウロ!…もう終わったぜいよ〜♪」

突如、改造された【V・Prestina】を甲高い音で走行してきた大男の存在が現れる。その男の風貌は、《悪道上等!!》と書かれた特徴的なグレーの特攻服を見に纏い、シルバーのモヒカンに耳にはピアスをしたいかにもヤンキーのような風貌の者が現れる。

「ったく、あの【Blan】って野郎!!……なかなかいい拳してたぜ〜♪……俺の事を体をただ大きく見せた猫だとか言いやがったから一つメンチ切らせてやったぜ〜♪」

「ふぅ〜ん。……その頬の傷を見たら、さぞ返り討ちにあったんだね〜♪ハ〜ッハッハ!!……まだ君は能力が不安定なのだから実戦は控えた方がいいと忠告しておいたのだけどね〜……」

ゴゴゴゴゴゴ………

【Rowdy】は少しばかり自分勝手な行動をした彼に対し、ご立腹の様子であった。【Calban】自身は、周りの者達と違い、頭ではなく本能で動くタイプの者であるからか、人の忠告を無視することもしばしばな為トラブルを作る事が多いのであった。それを【Auro】が遮り、まるで母親のように仲裁に入る。

「もう、仲間割れは止すのどす。……これから大きな計画が動き出すというのに、仲間同士で血祭りを催してどうするのどすか!?……流石は現世では《鬼頭》と名乗っていた野蛮な《暴走族》の悪道総長さんで仕方のない人どすな〜♪」

チュッ♡…レロッ♡

「ウォッ!アウロ!///…いつもより激しいじゃあねえか〜♪…流石は《色欲》の大罪を司どるグラマー女のようだぜぇ〜♪抱き心地も《傲慢》で《強欲》なイザヤ(【izaya】)よりも気持ちよさそうだしな〜♪どうだ?俺んとこ来ない……!?」

パシーン!!パーン!!パーン!!

「い、いでで!!……!?…の、野薔薇!?」

【Calban】の周りには、細い野薔薇がまるで鞭のようにしなり、身体中を攻撃する。それはまるで主人の【Auro】を守ろうとするかのようにーーー

「カルバンさん♪あなたさんが一体何を履き違えているか知りませんけどドス〜♪……あまりお馬鹿で下品な事言ってると、傷が増えることになるんどすよ〜♪……ペッ!!……それに私が《暴食》の食い物にする対象は…《男》ではないんどすな〜♪……ウフフ♡」

「……サイコレズって奴だな〜♪」

「そうとも言うんドスけど、それがどうしたんどすか〜?」

「(・ー・)………」

認めるのかよ!?そこはぁっ!!??

「……やれやれ、君達…雑談をしている場合なのかな?…カルバンくん。…それで、その【真・ユートピア創造士隊】幹部クラスの【Bran】君っていうのは見込みがあるのかな?」

「おおよ!……アイツはこの町の国取り乗っ取るのに大賛成らしいぜいよ!……後はガハハ!カチコミかける《7/10》の日が楽しみだぜいよ!」

「……この世界の歴史ではその日が《第二次大火ノ日》と私達の《長》である…現世人【Mireisia】さんの身体を乗っ取った【Alvious】(アルヴィオウス)様が定めてくれましたドス〜♪……さて、お祭りの始まりが迫っとるどす…後は実行委員の【Izaya】さん…【Etrania】くん…後は私達の司令塔であるあの人にもよろしゅう伝えないかんどすな〜♪」

「ああ、彼のことかい?……【怠惰】と【憂鬱】を持ち合わせている……ま、あれでも僕達のリーダーで軍師のような人だからね……さて、一体どのような経営戦略を企ててくれているのか、とくと拝見させてもらおうかな…」

・・・
・・



🎼Back Ground Music 》》》




その頃【Paradiso】歴2000/7/1【L島】のある街の空き家

♪〜ベートーヴェンより・弦楽四重奏曲 第14番

〜♪

「……」

ズズ……

コトン!

「………」

ペラ……ペラ……

場所は【L島】の凍える雪国の一室────そこには紅茶の入ったカップを飲みながらあるレポート用紙を読み上げている者がいた。特徴として20代中盤の男性。銀髪で髪はウルフヘア。白のベストの姿のスーツを着用している。

ペラ…ペラ…

「へぇ〜。……なるほどね」(【標本見聞解体新書】……これは思った以上に奥が深いようだね…)

コンコン!

「ヤッハ〜!!ただいま〜♪……って!?…はぁ〜!…ちょっと【Areg】(アレグ)!?…アンタいつまでそんなアクビの出そうな資料を読み漁ってんだい!?」

「…ん?」

そこに、突如扉からドアをノックして入室してきた女性の者を、【Areg】と名乗る青年は気付くと相手に対し、視線を合わす。そこには20代中盤の女性。銀髪で髪が長く、右目髪で覆い隠している。右側が長めで左側は肌を露出した黒いロングスカートを履いている。

「…やぁ、【Izaya】(イザヤ)。…もう仕事を終えたのかい?」

「とっくに終わらせたっての!!…何で私があんなガキの面倒見ないといけないワケなのよ!?…あぁ〜!!ったく!!あのエトラニアってガキ!…猛獣やら虫なんか連れ回して本当気味が悪りぃ〜っての!!」(ボリボリ!)

【Izaya】という女性は、少しばかり素行が激しい一面があり、頭を掻き、鬱憤を紛らわそうとしている。その様子が微笑ましかったのか【Areg】はクスクスと笑い、まるで彼女を見下すかのように見せている。

「…僕達の中でも動物や虫の言葉が分かるエトラニアの事をそう呼ぶとは。……フッ!」(クスクス!)

「あぁんっ!?…ちょっと、何気持ち悪く笑ってる訳?」

「……別に。…あと静かにしてもらえないかい?…もうすぐ解けそうなんだ。……この万物に宿る魂の存在の重さについてね……」

「ハァ〜!?……ったく!!そんな薄気味悪い陰キャみてぇに安全席で怠けてるくせして、私に対して偉そうに指図してんじゃあないわよ!!……いっそ炎の能力とかでも身につけたら、アンタのそのキザな顔から順に……」

ジャキン!!

タン!!

「!?」

一室には、現世での世界でも名を知らない者はいない《ベートーヴェン》の名曲弦楽四重奏曲第14番が流れる一室。【Izaya】という女性が【Areg】に対し【傲慢】な態度と自由奔放に生きようとする身勝手な【強欲】さを強く曝け出す。しかしそれを【Areg】は身体に忍び込ませていたナイフを壁に放り投げて素早く突き立てる。彼の顔の表情は普段の温和な顔から一転し、まるで【憂鬱】な表情を浮かべるも彼女に対し指導するかのような、まるで聖人が乗り移ったオーラを放ち、声を発する。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜PSYCHO-PASSより・槙島聖護

「君の。…その言って聞かせ。…自らの操り人形として動いてもらわないと気が済まない【強欲】の限りを尽くす。……その【傲慢】さが故に……自らの行いに対して見直したり出来ない性分…何とも愚かしい所業だと思えないのかい?」(ジィ〜……)

ドドドドドドドドドド……

「……!?」(ゾクッ!!)(…な!?…何なのよ…コイツ!?)

【Izaya】は【Areg】の本当の一面を、この密室の場で見せられていた。普段天使のような顔をし、おっとりとして温和な雰囲気を見せているが、実際は人間の行動をよく観察しており、その中には彼女の魂の色や輝きをも見定め、冷徹にもその価値を見出している様子であった。

ツーッ…!

プレッシャーを感じているのか、【Izaya】の頬から魂の身体から分泌される汗が流れる。それを【Areg】はじっと観察し、彼女自身の魂の色を観測した─────

「…やはりね。…そうして他人を見下し……人という生き物を見下している君にはまるっきり成長が感じられないようだ。…僕自身が持つ【怠惰】が故の所業とも言うべきなのかな?」(クスッ!)

「!?…ええそうよ!!……普段本ばっか読んで何一つ動こうとせずにヘラヘラ笑ってる怠け者のアンタこそ…その…タイダ?……って言葉が一番似合いそうね!ええ!!それでもアンタは私達の…」

「リーダー……《先導者》と言えばいいのかな?……つくづく君は仮初の言葉を使い、自分を大きく見せては誇大に浸ろうとする。…大罪の内…【虚飾】の属性の恩恵を受けた【Calban】(カルバン)のように無様にも見せてくれる。…もう少し本を読むなりして学を身につけた方がいいと思うよ…君。……それとも現世では学業をただひたすら怠け…放棄するが如く現実逃避し、親の保身だけでのうのうと生きようとしてきた……ただ哀れにも飼い慣らされていた《羊》か、もしくは凶暴で手の付けられない飼い犬として殺処分を受けるその日まで朽ち果てる運命だったのかな?」(…フッ…)

「!!…アンタ…!!…よし!殺す!!ここで殺してやるわ!!……!?」

ポイッ!…カランカラン!

「!?」

【Areg】は自ら持っていた短剣を【Izaya】に放り投げる。すると彼女の覚悟を試すかのように言い放つ。

「…来なよ…それとも。……今更人を刺すのが怖いのかい?」

「っ!!…ふふふ……!ア〜ッハッハハハ!!!……バカな奴だね〜アンタ♪…例え私達【Demister】の長様がリーダーとしてアンタを抜擢したとしても、アタしぁ〜アンタをこれぽっちも……!!…認めたりなんかぁぁぁっ!!」

ダッ!!

【Izaya】は【Areg】に対し距離を取り、確実に息の根を止める為に特攻を開始する。しかしその攻撃を彼自身顔色一つ変えず、ただ立ち尽くしていた様子である。

「………」

「〜♪…バ〜カ♪ボーッとしちゃってさ〜♪…そのお命貰い〜♪……!?」

ガシッ!!…シュルル!!……ググ〜〜………

「!?ガハッ!!……くッ!!///……うぅ…!!」(ジタバタ!)(べ、ベルト!?…いやこれは…くっ!…いつの……間に!……こ、この私が…首を締め上げられるなんて……)

カランカラン!

「!?」(な、ナイフが…!?まずい!)

「………」(脆いね……)

コツン…コツン…ジャキン…。

【Areg】は【Izaya】の動きを瞬時に察知し、手元に仕込んでいたベルトのようなものを彼女の首に素早く装着させると同時にそれは瞬時に強く締め上がった。その正体は首輪であり、強固な強さであった。彼女は手に持っていたナイフを地面に落とす。窒息を防ぐために首を両手で掴み、気道を確保しつつ、恨めしそうな目で【Areg】を見上げる。しかし彼の表情は虚無であるからか、笑みもなくただ仏のように空虚な様を見せており、とても安らいだ顔をしてナイフを拾い上げ彼女を冷徹かつ非情な目で見下している。

「………」

「カハッ!!………ッ!!」(こ…コイツ…何でこの状況でも顔色を何一つ変えないで……《反原》以上に…殺しに加担して…慣れているっていう…の!?)

「君は…少々僕の事を誤解しているようだ………僕は…人としての感情を失ってるので…心から決して笑う事が出来ないのだよ。…人の命というものを…その重さを君のように無知な者や生きるに値しない。…それに等しい者に対して軽く見ることもあれば…こうして魂の輝き…それを試すこともしたくなるのだよ。…故にそれは……」

《非情な現実で生まれてきた……本当の人であらずだから》

「!?……ッ!!」

ギュギュ〜〜!!!!!

「あぁぐっ!!///…ッ!!……フ〜ッ!!///……フ〜ッ!!///」(アレグ…!!アンタぁ〜〜ッ!!)

【Izaya】は更に強い目で【Areg】を睨みつける。首輪に見立てたベルトは更に彼女の首を締め上げ、苦悶の表情を見せている。すると【Areg】は空笑いを浮かべ、彼女に対し、ある提案をした。

「安心したまえ。…まだ私の手で下しはしない。…ただ狂犬気質で育て甲斐のありそうな君には…躾け…所謂《調教》が必要だと判断したからね…どう?レッスンを受けてみる気はあるかい?」

「!?…ッ!!…カハッ!!…うぅ〜…!!」(ふざけんなぁ〜!!何で…私がアンタみたいな……)

ザシンッ!!

ツ〜ッ!

「!?」

【Areg】は躊躇なく【Izaya】の首筋をナイフで斬りつける。傷口からは塵のような魂の集合体の粒子が宙に舞っていた。幸い皮が捲れた程度であるが動くことで致命傷は免れない。ましてや彼女は現在首輪で首を圧迫されている為、微動だにするようであれば命にも関わる負傷は免れない。

「…!?…っ!!」

「…イザヤ。…君の所業は既にアウロやカルバンから一通り聞いているよ。……現世では《三木川》という女性として……散々現世では麻薬を捌き、富を築き上げた事…そして雇われていた麻薬密売の親玉……名を《反原》…彼を君の保身兼ボディーガードとして…仮初のフィアンセを演じて自らの駒として利用し…刑事一人とたった一人の肉親の妹さんのあの《人》を…そして麻薬取締官の男一人を殺した事をね」

「!?……っ!!」

「それに、君が今首を締め上げられているベルトに見覚えがないのかい?」

コトッ!

「!?」(これって…!?…何でアンタがそれを……!?)

【Areg】は手鏡を見せ、首輪を【Izaya】に写して目視させる。すると、彼女は首を絞め上げられている首輪を見て青ざめ驚愕した。それは現世で麻薬密売の親玉を担っていた《反原》が身に付けていたベルトである。【Areg】はその表情を読み取り、彼女の耳元でこのように呟く。

「…僕はね。このレポートの内容を読んでたった今理解したんだ。自分の持つ能力の正体を。…僕はどうやら相手の魂の本質を理解する事が出来るようだ。……そして現世や、この世界に存在する万物に宿す魂の形…それを具現化する術を身につける事が出来たようだ。

「!?……ぁぐっ!!……っ!!」(魂の…本質…ですっ……て……)

【Izaya】はもがく。しかし決して首輪が外れる事はなかった。そして徐に【Areg】は自らの能力に名称をつける。

「現世では日本神話においても聞き慣れた神の名前を引用して名乗った術……すなわち…」

《【付喪神転生】……とね》

【Areg】はそう呟き、更に言葉を含ませてこう話す。

「今君の首を絞めているのはね。……自称君のフィアンセ…《反原》によって亡き者にされた怨霊達。…その者達が恨めしそうに同胞である君の首を締め上げ、ここで殺そうとしているんだ」

「…!?…あぐぅっ!!///」

【Areg】は、同胞である彼女に対し、一切躊躇をする仕草をも見せなかった。その様は非情な表情かつ残忍にも速やかに処刑を実行する執行官のように見せていた。首輪はジワジワと休まる事なく締め上げ、まるで人力で彼女の事を怨めしい感情で締め上げているかのようにも見せていた。現世でも持て囃されている忠実な死刑執行法《絞首刑》にて彼女を抑圧させ、【Areg】は彼女に対し、許しを請うか見定めている様子である。

「さあ。…どうする?…大人しく自らの過ちを悔いてみるかな?……それとも絶望したままここで息絶えるのかい?…それもまた…彼【Etrania】(エトラニア)や【Auro】さんがよく言っている言葉だけど…平等に授けられている生物や植物が持つ細胞…それらを取り巻く命の尊さを全うしたとも言える。……それをぞんざいに扱い…生のある者の輝きを冒涜し続けてきた【傲慢】な君に…果たしてこの世界【Paradiso】の救済が出来るのかな?」

「!!……っ!……ぅぅ…!!」(…っくっしょう…!!何で…私はいつも惨めなのよ!?…私は…何も悪くない!!それもこれもアイツらがぁっ!!!…!!世界全てが狂ってるんだ!!…認めない…私は…アイツらを…)

『三木川……お前は道を過ったんだよ…罪人は法によって裁かれるんだ…認めろ…潔くなぁっ!!』

『絶対にアンタを許さない!!…今まで麻薬密売をして私の兄貴を巻き込んで蹴落としてきた罪を今ここで締め殺され……!!死んで償いなさい!!』

「!?……!!」(うる…さい…!!)

《五月蝿イ!五月蝿イ!五月蝿イ!五月蝿イ!五月蝿イ!五月蝿イ!五月蝿イ!五月蝿イ!……!!五月蝿ーーーーーイ!》


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜KH3より・The 13 th Struggle

ボアアアアアアアアアッ!!!

(中呪=慈救呪)
ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダヤ
ソハタヤ ウンタラタ カンマン

(大呪=火界呪)

ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク
サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ
サラバビギナン ウンタラタ カンマン


「……!?……」(これは真言…《慈救呪》と《火界呪》…耳元で囁いているようにも聞こえる…)

【Izaya】は自らの意志で、付喪神になり彼女を絞首刑(こうしゅけい)に仕立てあげようとする首輪に対し、彼女自身の内に秘めた《業火》の怒りを見せて抵抗するかのように叛逆する。それは現世にあるギリシャ神話でももてはやされている地獄の番人《ケルベロス》にも近い荒々しい魔犬のような風貌で地獄の業火を灯し、怨霊を焼き払うかのようにあえてその場を動かず、目を閉じその仏教の言葉を耳に傾聴している。

「………」(……)

「………」(どうやら大人しく御経を聞いているようだ。…だがそれが一体どこまで続くものなのか……乗り越える事ができるのならば見えてくるだろう。……君の本当の魂の本質というものを……)

「………」(……)

『キャハハ!!……ほらほらほら!!なんとか言えよ!!』

『このクソ生意気なブス女が!!…テメエは大人しくあたし達の言うこと聞いてればいいんだよ!!』

「………」(……!!)

『貴様……!!よくもこの私に汚名を着せてくれよったな!!ここまで来るのに一体どれだけの苦労をしてきたと思ってるんだ!?…誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ!!??……許さん!!……絶対にぃ〜〜〜っ!!』

『本当に…下の下の…私達《一家の恥娘》のようね!!あ〜〜っもう!!…アンタなんか…!!アンタなんか生まなきゃあ私達の生活は絶縁なんかされずにずっと…!!ずっと安泰してたのにーーーーー!!!!』

「………!!…ウァアアアあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」(……黙れ!!…アンタ達……全員…!!)

《燃やし尽くしてやる!!……全て……私に歯向かう気に入らない奴等……全員灰にして…!!…消し炭も残らないくらいに塵一つ……灰塵すら残さずして消し去ってやる!!!》

ボォオオオオオオオオッッ!!!〜

ギュギュ〜!!……………

「…!?……ハァ……ハァ……!!…ッ!!」

パチパチ!

「……っ!?」

絞首刑を免れた【Izaya】は膝を折って息を荒上げる。するとその様子を【Areg】は拍手をし、彼女に対し称賛の声をかける。

「おめでとう。…どうやら君は君自身の能力を開花させたようだね。…後はその能力を吸収してただひたすら彼らメンバーのように強化していくだけだね。……大事にしなよ。…その首輪はちゃんと付けておいてよ。…君自身の報復の証だろうからね」

「……っち!!」

ギュギュ〜〜!!!

「!?…あぁぐっ!!///……っ!!」

「言い忘れていたよ。…君の素行の激しい様に反応してその首輪がリミッターとして締め上げるようにしているから。……これは君自身の罪と向き合う為に必要な事だから、これを機に【怠惰】なくしっかり学び…悟りを開いた方がいい」

「…ッ!!…だ、黙れっての!!私に命令するな!!…この根暗ドS男!!」

「なんとでも言うがいい。…その怒りの表情…【Etrania】(エトラニア)が持っている魂の内に秘めている大罪…【憤怒】…いや、それとは異なる憎しみの怒りを私に見せているようではまだまだ教育の必要があるようだ」

ギュギュ〜〜!!!!!

「あぁっ!!///……うぅぅ……ふざ…け…る…な…ぁ………!!」(絶対…アンタをギャフンと言わせてあげる……んだ…から…覚悟してなさい……地獄の釜に突き落としてやるわ…この炎で……………!!)

バタリ……

「……お疲れ様。とりあえずは合格のようだ。…精々身を粉にして働いてくれる事を期待しているよ」

ファサッ!!

力尽き、倒れ伏せた【Izaya】に対し、【Areg】は布を被せて彼女を抱き抱え、ソファーへと運んで慈悲深く優しく寝かしつける。そして、次の作戦行動について考えに耽っている。

「………」(さて。…【憤怒】の大罪を背負わされたエトラニア。……君は果たして今回どのような報告を知らせてくれるのだろうか…楽しみにしているよ)

・・・
・・


〜精神世界〜

《フフフ。……ようやくこれでまとまってきたようだ。…さて、いよいよ待ちに待った…再来する《大火》の日が迫ってきたようだ。…【Demister】の長【Alvious】(アルヴィオウス)において命ずる。……諸君達の救済の活躍……大いに期待するとしよう》






B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



〜【Paradiso歴】2000/7/1・夕方【c島】森林地帯〜

♪〜ジョジョの奇妙な冒険・黄金の風より〜Incursione

パカラッ!パカラッ!パカラッ!

「………」

「…トバメ……!!待て!!」

「……無駄ですよ。…屍となり……【創造派】によって復活した彼女にはあなた自身の記憶はない事でしょう…いくら呼び止めても…」

「黙っていてくれ!!……っ!!」(そんな事はわかっている!!…奴に自我がないことくらい!!…ただ…奴らの手によって復活させられたのなら…!!俺自身の手で…!!)

《首を跳ね飛ばし……供養するまでだと!!》

時は戻り、【Niyano】と【Ruves】は【Cize】を追う。すると相手の方から何かが投げ飛ばされた。

「………!!」

シュッ!!ヒラヒラ〜……!!

パシッ!!

「…!?…………紙?」

「…再び電報のようですね。…読み上げます…」

《先頭ノ刀持ツ者ハ直チニ下馬しーーー私ト斬リ合イヲシロ!…後ロニ乗ルモノハソノママ進メ!》

「……要求書のようですね…」

「……わかった。……そっちがその気なら!」

「いけませんニノさん!…これは罠かもしれない!…ここは……!!」

ジャキッ!

「………」

【Niyano】は所持していた短刀を【Ruves】の頬に突き立てる。そしてこう言い放つ。

「…ここで奴に引導を渡す。…人斬りに加担してるのであれば尚更だ。……ルーヴェス。…アンタは先に目的の場に行け!…令嬢アガルタさんのいる……!!」

《【Mist Garden】へと!!…応じないのなら…!!…ここでアンタの首を跳ね飛ばす!!!》

「…!?」

「………」

【Niyano】は本気であった。追っている相手【Cize】とどうしても決着をつけるがために、幹部ギルドの一人である【Ruves】の命を落としてでも戦うと言った覚悟を見せつける。彼自身の目はまるで現世で言う《極道》にも近い何かを感じ取った。法の外に出てその禁忌を冒してでも止めたい相手がわざわざ自分を指名したのだからとーーー

「………いいでしょう。あなたの覚悟…しかと受け取りました。……先に行って報告を待っておりますよ」

「話がわかって助かる。……後日非礼を詫びる……!!」

ダッ!!……!!ガシッ!!

ヒヒ〜〜ン!!!

「……っ!!…全く無茶な下馬の方法を……頼みましたよ……ご武運を…」

パカラッ!パカラッ!パカラッ!………

クルクルクル………!!

スターーン!!!!

【Niyano】は【P・Cavallo】(ピ・キャベーロ)の上に乗り、空高く跳躍する。そのシルエットには月が見えていた様子である。そしてそのまま身体を一回転させ、スタイリッシュに着地して下馬する。そして取り残された【Ruves】の安全を心から見送った。

「………」

パカラッ!パカラッ!パカラッ!………

ヒヒ〜〜ンン!!!

ブルブル………

「…………」(なでなで!…………)

ジャキ………

🎼Back Ground Music 》》》


♪〜テイルズオブデスティニーより〜 Idle Fears

「……【Cize】(シーゼ)………いや、【Tobame】(トバメ)!!」

「………」

【Niyano】は少しばかり相手【Cize】に対し、旧名の名を公言して頬を緩ませていた。そして、今回の騒動について聞き出す。

「……【Kagoya】の【J島】で人斬り家業に加担し…そして今回【Xiol】内に幽閉されていた【Dail】を殺したのは……お前なのか?」

「………」

【Niyano】は意地でも今回の事件の真相を彼女から聞き出そうとする。しかし待っているのはただ沈黙が続くだけの空間であった。森林内部は生い茂っており、月の光に照らされた周囲は緑に溢れていた。そして【Niyano】の身につけていた深い緑のマントも煌めいていた。

「……トバメ。…俺は…出来ればこんな形でお前とは会いたくなかった……一体何故なんだ?…何で…お前はこうして俺の前に現れようと意思表示をした?……自我を保っているんだろ?こんなモノを渡してきたって事はだ」

ピラッ!

「…………」

【Niyano】が突きつけたのは、先程彼女が投げ渡した電報であった。そしてすかさず追求を続けていく。

「…お前、本当に奴らの…!!【標本見聞解体新書】によって手を加えられ、復活したのか!?…頼む!答えてくれトバメ!」

「!!」

ジャキン!!

「!?……と…トバメ…」

【Cize】は感情が抑えきれなかったのか剣を抜刀して相手に突き立てる。そして徐に鉄仮面をつけた口からこう発言する。

「…【標本見聞解体新書】について発言した無法者あり。これより【創造派】側の敵対認証と見做し、速やかに殲滅を開始しますーーー」

ジャキッ!!

