GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》


第一章:白狼と誓いの儀礼刀

第10話:【paradiso】への道 白狼・ゆい編 Part2




雲の世界の【Delka】での怒涛の逃亡劇を繰り広げ、楽国駅へと到着した二ノ宮白狼と西野ゆいの二人はそれぞれ行き先の違う列車に乗り、【paradiso】の世界へと向けて電車は着実に未知の世界へと突き進んでいる。




《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》






I see those who have overcome their desires as more brave than those who have defeated their enemies.It's the most difficult victory to beat yourself.
(私は、敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者の方を、より勇者と見る。自らに勝つことこそ、最も難しい勝利だからだ。)

Humans are animals that pursue goals.Life becomes meaningful only by striving to reach its goals.
(人間は、目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる。)

Aristotelēs
(アリストテレス)



♪〜ゼルダの伝説・風のタクトより・勇者伝説


〜白狼の乗る電車〜

電車に揺られ、どのくらいの時間が経過したのかがわからない。その中で白狼は仮眠をしながら、【paradiso】への到着を待っていた。

ジリリリリリ〜

「ん…ああ…よ〜く寝た!」

〜ピンポンパンポ〜ン♪

どこからかアナウンスが聞こえた。するとオロアの声が聞こえた。

「ご乗車ありがとうございま〜す!まもなく待望の〜【Paradiso】へ到着しま〜す♪しかし、この列車は順番にフロアの扉が開く様になっているため、開いた方から順番に出る様にしてくださいね〜♪…もしルールに従えない様であればあなた達の身柄は執行者に引き渡すので悪しからず〜♪」

「え〜と俺は…もう少し先だな〜仕方ない待つか…」

白狼は順番が来るまで待っていた。すると扉が開いた。

「…いよいよか…さて…行くか!!」

白狼は電車から降りて、周囲を確認する。そこには灯台があり、海が見えていた。眺めの良い場所であり白狼自身、気分が良かった。

「へぇ〜!海が近くにあるのか!?あの世でも海は存在するんだな〜!本当にどうなってんだろうな〜この世界ってのは…」

白狼は海を見ていると、オロアがやってきて声をかけてきた。

「白狼さ〜ん!海をじっと眺めている場合ではありませんよ〜♪さ〜早くいきましょう♪」

「…そうだな…いくか!」

白狼はオロアについていく。すると、いきなり駅員事務所のような場所に案内された。

「はい。ではここに入ってください!」

「ここか?…失礼します!」

白狼は事務所へ尋ねた。するとそこには容姿は10代後半の女性が座っていた。髪色はオロアと同じで眼鏡をかけており、真面目な感じがする雰囲気を醸し出していた。その女性は声をかけてきた。

「初めまして。あなたは二ノ宮白狼様でいいですね?」

「はい、そうです!」

「私は導き人の一人、イールです。…うちのところのオロアがご迷惑をおかけしてすみませんでしたね」

「あ、別に構いません。ただ…イタズラは多かったかもな…」

イールはオロアとは違い、坦々な事務的な性格をしている。二人はかなり対極的な性格をしていると白狼は思った。

「ではこの書類をよく確認し、承諾の上でサインしてください」

「ん?…!?」

白狼はその内容を確認し、驚くべきことが書かれていた。


【paradiso】Entrance examination procedure
(【paradiso】入界審査手続き書)

(       )
【1】In this [paradiso], you cannot use the name in this world, so please decide a new name.(Be sure to use the alphabet! Any number of characters)
(この【paradiso】では現世での名前は使えないので新しく名前を決めてください。《必ずアルファベットで!文字数は自由》)
※原則です。違反した場合、不法入界者として一ヶ月以内に執行者を派遣し、身柄を拘束します。

【2】[Paradiso] has a rank system, and the higher the rank, the more status you have and the wider your range of home and work. At first you start with the lowest F rank. Points will be paid to all residents living in [paradiso] every month. You can have free time to eat, which promises an equal life for the citizens.
(【paradiso】にはランク制度があり、階級が上であるほど、地位を持ち、家や仕事での幅が広がります。最初あなたは最低値のFランクから始まります。一ヶ月毎に【paradiso】に生活する住民全員にポイントが支給されます。ご飯も自由な時間に取れますので、市民に対し平等な生活を約束されています。)
※【paradiso】では(F→E→D→C→B→A→AA→AAA→S→S1→S2→S3→S4→S5)という順にランク付けされています。

【3】In order to rank up, you can earn reward points at the request of the Labor Guild and raise it when you reach the standard value. We recommend that you work voluntarily and rank up.
(ランクアップするためには、労働ギルドからの依頼を受けて報酬ポイントを獲得し、基準値まで達すればアップすることができます。自主的に労働してランクアップする事を推奨しています。)

【4】No bleeding is seen in the body even if it is cut in this world. Since your body itself is composed of a posthumous soul, if you take a certain amount of damage, it will be difficult to form a soul, and in the worst case ... your soul will disappear, and even in heaven and hell. We cannot guarantee that you can send your soul!
(この世界で斬られても身体には出血は見られません。あなたの身体そのものは死後の魂として構成されているため、一定数のダメージを負った場合、魂の形成が困難な状態になり、最悪の場合…あなたの魂は消滅し、天国や地獄にも魂を送ることができるのかの保証はできません!)
※後ほど、自分の基準となる魂の量を計測できる腕時計型デバイスを進呈します。

【5】This world of [paradiso] is also a utopia depending on how you perceive it, and in many cases you will be tested for your ability to be called a dystopia. We hope that you will spend your days not forgetting that we are in a society that is unequal and has a difference between rich and poor.
(この【paradiso】という世界は個人の捉え方によってはユートピアでもあり、ディストピアとも言えるくらいの実力が試されることが多いです。不平等かつ貧富の差もある社会の中だという事を忘れない様に日々を過ごしていただければ幸いです。)

We recommend that you sign after understanding the above.
以上のことを理解した上でサインされる事を推奨します。
現在時間:【paradiso】歴2000年 6月16日 名前:()


「…ルールが細かいな!?…そして俺の名前も変えないといけないと。…なんか考えないとな…」

「この世界は弱肉強食です。ルールは基本的に無視する輩もいます。その様な怠惰をする現世人は遅かれ早かれ破滅の道を辿るでしょう」

「…名前どうするかな〜…【Paradiso】にまで来て、また執行者に追われるのは懲り懲りだしな…」

白狼は悩んでいた。するとバイト先での外国人労働者のことが頭によぎった。その時、劣悪なパワハラをする上司からバイト仲間を守ろうとした時に言われた《ハクロー》というワードから何か閃きそうであったのは確かだった。

「!!」(…そう言えばあの人達から言われた名前…まあでもそのままだと面白みに欠けるな…ハクとローはまあ適当に…考えて…これで良いか)

(Hux・row)

「この名前でも大丈夫?」

眼鏡を持ちながらその名前を確認する素振りを見せるイール。確認し終えた後、白狼に対し淡々と返答する。

「…問題ありませんね。良しとします。あと食事についてはFランクの場合は、あなた方の現世にある様な飲食店への入店をお断りされることが多いですね。その際は無人販売機の方にて食事するか、もしくは定期的にやっている炊き出しに並ぶか…そこは自由にしてください」

「わかった。まあ低いランクだから待遇は最悪だと思っていたからな…」(カキカキ!)

「…ふふっ。…意外と素直ですね」

「…笑うところ、あるのな…」(フッ)

白狼はイールに意外な一面がある事に少し安心したのか笑みを浮かべていた。書き終わった書類をイールに渡す。イールは少し落ち着いてから白狼に話しかける。

「…確かに書類は承諾とさせていただきました。これで貴方の入界手続きは終了とし、これから現世人【Hux・row】(ハクス・ロウ)として名乗っていただきます。こちらは貴方が現世人であることの証明となる勲章です。あとはこれを身につけていただきます」

「ん?何だこれ?…腕時計?」

白狼改め【Hux・row】はイールに渡されたものを確認した。勲章には【Questo mondo】と書かれており、もう一つは見た感じ腕時計であった。そしてそれについてイールから説明を受ける。

「それは通称【P-Watch】腕時計型デバイスです。手に着けてディスプレイを見てください」

「ん?…!?…なんかハートが書かれている……まるで自分の健康状態を調べるスマートウォッチみたいだな」

【Hux・row】は初めて【P-Watch】の画面を確認した。すると、自分の現時点のランクに、ハートの様なものが表示されている。

【Hux・row】  ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

現在は【paradiso】歴2000年6月です。

「それは貴方の魂の値です。計測した数値は大体のものですが、もしそれが無くなれば貴方の魂は消滅するという事をお忘れなき様お願いします」

「…わかった。…この世界が出来て2000年…結構歴史があるんだな」

するとイールは少し微笑んだ表情で【Hux・row】に説明した。

「この【Paradiso】には最初、時間の概念はありませんでした。元々この世界は真っ白な世界でした。そんな時に、ある人には創造神とも言われ、中には重罪者とも言われた女性と、その女性を守り勇敢に守護して戦った男性。そしてその二人に付き従い、二人のために戦った一人の少年の言い伝えがあります。その人達の頑張りがこの世界に時間の概念を創り出し、この世界を作ったというのは昔から伝えられている伝承の歴史があります」

「…その伝承通りであれば今の時代にもそういう創造神を憎む残党がこの【Paradiso】にも潜んでいるのかも知れないんだな…」

その言葉にイールは眉を潜め、深刻な顔でこう語った。

「ご明察通りです。去年にはそんな動きはありませんでしたがユートピア2000年始めになり、【Paradiso】の世界各地で善良なユートピア人は隔離措置をとられ、貴方達の様な現世人、主に地位の低い者達に危害を企てるような事件が増えてきました。その組織の名前は【真・ユートピア創造士隊】と呼ばれ、白い衣を羽織り、その配下には【Paradiso】各地にある闇に包まれた殺し屋ギルドに所属するユートピア人を率い、自分達の作るべき世界の為ならば…時には殺戮をも厭わない集団がいます。そして…今も暗躍し続け、各地で反乱を起こしています」

「…!?な、なんだよそりゃあ!?…まるでその話を聞く限り…今【Paradiso】は殺伐とした俺達の生きてた現世で…かつて昔起こった時代で言う戦国の時代じゃないか…そんな世界に…俺が…」

「もしその者達と対抗するための術を私達は貴方に素質があるか…試すことができますが…やってみますか?」

「…!?そんな方法があるのか!?」

その言葉に【Hux・row】は驚き、イールは会話を続けた。

「はい。この【Paradiso】は極めてあなた方の住んでいた世界とは非現実的なもので構成されている世界ですから。貴方の実力を問い、この【Paradiso】に生き残れるか判断させていただきます。いわゆる貴方の体験してきた試練のようなものです…どうされますか?」

「……」

【Hux・row】は考えた。あの時の試練を見た限り、【Paradiso】はただの楽園とは程遠い現実があることは感じていた。そしてあの時電車の中で自分に言い聞かせた言葉を胸に、こう主張した。

「…イール…案内してくれ!!俺は…その試練を受ける!」

その発言にイールは微笑んでその言葉を承諾と捉え、淡々と返答した。

「…わかりました。貴方の覚悟は伝わりました。こちらです。ついて来てください」

【Hux・row】はイールの後をついていく。するとそこには広大な空間が広がっていた。

「な、何だここ!?…コロシアムか…」

「はい、そして目の前に立って見てください。相手の方が来ます。」

「ん?…!?…な!?……あいつは…俺…なのか…」

【Hux・row】は驚いた。自分の目の前に立っていたのは、かつて現世で海上自衛隊の白の制服を身につけた自分自身、つまり白狼であった。その際イールから説明を受ける。

「あそこにいるのは現世での貴方自身です。どうやら現世での突然の別れから、後悔の念が具現化して成仏できず、魂の集合体として人の形をして存在しています。」

「…そうか…」

すると、相手の白狼が声をかけてきた。

『お前が…【paradiso】の俺か!?…本当に情けないぜ!せっかくロベルが示してくれた道を自分の身勝手で辞めて三橋三等海佐をも失望させやがった…!!そして…挙句に死んでは俺の仲間達、父さん、母さんを傷つけやがった…俺はお前を絶対に許さねえ!…お前を倒して、何としてでも現世に帰る!あいつらの元に帰るために…!!』

「…!!」

【Hux・row】は現世での白狼だった者の言葉に怯みそうになった。相手の声は、まるで現世での未練を残し、後悔の念が混じり合った強い責任感、そして仲間を傷つけられたことによる、強い怒りに満ちた声を出していた。

「この試練の意図はかつての現世での自分自身と向き合い、見事に打ち勝つことで合格と致します。【Hux・row】さん…覚悟はいいですか?」

【Hux・row】は頷き、現世で贈られた木刀を持ち、信念を持った目をしてイールに主張した。

「…ああ大丈夫だ!!…こいつは、俺なんだから!!…絶対に納得させてやる!」

相手の白狼は【Hux・row】の戦う意志を見て一本の木刀を取り出し、睨み付ける。

「ではこれより、【Hux・row】vs白狼との勝負を開始します。では両者共…」

「グッ!!」「グッ!!」

イールは始まりの合図の準備をしていた。周りは静かだ。風もなく無音の状態が続いている。【Hux・row】と白狼は居合の姿勢を取り、臨戦態勢を取っていた。その中でイールは目を瞑りながら両者の勝負の合図をじっと待っていた。すると無慈悲にも戦いの合図が開始される。

「始め」

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TOXより・己を信じて

「…っ!」(ダッ!)

