GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》


A.:GiorGia

〜第一章:白狼と誓いの儀礼刀〜>


第9話:【paradiso】への道 白狼・ゆい編 Part1


二ノ宮白狼と西野ゆいの二人は導き人の試練に合格し、特定死者に任命され、いよいよ、最終関門である雲の世界【delka】へと辿り着いた。そしてそこで待ち構える執行者のもの達、それぞれの思惑が交錯する中、二人はそれぞれ執行者から逃亡し、【paradiso】行きの列車がある楽国駅へと向かう───────




《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



The greatest happiness for humans is to feel that the self at the end of the year is much better than the self at the beginning of the year.
(人間にとって最高の幸福は、一年の終わりにおける自己を、その一年の始めにおける自己よりも、遥かに良くなったと感ずることである。)

Adversity creates a personality.
(逆境が人格を作る。)

Tolstoy
(トルストイ)



〜雲の世界【Delka】〜

「…ここが…【Paradiso】…」

白狼は初めて見る光景に驚愕した。その場所は現実にはない雲の世界が続いている。だが地面は白のレンガで構築されており、その先は果てしない道のりが続いていた。

「正しくはまだ【Paradiso】ではないんですよ〜!ここはあくまで【Paradiso】の一部で、我々はここを雲の世界【Delka】とそう呼んでいます。それではあなたには、ここから楽な国の駅と書く楽国駅まで向かってもらいま〜す♪」

その問いに白狼は、目的地の所在を聞いてみた

「…場所は何処にあるんだ?」

「それはお教えできませ〜ん♪しかし、今回の合格者をざっというと、約100人程度は突破したようですね〜♪意外と今回突破した人が多いようですね〜!」

「…!?なっそんなにいるのかよ!?…お前も一人でそんな大人数大変だろう…って!!ええ!?」

白狼は驚いた。振り向いたそこには10人のオロアがいたからだ。そしてすかさず何事なのかオロアに聞く。

「な、何で増えてるんだ!?お前!?」

「「「「「「「「「「あ〜私分身の術が使えるんですよ〜♪だから大人数でも問題ありませ〜ん♪」」」」」」」」」」(ドロン!)

面妖な技の持つオロアを見て白狼は驚愕した。そしてこの【Paradiso】そのものに疑問を持つのに疲れてしまいそうな自分に一言いった。

「…本当に何でもありだな…この世界は…」

「はい♪…それと…あ〜!!早速捕まっている人が見つけましたよ〜♪」

「ん?…!?何だ!?あれは…さっきの冥界の満月にいた奴らか!?」

白狼はオロアの指した視点を見て驚いた。そこにいたのは、逃亡する特定死者を捕まえている執行者の姿があった。

「やめろ!俺はあの試練を突破したんだ!離せ〜!!」

「おとなしく降伏しろ〜!!俺たちの昇給のためにお縄につくんだな〜!!」

そういうと、執行者はお札のようなものを逃走中の特定死者に貼り付けた。すると姿を消してしまった。

「な、何だあれ!さっきまでそこにいたのに!?」

オロアは笑いながら説明した。

「あれは転移機能の施されたお札ですね〜♪どうやらあの札に触れると強制的に閻魔大王のところへ連れて行かれるようになりましたね〜♪いや〜なんだかんだ業務改善のためにちゃんとした機材を導入してるではありませんか〜♪執行者の方々は〜♪」

「だから生々しいっての!!…はぁとりあえず行かないとな〜」

すると、執行者は白狼の姿を目撃したのか、指を指した。

「見つけたぞ!」「俺たちの昇給、昇格のために捕まるのだ〜!!」「我々にとって忌々しい導き人まで姿を出しやがって…」「絶対に逃すな〜絶対にだ。」

「…!?やべ!!じゃあ行くわ」(ダダダッ)

「お気をつけて〜♪」(フリフリ!)

「うぉぉぉぉぉおお!!捕まってたまるかよ〜!!」

「「「今日のノルマ次第で半年ぶりの休日が約束されるだ〜!!」」」

執行者は自分たちの不遇な立場にいる部署の不満を吐き捨てながらも今日も元気よく特定死者を追いかけ回す。その間白狼はこう思った。

(…もしかしたらハヤトももう捕まっているかもしれないな…いや、もしくは試練に耐えられずに裁かれたか…あと…西野さんの妹さんは…どうなんだろうか…ここに来てるのかな…)

〜その頃ーーーどこかの道〜

「…ふぅ…だいぶ走りましたね。しかし、オロアさんは本当に人が悪いです…!最後にこんな試練を出すとは!!…でも、もう病弱ではないのでそこまで体の怠さはなくなったのは幸運ですね…」

ゆいはひたすら執行者の追跡から逃れようとしていた。オロアへの不満をぶつけながらも、楽国駅を目指していく。

「うわぁぁぁ!!助けてくれ!!」

「!!」

ゆいは声のする方を向いた。すると誰かが捕まっているのを発見する。その現場を物陰に隠れてこっそりと見守っていた。

「!?」(ああっ!!だ、誰かが捕まって…)

「よし、あとはお札張ってと…」(ペチッ!!)

シュン!!

「!!」(!?…あぁ…!き、消えた…じゃあ私も捕まると…)(ドキドキ!!)

「……」(こっそり…こっそろ〜)

「……っ」(…どうしましょう…少し様子を見てから行きますか…)

バッ!!ダキッ!!

「…!!むっんっ!?…ん…んんっ!?///」(ジタバタ!!)

ゆいはその現場を見ていた。すると突然背後から近づいてきた何者かに口を押さえられ、身体を思いっきり抱き抱えられた。ゆいは抵抗するが相手の方が力が強いのからか、なす術もなく何処かへ連れて行かれた。

「!?///」(…!!い、いや…!…いやぁっ!!だ…誰かぁ…!!)

〜戻り白狼サイド〜

♪〜騎馬隊のマーチ

「待てやゴルァ〜!!」「そこのもの待つんだべ〜!!」(グルングルン!)「突撃〜!!」(パッパラララパパパッラララ〜!)「我々の業務の保安のために貴様を確保する!!」(バキュン!バキューン!!)

「なんだこいつらはぁ〜!?西部劇の騎兵隊気取りか〜!?」(ドドドド!)

白狼は今度は西部劇に出てくる騎兵隊のような格好をした執行者達に追われていた。余談であるが彼らの部署は一年前、確保数の功績が認められ、昇進したらしい。

「むん!」(シュッ!!)

「投げ縄か!?…ちっ!!」(ヒョイ!)

「かわしたか…」「かわすとは卑怯だべ〜!」「そうだそうだ!」「正々堂々とお縄につくのだ!」

「うるせえ!!言ってろ!!」

白狼は逃げた。ひたすらと。すると別の執行者と鉢合わせた。

「むっ!また騎兵部隊かー!?貴様ら〜ここは我らの領地と言っただろう!?」「そうだ〜!」「この西部劇気取りのおっさんども〜!!」

「我々は今特定死者を確保しているのだべ〜!!「業務の邪魔をするなこのプライドだけの無能部隊が〜!!」「そうだそうだ!!」「や〜いお前の部署万年無能窓際部署〜!」

その言葉に切れたのかプライドだけ優秀なのか、自称優秀だと思っている部署の執行者は顔を真っ赤にしてこう語る。

「だまれだまれ〜い!!こうなったのもあの使えないメガネが来たからだ!!女性に対してけしからんことを働いたとして、うちの窓際部署へと急に左遷されてからさらにうちの仕事が回らなくなったのだぞ〜!!」

ギャーギャー!!

「…逃げるか!」(ピュー!!)

白狼は部署同士の争いをしている間に一目散に逃げ出した。

「………」(付き合ってらんね〜……ったくこいつら…部署同士の連携がめちゃくちゃだ…で、その一人がこの逃走劇の中にも混じっていると…)



B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?



・・・
・・


〜人気のない何処かの路地〜

「…はぁ…はぁ…あなたは一体何なんですか!?私に何する気ですか!?あと…この縄ほどいてください!!」(ギュッ!…ジタバタ!)

ゆいは、胸元を強調するかのように縄を結わえられ、逃げられないように両足をも縄で結えている。メガネをかけた男はじっとまじまじ見ている。すると男は自己紹介をした。

「あ…どもすみませんねかわいい女の子の君ねははは!僕は執行者の【heipelno】(ヘイペルーノ)といいます。どうぞよろしくですあはは!!」

「あの…で…私に何のようで…って…執行者!!いやです…私…捕まりたくない!…いや!!」(ブンブン!)

ゆいは身体を動かして縄を解こうとするがびくともしない。すると、【heipelno】はその仕草を見て気に入ったのか、カメラを取ろうとしていた。

「あ〜いい顔ですね〜ハイチーズ!」(カシャカシャ!)

「いや〜!!や、やめてください!!もう、本当に何なんですか〜あなたは!!///」(かぁ〜ッ!)