「!?…トバ……メ……」

「………」(シャーー……キン!)

リィーーン♪【冥鐘】

🎼Back Ground Music 》》》


♪〜龍が如く0より・怨魔の契り


「……分かったよトバメ。…もう無理にだとか言わない。……黙秘というのなら仕方ない。…そうかお前。……あの忌々しいモノに取り憑かれてしまい…人斬りに堕ちては全てを……忘れてしまったんだな…俺や…アルヴィアとの兄妹盃を……契りを………!!」

ジャキーーン!!!!

「…………」

「……」(キッ!!…ポタポタ……)

ドドドドドドドドド……

【Niyano】は初めての感情を爆発させる。それは相手に対し、一切の躊躇はせず本気でぶつかろうとする覚悟を見せた。そしてこう言い放った。

「……あの時…お前に【冥鐘】を教えた事…どうやら間違いだったようだ。……あの時…お前を止めていればという感情が渦巻いて……悩んでいた…だがもう止めだ。…引導を渡す…確実に……!!」

《粛清する!!》

ブン!!

キィォーーーン!!!!!

「………!?」

キィン!!

「……っ!!」

ブン!!

キィン!!



《屍人・【標本見聞解体新書】被検体》
《【Cize】/【Tobame】》


「……っ!!」

シャッ!!…ガサガサ!!

「……物陰に潜んだか。……だが、逃さん!」

【Niyano】 ランクA
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ーーーーー

【Niyano】は能力を使用しようとした。しかし何かの意志が反発しそれを遮った。

「……いや、ここは能力に頼らない。……自分の力で悪党に堕ちた貴様を…俺の手で確実に粛清する。…それだけだ。……それが……!!」

《【狼志組】二番隊隊長…【Niyano】の覚悟だからだ!!》

【Niyano】は意地でも相手を粛清する意志を見せている。相手は草陰に潜み、いつ奇襲をかけてくるか不明である。しかしそれでも【Niyano】は冷静になり、刀を持ち相手の動向を探っている。

「………」

………ガサガサ……

「……右か」

シャッ!!

「………!?」

「…ご対面できたようだな…トバメ。……その首…ここで跳ね飛ばせてもらう!」

シャッ!!

「!!」

キィン!!

「……甘い!!」

ザシュッ!!

「!?……っ……」

ブォン!!

「スピードが乗っていない!!……いつもの自慢の斬り込みはどうした!?」

「……!!…斬り…込み………!?」

ガクッ!!

ズザーーッ!!!

「……!?」(なん…だ?……転がって動きが…止まった……)

ズキ……ズキ……

突然【Cize】は自ら身体を滑らせて摩擦し、動きを静止させる。

「う……!!うあぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

ズキズキ……

「!?……と…トバメ!?」

【Cize】は頭を抱え込んでいる。それは頭が割れる程の激しい頭痛を起こしている。それでも彼女は【Niyano】の方を見つめる。すると何やら言葉を発する。

「………ニ……ノ………ちゃ………ん………?」

ポタ……ポタ……

「!?……と……ト……バ…メ……」


🎼Back Ground Music 》》》


♪〜金色のガッシュベルより〜悲しい戦い



「……っ!!……くうっ!!……」(涙が…?……一体…どうなって…何故私は…あの男を見て……そう発言したの……か……理解……不能……!!)

《理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能………!!》

「と、トバメ!?」

ガシッ!!

【Niyano】は【Cize】の肩を掴み、語りかける。彼女はただひたすら理解に苦しむワードを壊れたラジオの如くひたすら連呼していた。すると再び、勝機に戻ったのか目線を合わせてこのように呟く。

ザザ。……ザザーーーーーーッ!!!!!

《エラーコードを削除ーーークリーンアップを終了しました。ーーー再度、標的を完全排除する為ーーー!!》

《殲滅を開始しますーーー》

シャッ!!

ザシュッ!!

「……っ!!……ちっ!!」


【Niyano】 ランクA
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ーーーーー
魂の身体に猛毒が検出されました。魂の残量にも大きな変動が出る模様。速やかに解毒をお勧めしますーーー


「…ッ!!……!?」(猛毒…だと!?)

「………!!」

シュシュシュ!!!!

「………!!」(……急にスイッチが入ってきたというのか。…っ!…油断したようだ!)

【Niyano】は不意打ちを受け、傷口には魂の残渣物が飛翔し、顔色には変色が見られていた。おそらく即効性の高い毒を盛られてしまったのだろう。しかしそれでも彼は決して後ずさる事はなく抜刀術の型に入る。最後まで相手に視線を合わしていた。

「………」(……毒を…盛った。……もう…終わり……それなの……に……)

ポタポタ……

「!?」

【Cize】の頬にはとめどなく涙が流れていた。それは彼女自身の本心とは関係なく、とても奇妙な感情があった。その様子に【Niyano】は妙な気分となったがそれでも彼女に対し敵対する意を見せている。

「猛毒とは………やってくれるな。…トバメ……」(シャーー………)

キン!…リィーーン♪【冥鐘】

【Niyano】は【冥鐘】を鳴らす。剣としての真髄を彼女に叩き込もうとしているのか、その目にはある信念がよぎっていた。

「……」(この技……屍になってしまったお前は…未だに覚えてるだろうか……覚えているのなら………!!)

ジャキッ!!

「………!!っ!!」(シャーー……)

キン!!…リィーーン♪【冥鐘】

「……!!」

シャッ!!

《【冥鐘追究刀剣術】(めいしょうついきゅうとうけんじゅつ)一教術・輝刀卿仁(キトウキョウジン)》

「………!!」

ブン!!

キィン!!キン!!キン!!キン!!キン!!………!!

キィオーーーン!!!!

「……!!っ!!……くっ!!」(ズキズキ!!!)

「…………」

【Niyano】は真剣の真髄を教え込む【狼志組】の技の一つである【冥鐘追究刀剣術】を躊躇無く叩き込んだ。そして立ち上がってこう言い放つ。

「……思った通り……その音は……偽物だ!!……精々、【冥鐘】に似せた【音響能力】を叩き込まされていたんだろ!?…お得意の【真・ユートピア創造士隊】による忌々しい能力開発による策略でな!!」

ピキピキ……パキィーーン!!!!

「………!!……っ!!」

バタリ……

【Cize】はその場に膝を折って四つん這いになる。彼女からはもう戦意はない様子であった。それを勝機と見たのか【Niyano】は彼女に歩み寄る。

ザッザッザ………

チャキッ!!

「………!!」

「……そしてお前は所詮トバメに見立てた偽物で、俺にこうして剣を交えたのは…俺を殺害する事を目的として奇襲をかけてきたという事だ。…それなら……もう用はない。……白状しろ。……お前が【Dail】を死に追いやったのか?…その猛毒を塗りたくった剣で!?」

「………」(ふるふる…)

【Cize】は首を横に振る。彼女自身、本当に身に覚えがない様子であった。その態度に痺れを切らしたのか自ら持つ刀を持ち、念仏を唱えるかのように上に掲げる。

「……その様子だと…第二者がやったという事か。…っ!…罪を認めないのならここで粛清し、引導を渡すまでだ……!!…よくも…!!俺の親友トバメの名を語り!!大罪の《虚飾》のように見立てたかのようにして冒涜し、全ての事件をはぐらかすかのようにして騙し通し、卑劣な猛毒を蝕ませ…嵌めてくれたな!!!!」



【Niyano】 ランクA
【♡♡♡♡】
ーーーーー
魂の身体に猛毒が検出されました。魂の残量にも大きな変動が出る模様。速やかに解毒をお勧めしますーーー


「……っ!!……ぅぅ……」(ポタポタ……)

「今更頭を抱え、涙を流して命乞いをした所とてそんな言い分は通用しない!例え貴様が昇華しても共に行く所へ行き、探し出して裁くまでだ!!……っ!!」

ブンン!!!

・・・
・・


〜その頃・【Ruves】Side〜

パカラッ!パカラッ!パカラッ!パカラッ!

「……思った以上に長い道のりのようですね……それに夜も老けてきたようですね」

【Ruves】はひたすら道を行く。

……ゴゴゴゴゴゴゴ…………

「…!?…地震!!」

パシーーン!

ヒヒ〜〜ン!!!!!

ブルブル………

「………」

スタンッ!!

「…なるほど。……いい加減姿を現したらどうですか?……ここで良いのでしょう?…電報の送り主……そしてもう分かっているのです。…今回の襲撃事件の引き金を引いたのは……いやはや久しい者と対峙することになるとは……終焉の使徒【Demister】の一員さん?」

ザッザッザ………

「………」

【Ruves】の前に現れたのは、顔は布で隠しているミステリアスな少年の姿をした一人の少年の姿をした者であった。その少年は黙り込み、【Ruves】の方をじっと見つめる。それは因縁もあるからなのか、怒りの感情にも近い何かを見せていたーーー

・・・
・・

   
B. いいえ


《Capitolo・5》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜金田一少年の事件簿より・the mysterious mallets

「…そうですか。…やはり復活していたようですね。…噂で言うのであるのならば【Demister】6幹部の内の一人で間違いないのですね?」

「…そうだとすれば?」

【Demister】の6幹部に属する少年の姿をした者は年頃の口調で返答する。すると【Ruves】は相手の身分を尋ねる。

「君、名前は?」

「……【Etrania】(エトラニア)」

「此度の目的は一体なんなのですか?」

「答える義理はないよ。…だって法の番人のルーヴェス。…君は……!!」

《ここで餌になって貰うんだから!》

ガシャーーン!!

「!?……成歩道(ナルホミチ)。…そういう事ですか」

バッ!!…ザシュッ!!………!!

ダーーン!!!!!

グギャ〜〜〜〜!!!!!!

「…!?…火薬!?」

「〜!?………」(ジタバタ!!………サラサラ…)

【Ruves】は地面から何やら大きな物体が出てくるのを予知したかのようにボウガンの矢を突き刺す。矢は見事、急所を命中させると暫くのうちに導火線に火が灯されたかのように爆音をあげる。動く物体の正体は生物。体長は約5mもある巨大な体を持ったミミズであり、そのまま絶命させると魂の塵となり果てて宙を舞った。

「……っ!!」

「巨大ミミズを召喚するとは。……やれやれ。…悪趣味かつ残忍なものを好んでいるとは…」(やれやれ)

「何故分かった!?」

「これはまだ論理の仮説での段階です。先程の地震はこの世界での地殻変動が原因による地震ではなく、何か意図的な力が加えられて発生した地鳴りです。…それを巨大な地震に見立て、私の油断を誘い込もうとしていたのでしょうが………結局操っていた巨大ミミズで地鳴りを起こして偽装をし、油断した所をあなたが召喚した巨大ミミズの飢えを満たす餌に私が成り果ててもらおうと。…そういった作戦でしょうが…全くの張りぼてだらけの杜撰な偽装工作をしようとて無駄なこと。…!!…無駄無駄無駄ァァッ!!!」

「………」

【Ruves】は無意味にも《無駄!!》というワードを連呼していた。

「ゴホン!オッホン!///…であるからして。……その態度から推察するに、あなたのその思考と精神……その姿から推測するに。…およそ10代前半の子供。…それも癇癪持ちで感情が抑えられない年相応の者。…そう断言して間違いはないようですね。……このような生物にましてや動物を洗脳する術…所謂《マインドコントロール》をして乗っ取り、牛耳る能力といった所でしょうか?」

「!?……ぐっ!」

【Etrania】は図星をつかれたのか、隠れていた身分の顔の表情は見えなくとも動揺のそぶりを見せている。続けて【Ruves】は更に、今回起こった事件の真相について因果関係のある証拠品をつきつけ、解き明かしていく。

「あなたの行動パターンから……おおよその検討がつきました。……辻斬り【Cize】の殺人方法は猛毒を塗り立てた刀で空を断つかの如く切り捨てる。しかし解剖記録によれば【Dail】の傷口には……実は彼女の持つ毒などは一切一つも検出されなかったのです」

「!?…っ!!」

【Ruves】はもう一息という所で、もう一つ決定的な証拠をつきつける。

「……そしてもう一つ、補足としてこの証拠品をお見せしましょうか。……これは現場写真です。……よく見てみると、とても奇妙かつ不可解な事が起こっていたのですよ。…我々の刑務所には窓などは一つもなかった。つまりその場所に侵入するとするならば、我々の厳重なボディーチェック並びに生体認証を潜り抜けてクリアしないと。……この刑務所に潜入して乗り込む事は不可能。…ですがこの密封された独房の空間の中で…たった一つだけ、侵入経路が見つかりました」

「……!?」(ゾクッ!)

「青ざめましたね。……そう、それはこの通気口です。…しかし、この大きさでは人が入る事は決して出来ない。…しかし、ある生物を利用すれば、その犯行は十分可能であるという事を。…そしてその生態の特性から…既に私はその証拠を持っているのです。……まさか、このような危険生物を手懐けていたとは驚きではありましたがね……」

ペラッ!!

「!?」

【Ruves】はその生物を写真付きで相手につきつける。その生物の写真を見た瞬間、相手が怯んだ所を付け狙い、いよいよ迫られた事実を語る。

「…図星でしたか。……そう。…この写真に不自然な足跡がくっきり残っております。そして鑑定にも調べてみた結果。…この足跡は見たらわかる通り人外ですね。…ましてや哺乳類系統のものではない。…これは特徴的にも小刻みでありますが足跡が六本と残されており、その節足の特徴から昆虫と見て間違い無いでしょう。…そして【Paradiso】特有に生息している昆虫の特性として、一つ該当する昆虫を特定しました。生まれつき【無慈悲ノ鎌】を持ち……性分からなのか…獲物を見つけた途端、たった数センチしかない小型の体が、最も簡単に3メートルの体へと変貌を遂げ、必ず動物の首をまるで居合の切り口のように跳ね飛ばさないとその理性を保つことが出来ず、…そして首筋の肉を毒牙で捕食し。…喰らい尽くさない限り自らが元の姿に戻る事は決して出来ないとされる不遇なのか、とても奇妙な生態を持ち合わせており、それは人間も例外ではなく、旅先で出会った猟師ギルドに所属するハンターをも幾度となく襲い、報告書にも数件挙げられるくらいに極めて凶悪かつ特殊な生態を持つ獰猛な昆虫……!!」

《【Paradiso生物界・特定危険生物認定】の中でも上位の印を受けている【Mantides・NS】(マンティデス・ネクシダー)を…【Demister】6幹部エトラニア!!…あなたが飼い慣らし…【Cize】…いえ、生前の【Tobame】が得意だった辻斬りの極意を学習させ…!!》

ドドドドドドド………!!!!

🎼Back Ground Music 》》》




♪〜大逆転裁判より〜告白された真実

《色欲の大罪人【Dail】の首を刈り取り!…【Cize】による斬首の犯行と見せかけて……手にかけた!……そのような結論に至ったのですよ!》

「!?………う……!!」

うわぁああああああああああああああああああっっっっ!!!!!

【Ruves】は躊躇なく、これまでの不可解な事件の謎について、その真実を立証する。【Etrania】は、今回の犯行内容を容易く特定され、そのまま項垂れる。しかし【Ruves】は決して留まらず更に真実を追求する。

「…そしてもう一つ不可解な事は……【Kagoya】でピックアップされている辻斬り被害の件数です。……実際彼女の毒牙の被害を含め…遭ったのはこれまで【Kagoya】の町でもたった二件程しか起こっておりません。……それも名のあるギルドに所属していたOBの者。……そして【御用見廻組】に所属する下っぱの鑑識官が何者かによる襲撃を受け、死亡したと最近報告が載せられていました。よって、これはある程度定められたターゲットを殺すように誰かの指令によって仕向けられていたはずです。…しかし、今現在進行形の上でも…この指揮官と彼女との因果関係が結ばれているような犯行とは、とても思えません…」

ペラペラ!

【Ruves】は仕切りにメモを見て事件の流れを整理する。隙が出来たと見たからか、【Etrania】はある生物に指令を下し、反撃に出る。

「……!!図に乗るな!!……奴の首を斬って殺してしまえ!!」

グァアアアアアアッ!!!!!!

「やれやれ。…論理に則っているというのに無作法な真似をする所は今も昔も変わらないようですね。……さあ出番ですよ。…今回のは貴女にとっても……」

ヒョイ!

「あいよ〜〜!!!!…うしゃあぁ〜!…暫くぶりの大物だね〜♪」

ザシュッ!!!!

「!?!?グギャーーーーー!!!!!!」

ドシィーーン!!…………サラサラサラ〜………

カランカラン!

「!?……なぁっ!?」

突如、【Ruves】の首を刈り取ろうとする巨大生物の影が迫る。その正体は、論理によって提唱された真実が明るみになった【Paradiso】特有の巨大カマキリ【Mantides・NS】(マンティデス・ネクシダー)が猛突進を開始する。しかしその追撃をある者が襲撃し、その身体を豪快に切り裂く。すると絶命したのか、浄化された様に魂の塵と成り果て、名残である【無慈悲ノ鎌】だけが残った。その鎌を確認すると、何者かによる血痕が残っており、まだ新しい状態であった。

「……ほらよルーヴェスさん!…証拠品を受理するよ〜♪!ガハハ!!」

豪快なバトルアクスを軽々と肩に乗せた屈強な女性は証拠品となる【無慈悲ノ鎌】を【Ruves】に手渡す。その女性の持つバトルアクスには猟師兼鍛冶屋ギルド【Melton】所属【Nelva】と明らかな身分証明の情報が彫られていた。

「助かりますよ、ネルヴァさん(【Nelva】)。……さて、【P-watch】による簡易臨床検査の結果は……と」

ジジ〜………ピピッ!!

【Ruves】ランクS2
【♡100】
ーーーーー
【Dail】との血液型が《一致》と結果が出ました───────

「…!?ぐっ!」

「どうやらコイツは黒のようだね〜♪」

「ご推察通りでありますね。……ま、ここまでは順当。……散々遠回りの道を歩き回されましたが、どうやら今回の【Mikrio】と【Kagoya】…それぞれ離れた場所の島で起こった辻斬り事件の実行犯。…その因果関係を結ぶ有力な情報が今になってやっと明らかになってきた模様です。……恐らく今回仕向けた者はこの【Demister】の者の他に……何者かの協力者がいた事で有耶無耶となって成立したと。…そう結論づけられました」

「…!?」

「?…それは一体どういう事なんだい〜?ルーヴェス?」

【Ruves】は今再び、ある仮説を提唱する。

「……考えられるとすれば…【Cize】が所属する殺戮集団【Varisk】……その共犯となる人斬りの者によって、一般住民や【御用見廻組】の者達が被害に遭った件についてです。……これは予め【Cize】を前もって【Kagoya】の町から遠ざけ、何者かの注意を払い疑われなくする為。彼女【Cize】に渡された司令書には【Xiol】を訪れ、大罪人【Dail】を殺害せよとの指令が下ったのでしょう。……ですが結果的にこの【Demister】の者によって【Dail】を手にかけられてしまいましたが、そこである交渉によって自らの罪を肩代わりしざるを得ない何か大きな計画を目論んでいた。…となれば………成歩道。……そういう事でしたか」

「だから、どういう事なんだい!?ね!?」

「………っ!!」

ダッ!!

「!?……逃げられると思って……!?」

ブ〜〜ン!!ブ〜〜ン!!

【Demister】6幹部の一人【Etrania】はその場から逃避した。【Nelva】はすかさず目の前の敵を追走しようにも相手が召喚した【Paradiso】に生息する毒を持つ蜂が立ち塞がり、行方をくらまされる。

「っ!!…ったく小賢しいったらありゃあしないね〜!!」

「……逃げられましたか。……まあいいでしょう。……成歩道。……【Demister】の6幹部にはそれなりに緻密に入り組んだ戦略を立てる軍師がバックに存在していると……」(カキカキ!)

「メモを取ってる場合かいアンタ〜!?…んで!?一体何が分かったんだい!?」

「……今回の奇襲の目的は…どうやら計画殺人だったといえば良いのですね。…ニノ(【Niyano】)さんの身内である【Tobame】さんの屍を利用し、復活を果たした【Cize】…その者達の運命の歯車を狂わせた何者かが京の和の町…【Kagoya】に存在しているのは確かな様子ですね。………ネルヴァさん。……この問題は貴女が所属している【Melton】にも繋がっている事ですよね?」

「ああ〜…【Orubin】頭領の襲撃の事だね〜…まあそれは確か【R・P】社から派遣された新人の娘が治したって話は聞いてるさ!……んで、本題は、まさか今回のアンタのその…《論理》ってやつで【Cize】の犯行とばかりと思っていたが……まさか……」

「ええ。…犯人は恐らく別にいたと、そのような結論に至りました。……【Kagoya】の町を現在進行形で震撼させている人斬り【Cize】……その者を従えている者の本当の正体。……その者が一体何者なのかと探りを入れておりましたが、未だ解明されてはいません」

【Ruves】は今回の事件に黒幕がいるのは確かな様子であると目論んでいる。【Dail】を殺害した者の中に【Demister】の者が関わっている事は間違いない。しかし、それだけで済むような単純な事件であるとはとても思えず、更に事件は不可解な迷宮へと足を踏み入れる形となった。

「ったく!…せっかく派遣されてこの場所を訪れたってのに、まだ答えが出ずかい!?……まあいいよ!!この目で、その救済を目的にしてるっていう一派の……まあ《童子》だけど、一目見ること出来たし、それにかなり良さげな素材が手に入れた事だろうし結果オーライだね〜♪…じゃあ近くに輸送車両を忍ばせているから行くとこへちゃっちゃと行くとするよ!!…【G島】のオリアナもそろそろと言わんばかりに首を長くして待ってるだろうし、連れてウチらのギルド幹部を統括するグランドマザーのとこへさ〜!!」

ジャキッ!!

「ではお言葉に甘えてそうしましょう。……ニノさんがまだ彼女と戦っているでしょうが、彼には彼の全うする使命があるでしょうから、この件については彼に託そうと思います。こればかりは彼の問題でしょうし、必ず全うする事でしょう。……行きましょうか」

スタッ!!ザッザッザ……

「…ちょ、ちょっとルーヴェス!!…そうだとしたら、もしその…【狼志組】【十傑】メンバーの二番隊隊長のニノに何かあった時、それを一体誰が処理するんだい!?」

【Nelva】はそう【Ruves】に問いかける。しかしその返答に対して既に対処しているといった言葉を投げかける。

「それなら安心を。…既に手は打っています。それも、この不可解な森の中で最も活動能力に長けた者をここに忍ばせて派遣させていただきました」

「〜?」(一体誰のことだい?)

・・・

「……っ!!……くそ!…!!くそ、くそ!!……アイツが…【Nelva】…!!……【Keito】……!!本名【池井富美恵】を保護している【Melton】のギルドリーダー!!……そして、現世において……かつての僕を陥れ、晒し首にしてくれた……!!…舞香という女と密接に……!!関わりがある奴だったのかぁ〜!!??」

グググッ!!!!

【Etrania】は激しい怒りを身分を隠す顔の裏で曝け出す。それはとてつもなく《憤怒》を連想させる程の怨めしい表情を見せていた。しかし、彼女に対して手をあげる事は禁じられていたのだった。それが、【Areg】【Demister】6幹部のリーダーを務める者の伝達事項であったからだ。もし破るようであれば、それ相応の処罰が下されると釘を刺してのことだった。

「!!…っ!それに、あのカマキリも、既に絶滅してもうこの世界にはいないとアレグから聞いた!……っ!!……くそっ!!……何もかも上手くいかない!!……全て…アイツの……アイツらのせいだ。……!!」

《舞香…あの女の友人…あいつのせいで…僕の人生めちゃくちゃにされたんだーー!!!!》

少年は皮肉にも相手に対して自らの正当性を問いただしていた。現世でも、そしてこの【Paradiso】の世界でも、彼はとてつもない孤独と劣等感のような入り組んだ負の感情があった様子である。それは遂には感情に怒りが込み上げ、彼を強くする動力源にもなっていたかのようにーーー


🎼Back Ground Music 》》》




♪〜ドラマ・ライフより・暗黙の命令

グルル……グォォ……

「!?……黒い…熊?」

ズザッ! ズザッ! ズザッ!

『……力になろうか……?童よ?』

「……!?…なん……だって……?」

【Etrania】の目の前に現れたのは、三頭の【Paradiso】特有の黒熊【Orso nello】(オルソネーロ)であった。するとその三頭の黒熊は少年に対し、危害を加える事がなく、寧ろ我々を従えて欲しいと言わんばかりの眼差しで見つめていた。

『その憎しみ……人の身を捨てても自らの存在を保ちたいと言わんばかりの執着心。……お前気に入った!……お前の僕となろうぞ!』

『何なりと申すがいい!…逆らう奴、この爪で引き裂き、八つ裂きにするまでだ!!』

「!?………」

【Etrania】は目の前に立ち尽くしている三頭の黒熊に自らの心の中にあった報復や復讐心に魅了され、惹かれたのか彼に付き従う姿勢を見せる。すると【Etrania】は皮肉にもこう返答する。

「……僕は、かなり君達を厳しく扱き使うかもしれないけど。……構わないのかい?」

『ああ、久方ぶりに…』

『野生の血が騒ぎ立てる!!!!』

『グァハハハハハハハ!!!!』

グゥオオオオオオオオッ!!!!!