「…っ!」(ダッ!)

パーン!!

「!!」(ギリギリ!)

「!!」(ギリギリ!)

両者の木刀はぶつかり合い、鍔迫り合いが始まった。その様子にお互い語りかけていた。

「…てめえはやっぱり俺なんだな…!」(ギリギリ…)

「…当たり前だ!海上自衛隊横須賀基地所属…海士長…そして時期に海曹から海尉…そして…いつかあの憧れの人と一緒の階級の海佐に上り詰める…二ノ宮白狼だぁ〜!!」(キン!ブン!!)

「…ちっ!!…こりゃあ本物だ…だがな…確かに俺は海上自衛隊を辞めた!…だがタダで辞めたわけじゃあないぜ!!」(ダッ!!)

ブンキンキンキン!!

「…グッ!!何故だ!?なんでお前は…!?…ちっ…!てめえが辞めた後のことは…くそっ…何故か思い出せない…でもなんで…なんで死んだんだよ〜!?なんであいつらを悲しませたんだぁ〜っ!?」(ブン!)

「!?」(…どうやら俺が辞めた後のことは知らないみたいだな…ただ単に死んだという事実しか刷り込まれていないようだ。…なら!!)(カンッ!)

「!!…くっそが!?」(カンカン!)

「…お前…千夜の事をどう思っている?…あの貰った十手は大事にしているのか!?」

「…十手…千夜…?…!?…お、俺…は…ぐうぉぉぉぉぉあああ!!」(ブンブン!)

【Hux・row】は白狼の攻撃にひたすら耐え、反撃のチャンスを伺っていた。すると白狼から心の声のような呟きの声が聞こえてきた。

(千夜…あいつからもらった十手…どこいったんだよ…確かに教育隊の時にはロッカーに置いていた…だがあれは俺の私物…ロッカーに保管せず、外に置いていたことがバレたら服務事故になってまた周りの奴らに迷惑をかけてしまうから…言えなかったんだ。千夜…本当にごめんな。お前から餞別にもらった大切なものを…俺は…俺は…!!)

白狼の心の声を聞き、【Hux・row】は立ち止まり、考えにふけってしまった。

「!?」(…そうか。それは覚えていたんだな。確かに俺も組織に所属することに嫌気が差して辞めたいとも思っていた。だが今となっては…俺は後悔していない。…あいつと再び出会ってな…)

【Hux・row】は呆然と立ち尽くしていた。その様子に白狼は、隙を見せたと思い、強く問い掛ける。

「…何のつもりだ!?…俺が十手をなくした罪悪感を感じて同情して歩みを止めたのか!?…それでも貴様は俺か!?…もういい…そんな俺でも…情けはしない…容赦もしないぞ。…千夜の十手はなくしても、俺は自分の意思で…のし上がるだけだとなーー!!」(ダーッ!)

白狼は特攻の姿勢を見せる。だが【Hux・row】はそれを待ち構えるように、白狼の特攻のタイミングを待っていた。

「俺の手で引導を渡すぞーー!!覚悟しろ!【paradiso】の俺よ!!」

「!!ここだ!」(スッ!)

カーン!!

「…なっ!?…何でお前…それを……何で?」

「ははっ…これに見覚えがあるだろう!…オラァッ!!」(ギリギリ!…カン!)

「…!!っちっ…」(キン!)

【Hux・row】は白狼の攻撃を千夜の十手で防ぎ、白狼を弾き飛ばした。すると、【Hux・row】は白狼に対し、意外な行動に出た。

「…ほらよ…!」(スーーッ!)

カランカラン…

「…!!なっお前…何を…!?」

【Hux・row】は白狼に千夜の十手を地面に転がして、白狼に手渡し、【Hux・row】は白狼にこう問いかける。

「拾えよ…俺!…それはな…命を賭けてまで俺が守り、俺の事が昔から好きだった千夜から…そして、退官の別れの時に…三橋三等海佐から繋いでくれた大事な十手だ。…来いよ…その十手の繋いだ意味…紛失して絶望しきって迷っているんだったら…俺が導いて判らせてやるよ!」

「…!?…だまりやがれ!!…そんなものに…俺が…!正々堂々と…てめえと木刀で勝負するだけだ!!」(ブン!)

「…ガラ空きだぞ!」(ブン!)

「…ぐあぁぁっ!…くっ!?くそ…迷いは捨てたのに…!」(ブン!)

(…!?また何かが…)

【Hux・row】は頭をおさえ、白狼からまた心の声が聞こえて来た。

(俺達隊員はいついかなる任務で迷いがあれば最悪、隊員を困らせて大きな事故を起こしてしまう。…だから…もう忘れたほうがいいんだ。…でもだからと言って…俺はあいつの関係を捨てるようなことを…俺はしてしまったんだ!!…もう後戻りはできないのに!…どうして揺らいでしまうんだよ…どうして!?)

「…そうか…俺も一時期そんなことを思って任務に従事していた。…だがそれでも今はあいつ自身、その現実に向き合おうとしているんだ。それに変わりはない!」(ブン!)

「っちっ!…くそが!」(ブン!)

「…甘いぞ!!そこだ!……なっ!!」(ブン!)

キン!

白狼は千夜の十手を握り、【Hux・row】の攻撃を防いだ。そして隙を見せた身体を思いっきり叩きつけた。

「…ハァッ!!」(ブン!)

「グオーッ!!…ちっ!…何だよ…結局十手使ったじゃあねえか!…上等だ…!そうこなくっちゃな…俺!!」(ドゴッ!!)

「そうだな…!!さて…そろそろおっ始めようぜ…俺!!」(スーッ!)

「…!!」

白狼は着ている制服のボタンを外し、抜刀の姿勢に入った。おそらく、ここで決着をつけるようだと【Hux・row】は感じた。そして白狼はそれを見て自分が次に起こす行動を考えていたーーー

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?



「…わかった…受けてやるよ…お前との決着を…!!」

「…それでこそ…俺だ!!…容赦は…しない!!」

その二人の様子をイールは見守っていた。

「……」(…これで最後の決着がつきそうですね…思った以上に、白狼さんからは迷いがありましたが…それを【Hux・row】さんが正しき方へと…フフッ…存分にぶつけてください…あなた方の全力を…)

「…」(やつは俺…俺自身…何か抜刀術に見せかけて何かを仕掛けてくる。なら…!)

「…」(…ここで決める…あいつを討ち取ったあとは…これを…あいつの十手を持ってお前に会いにいくよ…千夜!!)

「…」

「…」

周りはとても静かであり、時計の針もなく沈黙の時が続く。その空間の中、二人は抜刀の構えをし、待ち構えていた。すると、両者の流れ出した一滴の汗が地面に落ち、遂に時がきた。

「…!!オォォォ!!」(バッ!)

「…!!オォォォ!!」(バッ!)

二人はお互いに木刀を持ち、抜刀の姿勢に入った。すると先に仕掛けたのは白狼の方だった。

「…ハッ!!」(タンッ!!)

「…!!やっぱ飛ぶのか!!…だがなぁ…!」

【Hux・row】は逃げることなく、白狼の挑戦を受ける。すると、【Hux・row】は頭上に木刀を構え、対空戦に持ち込んだ白狼を迎え撃つ姿勢に入った。

「…このままお前を突き刺して終わらせる!!」

「…悪いな…ロベル…お前の技借りるぞ!!」(クルッ!!)

【Hux・row】は身体を素早く回転させ、勢いをつかせて白狼と向かい合う。その様子を見て白狼は驚いた。

「…!!この技…ロベルの!?」

「ああ!三年前…あいつとの決着で使われた剣術だ…!だがあいつのようにいかなくても、白狼…お前との決着をつけるのは…やっぱりこれしかないだろう!!」

「…そうかよ…なら遠慮なく勝たせてもらうぞ…【Hux・row】!!」

「」(ブン!!)

「」(ブン!!)

パーーーン!!

互いの木刀はぶつかり神速の如く、二人のどちらかが交えて刃が通り抜ける。

「……!」(フッ!)

「……!」(フッ!)

パキイィィン!!

「……!!…ぐっ…くそっ…!!」(バタンッ!)

白狼はその場で倒れた。だが最後に念仏を唱えるかのように心の声が聞こえた。

(…ロベル…千夜…そしてみんな…俺たちは繋がっているのはわかっている…だけど…いつまでも依存してたらダメだよな…これからは俺の道を…いくよ…)

「…はぁ…はぁ…すまねえなロベル…あの世でお前の技…使うことになって…!…だが俺に対して使ったんだ…許してくれよ…それに…俺も…そんなに追い込むな…困ったときはいざというときに離れていても何かの縁で…助けてくれるからよ…!」(ニッ!)

【Hux・row】は見事白狼に勝利した。白狼に握られていた木刀は折れており、【Hux・row】の木刀は健在である。それを見たのか、イールは勝敗を決めるかのように目の前に現れ今回の勝者を決した。

「そこまで。勝者【Hux・row】」

「…よし!…勝ったぞ〜!」

【Hux・row】は勝利の雄叫びを上げた。すると白狼は立ち上がり、【Hux・row】の前に来た。だがその目にはもう迷いは無く清々しい表情をしていた。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ペルソナ4より・I'll Face My self

「…負けた…俺はお前に…それにこの十手の意味…お前と戦っている内にわかったよ…これはお前が持つべきだ…今度は失くすなよ!…【Hux・row】!!」

「…ああ。任せとけ!!俺はこの【Paradiso】でも頑張るからよ!…だからお前も元気でな!…白狼!!」

「頼んだぞ!…この世界を守ってくれよ!!……もう一人の俺…【Hux・row】!!」(…スッ!)

「合点承知ノ助だ!…白狼…海上自衛隊の誇りを持っていた……俺よ!!」(パシッ!)

白狼は千夜の十手を上に掲げ、その手を【Hux・row】が持つ。そして次第に白狼の身体が少しずつ消えていき、光の粒子となりて【Hux・row】の周りを温かく包んだ。

「こ…これは!?」

イールは【Hux・row】に対してこう伝え、説明した。

「どうやら貴方は自分自身と向き合い、【Fiducia】と呼ばれる神託の恩恵を受けました。これより貴方にはこの【Paradiso】の世界で使用できる隠れ持った潜在能力が開花しました」

イールの言葉を聞き、【Hux・row】は少し混乱したが、それでもすぐに理解した。

「…まるでアニメとかラノベにあるような特殊能力みたいな、あれか?…なんか不思議だな。とは言ってもこの腕時計も似たようなものか…なっ!?」

【Hux・row】ランクF 
【♡♡♡♡】

「流石にダメージ受けすぎて…減っているな…どうやって回復するんだよ?」

イールは【Hux・row】の問いに対しこう答える。

「睡眠を取るなり、中には魂を補充する薬、また食事にも魂が補充される作用のものがあります。ですが今回は特別です。私が補充して差しあげます」

「えっ!?できるのか!?」

イールは何かの本を取り出し、お札のようなものを【Hux・row】の身体に貼り付ける。すると【Hux・row】の周りに光が宿り、心なしか体が軽くなったように思った。

「確認してみてください」

【Hux・row】は腕時計を確認する。するとディスプレイの表示が変わっていた。

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

「!?…回復した…一体何が起こったんだ!?…!…お前ら導き人は何者だよ!?…オロアは怪力で、…イールだったよな?あんたは回復で…一体…」

するとイールは少し笑みを浮かべ、その問いに答えた。だがそれは先程のような親切なものではなく、何かを試すかのような笑みである。

「それは…これから貴方自身が知ることになりますよ…では次へと参ります」

「…!?まだ何かあるのか!?」

「は〜い♪せっかく貴方は【fiducia】に目覚めたのでその実力を試させてもらいま〜す♪」

【Hux・row】は聞き覚えのある声がしたので声のした方を向く。そこにはオロアが立っていた。

「なっ!?オロア…」

「オロア…それは私のセリフなのですが…」(やれやれ)

「まあまあいいじゃないですかイール姉様〜♪」

「姉様って…二人は姉妹関係だったのか!?」

たわいも無い会話をしていると、誰かがこちらに歩み寄ってくる者が現れた。【Hux・row】は確認すると、イールとオロアと同じ髪色の長髪で顔面にカフスを着けた一人の騎士が現れた。見た感じ、女騎士と言えばいいのか【Hux・row】は少し困惑していた。すると、女騎士はこう語りかけた。

コツン…コツン…ズザッ!

