GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》

A.:GiorGia

〜ダブルフェイス〜黒豹と法と秩序の契り〜



第1話:プロローグ〜富美恵編 Part1




北海道という広大な土地で生まれた池井富美恵12歳。【Paradiso】では現世人【Keito】の名前を持ち、猟師兼鍛冶屋ギルド【Melton】所属の狩人として過ごしていた彼女が、現世での人生にてどのような出会いがあり、大きな自然のある土地で過ごし、何を学んできたのかを彼女の口から語られるーーー



《Capitalo・1》 
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



・・・

〜【Kagoya】河原木亭6/30・夜〜

時は戻り、【Linea】と【Keito】が【河原木亭】での露天風呂で話をしていた時であった。【Hux・row】の計らいもあって二人で風呂に入り、水入らずで交流を深めるということを名目に、お互いの話をしていた。

〜カコーン!!

「病弱体質か…そうか〜リーネはんの話聞いてると…なんや…どえらい大変な苦労したようやなぁ〜!……ふぅ〜…それにしてもええ湯加減で温まるなぁ〜!!」

「そうですね〜♪…でも…そのおかげで、私自身…命の大切さを知ることができました。…では、私の話を終えたので、【Keito】さん!…あなたの話を聞かせてくれますでしょうか?」

「ええで〜リーネはん!…ウチはな〜現世では本名池井富美恵いうてな〜!北海道生まれなんやねん!」

「そうなんですか!?…え…でも…関西弁ですよね?北海道の生まれのあなたが…何でそのような喋り方を…?」

「ああそれはな〜!幼馴染で大阪出身の舞香っていう親友の子がおってな〜!…その子と話してるうちにな〜!…つい関西弁の口調がうつったんや〜!」

「そうなんですね〜!…私は神戸で…大きな家の出なので、関西弁ではなく標準語でしたね…」

「まあリーネはんのような令嬢の出のもんが無理して関西弁言うようなもんやないんは確かかもな〜!…まっ!そのおかげか、現世の時代は…色々楽しかった時期があったかもなぁ〜!」

【Keito】はその当時の事を詳細を入れて説明する。

・・・
・・


〜現世・北海道札幌・ススキノ・【Keito】12歳〜

「…おお!!ここが札幌ススキノか〜富美恵!?」

「そやで〜!!ホンマ大阪のミナミみたいにごっついデカイ街やな〜!!…あだっ!」

舞香と名乗る関西弁を話す女子は、富美恵を関西人特有のノリツッコミで、静止させては言葉を続ける。

「何でやねん!?富美恵アンタ難波はおろか、大阪すら来た事ないやろ!?…おっ!?NIKKAの看板のおっさんあるやんけ〜!!…道頓堀のひっかけ橋のグリコ思い出すな〜!!…もしかしてグリコのおっさんの親戚か!?」

「あほうここ札幌や!!…ふふ…」

アハハハハ!!!

富美恵と舞香は中学の春休みを利用しては、札幌のススキノを訪れていた。そして訪れた当初の目的を聞く。

「んで〜舞香?わざわざ春休みを利用してススキノに来たけど…一体ここに何しに来たんや〜?」

「それはな〜!…ここが舞台になっている探偵小説の…聖地巡礼に来たんやでぇ〜!!!」

「へえ〜!…まぁ〜ウチはファンタジー系のラノベとかはよく読むけど探偵小説とかは読まへんからな〜!…そんなにおもろいんか?…その探偵小説?」

富美恵の質問に舞香は笑みを浮かべては、自身ありげに言い放った。

「へへ〜ん!!実は映画化もされているくらいの探偵小説でなぁ〜!!…ウチその映画見てはどえらいハマっては小説までも手出すくらいの大ファンになってもうたんや〜!」

「そうなんか〜!…まあウチはあんまり、映画とかは見やんからな〜!…ま、終わったらなんかうまいもんでも食べよか?」

「せやな!!…ただ…ここススキノの治安は…思った以上に危なっかしいからな〜!…そこでウチみたいなあいりん地区とか危なっかしい環境のとこを渡り歩いた心強いウチが結構な賃金で派遣されたっちゅうことや!!」

「儲かりまっか〜?」

「ぼちぼちやでんがな〜!!…ってぇ!?…言ってる場合やあらへんがなぁ〜!…とにかく行くで〜!」

「あいよ〜!!」

タッタッタ…

・・・

〜北海道・ススキノ・路地裏〜

「おっ!?早速ロケ地をみっけたで〜!!…あのハードボイルドの探偵さんが普段おる酒場のモデルか〜!!」

「なんや…えらい狭い場所にあるんやな〜…ま、ウチらはまだ中一やし店内の中には入られんやろに…よし、次行くで〜!」

カシャッ!

舞香はカメラを取り出しては、ロケ地になっている酒場を撮影し、次の巡礼の聖地を目指していく。

「おっ!次はいつも朝食を食べる喫茶店やないけ〜!!」

「喫茶店か〜!偉い佇まいやな〜!昔ながらの純喫茶って奴やな〜!!」

次に二人が訪れたのは、昔ながらの純喫茶である。その雰囲気は赤色の屋根になっており、大きく店名が書かれていた。すかさず舞香は写真を撮る。

「よ〜し撮影したで〜!…おっ!?」「!!」

ジュー!!ジュー!!

「…おっ!?この匂い…まさか…!?」

「たこ焼きやんがな〜!!…ええ匂いするなぁ〜!!富美恵!?食べていこか〜?」

「せやなぁ〜!!ほな!寄ってみよか〜!!」

タッタッタ!

富美恵と舞香は、個人のたこ焼き屋に立ち寄る。その店のメニューは豊富であり、若手の青年店員が声をかけてきた。

「いらっしゃい!おっ!こんなススキノに子供が二人だけか〜!?えらい珍しいな〜!」

「兄さん!ただの子供やあらへんで〜!!ウチらはな〜…」「本場の…関西人やねんがなぁ〜!!って…富美恵!?…アンタはバリバリの北海道の地元やろがいて!!」

舞香と富美恵はまるで漫才のように仲良くノリツッコミを披露する。するとウケたのか、店員は笑いながら機嫌よくたこ焼きの注文確認をする。

「なはは!…仲良いな〜嬢ちゃんら〜!!ほな何にするんや〜?折角やしサービスしとくぜい!」

「ホンマか!?兄さん太っ腹やな〜!!」(キラキラ!)「ウチらが別嬪さんやからやな〜!!…ほな!ウチはネギマヨで!!」(セクシーポーズ!)

「おおきに!…そこの亜麻色がかったピンクに近い髪色のボブヘアの嬢ちゃんは何にしますの?」

「…え〜とほなウチは塩で!!…あ、ウチは富美恵いいますんや!!」「ウチはバリバリの関西人の舞香いいますんや!よろしゅうな〜!」

富美恵と舞香は仲良く店員に挨拶する。名前を聞いては、愛想良く返事をする。

「富美恵ちゃんと舞香ちゃんね〜!二人共ええ名前や!…せやけどな嬢ちゃん方…遅うならんうちに帰ったほうがええで〜!昼間はまだしも、夜になればここススキノは酒…水の街になって、欲望の街の歓楽街になるからな〜!」

「肝に銘じとくわ兄さん!」「まあここは治安があまりいいとは言えんし、心配せんでも遅うならんうちに早う帰るわ!」

「利口で結構や!!…お待たせ!!ホカホカのたこ焼きや〜!!…熱いさけに注意しいや!」

「おおきに兄さん!」「…おぉ〜!!んで、兄さんも関西弁使うんやな〜!!…大阪生まれかいな?」

「ちゃうちゃう!…何や名は明かせれへんけど大阪の難波が舞台のある金融がテーマのドラマ見てはその主人公の口調がうつっただけなんや!」

「あ〜分かるわ〜!!なるほどな〜!兄さんもあのドラマ好きなんやな〜!!確かにあれは悪もんが最後にバチが当たって気分がスッキリしておもろいわなぁ〜!」「でもあれは子供向きやないんやけどなぁ〜…金の話に法律もあって色々難しいわぁ〜!」

富美恵と舞香は店員と、あるドラマの話をしては話を咲かせつつ、早速、注文しては冷めてきたたこ焼きを口に含もうとする。

「よ〜しほな舞香!食べよか〜!」「せやなぁ〜!富美恵〜♪…では…」

いただきます〜!!

パクッ!

「!!…こ…これは…!?」「外はカリカリで中はふわふわ…本格的やな〜兄さん美味いで〜!!こりゃあウチんとこの大阪本場の味やで〜!!」

「そうか〜!!…なはは!!伊達に長年やってるわけやないって奴や〜!!おっそや!よかったらこれ持ち帰っていきや〜!!しばらく時間がかかって冷めてもうてなぁ〜!持って帰ってくれるとありがたいんやけど〜」

「ええんかいな〜兄さん!?」「偉い親切やな〜!!」

店員は冷めてしまった2パックのたこ焼きを袋つめにしては富美恵と舞香に手渡した。

「ほい!…ゆっくり持ち帰ってやぁ〜!」

「ほんまにおおきにな〜兄さん!」「兄さんの名前なんて言いますの〜?」

店員はにこやかに笑顔を浮かべては、名前を語った。

「ワイの名前は川原言うんや〜!覚えておきや〜!」

「わかったで〜川原はん〜!」「よろしゅうな〜!!ほなまた〜!!」

そう言うと、二人はその場を後にしては、引き続き街探索を繰り出していた。

「それにしても、このススキノの街はでかいのぉ〜!」

「せやなぁ〜!…ホンマになぁ!」

二人は、ススキノの街をくまなく探っていた。そこはアジアの歓楽街の北の街の中でも大きく栄える繁華街であり、賑やかであると同時に、大きな闇をも渦巻く場所であると言うことも、二人は知る。

ズルズル…

「!!…美味いな〜!!札幌ラーメン!!」「せやね〜!!本場の札幌ラーメンは絶品やね〜!!」

ジュジュ〜!!

「お好み焼きもなかなかやな〜!」「ふぅ〜!北の大地で食い倒れるとはな〜!!」

・・・

〜現世・北海道札幌・ススキノ・夕方〜

「…あちゃ〜!すっかり遅くなったで〜!!」

「そろそろ家に戻らんとおとんもオカンもカンカンやで〜!!…うぉわ!!」

「ま、舞香!?…大丈夫かいな!?…ハッ!!」

「おうおう!…嬢ちゃん!!ちょっといいか〜?」

「!!」「!!」

帰宅を急いでいた富美恵と舞香は、運悪くススキノを牛耳っているチンピラにぶつかってしまい絡まれたようだ。相手はご立腹の様子で二人に詰め寄ってきた。

「これから仕事だってのに俺のスーツ汚しおって〜!!どうしてくれるんだよぉ〜!?ガキとはいえど許されないんだよ〜!!」

「す、すみません!!」「この通り堪忍してやぁ〜!!」

「あぁ!?…謝ってすめばいいと思ってんのかぁ〜!!」

ブン!!

