GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》


A.:GiorGia


第二章:ダブルフェイス〜黒豹と法と秩序の契り〜


第11話:【Relvio】の町での抗争・船旅と蒼夜の世界



【Veno・nix】と【R・P】社【Agente】所属の【Beanne】・【Eimi】という現世人の女性は【Olfes】へと向かうために、【Aven】山脈を超え、目的地である【Relvio】(レルビオ)を目指していた。そこに新たな刺客が現れ、包囲網を突破しひたすらと歩みを続けていく──────




《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



Keeping looking for a better way to live is to live the best life.
(よりよく生きる道を探し続けることが、最高の人生を生きることだ。)

No one is really a bad guy.
(何人も本意から悪人たるものなし。)

Socrates
(ソクラテス)



・・・
・・



〜【Paradiso】歴1999年12/24日…E島・【Relvio】(レルビオ)夕方〜

メイン・テーマ 「PSYCHO-PASS 3」〜♪

3人は【Aven】山脈を降りては目的地であるE島・【Relvio】の街にたどり着いた。しかし、街中はとても穏便ではなかった様子であった。

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「やっと着いた…だが…これは…」

「…!!ひ、…酷い…これは…一体…」

「…まさかこの町に進軍を開始していたとはね…【Varisk】の連中…やってくれたわね…」

一同は目的地の【Relvio】(レルビオ)に辿り着いた。しかし、そこはすでに戦場と化しており、憲兵隊や兵士が次々とユートピア創造士隊の襲撃によって打ちのめされていたようであった。

ダダダダダダン!!!!

「ヒャッハ〜!!」「撃ち殺されてェのか〜?…ああん?」「…ここは、俺達の狩場だぜぇ〜!!!」「…おんや〜?」

「うわぁ〜〜〜ンンン!!!お母さ〜ん!」

「おぉ〜ヒャハハは!!!!」「子供一人みぃつけた♪!!」「売って金になるぜ〜ひゃっほ〜い♪」

「!!…」

「酷い…そんな…」

敵は、町の子供を見かけては、拉致をして富を築こうとしていた。その目論見に気づいたのか、【Veno・nix】はすぐさま行動に移った。

「………」

シャッ!!

「!!ちょ、ちょっとヴェノくん!?」

「ヴェノおじ様!?」

【Veno・nix】は町の様子を見ていても立っていられなかった為、自らの意志で少女を守るように敵の前に姿を現す。

ザザッ……

「!!…なんだ〜?…おっさん!」

「俺たちと遊ぼうってのか〜!?」

「ヒャハハ!!そこのガキを渡せ!…渡せないのなら…趣味の悪い芸術品のように標本にして、血祭りに上げてやんよぉ〜♪」

「……黙れ。…下がっていろ…危ないからそこにいるレディー達と一緒に避難しておけ…」

「!!…うん!…ありがとうおじさん!」(フリフリ!)

ピューーー!!!

「…もう安心だよ〜♪」

「…ヴェノおじ様…どうか…無事に…」

「やっちまえ〜!!!!」

ワーッ! ワーッ! ワーッ!

「…ウリィヤァァァッ!!!」

バキッ! ドコッ!! バギャッ!!!

「うぎゃ〜!!」「グほっ!!!」「げ、げふっ!!!…や、やってくれるじゃねえか」

「……」(ブンブンブン!)

チャキッ!!!

「!!」「!!」「!!」

「どうした?…威勢がいいのは最初だけか?…ただの張りぼての腰抜け連中なのか?…貴様らは?」

【Veno・nix】は相手を挑発する。その発言に痺れを切らした【Varisk】が仕替えていた下っ端連中は一斉にかかってくる勢いで立ち向かう。

「野郎ぶっ殺してやらぁ〜!!」「コマンドのようにだ!!!」「全速全身だっ!!!」

ダダダダダ!!!!

「…」(チャキッ!!)

ドコッ! ベキッ!! バキャァーーン!!!!

「ぐぁ…」「…な、何だと…」「クソガァ…!!」

バタバタ…バタン…

「…子供を連れて…さっさといくぞ。…ベア…エイミ…」

「うん♪…ヴェノくんつよ〜い♪」(ニカニカ〜!)

「はい!ヴェノおじ様〜♡」(うっとり〜♡)

「黒豹みたいなおじさんかっこいい〜!」(キラキラ!)

「…豹という名はついていたが…黒豹ではない…」(しれっ!)

タッタッタ…

一同は道を突き進んでいく。するとそこから大きな襲撃に見舞われる。

ダァーーン!!…ダァーーン!!!!

「…!!…爆破か…!?」

「ありゃりゃ〜!…こりゃあ過激になってきたね〜!」(ルンル〜ン♪)

「ああ…どうしましょうどうしましょう〜!」(アタフタ!)

「お姉ちゃん〜こわぁいよ〜!」(ぴえん!)

ガラガラ…ダァーーン!!!!

「!!!下がれエイミ!!!」

「キャッ!!…!!ゔ、ヴェノおじ様…!!あぁっ!!べ、ベアさんが…!!」

「…ベア!…無事か!?」

「ゲホっゲホっ!…まぁね〜!…でも、そうでもないみたいなんだよね〜♪」

「!!…え…」

「…そういうことか…」

突如壁が欠落しては、【Veno・nix】は迅速に行動して二人を庇った。結果的に【Eimi】と、救助した少女は助かったが、【Beanne】だけはその場に取り残され、敵との戦闘に遭遇していたようであった。彼女は壁越しで笑うかのように元気よくこう宣言した

「私のことは気にしないで〜!…そろそろこの町の地区にある港に、避難用の船があるからそこに向かって!」

「そ、そんなベアさん!…!!…ヴェノおじ様…?」

「ここはベアに任せてやれ。…ベア…頼めるか?」

「うん♪…その小さい女の子を頼んだよ!…じゃあまた会おうね…ヴェノくん…エイミちゃん…ちゃんと笑顔で元気に生きるんだよ〜♡」

「…いくぞ!」

「…ベアさん…どうかご無事で…行きましょう。…立ち止まるわけには行きません!」

「…お姉ちゃん…!!…うん!」 

タッタッタ…

一同は一目散に道を駆けていく。すると、港が見えてきたようである。

「…あそこか?」

「着きました!……あなたのお母さんがいるといいですね…」

「…うん。」

そこまでにしておくといい。

「!!…エイミ。…お前達は先に船に向かって乗っていろ。…どうやら敵が来たようだ。」

「!!…ええっ!?」

「豹のおじさん!?」

「……」(チャキン!!)

スタッ!タッタッタ…

「…よくぞ、私の爆撃から逃れたようだ…褒めてやろうか…」

「…何者だ?…爆弾魔の者か?」

【Veno・nix】は相手を睨みつける。そこには片手に器用にも爆弾を宙に浮かせては取るを繰り返した20代後半のキノコ頭の男が現れた。

「…私は【Muu】(ムウ)。…現世人で【Fiducia】の能力は触れた物質を爆弾に変える能力を持っているのだ。…例えばこんな風に…」(ピトッ!)

ダァーーン!!!!

「!!」

「キャァ〜!!!」

「うわぁーー!!!」

【Muu】と名乗る男は、道端に堕ちていた落ち葉に足を添えては爆発させる。そして話を続ける。

「…私に課せられたのは…【Varisk】の中でも、殺戮を専門とする部隊から、この町の殺戮に参加し…町のユートピア人を収容しては、かつての【創造派】の至高の目標とした、完全なる管理社会の実現の為に派遣され、最近出来た現世でいうパノプティコン…全展望監視システムをモットーに、ユートピア人専用の隔離施設に身を投じさせ…安心かつ豊かな生活を実現し、我々の理想に対し、反抗する現世人全てを処分し、始末するためにやってきたのだよ。」

「…お前も…現世人のはずだが…その話を聞く限り…お前もその処分される側の立場ではないのか?」

「…ご安心を…私は既にユートピア創造士隊主力の惨殺部隊…【Varisk】に忠誠を誓い、実力も認められています。だから利用価値があるからなのか、こうして生かしておいてくれているのだよ。…そう…そこにいる【Eimi】のことをこよなく愛する…【Jeil】と同じく…ね…さぁ〜!【Eimi】!!…愛しの【Jeil】があなたを探しておりましたよ…共に参りましょう!!…それとも〜…貴女…いや、貴方の秘密を、ここで教えて差し上げてもよろしいのですよ!!!」

「!!ッ!!…いやっ!!やめてくださいっ!!!…それだけはぁ!!…ああぁ〜はぁああ!!!!!」(ゾクッ!ビクビク…ポロポロ…)

「!…お、おねえちゃん…!!…黒豹のおじさん!?」

【Eimi】はひどく泣き、怯えていた様子であった。すると、【Veno・ nix】は前に立ちはだかっては、その表情には計り知れぬ怒りをあらわにしていた。そしてすかさず相手に対し、こう語りかけた。

「…お前…現世で犯罪に手を染めたことは?」

「…ふふふ。…私もあの頃若かったからか、何度もあったかもしれないですなぁ〜!…あの当時、リストラにあって底辺な暮らしをして、社会に対する恨みが込み上げてきたからか、憂さ晴らしがてらに、このような爆弾を作って、銀行や…様々なものに着火して…!!」

べキィーー!!!!