「お初にお目にかかります。私は彼女達の長を務めています…オーラルという者です」

オーラルと名乗る導き人は丁寧に【Hux・row】に挨拶する。

「あ、これはどうも。でイール…一体何を始めようっていうんだ?」

イールは少し笑みを浮かべて【Hux・row】に返答する。

「これから貴方にはオーラル姉様と戦っていただきます。言い分は問いませんので速やかに前に来てください」

「…!?…なるほどな。そういうことかよ…!」(タッタッタ!)

「あら?…やけに素直ですね?…去年はオーラル姉様とやり合うことに躊躇した人がいましたが…あなたは違うようですね」

イールは去年の挑戦者の出来事を思い返していた。そのことから【Hux・row】も同類かと思っていたが予想とは違い、イールは少し安心した。

「まぁあれだけの激戦をして【Fiducia】とかいう特殊能力を身につけて、それから回復ときたら、それを実践で使えるのかを試すというのは大体予想できるからな…!」

「フフッ…そうですか安心しました。ではご武運を…」

「フッフ〜ン!!流石に禁断の花畑をクリアした男の発言は一味違いますね〜♪【Bill公】も見習えばいいのにですよ〜♪はい!それではこれよりオーラル姉様と【Hux・row】によるエキシビョンマッチを開始しま〜す♪」

その発言を聞いて少しイラつきを感じたのか、【Hux・row】は流石にデコピンしようとオロアに詰め寄った。

「だ〜か〜ら〜!!オロア…お前一言多いっての!!そもそも【Bill公】って誰だよ!?…オラッ!」(デコピン!)

「よっと〜♪問答無用で〜す♪さあ男なら正々堂々行ってくださいね〜♪」(サッ!…トン!)

「な!?…うぉ〜!!」(ビュ〜ン!)

オロアの人押しで、真ん中に【Hux・row】が配置された。そしてそれを待ち構えていたオーラルはこう話す。

「うちの妹達が無礼な態度をお取りしてどうもすみません…」

「まったくだッ!!…つかちゃんと教育してんのかあんた!?放任主義にも程があるぞ!…まったく…言いたい放題いいやがって…」

するとオーラルはクスクス笑いながら笑みを浮かべ、真ん中へと歩み出す。そして、【Hux・row】に対して、こう言い放った。

「ふふふ、あれでも私の可愛い妹達なので多めに見てあげてください…では…!これより貴方の実力を試させていただきます。…覚悟は良いですか…?」(ゴゴゴゴ!!)

「…なっ!?」(ゾクッ!!)

【Hux・row】は相手のオーラルの桁違いの気迫に驚いた。今まで菊川や三橋といった男と対峙してきたが、生まれて初めてここまで相手を威圧させる人がいることに驚きを隠せなかった。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TOEより・Ability Test

「…では…行きますよ!」(シュン!)

「…来る!!…そこか!?」(ブン!)

【Hux・row】は木刀を振る。しかし、空を切った。そこへすかさず、オーラルが反撃に繰り出す!

「…残念でしたね…ハァッ!」(ブン!)

「…な…っ!?グァァァ!!」(メキメキ!!)

ヒューン!

オーラルの激しい蹴りにより、【Hux・row】の身体は宙へ舞う。そして【Hux・row】は先ほどの蹴りを思い返していた。

「!?」(…ぐ…女のくせに…なんて重い蹴りだよ…さすがはオロアの姉さんなだけあるな…だがな…俺だって…!)

チャキッ!!

「…!!」(ググッ!!)

「…あらあら。……あくまで空中での抜刀ですか…いいでしょう…受けて立ちましょうか!」

するとオーラルは剣は抜かず、【Hux・row】がそのまま抜刀を決めてくるのを待っていた。

「…大した自信だな…うぉらぁぁ…!!」

「…!」

パーーーン!

周囲から激しい衝撃が鳴り響いた。だが木刀がオーラルの身体を捉えたというような音ではなかった。

ギリギリr………

「!!なぁっ!?」(ブラーン!)

「うふふ♪……残念ですね……!!ハァッ!!」(ブン!)

「……!?…うわぁっ!!!」(グルン!!)

ダーーーン!!

【Hux・row】の振った木刀はオーラルがガッチリと片手で掴み、そのまま地面へと叩きつけた。あまりの威力のせいか、地面にはクレーターが生じていた。

ガラガラガラ……

「…ぐ…ッ!!」(い、異常だろ…!?…何なんだよ…この強さは…!)

するとオーラルは呆れたかのように退屈そうにしては【Hux・row】の前を歩いてくる。

「…それで終わりですか?…現世では軍人だったと聞いて骨のある方だと存じ上げていましたが…仕方ありませんね…」(ジャキン!)

「…な!?剣を…抜いた…!?」

「あらら〜!オーラル姉様が抜刀しましたね♪」

「…そのようですねオロア…あのままでは彼…まずいですね…」

オーラルは人を見下ろすような目で少しずつ【Hux・row】に詰め寄ってきた。

「折角あなたは【Fiducia】の加護を受けられて能力を目覚めましたのに、これでは期待外れですね…ではご機嫌よう…!!」(シュン!)

「…!!」

「オーラル姉様…いよいよ決着ですね!」

「…さて…【Hux・row】さん…あなたは…」

「!!」(…くそ……早過ぎて見えない。何とか位置さえ探れば…探れれば!!…)

フワーーッ!

「あっ!」

「…きたようですね」

「…!!な、なんだ急に…身体が…光出したぞ!?」

倒れ伏せていた【Hux・row】の身体から突然光が輝いた。そしてすぐに立ち上がり、オーラルの攻撃に備え、身構える

「…!!」(………ついに発現しましたか…では見せてもらいましょうか…あなたの持つ…【Fiducia】を!)

「…!ここだ!」(ブン!)

「…!……へぇ〜私の立つ位置を捉えてきましたか…でも…ふん!」(ヒョイ!…ブン!)

「…!!あぶねぇ!…だが…そこっ!!」(シュッ!)

「お〜どうやら【Hux・row】さん、オーラル姉様の攻撃と位置が特定しているかのように対応していますね〜♪」

「そうですねオロア。まるであれは【Hux・row】さんの世界に存在するソナーと言えばいいのか探索機と言えばいいのか…」

「……そうですか、わかりました。…あなたの能力は…探知系の能力ですか!?…ふふっ!面白い能力を授かったようですね!!」(ヒョイ!)

「…ああ。思えば俺は現世で生きていた時に、一日中ソナーで敵の影や見張をこなしていた索敵担当だったからな…それをまさかこんな形で実用するときが来るとはな!!」(ブン!)

するとオーラルは微笑み、【Hux・row】に対し、このように語りかける。

「…わかりました。そっちがその気なら…これでどうでしょうか?」

ドロ〜ン!!

「…!!な、分身!?」

「「「「「うふふ…探してみてください。…本物の私を…!」」」」」

「…上等だ!!……」

【Hux・row】は目を瞑り、周囲にソナー探知に見立て、周囲に結界を張っては秒針が一回転するイメージを描いた。そして狙いを定め、一閃を貫く覚悟でオーラルに向かっていった。

「…!!見えた!…そこだ!!!」(シュッ!ブン!)

パシーーン!!

「…なっ!?」

「…当たりです…でも残念でしたね〜♪…ハァッ!!」(ゲシッ!!)

「だぁぁぁぁっ!!」(ミシッ!!)

ドゴーーーン!!

【Hux・row】は見事オーラルを捉えた。しかし、木刀はオーラルが素早く掴み取り、勢いづいてタイキックで反撃した。そして無慈悲にも、サッカーボールのように蹴り飛ばされ、身体が吹き飛んでは壁に激突してクレーターが生じた。そして魂の残量が残り少ないせいか、腕時計からアラームが鳴り響いた。

「く…くそ…」(ガクッ)

【Hux・row】 ランクF 
【♡】

危険です!危険です!早急に魂を補給してください!

「あらあら…これは大変ですね。イール、オロア、医務室へ運びなさい!」

「は〜い♪」

「わかりましたオーラル姉様」

イールとオロアはすぐに【Hux・row】を引き上げ、医務室へと運んで行った。すると、オーラルは先程の戦いを思い返していた。

「…♪」(【Hux・row】さんの能力は、探知系の能力ですか…応用すれば索敵や、探索なども…日常の際も便利であれば、戦闘向きでもあるようですね…ふふっ今後に期待しましょうか♪)

・・・
・・



B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



「…!…な、ここは…ん?白い空間…それにベット…」

激闘の後に気を失った【Hux・row】が次に目覚めたのはベットの上であった。周囲は白い空間に囲まれている。

「あ、気がつかれましたか…?」

「…え…?」

【Hux・row】は声をかけられた方を向くとそこに、イールとオロアと同じ髪色をした、20代の容姿をした女性が座っていた。思わず誰かと思い、声をかけた。

「あの…あんたは…?でも声は聞いたような…」

「あ、先程はどうも…オーラルです。気を失っていたのでこちらの医務室へとお連れしました」(ぺこり)

「…まじでか…仮面の裏はそんな顔をしていたんだな…ちょっと驚いた。思った以上に美人さんだ…」

「あらあら、そうやって現世の女性の方々を何人も口説いてきたのですね…それに女性だけでなく、禁断の花畑で花男のお…」

「いや、もうそれはいいですから!そんな顔して人を茶化すのはやめてくれ、いややめてください!!本当にあれは自分の記憶から消したいので!!」(ゾワーッ!)

「ふふふ…冗談ですよ♪…美人だと褒めていただき、ありがとうございますね…」(ふふ♪…自業自得とも言えますが…現世で彼女を作っておきながら、早速この世界に来ては、他の女の子と手を繋いで仲良く一緒に行動するのですから、罰が下されたのかもしれませんね〜♪)

オーラルは【Hux・row】を茶化すように言い、そして今回の試練について結果を伝えた。

「では【Hux・row】さん。今回のあなたの合否ですが、見事貴方の能力が発現されたのを確認したため、今回は合格とします」

「よし!」

「ですが…乱用はいけませんよ…あなたはまだ【Fランク】の立場。乱用することであなたへの負荷も大きくなり、制御が効かなくなり、最悪あなたの身を危険に晒すだけなのでそれだけは念頭においてくださればと思います」

「…わかった。んで気になったんだけど…もし試練に合格できなかったらどうなるんだ?」

その問いにオーラルは重々しく口を開いた。

「…その時は…私の剣で…!」(ゴゴゴゴ!)

「…!」(ゾクッ!!)

オーラルの顔は険しくなったが、会話を続けていくうちにーーー

「…消滅しない程度に気絶させて、今回は残念でしたと結果を送ります♪そ・し・て・【fiducia】を確認せず、安心かつ安全に【paradiso】の世界へ案内しま〜す♪」

「…な、何だそりゃあ…」(ガクッ!)

穏やかだった。非常に。

「コホン…では、貴方を【Paradiso】の入り口まで案内します。こちらに来てください」

「…ああ、はい!」

オーラルの指示通り、【Hux・row】は駅の外の扉までついた。そしてオーラルは旅立つ前に【paradiso】について話した。

「では【Hux・row】さん。よく聞いてくださいね…【paradiso】の世界は13の島で構成されています。もちろん一つ一つの島は文化も価値観が違います。そして貴方はFランクなのでまず13の島のうちに存在するFランク向けの始まりの町へと移されます。現在真・ユートピア創造士隊の方の紛争も起こっているでしょう。ですがその紛争から生き残り、着々と実績を積んでいき、Eランクから目指して頑張っていただけると幸いです」

「…一つ質問いいか?オーラルさん…」

「なんでしょうか?」

「【paradiso】にいるその真・ユートピアなんとかと敵対している奴らとか存在しているのか?」

その質問にオーラルは首を縦に振った。

「はい。その者達と対抗している、いわゆるギルドはこの【paradiso】に存在しています。その人達は特に人種関係なく、支援も快く受け入れて雇用も受け付けております。そのために今回の試練をお受けさせた次第であります。きっとあなたの役に立つのではないのかと思います」

「…わかった…俺の能力はそのギルドの人にとっても貴重と言ってもいいか…」

「はい!もしかしたらその能力を見込んでスカウトに駆けつけにくると思いま〜す♪」

「ん?…その声、オロアか?」

【Hux・row】は後ろを振り返ると、案の定オロアが立っていた。

「オロア…もしかして見送りに来たのか?」

「は〜いその通り〜♪」

「フフッもうほんとこの子ったら〜」(なでなで!)

「えへへ〜お姉さま〜♪」

「へぇ〜!」(仲良いんだな〜西野さんもゆいちゃんも…こんなんだったろうな〜きっと…)

「あらあら…また他の女性の話ですか〜?」(二コッ!)