ゆいはその男の行動に恐怖を通り越して怒っていた。すると、男はそろそろと言わんばかりに両手をゆいに手を伸ばしていた。

「な…何ですかその手…?…!…い、いや!来ないでください!!…私に触らないで!!」

「いやいやさすがにそんな豊満なもの見たら誰でも…大丈夫です。悪いことしませんから、ね?」

「い、いやぁぁっ!!///…だ、誰かぁぁッ!!」(ポロッ!)

男に乱暴されようとしていたゆいは助けを求める為悲鳴をあげた。すると偶然にも誰かが路地の中に入ってきた特定死者を目撃した。

「…ハァッ…ハァッ…!!」

「奴めどこに行った〜!」「逃すな〜!!」「探せ〜!!」(ドドドドドド!!)

「…まいたか…ったくしつこい連中だぜ〜!」

「あっ!助け!!…むぐぐ…ん!ん〜!!」(ジタバタ!)

【heipelno】は声を出せないようにどこからかテープを出して、ゆいの口を塞いだ。

「!!」(静かにしてくださ〜い。これからあなたとお楽しみなんですから〜!)

「ん、ん〜っ!!///」(お願いです!…気づいてください!助けて…助けて!!)(ポロポロ!)

「ん?なんか誰かの声が聞こえたような…?」

「!?」(な、なんですとい〜!)(びくり!)

「!?」(や、やりました!!)(パァ〜っ!)

ゆいは安堵したのか。笑みを浮かべた。だが特定死者の次の言葉でゆいの笑みは消えた。

「いや、気のせいだ。よし去ったな〜行くぞ!!」

「」(…え……)

ゆいからはまるで魂の抜けたかのような表情となった。それに安堵したのか【heipelno】はお楽しみの時間に入ろうとしていた。

「ふふふ♪…神はどうやら私に味方してくれたようですね〜♪では二人きりの時間を楽しみましょうか…ではまずはこちらから〜♪」(ワシワシサワサワ!)

「…!ん!?ん〜!!///」(…ハッ!?あ!?…い、いや!!太ももを触られ…!!い、いや!!やめて…!!だ、誰かぁぁぁあああ!!)(ブンブン!)

ゆいは太ももを触られ、激しく【heipelno】に抵抗する。するとどこからか激しい足音が聞こえてきた。

「うぉぉぉぉぉ〜〜〜!そこどけやぁぁ!!!」

「…!!…なっ!?」

「!?///」(……え?)

すると、路地から猛スピードで走ってくる特定死者の人影があった。すると勢いづいたのか、その男は【heipelno】に激しくタックルした。

「おらぁぁぁぁ!」

ドーーーン!

「……っあ、いつつ!」

「うわああぁぁぁ!!痛いで〜す!誰ですか〜この私をこんな目に〜」(ジタバタ!!)

あまりの激痛に【heipelno】はジタバタと悶絶する。するとゆいはその様子に安堵した。だが男はそう悠長にしていられなかった。

ダダダダダダ!!!!

「…!!まずい!おいこっちだ!!急ぐぞ!!」

「…!…///!?」(…えっ!?あの!…きゃっ!!///)

男は、拘束されたままのゆいをお姫様抱っこし、すぐさま現場を後にした。するとその後、執行者の群れが押し寄せてきた。そこには唇が特徴的で現世の動物のゴリラの風貌をした男、スキンヘッドに口回しがヤケに立派な筋肉をつけた男にその他取り巻きを連れて現れた。

「くそぉ〜逃したか!……ん!?…ああっ!?【heipelno】!!」「お前ぇ〜!?わいらが特定死者を捕まえるのに必死になってるのに〜!」「何してやがったんだ〜!?」「ん?縄?…まさか貴様…ここで女性の特定死者に対し、いやらしいことしてたんじゃあないだろうな!?」

ゴゴゴゴゴゴ!!

「うわ〜!いやで〜す!!!もう怖いのはもういやだ〜〜〜!!!!」(ジョーーー!!)

その後、カメラの内容もバレてしまい、【heipelno】は特定死者に対する重過剰な猥褻容疑でそのまま懲戒免職された挙句、閻魔大王によって裁かれ、地獄約10年の刑が科せられた。

🎼Back Ground Music 》》》


〜平坦な道〜

男は、周囲が安全であることを確認した上でゆいの縄を解いていた。すると安堵したのか、ゆいの目には涙が流れたがすぐに拭きとり、男に感謝の意を込めた

「先程は、助けていただいて…ありがとうございます。…それにしても…変わった髪色をしていますね…銀髪…ですか?」

「ああ、まあな。…!自己紹介遅れたな…俺は二ノ宮白狼って言うんだ。…あんたは?……!!」

「あ…私は…にしn…」

助けた男は白狼であった。そして助けた女性をよく見ると、亜麻色の長い髪をしており、目元の雰囲気から、どこかで見たような親近感が湧いた。だがそんなことを言っていられない状況が起こった。

「…!!まずい来た!?逃げるぞ〜!!」(ガシッ!)

「えっ!…ええっ!!あ、あの〜!?」(てってって!)

白狼は思わずゆいの手を掴んで走ろうとする。するとどこからか、その男女の姿に嫉妬してか執拗に追いかけ回す執行者の軍勢が出てきた。

「待てーーーいそこのリア充〜!!」「リア充殲滅死隊の名において直々にお前たちを確保する!!」「覚悟するのだな〜!!」

「な、なんか来た!!」「…一体何なんでしょうね執行者って…先程のように官能的でいやらしい人もいれば…///」

「……」(まあ、確かにこんなか弱い女の子がいたらな…まあ千夜も昔そんな時期があったか…でも…本当にこの子…どこかで…)

「待て〜い!!」「これでも食らうのだ〜バナナの皮だ!!」「転んでラッキースケベでも味わえ!」「そうすれば熱々なところを我々が捕まえるのだ〜!!」

隊員からバナナの皮をしこたま投げられる。そしてそれに滑らないように白狼とゆいはかわしていく。

「うぉっ危ねえな!」(ヒョイ!)「すべったら一貫の終わりですね!」(ヒョイ!)

「む〜あの動き、予想以上にできたカップルと言えるな…」「あ〜熟年夫婦のようなコンビネーションだ…」「くそ〜俺にもあんな可愛い彼女が欲しい」「リア充はとっとと消えればいい!」

リア充殲滅死隊の会話の様子を見て、白狼はゆいに対してこう問いかける。

「どうやら俺たち…あいつらから見れば彼氏と彼女の関係だと思われてるぞ…?」「え!?…ええっ!…///」(プシュ〜!)

「ムッ!!その反応!!やはり貴様ら〜!!」「生かして返さんぞ〜絶対に確保してやる〜」「リア充こそ世界の治安を悪化させる元凶だ〜!!」「会社は仕事をする場所だ!恋愛感情を社内に持ち込むな〜!!この不届きものめが〜」

リア充殲滅死隊の皮肉とも言える会話を聞きながら白狼とゆいは走っていく。すると、ある花畑の道にいつの間にか着いていた。だがその背後に執拗に迫っていたリア充殲滅死隊は避けるようにそこから決して足を踏み入れないようにしていた。

「ん?あれ?あいつら追って来ないな…?」「そのようですね…でも何で…?」

「あ……あの彼氏まじか…」「あ、ああ…あんな可愛い子がいて…」「これは意外だった…!あいつ上級者だったんだな…!!」「男も女もいける口とは恐れ入った…まさか花男部隊の陣地に足を踏むとはな…」

🎼Back Ground Music 》》》



シュッ! シュッ!

「え?何のことだ?」「さ、さあ…何なんでしょう?」

「うんふふ〜いらっしゃ〜い♡」「歓ゲイするわね〜♡あ、女はいらないわ〜本当最悪〜目に毒〜ていうか〜存在そのものが〜!」

「ん?…!?…なっ!!」(クルッ!)「え?…!?…えぇっ!!///」(クルッ!)

突然後ろから声がしたので二人は振り向くとそこにはガチムチ体型のボクサーパンツ一丁で肩には薔薇の装飾を飾った暑苦しい雰囲気の男二人が仁王立ちして立ち尽くしていた。だがゆいには目をくれず、白狼にだけ目線を合わし、標的にしていた。それを見て白狼は青ざめており、ゆいは目に手を置き、頬を赤く染めていた。

「」(嘘だろ…まさかこいつら…!!)「」(この人達…まさか男性の方が好きな…いわゆるあっち系でしょうか?…でも…な、なんて格好してるんですか〜!!///)

「うふふ、青ざめて可愛い坊や♡!!」「も〜♪私にも譲りなさ〜いよ〜♡」

白狼は我に帰り、すぐにゆいと一緒に全力疾走でその場を離れていく。

「…ハッ!!…逃げるんだよ〜!!亜麻色髪さ〜〜〜ん!!」(ダダダダ!)「…ちょ!私そんな名前ではありませ〜〜ん!!」(タタタタ!!)

「待ちなさ〜い♡!!」「愛してるわ〜銀髪の坊や〜♡!!」

「だまれ〜!!…つか来るんじゃねえ〜!!」(ダダダダ!)「う〜…///!さっきから何なんですか〜!!///」(タタタタ!!)