「ッ!!」「舞香!!」(ダキッ!!)

ガシッ!!

「!!」

舞香は目を瞑り、富美恵はチンピラの攻撃から身を守るために抱き抱える。するといつまでも攻撃が来ないために恐る恐る目を開いていく。

「…え?」「な…何や…一体!?」

「な、何だ!?…!!…て…テメェ…は…!?」

「何ここで屯してんだ…?ここはお前らの組の縄張りじゃあなかっただろうが…それに…こんな可愛げのある関西弁の女の子二人にこんな乱暴に威圧しては泣きべそかかせやがって…次見かけたら…ウチのもんが容赦しねぇぞ!!」(ギラァッ!!)

男は高圧的かつギラついたオーラを放ってはチンピラを威圧させる。

「ひ…ひぃぃい!!」

タッタタタタタ!!

「…た…助かったでぇ…」「ありがとうなぁ〜…兄さ…!!」

「…ほな。嬢ちゃん二人!もう夜も近いさけ、お土産持って気いつけて帰りぃや〜!!」

タッタッタッタ!!

「こりゃあ驚いたで〜!グラサンしてはおったけど…あの声て…まさかの川原はんとはな〜!」「エライ人なんやな〜!…昼間はシノギでたこ焼き屋で本業はまさかの墨入れもんやとはな〜…ってぇ〜!こうしてはおれへん!はよう帰らないかんわ!ウチのおとんもおかんも心配しとるで〜!」

タッタッタ…!!

ガタンゴトン!…ガタンゴトン…

「ふぃ〜!一時はどうなる事かとおもたよ〜!やけど舞香!ちゃんと前見て歩かな危ないで〜!」

「ホンマにやわ〜…エライすまんかったな〜富美恵!…でも、アンタとの付き合いもだいぶ長いわな〜!」

「せやな〜!…確か舞香とは小学2年の頃やったかな〜?引越しでウチと隣で、今もおんなじ中学に進学するて…こりゃあ腐れ縁て奴やな〜!」

「あほう!!そこはマブダチ言うんや!!…でも昔の富美恵って今とは違ってて…な〜んか物静かで落ち着いてたよなぁ〜?」

「ん〜?そうか〜?あんまり自覚はないんやけどなぁ〜…まあそれも舞香!!…アンタはんのおかげかもなぁ〜!!」

「おお〜!言ってくれるやないのぉ〜!!」(グイグイ!)

「あっ!こら!!舞香、あんまり電車内では騒ぐなや〜!また碌なもんに絡まれかねんで〜!!」

「あ〜そやなぁ〜!すまんな〜…」

「ったく!舞香は昔っからやなぁ…」(でもありがとなぁ〜舞香!アンタがあの時転校して隣の席になってくれたおかげで、ウチも色々助けられたかもなぁ〜!!)

富美恵は舞香との出会いの過去の事を振り返る。

・・・



🎼Back Ground Music 》》》




〜時は戻り富美恵小学2年〜

「親の都合で突然大阪からこの広い土地の北海道に引っ越しになり、今日からこの学校のクラスメイトになりました○○舞香言います!大阪出身です!よろしゅうな!」

パチパチパチパチ!!

「はい。ではあちらの席に座ってくれますか?舞香さん?」

「はい!先生!」

タッタッタ…

「これからよろしゅうな!」「あ…うん…よろしく。」

ホームルームを終えた後、舞香は富美恵に名前を聞いた。

「ふう〜終わった終わった!…隣の席やし、まあ仲良くしようや!…アンタの名前なんて言うんや?」

「私は…池井富美恵。」

「富美恵か〜!!ええ名前やないか〜!!…ウチは舞香…ってもうさっき、自己紹介したのにおかしい話やな〜!!…まあよろしゅうな〜!!」

「…うん。よろしく。」

「…ほっほ〜!」(富美恵か〜…な〜んか落ち着いてるな〜!…よ〜しこうなったら…ウチが盛り上げてやらんとなぁ〜!!)

・・・

「お〜い!トミー!!」「おい!なんか言うてみろよ〜!!」「本当に静かで薄気味悪いやつだな〜!!」

ギャハハハハハ!

「…」(はぁ〜…また絡んでくるな〜…本当にしつこいし懲りな…えっ?)

パーーーン!!

「いって〜!!」「なっ!?」「て、転校生!?」

富美恵にちょっかいをかける男子三人に突然頭からハリセンが飛んできた。すると、ハリセンを肩に乗せては仁王立ちしては鋭い形相で睨みつけていた舞香の姿があった。

「アンタら!…今日からウチのダチになった富美恵に何しとんのや〜…もし観念せんと虐めるようやったら…関西人バリバリのもっときつい一撃をお見舞いすんで〜!!!!!」(ゴゴゴゴゴゴ…)

「げっ!…に…逃げろぉおお!!」「ごめんなさぁーい!!」「お…お助けぇ〜!!」

「全く…学校はどこ行ってもいじめはあるもんやな〜ホンマに〜!…大丈夫か〜富美恵〜?」

「?…なんで助けてくれたの?」

富美恵は、今まで虐めを受けては助けてくれる人がいなかったためか、意外な反応をする。それを見ては、舞香は真面目な顔で笑顔でこう言い放った。

「弱いもんいじめする奴を見過ごすことなんぞできへんちゅうねん!!んなもんウチが成敗したる!!…それにな富美恵。…ウチらはもう友達やろ!?」

「…友達…舞香ちゃんと…」

「なはは!舞香でええわ!…それになんか大人しいからからかわれるんかも知れん!…こうなったらウチがとことん教え込んだるわ!!任せておきなされや〜!!」

「…分かったよ。…よろしく舞香!」

「ほな帰ろか!!」(ニッ!)

「そだね…帰ろう。」(ニコッ!)

富美恵は初めての友達になってくれた舞香と一緒に帰路へと歩く。するとそこに思いがけない衝撃の出来事が起こる。

「えぇっ!!ホンマか!?」

「うそ…え!?私の家の…隣っ!?」

「なははは!!こりゃあごっつい縁を感じるわぁ〜!!なあなあ!?まだ挨拶もまだなんよなぁ〜!!??」

「…どうだろう。父ちゃんもお母さんも…いつも遅いから…」

「よぉ〜し!!こうなったら思いっきり歓迎したるわ〜!!どうぞお邪魔してぇな〜!!早速たこ焼き器と粉もんとか用意するさけに!!」

「え…ええぇ!?」

・・・

ジュー!ジュー!

「よ〜し!あとはネギとマヨネーズを入れてと…よ〜し出来たで〜!!」

コトッ…

「…これが…大阪本場の…た…たこ焼き!…お…美味しそう!!」

グゥ〜…

「…あ…///」

グゥ〜!!

「なはははウチもやあはは!!ほな食べてみよかぁ〜!!」

「…うん!…いただきます…!」

パクッ!!

「あつあつ…!!…お…美味しいい!!!…こんなの…生まれて初めて…」(キラキラ!)

「せやろ〜!よ〜し今日のは中はカリカリ、中はふわふわ!…上手く作れたな〜!!…よ〜しドンドン焼くで〜!!」

ジュー!ジュー!

ガチャーーン!!

「ただいま〜!おっこの匂い!舞香〜またたこ焼きやってるんけ〜?…あら?でも見ない靴だね〜!」

舞香がたこ焼きを焼いていると、母親が帰ってきては誰かを家に招き入れているかの確認を取る。すると舞香は元気よく挨拶する。

「ああ!オカン!!お隣の池井さんや!!学校で隣同士の席で早速友達になってな〜!!」

「…ああ舞香さんのお母さん…お…お邪魔しています…初めまして池井富美恵と言います。…すみません勝手に上がり込んでしまい…」(ぺこり!)

「かまんよ〜!!へぇ〜!お隣の池井さんの子供さんと早速仲良くなってお隣同士でたこ焼きパーティーね〜!!…よ〜し!ウチも腕によりかけてしっかりおもてなししないとね〜!!」

ジュー!ジュー!

コトッ!…パサパサ!

「できたよ〜!富美恵ちゃん!食べてみて〜♪」

「…はい…。」

パクッ!

「!!…お…美味しいいい!!!」

「そやろそやろ♪…ふふん!」

「なはは…やっぱオカンには敵わんなぁ〜!」

「んん?…!!…ええ〜でも舞香もなかなか美味くなったや〜ん!!いけるで〜♪」

「ホンマか!?それは嬉しいな〜!」

ハハハハハハ!!

「…ふふ!あはは!」

「おおっ!!富美恵が笑いおったで〜!」

「へぇ〜!!ウチらの関西人のノリにウケるもんやな〜!!嬉しいわね〜」

「…ははは!」(私…こんな笑える気持ちになるの…生まれて初めて…!!…すごく賑やかで…温かいな〜!!)

富美恵は人生初めての楽しさや、友人との関わりを持っては温かみのある笑顔が溢れた。そしてそのひと時は終わりを告げていく。

「ただいま〜!…おっ!!見ない顔だな〜!!」

「ああ!あなたお帰りなさい!…今日もご苦労様でした。」

「すまないな〜!!突然の転勤で…舞香?その子は?」

「ああ!この子は富美恵や!!お隣の池井さんとこの子でな〜!同じクラスで早速友達になったんや!!」

「そうなのか〜!あ、でも、もうこんな時間か〜!!…どれ、お土産に焼いたたこ焼きを持っていって、富美恵ちゃんとこに挨拶に行こうか!!」

「そやね〜!!関西人独特のおもてなしっちゅうことや!!…なっ!?」

「そうね〜!!じゃあ富美恵ちゃん!!…連れて帰ってあげるさけによ〜!!」

「…うん…」(あ〜もうおしまいか〜…)

・・・

コンコンコン…

「…はい…あ、富美恵!!一体どこに…!!…あの…あなた方は…」

「初めまして池井さん!!私らは隣に引っ越してきた者です!!」「こちら名刺です!!…あと、帰りの遅いあなた方を気遣い、富美恵さんをウチでおもてなしさせていただきました!」「初めまして富美恵のオカン!ウチは今日初めて富美恵のクラスメイト兼友達の舞香いいます〜!…こちらお礼です!」

「!!…まあたこ焼きを…すみません!本当に!!…またお礼を返しに…」

「いえいえ!!いいんですって〜!そこまで義理があるわけではないんで〜…でもお隣同士!!…これからも仲良くしていきましょう!!」

「これからよろしゅうお願いしますね〜池井さん!」

「あ、これはどうも!…でも富美恵!お母さんすっごく心配しましたから〜!!」

「ご、ごめんなさいな〜!お母はん!…あれ…?」

富美恵はすぐさま母親に謝罪をする。すると舞香の関西弁の口調がうつったからか口調が出てしまい、その様子に母親も舞香やその両親も驚愕していた。

「と…富美恵!?…やだあなた何その喋り方…!?」

「おおっ!!富美恵!!アンタウチの口調早速出てきたんやないけ!?」「あはは!もう富美恵ちゃんもすっかり舞香と話しているうちに関西弁がうつってしまったようやね〜!」「こりゃあ賑やかになりそうですなぁ〜!」

アハハハハハハ!!