「い、いや別に…」

「…なんかごめんなさいね…私達の熱い姉妹愛のあまりに嫉妬させてしまいましたね〜」

「花男さんとあんなことがありましたが…元気出してくださいね〜♪」

「もういいから!くどいっての!!…はぁ…じゃあ、行くとするか!」

【Hux・row】は扉を開けてこれから外へ出ようとする。すると、誰かから呼び止められた。

「【Hux・row】さんお待ちください」

「ん?あ、イール。あんたも見送りか?」

「当たり前です。これを持っていってください。もしものための魂の補充薬の入った袋の詰め合わせです」

イールは親切にも、もしもの時のための救急用品の入った袋を【Hux・row】に渡した。その様子から、三姉妹の中でも常識があってしっかりとした印象を持っていた。

「ああ助かるよ。でも三姉妹の中であんたが一番苦労しているように思うわ…まあ無理はするなよ!」

「…ありがとうございます」(フッ…)

イールは少し嬉しそうに笑っていた。だが他の二人はその会話の内容に対し、穏便に話を聞いてくれそうになかった様である。

「「…それどういう意味(でしょうか〜♪)ですか!?」」(ニコニコゴゴゴゴ!)

「あ。……ダァぁぁあぁぁ!!」(メリッ!)

ピューーーン!!

オーラルはサッカーボールのように蹴り、オロアはタイキックをお見舞いし、【Hux・row】を思いっきり外へと蹴り飛ばした。

「全く、失礼なことを言いますね!ね〜オロア♪」(二コッ!)

「はい、オーラル姉様〜♪」(ニッコリ!)

「……」(…【Hux・row】さん、ここから本番ですよ…【paradiso】では貴方の生きてきた世界での常識が通用する世界ではありません。それをお忘れなき様…)

イールは少し心配そうに【Hux・row】のことを思い、見守る。

・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》



【Paradiso】歴2000年6/17日〜【C島】F街・始まりの街・昼型

♪〜FF7REMAKEより・闘う者達

「だぁぁあぁぁ…あれ?」

【Hux・row】は急に背景が変わり、周囲の風景を見て驚いていた。

「…もしかしてここが…【Paradiso】の世界…なんか…東京のガラス張りのビルが固まったような街だ…だが、人はいない、それに何だか騒がしいな…よし一度試してみるか俺の能力!」

【Hux・row】は会得した【Fiducia】の索敵能力を使ってみる。しかし思ったより範囲が狭いため、円に書いて5メートルほどの周囲しか距離を特定できないようだ。

「…かなり狭いな〜もしかしてランクが上がればもう少し使い道が広がるかもな〜!…さて…行くとするか…!」

【Hux・row】は街を歩いていく。すると何か、大きな衝撃音が鳴り響いた。

ダーーーン!

「な、何だ!?」

「む、貴様何者だ〜!!」「む?データにはない。だがその勲章は…貴様現世人のようだな!!…覚悟しろ!!」

「…!!」

するとそこには白い装束を着た執行者のような者がナイフを取り出し、【Hux・row】に襲い掛かろうと臨戦体制のポジションにいる。

「…そうか…その様子だと…どうやらお前らが真・ユートピア何とかってやつか!?」

「【真・ユートピア創造士隊】だ!!…名前を間違えるとは貴様は魂のみではあるが万死に値する!!…覚悟するんだな!!」

「…ちっ…やるしかないか!!」(チャキッ!)

【Hux・row】は木刀を持ち、集中している。すると、創造士隊たちがナイフを持って詰め寄ってきた。

「くたばれ〜!!」「華々しく散るがいい!!」

「…はぁぁあぁぁあ!!!」

バシーーーン!!

バキャッ!!

「「ぐぁぁあぁぁああ!!」」

【Hux・row】の一振りで、創造士隊たちは吹き飛び、地面に倒れ伏せる。打ち所が悪かったのか気絶をしている。それを見計らい、【Hux・row】は逃げていく。

「相手してる場合じゃあないんでなぁぁ!!あばよ…!!…つか気になっていたけど…この木刀…やけに重いなー…何か鉛でも入れてるのか?」

そう考えながらその現場を後にする【Hux・row】。すると、【P-Watch】から通知音が鳴ったので、すかさず時計を確認する。

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

戦闘経験値ポイントが付加されました。次のランクアップまであと※※※※です。

「…なんか敵を倒して経験値を獲得するって…まじでRPGのゲームみたいだな…案外こんなことして楽しむ奴もいるってことか…まあ命は取ってないし、次行くか!!」(ダダダッ!)

・・・
・・


〜その頃ある街のエリア〜

「う、うわぁぁぁ!!!!」

ぐぁぁぁぁぁ!!!

「グッ!!なんて力だ…!!我々では止められないぞ!!」

「!!」(く、くそ…じゃあこれは能力が制御できずに暴走しているってことか…俺としたことが…ぐっ!!)

バタン!

創造士隊と交戦中だったある現世人はその場で倒れてしまった。だが魂の量はわずかに残っていた。倒れていることを確認し、創造士隊達は続々と集まってくる。

「ふぅ…驚かせおって…ではこれより処刑を開始する!!」

ワーーーッ!「…な、何だ貴様は…!?ぐあっ!」「な、何者だー!?」

現世人は少しだけ目を開けた。すると何処からか、創造士隊達の悲鳴が聞こえてきた。するとそこには銀髪のベリーショートウルフの男が木刀を手に持ち、創造士隊達に立ち向かっていた。すると、創造士隊はその実力に恐れたのか…少しずつ後ずさる。その男は、現世人に手を差し伸べる。

「…大丈夫か!?…あんたもこいつらに襲われたのか…全く…オロア…こんな厄介なところに蹴り飛ばしやがって…!!」

その口ぶりから現世人であることが分かり、男に名前を聞く。

「…あんた現世人だな…名前はなんて言うんだ…俺は…【Bill】」

するとその男は、その名前が気に入ったのか、こう名乗った。

「【Bill】か〜!…いい名前だ。昔の洋画に出てくる軍曹の名前みたいだな〜!…俺の名前は二ノ宮白狼改め【Hux・row】!よろしく!!」(シュッ!)

「…わかった!【Hux・row】!」(ガシッ!)

「あ!そうだ、後これイールからの差し入れだ!魂がもう空の状態が近いんだったら飲んどけ!…さーてまずは、ここを突破しないとな!」

二人は軽い自己紹介をして握手をし、お互いに敵を蹴散らしながらこの世界の事情を聞く。【Bill】は充魂剤を摂取して魂を補充し、目の前の創造士隊達と睨み合う。そこに下神官らしき人物が姿を現した。

「き…貴様ら…生かしては返さないぞ〜!!あの忌まわしき導き人からの使いである現世人共が〜!!」

「ぺ、ペルガ下神官様!!…ご無事でしたか!」

「…なんかおいでなすったぞ!」「さっきの隊長みたいな奴だ!!奴はペルガとかいう下神官だ。ナイフ使いだから気をつけて!」

二人は構え、ペルガと敵対する意向を示した。

「うぉぉぉナイフのサビにしてくれる!!皆のもの行くぞ〜」

ワーッ! ワーッ!!

「攻めてきた!」

「…こうなれば連携だな!!【Bill】!!援護頼むぞ!!」

「…わかった!俺の能力、あんたにも効果があればいいけど…ハッ!!」(バッ!)

すると【Hux・row】の足に光が宿る。その様子を見て身体の変化に気づき、【Bill】を褒めるかのように言う。

「おおすげえ…!足が軽くなった!すごいなお前の【fiducia】の能力…これはもしかしたら…!よし、俺のソナー能力で…周りを探知して…一気にカタをつけるぞ!!」

【Hux・row】は周囲に結界を張るかのように周り半径5メートルにソナーのレーザーを巡らせて、創造士隊達を感知し、一気に敵を木刀で殲滅するかの如く四方八方に叩きつけていく。

バンバンバンバン!!バキィィ!!

「うぉぉぉ!!らぁぁぁぁ!!」(ブン!ブン!)

「「「「「「ぐぁぁあぁぁああ!!」」」」」」

「ば、ばかな…こんなことが…ありえん…」

ペルガはその光景を見て驚愕した。自分たちの大勢の部下が一網打尽にされる様を見て唖然となった。

・・・・
……ふ〜んあの銀髪の子やるわね♪
・・・・

「…っし!」(スッ!)

ドサドサドサドサ…… あわわ… 逃げろ〜 撤退だ〜! 逃げるんだよ〜

「き…貴様〜よくも私の部下を〜!!」

ペルガは【Hux・row】を強く睨みつける。だが【Hux・row】は動じることなくペルガと向き合う。

「…後はお前だけだ…来いよ…下神官殿!」

「…くそ!!なら…これならどうかな?」

ペルガは何かを操作していた。すると、何かが壁から巨大な機械物が出現した。
 
・・・  
・・  


B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ペルソナ5Sより・Blooming Villain

「…な!?…何だありゃあ〜!?」

「きょ、巨大なザリガニ…ロボか…!?…マジかよ…本当に何でもありだな…この世界!!」

「クックック…では私は乗り込ませてもらうよ!!」

ペルガがそのザリガニ型の巨大ロボに乗り込み、操作を開始し、【Hux・row】【Bill】目掛けてハサミを叩きつけようとする。だが二人は一緒にバク宙し、衝撃からかわした。

ドォーーーーン!!

「…っち…SFの洋画かっての…!」「クルンスタッ!」

「…くそ!全くだよホントに…!」「クルンスタッ!」

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

能力を過剰に使用しております。身体の酷使・負荷に注意してください。

【Bill】ランクF 
【♡♡♡♡♡】
ーー

その二人の様子に巨大ロボに手足も出ないと知ったペルガは高笑いした。

「フッハッハハ〜どうやら我々のメカには手出しできないようだね〜!!…では…犠牲になった部下の苦しみを味わうがいい!!」

「くっ…どうする!?【Hux・row】!!」

「あの本体のボディを今当てても、大したダメージにならない…となると弱点は…くっ!?頭いてぇ…さすがに連用は負荷がかかるが仕方ないな…」

【Hux・row】は能力の使用により身体を酷使していたからか頭痛が起こり、頭を押さえながらもソナー能力を使い、相手の弱点を探っていく。すると、どうやらザリガニロボの細い足を狙い、機動力を落とせば勝機が見えるという結果が出た。

「よし…まずは奴の足を狙う!そこから畳み掛けるぞ!!」

「わかった!!…じゃあ…」

「「いくぞ(ぜ)!!」」(ダッ!!)

「ふふふ、足を狙うときたか…だがそうはいかないぞ!!」

ペルガはロボに接近させないようにハサミを払い除けて向かい打った。だが二人はその攻撃をひらりと避け、足を重点的に狙っていく!

「…よっと…オラ!!」(バキン!!)

「…でぁぁあ!!…よし【Bill】!!…お前、もう能力は大丈夫か?」(パキョン!!)

「…ああ…だがまだしばらく休まないと…副作用がね!」(べキン!!)

グラッ!!

「な、前足を!?…クッ!!小癪なことを!!」

ベルガはハサミを大きく建造物に叩きつけ、瓦礫の雨を降らせた。その破片が運悪く【Hux・row】に向かってくる。

「…!!な!?ぐあぁぁっ!!」

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡】

能力を過剰に使っております。身体の酷使・負荷に注意してください。

運悪く【Hux・row】は瓦礫の破片に直撃してダメージを受ける。【Bill】はすぐに【Hux・row】に歩み寄り、安否を確認した。

「【Hux・row】!!大丈夫か!?」

「…ペッ!…ああ問題ない!だが前足をやった。次は中足を再起不能にすれば…奴の機動力はだいぶ落ちるだろう!!」

「ああ、やってやろう!」

「おのれ〜…まだ生きていたか…だがその余裕もここまでにしてやる!!」

ウィーーン!

「…!!」

「な、何だあれ!?」

ペルガがザリガニロボの搭載していた武器を出してきた。どうやらその形状から破壊力のあるミサイルであった。

「ハッハ〜!!…さらばだ!…勇敢に戦ったよ君達はぁ〜!…だがここまでだ!!ただいまスイッチを押し、後10秒後に発射するように設定した!!」

「ペルガの奴ぅ!!…奥の手を隠し持っていたか…だが俺達だってなぁ…負けられないんだ!!」

「ああ…ここからだ!身体…酷使してしばらく動けなくなってしまうかもしれないけど…やるしかないな…【Bill】…俺の足の強化…頼めるか!?」

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡】
ーー

【Bill】ランクF 
【♡♡♡♡♡】
ーーー

「ああ!大丈夫だ!!」

「…よし!俺はソナー能力を発動して一気に狙いを定めて、あの足を破壊し…倒れた拍子にミサイルを誘爆させる!!かなり広範囲の爆発があると考えられるからお前は早めに避難してくれ!!」

「わかった!!」

「ふふっふ〜♪…今更、何をぶつぶつ言っている。二人仲良く遺言でも喋っているのか?スイッチは押して秒読みに入っているのだ!」

10…9…8

「…よし!」(バッ!)