「…ぐぁはぁーー!!!!」

ドォゴーーンン!!!!ザズザズ………

「!!ヴェノおじ様!?」

「お、おじさん!!」

「………」

【Veno・nix】は相手に対し、強い蹴りを放った。すかさず男は吹き飛ばされ、顔から地面を摩擦しては火花が散る。それでも男は立ち上がり、【Veno・nix】を睨みつける。

「…き、貴様ぁ!!!…この私に…顔に泥をーーー!!…!?」

ザワァ〜〜〜…

「…もういい。…もう喋るな犯罪者。……下衆なお前を……この場で…容赦無く地獄に送ってやる!…エイミ!!!…早くその子を連れて船に行けと言ったはずだ!!…ぐずぐずするなぁっ!!!!」(ギラァッ!!!!)

「!!…ヴェノ…おじ…様…は、はい!!…行きましょう!!」

「黒豹の…お、おじさん……」(ブルブル…)

タッタッタ…

「……」(…行ったか…)

「……よそ見をしてていいのでしょうか?…あの船に爆弾を仕掛けているという考えはないのですか?」

「…もしそうなら、あそこにいる者達を根こそぎ爆破とも言いたげのようだ…安心しろ…そのような大惨事になる前に…お前を…ここで…」

ドドドドドドド……!!

「………!!」(い、一体なんなんだ…さっきから、この男から感じる…この妙なおぞましい胸騒ぎは…!?)

「刈り取るまでだゾォォォッ〜〜!!!!」(チャカッ!!)

「!!…くっ!!かかりましたね!…フフフ…」

タッタッタッカチッ!!

「…!!」

ダァーーーン!!!!

「!!…ヴェノおじ様!!」

「黒豹のおじさぁ〜〜ん!!!」

【Veno・nix】は地面に仕掛けられていた地雷の爆弾を踏んでは爆破に巻き込まれた。【Muu】はその様子を見て勝ち誇ったかのように笑みを浮かべる。

「…ぷ〜くくく!地雷に踏んで昇華するとは、実にシュール!…あっけないようですね〜!!」

「…本当だな…」(ヌッ!)

「!!…なぁっ!?…いつの間に…私の背後を…!!」

ばきゃーーーーーん!!!!!

「…ぐぁっ!?…まさか貴様の能力は…ある現世の奇妙な漫画に出てきた…私が触れたものを爆弾に変える能力であるとするならば…麻薬を蒔いていた…ギャングのボスと…同じ…能力だとぉおおお!?…ハッ…ま、まずい!!あの場所は〜〜〜!!??」

キィーーン!!!…ダァーーーーン!!! ガシャァーーーン!!!!!

「……勝ち誇ったお前に見えていた未来の先には、…お前自身の作り出した爆弾に招かれて心中し…結果的にその過程の中には死しかないことにな…それに俺は麻薬を撒くものではない。…お前の犯した罪と同じように…刈り取るものだ!!!!」

【Veno・nix】ランクE
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ーー
数秒間の時間を予知しました。

「…ヴェ…ヴェノおじ様〜〜!!!」(パァーー!!!)

「…黒豹のお兄さんすごぉーーーいいい!!!」(キャッキャッ!!)

「…黒豹ではない。…俺は豹さ…いや、もうその名前は名乗ってはいけなかったんだな…俺は…」

《ヴェノ・ニクスだ…》

プワーーーン!!!!

『ただいまより船が出港しま〜す!行き先はG島の【Olfes】行きで〜す!!』

・・・

その頃・【Beanne】

「…無事に出港したようだね。…ヴェノくん!エイミちゃん!…また会おうね!…特にヴェノくんは〜♪今度会う時は、明るい姿を見せてくれたらベアお姉さんは嬉しいんだぞ〜♡…さぁ〜てと…」

チャキッ! チャキッ! チャキッ!

「ヒャハハ!!」「覚悟するんだな〜!!!」「金髪姉ちゃんよぉ〜!!!」

「……ふふ〜ん♪」(チャキッ!)

【Beanne】は銃剣【Arbitro】に祈りを捧げるかのように銃剣の頭身に額をつけて、恩人に対し、労いの言葉をかける。

「……」(ベルナ姐さん…どうか見ていてね。…私は、こんな場所で死んだりはしない!…姐さんの仇を討つまでは絶対にね…必ず見つけ出して…裁いてあげるわ……罪深き殺し屋…)

《【G・lrof】!!!!!》

チャキン!!!

「なぁ〜にかっこつけてんだぁ〜!?」「…ん?…白い銃剣に…オレンジががった金髪の…髪の毛…!!」「お、おいあれってま、まさか…!?」

「…いっくよ〜!ここから神羅万象の少女伝説!!【R・P社】【Agente】所属!!【Beanne】の襲撃だよ〜!!!ではでは〜景気付けに〜♪!!」

突撃Fire〜!!! ダァーーン!!! ギャァーーーー!!!!! お、お助けぇーーーー!!!!!!

【Beanne】は【Veno・nix】と【Eimi】の船旅を祈るかのように相手に迫り、攻撃を加えていく。そしてここからいよいよ【Veno・nix】自身の罪と罰ーー命の在り方、人の生きる意味についての運命を知る一つのきっかけの出来事が刻一刻と時を刻んで迫っていたーーーー

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》

 

〜【Paradiso】歴1999年12/24日・E島・【Relvio】(レルビオ)沖の海・夜〜

エブリデイワールド〜♪

ザザーーザザーー!!

「…エイミ…大丈夫か?」

「…は、はい…でも、あの子の両親が無事に見つかってよかったですね!」

お母さぁぁーーんん!!! あッ!…あぁ〜…無事でよかったわぁ〜!!!

「…そうだな。…なあエイミ。…そろそろ…言ってくれてもいいか?」

「…え?」

【Veno・nix】は【Eimi】に対して、このように話した。

「…お前…女性の姿をしているが…本当は…男だったんだろ?」

「…!!??///なっ!?///ななっ!?」(ドキン♡)

「…誤魔化しても無駄だ。…あの時、縄を切った時に、腹部から下腹部まで切開してあった手術痕が見つかった…あれは…性転…」

「いっ!!言わないでくださいヴェノおじ様!!///…わっ!…わかりましたからっ!…あなたに…私の秘密を教えます…」

「……」

・・・

俺は、エイミの過去を聞いた。エイミがこの【Paradiso】に訪れたのは今から俺よりも半年前の1999年の6月15日。現世の時代に、恵美矢という名前で過ごしていたらしい。性転換手術を受けようとしたきっかけは、幼き頃から、男としてではなく、生理的に女性らしい生活をすることがしばしばあった為、両親から心配され、性同一性障害としての診断を受けて、両親からは治療を進めず、歳を取るうちに治ると断言してはそのまま放置して過ごしていたらしい。そして、中学になる頃には、エイミ自身はセーラー服を着たかったが、学ラン…学生服を着用するのにも違和感があったりし、クラスメイトからは、女々しい僕っ子という形で過ごしてはその場を凌いでいたが、それでも生活のし辛さを心の中では感じ取っていたらしい。そして18歳の時に思い切って性転換手術を受けようにも失敗し、そのまま医療ミスとして命を落とし、気づいた時には、俺も味わった事でもあるが、不思議なことにエイミの体は女性としての体を手にし、【導き人】と出会っては試練を乗り越えてこの世界に来たということだ…その話を聞いて、この【Paradiso】という死後の世界は、常識が通用しない世界であることを改めて知らされたーーー