「関西人のノリはすごいのね〜富美恵…」「あ…あはは…あっ!」

スタッスタ…

「ただいま!…ん?…この人達は?」

「ああ!お父さんお帰りなさい!…この人達は、お隣に引っ越してきた人達でね、私達が留守の間に富美恵を保護してくれていたんですって…!」

舞香の家族と池井家の家族と話をしていると、そこに仕事帰りの富美恵の父親が顔を出してきたようである。

「そうなのか!…いやどうもすみません!ウチの富美恵がお世話になって!」(ぺこり)

「いえいえ!」「とんでもございませんよ!私達も色々とお世話になりましたので…」「富美恵!またいつでも遊びに来てな〜!!」

「うん!…じゃあね〜舞香!」

タッタッタ…バタン!

「賑やかな人が引っ越してきたようだな〜!」

「そのようね〜!…あら富美恵!…あなたなんか笑うようになったわね〜!」

「そう?…そうかもしれませんな〜!!」(ルンルン♪)

「…へぇ〜!!…確かに明るくなったな〜!!それでいいぞ〜!!やっぱり女の子はそれくらい元気でないとな〜!…だろ!?」

「…そうですね〜!」

・・・

〜舞香が引っ越してきてその一年後…富美恵小学3年生…

「ほなオカ〜ン!行ってくるな〜!!」

「気いつけていってきなさいな〜富美恵〜!!」「気いつけてなぁ〜!!」

「よ〜し行こっか富美恵〜♪」

「そやね〜舞香〜♪ははは!!」

一年後、富美恵は舞香と一緒に過ごしていくうちに流暢な関西弁でハキハキと喋る女の子になっていた。その様子を見ては近隣の住民からは、大絶賛の声があげられていた。

池井さんとこの富美恵ちゃん!偉い明る〜なったようだね〜!! へぇ〜!!あんなに元気よく話すの生まれて初めてですな〜! 隣に引っ越してきた舞香ちゃんのおかげですね〜!

「みんなにもびっくりされとるな〜富美恵!」

「舞香のおかげやよ〜♪…ホンマにおおきにな!!おかげでウチの家族も明る〜なってな〜!!」

「なはは!…せや!今日は富美恵の家でたこ焼きパーティーせぇ〜へんか?」

「え?突然なんでや?」

「ど阿呆!!…もう忘れたんかいな〜!アンタとウチが知り合って今日でもう一年にもなるんやで〜!!…その為の記念日やがね!!」

「!!…そっか〜♪もうそんなになるんか〜♪いや〜早いもんやな〜!!ええで!!今日は学校終わりに盛り上がろうか〜!!」

「そうこなくっちゃねぇ〜♪」

「さてそうと決まれば、早速学校やな〜!…ほないくで〜!!」

ピューーーッ!!

「あ〜富美恵待たんかいな〜!!」

タッタッタ…!!

・・・

〜放課後…

「…ふぅ〜終わった終わった〜!」

「さてと、家着いたらたこ焼きの材料買ってと…ん?」

タッタッタ…

「道着の女性…それにあの長さからすると…へぇ〜薙刀術か〜!なんか弁慶みたいやな〜!…ん?舞香?…どうしたん?」

「…いんや…なんかあ〜いう女性はカッコええなおもてな〜!」

「舞香はなんか似合いそうやな〜薙刀とか!!…偉い強そうやし〜!」

富美恵の発言に舞香は首を横に振った。

「んなことあらへんで〜!ウチこう見えてな〜!大阪におった時、一年坊の時はどえらいいじめられてはよう泣いたもんやで〜!」

「意外やな〜!…そんなに酷かったんやな…大阪の学校生活…」

「まあね♪まっ!今となってはここ北海道に住んでいるうちに、富美恵とも仲良くなっては楽しく過ごせとるし、感謝せなあかんな〜!!」

舞香は人生の中で富美恵と出会っては今が一番楽しいと感じているようであった。それを見ては富美恵も元気を出しては言葉を交わした。

「そっか♪ほな元気にたこ焼きパーティーと洒落込もうやないか〜!!」

「せやな〜♪富美恵♪…なはは!」

アーッハハハハハハハ!!!!

二人は大きく高笑いした。そして帰路に辿り着いてはその日の晩は、仲良くたこ焼きパーティーしては仲睦まじく、過ごし、そして月日が流れていくーーー

・・・
・・



B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



〜時は戻り、【Kagoya】河原木亭6/30・夜〜

「…とまあこんな感じやな〜!」

「…そうですか。舞香さんは大阪にいた時、いじめにもあっていたんですね…酷いです!!いじめなんて許せません!!」

「まあまあリーネはん!そうそうカッカするもんやないで〜!…でも舞香のおかげで大人しかったウチは変われたんや!…ほんま感謝してるわ…舞香には!」

「…でもたこ焼きパーティーですか〜!!…なんだか楽しそうですね〜!」

「まあな!それが、ウチと舞香を繋ぐもんやった!…それに春休みの間にススキノに行ったのもあって、舞香は中学に上がってはいじめの経験もあっては強くなろうと薙刀部に入ると心に決めてたらしいんや!!…でもそこからやったんや…ウチ自身の…運命が決まったんはな…その二日後の時やったんや…」

「…え……」

・・・

〜時は戻り、現世北海道の山道〜

「…ハァ…ハァ…なかなか長い山道やで〜!!」

「ああ。でももうすぐ着くよ…富美恵!!…もうすぐ頂が…」

「頑張って…富美恵!きっと舞香ちゃんも応援してくれているからね〜!」

「よっしゃぁ〜わかった!舞香のためにも…ウチも頑張るで〜!!…はぁ…はぁ…」

富美恵は両親と一緒に険しい山頂を登っていた。せっかくの休日にと思いピクニックである山道を登山することを決めていた。そして、時間が経ち、いよいよ山頂まで辿り着いた。

「…よ〜し到着!!見事登り終えたな〜!!」

「おぉお〜こりゃあ!」

「絶景やねんがなぁ〜…って言いたいんでしょ〜富美恵?」

「も〜うオカン!!それ言いたかった〜!!」

富美恵は母親に茶化され、少しご立腹の様子であった。その様子を見ては仲睦まじかったからか、笑いながら父親が一枚写真を撮った。

カシャッ!!

「おお〜!こりゃあいい一枚が撮れた!!」

「あぁああーーー!!!」

「あ…あなた!!もう///…一体…」

「「何すんねん!!??」」

「ハッハハ!!でもこうして北海道の山を一度登って見たかったんだ〜!!…いや〜絶景だ〜!!」

「はぁ…ほんまにこのおっさんは…ふふ…」

「こら富美恵!!お父さんにおっさんは…うふふ…」

アーッハハハハハハ!!!

家族一同は笑い、やまびこには家族の笑い声が帰ってきたようである。

「…それにしても…広いな〜!!ここ北海道は…」

「そうね…山々もこんなに続くともあっては、これが山という自然の醍醐味ってもんや!!」

「お父さん…ノリノリやねんがね〜!!」

「無理もないわよ富美恵!…だってこんなに絶景なんですもの!」

・・・

池井家族一同は、山頂の景色を満喫した後、下山していく。そして、しばらくしたうちに夕陽が沈み、辺りが暗くなってきたため、父親が、広い草むらを見つけては、こう言い放った。

「よし、もう夜だ!!ここにテントを貼って寝泊まりだな!!」

「せやな〜オトン!もう夜も遅くなってきたし、今日は野宿やな〜!…ウチも手伝うわ〜!!」

「ありがとうな〜富美恵〜!!」

「ふふ!じゃあ私は夕食の準備をしておくわね〜!!」

パチパチ…パチ!!

「…………」

「オトン!!しっかり持ってるから撃ち込んでや〜!!」

「わかった…そりゃあ!!」

ガサゴソ…ガサゴソ…カンカンカン!!カン

「…よし出来た!!」

「偉い立派なテントやな〜!!我ながらいい出来やなおとん!よっ!!頭領!!」

「お世辞がうまいぞ!!よっ!流石は愛弟子兼ウチらの一人娘と!!」(ポンポン!)

「あなた…こちらも出来ましたよ!!」

「お〜!!カレーやんけ〜オカン!!あ〜いい匂いするわ〜!!」

「うまそうだな〜!!…ほなら…」

いただきます!!

池井家族はその日、自然の中で美味しくカレーを口に含んでは焚き火に照らされながら山のピクニックを楽しんだ。そして夜も更けていき、いよいよ自然の中で眠りにつく。

「…おやすみ。」「おやすみ…あなた…」「オトン…おかん…おやすみ…zzz…zzz…」

「…嬉しそうやな〜富美恵…」

「本当に…こんな顔を見るのは久しぶりね〜!ウフフ!…じゃあ私も寝るわね…あなた♡」

「ああ…おやすみ…zzz…zzz…」

zzz…zzz…zzz…

「………」

〜翌日。

「ん…ん〜…ふ〜よく寝た〜…あれ?オカン?…あれ…?どうしたんな〜?オトンはおるのに…」

ガバッ!

「!!…え……!?お…オカン!!…一体……血…!?おとん起きて!!大変や!!」「どうした富美恵…!?…!!…なっ!?」


🎼Back Ground Music 》》》



「富美恵…あな…た…に…げて…!!ああああぁあ!!!」

グキリ!!…バキャン!!!!