「……君達の活躍には期待しておくよ…じゃあ行こうか」

ザッザッザ………

「…………」

【Etrania】はそういうと早速【Orso Nello】の背中に乗り、森から姿を消す。しかしその顔の表情には、このままでは済まさない。いつの日にか必ず奴らに目にモノを見せてやると言わんばかりの《憤怒》の感情とも呼べる強い怒りと復讐に満ちた負の感情があった。そして暗闇の物陰から、奇妙な行動を観察し、偵察をする一人の存在がいた。そうしていくうちに夜は次第に更けていくーーー



・・・
・・

   
B. いいえ


《Capitolo・6》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜鋼の錬金術師より・fate

〜【Paradiso歴】2000年7/1・夜方・【C島】深き森〜

その頃、【Niyano】は【Cize】と敵対し、いよいよと言わんばかりに首を跳ね飛ばす為、刀を振り落としていた。するとその場に予想もしない出来事が重なり起こるーーー

ヒヒ〜ン!!!

「!?……っ!!」

「!?………」

ストン!!

【Cize】は突如、その場に現れた愛用馬に乗馬する。

「っ!!小癪な真似を………!?………な……に!?」

【Niyano】は相手が乗馬している馬の顔と、特徴的な髪の形、色を見たせいか、その顔色からは更に戦慄が走っていた様子であった。そこには、【Niyano】が探していた【Tobame】ともう一人の同胞【Alvia】(アルヴィア)に風貌がとてもよく似た馬が姿を現した。まるでその様は現世のギリシャ神話でも持て囃されている架空の動物、【Khimaira】(キメラ)を連想させるとても不可解かつ奇妙な運命の巡り合わせであったーーー

「………」

「…ば……ばか……な……アルヴィ……ア?」

ブルル………

『…相変わらず、勘がいいね。…ニノ』

「!?……っ!!」

ブン!!

キィーーン!!!

「……!?」

「………」

【Niyano】は凄まじい殺気で【Alvia】に見立てた馬を斬り付けようとする。しかしその攻撃を、【Cize】によって防がれる。しかし、哀れみも無い姿をしたもう一人の親友に対し、納得出来ない何かがあるからか、すかさず反論の意を示す。

「貴様ぁッ!!…今まで一体何をしていた!?…何故そんなふざけた姿で俺の前に現れたんだ!?…答えろ!!」

「………っ!」

『…トバメちゃん。……もう、いいんだ。…ニノ。…全て打ち明けるよ。……何で、こんな事になってしまったのかをね……』

「…!?」

・・・

【Tobame】と【Alvia】は、今から約二年前、大きな大戦に繰り出され、そこで再起不能の負傷を負ったらしい。そして昇華間近だった所を【Kagoya】の町の中でも、ドス黒い裏の世界を仕切っていた代官【Kunizu】によって身柄を保護され、失った身体を補う処置として【創造派】の【標本見聞解体新書】による被験体として、新たな肉体に魂を宿す方法で復活を果たした。【Alvia】自身はその実験の失敗だったのか、まるでキメラのように首は馬の首を付けられた馬人間として復活し、歩行能力も馬に変化して走行が可能な《改造人間》として復活を果たした。しかし、その復活を果たした身体は、結局の所不完全であり、どのみち二人は、長く延命して生き続ける事は出来ない身体であることを告げられたーーー

・・・

「……っ!!」

「………」

『ニノ。……こんな形で、君の元に帰ってきてしまって……ごめん。……出来れば、もっと早く……』

「…もう…何も言うな。…化け物が……!!……ただ…【Kunizu】……その男が【Dail】を始末しろと…【Tobame】に命令したんだな?」

『……そうだ。……彼女は、こうして復活したんだけど……心と身体のバランスが上手く一致しなくて…情緒も不安定で……昔のように、あの覇気のあった彼女にはどうしても慣れなかったんだ……それでも戦闘能力だけは運よく引き継がれていたから、彼によって……』

「…お前は止められなかったのか?」(ギロッ!!)

【Niyano】は【Alvia】に怒りを込めた目で話す。するとその返答はとても非情な答えが返ってきた。

「……逆らうようならば、奴はトバメちゃんを戦争で生き残った栄誉ある事実を全て隠蔽し、善良な市民を無差別に斬り捨てた罪を着せ、ただの罪深き叛逆者として仕立て上げて、斬首を執行すると言い出したんだ……」

「!?……なん……だと……」

【Niyano】はその事実を聞かされたからか、更に怒りを覚えた。自らの戦力として確保した者を都合が悪くなればその場で処分するといった、いかにも身勝手なエゴイズムによって彼女達の命を冒涜された事に凄まじく強い怒りを覚えた様子であったーーー

「………っ!!」

『……ニノ…』

「同情するな!!……っ!!……お前らを守れなかったというよりも……!!こんなもの!実力不足だったと捉えるしかないだろう!!……自分が情けなくて…反吐が出そうだ!!……通りで、お前達をゾンビに……そしてキメラに仕立て上げられるわけだ。………クソガァっ!!!」

ガキィン!!

「……っ!……ニノ…ちゃ……ん……ごめ…ん…ね」

「……!?」

【Cize】は過去の【Tobame】の記憶が少しずつ戻ってきているのか、何かを語りかけようとしていた。

「……私は……この……通り……戻れた。……けど、……アル……は…ちが……う…の……」

「……!?」

『!?…トバメちゃん!?…よせ、やめろ!!』

【Alvia】の問いに【Cize】は首を振り、再び話を続けるーーー

「…ア……ル……は……」

チャキッ!!

『!?……トバメちゃん!!』

パカラッ!!

ズシャっ!!

『!?………』

ドシャッ!!!

「!?………ア……ル……!!」

ポタポタ………

「…あ……アル……!!アルゥ〜〜〜ッ!!」

突然【Alvia】の首を刈り取られ、無惨にも斬り落とされた。【Cize】は落馬し、その惨劇を見て唖然としていたが、頬には仮面越しから涙を流していた。【Niyano】は、その現場を見て何が起こったのか分からない様子であった。

チャキッ!!

「!?……!!何者だ!!??……そこにいるのは分かっている!!……大人しく出てこい!!」

………バレたか。

ザッザッザ………

チャキッ!!

「………!?」(…ダークグレー色のコートか?……フードを被って身分を見せないようにしている……)

【Niyano】の目の前に現れたのは、ダークグレー色の長めのフードを羽織った者が姿を現した。その者は、【Niyano】の姿を目撃すると、少しばかりニヤついた表情をしていた。



🎼Back Ground Music 》》》



♪〜金色のガッシュベルより・Fairy Wood

「…ニヤノ。…アルヴィア。…そしてトバメ。……かつて三人の猛者共がこうして勢揃いしたか。……そして遂にお前は知ってしまったようだな。……この世界の闇の一つって奴を……」

「……闇だと?……貴様…何者だ!?……!?…トバメ……?」

「……ニノ…ちゃん。……聞いちゃ……ダメ。……逃げ……て……」(ブンブン!)

【Cize】は首を横に振り、決して歯向かってはいけない相手である事を伝えようとする。しかし【Niyano】はその要求を決して鵜呑みにする訳に行かず、相手の《謎の男》に対し、何が目的なのかを問いただす。

「………まるで俺達の過去を洗いざらい知っているような口振りだな。……一体何を企んでいる?」

「……さあな。…そこはお前のお得意の洞察と想像力で考えることだな。…ただ、今回の人斬り騒動について教えを解こう。……今回の【Kagoya】での毒を盛った人斬り騒動はそこにいる【Cize】は…決して手を下してはいない…」

「!?…なんだと!?……トバメ!」

「………っ!!」

【Cize】はその問いに対し、胸の内を明かしたいがそっと我慢する。するとその様子を見た相手の男は更に真実を明かそうとするーーー

「……そこの…【Cize】が仕えている【Kunizu】という男の本体は………既に息絶えている」

「!?」

「……!?……一体どう言う事だ!?……そんな情報【狼志組】にも一切報告がなかった筈だ!!」

「………」

「……トバメ……知っていたのか!?…知っていても尚、偽の主人の【Kunizu】に仕えていたのか!?」

【Niyano】の問いに対し、【Cize】は首を振って黙秘のような言葉を交わす。

「……わかり……ません……何が……なんだか………でも……」

「…!?でも…なん……」

ザシュッ!!!!

「!?……」

「…………」

バタリっ!!!

「……!?」

「…………」

【Niyano】に何かを伝えようとした【Cize】は《謎の男》によって非情にも胸元を豪快に引き裂かれその場に倒れ伏せた。傷は深く致命傷であり、先程馬の姿に変えられた【Alvia】の言葉が彼の中でフラッシュバックしていたーーー

《…彼女がこの世界で復活し、生存していられるのも、もう僅かなんだーーー》

「!?!?トバメーーーーーー!!!!!!!」

「…………」

ザッザッザ……

「……!?」

ジャキィンッ!!!!

「…………」

「…………ッ!!」(ポタポタ!!…ブルブル!)

【Niyano】は刀を抜刀し、《謎の男》に対し、激しい殺意と敵意を向ける。その様子に男はうすら笑みを浮かべていた。

「……そうか。……お前、死にたいのか?」
  
「………っ!!……この斬り口は。………少しだけわかった!……そうか。…貴様が【虚飾】の大罪を犯した【Kunizu】に仕えている……本物の辻斬り……依頼されたターゲットの殺しを引き受けている男で間違いないようだ。……【Varisk】の中でも…跡を残す事なく、ターゲットとした者を速やかに殺めることで……昔から《死神》の異名を持つ事で有名だったからな…」

【Niyano】はお得意の観察力と相手の殺意に対する計算され尽くした手段を元に立証する。すると相手は笑みを浮かべたような声のトーンでこう言い放った。

「…ご名答だ。……毒拳使いの【Pran】(プラン)……ある木刀使いである【Makiras】を討伐した者によって破れ去り、そのおかげで【Varisk】の名が廃った元部下の【Zeal】(ジィール)……そして、その三人衆の中でも…この【Paradiso】の裏の世界で数々の者達を闇に葬ってきた……現世のある神話では…死を司どる神と言われる《ハーデス》…《タナトス》……その名に因んで…我々の総司令官【Capo】から付けられたコード・ネーム……【Hadn・TuLs】(ハーデ・トゥルス)…と。…そう呼ばれている……」

〜【Hadn・tuLs】(ハーデ・トュルス)〜

男の名は【Hadn・tuLs】(ハーデ・トュルス)と呼ばれており、その背中はとても禍々しく、数々のユートピア人と【現世人】を葬ってきたに相応しい狂人の覇気を放っていた。しかしそのような相手と対峙していても【Niyano】は決して後ずさることはなく、敵を睨みつけると今回の目的の真意を推理して問い詰めるーーー

「……トバメ。…アルヴィア、二人の存在をよく知る俺を消す事で、誰かが徳をすると言いたげのようだな」

「…よく分かっているようだな」

「誰からの差金だ?…今は亡き【Kunizu】に化けた仮初男の命令か?」

「……どうだろうな?」

「!!…答えないというのなら。…死を司る使命を持ってそのままここではなく、本当の《死の世界》…地獄に戻ることだな!!」

ブン!!

キィーーン!!

「………」(ギリギリ……!!)

「………」(ギギギ……)

キィーーン!!

「……!!」

「…………」(シャーー……キン!!)

リィーーン♪【冥鐘】

「!?」(【冥鐘】…だと…!?)

「………」

【Hadn・tuLs】は【冥鐘】の心得を持っていた様子である。すると【Niyano】に対し、こう語る。

「何故、俺がお前達【狼志組】の専売特許である【冥鐘】の心得がある事について、さぞ驚いているようだな?」

「……貴様!!」

「既に予想はついているんだろ?…取り込ませてもらったよ。……志士と名乗る……ただの下賎な【導き人】から送り付けられた不要な屍人の魂を。……この刀に!」

チャキッ!!

「!?…やはり…そうか。……あの【御用見廻組】に属する者達の不可解な失踪事件。……貴様は関与していたようだな!」

【Niyano】は相手の話を聞き、これまで長年に渡り、【Kagoya】の町を震撼させてきた【御用見廻組】隊員失踪事件の黒幕の内の一人が目の前に立っている事に戦慄が走る。しかしそれと同時にーーー

「………」

「……?…どうした?突然黙り込むとは。………戦意を失ったのか?」

【Hadn・tuLs】は【Niyano】の戦意について問いかける。そして【Niyano】自身は、相手の攻撃パターンから全てのピースが繋がったと言わんばかりにある確証が明らかとなり、こう告げるーーー

「なるほど。…ようやく理解した。…そうか。…!!貴様が【Xiol】の独房内に留置された【Dail】を手にかけた…本当の《真犯人》ということか!!」

「!?……」

「………」

【Niyano】は確信をついた声で相手に対して問いかける。すると相手はその根拠を問いただす。

「…何故そう思う?」

「…貴様がトバメを斬り飛ばした時の斬り口だ。…写真で見たあの妙な斬り口と一致していたようだからな…」

「…殺害が起こった場所は密室だ。…その場所で手を下すことは不可能ではないのか?」

【Hadn・tuLs】はその犯行を真っ向から否定する。しかし、【Niyano】は首を横に振り、その殺害を立証できる一つの証拠を指差す。

「……貴様が持っているのは…恐らく空間殺法能力。……そしてもう一つの恩恵を受けているとするならば…透視能力だろ?」

「…!!」

「この推察が確かなら、論理的には可能なはずだ。…貴様は初っから【Dail】が何処の場所に幽閉されているのかをある者から情報を聞き、その刀で始末したというところだろう。……そして…アルヴィアを…トバメをも…貴様は再びこの時を待って手にかけた……!!」

あの《2年前》に起こされた…悲劇の戦争による同等の手口で……!!そして貴様は、2年の歳月が流れ、最後の同胞である俺をここで始末しに来たという事だ!!

ジャキッ!!



🎼Back Ground Music 》》》



♪〜KH2.5より・Rage Awakened

「……」

「…!!」(ジャキッ!!)

【Niyano】は【Hadn・tuLs】を睨みつける。すると予想が当たっていたのか、相手は称賛する声を挙げた。

「その通りだ。……伊達に狼の名がつく組織の【二番隊隊長】の事はあるようだ」

「!?……貴様!!」

「…だが勘違いするな。……色欲の大罪人【Dail】を手にかけたのは、あくまで【Demister】の六幹部の一人…それが真実。…俺はその土俵にすら立ち尽くしてはいない」

「貴様……一体、何を言っている!?」

【Hadn・tuLs】の応答に対し、【Niyano】は少しばかり混乱していた様子である。それを崩してこう返答する。

「殺意と手段。……互いに入り組んだ仕組みと策略で、罪を清算し…完全なる犯罪を成し遂げることが出来る軍師…現世でいう《犯罪コンサルタント》の者によって……それはすなわち…」

「……!!」

ドドドドドドド!!

ここでこの真実を聞いた今、死神による《死の宣告》を受け取った……潔く認めるがいい。…【狼志組】【二番隊隊長】【Niyano】!!!

シャッ!!

リィーーン♪【冥鐘】

ガキン!!

「……!?」

ゴゴゴゴゴゴ………

「……戦争なら他所でやれ。……いい加減目障りな、その深々と身分の隠した仮面を……!!」

もぎ取ってやる!!!!

ザシュッ!!!

「……!!……っ!!」

バサッ!!!

「………ご対面だな…」

「………っ!!」

【Niyano】は【Hadn・tuLs】の素顔を目撃する。その素顔はとても奇怪でかつ、更に奇妙な巡り合わせとも言える衝撃の事実を伝えるかのように【Niyano】は目つきを変え、真実を語る。

「………」

「……驚いたな。……世界には同じ顔をした人間が一人二人いると聞く。……まさか、俺と同じ顔をした奴が目の前に立っている。…だが、色素は反対だとはな」

【Hadn・tuLs】の素顔は、【Niyano】と瓜二つの顔をしていた。しかし色素が反転しており、髪色は白髪、肌は黒に近い肌色をしていた。それはまるで対とも言える狂った運命の巡り合わせのようにも思えた。

「…だが。…それが、【人体標本見聞録】の被験体で起こりうる…《デメリット》と言ったところなのか?…滑稽とも言えるな」

「……っ!!」

ブン!!

「遅い!!」

キィーーン!!

「!!」

【Niyano】は【Hadn・tuLs】の攻撃に対応する。しかし、相手は一歩も譲らんとばかりに反撃の狼煙を上げていた。

「…ぬかったな。…ニノ」

ザシュッ!!

「!?……っ!!」

互いの剣がぶつかる瞬間に【Niyano】に刃を震わせていた。そして《死の宣告》とも言える言葉を口にした。

「…毒を注入した。…これで、お前の《魂の身体》は昇華を始め。…いずれ息絶えることになる。…喜べ。……これでミッション完了だ」

「……伝達ご苦労な事だな。…それは貴様も同じようだな」

ザシュリ!!!!!

「!?…っ!?」

「………悪いが能力を使わせてもらった。…暗視能力を使い、貴様の急所を捉えさせてもらった。そして貴様の身体内部にあるコアに……致命傷を与えた」

ピキピキ……

パキィーーン!!!!

「!?……な…っ!?」

「……現世では、《ドッペルゲンガー》を目撃した者には死が訪れると聞いていたが、それは当たっていたようだ。……悔しいが、皮肉にも俺と同じ顔と…斬り口も俺と同じ手を使う奴が刺客となって現れるとはな………」

ヒラヒラヒラ………

【Niyano】Aランク
【♡】
ーーーー
残り残量が少なく─────

魂の残量が《0》に〜

キラキラキラキラ………

「!?………っ!!ニノ……!!貴様ぁ〜〜………!!!」

パキャーーン!!!!!

「……俺もお迎えが来たようだな。…互いにゆっくり休むとしよう。…もう…悔いはない。…こうして、トバメとアルヴィアと共に俺は眠りにつける。…この際…地獄だろうと何処だろうとお供してやる。……それがもう一人である俺である…ハーデ。…貴様の最期の務めだ」

フッ!

・・・

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜FF15より・Somnus

【Niyano】は満足げに目を閉じた。すると走馬灯なのか、彼自身が体験したエピソードが追憶となって思い返されていく────

・・・

〜ある夜の草原〜

『ええっ!?…私に【狼志組】の極意……【冥鐘】を!?…宜しいのですか!?…ニノちゃん!?』

『?…一体何を驚いているんだトバメ?…盃を交わした同胞である俺とお前との仲だろ?』

『ま、まあそうですけど。……でもそれだとアルが仲間外れになるのではと…』

スタッ!スタッ!

『僕なら心配いらないよ!…デへへ!実はとっくに手解きを受けていたんだな〜♪』

『!?…なっ!?…いつの間にですか!?…アル!』

『…アルヴィア。…トバメが覚えるまで内緒にしろと言ってただろ?』

『あ、そうだったけ?…ごめんごめんて!すっかりど忘れしちゃってさ〜!……!!…あぁっ!!ごめんって!そんなに強く睨まないでよ〜ニノ〜!…僕と君の仲だろ〜!?』

『……ふふっ!』

『…?…トバメ?』

『別に構いませんよ、私にもしっかりニノちゃん直伝の手解きを教えて下さるのなら、別に順番なんて気にはしませんよ……それに…』

『?…それに?……一体なんだい〜トバメちゃん?』

『私達が初めて会った順番通りにお教えをして下さるのですから……頭脳明晰で計略的な考え方をするニノちゃんらしくて本当に良いと思いますよ!』

『!!……トバメ』

『あ〜〜っ!確かに!…寧ろその方が僕達の盃の契りがより団結していると言える証拠だよね〜!?』

『こら、アル!!…同調して調子に乗ってはいけません!!///本当にあなたは目を外すと不純に走るからか、私以外の異性の女性に対してナンパ目的で声をかけたり、ボディータッチをしてはあんな事やこんな事をと!!///』

『いやいやアル!!///こればかりは僕も男だから、つい本能に走って仕方ないんだって!?///』

『…その体たらくな姿勢でよく、ニノちゃんの【冥鐘】を習得出来たのには驚きを隠せません!!///…ようやく私もニノちゃんとの鍛錬で少しずつ真剣の真髄となる鈴の音を聞こえるようになってきたというのに!!』

『……トバメ。…そう激昂するな…ひとまず落ち着け。…アル。…お前も男なら謝罪の一言くらい言ってやれ。騎士の名が恥じる』

『ま、まあ確かに僕も悪かったかな。……ごめんねトバメちゃん』

『もうっ!!///……ふふっ!!……ですがこうして痴話喧嘩するのも、久方ぶりですね』

『……ああ。……だが俺は用件を済ませたら別の任務を控えている。だからお前達とは暫く別行動になるようだ。……俺がいなくても大丈夫なのか?…二人で?』

『うん!…大丈夫だよ、ニノ!』

『はい!こちら側に任せて、あなたはあなたの任務を優先してください!』

『……わかった』

・・・

〜時は流れ〜

『……!!??』

バサァっ!!!

『……!?』

『……どうしたんであ〜るか?…ニノ〜?』

『……ムハラ。…いや、なんでもない…』

『〜?』

『………ニノ』

コツン…コツン……

『………っ!!』

ギリギリ………

『…あいつらが、戦場で生き残るも……その後行方知れず……だと……』

ザッザッザ……

『…ニノ』

『…!?……副長』

『……報告書にある通りだ。……すまない。……彼らの所在が掴めていない。……こんな事になるのなら』

『…いいですよ。…副長』

『ニノ……』

『これは、審議会の場で可決した事なのでしょう?…暫く我々【狼志組】の活動を制限する為に、戦場での投入は控えるようにと』

『お前が告げた通りだ。…こちらの力不足のようだ。…裏を回せば思う存分、立ち振る舞いが出来るというのに、こんな事になってしまい……』

『すまなかった。…と言えば俺の気が穏便に済ませると思っているのか?』

『…………』

『……こればかりは仕方ない。……どのみち戦場は生きるか死ぬかの場。……どんなに真実を有耶無耶にしたとしても、帰ってくるのは非情な現実でしか無いという事だ……』

ツーーッ………

『………ニノ……っ…』

ザッザッザ…

スッ!

『……何のつもりだ?…副長……』

『拭け。……まだ昇華したと決まった訳ではない。……私からもルーヴェス、ルーシス君を頼りに彼らの所在を探りあて、必ず居場所を掴んでやる。……それが、お前の所属する上としての責務というものだ。…必ず真っ当する』

『……信用できないと言えばどうする?』

『信用してもらうまでこの意志を貫く。…そう決めている。……私にも…そしてルーシス君も…恐らくは…』

『…!!……副長……』

『……私も志士として、同じく似た者同士の立場なのだよ。…ニノ。…私も同胞と呼び…心からの親友と呼べる者を…救えなかった身なのだ。……家族や一人娘…!!肉親もいたのにだ……!!』

ジャキン!!………!!キン!!

……リィーーン♪【冥鐘】

『…【冥鐘】……』

『この真剣の真髄を忘れない限り、彼らは再びお前の元に現れる事だろう。……忘れるな。…また再び厄災を起こす者が現れるその日まで……我々【狼志組】は、市民の暮らしの安全を脅かす悪を断ち斬り…二度と悲劇の種を撒かせないと……心に留めておけ。…忘れるな』

『………』

コクっ───────

・・・
・・


   
B. いいえ


《Capitolo・7》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TODより・夢であるように・ピアノ

〜時は戻る〜

〜【Paradiso】歴2000年7/2・朝方【D島】の草原〜

「………」

いつまで寝てんだい!?【狼志組】【二番隊隊長】さん!!」

「……!?」

ガバッ!!

【Niyano】は目を覚ます。その場所は草原であり、まだ日が昇るまで時間があった様子である。すると声を掛けてきた者に視線を合わせる。そこには淡いパープル色のヘアカラーに後ろにはドレッドヘアといった肉食系の女性が安否を確認して見つめていた。【Niyano】自身は、彼女との面識があったからか、所属のギルドと名前を明かす。

「…気がついたかしら〜?」

「!?……アンタは……確か【B島】【Survivor】所属、リーダーの一人【Lucna・B】(ルクナ・ベレンダ)で間違いないのか?」

「ああ。…全くヒヤヒヤしたよ。…アンタの【P-watch】から警報が出てたから昇華寸前の所を発見して、滑り込みで【充魂剤】を投与させておいて……おまけに、オルソネーロを連れていた《座敷童子》のような子と一戦交えて、ま、見事この拳で返り討ちにしてやって、ルーヴェスさんに頼まれて運び屋役としてアタシがアンタをここまで運んでやった訳!…Do you under Stand〜?」

「!?……そうか。……ルーヴェス…全く色々策を講じていたという事か。…全て計画の内に入れていた……か……」

【Niyano】は意識を失っていた間、助けてくれていたのは【Lucna・B】であった。そして【Cize】と【Alvia】の所在を聞く。

「……俺が倒れていた場所で、銀髪の馬と金髪の女性を見なかったか?」

「?…いや、見てなかったかな〜……でも、何かこんな奇妙にもこんな物が近くに落ちてたね。……手紙?…電報?」

「!?……読んでもいいか?」

「ああ。…はいよ」

ピラッ!!