「…というのが、私の事情です…軽蔑しますよね…」

「…いや、俺は気にしない。」

「!!っ!う…嘘です!!…ヴェノおじ様に!男から女になった私の気持ちなんか……!?」

【Eimi】は感情をあらわにして【Veno・nix】に反論する。しかし彼の表情には似たような親近感があったからか、俯き加減になっていた。

「…俺自身にも、エイミ…お前と同じように悩んで…ある日、何も罪もない女子生徒が、折角の平穏な学生生活の日常を卑劣な策略で突然壊された奴がいるからよ…」

「!!…え…」

「……」

・・・

【Veno・nix】は現世で経験した当時の高校時代の話をした。その話を聞いた【Eimi】は、驚愕の表情をしていた

「!!…ひ…ひどい…そんなの…」

「…俺はあの法廷の場で、天野の無実を晴らした。…それでも、アイツ…天野自身の日常が戻ることはなかった。…それでもアイツは強かった。誰よりも…何を言われても、目標があって、無事に自分の夢を叶えたのだから…」

「…そうなんですね…ベアさんだけでなく…ヴェノおじ様にもそんな事情が…」

「…もう過ぎた話だ。…もうあの頃には戻れない。…いや、戻ってはいけないような気がする。」

「…え…?」

【Veno・nix】は気取ったようにこう話した。

「…人って生き物は、人生に後悔があっては、あの時過ごしていた時代に戻りたいと思う感情は誰にだってある。非現実的かもしれないが…もし俺の親父がヤク中になってしまう前に、時を超えてきた俺が来て、殴り飛ばしてでも止めようとした未来があったら、おそらく俺は親から笑える家庭で育っては普通の人なりの生活が出来ただろう…それでもこの世界にいることはない。…それに天野とも、あんなに仲良くなれなかったかもしれない。…だからもう俺はこの生き方に…後悔はしない。」

「!!…ヴェノおじ様…」

「まあそれでも…結局俺は、自分から前に踏み出したっていうよりも…出てしまったといえばいいのだろうな。…あの女の子供が言ったように、俺はルールを破る。見た目も黒い…イメージ的にも絶対悪の黒豹…自分から償うと決めた罪をも償えない…本当の悪党だ。…現にさっきも…俺は敵のアイツに…殺す気の感情を剥き出して、情けもなく奴をこの手で始末したんだから、現世と全く変わっていない…変われない自分だ…もうこれは…」

「変われないんだな…一生…」「変わったといえばいいのではありませんか?♪」

「!!…エイミ。」

「ヴェノおじ様!…あなたは間違いなく自分から踏み出して、変わることができました!!…あの時、あの男と戦わなければ、私もあの子も、ここにいる人達が最悪亡くなる結末を迎えていたのかもしれません!…それに…罪だとか罰だとかそんな難しい課題は抜きにして!…これからのあなたがどう変わるかで道は大きく広がりますから!!…どうかそれを忘れないでください!!」

「!!…エイミ…お前…」

【Veno・nix】は【Eimi】の力強い発言に、耳を傾ける。そしてこう言い放った。

「…それに、おじ様。…なんだか最初にあった頃に比べて、口数も増えたように思いますよ♪」

「?…そうなのか…?」

「はい!…おそらくベアさんのおかげですね!…間違いなく変わってきてますよ!…きっと心から笑える日も、おそらく近いです!!」

「…そうか。」(…フッ!)

「微笑…出てますよ♪」

「……」(しれっ!)

「そっぽ向いて誤魔化しても無駄ですよ…ふふっ♪」

「……」(天野…俺はこの世界【Paradiso】に来てもう一週間は経った。今そっちはクリスマスだな。…お前は俺の事を忘れて、新しい恋人でも出来てるんだろうか?…もしいるのなら、無事に過ごしてくれ。…仕事なら別かもしれんが…)

ふわぁ〜…ふわぁ〜…

「!!…あぁ〜!雪ですよ〜!ヴェノおじ様〜!!」(ルンルン♪)

「…季節の概念もないのに雪か…不思議だな。」

「そうですね〜♪…そろそろ夜も遅くなりますし、そろそろ中に入りますか!」

「…そうだな。…【Olfes】に到着するのは朝と聞いた。…今日はゆっくり休んだほうがいいな。」

スタッ!タッタッタ…

・・・

〜その頃ーーーG島【Olfes】〜

フワァ〜…サラサラ…

「ん?…おお〜!雪だ〜!…そういえば、今日はクリスマスイブだね〜♪」

【Aria】は【Siel】のベットに横になっては、雪を見つめていた。そしてすかさず、願いを込めて祈る。

「……」(どうかサンタ様、神様。…もしいるのでしたら、この【Olfes】に、兄貴の相棒のあの人が…霧矢さんが無事に来てくれますように…!!)

カラーン! カラーン!

「!!ウォッ!!…なんだ、時間を知らせる鐘か〜!…紛らわしいんだから〜も〜う!!」(プンプン!)

コンコン!

「!!…は、は〜い!」

ガチャッ!

「…アリアさん。…調子はいかがですか?」

【Aria】の部屋を訪ねてきたのは同僚の【Mireisia】であった。どうやら体調を伺いにきたようであった。

「うん!この通りバッチリ!…明日から仕事ができそう!」

「それは良かったです!…明日からクリスマスですから、この町も盛り上がりますよ!…きっと!」

「楽しみ〜!!…んじゃあま!それならそうと!」

「…?」

「明日に備えてそろそろ寝るかな〜!…おやすみ〜zzz…zzz…」

「あらっ!…早い!…ふふ!………」(おやすみなさいアリアさん。…共に、この町【Olfes】に完全な救済を…もたらしましょう…私達で…ふふ。)

・・・

〜その頃・【Veno・nix】〜

「……zzz…」

・・・


🎼Back Ground Music 》》》



坂本龍一より〜青猫のトルソ

「…?…!!…こ…ここは…」

睡眠を取っていた【Veno・nix】は目を覚ます。その目の前に現れた景色は、雪の降る駅のホームであり、まるで列車を孤独に待つ客人のように無意識の内に立ち尽くしていた。するとどこからか声をかけられる。

タッタッタ…ザザッ…

「…やあ。目が覚めたかい?」

「?…誰だ?」

【Veno・nix】の前に姿を現したのは、青髪の青年であり、後ろには馬の尻尾のような風貌に見立てたポニーテールを結んでいる。身長は170cm代で白のタキシードジャケットにネイビーのズボンを着用し、その目からは、鮮やかな透き通る水色の目をしていた。その瞳からは生命に満ち溢れ、長きにわたる時の人生を物語るストーリーテラーのような雰囲気もあった。その青年は丁寧に自己紹介した。

「…私は【Lawrence】(ローレンス)。…人の生き方を探求し、研究しているユートピア人…と言っておくよ。…君の名は?」

「…【Veno・nix】…ヴェノでいい。…一体なんの用だ?」

青年の名前は【Lawrence】(ローレンス)と言い、その雰囲気から、年季の入った雰囲気もあり、古くから生きているかのようにも感じ取れる。相手の名前を聞き取った【Lawrence】は微笑みを浮かべて、優しく語りかける。

「…用というような固いものではないよ。君には、何か素質があると思ってね。…それに君の様子を見ていたら、何だか昔の空っぽで、生きることに対して無関心で、何もなかった自分になんだか似ていてね…興味深くてこうして【Sognare】の力を利用して君の元へ訪ねにきたんだ」

「?…どういうことだ?…【Sognare】(ソグナレ)?」

「【Sognare】…この世界では吉夢と呼んでいる。その現象はそう滅多に遭遇できるものではなくてね。…私の他にも、時々現世での君自身の絆が芽生えた者達…所謂君が認知している人や…時に現世から心そのものまで、この世界に訪れることだってできる。…例えば現世での友人や恋人、奥さんとか…色々とね…」

「…そうか」(その話が本当なら…もしかしたら天野も…いつかは…)

キキーーッ!

「?…列車か?」

突如駅のホームから列車が停車した。その光景を見たからか、【Lawrence】はすぐさま列車に乗り、【Veno・nix】を誘う。

「…ヴェノ。…さあ、君も乗りなよ」

「?…何故?」

「いいから!…これから命の答えや、人の生きることの真理について辿る旅に…一緒に行こう!」

ガシッ!

「!!…っ!」

「さぁっ!行くよ!…発車して!」

プシューー!!!…ガタンゴトンガタンゴトン!!

「…強引なんだな」

「せっかちが取り柄。…それだけ時間を大事にしてきたからね…」

「?…どういうことだ?…お前は一体何者だ?」

【Veno・nix】は【Lawrence】の身分を聞こうとする。相手は笑みを浮かべ、こう言い切った。

「いずれ…君がこの【Paradiso】で時を過ごしていれば、自ずと私が何者なのかわかる日が来るよ。……命ある限り…必ずね…」

「……そうか」

「あれ?やけに素直なんだね。…てっきり追求してくると思ったよ〜ははっ!」

「…そこまで俺も暇人ではない。時間を大事にしているなら…こうして俺と過ごす時間は、無意義なんじゃないのか?」

「…そんな事ないよ。…こうして人と喋るだけでも意味があるんだ!」

「……」

ガタンゴトンガタンゴトン!!