「オカーーーン!!!!」「!!!?…嘘…だろ…!!熊だ!!」

「グォオオオオオオ!!!!!」

富美恵と父親の前に現れたのは体長2メートル以上はある羆であった。その羆は富美恵の母の首を力強く噛み、胸を鋭い爪で引き裂かれていたからか、多量の出血が見られていた。そしてしばらくすると出血多量によるショック状態に陥り、そのまま意識を失った。その獰猛さから、何度か人の味を覚えた獰猛な性格の羆であることが窺える。

「グォオオオオオオオ!!!!」

「!!富美恵ーー!!に…逃げろーー!!」(バッ!!)

ドーン!!

「あぐっ!!お…おとん!!」

「!!ぐあっ!!」

メキメキメキ…!!

「ぐあぁああ!!…ぁ!!…………」

ガブリ…グギリ!!…ゴギリ!!…!!!

「!!お……おと…ん…」(ブワァ…ゾワァ……)

富美恵は目の前で両親の父親が羆に頭を持ち上げられては捕食され、骨を噛み砕く音を直に聞いては青ざめていた。その様子を見ては、羆は次の獲物と思い立ったのか、富美恵を見ては狙いを定めていた。それを見て恐怖を覚えたのか、富美恵は、一目散に逃げ出した。

「ハァ…ハァ!!…くっ!!絶対に…死にたくあらへん!!…羆公の分際で…よくもウチの両親を…もう絶対に許せんとこやけど立ち向かっても奴のおやつになるだけや!…今は逃げるしかあらへん!!」(ポタポタ…)

タッタッタ…

「!!…なぁっ!!…が…崖!?…う…嘘やろ…!!」

富美恵は羆から逃亡を図ろうとする。しかしそこには、断崖絶壁の場所であり逃げ場はなかった。そして、匂いを嗅ぎつけたのか、捕食を終えた先程の羆が迫ってきた。

「グォオオオオオ…!!」(ギラッ!!)

「…!!」(ゾクッ!!…ブワッ!!)(おとんとオカンを喰っては襲った羆!!…許せんとはいえど…やっぱおっかないでぇ…!!テディベアとかの比ではないわ〜…)

富美恵は、羆の放つ野生の本能の殺気に思わず迫力を感じては圧倒され、後ずさる。しかし羆は狙いを定めていたからか、ジリジリ迫ってくる。

「グォオオオオオ!!!」

「!!…くっ!!…羆…本とかで読んだ昔の三家別のようにホンマにおっかないでぇ…頼むから…来んといてぇ〜なぁ〜…」(ポタポタ…)

富美恵はまるで命乞いするかのように、羆相手に涙を浮かべる。その弱々しい様を見たのか、いよいよ狙いの獲物と定めるかのようにヒグマが猛接近してきた。

「グォオオオオオ!!!!」

「あ…あかーーーーん!!!!」

バキ……バキバキーガララララーー!!!!

「え?…!!うわぁああああ!!!!」

「!!グウォオオ!!!!」

ゴロゴロゴロゴロ!!!ザシュグサッ!!!

「!!あが…が…」(ピクピク…)

ドゴーーーン…!!!

「グォオオ…………」

グデ…

羆と、富美恵は勢いよく断崖絶壁のナイフのように鋭い岩の破片に深く胸に突き刺さり、心臓を貫かれては身体を静止させる。そして羆はそのまま脳天に深く尖った岩が突き刺さり、絶命した。その羆の最期の様子を見届けては富美恵は安堵の表情を浮かべた。

「…は…はは…怖かったなぁ…羆…やけ…ど…おと…ん…オ…カン…仇は取ったでぇ…!……舞…香…ごめ…んなぁ…一緒に…中学には上がれんよ…うやわぁ……」(ポタポタ…)

ガクッ……

富美恵はそのまま視界が見えなくなり、激しく脈打つ動悸のする中、次第に目の前に暗闇が広がってはそのまま息を引き取った。

🎼Back Ground Music 》》》




〜その一週間後…

「…富美恵…どうしたんやろ?…もうあれから一週間も家族で山にピクニックに行くって言ったきり帰ってないけどな〜!もう始業式明日なんやで〜!!一体どこで油売ってるんや〜…」

『次のニュースです。今日未明、ハイキングをしていた登山客から、誰かが倒れているとの通報があり、死体の状態を確認して身元が判明しました。』

「ん?…!?…え…なんで…やねん……嘘…やろ…え…そ…そんな…」(ポロッ!)

舞香はそのニュースの報道を見ては涙を流した。そこには自分が明日一緒に中学生としての道を共に歩む、親友とも呼べる池井富美恵(12歳)とその両親の名前と明確な住所が記載されてはテレビに大きく報道されていたからである。その突然の報道を知り舞香は涙を流し、その母親も思わず涙を流した。

「どうしたの舞香!?…!!…え!?…そ…そんな…ああ富美恵ちゃん…池井さん…どうして…!!」(ポロポロ!)

『警察からはそれぞれの死体を解剖した結果、ひどい咬み傷や、ナイフで切り裂かれた痕があり、損傷が激しいことから、羆に襲われて亡くなったという見解も見られております。また、崖の下で岩に胸を貫かれた状態で発見された富美恵さんの付近には、体長2m長の羆の死体が発見されたとの情報があり…警察は…』

「嘘やろぉおお!!!!と…富美恵〜〜!!…!!…わぁああああんんん!!!!」(ポタポタ!!)

「うぅ…そ…そんな!!池井さん!!…あ…あぁあああああ!!!!!!」(ポタポタ!!)

その後、富美恵の真実を知った舞香は中学では薙刀部に入部し、優秀な成績を残しては中学卒業後に推薦で広島にある名門の薙刀部のある高校に入学する。北海道から広島に移り住んでは、富美恵の死から必ず自分は富美恵の分まで生き、世界のてっぺんまでとり、そしてその名を必ず世界に届けさせてやるまで、人助けの際には、自分の名は言わないと薙刀を胸に心に誓っている。一人暮らしのため、苦労はしているが富美恵の方が一番苦しんでいたことを胸に、彼女はいじめを受けてきた経験を元に自分の信念に従い、ひたすらに強くありたいという女性として前に進んでいく。ある日、まるで幼き時の自分のようにいじめられていた一人の少女を発見し、その少女に笑顔になる魔法をかけるかのように元気づける。そう。まるで灯火のように明るい名前の子に明るく輝く光の手を差し伸べるかのように、そしてその少女が後に小児ガンを患い、闘病中の一人の令嬢の身分のある女性に、尊い命の話や体験を学ばせる存在となり、その事がのちに壮大な【Paradiso】の物語へと繋がっていくーーー

・・・
・・


「…さて…そろそろ出るか…リーネはん!」

「そうですね〜!!長風呂すると流石にのぼせてしまいますからね〜…でも舞香さんも薙刀お好きだったんですね〜!…もしかしたら、私とも縁があるかもしれませんね〜!!」

「なはは!言えてるな〜!!…もしかしたらいじめっ子から小さい女の子を守っては、薙刀片手に自分はてっぺん取るまで強くあり続けたいとか思ってるん違うんかな〜!…舞香は!」

「…ふふ!そうですか!」(なんかどこかで聞いたような気がしますね…)

【Keito】と【Linea】は満足げに入浴を楽しんだ。そして【Keito】の【Paradiso】の物語の話は、次に【Hux・row】に委ねられる。




B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)



〜???の世界〜(【paradiso】歴1995年6月15日。)

〜カラーン…カラーン♪

「zzz…んっ…!!……!?な、何やねんなぁ!?ここ!?…ウチ…あの時…羆に襲われて…」

富美恵は目を覚ました。中はとても狭く、周りには白い薔薇が囲まれており、顔の前にはドット状の穴があった。富美恵は、一度前の扉を押し出してみる。

「おっ!…どうやら開くようやな…よっと!…なんやねんな〜…ここ…?」(ガタン!)

富美恵は扉を開け、身体を起こして周囲を確認する。下を見るとそれは案の定、棺で眠っていた。周りは空間は薄暗く、もやがかかった空間が広がり、目の前には白い道が続いていた。そして天井は高さが見えない。そんな時富美恵は何か物音の気配を感じたのか周囲を警戒した。

ガタッ… ゴゾッ…

「…!だ…誰なんや!?」

「呼びました?」(ひょっこり!)

「!?」

富美恵はとっさに目の前にいる少女に語りかけた。

「あら…これまたウチと同い年くらいの子か?」

「やっほ〜♪」(ニパ〜!)

「…!!…な…なんやねんな…まあども!」

「こんにちは〜♪初めましてってやつです!」

富美恵は目の前の少女を確認すると、それはシルバーブロンドの髪色でロングヘアー、肌は白く、胸元に十字架のワンポイントに青白のワンピースを着た笑顔の一人の少女がそこにいた。そして少女はすかさずニコニコと挨拶をした。

「私の名前は、導き人の一人、オロア!よろしく〜♪…そしてあなたをユートピアの世界へと勧誘に来ました!」

「…は?導き人のオロア?…ユートピアの世界って…なんかラノベみたいやな〜!…んでどういう事やねんな自分?」

「あ〜知らないんですね〜では教えちゃいま〜す♪」

するとオロアは口頭で懇切丁寧に説明した。

「ユートピアの世界とはいわゆる天国と地獄ではないもう一つの死後の世界があります。あなた達の現世で【paradiso】という言葉聞いたことありませんか〜♪」

「ん…あ〜!なんかオカルトでそんなん聞いたことあるわ〜!…んでそれをウチにも招待してきたと…やっぱあの時ウチ死んでたんやな〜!」

「はい♪あなたはあの時、現世で羆に襲われてそのまま崖が崩壊しては墜落して、羆と心中をはかって死にました〜♪」

「…そんな事を気楽に言えるアンタは…余程この状況に慣れてるようやな〜…まあ確かにそうやったなぁ…」

富美恵は当時の出来事を鮮明に思い出す。そして思わず涙が溢れていた。

「くっ!!おとん…オカン…すまんなぁ〜…ウチは結局何かの縁で生き残ったけど…」(ポタポタ!)

「それはまだわかりませんよ〜♪池井富美恵さん!!」

「…!!なんでウチの名前知ってるんや!?」

「よくぞ聞いてくれました!私たち導き人にはあなたの現世での行いについての記憶を全て知っていますよ〜!も・ち・ろ・ん!あなたの親友の舞香さんのこともですよ〜!」

「…そうでっか〜んでオロアはん!…その【paradiso】へはどうやっていくんや?」

「こちらになりま〜す♪ご案内しますのでしっかりついて来てくださいね〜♪」(ピューー!!)