【Niyano】は渡された電報に目を通した。枚数は二枚。そこには【Niyano】宛に残されたメッセージが記載されていた。文字はカタカナであったが、【Niyano】はその内容を翻訳するかのように自らが見たメッセージを心の中で朗読する──────
 

🎼Back Ground Music 》》》

  



♪〜TODより・夢であるように・イベント

《トバメ(Tobame)》

拝啓───────親愛なる…私の親友…ニノちゃん。…二年振りのお便りになります。こんな形で再会する事になってしまい─────本当にごめんなさい。─────でも、あなたと再び会えたことは、夢に願っておりました。私はあの戦場の後、そのまま意識を失い、【真・ユートピア創造士隊】の策略により、あの面妖な技術の被験体として復活を果たしました。─────《死神》の本当の正体は、あの技術により、あなた達【狼志組】から《粛清》され、無念と憎悪なる想いが募るに募った者達の屍が形成されて誕生した者達─────これが【御用見廻組】の報復措置として、数々の【Kagoya】の住民や隊員達を始末してきた動機だと考えられます。─────そして、あなたと同じ顔をして目の前に現れたのだとするのならば─────その者の最後の任務として、ニノちゃんを始末する為だけに生まれてきた《運命》なのだと思うと心中御察しします。─────ニノちゃんが《死神》に出くわすようであれば、こうして再び生を受けた私達の命と引き換えにと常々考えておりましたが結局言葉に出来ず、あのような結末になってしまったのは事実です。───────記憶が戻らず、あなたを戸惑わせてしまい、衝突してしまった事を深々と謝罪します。どうか私達の事は気にせず、前へ歩き出して生きて───────まるで夢のようであったけれど、あなたと再び会えて───────話が出来て本当に嬉しかった───────またこうして三人揃えて、私幸せだった───────ありがとうニノちゃん。私達の分まで───────いつか【Paradiso】に名を残す程の功績を上げ、真なる平和を齎す者として私があなたに考えてあげた異名───────《誠仁ノ狼》(セイジンノロウ)───────そう呼ばれても恥ずべき事のない人になると───────私は信じております───────今後のあなたの活躍を───────心から期待しております───────

《アルヴィア(Alvia)》

拝啓───────親愛なる…僕の親友…ニノ。…二年振りの便りをここに残しておくね。……あの戦場の後、僕はキメラのように馬の姿になって復活した時は驚いた─────本当に。─────そして何故か電報を出現させる能力まで発現する事にも驚きを隠せなかったよ。───────君なら僕のこんな変わり果てた姿を見たら、きっと化け物扱いするだろうねと思ったけど、やっぱり君なら言うと思った。───────でもそれでいいんだ。─────それが君自身の信念を貫いた上での発言なら───────僕は君を咎めはしないよ。親友なのだからね───────本来ならこんな姿で現れたくはなかった。───────でも思い返してみれば───────僕が馬になっていたからこそ、こうして君と長い間、疾走して風を感じる事が出来て───────三人で再び夜のひと時を───────共に過ごせたのだからね───────今度もし復活する事があるのなら───────僕は正真正銘人の姿で君の前で顔合わせをしたい!───────その願いがいつの日にか叶うと僕は信じている。─────例え夢であったとしても……かつて、僕達が過ごしていた、現世の世界《地球》の星とは違い─────この【Paradiso】という死後の世界そのものは。……本当に何でもありだからね。─────だからこそ、この先に続く果てしない明日が奇跡を起こしてくれる。───────僕はそう信じ続けている───────だから君も諦めないで───────すぐに答えは見つからないだろうからゆっくり着実に───────君は僕達よりも頭がいいから僕達が託した命を───────そして意志を【狼志組】二番隊隊長として───────その責務を全うする事を信じている───────だから、気にせず前を向いて歩き出してよ、ニノ。───────元気でね───────僕達は再び出会えるその運命の日まで───────何十年も───────何百年も───────トバメちゃんと共に《真友》である君を忘れず思い続け───────期待して待っている───────

・・・

ポタポタ………

「……遅すぎだ。……っ……」

【Niyano】は託された二人のメッセージを読み、理解したのは去り際に自らの意思を電報にして残していたという一つの真意である事だった。二人の内容から【Niyano】自身も同世代なのか、ある音楽アーティストが歌う歌詞に、そのワードを当てはめて残されていたようだ。二人はその歌を生前からずっと気に入っており、歌の詩に込められていた大切な意味を【Niyano】自身に伝えたい。その意思表示を見せていた。それが結果的に《言霊》となったのか、彼自身の頬に温かい雨が降り注ぎ、慈悲深く罪悪感を背負っていた冷たく傷ついた心を癒す為に、二人の姿が目の前で優しく眠っていたかのように幻影を見せていた。すると朝日が昇ってきたと同時に別れの挨拶が来たと言わんばかりの事が起こるーーー

…キラキラキラ……

ボアァァァ………

「!?…電報が……」

「溶けているかのように燃え広がって…!!消えていってるゥゥ〜!?……日の光で消えるって…まるでゾンビみたいな散りようね〜…」

【Niyano】が手に持っていた電報は、登り行く輝かしい朝日の光が日差しを指し示したと同時に少しずつ雪のように溶けるかのように、煌びやかに姿を消していく。その去り際にはもう夢から目を覚まして前へ進みなさいという《契り》とも言える固い強固な友情を持ち、去ってしまった二人が【Niyano】に対し、最後までその背中を後押ししていた。【Niyano】は二人の掛け替えのない同志達に対し、敬意を表して【Lucna・B】に対し、こう告げる─────

「…せめて幽霊と。……いや、これは《英霊》の意志とさせて欲しい…ルクナ」

スタッ!!

「!?…ちょ、ちょっと!?…大丈夫なの〜僕〜?」

「…子供扱いするな。…俺はこの姿といえ。……こう見えて《25歳》だ。…だが念の為解毒をする。…あの場所へ行く」 

「…!?…マジ?……それよりも、どこ行く気な訳?」

「ここは【D島】だ。…【Crono・St】の【R・P】社へこれから向かう。…今回の騒動の黒幕の正体に目星がついた」

「……ふぅ〜ん♪…そう!」

スタッ!!

「…?ルクナ?」

「アタシも一緒に行くよ!…ルビアには【Mist Garden】へ行くように伝えて、仕事を終えた私は今、《自由の女神》の身だし〜…それにさ」

「?…それに?」

「なんか性分なのかしらね〜、アンタの事が気に入ってね〜♪…ニノだっけ?まっ、よろしく!」

【Lucna・B】は【Niyano】の事を気に入ったようである。彼女自身、クールな振る舞いを見せている【Niyano】の、先程見せた人情ある一面を見て、その《心友讃美》の心意気に惹かれたのもあるのやもしれない─────

「……好きにしろ」

【Niyano】は無愛想ながらもそう返答する。しかし彼自身には何処か吹っ切れ、過去を清算したと言わんばかりの爽やかな旋風の息吹が吹き込んでくるかのように足取りは軽かった─────

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜大逆転裁判2より・プロフェッサー

〜【Paradiso】歴2000年7/4・夕方【J島】【Kagoya】大江戸通りにある奉行所〜

バチバチバチ……

揺らめく松明の火─────そこには、ギラついた飾り物の装飾を身につけている眼差しを持つ《帝》のような出立をした一人の男が立ち尽くしていた─────

「!!……フォ〜ッフォッフォッ!」

「…………」

「そうかそうか!…独房内に《井の中の蛙》となり、囚われの身となっていた哀れな家畜の色欲大罪人【Dail】は始末されたと来たか。麻呂は実に感激なるぞ〜!…フォ〜ッフォッ!フォッ!……【Varisk】所属のドクロ兵衛【Kyog】(キョグ)…報告ご苦労なるぞよ〜♪」

「……予告通りでござる。…【Cize】…ご苦労であった」

「……」(コクコク!)

時は進み、【J島】にて暗躍を企てている日影者の存在【Kunizu】という名の悪代官の出立ちをした者が、《人斬り》を名乗るもう一人の【Cize】、そしてその仲間である【Varisk】所属のメンバー【Kyog】(キョグ)と名乗る者は、【Kunizu】から絶大な評価を受けていた様子である。

「フォ〜ッ!フォッ!フォッ!……ではではそうと決まったら、この町に潜伏していた【Dail】事件に関わりのあった者が不在という好都合な時を狙い……当初の予定通り、本日未明にてこの【Kagoya】全土を乗っ取り…!!牛耳る為……!!【御用見廻組】の道場破りに因んだ《組盗り》を開始することとするかの〜う♪」

チャキッ!!シャキッ!!

【Kunizu】はそう言うと、懐に入れていた銃らしきブツを持ち、これより【Kagoya】の町中にクーデターを勃発させる引き金を実行しようとしていた。

「…………」

その様子を見ていた【Kyog】は隠し持っていた何かを取り出そうとしたその時、何者かが慌ただしく足跡を鳴らし、廊下から姿を現す。

ダダダダダダ!!!!

「た、大変です!!【Kunizu】様!!」

「むむっ!?何事なるぞよ〜?」

「……!?」

「………」(ビクッ!)

「く、曲者です!!…どうやらこの奉行所内において、何者かが襲撃に来たとの情報です!!」

「その者達は黒装束のようなものを着て身分を隠しており、武力も我々を遥かに凌駕しております!!」

「!?な、なんと!?……ぐぬぬ!誰か!…誰かおらぬのか!?」

「………」

「………」

ジャキッ!

「!?……【Kyog】…【Cize】よ!?」

「【Kunizu】氏よ。…!!拙者達が時間を稼ぐ。…その隙に逃げるがよい。…行くとしようぞ【Cize】?…よいな?」

「………」(コクコク…)

「!!フォッフォッ!…では頼むぞよ〜♪」

ボン!

「………」

「………」

ジャキッ………!!

ザシュッ!!!

「!?………」

バタリッ!!!!!

【Kyog】は突然【Cize】の腑を抉るかのように短刀を突き刺し、その後無惨にも首を切り捨てたまま、そのまま地面に叩きつけ、非情にもこう告げる───────

「…誠にご苦労でござった。……似非なる人斬り【Cize】……いや【Varisk】…毒使い集団所属。…モノマネ師の異名を持つ《道化師》【Kaonasis】(カオナシス)と名乗る者よ。…我が同胞【Cize】を名を語り…!!陥れた事を《地獄の業火》に堕ち、そのまま裁かれるがよい!………」

バチバチバチ…

松明は不穏にも揺らめく。その熱気によって発する空間の歪みは、闇に塗りたくられ真実をもみ消さんとする霧に見立てているように感じられる。

「………」(…【Cize】……【標本見聞解体新書】の恩恵によって生まれた【現世人】とユートピア人の配合により誕生した人工人間……通称《屍骸部隊》(しがいぶたい)。…その中でも、同じような境遇で生まれ…主に【狼志組】二番隊隊長によって粛清された者達の恨みや嫉みによる報復の象徴として…彼自身の姿を見立てて創り出された《死神》ハーデ(【Hadn・tuLs】)…奴に対し、似非の【Kunizu】は【Cize】に見立てた道化師に下した【Orbin】の暗殺…それに失敗し、自らが指示を企てた失態の罪を……!!外道にも自らの保身の為と見做し…【Cize】に被せ……死神に目をつけられてしまったお主を拙者は逃す為。……【Dail】殺害の指令を与えて【C島】へと足を運ばせ。……ほとぼりを覚ました所で中止を指示しようとしたのだが。……先手を取られてしまい…無念にもそなたの《訃報》を聞いてしまった拙者は……何もしてやれなかったようだ。……しかし、それでもこの電報を見る限り。…現世人【Tobame】としてそなたは同胞である【狼志組】二番隊隊長の【Niyano】氏、そしてもう一人の同胞【Alvia】と2年振りの再会を果たし……魂は報われたとそう祈るばかりでござるよ……」

【Kyog】はどうやら【Cize】の真実を知っていたようである。そして彼女がどのような経緯で生を受けたのかを、誰かからその真意を聞かされていたようにも思われる───────

カキカキ……!!ペラッ!!

「……全ては筋書き通りでござるよ。…《道化師【Cize】》」(……かつて【Kagoya】の町で自称《子爵》の地位に君臨しておった【Kawara】氏が生前残したとされる仕置人組…現世にも存在している蛍の名前に肖って名付けられた《ヘイケ・ホタル》。…昔も、そして今も拙者は刑事として…暗部専門の密偵者として【Varisk】【Kyog】として身を投じ。…異国の地で《法医学》を学んでいた【Kunizu】氏……それをあたかも本物に見せては、陰で似非の【Kunizu】をからくりの仕掛けのように従え…暗躍している【P・Fixer】(プレテンション・フィクサー)……その者を追う《暗部ノ執行人》として…(虚偽)という言葉から付けられた、拙者【Kyog】は、その名において次こそは似非の【Kanizu】……主の化けの皮をひん剥き。…生前、拙者含むメンバーに対し、実の兄【Kawara】氏の無念を晴らして欲しいが為にと【Kunizu】氏から名付けられた。……虚飾に囚われし闇を払い除け……霊魂のように《蛍の光》が指し示すにつれ。…やがて《真実ノ光道》を映し出す意味合いが込められた…現世に存在し、この世界にも持て囃されている《映写機》に因んで付けられた……!!」

ヒラヒラ〜……ボボっ……

「……《【Progecter】》(プロジェクター)。…我がマスターの実の弟なる【Kunizu】氏の無念を晴らし…何としてでも手厚く供養をせねばいかんのでござる。……その為にも。…今は《虚飾》の大罪に血塗れた死体処理の方を頼むでござるよ。…【R・P】社の【Agente】の使者なる者達よ………」

タッタッタッタ………

【Kyog】はその場を立ち去る。そして心の中で【R・Fixer】(プレテンション・フィクサー)と仮に名乗られている《僭称(せんしょう)ノ黒幕》と名付けられた者の足取りを執念深く追うと同時に、【Kunizu】と名乗る偽物を憎んでいる事から、彼自身には生前本物の【Kunizu】と、その実の兄【Kawara】から、何やら交流と託された意志があり、自らが闇の暗部の世界へ赴き、【Varisk】に身を投じる《潜入捜査官》として、《黒幕》を追う日陰者の存在である事が明らかとなる。しかし彼自身は、自らを正義と誇張している訳ではなく、譲れない信念があるからか、《影の必要悪の人斬り》として、それ相応のギャングのような気高さをも感じられた───────

・・・

〜【Paradiso】歴2000年7/4・夜方【J島】【Kagoya】大江戸通りにある奉行所〜

タタタタ!!!!

「!?…こ、これって!?」

「一体何が起こったんだ!?」

「ビル、ひとまず落ち着け。………未だに敵がいるやもしれん!警戒をしておくのだ!……うむ。この斬り口は……どうやら鍛え込まれた暗殺力を持っている者の犯行と見て間違いなさそうだ。…アイツらが【Mist Garden】へと向かわせていた事で、このような事態に巻き込まれるのは免れたようだ……」

【Kyog】が去った後、【R・P】社に所属する諜報機関ギルド【Agente】のメンバー一同が、黒装束のような黒子を着込み、奉行所内に乗り込んできた様子であった。すると、【Cize】を名乗る屍には、あるモノが置かれていた───────

「?…これって電報?」

「?一体なんだ〜?」

「…ベア、読んで見せてくれ」

・・・

《コノマチヲウラデギュウジルアクダイカンノモノノナハ───────アカスコトハデキナイ───────シカシソノモノハコンカイシッキャクシス───────イズレコノカゴヤノマチニセイダイナハナビヲチラスデアロウ───────ソノヒガクルマデシバラクマツガイイ───────》

「!?……悪代官……これって…」

「なんか予告状みたいだ!」

「うむ。…この町でも【E島】【Velkana】のように、陰で何者かが暗躍しているようだ。……だが、この電報の発信者は。……一体何者なのかだ」

ピィー!!ダダダダダダ!!!!

「!?」

「笛!?」

「【御用見廻組】の者達の警笛のようだな!…ベア!ビル!【河原木亭】へと撤退するぞ!!」

ダダダダダダ!!!!

御用だ!御用だ!御用見廻組であ〜る♪

「ワ〜ハハハハ!!わしが【近代組】隊長!!ダイト(【Daito】)隊長なる者……!?ぬぅ〜!?…これは死体か!?」

「【Daito】隊長!?…【御用見廻組】奉行所の下町奉行代官【Kunizu】氏の姿が見当たりません!!」

「むむ、これは拉致事件の可能性も浮上しておるようだ!……よし、ここ最近この町を訪問してきた疑りの深い者をリストアップしてその者をマークし、炙り出すのだ!!」

ハハーーーッ!!!

「ったく、今回はハズレか〜…カッパとはな〜」

「ハゲの旦那みてえに毛が《無一文》な事件と来たでさ〜」

誰がハゲだこら〜!! よっと、危ないでさ〜…ハゲの旦那〜…しっかり野菜食ってるでさ〜? 食ってるわ!!

「………む…」(だが、確かに妙なものだ。…下町奉行【Kunizu】…この数年前にて【Kagoya】に訪れた時は。…確か【C島】の【Xiol】にて《司法解剖》に携わり従事していた者。…そう聞いていた。……だが、殻を破って見た所、我らの部下の中には彼に対する職務の際には《怠慢》かつ《怠惰》な部分が見られたりといった話を聞かされておる。……そして、今回の《人斬り》一連の事件。……どうやら深い闇が、この町を覆っているように思われる……)

【近代組】の【Daito】は、長年の《刑事の勘》からなのか、今回の騒動は単純な者ではなく、大きな組織が影で幅を利かせて大きく動き出そうとしているのではないか、そう疑いの目を張っている。すると隊員から何やら声が聞こえてきた様子である───────

「!?…【Daito】隊長!!いいでしょうか!?」

「む?…どうした!?」

「…この写真なのですが…」

ピラッ!!

「む?……!?」

【近代組】の隊員が【Daito】に手渡したのは、銀髪の青年の顔写真であり、特徴として、ネイビーの服を着た男であった。すると【Daito】は、この写真が置かれていたのだとすれば、そう目を光らせ、まるで国民的アニメに出てくる《正義のヒーロー》の如く、大いに声高々に笑い出した。

「ふふ…!!ワーッ!ハハハハハハッ!!…よし、出かしたぞ隊員よ!…これは恐らく、この事件とも密接に関わりがある重要な《物的証拠品》だ!!…これはワシが預かっておく!……お前達はこの者を見かけ次第マークしておけ!!」

「…?…あの〜…具体的ににはどういった風にですか?」

「この男には…いかにもけしからん顔をし、《女難ノ相》を持ち合わせ、自らの《ハーレムパラダイス》を築き上げようとするけしからん下賎な男の顔だ!!…恐らく今回のこの女性も、この男によって殺害されたといっても過言ではない様子だ!」

「…え〜。……つまり【Daito】隊長殿。…この男がこの女性に対して『俺のモノになれ!』と言わんばかりに乱暴を働き、思い通りにならなかった為に癇癪を起こして逆上し、わざわざこの奉行所内に立て籠り匿ってもらった所をこの者が乗り込んできて、数々の奉行所の者達を身勝手な《成敗》を振りかざして無差別に負傷させた挙句…この者の殺害のみならず奉行のお代官【Kunizu】氏の暗殺まで企てようとしてきた刺客と言いたいのですか?」

「あ〜そうだ!…そして目の前でこの被害者の女性を殺害した後に【Kunizu】氏を、現世でいう《仮名手本忠臣蔵》に肖った計画殺人のターゲットとして始末しに来た罪深き罪人である事がここに……!!」

その推理はいささか考えられませんね。……【Daito】隊長殿。

「!?」「!?」「!?」

「むむ、誰だ!?このワシの名推理を邪魔す……る……不届きな……やか…ら……!!??」

ザッザッザ……

チャキッ!

ヒラヒラ〜……

《【局・狼】【十・狼】》

!!??……なぁっ!? おいおい… マジかよ……!! あれって……

突如、【近代組】の【Daito】の推理について水を差す者達が現れる。そこには、額に《狼》と書かれた額当てに無精髭を生やした銀髪の男性がおり、その側近には、紫紺色の髪が特徴で深々と帽子を被り、身分を隠していた者が姿を現した。その者達を目撃した途端、【Daito】隊長は、《臨機応変》の領域を超え、顔色をすぐさま変えて彼らに対し、深々と頭を下げて挨拶を交わす───────

「……あ。…!?ああーーーーーーーーっ!!こ、これはこれは【狼志組】の…局長の【Saiga】殿〜!!…それに十番隊隊長の【Towa】さんではありませんか〜〜〜っ!!!!お、おい、諸君一同!!我らが【御用見廻組】の中でも、《天下無双》に匹敵する最強の武力組織!!【狼志組】の方々へ《誠心誠意》挨拶を交わしたまえ〜ッッ!!!」(ぺこりぺこりナイトっ!)

「……」「……」「……」

《!!》

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜龍が如く維新より・Receive and Doubt You

ハハーーーー!!!!!

ダイト隊長。……流石に【狼志組】の隊長の顔を見る度に、まるで子犬のように尻尾振ってるよな〜!!だが…しかし……!!

その姿勢に痺れる……そして憧れるゥゥ〜!!…我らにとって天高く《神》のような存在に等しい神々しい存在!!【十傑】メンバーの一人【Towa】隊長!!……そして、その方々を統括する最高責任者……!!【Saiga】局長〜!!!

【Daito】隊長は、【御用見廻組】の組織の中でも《武力組織》とも言われる【狼志組】を崇める存在としており、普段の《頑固》な一面から、可愛げのある子供が、まるで正義のヒーローを見るかのように振る舞っていた。彼ら【近代組】にとって【狼志組】は、現世でいう【新撰組】のような者と認識されているも、自分達とは《月と鼈(スッポン)》のように立場が全く違うからか、敬意を表して局長と引き連れている者に対し、礼節を徹底している事が伝わってくる。すると【新撰組】で例えるならば、局長の《近藤勇(こんどういさみ)》のようなポジションにいる【狼志組】局長【Saiga】はやれやれと言わんばかりに───────

「……私が【狼志組】局長!!【Saiga】(サイガ)局長であ〜る!!」

!!

ハハ〜〜ッッ!!!ありがたきお言葉であります〜!!!!!

ジョジョ〜〜〜!!!!!

「ゴホン!……サイガ局長!…もうその辺にしといて下さい!///」

「!?…ああ、そうだったな〜トワ!…ついつい現世にあったある《男を磨く塾》の漫画に出てくるある塾長に影響されてつい言いたくなってしまってね。……ゴホン!オッホン!…では【Daito】氏。……簡略ではあるが、今回の事件について。……私から説明しておきましょうか」

「!?は、はは〜ッッ!!…私のようなひ弱な蟲の生まれである者があなた様方に意見を許されたのであれば、今回の事件の真相を…!!何なりと申して下さいい〜っ!!」

「………」(…ダイト隊長。…サイガ局長に《心酔》仕切っているけど、本当にこの人が僕達と同じように【Kagoya】の町の治安を仕切っていても大丈夫なのかな。……)(アセアセ……)

【Towa】は自らの階級よりも上の人間に対し、早急に顔色を変える【Daito】に対し、この者が仕切る事件の捜査によって《誤認逮捕》と《偽証》が成立し、誤った罪がそのまま立証されてしまい、却って《冤罪》と最終的に《誤審》による《無実》な者達が独房内の塀で生活するといった案件が増えてしまっているのではと疑い、少しばかり【御用見廻組】検挙率100%がウリの【近代組】に対し、《不祥事疑惑》が浮上してしまった為、彼らは将来的に───────いや近々何か大きな失態をやらかすのではと少々不安な気持ちになりつつあった───────

・・・

「……であるからして、現在【Mist garden】へ向かう為に【Mystia】山へと向かわれた。…彼【Hux・row】による今回の犯行は、実質不可能であるという事です。お分かりいただけましたか?…ダイト隊長?」

「は。……!!はは〜〜ッッ!!!…いやいや〜!!流石は【狼志組】の局長の【Saiga】殿〜!!!…私のような堅物には理解がなかなかに難しい事件をこうもあなた様の《名推理》で見事解決するとはぁ〜っ!!本当に神のようで天晴れな事であります〜!!」(ぺこりぺこり!!!)