白狼とゆいは全力疾走で花畑から抜けようとする。すると、出口が見えてきた途端、奥から大きな影が出てきて道を塞いだ。

ドスーン!!

「な、なんだ!?…げっ…でかい!?」「ま、まあ…!なんて大きな…!!」

「ウッフフ…ようこそ銀髪の坊や〜♡…う〜んルックスも悪くないわ〜♡…でもここからは通さないですよ〜♡」

「おぉ〜来てくれたわ〜麗しきあたしたちの長!!是非ともその銀の殿方を射止めてくださいな〜♡♡!!」(キャーキャー!!)

白狼は目の前にいる先程の花男よりもひと回りの大きさの花男にどう立ち向かうかを考えていた。そしてその花男は、なぜ隆一と書かれた特攻服を着ているのか謎を感じた。

「……」「どうしますか…?白狼さん…あんなのにどう立ち向かえば…」(ビクビク…)

「あら〜どうしたの坊や立ち止まって〜♡私の美貌にメ・ロ・メ・ロなのかしら〜うんふ♡」

「…誰が!…今だ!!」(ダッ!)「……!!」(は、早いです!!)

「へぇ〜!!///」(ポッ)

「あら、なんて身のこなしなのかしら〜!!///♡」(ポッ)「まるで狼みたいね〜///♡」(ポッ)

「よし!!抜けるぞっ!…おわっ!!」(ズテン!)

「…え!?コケた!」

「うんふふ!♡」「あらら〜!♡」「捕まっちゃった!♡」

白狼は、狼のように素早く神速の如く、花男の長を抜こうとした。だがその時何かにつまづいて白狼は盛大に転倒してしまった。

「ペッペ…何だ!?……!うわっ!!なんだ…薔薇!…だと…」(ギリギリ!)

「白狼さん!!」

白狼は花男の罠にかかり、身動きがとれなかった。それを見て花男の長は自信満々に白狼に歩み寄ってくる。

「うんふふ♡掛かりましたね…!薔薇にはトゲがあるということをお忘れですか?あなたが私の横を横切り、走り去ると考えて罠を仕掛けてお・い・た・の♡…これで私の勝ちで・す・ね♡…一年前に会ったこの特攻服の着た愛しい坊やは残念だったけど…あなたを射止めることはできたようですね///!!!!♡♡♡」(ダキッ♡♡!!)

「なっ!?」(ギュウゥッ!)

「ああっ!!」

「キャーー来ましたわ〜!!♡♡」「やっぱり私達には男同士の恋愛こそ至高の幸福ですわね〜♡♡」(キャーキャー!!)

花園の長は強く白狼に抱きつき、締め上げる。その抱く強さはとてつもない圧がかかっているのか、白狼の骨を砕くような音が聞こえてくる。その花男の長の抱擁に耐えきれず白狼は悲鳴を上げる。

「ぐああぁぁ!!!は…はな…せ…気持ち…わリィ…苦し…ごはっ!!」(グリゴキグリゴキ!!)

「うんふふ♡ホントよく見たら可愛い子!私ったらキスしちゃいたいわ〜チュ〜!///♡」「キャー!!もう長様ったら大・胆!♡」「も〜最高!!♡」

「そ、そんな!白狼さん!しっかりして〜!」

白狼は花男の長の抱擁から逃れようと踠いている。それでも花男の長は熱く赤い薔薇のような情熱を持って抱きかかえ、薔薇のように絡みつき、決して離そうとしない。

「ぐ…くそ…こんな…ところで…ぁ……」(グキゴギググググ…ガクン!)

「…あっ!!し、白狼さん!」

「うんふふ♡では…参りましょうか…あなたに極上の花園の世界を堪能させてあ・げ・る!♡♡」(ズルズル!)「お持ち帰りよ〜!♡」(ズルズル!)「さあ参りましょうか!白の狼のようなお・か・た〜!♡」(ズルズル!)

「し、白狼さーーん!!!…そ…そんな…いやぁぁ…!」(ガクブル!)

花男の長は捕らえた白狼を抱き抱えながら地面に沈もうとし、その仲間も一緒に沈もうとしている。それを見たゆいは白狼を救うことを考えていた。

(このままでは白狼さんが花男さん達に連れていかれてしまいます…どうすれば…いえ!…あの時、白狼さんは私を助けてくれたんですから…今度は私が…あなたを助けます!!)

「あら…まだいたのこの下品そうな髪の色をした女ったらもう…しっしっ!!」「も〜う言ったじゃない!…女は目の毒だと…」「ここから先は女性禁制よ〜わかった?」

「…!」(キッ!)

その言葉にゆいは痺れを切らしたのか、動じずに臆することなく、一歩一歩花男の長に近づいていく。

「白狼さんを…」

「え〜何〜?聞こえないわよ〜!」「ほんとに!」「あんなのほっといていきましょうよ〜早くこの白い狼のような殿方をあんなことやこんなことをしてみたいの〜♡」

そして、ゆいは花男の長の元へ辿り着き、目一杯、手を振り上げて花男の長の身体を思いっきり引っ叩いた。

「…!!白狼さんをいますぐに離してください!!」(パーン!)

「…!あ〜ん!」(ビクン!)「長様!」「お〜麗しき長様に!小娘の毒牙の張り手が〜!」

すると長の抱擁が解け、白狼は地面に落ちた。ゆいはすぐに白狼の方へ詰め寄り、白狼自身、魂が抜けているかのようにぐったりしていたが意識はあった。

「白狼さん!白狼さん!…ああ…しっかりしてください!白狼さ〜ん!」(ブワッ!)

「ゼェ…ゼェ…ん〜…あぁ…だ、大丈夫だ…だが…うぅ…危うく…あの花男の長に…ゼェ…キスされる…とこだった…やべえ…すげぇ…気持ちが悪い…だが…ゼェ…助けてくれ…てありがとな…」(げっそり…)

「あぁ…ああ…良かった…本当に良かったです!…でもここはものすごく危険です!早く逃げましょう!!」(ダキッ!)

「…え、ちょ…っ!あ、いてでで!」(ズキズキ!)

「…すみません。ですが我慢してくださいね…」(タッタッタ!)  

するとゆいは白狼をおんぶし、すぐにその場から離れ、花園から抜け出すことに成功した。だが思った以上に白狼のダメージがひどかったのか、ズキズキとダメージが来ている様子である。

「ああ…だ〜!?いたいたいたいたたた!…思った以上にダメージがひどい…ごめんな…おんぶまでさせて…」

するとゆいは笑みを浮かべ走ったまま白狼に問いかける。

「…ふふっ構いませんよ。それにあなたはあの時、私を助けてくれたのですから…これくらいのお礼はさせてくださいよ…///」

「…そうか。」(…やっぱりどこかで…多分すごく近い…身近な人…)

「あ〜んだめぇ!!私達は女が身体に触れると、とっても体が弱くなるの〜あぁ〜だめぇ〜!!」(ビリビリ!)「長様!」「長様!お気を確かに〜」

「ん?な、なんだあれ?……げっ!?」

「は!?あんら〜!!♡♡い・い・お・と・こ♡」

「ギャァァァァァ!!や、やめろーーー!…俺は…俺は!んーーーー!!」「んふ〜ん///」(チューー!!♡♡)「あんら〜長様が復活したわ〜♡」「やりましたわ〜♡」

白狼とゆいのペアは見事、禁断の花園を突破する。だがそれでも彼らは中間地点を通り過ぎたのみ。ここから先はさらに険しくなることを二人は知らない。


・・・
・・




B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?




先程の逃走でかなりのダメージを受け、ゆいにおんぶされていた白狼であったが時間が経つにつれ、少しずつ回復し、自力で動けるようになった。白狼とゆいは執行者との追跡をひたすら逃れ、いよいよ広場のような所へと辿り着いた。

「はぁ…はぁ…」

「…白狼さん…大丈夫ですか…?」

「…ああ。大丈夫だ。」

「…そうですか…あ!あと自己紹介遅れましたね…私は…」

「…待ってくれ!」

そのゆいの問いに遮るかのように白狼は声を出していった。その問いにゆいは答えた。

「えっ!?…なんですか!?」

「…名前だが今は言わないでほしいんだ…」

その問いにゆいは質問の意図について聞く。

「…?…どうしてですか?」

「…頼む。アンタの名前は楽国駅に着いてからにしてくれ…このままでは俺の気力が持たない…お願いだ。」

白狼はそういうと、ゆいは笑みを浮かべ、こう言った。

「…わかりました。でもちゃんと楽国駅まで送っていってくださいね♪…約束ですよ!」

「…合点承知ノ助!」

すると広場のサイレンから何やら声が聞こえてきた。それは軍事経験のある声高らかな笑い声が聞こえた。

「ハーーッハッハッハ!いよいよここまで来たか…勇敢なる特定死者の者達よ…」

「…!!」「な…なんですか!?」

ゆいの返答にサイレンの男は、笑いを浮かべこう言い放った。

「…ふっふっふ!…最後の言葉がな…なんですか?か…なかなか可愛らしいお嬢さんだ!…だがこの武装執行者隊長の名において一切、手加減はしない!武装執行者共やってしまえ!!」

「「「「「うぉぉぉぉおぉ!!早く捕まって俺たちに休息を〜〜!!!!」」」」」」(ダダダダ!!!)