「うぉっ!!足はやっ!!」

「早くしないと日が暮れますよ〜♪」(ダダダダっ!!)

「しゃあないじゃじゃ馬娘やで〜…しゃあないついていくか〜!!」(タッタッタ!)

(ふふふ…関西弁とはなかなかユニークな人ですね〜♪)

富美恵は走り続けた。すると視界は真っ暗闇になり、目的地に辿り着いたようだ。

「…ハァ…ハァ…着いたで〜!」

「ご苦労様です富美恵さん!!ではではあれをご覧くださ〜い♪」

「ん?…!?…なんやあれは!?」

富美恵は思わず声をあげる。そこにはスポットライトのような光が三つもあり、先に続いている。

「何やねんな?あの光は?」

「あれは現世の世界の光の一部です!光を浴びると、あなたの生前の様子だとか、その他の人の身体を借りて、いろんな追体験できたりと…まあとにかく色々な価値観に触れるのがありますね〜♪あ、特に害はないのでご安心ください!」

「あれがか…どう言ったもんなんやオロアは!!…」(クルッ!)

「〜♪…えい!」(ドン!)

「ちょ!?…!?おわぁあ!!」(ビュー!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「おいこらアンタ〜!!不意打ちは〜…あ…」(シュン!)

富美恵はオロアの不意打ちを受け、光の中へと消えていった。オロアはその様子を見て、こう思った。

(現世では関西弁を話す北海道の少女…その親友の舞香さん…一体どんな生活だったのか…ふふ♪実物ですね〜♪)

🎼Back Ground Music 》》》




It's not time to think about what isn't there now.It's time to think about what you can do with what you have now.
(今はないものについて考えるときではない。今あるもので、何ができるかを考えるときである。)

Luck appears in various forms.If so, how do you know that?
(運はいろんな形をして現れる。とすれば、どうしてそれがわかる?)

Ernest Hemingway
(アーネスト・ヘミングウェイ)


・・・

〜時は戻り、約何年間も前の出来事〜

《なんやここ?…どっかの小学校みたいやな…》

「や〜い!このノロマ〜!!」「ほらほら〜!!」「ベロベロば〜!!」

「も〜う返してぇなぁ〜!!…やめてぇ…なぁ…うぅ…グズッ!!」

《あれって…まさか舞香か…となるとこれって、舞香の…思い出…》

「おい泣いてるぞ〜!!」「や〜い泣き虫〜!」「へへ〜んこれでもくらえや〜!!」

プシューー!!

「ああっ!!…これって…ぺ…ペンキ…!!う…うわぁあああんんん!!!」

舞香は男子にペンキの入ったスプレーを頭にかけられ、号泣した。すると、それを見た教師はすぐさま止めに入る。

「ちょっとそこの男子!!すぐにこっちへ来なさい!!」

「あっ!!逃げるぞ〜…わ〜〜〜っ!!」

「こらっ待ちなさい!!…舞香さん…大丈夫…?」

「!!」

タッタッタ…

「あ!舞香さん…」

《そうか…舞香…まだ小学一年生やったのに…こんな仕打ちをな〜…》

「…グスッ…なんでウチのことばっか…ホンマに…もう嫌やなのに〜!」

「…よう嬢ちゃん!…泣いてるんか?」

「え?」

「!!…うぉわっ!どないしたんや!?…頭にペンキかけられたんか!?」

「…うん…それでもう…ウチ…」

「…そうか…よしわかった!!ワイがなんとかしたるさかいにな!!…とりあえずそこに座ってくれるか〜?」

「…え?できるの!?」

「当たり前やろ!!伊達にゴッドハンドの名は伊達ではないこっちゃやで〜!!…ほないくで〜!!」

《ゴッドハンド…それを自分で言うんかいな〜…》

そのゴッドハンドの異名を持つ男は、すぐさま道具を用意しては、舞香の髪を少しずつカットしていき、まるで神業とも呼べる技術で舞香に付着したペンキの髪をカットしていく。

パチパチパチ…

「!!うわぁ〜!!」

「どや!?」

「まるで別人みたいやわ〜!!兄さん!!おおきにな!!」

「おう!…あとその様子やといじめにも遭ってるんやな…」

「…そうなんだ…それで私…」

「よし!この兄さんが色々相談に乗ったるわ!!…ついでに護身術くらい教えたる!!」

「!!…いいの!?」

「ああ!今日はいいことあったからの〜!!色々教えたるわ!!」

「…おおきになホンマに…グスッ!」

《いい兄さんやな〜…舞香…いい人に会えたな〜!》

・・・

その数週間後…

「うぉわぁ!!」「な…なんで」「俺達の動きが…」「一体どうなって…」

「…まだやるんけ!?…ワタッ!!」(クワッ!)

舞香はゴッドハンドの異名を持つ男から護身術を習い、複数人相手とも渡り合い、立ち向かえる能力を身につけている。それを見た男子児童は恐れを成して降伏した。

「す、すいません!」「もうしません!」「参りました!!」「に、逃げよーっと!」

ピューーー!!

「…よし!!…ホンマにあんがとな〜ゴッドハンドの兄さん…」

《舞香…ここからアンタは、いじめに立ち向かうようになったんやな〜!…ホンマにすごいで〜!》

〜下校中

タッタッタ…

「…ん?」

「…ハァ〜…まいったな〜…」

「ああっ!ゴッドハンドの兄さん!!」

「ん?おお嬢ちゃんか〜!…なんや…えらい元気そうやな〜…」

「へへ〜ん!まぁね〜!…でも兄さん元気なさそうやね〜…一体どないしたの〜?」

「実はな〜…俺、今日で仕事クビになってな〜」

「ええっ!?何でですの〜?あんなにピカイチな腕してるのに〜!?」

「いや、腕はええんやけどな〜…どうも、俺の技術は、あまりにも独創的すぎてな〜それがよくないせいか、店長と揉めてな〜…」

「…ん〜?…でもゴッドハンドの兄さん!!アンタの腕なら東京でウケそうやけどなぁ〜!」

「!!…な、何を言うてるんや!?…東京ってのはそんな甘いもんやない!…無理に決まっとるやろ!!」

「無理かどうかは、自分の実力を見てからや!!やらずに後悔よりやって後悔やよ!!…護身術教えてくれた時に兄さんがウチに教えてくれたことやんかいな〜!!」

「!!…嬢ちゃん!」

「大丈夫!ウチ絶対に応援してるから!…頑張れ!東京でも、アンタみたいな兄さんに合う店の散髪屋!!絶対あるはずやから!!」

《舞香…アンタ…》

「…しゃあないのぉ…ほな…ゴッドハンドが鈍(なまくら)でないことを証明して…いっちょ東京に殴り込んでは挑戦してみようやないか!!」

「兄さん!!その意気やで〜!!」

その後、ゴッドハンドの異名を持つ男は東京に行き、ゴッドハンドという名前の散髪屋に理容師として転職した。その数年後、白狼の異名を持つ男と出会い、それが物語に繋がっていくのであった。

〜その一年後…

「ただいまやで〜!」

「ああ舞香おかえり!…ちょっと話したいことあるけどいいかな?」

「ん〜?オカンなんなの?」

「実はね〜…お父さん転勤で北海道に行くことになったんや〜…」

「!!ええぇっ!?…ほ…北海道!?ホンマにか!?」

「そうなんよ〜…やから!…一緒に行ける?」

「…大丈夫や!ウチは行くよ!…安心せぇいやオカン!…転校してもウチはもういじめは怖わない!!…いつでも来いやぁ!!…むしろ虐める奴は返り討ちにしてやるわ!絶対に許さへんでぇ〜!!」

「ふふ…そう…!!じゃあお父さんにも言っておくわね〜!!」

《舞香…アンタは偉いなぁ〜…ホンマに強い子やわ〜…!!…な…なんや!?》

富美恵の頭の中で何かが入りこむ感覚に襲われ、映像が流れ込んできた。

〜池井富美恵の墓〜

「うぅ…富美恵…あほ…ホンマにど阿呆やでぇ〜…うわぁああんん!!!」(ポタポタ)

《!!…舞香…うぅ…すまんなぁ〜!ウチの墓の前で…すまんかったな…》

「…でもな…富美恵…ウチはアンタの事、信じてる!あの世でも…アンタは絶対何かをやり遂げるってなぁ〜!!」

《!!…舞香》

「やから、ウチは薙刀部に入る!…誰よりも強くなっては、必ずウチの舞香という名前を日本中に、いや、世界中に知らしめてやるんや!!…やから富美恵も、あの世で見とけとは言わん!…わかるんや!…富美恵…アンタもあの世に行って…今何かと戦おうとしてるくらいなぁ〜!…せやから!!…お互い頑張ろうや!!」

《!!…舞香…うぅ…せやな…ウチの親友…舞香!!》

「さて…そろそろ行くか…ほな部活に行ってくるな!!…また…何かしらの縁で…会おうや…!!…我が親友富美恵!!」

《舞香ーーーー!!!!!》

・・・
・・


「ハッ!!」

「あっ!?気がつかれましたか?」

「…!!グスッ……いや…もう涙を流すんはなしや…舞香だってウチの死でいっぱい泣きたかった気持ちだったんや!…今更泣いても何も始まらへん…ウチはこれからも生きていくで…舞香のためにでもあるし、ウチ自身の為にもな…」

富美恵は今回の第一の試練で、舞香の過去には、壮絶なものがあり、それを偶然、恩師とも呼べるものと出会い、その辛い現実に立ち向かおうとした舞香のエピソードは、富美恵にとって、忍耐力の力を身につけ、目標に跳躍する自己実現の意志を身につけることができた。それを見てはオロアは次の試練を用意する。

「…そうですか〜♪…では第二の試練に移行しましょうかね〜♪」

「早っ!?(…やけに焦っとるな〜オロアはんは〜…)

「焦りというよりせっかちですよ〜♪」

「心読んだ!?…読心能力者ってやつか!?」

「まあそのようなものですよ〜!!…どうします〜?…それとも威勢だけのお子ちゃまなのですか〜♪?」(プークスクス!)

「ムカッ!!…はぁ〜…まあええやろ…と見せかけてチョーーップ!!」

パシーン!!

「ガッシリ!!…ふっふ〜ん♪」

「!!掴まれたやて…!!うぉわぁあ!!!!」

「そぉーーれ!!」(ブン!…ポイ!)

オロアは、富美恵の手を持っては、思いっきり遠心力を使っては振り回し、そのまま光の中へと投げ飛ばした。

「ちょ!?アンタさん!?…!?ど…どえええ!!」(ビュー!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「オロアはーーん!!!アンタ覚えておきや〜!!」(シュン!)