7…6…5

「恩に着る!…さ〜て…いくぞぉぉぉお!!」(チャキッ!!)

「むっ!?来たか?だが行かせない!着弾させてやる前に葬ってくれる!!」(ブン!!)

4…3…2

「おっと!!当たらねえよそんなハサミ!!…そして…ここで終わらせてやんよ〜!!」(チャキン!!)

ペキペキパキョン!!

【Hux・row】はソナー能力でザリガニロボの足を標的にし、神速の如く四方八方に叩き折っていき、ロボはバランスが崩れた。

グラララ!!

【1】

「…な…バカなーーー!!し、しまった!!地面にミサイルが着弾をーーー!!」

ドーーーーーン!!

「うわぁっ……!!…っ!!…や、やったのか…!?…でも…【Hux・row】!!」

【Bill】は【Hux・row】の安否を確認した。思った以上に大きい爆発に巻き込まれた。その事から、無事では済まないと考えられる。そんな時に、瓦礫から人影が見えてきた。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ペルソナ5より・Regret

「……ハァ…ハァ…だぁぁっ!!…っつつ…やべえ…思ったより破壊力があるな〜!……ダメージが多くて魂が思ったより抜けているからか…身体中から粒子が飛んでいる…だが…ざまあみろ!…お陰でお前をあのデカブツから引きずり出せたからな!」(チャキッ!)

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡】

能力を過剰に使用しております。身体の酷使・負荷に注意してください。

「【Hux・row】!!無事だったか〜!!」

「ぐ…くそ…貴様ら…【真・ユートピア創造士隊】において…下神官の地位にいるこの私に対し、こんなことをしたらこの世界での居場所はどこにもないんだぞ…!?わかっているのか!?」

すると、【Hux・row】はペルガの発言に動じずこう語った。

「…確かに俺はまだこの世界のことは知らない…何たって、今来たばかりだからな…だがこれだけはいえる。…俺はお前みたいに、自分が正義だと自惚れて、他の殺戮部隊を雇って操り、好き勝手に人を殺し、自分の理想を押し付けるような世の中を創造する連中の作る世界なんざ…俺は望まないし、誰もが幸せとも限らない!!…だから俺はお前のやることを否定してやる!何度でもお前達がこんな無意味な争いをしてユートピア人を無理やり隔離し、俺らみたいな現世人に対して血を流すような殺戮を続けるのなら…俺は絶対に容赦しない!!…お前らの腐りきった思想…この剣に誓って徹底的に叩き潰してやる!!」(チャキン!!)

「!!」(…【Hux・row】……!!アンタ……)

【Hux・row】はクサイ台詞なのは承知の上で、下神官のペルガに対し、木刀を見せつけ、自らの行いを悔い改めるように説得をする。しかし、ペルガ自身は揺らぐも、プライドが許さないのかその要求を真っ向から否定する。

「っ!!…ほ…ほざけ…ほざけーー!!…世の中を知らない…何も知らないガキがぁぁあぁぁああ!!」(シュッ!)

ペルガはナイフを持って【Hux・row】目掛けて突進してくる。だが【Hux・row】はそれを容易くかわし、全力の一太刀をベルガ目掛けて振り下ろした。

パーーーン!!

「!!…あ、あが…」

バタン…

「…たく…手間取らせやがって…【Bill】…大丈夫か?…?どうした?」(チャキン!)

【Hux・row】は呆然として立ったままの【Bill】に問いかける。

「おい…どうした?【Bill】?…お〜い!?」

するとようやく【Bill】は口を開き、涙を流しながら、雄叫びのような声を出した。

「…うぉぉぉぉおおお!!!!」

「どわぁぁっ!な、何だよ一体!?」

その後【Hux・row】に詰め寄り、褒め称えるように話した。

「あんた…すげぇんだな!」

「…え?」

「…いや…さっきの台詞すげぇ感動した!!もう最高だ!!本当に!!」

「…お、おい!?な、何だよ!?」

【Hux・row】は【Bill】のハイテンションな態度に少し引いていた。すると【Bill】は【Hux・row】に対し、あだ名の如くこう言い放った。

「…これからあんたの事!!教官と呼んでいいか!?」

「…は!?…何でだよ…!?」

「いやなんか雰囲気からして軍人だと思うんだ!!俺は元暴走族の総長でそれなりに威厳を持っていたと思ったんだが、さっきのあんたがペルガに話しかけていた時のオーラは…何ていうか、洋画に出てくる歴戦の軍人って感じがするから!!だから俺は今日からアンタのことを教官と呼ぶことにする!…ダメか!?」

「……」

【Hux・row】はその時、現世で生きていた時に、ありさから教官と呼ばれて感謝されたこともあり、彼もそれなりに感謝の意を込めてそう言っているのかと思い、少し呆れるかのように思いながらも、【Bill】に返答した。

「…ハァ…お前の熱意に負けた…わかった。教官呼びでいいよ」

「ホントか!?やったぜ!それに俺達は今日から仲間だ!これからよろしくな!教官!!」(バッ!)

「…こちらこそ!よろしく頼むな!【Bill】!」

《テ〜レレレッテ レ〜テレレッテ・テッテレ〜♪》

【Hux・row】 ランクF
【♡♡♡♡♡♡】
ーーー
【Bill】が戦闘メンバーリストに加入しました。

こうして【Bill】は、【Hux・row】の仲間になった。

・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜からくりサーカスより・あるるかん

「それにしても…この街は危険だな…またいつ奴らが攻めてくるかわからない…」

「そうだな…どうするべきか…」

【Hux・row】と【Bill】は自分の進路に悩んでいた。そこにどこからか、誰かから声をかけられた。

ねえねえ〜あなた達〜♪もしかしてこの【C島】から出たいの〜?

「「…え?」」

ふふ〜んそういうことなら…よっと〜♪(ピョン!)

グルングルングルングルン!

「…え!?」「な、何だ!?」

スタ〜ン!!

二人は上から誰かが空中から前回転して降りてきたので驚いた。降りてきたのは女性で、明るいオレンジ色に近い癖っ毛の金髪をしており、もみあげは長く、サイドにはツインテールがある。目はエメラルドカラー、黒い服に赤のチェックの入ったミニスカに黒のスパッツを着用している。外見的年齢から20代前半くらいの容姿をしていた。するとその女性は自分から名乗り出た。

「初めまして!私は、【R・P社】!!(追憶と命題)のギルドに所属している【Beanne】(べアンヌ)っていうの!…よろしく〜!♪」

《【R・P】社?ギルド所属【Beanne】(ベアンヌ)》

「な、何だ?…え?ギルド!?…ってことはアンタ!?」

「じゃあ、アンタが俺達の能力を見て採用してるっていう反ユートピア団体のギルドの人間って事か!?」

【Beanne】はその問いに笑みを浮かべ、返答する。

「その通り!その様子からオロアやイールから事情聞いて、ちゃんと【Fiducia】の能力を身につけたようだね〜♪!!それでね〜♪あなた達の戦いぶりを見込んで、勧誘という事でこうして声をかけに来たってこと!…とりあえずはっと!じゃあ早速あなた達のランク見せてくれる!?」

二人はその質問から、特に敵というわけではないという感じから首を縦に振り、【P-Watch】を見せた。

【Hux・row】 ランクF 
【♡♡♡】
ーーー
次のランクアップまであと※※※です。

【Bill】ランクE
【♡♡♡♡♡】
ーーー
次のランクアップまであと※※※※※です。

「ふむふむ!【Hux・row】くん(ハクス・ロウ)ランクF…【Bill】くん(ビル)ランクEね。…なるほどね♪よしわかった!じゃあ一緒に来てくれる?」

「え?突然だな…でも俺もとうとうランクEか〜!やったぜ〜!!あ、教官どうします?…ん?教官?」

「…ん?どうしたのかな?銀髪くん?」

【Hux・row】は【Beanne】に対してこう答えた。

「…もしかしてアンタ…現世人か?…それもかなり年数の経過したベテランの人じゃあないのか?」

「…え!?本当にですか教官!?…でも…あれ?確かに導き人の勲章【Questo mondo】がある。それに…確かに勲章が色褪せてる…!」

すると【Beanne】は【Hux・row】の推察に笑みをこぼし、その問いに答える。

「あはは♪正解〜!さすがにその目と鼻は白い狼のように鋭いね〜♪…いいね君!気に入ったよ!だ・か・ら・このベアお姉さんと一緒に来てくれるかな〜?詳しいことはそこで話すから!」

「…わかった。こんなとこにいてもすぐに捕まるだけだしな!…だが…もしアンタが怪しいと思ったら…その時は…!!」(スチャッ!)

「だから〜心配しないの♪私がもし敵ならこんなに長話せずにとっくに殺してるでしょ?」(ニヤッ!)

「!!…た、確かに…あいつら躊躇なかった…わかったよ。それにギルドなら仕事ができるし、ランクアップしたから何か地位ももらえると思うし、俺は行くよ!!」

「…わかった。【Beanne】だったか…アンタを信用するよ!」

二人は【Beanne】に対する言い分に概ね納得し、同行することを承諾した。

「ふっふ〜ん♪このベアお姉さんに任せなさいって♪ほら、行くよ〜こっちこっち♪」(ピュ〜♪)

「なっ!?足早っ!!…オロアレベルだな!…追うぞ【Bill】!」(ダダダダッ)

「ああ!?待ってくれよ〜教官!!」(すげえハキハキ喋るな〜あの人…導き人と同レベルかもな…イールはのぞいて…)

【Hux・row】と【Bill】は【Beanne】の後ろについて行き、案内される場所へ行った。

・・・
・・



B. いいえ


《Capitolo・5》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



〜その頃ゆいの【paradiso】駅ホーム〜

その頃、ゆいは無事に【Paradiso】の駅へ到着する。そしてオロアの案内により、駅事務所に立ち入り、イールから入界手続きを済ませているところであった。

(Linea)

「この名前でも大丈夫でしょうか?」

ゆいの名前は【Linea】という名前にした。亜麻色はイタリア語でLinoと呼ぶため、自分のチャームポイントでもある髪色から名前を決めた。眼鏡を持ちながらその名前を確認する素振りを見せるイール。確認し終えた後、ゆいに対し淡々と返答する。

「…問題ありません。良しとします。あと食事についてはFランクの場合は、あなた方の現世にある様な飲食店への入店をお断りされることが多いですね。その際は無人販売機の方にて食事するか、もしくは定期的にやっている炊き出しに並ぶか…そこは自由にしてください」

「…そうですかわかりました。まあ私はしばらく病院食だったので…薄口には慣れています!」(カキカキ!)

「…ふふっ、意外ですね」

「…イールさんにも、意外と笑うところがあるんですね!」(クスッ)

ゆいはイールに意外な一面があることに少し安心したのか笑みを浮かべていた。書き終わった書類をイールに渡す。イールは少し落ち着いてからゆいに話しかける。

「…確かに書類は承諾とさせていただきました。これで入界手続きは終了とし、あなたはこれから現世人【Linea】(リーネア)として名乗っていただきます。こちらは現世人であることの証明となる勲章です。あとはこれを身につけていただきます」

「…?…何でしょうかこれ?…腕時計?」

ゆい改め【Linea】はイールに渡されたものを確認した。勲章には【Questo mondo】と書かれており、もう一つは見た感じ腕時計であった。そしてそれについてイールから説明を受ける。

「それは通称【P-Watch】腕時計型デバイスです。手に着けてディスプレイを見てください」

「…!?…なんかハートが書かれていますね……まるで自分の健康状態を調べる心電図にも見えますね…」

【Linea】は【P-Watch】の画面を確認する。すると、自分の現時点のランクの他に、ハートの様なものが表示されている。

【Linea】  ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

現在は【paradiso】歴2000年6月です。

「それはあなたの魂の値です。計測した数値は大体のものですが、もしそれが無くなればあなたの魂は消滅するという事をお忘れなき様お願いします。」

「…わかりました。…でもこの世界が出来て2000年…長い歴史があるのですね〜…」

するとイールは少し微笑んだ表情で【Linea】に説明した。

「この【paradiso】には最初、時間の概念はありませんでした。元々この世界は真っ白な世界でした。そんな時に、ある人には創造神とも言われ、中には重罪者とも言われた女性と、その女性を守り勇敢に守護して戦った男性。そしてその二人に付き従い、二人のために戦った一人の少年の言い伝えがあります。その人達の頑張りがこの世界に時間の概念を創り出し、この世界を作ったというのは昔から伝えられている伝承の歴史があります」