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜FF7REMAKEより・更に闘う者達

「…逃げるぞ!!」(ダダダ!)「はい!!」(ダダダ!)

「ふふふ…我々の軍勢からどこまで逃げられるか…これは実物だ…だが…いまだに確保数のノルマが達していない!!それが気に入らんのだ私は!!!完璧こそ全て!!」

白狼とゆいはひたすら逃げていく。するとそこに武装した執行者が斬り込み隊長の如く迫ってきた。

「ヒャーヒャヒャヒャ!!これでもくらいな!!!」(バーン!!)

「なっ!?ロケットランチャー!!」「…!!避けないと…あ、あそこに!」

ゆいは物陰に指をさし、避難を促した。だが白狼は一度冷静になってこの案を断った。

「いや、あれはおそらくダミー。俺たちを物陰に潜ませてそこから、待ち伏せしてるやつらが奇襲をかけさせて、俺たちを捕まえる魂胆だろう。このまま突き進む!」

「…わかりました。行きましょう!」

ダダダダダダ!! 

「ッチ…感づいたか!」

白狼とゆいはそのまま前に突き進む。その様子を見ていた武装隊長はこう呟いていた。

「ふっふっふ!あの銀髪なかなかやるな…だが…そろそろ罠にかかる頃だろうな…クックック楽しみだ…」

「…はぁ…はぁ…大丈夫かアンタ…!」「…はい…おかげ様で…でも少し疲れてきました…私はもともと体が強い方ではなかったので…」

「…そうか…!!…やばい隠れろ!!」(ガシッ!)「…えっ!!あの…///」(ドキッ!)

白狼とゆいは物陰に隠れる。すると大勢の武装執行者の進撃が来た。思った以上に逃走劇は大変になってきたようである。

「うぉぉぉぉぉ!!待てやーーー!」「早く捕まって有給をおおお!!」「ノルマを達成して昇給しないと俺の女房が〜子供が〜!!」

ダダダダダダダ!!!!!

「…ったくあの世でも生々しいなやっぱ」「…ブラック勤めなのは私も…かわいそうに思いますね…」

武装執行者が去ったのを確認し、二人は外を確認する。すると白狼はあることに気づいた。

「…多分おそらくこのエリアから楽国駅はあると思うんだ!」「…え!?本当ですか!?」

「あんだけ武装した執行者が集まっている。おそらくこのエリアだ!…いくぞ…」「…わかりました!行きましょう!」

白狼と、ゆいは走っていく。すると目の前に楽国駅が見えてきた。

「見えた。…だけどおかしい…」「…?どういうことですか」

白狼は目的地である楽国駅は目の前である。だがそこには誰もいないことに気づき不信感を抱いていた。

「普通はさ、こんな重要なところで誰も守っていないのは何か不自然じゃないか?」「…言われてみればそうですね。こんなに重要な場所ですのに…普通はもっと大人数で守りますよね?」

「!!…こいつら…まさか…」

その中継を見ていた武装執行者の隊長は眉を潜めていた。

「ん〜?お、いいのミッケ!」「石?あの?それどうすんですか?」

「まさか貴様ぁ〜っ!?お、おいやめろ!やめるんだ!!そのまま臆することなく前に進むんだ!!」

白狼は石を道路目がけて投げた。すると道路に転がった石は下に落ちて消えていった。

「…つまり…落とし穴だ。迂回するぞ!」「わかりました。多分私ならそのまま行ってしまいました!…その観察力!…白狼さん凄いですね!!」

「うぉぉぉぉ!!ホログラム式の落とし穴の存在に気づき、突破された!!武装執行者共!!一丸となって奴らを捕らえるんだ〜!!」

ワーッ! ワーッ!

「…おいでなすったか!…走るぞ!」「は、はい!!」

「待て〜い逃すな〜!」「よしあれを持ってこい!」「はっ!!」

武装執行者は何か取り出した。どうやらバズーカーであった。そのことから何をするのかを察知した白狼はゆいの手を繋ぎ、物陰に潜める場所を探した。

「…!やばい…とにかく隠れる場所は…見つけないとな…ありゃあ恐らく捕獲ネットだから、捕まると一環の終わりだ!」

「…で、でもどうすれば…///」(…白狼さん…さっきから手握ってくれてます…でも悪くないですね…白狼さんの手…なんだか温かいです…///)

「よし、発射!!」「はっ!!」

ダーーン!!

いよいよバズーカーが発射された。しかし、思ったよりも威力は無く、前を走っていた隊員にまとわりついてしまったようだ。

「ぐあぁぁああ!!」「て、てめえ!今踏んだだろ!?」「つかどうなってんだよこれ!?」「ちゃんとバズーカーの整備しとけとあれほど…!!」「多重労働の疲労困憊により、そんな気力が起きなかったのではと…」

ギャーギャー!!

「…ほっといて行くぞ…こればかりはあいつらの過失だ!」「…はい…でももうすぐですね!!」

白狼とゆいは走り続けた。だが散々様々な種類の執行者に追いかけられ、二人の疲労はかなり溜まっていたようである。すると念願の楽国駅へと辿り着いた。

「ハァ…ハァ…着いたなやっと…」「…ハァ…ハァ…着きましたね…私達。」

二人は安堵していた。だがそこに武装した隊長らしき執行者が立ち塞がってきた。

「フッハハハ!…よくぞここまで来たようだな!!…だが言ったはずだ…貴様らを絶対に行かせないと!!」

「…!!」「…その声…まさかあなたが!?」

「ふっふっふ…その通り。さあ返り討ちにしてやろう!!…かかってくr」

「うぉぉぉぉぉ!!」「し、白狼さん!?」

「…なっ!?早い!!」

すると白狼はこの全ての試練で味わった屈辱や辱めと苦しみ、恨みを全てこの隊長にぶつけるがの如く、全身で渾身のタックルを決めた。

「…部下のこと思うならとっとと休ませてやれやぁ〜〜〜!!!!!」(ドゴ〜ン!!)

「ぐほァァァ〜!!!」(メリメリ!!)

「「「「「た、隊長ーーーーーー!!!」」」」」」

ドーーーン!

「武装隊長は思いっきり白狼の蹴りで約10mは吹っ飛び、壁に激突した。そして不意打ちをかけてきた白狼に対して罵声を浴びせる。

「…去年ならず今年も…!!不意打ちは卑怯だぞ貴様〜!!!」

「雑な落とし穴張って数字稼ぐ奴に卑怯なんざ言われたくない!つかお前らも目を覚ませ!こんな能無しの奴にこき使われて恥ずかしいとは思わないのか!?組織なら上官の言葉だけをアテにせず、一人一人よく考えて行動しやがれ!!」

「「「「「・・・・・」」」」」

武装執行者にそう言い放った白狼はゆいを連れて、楽国駅のホームへと着いた。


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜宇宙兄弟より・忘れていた憧れ

「つ…着いた…!…ここに着いたらもうあいつら追ってこないみたいだな」「わ…私達、ついに辿り着いたんですね…ここへと!」

二人は楽国駅に着いて喜んでいた。武装執行者の方は駅のホームに入ってくることなく、次の特定死者を捕まえる体勢に入っている。しばらくするとそこに聞き覚えのある声がしたので振り向く。

「はいは〜い♪おめでとうございま〜す♪お二人共ごとうちゃ〜く!」

「…あれ?オロア?」「…オロアさん?」

そこにはミニスカ姿の駅員の格好をしたオロアが立ちすくんでいた。そして、オロアは二人に切符のようなものを渡した。

「これどうぞ〜♪」

「ん?なんだこれ?切符か?」「…チケットのようにも思えますが…」

「それは【Paradiso】行きのチケットですよ〜♪無くさないように気をつけてくださいね〜♪」

「ふーん。んでオロア…なんでそんな格好なんだ?…1日駅長か?」「でも…可愛らしいですね〜!」

「はい!TPO【時(time)、所(place)、場合(occasion)】に合った服ですので〜!」

「…まあいいか」「それにしても駅に着いたとして、何番線になるのでしょうか…?…あ、書いてますね!」

白狼とゆいはチケットに書かれていた番号を確認する。すると白狼は三番線のフロア2、ゆいは五番線のフロア3と書かれていた。お互い確認しあい、少し名残惜しく挨拶した。

「…お互い別々だな〜」「…そのようですね…でも【Paradiso】に行けばいつかお会いできますよ…」

「ああ。…あ!?…そういえば約束だったな…あんたの名前は?」

「…そうでしたね!」

ゆいは微笑んだ表情で、白狼に自分の名前を伝える。

「…私の名前はーーーーと言います!」(ニコッ!)

「……!!…そうか…いい名前だな…!」

「では、私は行きますので白狼さんも…お気をつけて…」

「…ああ」(ビシッ!)