シュン!!

富美恵はオロアに対する不満を感じ、罵声を浴びせようとするも光の中へと消えていった。オロアはその様子を見て、こう思った。

(ふふ〜ん♪次は第二の試練!一体どのような経験が待っているか…あれくらいのチョップでは、私に傷一つつけることはできませんよ〜♪)

・・・

🎼Back Ground Music 》》》



〜札幌・ススキノ・ある路地裏〜

《!!ここは…見覚えあるで!! Nikkaの看板…まさか…夜のススキノか!?》

「…ぐはっ!!…くそっ…」

「ようよう川原さんよぉ〜!!…テメェ〜…よくもウチのもんを可愛がってくれたようやなぁ〜…」

「くそが…殴るなら殴れ!!…この女虐める胸糞悪い下衆が!!そんな風に部下を教育してるお前らにも落ち度はあるようだなぁ!!」(キッ!!)

《川原はん!!…アンタ…》

「…!!いい度胸してるじゃあねえか!!…うぉらあああ!!」

パシッ!!

「!!…お…親父…」

「!!…アンタは…」

《お…親父…ってことは…!?》

富美恵は河原の記憶の中を傍観しては、その川原の生い立ちには悲惨な現実があることを知った。そして、川原を助けたものは長めのロングコートを着ては威厳のある目をした高齢の極道の長であり、部下に注意を働く。

「おい!!…カタギには手を出すなとあれほど言ってるだろうがぁ〜!!!」(ギラァッ!!)

「す…すいやせんでしたぁあ!!!」

タッタッタ…

《お〜…ホンマもんはやっぱ迫力違うなぁ〜!!》

「まったく…大丈夫ですか?…ウチの若いもんが迷惑をかけてしまいまして…」

「…別に…俺の方こそ、アンタの部下を…だけどあの野郎の部下っていえばいいのか…無理矢理女に乱暴していたので、ついカッときちまって…それで…」

「なるほどな…君仕事は?」

「以前まで、食品工場で働いていましたが、クビになって働き口を探してる最中なんですわ…あ…申し遅れました。自分川原いいます。…あなたの名前は…?」

川原は職業難という不況な現実に悩んでいるようだ。すると長は笑みを浮かべては名前を告げてはこう語りかけた。

「桐山というもんだ!…そうか分かった。…よ〜し川原!!…俺の弟子になってみるか?」

「!!…えぇ!?…桐山さん…俺を弟子にして…一体何をするんで…?」

《!!…突然やな〜…まさか…その弟子って…!?》

「これや!!コイツで仕事をするんや!!」(サラサラ…)

「!!こ…粉…!?まさか麻薬密売でっか!?」

「違う!!…こいつはたこ焼き粉や!!…あとはわかるな〜?」

「ああ〜!?…つまりたこ焼き屋さんでっか!?」

「おうよ!!まあわしらのシノギの一部やがな……こっちや!!…ついてきてもらおうか!?」

「は…はい!!」

《そっか〜…それで川原はん、この人の紹介でたこ焼き屋さんをな〜!!》

・・・

ジュー!ジュー!

「よし、そろそろやな!…よっと!!」

「お〜!!上手いぞ!!なかなか手際が良いのだな〜君は!!」

「ウチこう見えて、たこ焼き作るんだけはすげぇ〜自信あって得意だったんで!!よーし!!まだまだ焼くぞ〜!!」

「はっは!!こりゃあ期待の新人が来たな〜!!だがワシも負けられんな〜!!」

「一つくださいな〜!!」

「毎度!!…おおきに!!」

「!!…旨いな〜!!…外はカリカリで中はふわふわやわ〜!!新人の兄さん本格的やね〜!!こりゃあ桐山さんもいい弟子を取りましたね〜!!」

「まだこれからやよ!…みっちりと修行つけさせなあかんよってに!!だろ川原!?」

「はい!精一杯頑張らせていただきます!!桐山さん!!」

《そうか〜!川原さん…この桐山さんって人に会っては、色々学んだんやな〜!!》

その半年後…

「!!えぇっ!?俺が…ここのたこ焼き屋の…オーナーに!?」

「ああ!お前は思った以上に飲み込みが早い!!…この調子で行けば独り立ちできるやろう!!…免許皆伝や!!」

「でも桐山さん…俺にできるか…」

「ははは!…大丈夫だ!!…お前にはその器量がある!!…うまく行けばこのススキノの顔になれるぞ!!」

「ホンマですか!?…えらい嬉しいな〜!!」

「はは!あと、もう一つ言うとな、俺と関わりのある奴は大抵の組のやつは退く。何も心配することはない!…それで人助けるんもよし!…ここからはお前の道だぞ!…川原!!」(肩ポンポン!)

「…!!…はい!ありがとうございます!!桐山さん!!」(ぺこり!)

その後、川原は、桐山とつるんでいたこともあり、顔を覚えられていたからか、手を出さぬようにとの周りの組からは恐れられる程の存在となっていた。しかし川原はそれを自分の欲に使うことはなく、人を助けるために権力を使っては義理人情の大切さを桐山から仕事をしていく上で教わった。それに飽き足らず、桐山に護身術として空手や柔道などの体術稽古をつけてもらい、より武道派として活躍しては、決して極道の道には踏み入れさせないように教えを守り、もしもの時の用心棒として立派なススキノの顔になっていた。食品工場を解雇され、行くあてもなかった川原にとって桐山との出会いはまさに奇跡であったのだ。そして月日が流れていくーーー

時は流れ…

「よ〜し!今日も無事終わらしたな〜!!…さ〜てと!いつものとこで飯でも…ん?」

《川原さん…仕事終わりか…ん?…!!…あれは…ウチと舞香やんかいな!?…まさか…あれって…》

「これから仕事だってのに俺のスーツ汚しおって〜!!どうしてくれるんだよぉ〜!?ガキとはいえど許されないんだよ〜!!」

「!!まだおったんかアイツら…よ〜し!!サングラス掛けて桐山さんの教え通りに、善良な市民の富美恵!舞香!お前ら二人を守ったるでぇ〜ほなら…世直しやぁ!!」

「す、すみません!!」「この通り堪忍してやぁ〜!!」

「あぁ!?…謝ってすめばいいと思ってんのかぁ〜!!」

ブン!!

「ッ!!」「舞香!!」(ダキッ!!)

ガシッ!!

「!!」

舞香は目を瞑り、富美恵はチンピラの攻撃から身を守るために抱き抱える。するといつまでも攻撃が来ないために恐る恐る目を開いていく。

《川原はん…ホンマにありがとうな…》

「…え?」「な…何や…一体!?」

「な、何だ!?…!!…て…テメェ…は…!?」

「何ここで屯してんだ…?ここはお前らの組の縄張りじゃあなかっただろうが…それに…こんな可愛げのある関西弁の女の子二人にこんな乱暴に威圧しては泣きべそかかせやがって…次見かけたら…ウチのもんが容赦しねぇぞ!!」(ギラァッ!!)

男は高圧的かつギラついたオーラを放ってはチンピラを威圧させる。

「ひ…ひぃぃい!!」

タッタタタタタ!!

「…た…助かったでぇ…」「ありがとうなぁ〜…兄さ…!!」

「…ほな。嬢ちゃん二人!もう夜も近いさけ、お土産持って気いつけて帰りぃや〜!!」

タッタッタッタ!!

「こりゃあ驚いたで〜!グラサンしてはおったけど…あの声て…まさかの川原はんとはな〜!」「エライ人なんやな〜!…昼間はシノギでたこ焼き屋で本業はまさかの墨入れもんやとはな〜…ってぇ〜!こうしてはおれへん!はよう帰らないかんわ!ウチのおとんもおかんも心配しとるで〜!」

タッタッタ…!!

《…川原はん…アンタは墨入れもんやなかったんやなぁ…誤解してすまんかったなぁ!…でも…ホンマに偉い人やで〜!!…余程桐山さんとこで修行しては、どえらい努力したんやろなぁ〜!!》

キィーーン!!

《!!…また頭の中が…!?》

富美恵は、頭の中に映像が流れ込んでくる感覚に襲われる。するとそこには新聞記事と大型テレビの報道を見ては涙を流す川原がいた。


🎼Back Ground Music 》》》



・・・

(ポタポタ…)

「くそ…富美恵!!…何でや!?…山で突然羆に襲われて亡くなるとか…突然すぎるやろが…!!」(ポタポタ…)

川原は新聞を読んでは、富美恵の最期を知る。その衝撃なニュースを見ては涙を流していた。

《川原はん……アンタも知ったんやな…ウチが亡くなったこと…すまんなぁ…舞香も悲しんでたからなぁ…ホンマにすまんなぁ…》

タッタッタ…

スタッ…

「…川原…」

《き…桐山さんや!!》

「…!!…桐山さん!?」

「その富美恵という子…お前のたこ焼きを買いに来ていたのだったな…残念だな…」

「!!…見ていたんですか!?桐山さん!?」

《…そうか…独り立ちしていても、温かく川原はんのこと…影で見守っていたんやな〜》

「ああ。お前以上に上手い関西弁の元気のあったおてんばな子だったな。……友人を連れてはススキノの街を見物しては二人仲良くお前の作ったたこ焼きを買っては美味しく…嬉しそうに食べては…とても喜んで…満面の笑顔だったな…」

「…はい…本当に…!!」

「あの子の笑顔を忘れてはならないぞ川原!!…お前にはやっと、あの子の笑顔を見ては大切なものを…そして守るべきものができただろ…?」

「!!…はい…俺…これからもたこ焼き屋を続けては、このススキノに住む人達を見守り…大事にします!!…例え富美恵とは数分の出会いだとしても、俺があの子を庇って守ったことは、恥ずべきことではないということを…俺と…桐山さん!!…あなたの教えを…そして生き方をこれからも貫き通していきます!!…見ていてください…俺絶対…あの子の分まで…桐山さんのように強い男になります!!」

「…フッ…精進しろよ…川原!」

《川原はん…ホンマにアンタはごっつい男やで〜!!…いや…そうさせたんは…桐山はんという墨入れものの極道の人やけど…それでも人として…》

富美恵はにこやかな笑顔で、自信を持ってこう言い放った。

《模範になるような強い人で、堅気には親のように親切で…ホンマに義理堅くて…人を大切にする生き方を学べたことが、川原はんを真っ直ぐな一人の男にさせたんやな〜!!》

・・・
・・


「…ハッ!?」

「あっ!?気がつかれましたか?」

「…!!…おかげさんでな〜…川原はん…ホンマに強い男やった!!…あんなに義理堅い桐山って人と出会って、ウチや…舞香を助けてくれたんやな…ホンマに感謝するで〜!!」

富美恵は今回の第二の試練で、川原の過去を知り、偶然恩師とも呼べる桐山という極道と出会い、その男から学んだ義理堅いエピソードを体験しては、富美恵には、義理堅く人の成長を見守り、人情を大事にする受け継がれし人との繋がり、出会いの大切さのコミュニティーや繋がりの大切さを身につけることができた。それを見てはオロアは次の試練を用意する。

「…そうですか〜♪富美恵さんも義理堅さから学んだこと…大切にしましょうね〜♪…ではいよいよ〜♪最後の試練ですよ〜♪」


B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?