雪が降る中、電車が揺れて運行を開始している。【Veno・nix】は窓の景色を見ている。それを見た【Lawrence】は微笑ましそうに語りかけてきた。

「…景色を見るの好きなんだね?」

「まあ。…悪くはない。…この【Paradiso】に来てから、驚かされっぱなしだ。…命を脅かす敵もいれば、無理にでも俺に心開かせようとする者達だっている」

「それ…迷惑なことなのかい?心を開かせること……」

「…疲れるだけだ」

「……そうか。…でも君…その言葉は…嘘だね」

「…!?…どういうことだ?」

【Lawrence】自身は、【Veno・nix】の放った発言は、本心ではないと悟り、このように語りかけた。

「…君のここは、何だかその発言を否定しようとしている」

「…わかるのか?…人の心が…」

「大体はね。…でも彼女達…導き人程ではないかな。…最初僕もわからなかったよ。…心の中はいつも空っぽだと思っていた。…でもね…」

「…?…なんだ?」

「…大切なことを教えてくれた仲間がいたからこそ、この空っぽだと思っていた心の感情に気づくことができたんだ」

「…友情か。」

「君にもいるんでしょ?…大切な人が?」

「…現世で他界した相棒の妹が…この【Paradiso】に…俺と同じ現世人としてこの世界で過ごしている」

「…なるほどね」

【Lawrence】は、【Veno・nix】の発言から、守るべきものの存在を知った。すると試すようにこう問いかける。

「…君は、その人のことを…愛しているの?」

「…!!」

「…どうなのさ?」

「…守りたい存在として見ている。恋愛感情はない」

「…わかった。…質問を変えるよ。他に守りたいものはあるのかい?」

「…具体的には、この【Paradiso】の人の安全を守るくらいなら…」

「そのためには、人を殺めることも平気なのかい?」

「!!……さっきからなんだ?…何故質問を…」

「質問を質問で返さないで欲しいかな?…現世でもそんな風に教えられていたのかい?」

「!!…ぐっ……時と場合だ…」

「…時によりけり……か…具体的にどういった場面に?」

「…目の前で人の命が脅かされそうになった時だ」

「…その罪人を君個人の手で裁いて、その償いはできるの?」

「…今それを模索しているところだ…」

「……そうか」

【Lawrence】は、【Veno・nix】の言葉から、人生についての分岐点に差し掛かっているかのように思えていたようである。

「…君、孤独だと思っている?」

「…わからん」

「…人の話、聞き流していない?」

「…別に」

「やっぱりそうなんだね。…でも、その感情も君自身なんだ!」

「…ところで、この列車はどこに向かっているんだ?」

「しれっと無視したよ。…う〜んそろそろ着く頃だと思うよ。次の駅で降りるから、色々教えてあげるね。…人の生きる意味と…この…」

《心を通わせることの大切さを…君に伝えるためにね。》

「……」

【Lawrence】は、【Veno・nix】に自分と共通する何かを察していたようであった。そしていよいよ列車は次の駅に停車しようと減速を始める。そしてここから、二人の心の中の世界の冒険の旅が始まろうとしていたーーー

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?

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♪〜坂本龍一より・Blu

ガタンゴトン♪〜……ガタン……ゴトン……

シャーーー………

〜青光の街・【Blu・Viria】(ブル・ヴィリア)〜

「着いたよ、ヴェノ。ここは青光の街…(ブル・ヴィリア)さ」

「…その名の通り青白い街。…非現実だな…」

【Veno・nix】が【Lawrence】に案内された場所は、周囲は青白い空間が広がる街であり、高層ビルが数多く隣接しては、窓から青白い照明の光が差し伸べられていた。

「…この場所に案内させて、どうしようというんだ?」

「…ついてきて。…すぐにわかる」

スタッタッタッタ…

わーい! わーい! ガヤガヤ!

「…へぇ〜!あの人、今日もやってたんだ!…見てみなよ!」

「…ストリートパフォーマンスというものか?」

【Veno・nix】が見た光景は、ストリート街で逆立ちやバック宙といったパフォーマンスを披露する若者が、心から楽しそうに街ゆく観客を魅了していた。

「ホイットな〜!!!」

キャーー! パチパチパチパチ!!!!

「………」(子供にも人気なんだな)

「心なしか、今君…笑っていたね」

「…どうかな…」(しれっ!)

「現世で過ごしていた子供の頃に、こんなパフォーマンスを見たことは?」

「ない。…裕福な暮らしではなかったんでな…」

「そうか。…でも、それでも君には何が大切なのか、本質的なものは…この心の中には秘めているんだね」

「…自覚はないがな」

「それでいいんだよ。人一人の秘めている心の感情はね、すぐに…誰にでもわかるものではないからね…」

「…曝け出すのが怖いからあえて出さないとでも言いたげだな」

「…そうかもしれないね。…そろそろ行こう」

タッタッタ…

・・・

〜街外れ〜

「…辺鄙な場所に来たな」

「見ていなよ。…あっ!来た」

タッタッタ!

「こんにちは〜!美味しいパンはいかがですか〜?」(ニパァーーー!!)

わーい! わーい!

「…今度はパン屋か?」

「ただのパン屋じゃないんだ。…彼女の腕……見てごらんよ…」

「?……!!」

ウィーーン…ガシャン!

【Veno・nix】は驚愕した。パン売りの女性は、両腕に機械の義手が備えられていた。それに対し、【Lawrence】に質問する。

「…彼女には一体過去に何があったんだ?」

「彼女は【Asa】(エイサ)って名前の女性でね。…生まれつき、両腕がない状態で生まれたんだ」

「……そうか……気の毒だな…」

「あの笑顔を見ても、そう思えるのかな?」

ニコニコ!

「でもエイサお姉ちゃん大変だね〜!…生まれつき腕がなくて、困らなかったの〜?」

「ふふ〜ん♪大丈夫!…腕はなくてもね〜!…あなた達の笑顔を見ていたら、なんだかすっごく元気になれるから〜♪」

「はは!…エイサ。…相変わらず元気だな〜!…昔とは大違いだよ!」(あの喋り方とあの笑顔は…自称、私の相棒に影響されたんだな〜!)

「…?…昔とは一体何のことだ?」

【Veno・nix】の問いに【Lawrence】は優しく語りかける。

「彼女はね…昔はあんなに笑顔で振る舞える子ではなかったんだ。早くに両親を病気で亡くしてね。機械の義手をつけて今はいない優しいパン職人に拾われてパンを作る道を目指して…こうして独立し。……たった一人でパン屋を切り盛りしているんだよ」

「…お前は、あそこにいるエイサがパンの道を目指したかったが…無理だと思い込んで立ち直れなくて困っていたから、その光景を見ていられず、手を差し伸べて助けに入ったとでも言いたげだな」

「その通りかな。…心の中は乏しくても直感は鋭いんだね。…現世では刑事でもしていたのかい?」

「…似たようなものだ。…俺の相棒は刑事だったがな…」

「…そうか。…おっ!今日も頑張ってるね!」

「?……今度はなんだ?」

タッタッタ…

「……無事に届けてくれているようだ…」

カランカラン…

「…牛乳配達か…」

【Veno・nix】は牛乳配達をしていた子供の姿を見る。服装はほつれが多く、生活面で苦労をしているようにも思われる。

「…あの子供は誰なんだ?……ローレンス?」

「あの子は【Helen】(ヘレン)。…生活に乏しくてこうして一人で牛乳配達のバイトをしているんだ」

「……あの少年…苦労しているんだな」

「その様子だと、君も似たような事、現世で経験していたのかい?」

「…そうだな」

「そうか。……わかった。……じゃあ…今から彼らの真実を語ろう…こっちだよ」

クルッ!…スタッスタッ!

「…おい。……仕方ないな…」

タッタッタ…

【Lawrence】の後を【Veno・nix】は着いていく。すると、青色の瓦礫が続く道を辿っていくうちに、目の前には砦のような青の煉瓦でできた壁が見えてきた。上を見上げると三本の棒に、ある国のような旗が靡いていた。

「…ローレンス。…ここは一体何だ?」

「……」

「?…おい?……!?」

チャキッ!!