白狼は敬礼する。そして彼女の名前を知った彼の顔には、安堵の表情と同時に、現世で出会った二人の恩人に感謝の意を述べたかのように清々しい表情をして彼女の旅立ちを心から見送ったーーー



B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?



そう言っているうちに時間が来たのでゆいにしばしの別れの挨拶を済ませて白狼は電車に乗り、自分のフロアの部屋に入り、先ほどの会話の内容を思い返し、考えにふけっていた。

「…へへっ!」(…そうか。…あの子がゆいだったのか!…通りで会ったようで…似ていると思ったよ。…西野さんに!…俺はこの逃走劇であの子に守られたところもあったけど、なんとかあの子を守り切ったよ西野さん。…それに思ったより元気そうだった。…また会う時があればいいな!)

ジリリリ〜ン♪

「…!!な!?ベ、ベル…」

白狼が考えていると列車内からベルが鳴り響き、身体を起こした。するとアナウンスからオロアの声がした。

「どうも皆様ご機嫌様〜♪今回は、あなたたちの試練を乗り越え、執行者からの追跡に見事逃れ、この列車に乗っていただき誠にありがとうございま〜す♪まもなくワンマン【paradiso】行きの列車が発車しま〜す♪この列車は途中下車することなくそのまま目的地まで行きますので昼寝なり好きに過ごしていただいても構いませ〜ん!た・だ・し途中購買の人が訪ねてきますので必ず出る様にしてくださいね〜!では今回汽車長を務める私導き人のオロア、ただいま発車しま〜す♪」

「…!?汽車長がオロア…マジか…そもそもあいつ運転できるのか!?」

プシューッ!!ガタン!!

「うぉっ!!…揺れたな…大丈夫か〜本当に…オロア…」

電車は揺られながらも発車した。その景色は未だ雲の景色が続いている。

ガタンゴトン!

「…購買の人…いつ来るんだろうな…」

ピンポンパンポ〜ン♩

すると、またもやオロアのアナウンスが聞こえてきた。

「本日は、【paradiso】行きの列車にご乗車いただき、誠にありがとうございま〜す♪この列車の汽車長は私導き人のオロアが責任持って努めさせていただきま〜す♪」

「さっき言ったな…結構ノリノリだなあいつ…」

「それでは今回の【paradiso】行きの列車に乗った人の結果が出ました!書類は後に購買の人が届けてくれますので確認してくださいね〜!」

(…一体どれだけの粋が生き残ったんだ…ハヤトのやつは…もし生き残っていたら…いやわからないか…もしかしたらあの試練で…花男達に襲われたのなら…同情するな…)

ゴオオオオッ!!

「!?…トンネルか!?…なんでこんな世界にもトンネルなんかあるんだ!?」

トンネルに入る電車。白狼は不思議に思う。何故雲の世界にトンネルなんかあるのだろうと…死後の世界独特のご都合主義といえばいいのか少しの間混乱していた。いろいろ疲れがあってか、少し仮眠を取ることにした。

「zzz」

コンコン!

「…?」

仮眠を取っていた白狼は、誰かの音がしたので起き上がった。するとドアから声がした。

「あの〜すみません!購買のもので〜す!開けてくださ〜い!」

「あ、確か出ろと言っていたな…は〜い!…って!?」

購買担当の駅員の姿を見て白狼は驚いた。購買担当の駅員は笑みを浮かべながら挨拶した。

「やっほ〜♪」

「お、オロア!お前運転はどうした!?」

「安心してください!現在自動運転になっていますので持ち場を離れてても大丈夫で〜す♪まあもしもの時は分身飛ばしま〜す!」

「……」(もしもの時は…って…まあその為の分身だな)

「そうですね〜♪」

「…お前人の心の中読むとは悪趣味だな…伊達にその姿は化けの皮といったところか?」

すると、オロアは流石の洞察力と言わんばかりに白狼を褒めるかのように言い放った。

「ふっふ〜ん♪鋭いですね〜私はこのような子供のような姿をしていますが、実はもう何千年もこの世界で生きてま〜す♪」

「…そうか。もう色々あって突っ込む気力が失せたよ、なんだか…」

白狼の返答にオロアは意地悪そうな笑みでこれまでの逃走劇のことについて語り出した。

「そうですね〜♪白狼さんはこの楽国駅に行く途中に禁断の花園の花男の長さんから〜♪熱烈な《愛の抱擁》から見事生還して打ち勝ったのですから、本当に色々経験しましたよね〜♪でも白狼さん、半信半疑あの男らしい人に抱かれて嬉しかったのでは〜♪あんなに熱い…」(ニヤニヤ!)

「んなわけないだろっ!!??俺は危うくあの後、あのむさ苦しい花男連中共に禁断の世界へと連れて行かれるとこだったんだ!!もう死んでいるが、二度と死んでもしたくないし、されたくもないわあんなおぞましい経験はぁ〜〜ッ!!」(クワッ!!)

「ふふ〜ん♪…あ・と・は♪…早速ある女性一人に手を出しましたよね〜?現世での愛人さんに早速別れて寂しくなったのか…白狼さんって…ほんとプレイボーイですよね〜♪///」

「あ。…あれは…成り行きで…それよりも何売ってるんだよ?購買なんだろ?」(まさかあの子がな…西野さんよりも10は離れてるから今の歳でいえば19歳…俺とは二つ下も違うんだな…)

するとオロアは笑みを浮かべつつ、白狼にこう伝えた。

「ふっふ〜ん!…実は売るためにきたのではありませんよ!」

「…ん?じゃあなんだよ?」

「これをお渡しに来ました!」

オロアは白狼に何かを手渡した。見た感じ長方形の横に長い箱に詰められて梱包されており、白狼は小包であることを理解した。

「…小包?開けてもいいのか?」

「どうぞ〜!」

「どれどれ…!?…これ…!?」

白狼は小包の中に入っていたものを確認する。それは居合道の木刀、三橋三等海佐と千夜、白狼の3ショットの写真。そして現世での愛人である千夜からもらった十手等、色々入っていた。

「これって…」

「そうです♪あなたの入っていた棺の中のものです〜!見事試練を乗り越えた贈り物として受け取ってください!!」

「…ありがとな。……千夜からもらった十手は…まあ鋼鉄製だし、焼け残っていたんだろうな…でも一緒に来てくれたのならなんだか安心するな…大事にするよ…千夜!」(ギュッ!)

白狼は千夜からもらった十手を大事に握りしめている。そしてもう二度と手放さないと心に誓った。

「あ。そうです!これもありました。どうぞご覧ください♪」

「ん?ああ。そういえば今回の試練の結果発表が書かれてるんだったな…え、約100人中生き残りは…30人!?」

「はい!ち・な・み・にこの試練は年に2回、つまり半年に一回定期的におこなわれるものである為、この試練で脱落した数よりこの【paradiso】への試練を知らせる鐘の音で起きなかった人の数が多いという統計がありますね〜♪」

「…となると待ち構えていたあの武装執行者の隊長、さぞご立腹だろうな〜!」

・・・
・・


〜楽国駅前〜

「貴様ら〜身の程を知れ!!なぜ100人中30人が生き残っているのだ!?他の部署よりも我々の方が確保数の成果が少ないのだぞ!!」

「「「「「・・・・・・」」」」」

白狼の推察した通り、現在武装執行者の隊長はさぞご立腹なようであった。それをいいことにさらに部下に怒鳴りつけていた

「それもこれも貴様らの練度がダメなせいだ!もう少しエリートで優秀な私を見習うのだ!!わかったか!?」

「「「「「…」」」」」(…イライラ!!)

「……」(スッ!)

コツン……コツン

言いたい放題言われる武装執行者の怒りが浸透していく中、ある一人の武装執行者が前に出て、隊長の前に立った。

「む、なんだ貴様!?まだ話の途中なのだぞ!?これは重罪ものだぞ!!」

「…隊長…一言言わせてください…」

「黙れい!さっさと持ち場に戻れ!戻らんか〜!!」

「…!!」

隊長の言葉に痺れを切らしたのか一人の武装執行者は怒鳴りつけるように言い、思いっきり隊長を蹴り飛ばした。

「お前、指示するだけで何もやってないだろうがーーーーー!!!!!」(ゲシッ!!!)

「ぐほーー!!」(ビューン!)

ドゴーーン!!

「みんなやってしまえ!!」

「「「「ワーッ!」」」」

ボコ!スカ!ゲシ!!

「グハッ!ゲフッ!き、き、貴様らーーー!!」(ボロボロ!)

武装執行者の隊長は部下達と揉み合いになり、ボロ雑巾のようにボロボロになった。それを見ていた武装執行者の一人は逃亡に成功した一人の特定死者の言葉を思い出し、考えに耽っていた。

「…へへ!」(組織なら上官の言葉だけをアテにせず、一人一人よく考えて行動しやがれ!!…か…悪くない言葉だな…)

ビシッ!