「《鰯の頭も信心から》……忘れないようにしなさい」(全く………トートロジーかつ《鰯の頭》に匹敵する程の石頭ぶりで推理が笊(ざる)なでっち上げ事件解決案件が多いのですよ。……ダイト隊長。…少しは部下の事を思ってあげませんと後々苦労しますよ)

「……は……はは。………」(でも、この斬り口はかなり腕の立つ者の犯行のようだ。だけど他の者達と比べてみると明らかに違う。…だけどこの奉行所内で倒れていた奉行の役所人が受けた斬り口。……あれは人斬りの犯行と見て間違いはなさそうだ。……ヤエカ姐さん。……どうやら僕は、この【Kagoya】の町で何かと一波乱のある事件に遭遇したようだ……)


・・・
・・


〜【Paradiso】歴2000年7/4・夜方【J島】【Kagoya】幕末通り〜

「とりあえず調書はこれで終わりのようですね」

「………」(ジィ〜……)

「?トワ?…どうされましたか?」

「!?…あ、いえなんでもありません!…サイガ局長」

【Towa】は【Saiga】に声を掛けられるまでの間、一枚の写真を見て何やら考え事をしていた。すると【Saiga】はあ、なるほどと言わんばかりにこのように質問する。

「トワ。……あなた。……この【Hux・row】の事について気になっているようですね」

「!?……な、……!?なぁっ!?///」(アタフタ)

【Towa】はどうやら【Hux・row】について、生前ロベルが話していた、何処か《白い狼》のイメージがあるというワードから何か親近感があったのか、【E島】での【Dail】邸事件の事から、彼女自身は、気になる存在として見ていた様子であった。すると【Saiga】は図星かと思い、更に彼女に対して追求する。

「あと、先程フカベから内通が来ました。どうやら。…これは運命の巡り合わせです。……彼【Hux・row】という者は…あの【L島】の【Velkuy】騎士団長の【Louverd】の親友である事が……本日領主アガルタさんがおられる【Mist garden】での彼と【Yulis】との剣戟で…見事発覚したようです」

「!?……!!」(この人が…ルーさんの親友の…《白狼》!!……そうなのか…)

チャキッ!!

「…?…トワ?」

「…なんでもありませんよ!……サイガ局長!!…はは!!」

グルル……!!ワォーーーン!!!!

「!?」

スタッタッタタ!!

「……ふむ」(嬉しそうな表情を浮かべておりますね。……そして先程の空耳で聞こえた《雌狼》のような遠吠え。…まるで尻尾を振る……発情期真っ只中の《紀州犬》なのか……もしくは、彼【Hux・row】が持つ《白狼》のイメージが、かつて《日本神話》において、狼の神と崇められた【真神】を連想する者とするならば。………トワ。あなた自身は現世の海外の国。…《トルコ》で持て囃されている《テュルク神話》の……雌狼…)

《【Asena】アセナ!!…それに通づる片鱗のような何かが、トワ。あなた自身に秘めているのやもしれませんね…》

【Saiga】は【Towa】の隠れ持った潜在的な力を見て何かを肌で感じ取った。【Asena】(アセナ)とは、現世の《トルコ》の国で持て囃されている雌の白狼の神であり、《トルコ民族》を象徴とする神として崇められている。有名な話として、アセナには様々な神話があるが、ある一人の少年に、空のようなカラー立て髪をした一匹の雌の狼が現れ、救済の手を差し伸べ、彼の傷を癒し、やがて狼と少年との間に約十人の子を宿したという言い伝えがある。その神話が彼女と接点があり、結びつくのかは不明瞭の為分からない。しかし、運命の悪戯からか、【Saiga】自身は彼女自身のこれまでの特殊な経緯と、先程見えた雌の白狼の幻影から、今後【Paradiso】の世界においてどのような役割を担っていくのかについて何やら興味深そうに見つめている───────

「?…どうしたんだい?…サイガ局長?」(首かしげ?)

【Towa】は無邪気にも首をかしげる。すると【Saiga】はハッとして我に返り、返答する。

「いえ、なんでもありませんよ。…では、《屯所》へと戻りましょう。…現在フカベは席を外しておりますし、その間に我々の志士達が羽目を外してるやもしれませんし……」

「……そうですね。…特に、五番隊隊長の【Akill】は…下衆にもこの町の女性を喰い物にする為に《遊廓》へと足を運んでいる事も考えられます。……監視が必要です。……!!」(キッ!!)(…アキル……っ!!)

スタッ!!タッタッタ………

【Towa】は真面目な女性であり、女性に対しぞんざいに扱う下衆な輩は、断じて許さないと言わんばかりの意志があるようだ。しかし、彼女には仄かにも異性に対する初めての恋の感情が芽生えつつあるように思われる。彼女は、頬を桜色に染めつつ、【Velkuy】の初代騎士団長【現世人・Louverd】とは現世にて親友関係にあった【Hux・row】という者と会える日を彼女自身、内心楽しみにしていた様子である───────



・・・
・・


   
B. いいえ


《Capitolo・8》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》




♪〜龍が如く0より・怨魔の契り

〜【Paradiso】歴2000年7/4・夜方【J島】【Kagoya】下町通り・広場〜



ドドドドドドド………

「………おい、ジィール!!(【Zeal】)〜!!出てこいや〜!!いつまでもグズグズしてんじゃあ〜ねえぞ〜!!」

場所は下町通りの、四方八方と交差する細い路地が入り組む広場内。そこには身長が190cmと大柄でパープルカラーのコートに、トップスとパンツはブラックカラーに統一された大男が、【Zeal】の名前を叫ぶ。するとその申し出に快く答えるかのように、その者が姿を現す───────

……シュン!!

「……【Pran】(プラン)…あなたでしたか」

「でしたか。…じゃあねえよ〜!どうすんだ〜!?あのクニズ(【Kunizu】)の野郎!…自分の保身目的で俺達との関わりを全て断ち切ってバックれやがったんだぜぇ〜っ!!」

【Pran】は、どうやら【Kunizu】に対するケジメをつけさせようと、内心ご立腹の様子であった。すると【Zeal】はやれやれと言わんばかりにこう告げる。

「まあ、彼自身はどのみち裏切る手筈だったのでしょう。…我々の事を、ただ利用しがいのある使い用の良い手駒として見ていたのでしょうから…」

「んな気楽な事言ってる場合か!?……ったく、この町に来て、色々ありやがるぜ!!…なんかよくわかんね〜けど、【Demister】とか名乗る俺くらいの身長がある【Calban】(カルバン)って名前の男とバッタリ出くわしたりして散々だったぜ〜!!」

「ほお〜。…あなたも出会いましたか。…私もですよ。女性であり、名を【Auro】(アウロ)。…そしてもう一人の取り巻きの男を…【Rowdy】(ロウディ)と呼んでおりましたね」

二人は互いに殺伐とした殺気を当てつつ、情報を取りあう。そうしていくうちに、何やらうずうずとしていた【Pran】はこう言い出す。

「……ったく、それにしても散々だったよな〜!…もう一人の【Cize】。……よりにもよって、アイツに。…《死神》に目をつけられて殺されるとはな〜!!」

「………」

「ん?…お、どうした?…まさかオメエ〜。…情でも湧いてたのか?…たかが人ぎょ……!?」

キィオーーンン!!!!

「!?」

「……以前私はあなたに言った筈ですよね?……汚い手を使わずとも……首を跳ねる事など《容易》であるという事を……」

ギリギリ………

【Zeal】は【Pran】に対し刃を向ける。しかしその攻撃を、持っていた猛毒が塗られた紫色のメリケンサックによって攻撃が防がれる。その闇深いパープルカラーの瞳には、彼自身の意志となる《人斬り》の感情が確かに込められていた。しかし、根本的な何かが違った。彼は以前【Hux・row】との戦闘から、何かが植え付けられたのか、以前の彼とは違う何かを【Pran】は理解した───────

ギリギリ………

「おいおい?…何を熱くなってるんだ〜?…毒を使う事を目的にせず、ただ人形のように生まれた【Cize】と、使いようのないアイツに化けてこの【Kagoya】に辻斬りから放たれる毒を撒き散らしていよいよ《国取り》を決行する時は近いってのに、何を熱くなってるんだ〜?♪」

「…いい加減目障りなのですよ。…その毒の塗られたメリケンサックという現世での武器を使うあなたを。……あなたが現世で過ごしてきた《バブル時代》の名残りかなんかよく分かりかねますが……!!そのようなもので私に勝てるとお思いですか?」

ギリギリ………!!!

パキャーーン!!!!

「!?……なぁっ!?…!!」

「………!!」

ザシュッ!!!!!!

「!?……ぐっ!!」

「………」

【Zeal】は躊躇なく、ステッキに見立てた仕込み刀で自らの仲間【Pran】を斬りつけ、深傷を負わせる。しかし、相手はニタニタと笑みを浮かべていた様子である───────

「…ハハッ!!…かかったようだな!」

ツーッ!!

「!?……っ!!」

ガシッ!!!…カランカラン!!

【Zeal】はすぐさま、メリケンサックの破片に付着していた毒を早急に拭き取る。しかし、【Pran】は無駄だと言わんばかりにこう告げる。

「おっと、ジタバタしてもどうにも止まんね〜ぜ〜ジィール〜♪…既にてめえの腕は、俺のメリケンサックに仕込まれている毒にやられて腐敗が始まっているぜ〜!!…精々持って一週間の命だな〜!…ま、俺も同じ所だな〜!……ったく、これで折角の特注の毒が無くなっちまったぜ〜…」

「………」

【Zeal】はその深刻な事実を聞かされる。しかし彼の持つ信念は決して折れることはなかった───────

「十分ですよ。…その時は、この【Paradiso】屈指の機械の腕でも着けてもらいましょうか…」

「あん?…テメエ?んなもん【Demister】の奴らに治して貰えばいいんじゃあないのか〜?」

「……それでは面白味が全くありません。毒を盛る卑怯な手段を使う事がウリの《半端者》のあなたとは違い……私は、この手であの【Hux・row】(ハクス・ロウ)の首を取るまでです…」

【Zeal】は決して、自分の芯を曲げる事はしなかった。どんなに《自らの腕をなくそうが、命がある限り、何度でも宿敵の前に立ちはだかる。》そのような《怨念》のように、執念深く《悪魔ノ契り》の契約を交わし、取り憑かれたとも言える常軌を逸した殺意の下、彼はその意志を貫き通そうとする。その様子に【Pran】は笑みを浮かべてこう言った。

「ダ〜ッハハハハ!!!!…流石は俺と同じく【標本見聞解体新書】の恩恵を受けている事はあるようだな〜!♪」

「………私自身、あの悪趣味極まりない催し物を恩恵などとは微塵も思っておりません。…ましてや、【現世人】とこの【Paradiso】に住む者達の細胞を掛け合わせて配合し、そこから【現世人】の持つ【Fiducia】能力に匹敵する能力と、人工的に【現世人】を生み出すとは、全くもって《非人道的手段》の考えのようですね」

その問いに対し【Pran】は衝撃の言葉を告げる───────

「どうやら、その技術の生みの親は未だ何処かで生きている。……いんや、その男と関わりのある奴と、今から半月前に遭遇してあの世に逝かせちまったな〜♪」

「!?……確かな情報ですか?」

「ああ〜間違いねえ〜ぜ〜♪……髪は伸ばしてクールぶっていやがったがあの野郎は……【Yakubisi】(ヤクビシ)だ!!……今となっては【Hopera】って便利屋ギルドで闇医者として身い〜潜めてるって噂だぜ〜♪!」

「どこで彼を?」

「【E島】の【Velkana】で、【Dail】邸付近で騒いでたって俺の弟子1号の奴が騒いでてな〜♪……そこで、昔のアイツの本性が出てしまったのか、しっかりコイツに納めてくれたぜ〜♪!」

ビラッ!!

【Zeal】はその写真を確認する。銀髪の髪色をしていたが特徴的な顔の表情と雰囲気、面影を見る限り、間違いない事を断定する───────

「……それで?…彼は何処に?」

「俺の弟子1号の取り巻き…半グレ共が拉致したって電報が届いてよ〜♪!…既に始末されてんじゃあねえのか〜!?ギャハハ!!まあ仕方ねえよな〜♪…なんてったって、奴が【標本見聞解体新書】を開発した《生みの親》なんだからよ〜っ!…ア〜ッハハハハ!!!!」

「……近所迷惑ですよ。……いい加減にしておかないと……」

ピィーッ!!!…。タッタタタ!!!

「!?………」

「…どうやら、お出ましのようですよ」


🎼Back Ground Music 》》》




♪〜ブレイブルーCSより・Endless Despair


ドロロロ!!!

「……!?泥人形だと!?…おいおい、こりゃあ〜!?」

「私達と同じモノに見立てるとは、反吐が出る事を!!」

ブン!!

ジャキン!!

辺りからは警笛が鳴り響く。それと同時に、突如二人の目の前に、泥人形の大群が押し寄せる。すると、どこからともなく二人に押し寄せてきた為、【Zeal】は素早く泥人形を斬り飛ばす。すると泥人形はそのまま形を無くすももう一体が執拗に迫ってきた。

「!!オラァア!!!」

べチャッ!!

「!?……プラン。…あなた」

「コイツはなんかよくわかんねえが、歓迎されているとは言えねえな〜ジィール!」

チャキッ!!

「その構え。……らしくなってきましたね。あなたの言う現世での…《明日》の名がつく……」

「力の意志って奴だ〜!た〜っははは!!…素手も悪かねえ〜!……オラオラ、グズグズしてねえでかかって……!!」

こいやぁ〜!!!

ダァン!!!…………!!!

メリィ〜〜ッッ!!!

ガタガタガタ……

【Pran】の放った拳からは、地面が揺れ動く。すると【Zeal】は彼の能力を言い放つ。

「……なるほど。…そういえばあなたの能力は確か磁力を操る能力でしたね?」

「おうよ。……そして、こいつらの動きをたった今封じたぜ!!」

ズシーーン…………

「!!」「!!」「!!」

泥人形の大群はそのまま、うつ伏せになっている。すると何処からか拍手が響きわたる───────

パチパチパチパチ!!!

「!?」

「な、なんだ〜?」

「ギャハハハ!!!やっべ〜超面白えぇ〜な〜アンタたちよぉ〜!!♪」

「………この者は」

「こいつ確か、【狼志組】…五番隊隊長の……」

「【Akill】様だぜ〜!!ようよう、初めましてだな〜!」

姿を現したのは、【狼志組】五番隊隊長を名乗る【Akill】(アキル)という男であった。髪型はツーブロックで、頭の上には大仏のような団子に見立てて髪が整えられている。するとすかさず二人にこう言い放つ。

「おっと、勘違いするなよ〜♪……今俺様は《組取り》を裏で企んでる真っ最中〜♪ギャハハハハハ〜!!!」

「………」

「……ほぉ〜。…つまり叛逆を企てていると言いてえ〜訳か?」

「その通り〜♪…んで、お前達を見込んでスカウトに来たって訳!…どうだぁ〜!?理解できたかぁ〜?♪」

「………」

その辺にしときな〜!!バカのアキル〜!!

「!?」

「!?……今度は一体なんだ〜?」

ザッザッザ……

「…ったく、近所迷惑だって〜の!!…こんな夜に騒がしくするバカはモテないわよ〜?」

【Akill】と名乗る者の前に姿を現したのは、【Demister】所属の女性【Izaya】であった───────

「よ〜う、噂をすれば【Demister】6幹部の【Izaya】(イザヤ)さんよ〜♪…ギャハハ!!……その太々しい魅惑の太もも……すっげ〜触ったら気持ち良さそうだよな〜!ギャハハ!!!……あ………」

ボアァァ〜!!!!

「……!?」

「火……だと!?」

「………」

【Izaya】は自らの能力を使い、焔の名前に相応しく、燃やした物を業火に燃やし尽くす灼熱の炎を纏い、色目を使ってくる【Akill】に対し、威嚇する───────

「……そのバカみたいな頭から先に焼いてあげようかしら〜?……アキルっち?…いい加減アンタの名前に因んで、そのセクハラ発言に飽き飽きしてんだよ〜!!!」

ボアァァァ〜〜〜ッッ!!!!!

「!?…っ!!」

「ウォォーーー!!!あっついぜーーー!!!!!」

【Izaya】は自らの炎の能力を使用し、辺りに業火の炎を囲んでいく。辺りは深淵の夜であるも、まるで夕方のように、オレンジカラーに彩られる。流石に不味いと感じた【Akill】はここいらで止めるように彼女に促す───────

「!!??…わ、わかったつの!!…い、【Izaya】さん!!とりあえずしゅごい炎だから落ち着いてくれな!!」

ボアアア〜………

「…ったく!…女に色目使って気持ち悪い事言ってんじゃあ〜ねえよ!バカアキル!!!…無能でバカなアンタは大人しく私達の言う事聞いときゃあ〜いいんだよ!!ギャハハ!!!!」

「…め、面目ねえ〜…ぜ〜…」

【Akill】はどうやら絶対的な力を持つ【Izaya】の前に頭が上がらない様子であった。その様子に【Zeal】は呆れの表情を浮かべて踵を裏に返す───────

「………」

スタッ!タッタッタ……

「あ、おい!ジィール!?」

「……茶番に付き合っていられる程、私も暇ではございませんので。……では」

シュン!!

「お、おい!!」

「……ほっときましょ!…所詮縁のない《大正》を生きる面白みのない男って感じよね〜ギャハハ!!」

「だよな〜!全く救済者が目の前にいるってのに失礼な奴だよな〜ギャハハ!!なははのは〜!!!……!?うぉ〜!腹いて〜ぜ〜!!」

「………ジィール…」(協力しないっつうのなら、腕…一週間まで持つといいがな〜…)

・・・
・・


〜その数日後〜

〜【Paradiso】歴2000年7/8・昼方【J島】【Kagoya】下町通り・路地〜

ドクン…ドクン!!!

「!?……っ!!……はぁ…はぁ……」(いけませんね。…思った以上にプランの毒の進行が早いようですね。……腕の感覚が……もう残っておりませんね……)

タッタッタ……!!

「ちょっ!?…ちょっとアンタ!?…だ、大丈夫〜!?」

ガシッ!!

「!?……」(一体何者ですか?)

「しっかり捕まってなさいよね〜!!」

「!!……っ!!」(…意識が…遠のく……)

グタッ!!

数日後、【Zeal】は毒に侵され、腕が変色しており、感覚もほぼ失っていた。そして路地の地べたに這いつくばっていた時、もみあげを両方結んだ赤毛に近い茶髪に、上下はデニムコーデの女性によって身体を背負わられて助けられる。彼女の胸には、救済ギルド【Siel】の紋章を示すバッジが付けられていた───────




・・・
・・







🎼Back Ground Music 》》》



♪〜PSYCHO-PASSより・神託

〜【Paradiso歴】2000年7月4日・夜方〜ある島内〜

「………」

ペラッ!!

ガチャ……

「……ただいま。…【Areg】」

「…おかえり。【Etrania】(エトラニア)。…首尾はどうなのかな?」

場所はある島の一室。そこには【Demister】の6幹部の参謀リーダーの役を担っている【Areg】が何かの書物を読んでいた様子である。すると【Etrania】はこのように告げる。

「…【Dail】の始末は完了したよ。……そして……」

さようなら。

グァアア!!!!

「………ふぅ〜ん。……挨拶代わりに黒熊【Orso Nello】(オルソネーロ)を。…しかも三頭を従えたのかい?」

「死ね!!」

グゥオオオオオオオオッ!!!!!………!!

「…………」(ジィー!!)

ジャラジャラジャラ…………

「…!?」(動きが…止まった!?)

【Areg】は【Etrania】の引き連れている【Paradiso】特有の三頭の黒熊【Orso nello】を何かの力で静止させる。黒熊達は、何やら得体の知れないモノが見えるのか、酷く怯えていた様子である。

ガクガクブルブル………

「!?ど、どうした!?早くコイツを…!!」

バキャッ!!ゲシッゲシッ!!

「!!……ぐうっ!!……アレグ……!!……一体何を……!?」

「虚偽の報告をされては困るよ。《童ノエトラニア》…君は結局【Dail】を殺害する事は出来なかったんだから……」

「!?……嘘だッッ!!…だって僕は確かに!?」

「…先に、【Varisk】に所属する《死神》によって【Dail】は首を刈り取られ、亡き者にされた。…君はその後にあの男の首を【Mantides・NS】(マンティデス・ネクシダー)に命令させて殺そうとしたといった所かな?…だが、結局君はターゲットの首を《死神》が先に横取りをし、刈り取ってしまったようだ。……残念だったようだね」

グググ………!!

グキっ!!

「!!うう!!うううああああああ!!!!!」

【Areg】は非情にも、踏みつけている【Etrania】の手首を容赦なく粉砕骨折させた。すると、彼の頭の髪をむしり取るかのように掴み、天使の顔から一変して冷酷極まりない冷たい視線でこう告げる───────

「……君は与えられた課題を。…何一つ出来ていないようだね。……現に。…例のブツも【Xiol】から持ち出すも…ここへ持ち帰ることに失敗したようだね?」

「!!う、嘘だ!!……だってここに………!?」

ササッ!!

ジャラジャラ……

「!?」

「それが、モノクルなのかい?」
 

【Etrania】が出したのは、《無名のドッグタグ》であった。彼は確かに【Jeil】の所持していたモノクルを持ち出す事に成功したという真実を突きつけようと抵抗する。

「!?…う、嘘だ!確かにあの女との戦闘の時には確かにあった筈!!…!?…そ、そうか……!!」

バキッ!!……グリグリ……

「うぁああ!!!!」

「もういいよ。…《能力不足》の君の言い訳などは何の理由にも。……解決にすらならない。…ただ《時間の無駄》なだけのことだよ。……つくづくダメで未熟もなく、成長しない子だね。…君も…【Izaya】も…【Calban】もね」

グキグキ……

「!!……!?ああぁっ!!……ぐっ!!…う…うぅ…!!」(ポタポタ!)

【Etrania】はあまりの無力さに涙を流していた。【Demister】6幹部で参謀リーダーを担当している【Areg】には、天使のようなフェイスをしているも、その裏の顔は、残虐かつ冷酷でもある双方の仮面を多彩に使い分けており、彼自身自分の思い通りの働きをしなかった者にはそれ相応の制裁を下す、厳格な姿勢も見られる様子であった───────

「……しかしながらも。…教育のやり甲斐は…あるかな………」

ガシッ!!

「!!……っ!!ゲホっ!!ゴホッ!!」(ゾクッ!!)

【Areg】は【Etrania】の首を掴み、頭上へ持ち上げる。すると、【Areg】の頭上には、悍(おぞ)ましい何かが蠢(うごめ)いており、偶然にもその目で観測してしまったようである───────

ジャラジャラジャラジャラ………

「だけどね。……《童ノエトラニア》。…口だけの君には、つくづく失望したよ。………大人しく本来ここ【Paradiso】に来るべきではない世界。……《【冥界】》へとこのまま沈んでいくかい?」

ゴゴゴゴゴゴゴオ〜…………

「!!」(契り……の………骸…こ……!!)

ガクッ!!

「………」(やれやれ……)

タッタッタ………

バサっ!!

【Areg】は教育中に気絶した【Etrania】を室内にあったソファーに寝かせて毛布を敷く。そして内心つまらなそうに呟く。

「全く。…まだまだ話にならないようだ。……確か君の死因は。……いじめを苦にして自殺したと聞いている。…《長》から色々事情を聞いているよ。…現世では確か《森道(もりみち)》と名乗っていたようだね。……【Melton】に所属している一人の【現世人】の女性。…【Keito】と名乗る親友の子の者に、君はいじめを働いたと聞いている。哀れながら…《自業自得》にも返り討ちにされて…そのまま《無惨》にも周りに見放され。……例えるならば。……その様はまるで野に放たれた《草食動物》として。…サバンナに住む…飢えを満たそうとする《肉食動物》によって食い殺されたかのように亡くなったと。……つくづく愚かで滑稽のように思うよ。…そして……」

「…………」

「…………」

「…………」

グルルル……

「……君達もさぞ不憫だったね。……この子の操り人形の道具として、僕を殺す武器に仕立て上げられていたのだから。……本来君達のような動物は、尊く肉体に魂を宿す命の意味がある筈なのに。…誠に救われないね。……だけど大丈夫。……別に君達には危害を加えたりはしないから安心しなよ」

なでなで……

【Areg】は、従えていた主人の【Etrania】のみに責任を押しつけ、三頭の黒熊には何も危害を加えなかった様子である。彼自身は《憂鬱》と《怠惰》が故に、不必要かつ無意味にも痛めつけるような無駄な事はしない様子であり、その目には魂の色で認識しているのか、【Etrania】をまるで《重犯罪者》として見下すような視線を送っている。

「実に嘆かわしいね。……いじめに逃避する程の精神的に脆く、保身に走ろうとするさぞ幼く。……目立ちたがり屋の醜い《童》なのか、報われない素顔をしている。……一生その顔を隠すのもまた悪くないようだ。……その内に秘めた《憤怒》の感情をどう曝け出してくれるのか。………まあ一生来ないとは思うけど、期待せずに待っておくよ…」

【Etrania】の事を《過小評価》する【Areg】はそのまま椅子に戻り、再び読書に戻る。すると再びドアから物音が響き渡る───────

コンコン…

「…入りなよ」

ガチャン♪

「ただいまどす〜♪…?…あらあらアレグさん。……いつもご苦労様ドスな〜♪」

「次はアウロか。…おかえり」

次に入室してきたのは【Auro】であった。すると彼女は【Etrania】の姿を見ると、少しばかり不憫な様子で見つめている───────

「まあまあエトラニアくん、ボロボロどす〜!……アレグさん。……躾(しつけ)とはいえ、少しばかり手加減してあげるドスよ〜…流石に《傍若無人》は殺生どすえ〜…」

「これでも彼に対しては手加減してはあるのだけどね。……治療をお願いできるかな?」

「別に大丈夫どす〜♪……それっ♪」

ヒィーーン!!