「…その伝承の通りであれば今の時代にもそういう創造神と呼ばれていた方を恨んでいる人が…この【paradiso】にも潜んでいるのかもしれませんね…」

その言葉にイールは眉を潜め、深刻な顔でこう語った。


「ご明察通りです。去年にはそんな動きはありませんでしたがユートピア2000年始めになり、【paradiso】の世界各地で善良なユートピア人は隔離措置をとられ、あなた達の様な現世人、主に地位の低い者達に危害を企てるような事件が増えてきました。その組織の名前は真・ユートピア創造士隊と呼ばれ、白い衣を羽織り、その配下には【paradiso】各地にある闇に包まれた殺し屋ギルドに所属するユートピア人を率い、自分達の作るべき世界のためならば…時には殺戮をも厭わない集団がいます。そして…今も暗躍し続け、各地で反乱を起こしています」

「!!…ひ、ひどいですっ!!…その話を聞くと【paradiso】は現在、醜い争いが各地で起こっていると…そんな恐ろしい世界に…私が…」

「もしその者達と対抗するための術を私達はあなたに素質があるか…試すことができますが…やってみますか?」

「…!?そんな方法があるのですか!?」

その言葉に【Linea】は驚き、イールは会話を続けた。

「はい。この【paradiso】は極めてあなた方の住んでいた世界とは非現実的なもので構成されている世界ですから。あなたの実力を問い、この【paradiso】に生き残れるか判断させていただきます。いわゆるあなたの体験してきた試練のようなものです…どうされますか?」

「……」

【Linea】は、あの時の試練を見た限り、【paradiso】はただの楽園とは程遠い現実があることは感じていた。そしてあの時、電車の中で自分への励みとなった言葉を胸に、こう主張した。

「…イールさん、案内してください!!私…その試練を受けます!」

その発言にイールは微笑んでその言葉を承諾と捉え、淡々と返答した。

「…わかりました。あなたの覚悟は伝わりました。こちらです。ついて来てください」

【Linea】はイールの後をついていく。するとそこには広大な空間が広がっていた。

「な、ここは…!?…御伽噺(おとぎばなし)でいうコロシアムでしょうか…?」

「はい、そして目の前に立って見てください。相手の方が来ます」

「え?…!?…な!?……あ…あそこにいるには…私…!?」

【Linea】は驚いた。自分の目の前に立っていたのは、かつて現世で闘病生活をしていた自分自身、その姿は病院着を見に纏い、辛そうな表情をしていたゆいがいた。その際イールから説明を受ける。

「あそこにいるのは現世でのあなた自身です。どうやら現世での突然の別れから、後悔の念が具現化して成仏できず、魂の集合体として人の形をして存在しています」

「…!?…そ、そんな!」

すると、相手のゆいが声をかけてきた。

『あなたが…【paradiso】の私…ですね…?…何でそっちの私は、そんなに元気でいるのですか!?……私はこうして辛く重くて、寂しい思いをして、家族に心配ばかりかけているのに…何で!?…私は…こんなに苦しい思いをしていたのにっ!?』

「…!!」

【Linea】は現世でのゆいだった者の言葉に怯みそうになった。相手の声は、まるで現世での未練を残し、後悔の念が混じり合った強い責任感、そして家族を傷つけ悲しませてきたことによる、強い悲しみに満ちた声を出していた。

「この試練の意図はかつての現世での自分自身と向き合い、見事に打ち勝つことで合格と致します。【Linea】さん…覚悟はいいですか?」

【Linea】は頷き、信念を持った目をしてイールに主張した。

「…わかりました!!…あの人はかつての私だから…だからこそ…絶対に納得させ、勝利してみせます!」

相手のゆいは【Linea】の戦う意志を見て、二本の薙刀を取り出し、一本を【Linea】に渡し、真剣な目で見つめる。

「ではこれより、【Linea】vsゆいとの勝負を開始します。では両者共…」

「グッ!!」「グッ!!」

イールは始まりの合図の準備をしていた。周りは静かだ。風もなく無音の状態が続いている。【Linea】とゆいは構えを取っていた。その中でイールは目を瞑りながら両者の勝負の合図をじっと待っていた。すると無慈悲にも戦いの合図が開始される。

「始め」

🎼Back Ground Music 》》》




♪〜TOXより・己を信じて

「はぁっ!」(ダッ!)

「はぁっ!」(ダッ!)

カン!!

「…くっ!!」(ギリギリ!)

「…!!」(ギリギリ!)

両者の薙刀はぶつかり合い、鍔迫り合いが始まった。その様子にお互い語りかけていた。

「あなた…!身体が弱いのに…どうしてこんな無理を…!?」(ギリギリ…)

「…!!…あなたにはわかりませんよ…【paradiso】に来てから…自分の身体のことを気にならなくなり、それが普通だと思った時からあなたは!…!!…うぅ…!!ゲホッ!」(ブン)

「!!…もうやめてください!!あなたは私なんですよ!…お願いですからもう無理は…!?」(ブワッ!!)

ブンキンキンキン!!

「…っ!!私自身の心配をするよりも…あなた自身の心配をするべきではないのでしょうか!?」(ブン!)

「!!…くっ…!?」(カンカン!)

ゆいは吐血をしながらも攻撃を続ける。【Linea】は、かつての辛い闘病生活を送っていた自分自身の姿を見て目を逸らしたくなったが、それでも諦めず、目の前の自分と向き合う。

「…私は、負けません!……あかりちゃんやフネおばあちゃん……そしてお姉ちゃんのためにも!!…私は生きるのです!!…だからあなたなんかには…負けない!!」(ブンブン!)

「!?………そうですか、わかりました…ではその覚悟を認め…私も本気でいかせてもらいます!…って…え…!?な、何ですか!?これ…」

【Linea】はゆいの悲痛ながらも、生きることへの執着の気持ちを感じ、相手の命が尽きるまで全力で戦うことを決意した。その時、頭の中にゆいの心の声が聞こえた。

(私は…私は…生きたいです…旅立ってしまったあかりちゃんのためにも…私は…あの子に何一つしてあげられなくて…ごめん……なさい…本当にごめんなさい…!!…だから私は命果てるまで戦います!)

ゆいの心の声を聞き、【Linea】の心は揺らいでしまい、そのまま立ち尽くしていた。

「…!!」(…そうですか…あなたはそれで…このような無茶を…でも…私は…私は!!)

【Linea】立ち尽くしていた。その様子にゆいは、隙を見せたと思い立ったのか、強く問い掛ける。

「…何のつもりですかあなたは…?私は限られた命の中、こうしてあなたと戦っているのですから…それをこんな形で…それでもあなたは私ですか!?…うっ!…ゲホッゲホッ…!!…もういいです…戦う意志がないのであれば…!!」(スーッ!)

「!!」

ゆいは薙刀の先を自分の腹部へ突き刺すような姿勢に入る。それを見た【Linea】はすかさず止めに入る。

「!!…だめぇぇぇっ!!」(スッ!)

パシッ!!

「…なっ!?…何のつもりですか!?…私が倒れれば…あなたの勝利だというのになぜ!?」(グググッ!)

「…はぁ…はぁ…何を考えているのですか!?…あなたはそれでも私ですか!?病に身体を蝕まれて……生きることは苦しくて…辛いでしょう。……私だって辛かったです!!でも…逃げてはいけません!!最後まで生きてください!!」(ギリギリ!)

「…!!…っ!」

ゆいは頭の中を抱えた。そしてまたもや【Linea】の頭の中にまたもや心の声が聞こえた。

(毎日同じ病院の景色…早く私も病気を治して…元気になって、外に出て……色んな景色を見たかった………いろいろ楽しみたかったです。でもそれが叶わず…私は…うぅ…寂しい…すごく寂しい…です…!こんな思いをするなら………いっそ…)

「…!!…そうでしたね…!」(フッ!)

「…!!なっ、何を笑っているのですか…あなたは…何故!?」

【Linea】はゆいの頭の中をよぎり、以前の自分も、闘病生活を過ごすうちに感じたことであり、とても辛いことであった。だがそれを懐かしむように笑っていた。

「…確かに…あなたの気持ちはわかります。あなたは…私なのですから…でも本当にあの闘病生活は寂しいだけだったのですか!?…あなたはあのお姉ちゃんと一年半の再会の時…それでも寂しかったのですか!?」

「…!?…黙って…!!…黙ってください!!」(ブン!)

「…!足がお留守ですよ!!」(ブン!)

「…あぁっ!!…くっ!?…やりますね…!…でも…」(ギリッ!フラ〜ッ!)

【Linea】とゆいは一歩も引かず、両者はいがみ合っている。だがゆいの方は体力が持たないのか、少しずつ身体が揺れていた。

「…もう無理はしないで…もう見ていられませんから…ここで決着と致しましょう!……あなたとの」(チャキッ!)

「!!………望むところです!!…【Paradiso】の……私っ!!」(チャキッ!)

二人は気を張っていた。その光景を見ていたイールは二人の様子を見て【Linea】に対し、健闘を祈るかのように心の中で呟いた。

「……ふむ」(…二人共、どうやらここで全力の一撃を繰り出すようですね…【Linea】さん…悔いのないように、かつての自分自身との決着をつけてください……)

「…」

「…」

沈黙の時間が流れている。しかし【Linea】は周囲の風はないのに関わらず、何故か風が吹く感覚を感じていた。それはとても温かく、周りを包み込むような想いを感じ取っていた。空想の中ではあるが、そこにはありさと祖母が薙刀を持ち、【Linea】の肩を持って励ましている感覚にも感じた。

「……」(お姉ちゃん…おばあちゃん…どうか見守っていてください。私は…私自身に打ち勝ってみせます!!)

「…!!行きます!!」(…ダッ!!)

先に飛び出したのはゆいの方である。これまでのものとは違い、全力でゆいは【Linea】を倒す気で特攻を仕掛ける。だが【Linea】は目を開け、思いっきり風の吹いたかのように高く跳躍した。それを迎え撃とうとゆいは構えの姿勢を取る。

「!!」(タン!!)

「なっ!…空中戦!?…ですが…スキだらけですよ!!…これで、終わりにします!!」

「……!!」(…無心になり…穏やかで…繊細な風の如く…!!…そこです!!)(ブン!)

カーーン!

「…!!…くっ!!」(ギリギリ!)

パキイィィィン!!

「…!!な、…そ、そんな…!!」(ガクッ!)

「……」(スタッ!)

【Linea】は力の限り薙刀を振り、ゆいの薙刀を真っ二つに折った。彼女は膝を折って倒れ伏せた状態で考えにふけっていた。そして、またもや【Linea】の頭の中に心の声が聞こえた。

「…!!ま、また声が…」

(悔しい…死ぬのはとても悔しいです…!!…でも…それでも私は生きるということを全うしたのですね…いつまでも悔いを残さず…私は…行きます。心地の良い風が遠くまで流れゆくように…)

「…!!…はぁ…はぁ…はぁ……っ!!…あなたはよく頑張りましたよ…私…そして私は…ゆいとしてではなく……【Linea】として、これからも頑張って行きますから」(ニッ!)

【Linea】はゆいとの戦いを見届けていたイールは勝敗を決めるかのように目の前に現れ今回の勝者を決した。

「そこまで。勝者【Linea】」

「……勝ちました!やった〜!!」

【Linea】は勝利の雄叫びを上げた。するとゆいは立ち上がり、【Linea】の前に来た。だがその目には生きることへの辛さといった表情はなく、清々しい表情をしていた。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ペルソナ4より・I'll Face My self

「…完敗です…もう…ずるいですよ…!…そんなに身体が健康だったら…ケホッ!…勝てるはずないじゃないですか…」

「…うふふ!でもあなたも病弱にしては、本当に戦うという信念が伝わってきましたよ……!」

「…あとは頼みましたよ…お姉ちゃんやおばあちゃんの分まで頑張るんですよ…!【Linea】!」(…スッ!)

「…はい、確かに…あなたの意志は私が受け継ぎます…現世での私!…ううん…ゆい!!」(パシッ!)