武装執行者の一人はたったの数秒だけ出会った特定死者に対し、敬意を払って敬礼をした。

・・・
・・


「…武装してた執行者のやつらも、今回のことで何か変わればいいんだがな〜……」

「そうですね〜♪最後にこれを受け取ってください!」

「?なんだこれ…CD?」

「DVDですよ〜♪あなたへの現世からのビデオレターです!」

「DVDか…でも再生する機械が…お!…あるものなんだな〜!」

「それではごゆっくり〜♪」

バタン!!

「…一体、何が写ってるんだ〜?」

白狼はDVDを再生した。するとそこにはオロアの言うとおり、DVDには現世の事の内容が収録されていたビデオレターであった。

「まずは。…なんだ…これって…父さんの…書斎!?」

白狼は最初の映像を観る。まずそに映ったのは、白狼の父の書斎であった。そして、白狼の父が出てきては書斎の椅子に座り、引き出しの中を漁っていた。

「なんだ?…あ!?あれって…そうか父さん…」

『…あいつが死んでしまって、まさか読むことになるとはな…あいつの…遺書』

白狼の父が出したものは白狼の遺書であった。東京で賃貸を借りた後、一度地元へ戻った時に父へ渡したのであった。元海上自衛隊に所属していた白狼にとって、いついかなる任務において、殉職する可能性も否定できないと考え、もしもの時に生前書いて遺していたものである。父はそれを白狼が亡くなった後になり、ここで読もうとしていたのだ。

『この際だから読むか…我が息子よ…』

「…父さん」

少し寂しそうに白狼の父は言い、その内容を口に出して読んでいた。

『父さん、母さん、そして居合道のみんな』

『これを見ていると言うことは、俺は海上自衛隊の任務の際に何かが起こって死んだんだなと思い、手紙を残した。』

『突然の事故とかで死ぬことは誰だって怖い。俺だって怖い。』

『でも、俺が死んだからと言ってみんなにはずっと悲しんでほしくないんだ。』

『例え俺が死んだとしても俺は。…父さん、母さん、そして居合道の同士であるお前達のことは忘れない。絶対にだ。』

『みんなには俺の分まで元気で暮らしてほしいんだ。俺は例え死後の世界に行っても必ず、三橋一等海尉から教えられているように、何かを成し遂げる男になって見せる。』

『ロベルへ。…お前とはまた帰ってきたら剣を交えたかった。あの時、三年後の再会を祝って、決着をつけたかったのに。…こんな事になってしまってごめんな。続きはお前が歳取っていつか必ず俺と同じ世界へ来た時にでもやろう。』

『千夜へ…お前とはよく痴話喧嘩したよな〜本当に。その度に残念な奴だと思っていたらお前の手刀チョップが飛んできたりとか本当に色々あったな。でもどこかで気が合った時は、結構話弾んで良い仲でいられたのはあるよな。……本当にお前と会えてよかった。』

『千里へ…よくロベルのことになると熱くなっていたな。それでもお前が道場に来てから賑やかになったのは事実だ。これからもロベル、千夜と仲良くしてやってくれ』

『菊川先生へ…中学の頃から居合の剣術を教えてくれて本当にありがとうございます。時々、変な発言するところもありますけどそんな先生が好きでした。本当にありがとう。学んだことを一生忘れません。』

『母さんへ…俺がいなくなってすごく寂しいだろう。もういい加減過保護時は卒業して、父さんといつまでも幸せに暮らしてくれ。』

『父さんへ…ドラマとか洋画が好きでよく影響されているからか似たような言葉を引用する時があるけど、そんなお茶目な父さんは昔から今でも変わらず大切な人だ。母さんと幸せに。』

『最後になるけど、みんなと出会って俺は本当に良かった。これだけはハッキリと胸を張って言える。だからみんなも胸を張って生きてくれ。俺はいつまでも』

『忘れない。』





一文を読み終わり白狼の父は少し涙を流し、すぐに拭き取り、白狼に対してこう語った。

『…どうやら生前にお前にはお前の道が見えていたようだな。我が息子よ…』

『…行ってこい!…向こうの世界で大きく進んでいくがいい!』

「親父…ああ。任せろ…だから母さんのこと頼んだぞ…後…居合道のみんな…三橋三等海佐…そして…退官してから出会った西野さん、バイト仲間の方々…元零戦パイロットの空川少尉とその家族のみんな…俺は絶対にあんた達を忘れない。俺は【paradiso】の世界で負けない…現世で学んだことを生かし、強く生きてみせる。そして…」

白狼自身、これを言うのは自分本意のような言い方になるかもしれないと思い止まったが堂々とこう言い放った。

「俺は今実感した。この世界でのし上がって生きていくしかないと!」

白狼は【paradiso】で生きていくという意志をさらけ出し、そして収録された内容が終わった。そしてエンドロールに流れた曲を聞き、白狼は少し懐かしんでいた。


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜聖剣伝説3より・Meridian Child

「!?…このオーケストラの曲は…聴き覚えがある!…そうだ!…確か、俺が海上自衛隊に在籍していた時に音楽祭で聴いた曲だ…確か昔のRPGのゲームの音楽だったと他の隊員から聞いた。俺はこのゲームの内容は知らない。…けど最初この曲を聴いた時、悲しい出来事があった。それでも前向きになって立ち上がることを鼓舞させてくれる気分になれば、ここから俺達の冒険の旅立ちだといった気分になれたんだ…!!…今思えば懐かしいな…!…よし!…行ってくるぜ!」


〜ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…


果てしない道を止まらずに進み続ける電車の中、白狼は詩文を読むかの様にこれから出発なんだという意気込みを言葉にした─────




A young man who lost his best friend from an early age and learned of his first sadness and despair.
(幼少期から親友だった友を失い、初めての悲しみと絶望を知った一人の青年。)

I met irreplaceable friends, family and loved ones and learned the desire to cherish them.
(かけがえのない仲間、家族、愛しい人と出会い、その人達を大切にする志を知った。)

Sometimes he fights evil and faces the truth, he keeps his teachings without being confident that he is justice, he has the will of humanity, and he does his best to protect others.
(時に悪と戦っては真実と向き合い、自分は正義だと自惚れる事なく教えを守り、人徳の意志で武力を持ち、人を守ることに全力を尽くす。)

If anyone gets lost, reach out and help them pave the way for the real path.
(道に迷いし者がいれば手を差し伸べ、その人の行くべき本当の道を切り開く手助けをする。)

From here, the real journey begins. A young man like a white wolf who decides to challenge himself guides the direction of the compass based on his own will, and advances in an unknown world that spreads like the ocean.
(ここからは本当の旅の始まり。自分への挑戦だと決意した白狼のような一人の青年は、歩む進路を自らの意志に基づき羅針盤の方角を導き出し、大海のように広がる未知の世界を進んでいく。)

・・・
・・




B. いいえ


《Capitolo・5》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》


〜その頃ゆいの乗車していた【paradiso】行きの電車〜

その頃ゆいも、分身していた汽車長のオロアから小包を受け取っていた。

「なんですかこれ?…小包?…開けても構いませんか?」

「どうぞ〜♪」

「…!!…これって!?」

ゆいからの小包には、あかりからのひまわりのヘアピン、フネからもらったお守り、そして、家族の写真が入っていた。それを見て思わずゆいは涙を流した。

「うぅ…ありがとう…お父さん…お母さん…お姉ちゃん…おばあちゃん…あかりちゃん、フネさん…私…おかげさまである人のおかげで【paradiso】に行けたから…」

泣きそうになっていたゆいの雰囲気をぶち壊すかのようにオロアは話を続ける

「は〜い!いつまでも葬式のようにメソメソしないでくださいね〜♪あとはこれもどうぞ♪」

「…え…?これってDVDですか?」

「はい。あなたへのビデオレターです!」

「え?でも、あ、再生機はあるようですね!」

「はい♪ではごゆっくり〜♪」

そう言い残し、オロアは次のフロアへと去っていった。

「でも何が写っているのでしょうか?」

ゆいはDVDを再生機に入れて中身を確認してみた。DVDは現世の事の内容が収録されていたビデオレターであった。

「…あれ写っているの…お姉ちゃん?」

『すみません今月いっぱいで仕事辞めさせてください』

『ええっ西野くん、何を言っとるのかね!?君が抜けられたら…』

『すみませんが…私の家庭の事情なので…』

『に、西野くん…クソッ!せっかく二年前に海外にいかせてやったのにその恩を仇にするのか!?』

『…ごめんね…本当にごめんね…ゆい…うぅ…うぅぁぁあぁぁああ!!!』

「…お姉ちゃん…私が死んでからこんなに…辛かったんだね…」

『ゆい…ううん!いつまでもあの子のことで二ヶ月も仕事していなかったら本当に駄目よ。早く仕事を探さなくちゃ!…でも…やっぱり…』

〜東京・渋谷のオフィス〜

『本日から女性警備員として勤務することになりました西野ありさと申します。よろしくお願いします!』

パチパチ!

『ゆい…とりあえず次が決まったわ…本当に…でもそれでもあなたは…うぅ…うぅぅぅ…!ーーーー』(ポタポタ!)