【Auro】は【Etrania】に対して治療を開始する。その様子に【Areg】は口を開く。

「…アウロ。その能力は、一体誰から奪ってきたのかな?」

「いいえどす〜!…これは、【D島】の地下水道でロウディーが回収した瓶に入っていた…【治癒能力】なんどす〜♪」

キラキラキラキラ……

「…着実にその完全なる《治癒能力》の完成を目指しているようだね。……アウロ」

「ウフフ♡…勿論どすよ〜♪…この世界を傍観してる【導き人】を消し去る為にも、この完全なる治癒能力…!!」

《命ある者の責務として、この朝顔にありったけの【治癒能力】を含んだ蜜を吸わせて…味わい尽くして完成する【絶対治癒能力】…必ず手に入れるまでどすよ〜オホホホ!!》

【Areg】は【Auro】に対し、少しばかり不憫な表情をしてこう伝える。

「君自身が今宿っている、その魂の身体の主の者…名前は《花華(ハナカ)》だったかな?…本来人が異性同士の上で愛する行為の筈が、その概念失くしては身内同士で強制的にそれが実行された君はなすがままとなって……厄介な病気を発症した。……そして」

「同時に精神を病んで、重度の《精神病棟》に収容されたらしいんどすぅ〜……当時華の《15歳》だったんどすけど、見事《身内》さんの手で散らされてしまったんどすな〜!……ですけど〜…こうして【Paradiso】に来て…ウフフどす〜♪…この、現世の頃から好きだった《朝顔》の蔓に優しく結わえられて愛のある抱擁をされて…ウフフ♡……命を潤して生命を分け与えてくれたんどすからな〜♪」

「…よかったね」

「んも〜!!///聞いておいてそこで会話を切るとは少々腹立たしいドスッ!!///」(プンプン!!///)

「………ふ。……」(クスクス!)

「……でも、アレグさん。……その身体の宿主に《長》の意志が憑依されても、【Calvan】さんや【Etrania】くん、それに【Izaya】さんのように、現世での人格や意識を保っていられるとは、これまた不思議なもんどすな〜♪…」

「…それだけ、あまり影響を受けない程の《我》が残っていたのかな?…でも【Izaya】はそうとも限らないかな?…時々、別の人格が現れたりするのだからね……」

「……あなたには《愛》という感情がないんどすな〜?♪」

【Auro】は【Areg】に対し質問を投げかける。その問いに対し、呆れたかのように首を横に振る。

「…僕にとっては、《子孫を残す》為だけに人生を送る事を、目的として生きて来たという訳ではないからね。生物学上、僕にとっては必要のない事だからなのかな……」

「…それって皮肉にも、生物上の頂点に立つ者は、自分だけでいいから性交渉して子孫を残す必要はないって事なんどすね〜♪…それにしてはなんだか《憂鬱》そうどすなぁ〜…ウフフ♡…では退屈しのぎに、私があなたの《欲求不満》を解消して差し上げましょうドスか〜♪?」

「必要ないよ。それに君は《同性愛主義》を貫いている筈だから、それは君自身の作り出したルールにおいて。……タブーなのではないのかな?」

「あら、それは残念ドス…」(シュン……)

【Auro】はわざとらしく、気落ちする素振りを見せる。しかしその行動は、【Areg】には全く通用せず、軽くあしらわれる。

「わざとらしくそのような態度を取ってもらわなくても結構だよ。…実に無意味で退屈なだけだから」

「ひどいどすな〜!!///……ウフフ♡」

「………で、あの【Xiol】が管理していたモノクルの行方。…一体何処に行ったんだろうね?」

「?……さぁ〜?…一体何処にあるんどすかな〜?…そういえば、元の持ち主さんは私、一度お見えになった事があるんどすな〜♪」

「…縄使い【Jeil】(ジェイル)だったかな?」

「ご名答どす〜♪…変わった趣味をお持ちの方で、グラマーな私の身体を見て早速。…妻コレクションの一人に迎え入れようと縄で縛り上げ、拘束しようとしてきたんどすけどな〜♪…ウフフ♡…この朝顔の蔓で首を締め上げて……《奈落の花》が咲く死の淵の間際まで追い込み屈服させ……見事返り討ちにして……ウフフ♡……その後救済の手を差し伸べてあげたんどすな〜オホホホ♪」

【Auro】はその口振りから、【Dail】の色欲を見たす目的を理由に、側近として仕えていた縄使い【Jeil】との接点が見られた様子である。すると【Areg】は、半月前に起こった《【Dail】邸襲撃事件》についての真相を尋ねる───────

「その【Dail】邸のメイドとして働いていた……【Linea】(リーネア)。…彼女と君はその騒動で接触したのかい?」

「ウフフドス〜♪…この世界でも…そして現世でも直接的なご対面はしなかったんどすけど〜♪…た・だ♡…ウフフ♡…あの時のリーネさん♡///…はあぁぁ〜♡…まるで命ある植物…いえ花で例えるのなら、花言葉に《縛り付ける》を意味する《クレマチス》♡…その種類の中でも《テッセン》という名の花によって…///ウフフ♡…リーネさんの事は記憶で知ったんどすけどな〜♪現世では《西野ゆい》という名のある家の《令嬢》の次女なんどす〜♪…彼女自身、重度の稀なケースの《白血病》の闘病で入院期間が長かったのか、私と同じくらいグラマーなあの自慢な豊満の身体♡…それを麻縄で絡め取られ、キツく縛り上げられて♪締め上げられて♪…それはそれは〜♪…〜!!///と〜っても気持ちよさそうで可愛らしい苦悶な顔をしてたんどすな〜!!///…そ・し・て♡…《治癒能力》を少しばかり含んだ《魂の蜜》を垂れ流…………///」

「話を戻すよ。……【Jeil】の正体について。……君は概ね理解している筈だよね?」

「もうっ!!///ここからがよかったのにホンマ白けたどす!!///…ゴホンどす。………あのモノクルは、我らの《長様》から聞いた通り、モノホンの【Kunizu】さんが身に着けてたモノクルと一致したそうドス〜♪……そしてジェイルさんは、そのモノクルを使って…ウフフ♡…【Paradiso】の世界各地にいる女性をスカウトしてメイドさんに仕立て上げて〜♪…時に少女の姿をした本来大人の姿をした【現世女】をも手にかけて、拉致したらしいんどすなぁ〜♪……ウフフ♡そ・こ・か・ら♪…世界各地に散らばる《服従メイド》専門のアブノーマルなSM世界を生業にしとる主人に売られ、そこで調教を受けてる事なんどすな〜オホホホホドス〜♪」

「…そして、それが使用できるのは本物の【Kunizu】のみとされていた。そのモノクルを使用する事で、霧の如く…《虚飾ノ幻想》に惑わされる事もなく、本来の《真実》を写し込む力が働くと言われているようだ。それ以外の人間が身につけた所で、ただのモノクルでしかないだろうからね…」

【Areg】は本を読みながら、モノクルの持つ機能に、論理的に考察を働かせていた───────

「?…ん〜?………もしかしたらどすよ〜?…モノクルはマスターである【Kunizu】さんが使用する事で《真実》を見通す能力が発現するんどすよね〜?」

「…そうだね」

「では、そのモノクルの……《生みの親》がいるのだとしたら〜…その人が使用すれば。……一体どうなるんどすか〜♪?」

【Auro】はそのように一種の仮説を呈示する。するとその問いに対し、【Areg】は興味深そうに答える──────

「………ふぅ〜ん。……【Auro】。……君はそう考えるんだね?」

「あなたの十・八・番♡(お・は・こ♡)…《発想逆転法》どすよ〜オホホ♪」

しかし、その問いに対し、【Areg】は首を横に振った───────

「残念だけど、どうやらその可能性はないかもね……」

「?…どういう事どすか〜?」

【Areg】は簡潔にもこう答える───────

「…開発者といえど、そのモノクルが示すものとして必要なのは。………《視覚情報》を媒介とする《感覚器》…その《視感》や《視覚》の情報条件が一致する能力を。…その開発者の《眼(まなこ)》…つまり《眼球》に備わっていればの話だけどね」

「ウフフ♡…もしも…その仮説が正しければ。……当事者となるモノホンの【Kunizu】さんとジェイルさんが《再起不能》となり。……そ・し・て♡…私の持つ色欲属性を持ち。……今回の事件にとってももう一つ、重要な鍵を握っていました大罪人【Dail】(ダイル)さんが既にあの《死神さん》によって首を斬り落とされ。……口が言えなくなった今、……そのモノクルが示し、映し出すのは一体何なのか。………実物どすな〜ウフフ♡」

「エトラニアに今回の任務を請負わせたのは。…あくまで彼自身の持つ《憤怒》を司どる大罪の属性のスキルアップを目的とするものだったからね。…だけど結局。……計画通りに【Dail】殺害担当を……僕自身が彼《死神》に請け負わせる為。……【Varisk】総司令【Capo】という者と接触して指示を促し。……その際にモノクルを奪って貰おうとしたんだけど、結局はエトラニアに回収させられてしまい……そしてある者の出現によって盗難に遭ってしまった。…でも結果的に、それが更に《虚飾》に彩られた霧に惑わせられ。…僕達にとっても有利に《摩擦》が働き。…事が良く、立ち回らせてくれるやも知れない……」

「?…どういう事どすか〜?」

「…君は、《クラウゼヴィッツ》の《戦争論》を読んだ事はあるかな?」

「?…そんな人、現世でも聞いたこともないどすな〜?…面白いんどすか〜その本?」

「《戦争の原点》とも言える事柄がそこに記されている。戦略や知略。…他国に侵入し。…一体何故、人は戦争を止める事なく日々争いを続けるのか。……をね。…また暇な時に読んでみるといいかな。……じゃあ僕はそろそろ失礼するよ。……ご武運を。…アウロ。……その【治癒能力】が放つ魂の輝きが一体何を示すのか、僕は内心興味が出てきたよ。…傍観席で《怠惰》に見せては…気を抜いて《憂鬱》な気分にさせないように励んでくれる事を期待してるよ……」

シュン!!

「ウフフ♡…任されたどす〜♪……既に…ターゲットは推しとるんどす〜♪…ね、リーネさん♪…そ・し・て♪……ジェイルさんが何処かの世界でお会いしたとか寝言を言いながら呟いていた…【修復能力】の【Fiducia】を持つ少女……【Towa】(トワ)さん♪…あなたを私の朝顔で優しく愛のある抱擁を交わしてお見合いして頂き。…この子達の渇きを潤わせて……ウフフ♡……【絶対治癒能力】を完成された暁には、…あなた達二人を…もう天国にイク♡程の快楽ノ階段へ登れるように絶頂に達して頂き♪……ンフフッ♡……そのまま地獄の底に咲くとっ〜ても美しい…一輪の《奈落ノ花》に生まれ変わるのも、これまた風情ドスなぁ〜♪…ウフッ!…ウフフフ………〜♡!!///」

オ〜ホホホホドス〜♡♪

【Auro】と【Areg】の二人は、《モノクル》のからくりが解く事が出来ない限りは、誰が持っていたとしても無駄な事であると主張し、真実をうやむやにして卑劣な縄使いの【Jeil】が使用した下劣な宝具という扱いとして、《虚飾》の彫刻作品として迷宮入りにさせ、大罪を塗り固めようとしていた───────












しかし、《真実》とは常に一つの道筋でしか存在しない───────近道をし、結果だけを追い求める事ではいつまでも出口となる《真実》に辿り着く事は出来ない───────【Demister】の六幹部の者達は、自らの確証が、勝利を確信したのだと思い込んでいる───────

それは《余裕》に見せているようであるが、時にそれは大きな油断を呼び寄せてしまい、いずれは《歪》が生じ、その塗り固められた《虚飾》に彩られた装飾の戦略は、摩擦によって擦り減っていき、瞬く間に抜け落ちて行く《可能性》を、彼らは見落としてしまったのやもしれない───────








   
B. いいえ


《Capitolo・9》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜大逆転裁判2より・推理大戦・始


〜【Paradiso】歴2000年7/5・朝方【D島】・【Crono・St】【R・P】社・室長室〜

「………」

カキカキ……!!ペラッ!!

時は戻り、【D島】────【Crono・St】の街に構える【R・P】社内部のギルド室長室───────そこには、執務中の【Lucis・H】がいた。

コンコンコン!コンコンコンコ〜ン♪!!

誰かがドアノックを連呼する音が室内に響き渡る。【L-cis・H】はやれやれと言わんばかりの表情をしつつ、彼女の名前を呼ぶ。

「……ネラかい。入ってくれ」

ガチャッ!……ギィ〜♪

「はいは〜い♪…ルーシス義兄さ〜ん♪……望み通りに友達を連れてきたよ〜♪えへ♡…あ・な・た♡」

姿を現したのは、案の定【Agente】参謀リーダーの【Campanella】である。すると顔を見る度、照れ臭そうにしつつ、元気な姿を見せる───────

「……最後のは別にいらないよ。……入ってきてよ。…フカベくん」

コツン……コツン………

バタン!

「…やあ。…【Dail】邸事件後以来だね。……あの時は出来るだけ互いの姿を隠しながら壁同士で話したがここでは御対面出来たようだな。…もう何年振りだろうか。…ルーシス君」

「…お互い様だよ。……そちらこそ、あれから調子はどうなんだい?」

二人は互いに近況報告する。特に二人が仲が悪いという訳ではない。寧ろ《切磋琢磨》しながら進むべき真実の道を進んでいく親友とも呼べる程の深い《絆》を持つ関係であった。

「…こちらも特に変わりはないよ。……ネラくん。…ありがとう、もう下がってもいいよ」

「いや〜!!///だぁって〜!!///私は!!///…〜♡!!///」

ダキッ♡ペロっ!♡チュッ♡!!

「!?」

「!?///ね、ネラっ!?///」

【Campanella】は【Lu-cis・H】に対し、大胆なスキンシップを交わす。すると声高らかに宣言した。

《私達!今年中には結婚します!!///《ソロレート婚》を縦にしてッッ!!///》

「…!?」

「言っちゃった〜♡…!!キャ〜〜♡!!///」

【Campanella】は躊躇無く、【Lu-cis・H】との関係を【狼志組】副長の【Fukabe】(フカベ)に大胆にもカミングアウトする。《ソロレート婚》とは、夫が自分の妻が不幸にも亡くなった後、その妻の姉妹であり、多くは《妹》を妻とする結婚の形態の事を言う。そのふしだら極まりない態度に剛を煮やしたのか、【Lu-cis・H】は赤面しながら教育的指導をする───────

「ね、ネラぁ〜〜!?///」

「えへへ〜♡…だってぇ〜///…私はルーシス義兄さんの奥さんで〜私の実の姉のアマ姉と結婚してロアが生まれたんだから〜♡…私と結婚しても《ソロレート婚》でなんの問題もないじゃ〜ん♪」(スリスリ〜♡)

「よくないッッ!!///全く、以前君ときたら眠り薬まで仕込んで僕の身体を好き勝手にしただろ!?///……恐らくはその時の行為に走った《証拠写真》までも握ってるだろ!!??」(クワッ!!)

「え〜っ?一体なんのことかなぁ〜♪?///私わかんな〜い♡♪///」(ニヤニヤ〜♪)

「!!……ネ〜ラ〜……!!……いくら君がベルナの妹とはいえ、流石の僕もベルナだって怒るよ!!///」(クワッ!!)

「え〜っ?だって〜♡♡♪」(くねくね〜♡)

「………」

・・・

〜時は数年前・【Fukabe】の追憶〜

『ふふ、ルーシス坊や〜♪み〜つけた♪』

ダキッ♡!

『うぉわっ!!///…べ、ベルナ…///』

『ウフフ♡…あ〜ら僕〜?…顔が赤いわよ〜♪』

『やれやれ。…全くルーシス君、それにベルナも。…君達は相変わらず仲がいいようだね』

『ちょっ!?///ふ、フカベくん!?』

『ウフフ♪フカベったら〜♪応援あ・り・が・と☆……でもね。…フカベもっ♪!!』

ダキッ!!

『むっ!?』

『!?…べ、ベルナ!?///』

『ウフフ〜♡…スキアリ〜♪…あはは!あなただけが仲間外れはダメよ〜ダメダメ♪!!…私達はいつでも仲の良い《三人組》なんでしょ〜!?今も。…そしてこれからも…』

ギュッ!!

『!!…ベルナ』

『ふっ。……そうだな。……僕も同じ気持ちだよ。…ルーシス君。…君は【現世人】である僕達をこうして平等に見てくれている。……だから、僕は君を心から信頼しているのだ。…君に会えて本当に感謝しているよ!!』

ギュッ!

『!!……ははっ!……!!うん!…僕も同じ気持ちだよ!…フカベくん!』

カシャッ!!

『!?』

『!?』

『あらあら〜♡…ウフフ♡…いい写真が撮れたわ〜♪』

『!?ちょ。ちょっとベルナ!?///や、やめてよっ!!///すぐに消しっ!!』

タッタッタ!!

『あぁっ!!…ハァ…ハァ…!!やっと見つけました!…!!もう!///ベルナさぁん!!///私達を置いてけぼりにして、一体どこで何していたのですかっ!?///』

『……べ…る…ナ…探し……た』

『?』

『?』

『ん?あらアガルタとミハエル〜♪…よ〜しよしよしよし〜♪』

なでなで〜♪スリスリ〜♪

『ひゃぁっ!!///……あ、あの!!ベルナさぁん!!///やめてください!!///それぇ〜!くすぐったいですから〜…///』

『…ベル……な。…あたた……か…い……も……っ………と…………』

『あらあら〜♪ウフフ♡…はぁ〜い♪』

スリスリ〜♪

『あぁんん♡///…や…ゃぁ///お願いです…///は、離してぇ〜!!///』

『………しあ……わ……せ……』

『ウフフ♡…アガルタ〜♡…見ない間に随分女になってきてるわね〜♪…そ・れ・に☆…ミハエルも随分言葉を覚えたわね〜♪』

『………あが……る……た…にい…ろ……いろ…お…し……え…て…もら……った……の……』

『あらま〜!!///ありがとうね〜アガルタ〜♪…これは、サ・ー・ビ・ス♡』

ムニムニ♡

『ひゃあん♡!!///…!!だ…!!だぁめ〜♡///』

『ウフフ〜♡…いい声ね〜♪』

トントン!!

ガシッ!!

『あ〜れ〜!?』

『ゴホン!!///ベルナ!もうその辺で!!///』

『〜!!///おんしゃ!オナゴてがうのも大概にしとりゃんと、【御用見廻組】が来るんぜよ〜!!///』

『あらあら、んも〜う!!///ルーシス坊やも相変わらずここも、それに…///あぁ〜ん♡時に下も固くなるんだから〜ふふ♪…フカベも、現世での方言が出てるわよ〜♪』

『っ!!///もう今日という日は怒ったよ、ベルナ!!』

『ウフフ♡…へえ〜怒ったのね〜?ルーシス坊や〜♪……それ♪』

トン!!

『ええっ!?……!!あぁっ!!///』

ダキッ♡!!…ムニッ!!

『!?ち、ちょっ!?///』

『〜!!///』

『ちょ、ちょっと君っ!!///大丈夫…!?///……?…あ…あれ?……』

『…〜!!///』

『ウフフ♡…どお〜?ルーシス坊や〜♪?……アガルタに抱きつかれていると、何だか落ち着くでしょ〜?』

『……た…確かに。……!?……ってアガルタ!?……ベルナ…それって……!?』

『あの《癒し》を重んじる貴族!!《【F】(フレイシア家)》の令嬢の名だ!!……ベルナ。…まさか連れ出してきたのか!?』

『ウフフ♡…まあ事情ありありな話なんだけどね〜♪……そ・れ・に☆…!!///どお〜アガルタ〜♪……ルーシス坊や、可愛いでしょ〜♪?///』

『ええっ!?///あ、あの…そ…その……わ、私…!!……〜!!///』

プシュ〜!!///

グッタリ………

あ、アガルタ〜〜ーーーー!!!!

・・・
・・




「…ふっ!」(全く。……仕方ないな〜……相変わらず君達との絆は、亡くなっても断ち切る事が出来ないものなのだと改めて思うよ。…ベルナ!)

コツン!スタッ!スタッ!

「あ、フカベくん!」

「…そろそろ行くとしようよ、ルーシス君。…私達の本物の《局長》の元へ!…ロアくんは?」

ひょっこり!

「ここ。…です!!///…フカベ…さん。…お久しぶり…です…」(ぺこり!)

【Fukabe】が彼女の名を口にすると、【Roar】(ロア)は一室の机の下からひょっこりと現れる。どうやら【Hux・row】という男の憧れもあったのか、隠れてスパイ技術を学んでいたようであった。そして何よりも親子だからなのか、温かみが欲しくなり、【Lu-cis・H】の膝へ擦り寄ってくる。

スリスリ…///

「……ロア。…いつの間にいたんだい?」

「ちゃんと…挨拶…しました。…でも。…お父さん。…フカベさんとの会話に集中していて、聞こえなかったよう…です…///」

「!!そっか。…ごめんね。…つい仕事に熱が入ってしまっていて、本来なら父親として少しは構ってあげないといけないのにね。……《父親失格》だっだよね…」(なでなで)

「……っ!///そ、そんなことは…ありません!!///」(フリフリ!)

「…ふっ!」(ベルナ。…君の築いてきた家族は、今日も元気に過ごしているようだ!)

「………〜♪」

ガシッ!!

「!?」

「!?///…ね、ネラ義姉様///」

【Campanella】は意地悪そうな表情をして【Roar】と【Lu-cis・H】に寄り付いてくる。すると、便乗するかのように大胆にもこう宣言した───────

「ふふ〜んっ♪…ねえねえ〜!だ・か・ら☆…私と結婚したらロアも寂しくないってことじゃ〜ん♪…じゃあさっ〜っそく!!///この指輪と《結婚届》にサインしてよ〜♪…ルーシス義兄さん♡…いえ、私だけの〜あ・な・た♡」

グイグイ!!

「!!ち、力が強い!!…フカベくん!!助けてくれないか!?…以前リーネくんに抱きつかれた時に誤って転倒した時の腕の負傷は、ビブスが取れたとはいえ…未だ癒えてなくてさっ!?」(アセアセ!!)

「…仕方ないな……」(やれやれ…)

ダァーーーン!!!!

「!?」

「!?」

「っ!?」

ドドドドドロワ………

コツン…コツン…コツン…

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜JOJO:6部より〜ストーンオーシャン

グキ…ゴキ……

や〜れやれよね〜。……これは試練のようねぇ〜……

「!?」

「!?」

突如、室長室の扉が誰かによって破られる。その様はまるでヤクザが相手に因縁つける取り立て業でもするかのように豪快に蹴り上げられ、道が切り拓かれたのだった。そこには、パープルカラーの髪が特徴な女性で肉食系なのか、臍出しの加圧シャツを着た、いかにも個性的溢れる格好をしていた。

「…………」

「!?…き…君は…!?」

「ひぃっ!!」(ビクッ!!)(な、何です…か!?)

「る…!!ルクナぁっ!?……ちっ!!」(あちゃ〜!せっかくいいとこだったのに邪魔が入ったか〜!!)

「!!…ルクナ君……なのか…」(大きくなったな。…昔はここにいるロア君のようにルーシス君に対して甘えん坊の少女であったのに。…いつの間にか。…君の豪快な姉に面影が似るようになったようだな……)

一同は突然の空気に戦慄する。すると相手はこう語る──────

「この現状は…一体、私に対して…!!

何を示しているっていうのよ〜〜!!??

ダダダダダア!!!!

「オラァ〜!!!」

「……っ!!」

シャッ!!

クルクル〜!!!

スタッ!!

「!?…ちっ!!」

「ウヒぇ〜!!いやいや、危ない!!危ないってのぉ〜!!」(ヒエ〜ッ!!)

女性の正体は【Lucna・B】であり、彼女もまた【Lu-cis・H】に厚い好意を持つ異性である。そして目の前にイチャイチャを見せつけていた【Campanella】に対し、目の敵のように《剛の拳》が込められた豪快な拳を叩き込もうとする。しかし【Campanella】は長年鍛え込まれた身軽なスパイ体術を活かし《柔の技》を使って華麗に回避する。すると彼女は舌打ちし、悔しそうにしていた。

「や〜れやれね。…私の永遠のナイト《ルーシス様》に手出そうとする、その憎たらしい顔をめり込ませようとしたんだけれど……!!安易と避けてんじゃあ〜ないわよぉ〜〜!!」(クワッ!!)

ブォン!!!

「は、はぁ〜!?…あんなのまともに食らったら《世紀末漫画》みたいに身体が《ひでぶ》するっての!!///……それにルクナ!!…何故あんたがここに来たって訳なの…………!?」

ドドドドドドロワ………

グキゴキ……

や〜れやれだわ〜。…言いたい事はそれだけかしら〜?…アタシの前でルーシス様に手を出した色欲ビッチの《ビッチネラ!!》……てんめえのようなこ汚ねえ〜泥棒猫に忠実な《悪党》の墓は。………!!ここって《決めたッッ!!》《今決めたッッ!!!》《撤回する事なく決めたッッ!!!!!》

ヒョイ!…ヒョイ!