【Linea】とゆいはお互いに握手をする。そして次第にゆいの身体が少しずつ消えていき、光の粒子となり、【Linea】の周りを温かく抱擁するかのように包み込んだ。

「こ…これは!?」

イールは【Linea】に対してこう伝え、説明した。

「どうやらあなたは自分自身と向き合い、【fiducia】と呼ばれる神託の恩恵を受けました。これよりあなたには、この【paradiso】の世界で使用できる隠れ持った潜在能力が開花しました」

イールの言葉を聞き、【Linea】自身は混乱したが、それでも理解しようとした。

「?…あの〜?よくSFの小説とかによくある…特殊能力?みたいなものですか?…まあ何となくですが理解しました。…あれ?腕時計に表示されているハートが減っていますね…?」

【Linea】ランクF 
【♡♡♡♡】

「流石に先程の戦いでダメージを受けて…減っていますね…どうやって回復するのですか?」

イールは【Linea】の問いに対しこう答える。

「睡眠を取るなり、中には魂を補充する薬、また食事にも魂が補充される作用のものがあります。ですが今回は特別です。私が補充して差しあげます」

「…えっ!?」

イールは何かの本を取り出し、お札のようなものを【Linea】の身体に貼り付ける。すると【Linea】の周りに光が宿り、心なしか体が軽くなったように思った。

「確認してみてください。」

【Linea】は腕時計を確認する。するとディスプレイの表示が変わっていた。

【Linea】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

「!?…回復しています…一体何が起こったのですか!?…!…そもそもあなた達導き人は何者なのですか…!?」

するとイールは少し笑みを浮かべ、その問いに答えた。だがそれは先程のような親切なものではなく、何かを試すかのような笑みである。

「それは…これからあなた自身が知ることになりますよ…では次へと参ります」

「…!?まだ何かあるのでしょうか!?」

「は〜い♪せっかくあなたは【fiducia】に目覚めたのでその実力を試させてもらいま〜す♪」

【Linea】は聞き覚えのある声がしたので声のした方を向く。そこにはオロアが立っていた。

「!?…オロアさん…」

「オロア…それは私のセリフなのですが…」(やれやれ)

「まあまあいいじゃないですかイール姉様〜♪」

「…えぇっ!?…姉様って…二人は姉妹関係だったのですか〜!?」

たわいも無い会話をしていると、誰かがこちらに歩み寄ってくる者が現れた。【Linea】は確認すると、イールとオロアと同じ髪色の長髪で顔面にカフスを着けた一人の騎士が現れた。見た感じ、女騎士と言えばいいのか【Linea】は少し困惑していた。すると、女騎士はこう語りかけた。

コツン…コツン…ズザッ!

「お初にお目にかかります。私は彼女達の長を務めています…オーラルという者です」

オーラルと名乗る導き人は丁寧に【Linea】に挨拶する。

「あ、これはご丁寧にどうも【Linea】と申します。…あの〜イールさん…一体何を始めようというのですか?」

【Linea】の質問に、イールは少し笑みを浮かべて【Linea】に返答する。

「これからあなたにはオーラル姉様と戦っていただきます。言い分は問いませんので速やかに前に来てください」

「…!?…ええ!?そ、そんな…無理ですよ…!私があなた達の長の方と勝負しても勝ち目はありませんよ〜!!」(タッタッタ!)

「あら?…あなたは躊躇する側ですか…去年もやり合うことに躊躇した人がいましたが…まさかあなたも先延ばしするタイプであるとは…」

イールは去年の挑戦者の出来事を思い返していた。そのことから【Linea】も同類であるような予感がし、イールは少し悩んだ様子で頭を抱えた。

「…そうですかわかりました。でも有無を言わさず前に行きなさい…ではご武運を…」

「ええっ!?…で、でも…わ、私…」

「…はぁ〜…あなたもあの【Bill公】と同等とは少し情けなく思います……は〜い!気を取り直してこれより、オーラル姉様と清純派のルックスで《世の中の男共をダメにする!!豊満ボディーかつ純情乙女!!》【Linea】さんによるエキシビョンマッチを開始しま〜す♪」

「!?な、なぁっ!?///〜!!///」

それを聞いて如何わしい何かを感じたのか【Linea】は流石に注意しようとオロアに詰め寄った。

「も〜う!オロアさん!?///その歳でなんていう言葉を使うのですか!?///…そもそも【Bill公】って誰のことですか!?」

「ふっふ〜ん♪問答無用で〜す♪さあ女同士ですから正々堂々仲良くお話しする気分で行ってくださいね〜♪」(…トン!)

「…え?…キャ〜〜!!」(ビュ〜ン!)

オロアの人押しで、真ん中に【Linea】が配置された。そしてそれを待ち構えていたオーラルはこう話す。

「うちの妹達が無礼な態度をお取りしてどうもすみません…」

「本当にですよ!!///…あなた一体オロアさんにどんなことを教育しているのですかぁ〜っ!?///」

するとオーラルはクスクス笑いながら笑みを浮かべ、真ん中へと歩み出す。そして、【Linea】に対して、こう言い放った。

「ふふふ、あれでも私の可愛い妹達なので多めに見てあげてください…では…!これよりあなたの実力を試させていただきます。…覚悟は良いですか?」(ゴゴゴゴ!!)

「…!?」(ゾクッ!!)

【Linea】は相手のオーラルの桁違いの気迫に驚いた。今まで現世では祖母との見極めで対峙してきてピリつくようなオーラを感じていたが、生まれて初めてここまで相手を威圧させる人がいるのだと【Linea】は驚きを隠せなかった。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TOEより・Ability Test

「…では…行きますよ!」(シュン!)

「…は…早い…!!ああっ!!ん!ん〜っ!!」(ガシッ!)

オーラルは神速の如く【Linea】の背後を取り、口を塞ぎ、身体を拘束して押さえ込んた。あまりに突然のことなので【Linea】は必死でもがくがびくともしない。そして、オーラルは【Linea】の身体をまじまじと見つめ、身体を密着させて耳元で囁く。

「うふふ…捕まえた〜♪…本当にオロアの言うように現世では病弱であったのに、ここは豊満に育ったようですね〜♪本当に殿方を魅了するような、か弱い立派なレディーですね〜♪じっくりと可愛がってみたい…」(ジーッ…!指クルクルーツンツン!)

「…!?ん〜!!///」(ジタバタ!!)

「…ですが…勝負ともなれば話は別ですが…!!…ふんっ!!」(ブン!)

ドゴーーーン!

「あああぁっ!!……く…うぅ……!!」(グググッ!)

オーラルは【Linea】の身体を持ち上げ、思いっきり地面に叩きつけた。その衝撃は凄まじく、轟音が鳴り響いて周りにはクレーターが生じていた。

「……ぅぅ…」(オ…オーラルさん…なっ…なんて…強さなのでしょうか…うぅ!…いけません…さっきので…魂の残量が…)

【Linea】 ランクF 
【♡♡】

「軽く背負い投げしたはずなのに……そこまでなのですか?…期待外れですね…あなたは命の大切について現世で学び……【Fiducia】の能力に目覚めたのに発揮されないとは…それでは張り合いはありません…致し方ありませんね…!」(チャキン!)

「…!!」

「あらら〜!オーラル姉様が抜刀しましたね♪」

「…そのようですねオロア……」

「では…さようなら……!」

「!!」(ど…どうしましょう…こんな時に…何か術は…限りある命のことを学んで、あの温かい風を感じて…周りの癒しを…癒し…?…!!)

ブン!ドゴーン!!

「…!いない!?…避けましたか…!」

「…ヘぇ〜!かわしましたね〜♪」

「そうですねオロア。…でも一体…!」

「…ハァッ!」(ブン!)

「…なるほど…そういうことですか!?」(キン!)

「…くっ!…思った以上に守りは硬いですね!!」

【Linea】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡】

「【Linea】さんの魂の状態が安定していますね〜♪…どうやら彼女は、魂を集気することができる体質のようですね♪」

「…そのようですねオロア。…なるほど、不足してしまった自分の魂を周りに散らばっていた魂を集めて集気し、自分の魂に変えて補う…所謂ヒーラーの役割と言ったところでしょうか…」

【Linea】の身体は光に囲まれている。開花した能力は、【Paradiso】の世界に無限に広がる魂を集気させて自分の生命力に変える能力。穏やかで心優しい性格を持つ【Linea】に【Fiducia】が施した能力といっても過言ではない。

「…そうですか。あなたはヒーラーの役割を…ですが、どこまでその威勢を保てるか…実物ですね!!」(ジャキン!)

「…!…ハァーッ!」(キィィン!!)

「…!?」(な、身体に魂を集気するだけでなく…魂を武器に集気させて強化した!!…なるほどそういう使い方をも考えつくとは!……ですが能力に目覚めてすぐに乱用しすぎると…)

「…!うぅ…頭が…!!…ですが…!ここで…決めます!」(ズキズキ!)

「…来なさい!!」(チャキ!)

【Linea】は魂を込めた一刀を振り抜く。しかしオーラルは余裕そうに怯むことなく、前に進んでくる。そして周囲に大きな轟音が鳴り響いた。

ダーーン!

「…な!?いない!!どこに…!?…きゃっ!?…あぁ…!ああぁっ…!!イ!イタタタタ!!い、痛いですって〜!!」(ブラ〜ン!)

「うふふごめんなさぁ〜い♪…また捕まえちゃったわ〜♪でも良いものを見せてもらいました…よくぞ能力を開花させましたね…それが…誰かの救いになれば…幸いです!」(ギリギリ…!!)

オーラルは素早く【Linea】の一撃をかわした後背後に回り込み、プロレス技の《ロメロスペシャル》を決めた。あまりの激痛に【Linea】は悲鳴を上げる。

「今回は合格のようですね〜♪」

「そうですねオロア…それにオーラル姉様もさぞ楽しそうですね。」(フフッ!)

「あ、あのぉ〜!!!!見ていないで助けてくださ〜〜い!う、腕が折れてしまいます〜〜〜!!……ぁ…」(ブラ〜ン!ぐったり…)

・・・
・・



B. いいえ


《Capitolo・6》
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🎼Back Ground Music 》》》



「…!…あれ?ここは…?確か私…オーラルさんに技をかけられて、あまりの激痛に気を失って…白い空間…それにベット…」

オーラルにロメロスペシャルを決められ、気を失った【Linea】が次に目覚めたのはベットの上であった。周囲は白い空間に囲まれている。

「あ、気がつかれましたか…?」

「…え?」

【Linea】は声をかけられた方を向くとそこに、イールとオロアと同じ髪色をした、20代の容姿をした女性が座っていた。思わず誰かと思い、声をかけた。

「あの〜どちらさまですか?…あれ?…でも声は聞いたような…」

「あ、先程はどうも…オーラルです。気を失っていたのでこちらの医務室へとお連れしました」(ぺこり)

「…え?…えぇぇっ!?…仮面の裏はそんな顔をしていたのですね…ちょっと驚きました!…でも!ひどいですよ!!あんなに無理やり技を決めるなんて!!///美人さんといえどあんなことされたら私でも怒りますよ〜!!///」(プンプン!!///)

「あらあらごめんなさいね〜!……ついあなたのような純情で世間知らずでなんかフワ〜としている女の子を相手にすると、ついいじりたく…!!…ゲフンおっほん!!…失礼…あまり激しくしたくないものですから、穏便に優しく押さえ込もうとしたのですが……どうかお許しを……」

「……」(…今いじりたくなると言いかけませんでしたかこの人?)

「言ってませんよ♪」(二コッ!)

「っ〜///!…心読みましたね〜!もうっ!!///」(プイ!///)

「ふふふ…でも美人だと褒めていただき、ありがとうございます…」(うふふ!…でも本当にか弱くて可憐な子♪…本当に見た目通り、世間知らずで育ったお嬢様と言ったことかしら…あまりにも優しすぎるせいか、さぞたちの悪い人身売買の人にまんまと引っかかりそうな典型的な女の子ですね〜!…ま、その時は頼り甲斐のある男性に助けてもらいなさい…」

オーラルは【Linea】を茶化すように言い、そして今回の試練について結果を伝えた。

「では気を取り直して…【Linea】さん。今回のあなたの合否ですが、見事あなたの能力が発現されたのを確認したため、今回は合格とします。」

「…!…はい!」

「ですが…乱用はいけませんよ…あなたはまだ【Fランク】の立場。乱用することであなたへの負荷も大きくなり、制御が効かなくなり、最悪あなたの身を危険に晒すだけなのでそれだけは念頭においてくださればと思います」

「…わかりました。あの〜、一つ気になったんですけど…もし試練に合格できなかったら私、どうなっていたのでしょう?」

その問いにオーラルは重々しく口を開いた。

「…その時は…私の剣で…!」(ゴゴゴゴ!)

(…ひっ!)(ゾクッ!!)

オーラルの顔は険しくなったが、会話を続けていくうちにーーー

「…消滅しない程度に気絶させて、今回は残念でしたと結果を送ります♪そ・し・て・【fiducia】を確認せず、安心かつ安全に【paradiso】の世界へ案内しま〜す♪」

「…そ…そうですか…」(ぴえん…)

穏やかだった。非常に。

「ふぅ…では、あなたを【paradiso】の入り口まで案内します。こちらに来てください。」

「…はい。」

オーラルの指示通り、【Linea】は駅の外の扉までついた。そしてオーラルは旅立つ前に【paradiso】について話した。

「では【Linea】さん。よく聞いてくださいね…【paradiso】の世界は13の島で構成されています。もちろん一つ一つの島は文化も価値観が違います。そしてあなたはFランクなのでまず13の島のうちに存在するFランク向けの始まりの町へと移されます。現在真・ユートピア創造士隊の方の紛争も起こっているでしょう。ですがその紛争から生き残り、着々と実績を積んでいき、Eランクから目指して頑張っていただけると幸いです」

「…一つ質問良いですか?」

「なんでしょうか?」

「【Paradiso】の世界に…その…私達が敵対するその真・ユートピア創造士隊と対抗している人達は存在しているのでしょうか?」

その質問にオーラルは首を縦に振った。

「はい。その者達と対抗している団体、いわゆるギルドもこの【paradiso】に存在しています。その人達は特に人種関係なく、支援も快く受け入れて雇用も受け付けております。そのために今回の試練をお受けさせた次第であります。きっとあなたの役に立つのではないのかと思います」

「…わかりました…私の開花した能力はそのギルドの人にとっても手助けになることを期待します!!」

「はい!もしかしたらその能力を見込んでスカウトに駆けつけにくると思いま〜す♪」

「え?…その声、オロアさんですか?」

【Linea】は後ろを振り返ると、案の定オロアが立っていた。

「オロアさん…もしかして見送りですか?」(首かしげ)

「は〜いその通り〜♪」

「フフッもうほんとこの子ったら〜」(なでなで!)