すると突然画面が入れ替わり、ありさが誰かと食事している画面に切り替わった。

「え?…!?あれここに写っているのって…お姉ちゃんと…!…え!?あの人…髪は黒いけど…まさか…」

ゆいは驚いた。自分が【Delka】で助けてくれた人は、姉のありさと知り合いでもあったという事を知った。

『…まあ無責任で厳しい言い方をするかもしれませんが、俺から言わせてもらえば西野さんはいつまでも妹さんとの別れを引きずり続けるのはよろしくないと思うんです』

『…えっ…』

『妹さんのことを忘れずに思い続けるのはまだ良いと思います。だけど妹さんの死んだことをずっと引きずり続けながら生きていくのはその妹さんの心の奥底をきちんと理解していないように思うんです。死んだことをいつまでも引きずってしまっても、その人が生き返ることはありません。そもそも引きずるって言葉は引っ張っていくとは違い、引きずるっていうのは地面に引きずられて相手が痛々しくなってもその痛みを気にしないまま、いつまでも離さない状態をいいます』

『!!』

『そう…西野さんは知らず知らずのうちに、妹さんの事実から向き合っていないまま、自分本意の押しつけにも近い気持ちで傷つけてしまい、判断を下させないまま別れができずにずっと引きずっていたのだと思います…』

『……』

『…まあ俺も海上自衛隊で似たような話ではありますが昔日本海軍の特攻兵団の手紙にも、特攻で死んでも、戦争で散ってしまったあの世の仲間と家族に会えるって風潮があったりしました。結果的にそれがどんな風潮で流行り出したのか、またその人が結果的に特攻してあの世で仲間や家族と再会できたのか…まあそんなアバウトな事…今のこの現在になっても結局調べようがないものですし…むしろ出来ないからこそ教材として美談にして取り上げる人もいれば、爆破テロだとか無駄死にだとか言ってる人もいます』

『まあとにかく、俺からしたらその人達に変わってするべきことは、彼らにとって命を懸けてまで覚悟ある行動を起こしたからこそ、今こうして日本を繋ぎ止めていることが事実なんだということに敬意を払うことですね。結果的に日本は負けましたが、いつまでも立ち向かう意思を持たずしかり。前を向かずに無駄死だったということで終わらせはいけないものです。自分がどのように生き、何をなすべきか常に考え、次の世代に繋ぎ、繋いだ人から次の世代に繋いでいくことが必要なんだということを、一人の自衛官として俺は学んできた次第です!』

『…!』

『…だから西野さんも元気出してください。妹さんが亡くなった今でも、あなたの人生は時間が続く限り続いています。命あれば人生はいくらでもやり直せます。俺よりも社会人としてもキャリアを積んできたベテランなのですから自信持って次へ繋いでください。未来は思った以上に明るいはずです!』

『……うん!!』

『…それに、悲しみに暮れて泣いてしまい、ネガティブ思考になっている西野さんはなんか本来の西野さんらしくないというか、俺としては、西野さんには笑顔でフランクなあなたでいて欲しいと思うんです!』

『…え!?…///』

『…まあとにかく前向きにと言った感じです。真面目も良いですが程々にして、これからもよろしくお願いします。西野警備員さん!!』

『…ふふっ、そうね…こちらこそよろしくね!…二ノ宮くん…いえ、二ノ宮教官!』

「…そうだったんだ…白狼さん…私が亡くなってから落ち込んでいたお姉ちゃんを慰めてくれていたんですね…でも白狼さん…あなたもこの世界にいるということは…何か…」

ゆいは白狼の亡くなったことについて考えていた。そうしている間に映像が変わった。その映像を見てゆいは手を口に押さえて驚いた

「…!変わった。今度は何?…誰かの葬式ですか…え!?…白狼さんの…葬式…でもあそこに写っているのは…あ…お姉ちゃん」

『こんばんは…久しぶりだね…二ノ宮教官…いえ…今日ばかりは白狼くんと呼ばせてもらうね…確かに黒髪から少し銀髪になったわね…でもあなたにとっても似合っているよ…』

『あの後…上と掛け合ってみたらぜひ紹介してくれ!すぐに採用したいと言われてね…できれば生きているうちにそれを伝えたかった…』

『もし生きていたなら…あなたと一緒に仕事ができる日々を楽しみにしていたけど…こんなことになって…とても悲しくなって…ね…!!…っグスッ!』

『白狼くん…あなたがあの事故に見舞われたのは後から知ったわ。その時にあなたからの連絡が来ず、とても嫌な胸騒ぎがしたの…』

『まるであの時、妹のゆいが危篤状態になって、救急治療室に運ばれたときのように…とても…とても嫌な予感がしたのよ…』

『…それが今になってこんなことに…でも、ニュースの目撃証言を見てあなただと思ったの…!』

『一人の女性を必死になって守り、自衛隊員としての誇りを忘れず、その責務を貫き通したのだから…』

『…本当に優しい子ね…君は…無茶ばかりするけど…それでもその人を守りたかったのね…すごいよ…本当に君は…!』

『…だから胸を張って向こうでもいつまでも変わらないあなたのまま…元気でいてね…あなたがどうしても妹のことを引きずってて立ち直れなかった私に大事なことを伝えてくれたように…』

『…私は人生の中で、あなたに逢えて…本当に良かった…あなたのことを一生忘れない!!……ありがとう!…あと…』(ポタポタ!)

「…!え…お姉ちゃん!?///」 

ビデオの中ではさすがにありさの心の声が聞こえなかったようだが、ゆいはありさの大胆な行動に赤面し、この場面についてこう語った。
  
「…そうですか…白狼さん…お姉ちゃんを励ましたけどその後…大きな事故に巻き込まれて…私のように…でもそれでも守りたいものがあったからこそ、あの人は現世でも恐れずに立ち向かう人だったのでしょうね…お姉ちゃんが白狼さんに惹かれた理由がよくわかりました。私もあの人に助けてもらって…それに…なんか白狼さんってかっこいいですもんね。昔のお兄ちゃんを見ているみたいで…///……って!?何言ってるんでしょうか私は…!///」

ゆいはビデオを見続けていると、昔知り合った人が登場するのを見て驚く。10年になってもその雰囲気はまだ残っている一人の紳士が白狼に挨拶をしていた。

「…え…嘘…!お兄ちゃん…でもなんで白狼さんのところへ…?」

『こんばんは、二ノ宮海士長。いやもう階級呼びはやめようか…では改め、白狼。君が海上自衛隊に所属して三年の月日の中で、君が学んだことを今回の件で実践し証明したようだな』

『さぞ、君の行動には敬意を払いたい。あの渋谷付近で起こった大事故のことは横須賀基地からも聞いていた。その時に死亡者リストに君の名前があったことに気づいた時、私はすぐに横須賀から和歌山まで駆けつけたのだ。』

『君があの時、犯人を止める行動がなければさらに被害が出ただろう。君の行動は本当に驚かされた。簡単にできることではない。普段の君の行動は、本能的に考えもなしに行動し、悪い方にも飛べば時に機転が効いたのか、良い方にも行く。』

『本当に、君は私が今まで見てきた隊員の中で何かと輝きを持っていた。不思議なほどに…あの時、海上自衛官として在籍して功績をあげていれば、私と同じように幹部になれる器があったのに…とても残念だよ。』

『だけどその結果、このような形で君と会って上下関係なく、割り切って対等に話すことができたのだ。それだけはお礼を言いたい。』

『もし、あの世に行ったとしても、君は人助けをするだろう、その時は私の教え通り責務を果たしてほしい』

『君なら私の教えを、自分だけが優越感に聳え立ち、他人を蹴落とすような欲に溺れた使い方をせず、本当に自分の守るべきものに力を出してくれることを心より願っている。』

『では、白狼、あの世でも達者で。私は君が亡き後でも落胆せず、常に向上の意欲を忘れずに前に行くことを約束する!…さらばだ!…我が戦友!二ノ宮白狼!!』(ビシッ)

「…そうですか…白狼さんはお兄ちゃんの元部下の方で、海上自衛隊を辞められてからは東京に住んでいてその時にお姉ちゃんと会って、そこで起こった大事故に巻き込まれたのですね…」

ゆいはその様子を見て関心していた。白狼は困っている人がいれば助けに行くことはゆいも先ほど知り、このビデオに対し、信憑性のある映像だと踏んだ。そしてこの後にゆいはさらに、続きを見ていく。