「………ローレンス。…お前…」

【Lawrence】は【Veno・nix】に対し、右手には現世でいうナポレオンダガーのような短剣を持ち、その左手にはショットガンに似せた銃剣を持っていた。するとその目つきからはまるで数多の戦場を駆け巡り、様々な命を脅かす運命と対峙し、限られた時間の中で尊い命の大切さを知り、それを自分と同じ境遇にいる一人の人間である【Veno・nix】に知ってもらおうと、試すかのように語りかける。

🎼Back Ground Music 》》》

 
 

♪〜坂本龍一より・戦場のメリークリスマス

「…もう今は現世で言うクリスマス。…でもね……世の中には、そんな聖夜の日にでも争いをする人々…元より兵士だっている。…誰かが犠牲になり、祖国に平穏な暮らしを願い……民を守る為にね。…そして…現世でも有名だと語られた【戦場のメリークリスマス】に因み……この【Paradiso】でも……人と人同士の戦争が勃発し……その惨劇で街の人々は、そのエゴイズムな争い事の虐殺に巻き込まれ…聖夜の日の夜を祝うどころか…不運にも犠牲になって一人…また一人と血を流し…尊い命を落とした人もいるんだよ。……そこで問題だよ……ヴェノ…君は…」(キッ!)

「……!!」

ドドドドドドドド……

「…命の尊さについて…君はこの経験で自覚して……どこまでここに住む人々の感情を知ることができたのかな?…その君の…未だに曝け出せない熱い感情を持っていたとしても…その雪のように冷たくて…復讐心からか…親しい友人を殺されたという憎しみや憎悪…大切な人を守り切ることができなかった罪悪感…そして何よりも…いまだに残る宿命を。………報復という形で争いを起こそうという負……まるで漆黒のような感情の心を持ったままで生きていて…本当に君は…人の心を持って生きていると…」

《言えるのかい!?》

シャッ!!

キィーーン!!!!

「…!!」

ギリギリギリ…

「……生憎。…まだ探しているとさっきいった…ばかりだろう……!!」

キン!!!

【Lawrence】は武器を持ち、【Veno・nix】と敵対する姿勢を見せる。しかし、【Paradiso】での経験があるからか、素早く相手の攻撃に適応して対応する。その様子に【Lawrence】は一度一呼吸を置き、安堵の表情をしてこう問いかける。

「…よく反応できたね。…褒めてあげるよ」

「このよくわからん世界では、俺の住んでいた現世の常識は通用しない。…既に学習済だ…」

「…なるほど。…でもね…」

ザシュッ!!!

「!!…ぐっ…!!」(…ば、馬鹿な…いつの間に…斬られた!?)

「…私の攻撃はね。…そう容易く簡単に躱せないよ。…その君の乱れた…負の感情の心がある限り…その感情を察して…この短剣が正そうとしていることに気づいたかい?」

ヒィーーン!

【Lawrence】の右手に持つナポレオンダガーには光が宿っていた。その光には、悪しき心を持つものを正しい方向に導く力を放ち、彼からの口ぶりから、秩序に則った力と同時に、自分を失えど、本当の自分の本質を理解させ、路頭に迷った旅人を正しい道に進ませ、前に行けるように導く強い意志をも備わっているようにも物語っていた。

「…この短剣の名前は…現世のロシアという国の言葉で【заводила】(ザボディーラ)…私自身の……命の意味の旅の《始まり》や…そのきっかけとなった…恩人に対する言葉から名付けたんだ……」

「……ローレンス。…お前一体…本当に何者だ?…俺達の敵なのか?」

「敵かどうか…それをどう捉えるかは、君の心の持ちよう次第だよ。…でも、その傷の痛みから何かわかったはずだよ?…街中であった街の人々は…一体何者なのかをね……」

【Lawrence】の発した、まるで哲学にも近い言葉に対し、【Veno・nix】はこう言った。

「……パン売りのレディーも、牛乳配達の少年も…この【Paradiso】の世にはいないと言いたいのだな…」

「……真実を教えるよ…」

タッタッタ…

「……」(一体何なんだ?…では何故死んだ筈の彼らはこの街で…生きているというのだ?…だがローレンス…奴の太刀筋…普通の青年の比ではない。…まるで…本当の戦場を経験したかのような…とても俺が経験したものの比ではない…悲惨な現実をその目で見てきたということなのか?…只者ではないのは確かのようだな……)

・・・

〜墓地〜

「…着いた。……見てごらんよ…」

「…!!…こ、こいつは…」

【Lawrence】に連れられた【Veno・nix】が辿り着いたのは、空から青白い光が差し込む墓地の広場であった。その目の前には【Asa】(エイサ)の名前が刻まれていた墓があった。そこには、今から約1000年以上も前に、かつて【Paradiso】で起こったある戦争によって命を落とした明確な時間と時代歴が記されていた。

「……エイサという女性は、今から約1000年前の大昔に、亡くなった人間ということか。…しかし…何故この世界で生きていられるんだ?」

「……それはね。…私達の中にある心…今となっては魂が投影された状態で、身体は失えど…この世界に流れ着いたかのように自分の命の尊さを自覚して……命の答えに辿り着き、こうして平和に暮らしているからね。…彼女達は…」

「…ローレンス。…ではお前は…」

「…ご名答。…私はね。…様々な時空から運よくこの世界に訪れた者達の魂を癒し、こうしてこの世界で過ごしている人達の行く末を見守る【護り人】といった役割を担っている。…それも、命の尊さも踏まえて…彼らを温かくね」

「そんな事をしていて、お前自身にも闇を背負うことはないのか?」

「…辛いと思う事だってあるよ。…でも、それでも人の感情である笑顔の表情を見るだけでね。…報われるように思うのだよ」

「……」

【Lawrence】にも、辛いと思える感情があるようである。それは元々ユートピア人であると同時に心があった人間であるからか、今となってもその感情を忘れず、今日も、この街で彷徨う魂の存在となった者達を温かく見守っている様子である。すると、誰かの足音が聞こえてきたようである。

スタッタッタッタ…

「……?」

「ああっ!こんにちは〜ローお兄さぁ〜ん♪ご無沙汰だね〜♪」(ニコニコフリフリ〜♪)

「…やあエイサ!…もうパンの配達は終わったのかい?」

「うん♪…でも、ローお兄さん…相変わらず変わんないね〜♪…確か、私達が初めて会った時ってさ〜♪…まだ私が7歳くらいの時だったのにローお兄さんは相変わらず歳を取らずに若いんだね〜!!」

「……そうなのか?…ローレンス?」

「そうだね。…あれからエイサも時が経過して、いつの間にか20歳くらいの立派なレディーになったんだね!…あの物静かで人見知りだった君がこうして明るく、この街に溶け込んで楽しく過ごしていることが嬉しいよ。…エレノアから貰った義手の調子はどう?」

「うんバッチリ!…でもさでもさ〜♪…ローお兄さんの愛人…エレノアお姉ちゃんから貰った義手って本当にすごいよね〜!?…私、【Paradiso】にいた時、大きな戦いに巻き込まれて亡くなったけど…でもね。…この世界に来て今もこうしてパン屋を開いて過ごせているから……本当に幸せだよ〜♪…ローお兄さんにもエレノアお姉ちゃんにはね。……今でもすっごく感謝してるんだよ〜!」(ニコニコ!)

「それはよかった!…でもエイサ。…君もいい大人なんだから、その喋り方はそろそろ直したほうがいいと思うよ?」

「いや〜〜っ!!…これは私のアイデンティティーなの〜!」(プク〜〜!!)

「…面倒見がいいんだな。…ローレンス」(フッ!)

「弟のような子の面倒を見ていた時期があったからね。…今となってはその子も【Paradiso】の世界では、その名を知らないくらいに大出世してるようだけどね。……それにヴェノ。…君…今笑ったよね?」

「…別に」(フイッ!)

「…へえ〜!おじさんの名前ヴェノって言うんだね〜!?」

「…ああ」

「ふふ〜ん♪…えい!」

ぷにっ!

「?……ニャンの…つもりぃ…だ…エイサ?」

突然【Asa】は【Veno・nix】の口元を持ち上げて口角に笑みの表情を無理矢理作り上げて笑顔で言い放った。

「…さっきの笑ってた顔をもう一度見たいから〜♪…えへへ〜♪」(ニッコリ!)

「………離せ」

「いやぁ〜〜〜!!!!」(ムスゥーー!)

「ヴェノ。…君も笑う時があるんだね。…安心した。…やっぱり君は昔の僕に…」(ポンポン!)

「もうわかったローレンス。…二度も言わんでいい」

「(・ー・)」(ショボーーン…)

「あはは〜♪」(ニコニコ!)