「…よ〜し…ここまで来たらやるしかないでぇ〜!!…こうなりゃあ死ぬ気でオロアはんをギャフンと言わせたるで〜!!」

「なんでやね〜ん♪」(シュッ!!)

「おっと!!もうその手には乗らんで〜!!うぉらあ一本!!」(シュッ!)

パシーン!!

「またもやガッシリ!!…ふっふ〜ん♪」

「!!くっ!!またしてもかいな!?…って!?…うぉわああああ〜〜!!!!」

「そぉーーれ〜!!…今回はさらに回しますよ〜♪」(ブン!ブン!!)

オロアは、富美恵の両手を持っては、思いっきり遠心力を使ってはジャイアントスイングのように振り回し、そのまま光の中へと投げ飛ばした。

「ど!!…どえええ!!目がまわ〜〜!!あーーー!!」(ビュー!)

ポイっ!!

「いってらっしゃ〜い♪…あ〜スッキリ〜♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「こんの〜じゃじゃ馬娘〜!!……あ」

シュン!!

富美恵はまたもやオロアに対する不満の募った罵声を浴びせようとするも光の中へと消えていった。オロアはその様子を見ては笑みを浮かべてはこう思っていた。

(ふふ〜ん♪いよいよ最後の試練です!…さて…あなたの最後に見る景色は一体なんなのでしょうね〜♪…じゃじゃ馬娘ですか〜♪それも結構ですよ〜♪)

・・・
・・





🎼Back Ground Music 》》》



〜ある森の中〜

《!!…今度は森の…中…ってことは…》

「グァああああ!!」(よ〜し…今日も我が子の為にも餌を取ってくる…お前はここで待っておけ…必ず…戻る…)

「グウウウ!!」(…あなた…行ってらっしゃい…)

《!!羆…!!…でも…なんか声が聞こえるで!?…まあ確かに鳴き声だけやとわからんわなぁ〜…それでも声が聞こえるとは…摩訶不思議やなぁ〜…》

富美恵は、森の中にいた。そこに羆の親子が鳴き声を発しながらも人が話すような心の声が聞こえていたようであった。

・・・

〜ある山の下流〜

「グワァああああ!!!」(…魚だ…味も…悪くない…持って帰ってやるとするか…)

《…自然界やなぁ〜…ま、記憶の中や…もうウチが襲われることはないやろ…そう思いたいわ…おとんとオカンを食い散らかして、それはおっかなくてトラウマも植え付けられてはアンタを憎みたい気持ちはあるけど…もうアンタとウチとの決着は着いたんや…今はアンタの生涯を見守ってやらんとなぁ…》

富美恵は自分の最期を思い出しては目の前にいる羆を見つめていた。その目には、羆の恐ろしさがあったが、それでも、その羆の様子をじっと見守っていた。

スタスタ…

「グァアア!!(…帰ってきた…魚だ…生まれてくる子供の為にもしっかり食べろ)」

「グォオオ…!」(…ありがとう…)

バクバク…

「グァアア…!」(…どうだ…?)

「グォオオ…!」(…美味しい…いつもありがとうね…あなた…)

「グァアアア!!」(…気にするな…お前は元気に私達の子を産んでくれたら…それでいい…我が子にも見せてやりたいのだ…この広大な山の景色を…)

「グォオオ…!」(……あなた…そうですね…元気に生まれてくることを祈るばかりだわ…)

「グァアア…!」(…大丈夫だ…私とお前の子だ…きっと逞しい子供が産まれてくる…だから私達は…これからも一緒だ…)

「グォオオ…!」(…あなた…ありがとう…本当に…ありがとう…)

《羆…なんだかんだ…奥さんと、今後生まれてくる子供に…えらい優しいかったんやな…せやけど…何故あんなことになったんや…》

・・・

ザザーーーッ!!

テクテク…

「グァ……」(雨か……!!…何かいるな…)

ダァーーーン!!

《じゅ!!銃声や!!…ハンターか!?》

突如、雨の降る視界の中、猟銃の鳴り響く音が聞こえてきた。すると木の影には一人の猟師が猟銃を持って発泡しては羆の肩を貫き、銃弾を補充しては仕留めようとする。

「外した!!…でかいな!!野放しにしていると危険だ!!ここで駆除する!!」(カチャン!!)

「!!グゥオオオオオ!!!」(許さんぞぉ〜!!人間〜〜!!!)

ザシュッ!!バキョーン!!

「!!…」

ブシャーーー!!!…ガブリ!!

《あ…あ……なんてこったやで…》

「グァあああああ…!!」(人間…なかなか美味い肉だった…次の獲物は人間を襲うのもいいか…だがあいつには…魚を食べさせないと…)

《なんちゅうパワーや!?ハンターのく…首が…ホンマにおっかないで…羆って生物は…もしかしたら、このハンターさんを殺してしまって、人間の味を覚えては…三家別みたいな羆になったっちゅう訳か…》

富美恵は羆の力に改めて驚愕し、生に対する執着心を持つ執念深さを肌で実感した。そして羆は雨の降る中、魚を捕まえては、母親羆の元へと戻っていく。

「グォオオ……」(…戻った…!!…お…お前…!?)

《!!…な!?…母親羆…えらい怪我やで〜!!…まさか…撃たれたんか!?》

母親の羆は腹部や胸部に多量の出血が見られていた。そして富美恵の頭の中から声が聞こえてくる。

🎼Back Ground Music 》》》



「グァアアア!!!」(しっかりしろ!!)

「グォオオ……」(ごめんなさいあなた…人間に突然撃たれて…この子を…守れなかったみたい…)

「グァアア!!」(諦めるな!!我々の子なんだ…それに…お前に死なれては…私は…)

「グォオオ……」(あなた…元気で生きるのよ…私の事は忘れて…)

「グァアア!!!」(そんな事はできない!!…お前は私の妻なのだ!!…それなのに…くっ!!…お前のみならず…我が子までも…何で…)

《羆…アンタ…くっ!!親の仇やったのに…なんかやるせられん気持ちや!!…何で、自然界というのは、こんなにも残酷なんや!!??》

富美恵は改めて自然の中で生きるには、それ相応の命の駆け引きが試されるということを実感した。そこには生命の神秘と、言葉を理解できない動物にも家族の絆があることを肌で実感した。そしてそれを食い物にする者達も生きることに必死になるため、自分の命を守るために武力を持つことの必要性を学んだ。

「グォ……」(あなた…好きよ…決して忘れない……わ………)

「……グァアアアアアアアア!!!」(…そ…そんな……くそ…くそーーー!!!!!

《……クソ…何で…親の仇やのに…なんで涙が出てくるねん!!…それでこの羆は…人を襲うように…》

富美恵はその後、羆の様子を見ていた。すると、登山客の者を見かけては狂ったように報復に取り憑かれた悪魔になったのか次々と襲う映像が流れ込んできた。富美恵は思わず目を背けたくなる映像もあったが決して目を離さず、涙を流しながらその光景を見ていた。

《奥さんも子供も人に殺されてから、狂ったように…人を襲うようになったな…復讐心がハンパやないな…これが…羆の執念深さっちゅうやつか!?…!!…アレは…》

「富美恵…あな…た…に…げて…!!ああああぁあ!!!」

グキリ!!…バキャン!!!!

「オカーーーン!!!!」「!!!?…嘘…だろ…!!熊だ!!」

《!!オカーーン!!…うぅ…オカン…》

「グォオオオオオオ!!!!!」(…美味い肉だ…そこにもいる…)

富美恵と父親の前に現れたのは体長2メートル以上はある羆であった。その羆は富美恵の母の首を力強く噛み、胸を鋭い爪で引き裂かれていたからか、多量の出血が見られていた。そしてしばらくすると出血多量によるショック状態に陥り、そのまま意識を失った。その獰猛さから、何度か人の味を覚えた獰猛な性格の羆であることが窺える。

「グォオオオオオオオ!!!!」(人間んん!!)

「!!富美恵ーー!!に…逃げろーー!!」(バッ!!)

ドーン!!

「あぐっ!!お…おとん!!」

「!!ぐあっ!!」

メキメキメキ…!!

「ぐあぁああ!!…ぁ!!…………」

ガブリ…グギリ!!…ゴギリ!!…!!!

「!!お……おと…ん…」(ブワァ…ゾワァ……)

《!!おとん!!…くっ!!…でもウチは…》

「ハァ…ハァ!!…くっ!!絶対に…死にたくあらへん!!…羆公の分際で…よくもウチの両親を…もう絶対に許せんとこやけど立ち向かっても奴のおやつになるだけや!…今は逃げるしかあらへん!!」(ポタポタ…)

タッタッタ…

「!!…なぁっ!!…が…崖!?…う…嘘やろ…!!」

富美恵は羆から逃亡を図ろうとする。しかしそこには、断崖絶壁の場所であり逃げ場はなかった。そして、匂いを嗅ぎつけたのか、捕食を終えた先程の羆が迫ってきた。

「グォオオオオオ…!!」(ギラッ!!)(…子供…だが…憎き人間だ…!!私の家族を殺した憎き…!!)

「…!!」(ゾクッ!!…ブワッ!!)(おとんとオカンを喰っては襲った羆!!…許せんとはいえど…やっぱおっかないでぇ…!!テディベアとかの比ではないわ〜…)

富美恵は、羆の放つ野生の本能の殺気に思わず迫力を感じては圧倒され、後ずさる。しかし羆は狙いを定めていたからか、ジリジリ迫ってくる。

「グォオオオオオ!!!」(人間んんん!!!)