『み、三橋さん!?』

『み、三橋一等海尉!!』

『これはこれは三橋さんどうも。そうですか…その階級章を見る限り…そうですか…とうとう三等海佐になられましたか…』

「あの人たちは白狼さんの友達の方でしょうか…あの女の人、とても綺麗な方ですね…あれ…ということはですよ…お姉ちゃん…お兄ちゃんと…」

『やあ君達、三年ぶりか…久しいな…また君達に会えて嬉しいよ…菊川先生もご無沙汰しております…そして…十年ぶりの再会になるかな…ありささん』

『…はい。その節はお世話になりました』

『ゆいちゃんは…今はどうしてる?』

『…妹のゆいは…最近お亡くなりになりました。でも白狼くんが私を励ましてくれて…もう平気です』

『…!…そうか…それは残念だ。…すみません、白狼くんのお母さん、少し席を外しても…』

『いえいえ構いません!そのままこの子のそばで聞かせてやってください!三橋さん…西野さんも…それとみんなも、私達は何も問う気はありません。ねぇお父さん?』

『うむ、おそらくこいつもそれを望んでおる。思う存分聞かせてやってくれ』

「この方々が白狼さんのご両親の方。……なんだか雰囲気がとても似ていて…白狼さんのことを大切に想ってくれているようですね……」

『…はい。三橋さんとは昔、私が20歳の時、妹のゆいが9歳の時、父と一緒に防衛大学校の開校祭の時に知り合った仲なんです』

『ああ。だが懐かしいな…私は当時儀仗隊として式典の時、ミスすることなくこなし、お好み焼きの模擬店の方へ向かっていたその時にゆいちゃんと君に会ったんだ。あの時は元気そうだったのだが…』

『…あの子、昔から病弱だったんです。幼き頃、少しでも慣れさせるために祖母と一緒になって薙刀術を教えていたのです。』

『確か当時ゆいちゃんがそう言っていたな。…その後はどんな感じで?』

『…はい、その後、あの子は中学も病院に通院しながら登校し、成績は優秀で有名女子校に通っていたのですが、16歳の時に白血病を患い、私もあの子の治療のために働きましたが…19歳でこの世を去りました』


『そうか…病院さえわかれば、私も行けたのだが…幹部ともなると無闇に外出はできないことが多くなってな…どこの病院で入院を?』

『…広島の竹内総合病院です。そこに妹は入院していました』

『…な!!…そうか…よりにもよって私の地元で、祖母が通院している病院とは驚いた…!』

『えっ!?、そうなんですか、確かゆいは、あかりちゃんとフネおばあちゃんがいつも話をしてくれたと言ってましたね。元気がない時にフネおばあちゃんが昔沖縄で体験したことを話してくれて、なんだか生きる希望が出てきてすごく元気が出たとよく…』

『…!!…はぁ…全く…ゆいちゃん…うちの祖母とも関わりがあるとは本当に…』

「お兄ちゃんとお姉ちゃん…実に10年ぶりの再会ですね…もしかしたらこの運命を作ってくれたのは…白狼さんが…でもそのために白狼さんの命が犠牲になってしまったと思うと…うぅ…ごめんなさい…白狼さん…」

ゆいはその事実に涙を流していた。白狼が二人と知り合い、その後大惨事に見舞われ、白狼が犠牲になることで三橋とありさを引き合わせたと考えれば尊い犠牲のように思えたからだと。それを感じ、ゆいは涙が出そうになった。だがゆいは、後ろ向きにならず、白狼に対する感謝の意を込めて、このように強く念じた。

「…っ!!」(ですが…白狼さん…お兄ちゃんとお姉ちゃんを10年ぶりに再会する機会を下さり、本当にありがとうございます!この御恩は忘れません!)

ザザー…シュン!

「!!…な!?…また映像が変わって…!?…あ、今度は喫茶店でしょうか…?…どうやらお兄ちゃんとお姉ちゃん…何か話し合っているようですね」

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜カルメン・マキより・時計をとめて

ゆいが白狼に対し、感謝の意を込めているとまた映像が変わっていた。そこには三橋とありさが何やら二人きりで喫茶店で話をしていた場面であった。その場所は人気のないところであった。ゆいはその映像をじっと見守っていた

『…ありささん』

『三橋さん…あの…なんでしょうか?』

『こんなことを言って失礼かもしれないが…君はあれから10年間…誰か好きな人はいるのかい?』

『…え…そ、それって…///…特にいませんね…あの…三橋さんは?』

その問いに三橋は首を横に振る。

『…私もいない。いや、そもそも私には家族を作ることに対し、その責任が持てるのかということだ…』(グッ!)

『…え?』

「あ、そうか…お兄ちゃん…昔お母さんがお父さんに手を上げられていて…でも、それでもお兄ちゃんはあんなことはしないと思います!特にお姉ちゃんにひどいことなんか…!」

するとありさは何かを察したのか、三橋の手を握る。

『…!…ありささん…』

『どうか、そんな辛い顔をしないでください三橋さん。その顔から…昔…何かがあったのですね?』

『ああ…昔、私の父と母は離婚している。そんな家庭に育ち、父を反面教師にして過ごし、母が女手一つで私を育ててくれた…』

『…はい』

『おそらく私には、どのように家族という居場所を作れるのか、仕事柄、私は遠方での勤務も考えられ、遠くに転勤ともなると、家族に対して寂しい思いをさせてしまうだろうと…それがあって、家族を作ることから逃げてしまったのだと思っている。そんな人でなしを誰がいつまで待ってくれるのかと…』

「…そうですね…お兄ちゃんも海上自衛官ですから、遠方の勤務はありますよね。でも…それでも…」

三橋の迷いのある言葉に、ありさは三橋に対してこう返答した。

『…待ちます!』

『…!あ、ありささん…!?』

「お、お姉ちゃん!?」

ありさの目は真剣であり、はっきりと三橋の目を見て、更に話し始めた。

『…確かに幹部である立場上、家を留守にする機会が多いでしょう。でも私は…本当にその人を愛する気持ちが誠であれば…私は寂しくはありません。…だって、あなたはこうして、私と再会し、こうして昔のように接しているのですから…だから…私は待ちます。誰がなんと言おうとも!!///』

『…!!』

『…あの…三橋さん…はっきり言ってもよろしいですか?』

ありさの問いに三橋はどっしりと構え、返事をした。

『…はい』

『…私は…あなたが好きです!!///10年前からあの時初めて会った頃から、あなたの事を…一日だって忘れることはありませんでした!!///』

『!!』

ありさからの大胆な告白に三橋は驚いた。だが三橋はありさに対してこう答えた。

『…こうなる日は覚悟していた。いつか巡り合わせで、今日と言う日が来るであろうとね。……私も覚悟を決めたよ…』

『…!』

「お兄ちゃん…」

三橋は、10年前の日に戻ったかのような表情をし、ありさに返答した。

『……僕も…君と初めて写真を撮影したあの時から…君の事を誰よりも女性として好きになれた。今日は…あの日の止まった時間を、君と一緒になってもう一度時を動かして…大切なかけがえの無い時の中で過ごしたい…いいかな?』

『…!!…はい…はい♡!!///』(ポタポタ!)

ギュッ!

三橋とありさはお互いに身体を抱き寄せ、二人の甘い時間を過ごした。その場面から喫茶店から流れていたカルメン・マキの時計を止めてが見事にマッチしていた。そして二人は10年ぶりの再会を心より喜んだ。

「…よかったですね…お兄ちゃん…お姉ちゃん…私も…この【Paradiso】で頑張って…生きます!…この世界で…!もし願うなら…白狼さんと一緒に…///」

ゆいは【paradiso】で生きていくという意志をさらけ出し、収録された内容が終わり、エンドロールに流れた曲を聞いて、ゆいは何かを感じていた。


🎼Back Ground Music 》》》


♪〜ゼルダの伝説・スカイウォードソードより・女神の詩

「?…なんでしょうか…クラシックでしょうか…?…でもこのハープの音色…なんか心地良いですね。それだけでなく、なんだか曲全体から壮大な物語の幕開けとも言えるような旋律がすごく伝わってきますね…励みになります…!…行ってきます…お兄ちゃん、お姉ちゃん、そして皆さん…お元気で…!」



〜ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…



果てしない道を止まらずに進み続ける電車の中、ゆいは詩文を読むかの様にこれから出発という意気込みを言葉にした。


A girl who spends her days with a sickly body from an early age.
(幼き頃から病弱の身体で日々を過ごす一人の少女。)

In order to confront that fate, I found a way to fight against it.
(その運命と立ち向かうために、自分から努力して抗う術を見つけた。)

Know the preciousness of life in a limited life, and spend an important time on it.
(限られた人生の中で命の尊さを知り、その上で、大切なひと時の時間を過ごす。)

Sometimes he couldn't face his cruel fate and made a mistake, but he lived to the end with a warm and gentle heart of mercy.
(時に残酷な運命に向き合えず、仲違いを起こした時もあったが、温かく優しい慈悲の心を持って最後まで生を全うした。)

And from here, the real journey begins. In order to face his own illness and the fate of the life he experienced in this world, one daughter advances to an unknown world.
(そしてここからは本当の旅の始まり。現世で自分の疾病と向き合い、体験した命の運命と向き合うため、未知の世界へと一人の令嬢は進んでいく。)


ーーそして白狼とゆいの二人は【paradiso】の駅が着くまで、しばしの仮眠を取る。到着する駅の場所は違えど、お互いが再会できる日々を楽しみにしていたのか、心なしか笑みを浮かべていた。ーーー









《To Be Continued…→》
 
 
 

 
 
 


第9話:【paradiso】への道 白狼・ゆい編 Part1
《完読クリア!!》



次の話へ進みますか?

A. はい 
B. いいえ