・・・

「……そうか。…エイサはこの墓に記している通り、この【Paradiso】の世界で……今から約1000年以上前に亡くなったのか…」

「うん。…でもさっきも言ったけど〜私、今でもこうして笑って生きてるんだよ〜♪…本当に不思議だよね〜!この【Paradiso】の世界って〜!?」(ウキウキ!)

「…ローレンス。…気になっていたんだが…この【Paradiso】以外の死後のユートピアの世界とやらは存在するものなのか?」

【Veno・nix】の問いに【Lawrence】は首を縦に振り、コクリと頷く。

「勿論。…エイサはさっきも行った通り、この【Paradiso】出身者なのだけどね。…中には…僕達がまったく味わったことがない未だ観測されていない未知の世界が…いくつかあるらしいんだ」

「…そうか。その口ぶりだと…その者達もこの世界に来ていたりするようだな…」

【Veno・nix】は【Sognare】の世界に介入し、初めてスケールの大きい場所に足を踏んでいる事を実感した。すると何処からか足跡が聞こえる。

スタッスタッ!…ザザッ!

「…ローレンス兄さん!」

「!!…やあ【Helen】(ヘレン)!…調子はどうだい?」

「バッチリだよ!…それに…!!あっ!!」

「…?」

「…!!…へぇ〜!……」

ザッザッ…スタン!

「…ヘレン。…牛乳配達は終わったのかい?」

「うん!【Edith】(エディス)おばさん!」

「…そうかい。…あら、久しぶりに会う友人が訪ねてきたようださね。ヘレン。……私は少し用事があるから……アンタは先に家に帰っておいてくれないかねさ?」

「うん、わかった!」

タッタッタ!!

「…ローレンス。…あの女性は?」

【Veno・nix】の問いに【Lawrence】は彼女の身分について説明するーーー

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TOSより・Kratos

「…あの人は【Paradiso】ではない別のユートピアの世界【Olvia】(オルヴィア)と呼ばれている異国の地で【女皇帝】…所謂《女帝》だね。それだけの剣の実力をつけて名を残したエディスという人さ。どうやら老衰で亡くなった後、当時の全盛期の30代の姿に戻り、今はヘレンの身の回りのお世話をしているんだよ」

〜【女皇帝】・【Edith】〜

【Edith】(エディス)という名前の女性は、見た目は銀髪のセンター分けであり、目は銀色。肌の色は白くアルビノ体質に近い女性であった。すると女性は【Lawrence】と【Asa】【Veno・nix】の姿を見かけたからか、前に歩み寄り、挨拶に来た。

「…エイサ。…それにローレンス。…今日も来ていたのかい?…ご苦労だねさ」

「やあエディス!…今日もヘレンのお世話…ご苦労だったね」

「エディスおばさん!はいこれパンだよ〜!!」

「…ありがとうエイサ。頂いとくわねさ…」(なでなで!)

「えへへ〜♪あったか〜い♪」

「エディスもすっかり丸くなったんだね。…昔は【女皇帝エディス】って言われ恐れられていたのに、今じゃあ、すっかり普通の気品ある女性だね」

「よしなはれ。…もうこう見えても身体は30代かもしれないけど心はご老体だよ。…それで?…そこの無愛想な青年は一体誰なんだい?」

「…プッ!ア〜ッハハハハ!!!無愛想だって〜ヴェノおじさ〜ん♪」(クスクス!)

「……」(やれやれ…)

「そうかい。…アンタの名はヴェノというんだね。……その様子だとアンタ。…【導き人】によって【Paradiso】に送られた現世人で…その顔色の様子から……掛け替えのない身内を喪くしているようだね?」

「…!!……エディスと言ったか?…わかるのか?」

「当たり前さね。…伊達に何十年間も女として生きている訳ではないのさね。………ちょっと失礼するさね…」

ピトッ!

「…?」(脈を測っているのか?)

【Edith】は【Veno・nix】の脈を計る。それはまるで医者のように慣れた手つきで手首を持っていた。すると、何かを感じ取ったのか、診察を終えた患者に対し、主治医の医者が診断結果を下すようにこう話しかける。

「ふむふむ、なるほど。……ヴェノ。…どうやらアンタの心には…何かと深い《闇》を抱えているようさね…」

「………」

「エディス。…やっぱりあなたも感づいたんだね?」

「…ああ。だけどさね…厄災を起こす程の闇ではない事が幸いだよ。…この邪悪さは悪魔程には到達していない。…精精現世での悪霊・怨霊程度の力だねさ…」

「…それで、アンタは俺を怪物扱いして、その隠し持っている武器で…執行しに来たとでも言いたげのようだな…」

【Veno・nix】は【Edith】の懐に仕込んでいたレイピアらしき武器を見て疑う。その発言を聞いた彼女は後退り、広場へと立ち尽くして本題を問いかける。

「…ヴェノ。…アンタには確かに闇はある。……でもね。…何故かアンタには…その闇と向き合い…浄化することができる希望の温かい光が……その心の中にあるようだよ……」

「?…どういうことだ?……!?」

【Edith】は冷たい表情から一変して微笑み、こう問いかけた。

「…アンタを見ているとね…何故か昔…路頭に迷って死を選ぼうとした際に手を差し伸べてくれた……豹の目つきをした男の人と…どうも面影が似ていてねぇ〜…ふふっ…」

「…エディス…」

「…エディスおばさん」

「エディスおばさん…」

「……」

【Edith】は昔を振り返り、人情に溢れているのか何処か懐かしそうな表情をして空を見上げる。

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ラストエンペラーより・メインテーマ

〜【Edith】の過去〜

『…エディスよ…』

『…ハッ!【Tearis】(テアリス)皇帝!』

『…現在の戦況は…一体どうなっている?』

『いまだに我々は劣勢のようであります。…ですが…それでも…』

『民を含めた兵士は…未だに諦めていないと言いたげのようだな…』

『…はい。…我々も尽力を尽くしております故…』

『ふうむ…エディス…』

『…何でございましょうか?』

『…恩人の者とはあれから出会うことができたのか?』

『…いえ。…未だに再会の目処は立ってはおりません』

『…どんな人物であったのだ?』

『…?…テアリス皇帝?』

『どうした?…答えられないのか?』

『…そうですね。…目元は…まるで現世でいう豹という猫のような動物の雰囲気のある男性でありました…』

『…それくらいしか分からんか?』

『…はい。…残念ですが…』

『…豹のような目をした者…か…そういえばこんな伝説があったか…』

『…皇帝?』

『…豹という動物には…神と言われるものが存在する。現世では、不浄不潔を嫌い…家畜を求めるのは凶として生きる【豹尾神】と言われるものもあるが、他国のアステカと呼ばれる文明の中に…テスカトリポカという豹と姿のよく似た…ジャガーと呼ばれる動物の神の伝説が存在する…』

『……』

『その中でも興味深かったのはな…テスカトリポカ、ケツァルコアトル、ウィツィロポチトリ、シぺ・トテックと呼ばれるそれぞれの動物に見立てた4人の神によって、世界は創生されたという創世の神話がもてはやされたということだ。…そしてその神々の意志を持った人間には、各自の色分けが施されていたとされる。…どんな色か想像ができるか?』

『…いえ。…一体その4人は…何色なのですか?』

『…それぞれ青・赤・白・黒の色を持ち、テスカトリポカやその他の者達は、様々な世界各地で起こっていた争いを治め、統一されたと言われておる』

『…4つの…色…』

『…まるで、お前の結成した4つの部隊の色も…偶然にもその神話と同じではないのか?』

『…!!…テアリス皇帝…ですがあれは…』

『…それぞれの各隊長が、その色で決めたいと言い放ってそう決めたのだろう?…よいではないか。…ほっほっほ』

『…緊張感に欠けますよ。…本当に…未だ劣勢が続くというのに、これから戦が始まるのですよ…色分けで士気が上がるとは思えません…』

『…その目論見は一体どうなるかだ…個性が出て、連携が取れやすくなるのは確かかもしれんがな〜…』

『…テアリス皇帝…』

『…エディスよ』

『…は、はい!…何でしょうか?』

『…この戦争に勝利した暁には…お前を…私に継ぐ皇帝の地位を与えねばならんようだ…』

『!!…なぁっ!?…私が…皇帝…女皇帝…所謂女帝ということですか!?』

『…嫌なのか?』

『い、いえ…少しばかり驚いただけです。…しかし、何故私に皇帝の座を!?』

『……お前には、素質があるからだ。…民を正しく導く…私以上の立派な皇帝になれるだろう……きっと…』

『……テアリス皇帝……その、きっとという言葉が全てを台無しにしているようにも思うのですが…』

『ほっはっは。…まあ気にするでない!…自信を持つのだ!』

『………』

・・・


🎼Back Ground Music 》》》


 
♪〜Waterweedより・Deep inside


『!!…は…叛逆!?』

『ハッ!…クーデターです!4つの勢力の隊長が…敵軍に寝返ったとの情報であります!…そして…こうも言っておられました!!』

『…!!』

『今まで…我々はこの時を待っていた!…自分達に役割と…武力を持たせた愚かな女将軍エディスに感謝すると…』

『……皇帝は…』

『…はい?』

『テアリス皇帝はご無事なのですかと聞いているのです!!……どうなのですか!?』

『……敵の進軍で心臓を貫かれて…そのまま…』

『!!…………』

チャキッ!