「えへへ〜お姉さま〜♪」(ニッコリ!)

(仲が良いのですね〜♪…フフッ!…昔お姉ちゃんも私のことをこうやって…)

「あらあら…この歳になってもお姉ちゃん子ですか〜?」(二コッ!)

「い、いえ別に…って!あなた達も大概年数経っててもそれなんですよね!?」

「…なんかごめんなさいね…私達の熱い姉妹愛のあまりに嫉妬させてしまいましたね〜」

「花男さんとあんなことがありました彼ですが、ちゃんと元気にしてますから元気出してくださいね〜♪」(プ〜クスクス!)

「…えっ!?///そ、そうですか…良かったです…///…って、な、何言っているんですか〜!?///…も〜う!!///…私は行きますよっ!」

【Linea】は扉を開け、これから外へ出ようとする。すると、誰かから呼び止められた。

「【Linea】さんお待ちください」

「え?あ、イールさん。…あなたもお見送りですか?」

「当たり前です。これを持っていってください。もしものための魂の補充薬の入った袋の詰め合わせです」

イールは親切にも、もしもの時のための救急用品の入った袋を【Linea】に渡した。その様子から、三姉妹の中でも常識があってしっかりとした印象を持っていた。

「ありがとうございます。でもよく考えれば…三姉妹の中であなたが一番苦労しているように思います…でもどんなに辛くても姉妹同士、仲良くしてくださいね!」

「…ありがとうございます」(フッ…)

イールは少し嬉しそうに笑っていた。だが他の二人はその会話の内容に対し、穏便に話を聞いてくれそうになかった様である。

「「…それどういう意味(でしょうか〜♪)ですか!?」」(ニコニコゴゴゴゴ!)

「あ。…!きゃっ!!///…い、いやぁぁぁぁぁああっ///!!」(ブン!ブン!ブン!ポイ!)

ピューーーン!!

オーラルはすかさず素早く足払いして、【Linea】を地面につかせて転倒させ、オロアは足を掴んで豪快にジャイアントスイングをお見舞いする。その度に純白の下着が露わになる【Linea】を思いっきり外へと投げ飛ばした。

「全く、可憐な子だと思えば、失礼なことを言いますね!…ね〜オロア♪」(二コッ!)

「はい、オーラル姉様〜♪でも思いっきり投げ飛ばしたおかげでスッキリしました〜♪」(ニッコリキラキラ〜!)

「……」(…【Linea】さん、ここから本番ですよ…【paradiso】ではあなたが生きてきた世界の常識が通用する世界ではありません。それをお忘れなき様…)

イールは少し心配そうに【Linea】のことを思い、見守る。

・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》


「いやぁぁぁぁぁああ!!…え?」

【Linea】は急に背景が変わり、周囲の風景を見て驚いていた。

「…もしかしてここが…【paradiso】の世界ですか…でもなんか…レンガで出来た家、そして木造建築が一面に…それに貴族のような人が大勢…まるでヨーロッパのどこかのような街ですね…でも…もうオロアさんってば…本当においたが過ぎるのですから〜!」(プンスカ!)

【Linea】は初めてくる【paradiso】の世界を知り、まるで自分はメルヘンの国に迷い込んだアリスのような気分にもなった。そう考えているとある事件が起こった。

「ぐあぁぁああぁ!!」

【Linea】はどこからか悲鳴を聞いて驚愕した。悲鳴のある場所へと向かうとそこにはけがをして倒れ込んでいる人を発見する。

「…!!たっ!大変!!…だ、大丈夫ですか!?」

「…ああ…どうやら足を怪我してな…」

(私の能力…他の人にも使えるか…いえ、言っている場合ではありませんね!…ハァッ!)

キィィン!

【Linea】は傷ついていた患部に手を翳した。すると、患部の傷がみるみる塞がっていくのを負傷者は見る。そしてその顔はとても穏やかであった。

「!!…なっ!?…怪我が治っている…や…やった!これで働ける!!お嬢さんありがとうな!!」

「いえいえ!!…元気になったならそれは何よりです!」

治療された男はお礼を言いその場を立ち去る。すると突然【P- Watch】から通知が来たので確認する。

【Linea】 ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ーー
救済ポイントが加算されました。ランクアップまであと※※※※※です。

「なるほど…こう言った救済もランクアップの対象になるのですね。なんだかとても気分がいいですね…よし、これから頑張って行きます!」

【Linea】はとても気分が良かった。この世界に来て人のためになることに喜びを感じていた。そしてこれから自分の味わった苦しみを知り、その分だけ誰かの手助けをしようとーーしかし、世の中にはその善意を自分の欲を満たすために貪り尽くして使う者がいるということをーーー

「……〜♪」(ほ〜う!…あれは…クフフ…私、運命の女性…将来の妻を見つけてしまったようですね〜♪)

「………」(…あの小娘…あんな能力を…これは珍しい…なかなか高く売れそうだ…おまけに…なかなか豊満で良い身体をしている……ふふふ、私の家の家政婦兼メイドとして雇い…そしてじっくりと…フ、フハハハッハ!)

【Linea】はまだ知らないーーー

・・・
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🎼Back Ground Music 》》》



〜その頃【Hux・row】と【Bill】と【Beanne】〜

【Hux・row】と【Bill】は【Beanne】に案内される場所へと行った。その場所は地下にあり、進むとそこには大昔から誰も使っていない昔のトンネルがあり奥まで続いていた。【Beanne】はその場所を案内し、【C島】からの脱出を図る。

「は〜い♪じゃあこれ見てくれる?」

「ん?…んだこれ!?…自転車!?こんな世界にもあるのかよ!?…にしては現世の時と比べ、3倍位の体積がある…!タイヤもフレームも太い。それにホイールは…ディスク型ホイールとはな…後は二人乗り用にタンデムシートになってる…」

「…あ、原動機がついてる!!ペダルはないけどステップはある…あ…なるほどな!!…これバイクだ〜!!久しぶりに乗り回せるよ!!」

【Hux・row】と【Bill】が見たのは、それは原動機がついた自転車に似ていた2台の乗り物である。だがそのボディは現世のものと比べ太いフレームであり、ホイールもディスク型となっており、巻き込み事故の防止を想定して作られている。かなり親切かつ安全設計の乗り物である。

「電動自転車とは聞くが、まさかエンジン付きの自転車があるとはな…本当に…ペダルがないから少しバランスは不安だ…これ本当に大丈夫なのか【Beanne】?」

すると【Beanne】は笑みを浮かべながらこう言った。

「うん♪これは【paradiso】製の自転車!通称【V.Prestina】(ヴェルノ.プレスティーナ)!!なかなか走るよ〜♪最高速度は200kmは出たと思うよ!ほらメーター見て!」

「げげっ!?マジかよ!?…車よりも早いのか…お、おい【Bill】…元暴走族のお前からして…これ本当に大丈夫なのか!?」

すると【Bill】は未知の乗り物を見て、子供のようにワクワクしていた。そしてすかさず【Hux・row】に返答する。

「乗ってみよう教官!!俺!こんなにワクワクするの、すんげえ〜久しぶりだ!!」

「…はぁ〜…お前のそういう所が羨ましいよ…」(やれやれ)

「さあさあ夕方も近いし、そろそろいくよ〜♪お、ほら照明の灯りがついてきた!!」

パチ…パチ!

「あ、本当だな!…仕方ないな〜!…んで?操作はどうするんだよ、これ?」

「乗った時にそこの赤いボタンを押して、んでハンドルを回したら走り出すから!」

「…そこは現世のバイクと変わらないんだな。……よーし、一度試しに走ってみるか!…【Bill】?頼めるか?」

【Bill】はすかさず喜んで返答した。

「わかった、教官!俺試しに乗ってみる!!」(ビシッ!)

「おう、気をつけてな!」(ビシッ!)

「…へえ〜!」(…その敬礼…どうやら【Hux・row】くんは、軍事経験があるようだね〜♪…通りであの戦場で戦闘慣れしてるんだね!)

カチッ…キィィィン!

「あれ?エンジン音がしない!でも稼働してる音がする…これってまさか…!?」

「無音エンジンってやつか!?…かなり進んでいる…現世からすればこいつはすげえ技術だぞ!?【paradiso】って技術が思ったより発達してるんだな!」

【Bill】は【V.Prestina】のエンジンを起動させた。すると周囲からは青白く光り、エンジン音ではなく、空気が通り抜けるような音が聞こえてきた。その近未来感ある未知の技術に包まれた乗り物に二人のテンションは高まった。

「私も来た時、この技術には驚かされたよ〜♪さ、スタートスタート〜♪」

「じゃあ、ビル!行きま〜す!!」(グィッ!!)

シャーーッ!!ビューーーッ!

「うぉーー!!これはバイク以上にすげえよ〜〜!!ちゃんと風を切ってる疾走感がしますよ教官ーー!!」

「ヘぇ〜!!思った以上に早いんだな〜あれ!?……おっ!戻ってくるな!」

シャーーッ!!キキーッ!

すると、【V.Prestina】をUターンさせて【Bill】は戻ってきた。するとかなりのハイテンションで迫ってきた。

「すげえ…すげえよ!?こんな乗り物…初めて乗ったけど最高の気分だよ、教官!」

「あ、ああ分かった…!報告ご苦労さん!…とりあえず安全でよく走るのは間違いないか…まあ初めてだから少しずつ慣れていくしかないか…」

「そうだね。…でもそうも言ってられないみたい!…早速お出ましのようだよ!」(ビシッ!)

【Beanne】は指を刺した方を示した。そこには、真・ユートピア創造士隊が率いていた暗殺集団の残党が【V.Prestina】に乗って待ち構えていたようである。

「え…な!?…あれは!?」「あ…あいつら…!」「すぐに乗って!振り切るよ!」

【Bill】【Hux・row】【Beanne】の3人のそれぞれはすぐに【V.Prestina】に乗り、運転手は【Hux・row】後部座席には【Beanne】が乗り、【Bill】が前に出て、元暴走族の威厳からか、単独で切り込み隊長を買って出てくれたようだ。

「あいつらだな…ペルガ下神官に手を出した重罪者として賞金首になっているというのは…!」「生かしては返さないぞ…」「俺たちはここであいつらを仕留めれば…」「ヒャッハー!!金はザクザク!女も抱き放題ってなーーー!!」

ヒャッハーーー!!!!!

カチッ…キィィィン!

「準備はできてる?ハクローくん!」

「え?……ハクロー?」

「だってさ〜!…いちいち、ここの世界の名前使うのも面倒いからね〜あだ名で呼ぶよ!ほらあの子がハクローくんのことを教官って呼んでるし!…どうかな?」

「ほうほう……!」

【Hux・row】はあだ名のことで特に気にすることもなく、笑みを浮かべ、【Beanne】に対して茶化すように答えた。

「分かったよ。…その代わり、振り落とされるなよ…ベアさん!」

「お〜っ♪…言ってくれるねぇ〜♪ハクローくん!」(ギュッ♪胸ワザ当て!)

「よ〜し!!教官!こっちはいつでも特攻行けるッ!」(カチャ!)

「…鉄パイプか。…それも、元暴走族の名残ってやつか…?」(ベアさん…胸わざと当ててんだろ…)

「そうだな!流石にバイク乗りながらだと拳使えないし、この際鉄パイプで行くしかない!」

「…分かった。…よ〜し!皆の衆…行くぞ〜!!」

シャーーッ!!ビューーーッ!

ヒャッハーーー!!!!!奴らを。……ぶっ潰せーーー!!! ワーッ! ワーッ! ワーッ!


数多の【V.Prestina】が、夕方の地下トンネル内を疾走する。いよいよ白狼改め、【Hux・row】【Bill】【Beanne】が率いるデスレースが始まった──────









《To Be Continued…→》
 
 
 

 
 
 


第10話:【paradiso】への道 白狼・ゆい編 Part2
《完読クリア!!》



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