「!?」

「あのモノクルは…!?」 (生前の【Kunizu】氏が持っていた…!!彼自身のみが持っていたとされる真実を見通すことが出来る……モノクル!!)

「さ〜てと、大人しく、この物珍しいモノクル持ってた、あの《インセクター童野郎》と一緒に…ここで《オラオラの刑》を執行してやんよぉ〜!!!」

こんの腐れ外道ビッチが〜!!!!

・・・

〜時は戻り、数日前〜

『………』

ザッザッザ……

『?…誰だい君は?』

『……通りすがりのキャンプ客って言っておこうかね〜?…噂の【Demister】御一行さん?』

『!?』

『やれやれね。…まさか現世の歌でもあるように、森の中で熊さんと……そして《偽善集団》の一派と出くわすなんてね〜♪』

グキゴキ……

『!!…な、何故わかった!?』

『……さあね。……ただあるのは。……!!』

アンタらに《オラオラ制裁》が待っているという道しか残ってないって事ねッッ!!

ダダダダダダ!!!!

『!!……いけっ!!アイツを八つ裂きにしろ!!』

が……る……!!!

グォオオオオオオッッ!!!

『……!!』

ドカッ!!!べキッ!!!……!!!

ドゴッ!!!!

『!?…なぁっ!?』

『………ウッス………!!!』

『オラオロアオラオラ〜〜〜!!!!!!』

ドゴドゴドゴドゴ……!!!!

《オラァーーー!!!!!!》

パァーーン!!!!!

グォオ……!!!!!

『!!う、うわぁ〜〜!!!!!』

ズザァ〜〜!!!!

『!!お、おいしっかりしろ!?…ぼ…僕を守れ!!……っ!?…ハッ!!』

ドドドドドドドロワドドドd…………

『………』

グキ……ゴキ……

『!!……ひぃっ!!』

『……私はね。…《ただ》のガキになら特に何も制裁を加えたりはしないわ。……そう。…ただの《ガキ》ならね。……つまり。……!!』

《テメエらの先代だっけ〜?…その昔に、私の大切な人に手え出してる筈よね〜?』

『!?』

『……それ知っちまってる以上。……ッッ!!拳は既にアンタの頬をロックオンしてるってなぁ〜〜ッッ!!!!!》

パァーーン!!!!

※残酷過ぎて、語る事は出来ません。ええ、はい。とても哀れ過ぎて、何も語る事は出来ません、はい(・ー・)〜…──────





〜時は戻り出すッッ!!〜

「オラァ〜!!!」(ブン!!)

ヒョイ!!

「!!っ!!」(ったく、相変わらずの馬鹿力ねぇ〜!!ったく!!こうなったら!!)

「避けるなぁ〜っ!!!」(クワッ!!)

【Campanella】は【Lucna・B】の攻撃を躱していく。しかし、相手もそろそろ本気と言わんばかりに鋭い剣幕で拳を叩き込もうとする。

ヒィーーン……

「!?」(や、やばっ!!…あれはマジでやばいってぇ〜!!)

「さ〜てと、《ビッチネラ!!》…………コイツでアンタの脳みそぶちまけて、蛆虫の餌になって貰おうかしらぁ〜♪……行くぜぇ〜!!!」

シャッ!!!

「……!!」(や、ヤバぁいいッッ!!)

いい加減にしろ!!!!

ガーーン!!!!!

「ゲフッ!!」

バタリッ!!!

「!?……ふぇっ!?」

🎼Back Ground Music 》》》

     




♪〜大逆転裁判2より・真実への大扉

突如、【Lucna・B】の頭上に刀の鞘が叩き込まれた。それを実行したのは【狼志組】副長の【Fukabe】であり、《いい加減にしないか!》と言わんばかり、無理矢理にも静止させ、自慢のネイビーカラーのチェスターコートが靡いていた───────

バサバサ………

「…【B】(ベレンダ家)は野生の血が騒ぎやすいのか、相も変わらず頭に血が昇りやすいようだ。……ネラくん?…怪我はないか?」

「……ほ……!!ほひぃ〜っ!!……た…助かった〜///……あぁ〜ん怖かったよ〜!!あなたぁ〜!!///……ん〜?」

ダキッ!!

「!?ええっ!?…ちょっ!?…ルーシス義兄さん!?」

「………」

「…彼女も一緒について行ってもらう。寂しがっていただろうから勿論付きっきりで面倒を見る事にする!……今回は君が悪いようだからね。…ネラ!」(ニヤリ!)

「…!!」((TーT)ガーン!!)

そ、そんなぁ〜〜っ!!!!

「……ルーシス君。…君も意外と腹黒いのだな」

「…ネラの姉のおかげでさ。……ハハッ!」

「……っ!!///」(あぁ〜♡…ルーシス様〜♡…私だけの……アハハ♡)

・・・

〜時は【Lucna・B】少女期〜

ダダダダダ!!!

『……ハァ……ハァ……ゼェ…ゼェ……』

コロン!

『!!あぁっ!!』

コテン!

ザッザッザ……

『おいおい、見つけたぜ〜!コイツが《【B】ベレンダ家》の生き残りって奴だ!!』

『確か三年前にこのガキの姉の野郎が、どっかの戦場で無駄死にしたっていうなぁ〜っギャハハハハ!!』

ア〜ッハハハハハ!!!!

『!!……いう…な…』

『あぁ〜ん?何だとぉ〜?』

『!!……』

『姉さんの悪口を言うなぁ〜!!!!』

シャッ!!

『おおっと!!〜効かねえよ〜!!』

ゲシッ!!

『っ!!……ぐっ!!』

『ギャハハ!!弱え〜!!貧弱貧弱ゥゥ〜なガキだぜ〜ギャハハ!!!』

ア〜ッハハハハハ!!!!

『!!……う……ぅ……!!』

バキャッ!!!

『あんぎゃ〜!!』

『ゲハっ!!』

『!?…え…?』

ダキッ!!

『うわぁっ!!///……!?』

『……大丈夫かい?…………《ベレンダ家》のお嬢様である【Bian】(ビアン)の妹さん?』

『!?///』

か、かっこいい…き…騎士様みたい…///

・・・
・・


〜時は戻る〜

「…zzz」

「……」(気持ちよく眠っているな。…長旅だったからか無理もないか。この世界に代表する【最古ノ貴族】の一員とはいえど、今思い返してみれば、ルクナの事情について……君の姉の事もあって、昔から縁があったように思うよ。……本当に…)

コツンコツン…

「…?…あら?…ルーシスさん、こんにちは。……腕の具合はいかがですか?」

【Lu-cis・H】に対し、挨拶をする者がいた。そこには水色の修道服のような装いの格好をした肌は少し濃く、仏のような表情の女性がいた。

「ああ、メディカルリーダー【Eiwas】(エイワス)。…もう随分良くなったよ。この通り彼女をおんぶできるくらいにね」

《【R・P】社:治療・救済ギルド【Grazia】所属メディカルリーダー》
         《【Eiwas】(エイワス)》

「ふふふ、あらそうですか♪……??…ちょっと失礼しますね〜!」

ゴソゴソ…パンパン…!

「?…どうしたんだい?…エイワス?」

【Eiwas】と名乗る女性は、【Lucna・B】の身体を物色していた様子であった。するとすかさずこのように伝える。

「いえいえ折角ですから《触診》をと♪……流石は【Surviver】ギルド所属の方だけありまして…とても大層な鍛え方をしておいででありまして〜♪…ウフフ♪」

「?……そうかい。…ごめん。…急ぎだからこれで失礼させてもらうよ」

タッタッタ……

ザッザッザッザ……

【Lu-cis・H】はせっせと【Lucna・B】を持ち上げながら、どこかのフロアに、皆を引き連れて向かっていく。その様子を、【Eiwas】は温かく見送った───────

「…いつもお勤めご苦労様です、ルーシスさん。……あなた様の勤労には、昔からキラリと光るものがありますね〜♪」

【Lu-cis・H】を見送った彼女は、自らの持ち場である【Grazia】の部署へと戻っていく───────

コツン…コツン…

「…エイワスさん?」

「?…あら、フカベさん?」

「ニノの容体は?」

「解毒は済ませております。…少し休めばなんとかなるかと思われます…」

次に彼女に接触してきたのは、【狼志組】副長の【Fukabe】であった。二番隊隊長の【Niyano】は解毒治療の為、【Grazia】所属の彼女に治療を依頼した様子であった。その彼女の返答に対し、フカベはこう伝える───────

「それは安心した。…話を聞く限り、この地方に毒使いの《人斬り》が潜伏していたとはぬかっていたようだ。……誠にすまない。…あなたには、10年前に起こった水害による災害で【Kagoya】の住民に対し、手厚く治療を施してくれたと言うのに。…今回も我々からも礼を言わせてもらおう!」

「ウフフ!…困った時はお互い様です。…では失礼致しますね〜♪」

タッタッタ……

「…!?…これはグランドクター・エイワス様!!」

「あらあら、ステラ。その呼び名はもう宜しいと言うのに。……調子はどうですか?」

【Eiwas】が挨拶したのは、【Stera】であった。彼女はあれから奮闘して、患者に対し献身的なケアを施しているようである。彼女は、【Eiwas】に対し、(グラン)と付けられる程の偉業を成し遂げた有名な人物であるように敬意を払っていた───────

「はい。特に問題はありません!…リーネ程の優れた【治癒能力】を持っておりませんが…順調に治療を受けていただいております!」

「ウフフ!…それなら心配ありませんね〜♪では、引き続き頼みましたよ〜♪」

「はい!…ご苦労様です!」

スタッ!!タッタッタ!!

「………」

ギィ〜…ガチャッ!

ピー…ピー…ピー…

「………」

【Eiwas】は自らのプライベートルームに入る。そこには【狼志組】二番隊隊長の【Niyano】の姿があり、治療を受けていた。その付近に、銀髪の髪色をしており、白衣を纏った一人の男性が座って患者の経過を観察する医者であるかの様に見守っていた。彼女はすかさず名を告げる───────

「…お久しぶりですね。……【Ruves】さんの協力を元に【狼志組】二番隊隊長【Niyano】さんの魂の体を蝕んでいた毒を解毒していただきまして、誠に感謝します。そして…彼の協力の甲斐あって、遂にこのフロアへと足を踏み入れる事が出来ましたね。……もう何年振りでしょうか?…元《医学博士》の権威を持つ、私ではなく…本来ならばあなた様が(グラン)と名乗るのに相応しい……この【Paradiso】の世界の中でも偉大なる名医の【現世人】【Yakubisi】(ヤクビシ)さん?」

「…今は便利屋ギルド【Hopera】所属…モグリの《闇医者》【Oya】(オヤ)だ。……久しいな。…かつて元俺の新米助手……女医の【Eiwas】(エイワス)」

「…………」

互いに交差する運命の歯車───────【ユートピア人】と【現世人】───────種族は違えど、二人は互いに《医学》の道を志していた同志とも言える存在のように感じられた。彼女が手にしていたパープル色のモノクルが指し示す目の前の《真実の大扉》は冷たい楔のように契りで頑丈で鎖(とざ)されていた。しかし【Oya】の指し示す灰色の鋭い眼光には、まるで蛍のように煌びやかな光を纏っていた様子であり、その目に映る光は一体何を示しているのか、それが遂に明らかになろうとしていた───────

・・・
・・


   
B. いいえ


《Capitolo・10》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜大逆転裁判2より・真実への大扉

〜【Paradiso】歴:2000年・7/5・ある空間の中〜

「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」

リィーーン♪【冥鐘】…リィーーン♪【冥鐘】…リィーーン♪【冥鐘】

「………」

バサッ!!……

コツンコツン……

周囲からは神楽鈴を鳴らす音が響き渡る。すると目の前から180cmと高身長の白髪に、後ろは狼の尻尾のように結んだテールに、左右対称のベージュと黒の着物に見立てたコートを着用した長身の女性が姿を現す───────

「…皆様。…よくおいでになりました…」

「…局長」「セリル…」「!!…こ、この人が…《力》を司どる貴族の…」「ラテリア家の血を引かれたユートピア人と【現世人】の方との間から生まれたお方と。……そういえば宜しくてよ。…ルクナ」「……本当に久しく思うございます…セリルさん」「…どうも…です……セリル…さん…」

右から、【Fukabe】【Lu-cis・H】【Lucna・B】【Wilvia】【Agartania・F】【Roar】の六人がそれぞれ挨拶を交わす。するとそれを確認したのか、【Serilous・R】(セリルゥース・ラテリア)と名乗る女性は笑みを浮かべつつ、背後に引き連れていた二人にこう返答する。

「……ふふっ。……こうしてみるとなかなかに懐かしく。……とても濃い面子が揃いましたね〜♪…お二人さん方?」

コツン……コツン

「そうでさな〜…局長。……全く、何時ぞやにもヤエカが言ってたけど、本当にわてらにも、彼に対してもホンマに容赦が無い人だわさ〜…」

「……セリル。再会を喜ぶ気持ちは分かります。…ですが今は事を急いでおり、悠長な事を言っている場合ではありませんよ…」

【Ruves】はやれやれと言わないばかりにはぐらかす素振りを見せる【Serilous・R】に対し、本題を言うように話を進めようとする。

「…承知の上ですよ、ルーヴェス。……私も《時》を司どる能力を心得ていますので時間を気にする一面は実におありです。………ルーシス。……ここ最近の【Paradiso】において、何か変化はありましたか?」

その問いに対し、【Lu-cis・H】はこう告げた───────

「【Paradiso】歴:2000年……6月20日に起こった【Dail】邸襲撃事件からかな。………まさかここに来て《時》が狂い始めて来ているとは思わなかったよ。……普段の歴史通りで行くとするのならば……本来こうあるべきであった筈だからね……」

ピラッ!!

「?……ルーシスくん。…それは何だい?」「一体何でさか〜?」

「………」

「………!ほぉ〜…これはこれは……」

ペラ…ペラ……

そこに記されていたのは、あるタイムスケジュールに添って組み込まれた計画書であった。その中の内、赤線で記されていた項目に対し、目を通す。

「………」

《【R・P】社───────騎士ギルド【Soldate】所属ユートピア人【Decall】(デカール)氏の援軍により、【Hux・row】は色欲の縄使い【Jeil】によって殺害される運命から逃れる運びとなる───────》





「……だけどね。…実際デカールは、彼を助けに行くまでに何かしらの遅延があったのか、その現場への到着が遅れて救助が出来なかったらしいんだ。……理由を聞くと、【真・ユートピア創造士隊】が思った以上に行く手を阻んできたらしくてね。……だよね?…ルビア、ルクナ?」

「そうでありますわよ〜!リーダールーシス!」

「だけど、それをセリル局長さんとフカベさん、そしてソガミさん含めた《十維新》メンバーの《七番隊隊長》【Nalsame】(ナルサメ)さんが来たおかげでどうにか道が開けたのなんのって…」

「ほ〜う、ベルカナの街に《ルサメ》が来てたのでさか〜!」

「……ではそうなると。…それまでにハクローさんを助けた方は…一体何者なのでしょうか……?」

【Agartania・F】は、事件の謎について【Lu-cis・H】に対し、彼女が持つミステリアスでヴァイオレットの中に青く輝く瞳で見つめ、アイコンタクトを行う。しかし、それに対し首を横に振る。

「…それが分からないんだ。…アガルタ。…血塗られた状態の名刀【Louvel】は刀身が折られていたと聞いているよ。…だけど、血を浴びて錆びるような事はない筈だ。……余程腕の立つ剣客によって刀身を斬り飛ばされたか…」

「……名刀【Louvel】の事をよく知る《者》が突然《ハクロー》さんという者の前に現れ。……縄で拘束されていた彼が窮地に立たされていた為…」

「咄嗟にその刀の弱点をついた……」

「!!」「!!」「!!」「!!」

「流石刀剣の本質を見抜く目を持つ方々ですね。…セリル。フカベ。……そう考えれば、《論理的》にも成立するのではと思われます。……ですよね、ルーシス?」

「…確かに。…リーネくんからも【Jeil】(ジェイル)という者の悪行について聞いているよ。…彼女自身、彼の操る縄で…余程辛い目に遭ったようだ。…無論、元【Dail】邸メイドの…僕達【R・P】社治療・救済ギルド【Grazia】に所属している【Stera】(ステラ)くんが、これまで彼らから受けてきた悪行について。…全て語ってくれたからね。……僕自身も未だに許せないよ……」

「…君の妻で、私にとっても《真友》であった…ベルナが眠る場所で奴らは拠点として活動をし。…絵に描いたように、色欲の暴挙の限りを尽くしたのだからな。……かつては花の街と言われ、華やかな花が咲き誇るロマンスな文化が栄えていた街だった筈。……それがあたかも、あのような独裁者が突如現れてしまった。……原因と《元凶》。……恐らくは……」

「……《武神》を名乗る…《厄災》」

「…ハクローさんがこう申しておりました。…【G・lrof】を《打倒》すると。………ですがそれ以外にも……重要な《何か》があるようにも思えるのです……」

【Agartania・F】は、何か心の中で違和感を感じていた。言葉にして出そうにも、それが出ない様子であった。

「……アガルタ。…その《何か》というのは一体…?」

その様子に【Serilous・R】は質問を問いかける───────

「……すみません、セリルさん。……今は何も見えて来ないのです……」

「…分かりました」

「ん〜。……?私、ここ最近起こっている事件におきまして。…少しばかり不可解な事が横行しているようにも思われますの……」

「?…どういう事なの〜?…ルビア?」

【Wilvia】は、ある一つの話題について告げた───────

「……そうですわね〜。……【Tigel】(タイゲル)さんが率いている四天王さん方の…あのように突然強化された《戦闘能力》についてでありますの。……あの方達……以前会った時に比べ。……未知の能力を身に付けてしまったのではと思いまして……」

!!

「あ〜あったあった!…今となっても謎のままよね〜!」

「……【Sognare】の世界で…起こった………夢暴走……裁判……事件……」

「……?どうした、ロア?」

【Roar】は何やら心当たりがあったのか、あるワードを呟く。

「……今から…半年前…です。お父さん。………ある日私が高熱で倒れた事。……覚えていますか…?」

「…あったね。……かなりうなされていたようだ。…確か、《悪夢裁判》…そう呟いていたかな?」

「……はい。…………知らないうちに…見た事のない…怪しい男の人に……手を引かれておりまし…た……」

「!!……」

「!!」「!!」「!!」

【Roar】はその真実をカミングアウトする。すると真っ先に口を開いたのは、【Serilous・R】であった。

「…ロアさん。…その男は紫と赤のボーダのタイツを着ており。…《道化師》……所謂ピエロのような装いをしてはおりませんでしたか?」

「!!……その通り…です!」(コクリ!)

「!?」「!?」「!?」

【Roar】は頷いた。するとそれを聞いた【Lu-cis・H】は父親として、娘の彼女の身を事を案じていたのか、優しく抱き寄せる───────

「…ロア。…すまなかったな……本当に父親としてお前を守ってあげられなくて。……嫌な夢を見させてしまったようだな……」(ギュッ)

「……仕方…ありません。……これは…【現世人】の…宿命でもあります……から。……それに。…先程セリルさんと戦われていた人と、……私くらいの女の子と……ある女性に……私は助けられましたから。……何も心配はありません……」

「…わかった。…ではセリル?…その男の正体とは一体誰なんだい?」

「……それは…」

【Drive-ra】(ドリベーラ)…そう名乗る《悪夢王》の内の一人ですよ───────

!!??

「!?ヒィッ!!」(ビクッ!!)(こ…この声……!!あ…悪……魔)

「………〜♪」

コツン……コツン……

【Serilous・R】の背後から女性の声が聞こえる。その中でも、【Lu-cis・H】【Fukabe】【Agartania・F】【Wilvia】【Sogami】といったメンバーは、顔馴染みでもあった様子である。そして彼女はまるでトラウマでもあるのか、その女性の声を聞いた途端、青ざめ、血の気を引く感覚に襲われた───────

「あ………ああ……」(ガクブル……ダラダラ……)

「…ウフフ♡」

ガシッ!!

「ああっ!!……〜!?///」

グリグリ〜♪

「誰が《悪魔》のような《年増》……ですかぁ〜!?ウフフ♪……しつこく、諄(くど)く言わせて頂きますが。……私は《三十路》ではありませんよ〜♪……その失礼振りは……何年経っても相変わらずの様ですね〜♪自称私の《跡継ぎ候補》の引・き・こ・も・り♪の女・ニ・ー・トさん♡」(ニコニコゴゴゴゴゴ………)

グリグリ〜♪

「いっ!!イダダダダダ〜〜〜!!!!!や…やはりま、マスターオーラルゥゥ〜!?…お、お願いしますからぁ〜っ!!そのプロレス技をどうかおやめにィィ〜〜〜!!!……!!お…!!お許しくださいま…!!〜〜!!」

「ウ・フ・フ♡…だ〜めで〜すね♪……今日という今日ばかりは……決して関わってはならない過去や未来の事に深く首を突っ込んでしまいましたから…………よって、ここであなたを《必殺お仕置き!!》とさせて頂きましょうか……ウフフ♡」

ムニムニ♡

「ひゃわん♡///…あぁ…♡…や…やめ……〜♡!!///」

ハァ〜〜〜ンンン♡♡

「!!お、オーラル!!」「オーラルさん…」「お…オーラルさん…///」「へ、へぇ〜……あれが…ルビアをこの世界に招いた【導き人】の……オーラルさん…ね〜……」「……そうなのですわ…///」「お〜!オーラルさん!…いやはやご無沙汰でさ〜!…ウチの鬼のように強い局長も、あのように頭も足元が及ばんくらいの《天下無双》かつ《傍若無人》振りの人だわさ〜!」(ヒョえ〜……)

果てしない戦闘能力を持つ【Serilous・R】をいとも容易く拘束した女性の正体は、【導き人】オーラルであった。彼女は華麗なプロレス技を思いっきり畳みかけ、【Serilous・R】を涙目にさせつつ、敏感な部位を完全に網羅していたのか、その部分をいやらしくボディータッチする。その度に彼女の頬は赤く染まり、遂に───────

「ああっ♡…だ…だめ…///…ハァ…♡…ハァ…♡………っ…///」

クテッ!!

絶頂に達したのか、彼女はその場で力尽きてしまい、倒れ込む───────

「きょ、局長!!」

「あら〜!こらいかんでさ〜…早いとこ社に運ぶでさよ〜副長〜」

タッタッタ……

「あ〜あ〜…こりゃあ大変だね〜…私達も行くとするよ、ルビア」

「…そ、そうでありますわね。……ではリーダールーシス。……また後程……」

タッタッタ……

「……お父さん…私は……」

「……ロア。…お前はオーラルのお気に入りだからここにいなさい。……ルーヴェス。……暫くの間席を外しておいてくれるかな?」

「いいでしょう。……では【導き人】のオーラルさん。……日々《傍観者》としてのお勤め。……誠にご苦労様です」(ぺこり!)

タッタッタ………

一同は社に入っていく。その場には【Lu-cis・H】と【Roar】【導き人】のオーラルが面と向かって話を進めていた───────

「……で、オーラル。…今回は一体何が目的で来たのかな?」

「………っ!」(ギュッ!)

「ウフフ♪…可愛いわね〜ロアさん♡……流石私達【導き人】三姉妹のオロアのモデリングになっただけの事がありますよね〜♪」(ニコニコ!)

「ッ!!」(ビクッ!!ギュッ!!)

「…オーラル。……何があってもロアは君の元には来ないよ。……さて、本題を言わせてもらうよ。……君がこの場所に来たという事は。………この【Paradiso】の《世界線》を繋ぎ止めていた《時間軸》が思った以上に狂い始め。……歪みが生じてしまっているんだね?」

「♪〜…………」

【Lu-cis・H】の問いに対し、オーラルは笑みを止め。素直に【Paradiso】真実を語った───────

「その通りです、ルーシス。……本来この【Paradiso】は、たった一つだけの《世界線》で構築される筈だったのです。……運命としても、その予言書に記している事が起こる筈でした。……しかし結果は…」

「予想にも外れくじを引いていた。…いや、《引かされていた》のかも知れない。……もしそうなるのであれば、この世界線ではハクローくんは【Dail】邸で死亡するという真実に向かってしまい。…そして抹殺者…《イレイザー》である彼が生き。……エレ姐が過ごしていた【創造派】が完全勝利した終焉の世界へと向かおうとしていた世界に突入する所だった。………オーラル…」

【Lu-cis・H】は自らの経験談があるからか、それに対し深刻そうな表情を浮かべていた。するとオーラルは安心させるように言い切った。

「ご安心を。……その時間のズレをある者が現れた為、早急に修正を施して頂いて下さりました…」

「?…ある者?」

【Lu-cis・H】はその者に対する疑問が浮上した。しかしそれをオーラルはこう言って話をはぐらかす。

「フフフ!…いずれ分かる日が来ます。…それに《彼ら》は無事である筈ですよ。……今回起こった【Sognare】事件においてもある異国の地で開廷された《悪夢裁判》…それを取り仕切っていた《悪夢王》の陰謀を。…見事《彼ら》が阻止してくれましたので……これがその記事です…」

ペラッ!!