「!!…くっ!!…羆…本とかで読んだ昔の三家別のようにホンマにおっかないでぇ…頼むから…来んといてぇ〜なぁ〜…」(ポタポタ…)

《この時のウチ…ホンマに怖い思いしたなぁ〜…でも今となっては…ちゃんと見れる!!…羆…アンタも家族を八つ裂きにされたんや…!!今となってはアンタの気持ちもわかる!!…せやから…》

「グォオオオオオ!!!!」(覚悟しろおお人間んんん!!!!)

「あ…あかーーーーん!!!!」

バキ……バキバキーガララララーー!!!!

「え?…!!うわぁああああ!!!!」

「!!グウォオオ!!!!」(!!崖が!!私としたことが…人間を見ていたあまりに…ぐあっ!!!)

ゴロゴロゴロゴロ!!!ザシュグサッ!!!

「!!あが…が…」(ピクピク…)

ドゴーーーン…!!!

「グォオオ…………」(ぐ…無念だ…すまない…お前…我が子よ…私も…そっちに行く…)

グデ…

「…は…はは…怖かったなぁ…羆…やけ…ど…おと…ん…オ…カン…仇は取ったでぇ…!……舞…香…ごめ…んなぁ…一緒に…中学には上がれんよ…うやわぁ……」(ポタポタ…)

ガクッ……

富美恵はそのまま視界が見えなくなり、激しく脈打つ動悸のする中、次第に目の前に暗闇が広がってはそのまま息を引き取った。

《グッ!!…羆…ウチもアンタとこうして気持ちを理解しあえたんや……お互いの命や…ウチは絶対に無駄にはせぇへんで…!!》

キィイーーン!!

「!!…よ〜し見ようやないか〜!!アンタの記憶を!!」

富美恵は、羆の記憶を頭の中でじっくりと眺めていた。そこには広大な景色が広がっていた。

・・・


🎼Back Ground Music 》》》



《…!!これは…なんて絶景や…山と湖…それに空…まるで秘境やな…!!》

富美恵は羆の記憶を傍観していた。そこは春の山に囲まれては北海道の広大な自然環境を象徴するかのような秘境の湖があり、空の景色が鏡写しになっている大自然の景色であった。そこには夫婦の羆が、その景色を見ていた。

「グァアア…」(…綺麗だ…やはりこの景色は…)

「グォオオ…」(…そうね…あなた…私も…この景色が好き…)

「グァア…」(…この自然のありがたみを忘れては…脅かす人間もいるのだろうな…)

「グォオオ…」(…いるでしょうね…だから…私達は守っていきたいの…でも…できることなら…殺生を控えて…)

「グァア…」(…私も同じ気持ちだ…この自然の美しさを…いつか生まれてくる私達の子供にも見てほしい…そして…)

「グォオオ…」(…そして?…)

「グァアア…」(…受け継いでくれると嬉しいと思っているのだ…私達がいなくなった後も…この…美しい景色を守る者として…)

「グォオオ…」(…そうですね…きっと…)

《…そっか…羆…そんな気持ちがあったんやな…まあ確かにこんな絶景があれば守りたくもなるわな…》

「グァア!!」(さて、走ろうか!!)

「グォオオ!!」(…はい…あなた…)

ダダダダダダ!!!

《うぉおお!!は…早いな〜!!!!流石は羆やで〜!!…時速60キロは超えてるやろなぁ〜!!》

羆の家族は、そのまま山の周りを疾走して走り抜けていく。富美恵自身も羆の走り抜けるスピードを見ては驚愕した。

「グァアアア!!」(…風が気持ちいいな…)

「グォオオ!!」(…そうですね…あなた…)

・・・

ピチピチ…

「グァアアア!!」(…いい魚が取れた…味もなかなかだ…)

「グォオオ!!」(…そうですね…美味しいですね…あなたは本当に魚を捕まえるのが…得意ですね…頼り甲斐がありますね…)

富美恵は自分の両親の仇でもある羆の一部の生活を見ては、ある関心を覚え憎しみから自然の中で生きる術を教わり、その大切さに敬意を持っては強く宣言する。

《羆ってこんなに足が速いんやな〜…力も強いし…自分らの自慢の爪で魚も容易く捕まえるし、敵ながら天晴れとも言える!…よ〜し!!ウチだって…アンタらのように自然の中でも強くなる!!…憎しみは抜きにしてアンタら羆に敬意を評してウチも強くなるで〜!!…見ときや〜!!…絶対に負けへんで〜!!》


・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)




「……はっ!」

「あ、気付きました?どうでしたか?」

「…羆の強さ…それにあの速さは流石やと思うわ…それにあの執着心あっての、あの自然の中で生きていけるんやなと、じっくり学ばせてもろたで〜…」

「ほうほ〜う♪いい勉強になりましたね〜♪」

富美恵は最後の試練で、自分の両親を殺した羆に対し、確かに許されないことではある。しかしそれでも自然の中で生きていくためには、時に非情な場面があり、その環境で生き残るためには屈強な精神力と、その自然に順応できるサバイバル能力についての必要性について今回の試験で学んだ。それを見てオロアは笑みを浮かべ、富美恵にこう答えた。

「さ〜て、これであなたの三つの試練は全て乗り越えました!おめでとうございま〜す♪…そ・し・て…これを身に付けていただきま〜す♪」(サッ!)

「ん?何やこれ?…勲章かいな〜?」

富美恵はオロアに渡されたものを確認した。それは勲章であり、確認すると十字架のマークが刻まれ、下にはSpecific deadという文字が刻印されていた。

「これであなたも無事に死者から特定死者へとランクアップですね〜♪次は現世人を目指して頑張ってくださいね〜♪」

「…特定死者?現世人?なんやそれ?」

「特定死者は、わかりやすくいえば先ほど体験した三つの試練で、現世での行いを振り返り、何を学び、何を感じたのかを知り、その記憶と向き合い、試練を無事乗り越えたものに与えられるものです。階級は死者よりも上で、ユートピアの世界【paradiso】へ行くための試練を受けることができる資格の者といった立場ですね〜♪現世人とはユートピアの世界【paradiso】でのあなた達の種族の俗称となる名前です!…つまり今度は、その現世人の地位になるための試練を受けていただきま〜す♪」

「そういうことかいな〜…【paradiso】って世界に行くのはまだ長いんやな〜」

試練を全て乗り越え、富美恵自身はこれでユートピアの世界に行けると安堵していた。しかし導き人オロアの返答は予想外のものであり、富美恵はユートピアの世界は思った以上に過酷な道だということを知る。

「ではでは…最初の三つの試練はあくまで準備段階です!あなたにはこれから最終試練に挑んでもらいますよ〜♪」(ニッコリ)

「…よ〜し…こうなったらやったるで〜!!おとん!!オカン!!舞香!!…ウチは行くで〜!!」

「最終試練会場はすぐそこです!ではついて来てくださ〜い♪」(ピューーッ♪)

「!!…あ〜もう羆みたいに走るな〜!!」(ダダダダ)

富美恵は、神速の如く走り抜けるオロアを追いかける。そうしていくうちに一枚の扉が見えて来た。

「ここがその最終試練の扉で〜す♪」

「ここかいな…!」

「ですがその前に後ろをご覧ください〜♪」(ビシッ!)

「ん?…!?な、なんやあれ!!」

導き人オロアが指を刺した方向を見ると、今まで眠っていた白い棺が天井にある満月に吸い込まれている。それは富美恵だけのものではない。とてつもない数の棺が宙を舞い、螺旋状に満月の模様に吸い込まれていく。

「なんなんやねんな〜あの棺桶は〜!?あのどデカい月は〜!?」

「あれは冥界の満月っていうもので、直接あの世とつながっています。中には私たちの言い分を無視して寝過ごしたものや、私のような導き人の試練に乗り越えられなかった人もいくつか混じっています♪」

「…もしかして…ウチがあの棺の中で眠り続けてたり、あの試練を乗り越えられんかったら…あれに連れて行かれていたんかいな〜?」

「その通りですよ〜♪あ〜!あとあれをご覧くださ〜い♪」

「ん?……!?…どえええっ!?…なんや…何か黒い服を着た奴らが浮いているで〜…」

「あれは執行者です。どうやら私達の試練に乗り越えられず連行されたようですね!主に死者を平等に裁いてもらうために、今から閻魔大王の元へ行き、裁いてもらう途中のようですね〜♪ちなみに私達のことを毛嫌いしていて、執行者の部署はあなたたちの現世での言い方だとブラックな部署でもありますよ〜♪」

「ブラック企業扱いかいな〜…」

「さて、本題に戻りまして…あなたは今回の試練を乗り越えて普通の死者から特定死者として認定されました!次の試練はいよいよ【paradiso】へと行くための重要な試練です!とても過酷な試練になりますが大丈夫でしょうか?」

「………」

富美恵はさっきの試練とここまでの経緯を思い返していた。おそらくこの試練を受けさせるからには自分の行く【paradiso】という世界は、ユートピアの世界とはかけ離れた反対のディストピアのようなものではないのかと思っている。だが行くからには、もう後戻りはしない。あの記憶を見てはたとえ別世界に行こうと、自分はどんな環境でも生きていき、羆という動物から両親を失うも、それでもその羆から生きることの厳しさを学んだ分まで、なんとしてでも強く生きるという目標を見出した…そしてこの言葉が、胸によぎった。

(もう…後戻りはせぇへん!!…意地でも生き残ったるで〜!!)

「準備はできてるんや!!…ウチは生き残ったるで〜!!」

「はぁ〜い。では行きますよ〜…って〜ッ♪!!」(ゲシッ!)

ドゴーーーン!!

「ウォッ!!…!?…な、なんやてぇ!?」

導き人のオロアはその扉を思いっきり蹴り飛ばし、粉々にした。その光景に人とは思えぬ恐ろしい怪力を見たあまり、富美恵は驚愕して放心した…

「あ、これ扉に見せかけた壁なので〜!では行きましょう〜♪」

「…オロアはんえらい馬鹿力やな〜…もしかしたら羆以上なんかもしれんな〜!」

富美恵はオロアの後を追う…そして出た外の光景は信じられない非現実な光景が広がっていた。

「な、何やこれ…!?…雲の世界か…!?…こりゃあラノベの世界みたいやでぇ〜…」

富美恵が見た景色はまるで昔、何か探し物をする本でみたことがあるファンタジー的で幻想的な雲の世界の光景が広がっていた。そしてこの世界で、富美恵は壮絶な逃走劇の戦いが幕が開けるーーー























《To Be Continued…→》


 
 
 

 
 
 


第1話:プロローグ〜富美恵編 Part1
《完読クリア!!》


次の話へ進みますか?

A. はい 
B. いいえ