『…エ…エディス殿!?』

『……私が…行きます!!』

『そ…そんな!!…この劣勢の中、おまけに4人の将軍が寝返ってしまった結果、我々に勝てる見込みはぁっ!!』

『黙りなさい!!!』

『!!』

『…私にも責任があります。…彼ら戦争孤児となっていた4人の隊長に対し、私が授けた名前がありますので…名付け親でもある私が…ここで終止符を打たせていただきます!!』

カチャ!……キッ!

『……エディス…殿…』

『……全軍!!!…突撃ぃーー!!!!!』

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!!

・・・

パカラ!…パカラ!……ヒヒ〜〜ン!!

『…!!』

『…エディス将軍…よく来たな…』

『…誉めて差し上げようぞ…皇帝の首は…』

『ここだ!』

『乱世の世らしく…首を刈り取らせてもらったぞい…』

ポトッ!!

『!!…き、貴様らぁあああ!!!!!クーデターという叛逆を企てるのみならず……よくも…よくもテアリス皇帝をおおおっっ!!!!!』

ガキィーーン!!!!!

『!!…ぐうっ!』

『何を勘違いしているんだ?…エディス?』

『この世は弱肉強食なり。…強くなくてはこの先…生き残ることは不可能。…甘さだけの皇帝に生きる価値はない…それは…』

『お前自身も例外ではない!…我々を育ててくれた見返りに、我々の踏み台になり…華々しく…』

『散るがいい!!!!』

ブン! ブン!!

キンキン!!

『!!…』(こ…このままでは…)

ガキィーーン!!!!

『…!!なぁっ!?…お…お前は…!?』

ブシァアア!!!!

『ぐはっ!!…あ…あがが…』

バターーン!!!!

『!!【Blo】(ブロ)!!』

『ッ!!…顔に…深く刃が……だめだ…即死のようだ…』

『……貴様…一体何者だ?』

『………』

『…あなたは…?』

『…下がっていろ。……お若いレディー…』

『…!?』(…この声は…ま、まさか…!?)

『!!【Blo】(ブロ)!!様!!おのれ貴様ぁ〜〜〜!!!!』『かかれ〜!!』

ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!

『……!!』

ザシュッ! ブシャッ!! ザシャァーー!!!

グァアア ヒェえええ!!! つ、つぇえなんてもんじゃあねえぞっ!!

『………』

チャキッ!!

『!?あれは……両双剣!?………っ!』

ザザッ!!

『ほ〜う……女将軍…エディス…』

『……エディス…』

『皇帝の首が斬られても尚…我々に歯向かうのか?』

『……エディスというのか?…レディー?』

『…レディーはよしなさい。…《豹》さん』

『?…豹…か。……なぜそう呼ぶ?』

『…あなたの目つきが何だか現世でいう豹という名前の動物に似ているからかしら?……それに…』

『…それに…何だ?』

『…そっくりなのよ。昔、途方に暮れていた私に、手を差し伸べてくれた恩人の男の人に。……何だか…///』

『………そうか。…だがここは戦場だ……思い出並びに色恋話なぞに耽っている場合ではない。…いくぞ』

『ええ!…覚悟なさい!!…叛逆者【Logwan】(ログワン)!!【Meisei】(メイセイ)!!【Kosei】(コセイ)!!…私…女将軍…いえ…』

ジャキン!!!キッ!!

『!!』『!!』『!!』

『《【女皇帝】エディス》の名誉に賭けっ!!………あなた達の陰謀を…そして、この意味のない無益な争いを、ここで終わらせてあげましょう!!』

『…よかろう』

『叛逆者共を始末しろ。……者どもかかれ〜〜!!!』

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

『!……ハァーーッ!!!!』

ガキィーーン!!!!

パキャーーン!!!!

『!!…なぁっ!?』『俺の武器を…一振りで叩き折りやがった…だと…』『……それだけではない。…心なしか、あのフランベルジュの頭身に…何か光が宿っているようにも感じる…』

『………』

チャキッ!!…ヒィーーン!

『いい動きだな…エディス皇』

『…やっと名前で言ってくれたわね。…《黒豹》さん…』

『おいおい。…豹はまだしも、黒豹とはな…』

『ウフフ!…いいのではないのかしら?…名前を教えてくれないあなたには…そうね【真執ノ黒豹】(マトリノクロヒョウ)という異名をつけるのはどうかしらね?』

『!!……妙なあだ名をつけるな。…だが…《黒豹》…か。ッ!……その響き。…悪くないかもしれないな。…妙に馴染む!』

『今、笑いましたね?』

『…別に。…さあ世間話はここまでだ。…恩を仇で返し…叛逆しては悪の限りを続ける奴らを……一人残らずこの戦場から…』

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

『刈り取ってやるゾォォォォッ!!!!』

ジャキーーン!!!!


・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・5》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



「…今思えば…4人の将軍に叛逆され、劣勢であったあの戦場を、勝利して切り抜けることが出来たのは、あの時、私を救ってくれた黒豹のような風貌をしたあの男の人なのかもしれないわねさ……」

「………」

【Edith】は空を見上げながら思い出に耽っているようであった。その様子を【Veno・nix】は見つめており、【Lawrence】自身は笑みを浮かべていた。

「…エディス。…もしかしてその戦場で助けてくれた人……君の言う恩人なのかもしれないね」

「…そうとばかりに思うしかないさね…結局、名前の程は教えてすらくれなかったさがね……」

「…俺とそんなに似ていたのか?……【真執ノ黒豹】の異名を持つ男は…?」

「……そうだね。…でもね。…何だか、アンタのような雰囲気があっても、心の中には何だか温かくて、熱い情を秘めていたんだねさ…」

「…そうか…」

クルッ! スタッ! スタッ!

「…ヴェノ?…何処へ行くんだい?」

「…そろそろ元の世界に帰れる頃なのだろ?…案内してくれるか?」

【Veno・nix】は元の世界に帰ろうとしていた様子であった。しかし、【Lawrence】はその問いに首を横に振った。

「…ヴェノ。…残念だけど…君はしばらく…この【Sognare】…夢の世界から出ることはできないようだ…」

「!!…どういうことだ?」

【Lawrence】はそう伝えると、今度は【Edith】が前に立ち塞がり、こう言い聞かせた。

「…ヴェノ。…【Paradiso】にいるアンタ本体の魂の身体は…今生死の境を彷徨っている…所謂植物状態にいるのさ…だが幸いにも、昇華はしていないようだね…」

「!?…なんだと…一体何があったというんだ!?」

【Veno・nix】は突然のことで頭の中が混乱していたようであった。すると二人は深刻そうに、事実を伝えた。

「…たった今…君の乗っていた船で…【創造派】による爆破テロが勃発した。……おまけに君の友人。…エイミが攫われてしまったんだ」

「!!…なっ!?」

【Eimi】の安否を聞き、驚愕の表情を見せていた【Veno・nix】であったが、安心させるかのように【Asa】が話しかけてきたようである。

「でも安心して〜!…今エイミさんは…どうやら【Olfes】の救済ギルド【Siel】の人達が保護してくれているようだよ〜!」

「!!……っ」

【Asa】の言葉に【Veno・nix】は少しばかりではあるが安堵の表情を浮かべる。

「…ヴェノ…アンタ自身も今その街に、朝には無事流れ着いて……時は昼過ぎって所だねさ。…その時刻に…ある便利屋ギルドの者が見つけ……その者達の所属する軍医の手で集中治療を受けている最中なのさね…」

「!!…もうそんなに時間が立っているのか!?……俺はいつ目が覚めるんだ?」

「……わからないね…目覚めの目処は、分からないままだよ……これも何かの縁さ。…折角さね。ヴェノ…悪いけどアンタにはちと、この世界に来てやってもらうことがあるんださね…」

「!…一体なんだ?…やってもらいたい事とは?」

【Edith】はまるで【Veno・nix】の実力を試すかのように話しかける。

「……アンタに…この世界に住む4人…かつて私と【真執ノ黒豹】が倒した筈の4人の武将を探す手伝をして欲しいのさね…」

「!!…この世界にいると言うのか!…その者達が…どうして…?」

「…実際のところ。私にもよく分からないのさね…しかしさね、ローレンス。…アンタには何かと心当たりがありそうな話だね?」

「…!?」

「…ええっ!?」

「………おそらく誰かの因果。…意図的にその者達を復活させた者がいると言った方が正しいのかもしれないね…ヴェノ。…君自身には心当たりはないのかな?」

「…わからん。……」(…一体何が起こっているというんだ……そして、現実で…何が…)

・・・

〜その頃現実・【Paradiso】歴・1999年12月25日【G島】【Orfes】の街〜

ワーッ!! ワーッ!! ワーッ!!