「…【Veno・nix】。……ルーヴェスが同行させていた……先程セリルとの戦いに挑んだ男……彼は一体…?」

「ヴェノさんは今から半年前に私が招いた【現世人】の方です。…現世では【麻薬取締官】として活躍したのだそうです。……では、次のページをどうぞ開いてみてください」

ペラ……ペラ……!!

「!?…こ…これは……」

「やはりそこに目が行きましたか。…私としても……本当に懐かしく思う面々の方々ですね。……そこに写っている方は……この《世界線》で過ごされていたあなたにとってはそうですよね?…あなたが丁度、そこにいるロアさんと同じくらいの年齢であった幼き少年時代に……この二人にはべったり甘え込んでいましたよね〜♪?」(クスクス!)

「……ロー兄…!!エレ姐……ッ!」

ポタポタ………

「!!…お…お父……さん…」

【Lu-cis・H】の目からは涙が流れる。しかしすぐさま拭き取り、本題に戻る。

「…心配ないよ、ロア。……オーラル。……もしかしたらだけど。……二人が関わっているのだとすれば。………先程ルーヴェスが言っていた…【真・ユートピア創造士隊】が、完全なるユートピア人を創造しようとしている《企み》と何か密接な関係があるのかい?」

「…少なからず関わりがあるのやもしれません。……現に今から《10年以上》も前に起こった【Kagoya】での大火の事件…そして、別の地方で遠征中であったラテリア家の血を引く彼女自身が、列車内で突如起きた大震災による被害を受けられ、その際に【Paradiso】の世界では《再帰不能》の重傷を負われてしまった為。……延命の為にとすぐさま私が急遽この世界へと飛ばしましたので……」

「……何が目的なんだい?」

「……彼女があなたと同じく貴族の宿命を背負う者だから。……そして彼女自身の力を重んじる【R】(ラテリア)家の血を引く者として《知る者》は、その時を狙い、力欲しさに彼女の身体を狙っていたといった所でしょう。……ですが、そのような都合の良い方向の未来には進ませません。…それに、彼女には私自身義理がありますから。……彼が創設した【狼志組】の功績を汚すような真似はしたくありませんので……」

「!!……そうか」

【Lu-cis・H】の脳裏には、見た目は三本足がある鴉で、人を導く伝説を残し、現世でも持て囃されている伝説上の鳥【八咫烏】をモチーフにした一人の男を連想した。【Lu-cis・H】は一度その話題を遮り、【Serilous・R】の生活面について述べる───────

「彼女は。……この世界の中で過ごしていて、暇にはならないのだろうか?」

「ご安心を…ウフフ♪…どうやら、その記事に書かれていた方と戦い。……何やら彼女自身、ある楽しみが思い浮かんだかのように思われますよ〜♪」

「?…それは一体?」

……見ていられなかったのか、ソガミとルーヴェスくんが彼を止めに入ったようだがね…

コツンコツン……

「…あ、フカベくん。…セリルはもう大丈夫なのかい?」

現れたのは【狼志組】副長の【Fukabe】であった。彼は【Lu-cis・H】とオーラルに対し、律儀にもこう言った。

「問題ない。…ですが、オーラルさん。……もう少しソフトにお願いしますね……」(アセアセ……)

「あらぁ〜御免なさいね〜♪フフフ♪…久しぶりの客人が出向いてきたからか、自らの実力に酔ってしまい…一人のダンディーな【現世人】の方をイキってコテンパンにしていた彼女を少しばかり懲らしめてあの豊満なバストを搾り上げ……そのまま鮑の形をした下の唇を触〜♪………!!ゲフンオッホン!!///……スキンシップがしたくなりまして〜♪」

「「……」」(さっき懲らしめて女性のアレを絞り上げると言わなかったか?(かな?))

「言っておりませんよ♪」

「………」(ジィーー……)

「………」(ジィーー……)

「あ。…///…二人してそんなに見つめないでください…///あまりにも二人が美男子過ぎて私、照れてしまいます…///」(嘘ノテレテレ〜///)

「………」(彼女、相変わらずのようだね、…フカベくん)

「………」(彼女、相変わらずのようだな、…ルーシス君…)

二人は視線を合わせて頭を抱え込む。二人は昔から【導き人】の彼女とも交流があるようだ。するとオーラルはその様子に咳払いをしてこう呟く。

「ゴホン!!///……ですが、この世界に入ったのは、少しばかり迂闊だったのやもしれませんよ。……お二人共」

「?」

「それはどういう事なんだい?」

「…それもいずれ解ります。……現世でもあるSF映画にあったように。……《未来を知るという事は、いい事は何一つなし。》……そういう事です。……無論それはルーシス。…あなたが一番心得ている事でしょう?」

「!?」

「ルーシスくん?」

「…お父…さん…?」

オーラルの発言に【Lucis・H】は思い当たる節があるのか、目を見開く。

「……現に。…未来を知り過ぎているのだとしたならば、彼女…エレノアさんが経験し、暫くの間過ごしていたあの《世界線》。……現在進行形で【真・ユートピア創造士隊】が今から10年前からも…そして現在にわたって催しているあの闇深き《人体解剖展示会》………その派生から出来た、あの《産物》の技術は、この世界線では今の所生み出せてはおりません。………《道具は使い様》という言葉があるように。……まあ、あの努力を怠った救済者の皮を被った《大罪人》の偽善者方からするのであれば。……《馬鹿と鋏は使いよう》と。……残念ながらそう言うのでしょうね……」

「…………」

オーラルは何やら意味深のある言葉を告げた。すると少しばかり微笑みを浮かべ、社の方へ視線を向ける───────

「……ウフフ♪…それに。…なんとも面白い方ですよね〜♪ヴェノさん(【Veno・nix】)というダンディーさんは…♪」

「?」

「どういう事ですか?…オーラルさん?」

「……ウフフ♪」

コツンコツン……

「あぁ〜…副長。……大変な事が起こったでさ〜」

「?ソガミくん?」

「?…どうしたのだ、ソガミ?」

【狼志組】一番隊隊長【Sogami】は【Fukabe】に対し、こう伝える───────

「……どうやらでさ。……《摩訶不思議》にもヴェノさんが《神隠し》に遭ってしまったんか。……姿が消えてしまったようでさ〜……」

「…!?」

「…!?」

な、ナンダッテ───────!!!!!

「ウフフ!…あの人はまるで、この世界にある永遠の苦しみを与える夢を見させる【悔夢】(カイム)に因むとするのであれば…現世にある奇妙な漫画にも記述がある……《因果応報》として様々な死を迎える世界を巡り、これまでの裁きが見事下され。…その繰り返しループを繰り返す。…言わば《輪廻転生》を繰り返してきたというのならば。……今度は彼自身が一体、どのような《断罪の時間》が訪れるのでしょうかね〜?♪」




・・・
・・







🎼Back Ground Music 》》》



♪〜東山奈央より・灯火のまにまに

・・・

〜♪

ヒラヒラ〜……

「…?…!?今度は……何だ!?」

【Veno・nix】は目を覚ました。そこは桜と紅葉が散りゆく空間にいた───────

ヒラヒラ〜

「……確かあの時…ローレンスと別れて……そして現実に戻ったはずだ。…これは思った以上に俺自身の夢は長いようだな……果てしなく社の橋が続いている。……ソガミが率いているセリルという名の【狼志組】局長がいる【水門波紋境界】と似ている風景であるが……まるで違う……」

再び目覚めた彼が辿り着いたのは、《春秋》とも呼べる摩訶不思議な空間であり、朱色の社の空間に灯籠が一定に並び、灯火がゆらゆらと照らしている空間であった。その様は彼自身、《神隠し》に遭遇したというかのように少しばかり、戸惑いを見せていた様子である。

ユラユラ〜

「春に咲く桜…その隣には秋に見る紅葉の景色。……今度は一体俺に何の《罪と罰》…断罪を与えようとしているんだ?」

ヒラヒラ〜…

フワァ〜……

「?…!?」

《ニコッ!!》

「!?…あ…!!天野!?」

桜と紅葉が散りゆく《幻想郷》とも呼べる場所に【Veno・nix】が立ち尽くしていた時、目の前には何やら発光体が現れる。そして少しずつその原型が顕となった。その発光体は人型へと姿を変え、シルエットへと変貌する。その者は、【Veno・nix】の現世での時代《霧矢豹策》として過ごしていた時、クラスメイトでありかけがえのない女性───────友人であった《天野》であった。彼女は言葉を発しないが、空中浮遊しており、少しずつ後ずさっていく。

《ニコッ!》

シュ〜ン……

「!?…っ!!」

タッタッタ!!

【Veno・nix】は追いかける。ただひたすら彼女の後をついていく。

タッタッタ!!!

ーキィーーン!!!!ー

「…!?」(ひ、光!?_)

【Veno・nix】は目の前に現れた光の壁に身を捧げた。そこには現世での記憶が流れ込む───────





〜ある記憶・桜の花びらが落ちていく春真っ只中の季節〜

ヒラヒラ〜!

『!?…ここは。…あいつら…新聞部と一緒に訪れた…夏祭りの広場か。……桜が……咲いている……』

ヒラヒラ〜!

コツン…コツン…

『おぉ〜い!豹♪』

『!!…天野なのか!?』

『?…そうだよ〜?…って、一体どうしたの!?…頭とか打ったの!?もしかして今年受験だから、勉強のし過ぎで頭とかおかしくなったの〜!?』

ピトッ!

『!!……別に。…なんでも…ない…』(今年…受験…!?高校三年生という事なのか!?)

『ふぅ〜ん。……でも変なの〜♪アハハ!!』

『………』(これは……記憶…なのか?…しかし、このような記憶には覚えがない。…それに季節的にも。……天野は今…あそこにいるはずだ!)

『んも〜!///まただんまりぃ〜!?…ほらほら、アハハ♪…桜がこんなに綺麗だよ〜!』

ヒラヒラ〜

『そうだな。……だが、あまりはしゃぐな、天野。…いい歳した高校三年生なんだろ?』

『むぅ〜!!///別にいいじゃん!!///今くらいだよ!…もう私達、今年で受験じゃん!!///』

『……まあ、そうだな。……ここまで桜が咲いていて。…春だな…』

ヒラヒラ〜!

『そうだね〜♪』

『おお〜い!天野!』

『天野!』

『天野さん!』

『!?』(し……新聞部!?)

タッタッタ…

『?……ねえ、天野。…一体誰と話していたの?』

『…!?』

『んん〜?……誰もいないわよね?…幽霊でも見えてるのかしら〜?』

『?…どこかにいるのかい?』

『……霧矢だ』

『?…何か聞こえた?』

『いや。……全然』

『ねえねえ、天野……一体誰と話していたの?』

『!?』(聞こえていない…いや、あいつらの反応は、間違いなく俺の声が聞こえている反応をしている!…天野…)

『………なんでもない。……さっ!!集まった事だし、花見しようよ!!』

コツン……コツン

『!?』

バッ!!

スッ!!

『!?』(す、すり……抜けた)

『…………』

コツン…コツン…コツン……

『!?……あ、天野…!!天野ぁっ!!!』

ヒィーーン!!!!

『!?』(ま、また……か……!!)





〜紅葉が落ちゆく秋の季節〜

『!?……今度は…紅葉…か』

タッタッタ!

『おぉ〜い!豹♪』

『……天野…』

『んん〜?…な〜に?』

『………お前は。……本当に俺の知る天野なのか?』

『ええっ!?…一体何言ってるの豹!?…だって私達、もうすぐセンター試験を受ける時期が近いからこうして公園で一緒に……』

『もう、この光に彩られ、灯されている桜や紅葉に魅せているまやかし……《妖》に騙されるのはごめんだ……』

タッタッタ!

『!?…ひょ、豹!?_』

タッタッタ……

『豹!!待って!待ってよ!!私を一人にしないでよ!!///…私達、付き合っているんでしょ!?///』

『天野。………俺はいつまでも都合の良い《幻想》に浸っている場合ではないんだ。……俺は俺の事を知ろうとせず、真実をうやむやにして楽に生きようとするのは。……もうごめんだ。……いつも言っているだろ…』

ポロポロ……

『……!?』

《俺は俺を騙す事なく生きると。……俺は道を選ぶ事が出来たんだ。……掛け替えのない出会いと、この瞳(ひとみ)に宿す意志の力というのをな………》

ニカッ!

ヒィーーン!!!!





〜元の世界〜

「!?……はぁ…はぁ…一体……なんだったんだ!?」

【Veno・nix】は何かの妖(あやかし)による幻想を見せられていたのか、自分の都合の良い夢の世界に浸り、真実へ向かう意志を遠ざけられる感覚に襲われた。しかし彼は、この【Paradiso】で築き上げてきた者達との新たな絆とも言える《契りの関係》からか、彼には既に紡いできた掛け替えのない苦楽の経験を元に、真実を見通す力とそれに向き合う覚悟があった。その意志をしかと受け取ったと言わんばかりに、暫くすると目の前には桜と紅葉が散り、両端には灯籠が並び、燈(ともしび)が続く境内が再び姿を現す───────

「?…何だ…これは……」

【Veno・nix】の前には一つの酒瓶が置かれていた。酒のラベルには《春秋妖》(しゅんしゅうあやかし)と書かれており、その隣には猪口があり、彼自身は目の前にいる女性に向かって意図を聞く。

「…飲めと言っているのか?」

《コクッ!!》

「………」

カチャッ……

トクトク……

【Veno・nix】は酒瓶の中身の液体を猪口に注ぐ───────

「………頂きます」

ゴクゴク………

「!?…ッッ!!!」

ガチャーーン!!!!!

【Veno・nix】は注いだ酒を猪口一杯分を口に含む。すると忽ち顔色を悪くし、まるで毒を盛られたかのような感覚に襲われる───────

「ぐっ!!………ッ!!」

ググッ!!!!

《…………》

「!!……ッ!!」

【Veno・nix】は目の前にいる天野の姿をした女性が、『安心してください。これは毒ではありませんので、どうか吐かないでほしい。これはあなたが向き合わないといけない《苦》でもあり、《罪と罰》なのです』と言わないばかりの表情をしていた。その相手の意図を理解したのか、この拷問とも言える所業に彼はじっと耐える───────

グググッ………!!

「!!……ッ!!」(思った以上の…苦痛だ……だが…この程度のものは…散ってしまった…アイツらに比べれば……!!)

キィーーーン……

「!?」(な、何だ!?)

【Veno・nix】の脳内に、誰かの記憶のビジョンが映し出された。







そして彼は再び【Paradiso】の世界に住むある住人の《追憶》に誘われる───────










🎼Back Ground Music 》》》



♪〜大逆転裁判より・越えた論理

〜ある誰かの記憶〜

『…【Kunizu】(クニズ)検屍官。……もうすぐで医学教授への昇進が近いですね!…本当にご苦労様です!!』

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

『…別に大したことではないよ。……本当に』

タッタッタ……

『相変わらずクールですよね〜!クニズさん!』

『ああ!…【現世人】で、まさかここまでの偉業を達成した医者は、最近《天才外科医》として戦地で数々の患者を救った【Yakubisi】(ヤクビシ)さんに匹敵する程、そういないだろうからね〜!』

『だよな〜!それに比べて。……アイツは……』

『確か【Fictus】(フィクツス)だったか?』

『最初はエリート医師だと聞いてたけど、結局中身は現世でいう野菜の《ピーマン》みたいに空洞……』

『期待外れもいいとこだろうぜ〜!』

ギャハハハハハ!!!!

『………!!』

タッタッタ………

ダァン!!

『…あの肥溜め共…!!……何が権威だ…【現世人】風情がこの麻呂の事を邪険にしよって!!………今に見ているがいいでおじゃる!!』

タッタッタ……





〜後日〜

『!?』

『な、何だって……!?【Kunizu】さんが不祥事を起こした…だと……!?』

『書類送検!?………容疑は……』

『検屍中、不手際を起こし誤って遺体解剖のカルテデータを改竄…それによる不正行為と、これまでの経緯は全て詐称であって…偽装工作の大罪を犯した…だって……』

ざわ……ざわ……

『……ほ〜ほほ♪』

・・・

ペラ…ペラ…

『…これは。…うむ!【Fictus】氏…!!今回の貴公のレポート、大変興味深い!!…いやはや感服した!!』

『ほ〜ほほ♪!ありがたや〜教授!…まあ麻呂にかかればこのようなもの……』

バターーン!!!

チャキッ!! チャキッ!!

『………』

『!?な、何でおじゃるか!?』

『検事局の者だ!!…貴様が【Fictus】(フィクトゥス)氏で間違いないようだな!?……先程の発言は聞かせてもらった!【現世人】【Kunizu】氏に対するありもしない自らが犯した罪を全てでっち上げ。……捏造し、そして問題のレポートの内容……この目でも見させてもらった!!』

ペラッ!!

『!?……な…』

コツン……コツン

『………』

『きょ、教授!!これは…そのでごじゃ……』

『……去れ。この文面の文章を見てやはりそうだったか。…どうやら一芝居打って正解だったようだ。…真実がわかった以上…この法医学に節穴とぬかりを持つ《間抜け》が見つかった以上。……置いとけはせんっ!!』

『!?…なぁっ!?きょ、教授!!ま、まさか図ったというのでおじゃるか……!!』

ガシャッ!!

『!?』

『詳しくは取り調べ室内部でじっくり話を聞かせてもらおうか?…この《虚飾》に彩られ…薄汚れた大罪人が!!!!』

『!?…ち、違うでごじゃる!!麻呂は確かに医学に力を入れておる名家の出であるからして……』

バターーン!!!

『……ハァ〜。……もういいぞ。…クニズ(【Kunizu】)くん』

ガチャっ!…タッタッタ……

『【Sekimi】(セキミ)さん。…この度は協力、感謝します。…おかげさまでこの法医学を専攻する者の中に潜んでいた寄生虫……卑劣者を一人、見つける事が出来ました…』

『ああ構わんよ。……私自身にも因縁があるからね。…あの大火の後に水害が起こり。……その時にまさか、偶然にも起こってしまった《大震災》から一年……災害で兄を失ってしまった君は…それにもめげず、見事逆境に打ち勝ったのだな……』

『…………』

『……だが君はこれから《検屍官》として今後の活躍に……』

ペラッ!!

《辞退届》

『!?…く、クニズくん!?』

『……』

『…一体どういう事なのだ!?』

『そのままの通りです。……私は今日限りで《検屍官》を辞め……災害で亡くなったのではなく、私の兄さん…【Kawara】(カワラ)を殺めた真犯人を追う為…現世では名家《亞宗儀(あしゅうぎ)家》の家庭で育った私達兄弟………兄」《亞宗儀 陛太(あしゅうぎ へいた)》の弟《亞宗儀 奏既知(あしゅうぎ そうきち)》の誇りの為にも…必ず……』

『!!……ま、待て!!』

『以上です。……では、失礼しました』

ガチャっ!…バタン!!

『!!………ッ!…何という事だ……カワラ君。……すまない。……どうやら私も失敗してしまったようだ。……彼自身も君のような深い《闇》へと身を投じる結果となってしまった。…決して《暗部》には関わらせてはいけない…そう君が言っていたのにだ。…………【Kokyou】(コキョウ)……我が妻【Nepharl】(ネファール)……お前達は今…どこにいるのだ?』

・・・

バァン!!!

『………失踪…した……だと?……!!バカな…!!クニズくん………っ!!!』

バサァッ!!!

『ハァ………ハァ………まさか……その真実の目で見通し……触れてしまったというのか。………《暗部》へと。………残るは…ヤクビシ【Yakubisi】……私の元弟子ではあるが。……お前は無事に生き延びれたのか?……奴らから?……………』

ペラッ!!

ザザ………!!ザザーーーーッ!!!!

《ヒィーーン!!!!!》










🎼Back Ground Music 》》》



♪〜絢香より・Hello Again〜昔からある場所〜

「!!」

ガバッ!!

「………今の記憶は………【Sekimi】(セキミ)?…誰だ?…だが…あの写真に写っていた【Yakubisi】と言っていた男は……【Oya】(オヤ)……」

【Veno・nix】は目を覚ます。そして先程【Sekimi】(セキミ)と名乗る者の事を、目の前にいる女性に問いかける。

「…《罪と罰》に向き合おうとするのなら。…先程見せたあの《セキミ》という男に会いに言って話をしろとでも言うのか?」

『………』(フルフル…)

『?……違うのか?』

『………』(…ニコニコ)

ポロポロ…

「!?……天野……お前………」

『………〜♪』(コクッ!)

彼女はどうやらその必要はなく、その人物は《灯台下暗し》からなのか、現実世界の自分の側にいるのだと訴えかける。彼女はそう意志表示し、嬉し涙を流して表現する───────

「…そういうことか。……俺は今どうしているんだ?」

『………』(ピトっ!!)

「……?…目?…俺の目……」

『………』(しゅん………)

女性は、【Veno・nix】の瞳を見て、何かしらの事情を察したのか、残念そうな表情を浮かべる。しかし彼女は再び瞳に涙を零し、笑顔の表情を浮かべたまま、周囲から光が差し込む───────

ヒィーーン………

「!?…ひ、光が……」

『…〜♪』(ニコッ!)

「い、行くな天野!!………天野……」(ポロっ!)

『〜♪』(フリフリ!)

【Veno・nix】の瞳から、再び涙が流れ出す。涙を流しながら薄れゆく彼女は決して一言も言葉を交わす事がなかった。しかし彼女からは、『あなたには記憶に残る大切な人達がいる筈です。……現世で過ごしていたこの姿をした友人の女性とその方の友人。……そして、この【Paradiso】の世界を訪れて出会った者、別の世界から訪れた住人から……生きる事の大切な意味を……誰かを失った別れの痛みをあなたは心の中で直に感じ取る事が出来ているのです。…………彼らとの思い出を忘れないようにしなさい。……そうすれば、あなた自身の記憶の中で《軌跡》として生き続ける事が出来るのですから。……どうかそれを忘れないで』そう伝えるかのように彼女は微笑み、姿を消して【Veno・nix】を温かく見送った───────

ポロポロ………

シュン!

「……俺はまた言えなかったようだな、天野。…お前に。……《ありがとう…》という言葉を。………できれば…許してほしい……あの時の返事を返せなくて……本当に……」

サラサラ…………

まやかしに包まれた世界は解かれ、目の前に広がるのは、夜空に月明かりが指し示す晴明(せいめい)な風景が広がっている。

ザッザッザ………

「……行ってくる。……俺はもう迷わんよ。…天野。…現実世界の俺が一体、どんな状態になっているのか。……俺は受け止める。……これが俺に課せられた《罪と罰》だと言うのなら、素直に……潔く……俺達の《契り》を交わし……前へとな」

タッタッタ………

ヒィーーン………

【Veno・nix】は光の中へと入る。それは、現実世界の帰路であった───────

しかし、彼自身は目覚めた自分が一体どのような状況になっているのか、まだ知る由もない状態であった───────

言葉を発しなかった彼女と別れた後の彼の瞳は、涙の跡が切なく残り、涙は雨のように零れ落ち、現世で彼女の事を守ってあげられなかった、そして別れ際に彼女に言えなかった《好意の言葉》───────

その事が心労となって心に痛みを抱え持ち、別れと共に去っていってしまった者達は、自分だけをこの世界に残し、再び孤独に苛まれる───────

それでも彼は一歩、再び一歩と、失っていった者達が最期に残したメッセージを思い返しながらその意志を受け継ぎ、真実を暴こうと《麻薬取締官》としての執念さをも見せつける───────

この行動が、《パンドラの匣(はこ)》を開けた為に現れる《厄災》を呼び込もうとも、彼自身はその真実から逃げようとするそぶりは決して見せなかった───────

何故ならば彼自身には、【Paradiso】の世界で出会った掛け替えのない仲間【Nelson】【Eimi】の二人の強い意志が、彼の心の中で影響していたからだ───────

その二人から彼は人として当たり前のように過ごしていく人生を《心から愛する》という人情の意志を贈ってくれたのだから───────

心を開くきっかけをくれたのも、奇妙な出会いであるが、遥か古来から【Paradiso】の世界で生きていたユートピア人の祖先と呼べる存在【Lawrence】(ローレンス)、他の異世界から訪れた使者《女皇帝》の異名を持つ初老の姿をした気高き女性【Edith】(エディス)から彼は再び歩む勇気をくれた───────

今一度───────

彼は雨の中を歩む度、地面に黒ずみ、濁った水溜まりが煌びやかな真実の姿を目眩しにして有耶無耶にする《深淵》───────

その真実を解き明かそうと、今宵再び《黒豹》は歩き出す───────

そしてその表側には、《白狼》の異名を持つ者が大切な人を守ろうと奮闘しようと歩みを始める───────

互いに《0》からの始点へ───────そして《1》へと向かう道筋を作る為に───────



















 
 
《To Be Continued…→》  
 
 
 

 
 
 


第14.5話掃除屋兼便利屋ギルド【Hopera】維新事変勃発間近───────悲しき戦い───────終焉を呼ぶ【Demister】6幹部集結───────
《完読クリア!!》



次の話へ進みますか?

A. はい 
B. いいえ