「わ〜いクリスマス〜!」「キャッキャッ!!」「メリークリスマスー!!」

「はいはい押さないの〜!…ふぅ〜!」

【Aria】は【Siel】の行事であるクリスマスイベントで、子供達に対し、奉仕活動をしていた様子であった。すると何処からか声が聞こえてきたようである。

「アリアさ〜ん!!」

「ん?…!!あ〜ミレイさん!!…どうしたんですか?」

「はい。…実は、この港に辿り着いたテロ攻撃を受けた船に、何やらシスターの服を着た…恐らくは異教徒の者である為、現在保護しては今から集中治療室のある教会へと足を運びます。ですので、くれぐれも出入りしないようにと思い、ご連絡しにきた次第であります!」

【Mireisia】はそう語りかける。【Aria】は微笑んではこう言った。

「分かったわ!…とりあえずここは私に任せてその人の治療を優先してあげてよミレイさん!…ここは私だけで大丈夫だから!!」

「ふふっ!そうですか♪…では…よろしくお願いしておきますね…」

タッタッタ…

「…さてさて、はぁ〜い!!押さないでね〜!!」

【Aria】は【Mireisia】の後ろ姿を確認しては引き続き、街の子供へのご奉仕活動を続けた。その様子を見届けては微笑んでつぶやくように言い放った。

「…それが貴女なりにできる救済の形のようですね。…精精…その偽りの幸せに噛み締めておいでください。…ふふふ。…これから…魔女狩りの信仰が始まり…裁きの鉄槌を下し…この【Paradiso】の世界に……【導き人】の理想とは違う…」

真なる救済を与える使者が現れ…本当のユートピアの世界が訪れることに…ウフ……!




ウフフフフフフフ………

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜とある魔術の禁書目録より・魔女狩りの王

「……?……!!…んっ!?…〜///んん〜!!///」(ジタバタ!!)

【Eimi】は意識を取り戻した。しかし、目を開いた瞬間に理解したことは、十字架状の姿となって口を塞がれ言葉の自由を奪われていた。鎖で縛られており、現世でいうキリスト教の処刑のように象っていた。その姿を見た【Mireisia】とその他の信者の者達は微笑みこう語りかけた。

「あら?目を覚ましたようですね。…異国の異教徒さん?…いえ…現世では男性として。…そしてこの【Paradiso】では女性として……【Dail】邸の家政婦メイドとして働かされ…《色欲》という大罪の洗礼を浴び続けた……哀れな【現世女】……【Eimi】さん?」

「…!!」(…な…なぜそのことを…!!…そもそも…一体…何が…!!そういえば乗っていた船が突然爆発して…それで…私…)

「……この反応は…」

「…どうやら黒のようですね…【Mireisia】…いえ…」

「……ミレイ救済ノ使徒…《ミレイ救済長殿》…」

「!!…」(一体この人達は…一体!?…ヴ…ヴェノおじ様!!ど、何処ですか!?…どうか助けてくださいっ!!!)

「……さあ異教徒の者…エイミさん。…あなたに質問です。…この際なので……その口封じを外しておきましょうか?」

べリッ!!

「…!!…はぁ…はぁ…あなた達は一体…何者なのですか!?…一体…何を…企んでいるというの…!!!」

べキッ!!!

「あぐう!!…かはっ!!…!!」

「質問に答えなさい!!!…いえ…現世でのギャングでの言葉で伝えるのであるのなら……質問は既に《尋問》へと変わり…やがてこうして《拷問》に変わるのですから…ウフフフフフ………あなた自身の抱える心の闇を見るとわかります。…どうやら…この【Paradiso】にかつて存在したギルドの所属する自由を勝ち取る【自由派】…ユートピア創造士隊を引きつれ、牛耳る【創造派】…そしてその影で…【Paradiso】に真なる救済を実現する為に、かつて今から10年以上前に引き起こした戦争で…この【Paradiso】に存在する太古の貴族の者達をも引き入れていた【自由派】の者を速やかに排除し…【導き人】の者を倒す事を目的として、この世界を救済する真なる英雄達……【救済派】に所属する一派の集団……」

《【Demister】(デミスター)!!!》

「!?…」(デミ…スター…?…一体何を……!?)

「…その者達の復活の為に…イレギュラーな【現世人】の中でも…最も特異な形でこの世界に君臨したあなたに対し…こうして世界の救済の為にと思い、手を差し伸べようとしているのですから……さあ答えなさい。……【Demister】を復活する鍵について、あなた自身が握っているのですから!!…さぁ!!!!」

ギュギューー!!!!

「あぐっ!!いやっ!!…っ!…そんなの…し…知りませんっ!!!…何なんですか!?一体何を話しているのかも…そもそも【Demister】(デミスター)とは…一体なんなのかも…」

「……往生際が悪いようですね。…【Demister】(デミスター)…現世では霜取り装置と呼ばれておりますよね。…ふふっ。…まさに今のような偽りの平和…曇りきって腐敗しきって堕落している…このまやかしの世界に似合う平和ボケした現状を見せつけているかのように。……はぁ……全く…腹立たしい…実に不愉快なことですねっ!!」

ゲシッ!!…グリグリ…!!

「あうっ!!…やっ…!!…やぁっ!!…やめてくださいっ!!!!!」(ポタポタ!)(ヴェノおじ様…どうか助けに来てください…あなたはいま一体…何処にいるのですか………ご無事であることを祈っております……!!)

ゲシッ!!!!

・・・
・・


〜その頃・現実の【Veno・nix】〜

「……」

「どうですか?…【oya】(オヤ)先生…」

「…これは、植物状態のようだ…物理的には目が覚めそうもない…これでは手の施しようがないようだ。…やむを得んが仕方ない…」

チャカッ!…ウィーーン!!

「!!…オヤ先生!…一体何を!?」

「…これから…彼を安らかに眠らせて…昇華させよう。…こんなに苦そうな顔をして生かすのも、さぞ苦痛だろう…現世でいう医療漫画の軍医のように…安楽死をね…」

「…し、しかし…」

待つじゃんよ〜!!!!

「!!」

「…!!…その声…お前は…!?」

「おお〜う!オヤ!!…たっだいま〜!!今日はクリスマス!!…今になって戦場のメリークリスマスから帰ってきたじゃん!!!」

「ね…ネルソン!!…?…お、おい!…何をしている?」

【Nelson】と呼ばれている男は、【Veno・nix】の顔を見つめていると、興味深そうにしては、こう宣言した。

「ほおほお〜!!…この俳優面の色男をすぐに安楽死するのは、すんげえもったいないじゃんよ〜!!!…俺がなんとかするじゃん!!」

「…!!」

「…ね…ネルソン!…一体どういうことだ!?」

「そのまんまの意味じゃん!!…お〜い?治療専用仮想世界介入ゴーグルはないじゃんかよ〜!?」

「…!!ま…まさかお前…そいつの仮想世界に…」

「…まだ試作段階だ!!介入できるかどうかも分からないんだぞ!?」

「うっさいじゃん!!いいからワイが持ってこい言うたら…」

持ってこんかいじゃん!!時間は待ってもくれないじゃんよぉ〜!!!!

「!!」

「!!」

「!!」

【Nelson】という男は危険を承知の上、本気で【Veno・nix】を救おうと力強く宣言していた。その意志は真っ直ぐであり、躊躇もなく言い切った。そしてここから、彼との出会いが【Veno・nix】の人生観を変えることと同時に、【Paradiso】の世界に大きな変動をもたらすきっかけとなる運命の歯車が刻一刻と動き出したようであるーーー





















《To Be Continued…→》











第11話:【Relvio】の町での抗争・船旅と蒼夜の世界
《完読クリア!!》



次の話へ進みますか?

A. はい 


B. いいえ