GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》>


A.:GiorGia

第一章:白狼と誓いの儀礼刀


第7話:プロローグ〜隆一編 Part1



ある日、福岡県に一人の若者が生まれた。名前は皆川隆一。中学校の頃から親との折り合いが悪く、その後暴走族となり、抗争によって命を落とす。その後導き人のオロアの計らいにより【paradiso】への勧誘を受け、見事試練を突破して現在現世人【Bill】として、【paradiso】の貧民街に野良犬の黒柴犬の子犬のクウと暮らしている。これはその男の前日談である───────




《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



I want to work in the soul of a craftsman, If you stick to your old values and rules of thumb too much, you will soon be left behind in the times. The only way to avoid it is to desperately continue self-transformation and learning.
(僕は職人の魂で仕事をしたいと思いますが、自分の昔の価値観や経験則にこだわり過ぎるとたちまち時代に取り残される。 それを避けるためには必死に自己変革や学習を続けるしかないのです。)

Where there is no way to live other than writing a songI think I have to drive myself all the time.
(曲を書く以外に生きる道はないところに、いつも自身を追い込んでいなければと思うのです。)

Tatsuro Yamashita
(山下 達郎)


〜【paradiso】の世界・貧民街〜


〜♪
遠く翳る空から
たそがれが舞い降りる
ちっぽけな街に生まれ
人混みの中を生きる
数知れぬ人々の
魂に届く様に〜♪

「…今となってはこの歌の意味、少しだけ分かった気がするかもな…親父…母ちゃん…なぁ〜クウ…」

「…ワン!」

隆一は、感傷に浸りながら、野良犬の黒柴犬の子犬のクウの頭を撫でながら、山下達郎の蒼氓を歌っていた。彼はこの【paradiso】へ来た時からこの歌を口ずさんでいる。その歌には深いものがあると隆一自身なんとなく感じていた。
(…今思えば夢だと思うよ…あの族同士の抗争に巻き込まれて俺はてっきり死んだと思えば、オロアって導き人ってやつから、この世界に招かれて色々試練とか、執行者とかいう黒いのに追われて…楽国駅の電車に乗って…色々あった。ここまでくるのは…今となっては毎月金がもらえて、食事もタダ。宿は…地位がなかったら家は持てないからダメと言われ、最悪誰かの元で住み込みでないとダメだと言われた。だが探していたら今にも誰も住みそうではない家をとりあえず住処にして、仕方なく仕事して地位向上を目指して働いている。それだけではなくクウのために少しでも働いている自分がいる。)

pipipipi!

すると腕時計型デバイスからアラームが鳴り、隆一はすぐにアラームを止めて着替えをする。

「よし、そろそろ行くか…じゃあクウ!留守番よろしく!」

「ワン!」

「行ってきます!」

隆一は、仕事場に出かけた。その仕事は至って単純。汚れた街を清潔にする仕事であったり、配りをする仕事にあとは肉体労働。色々と隆一は請け負っている。そしてその街の景色は全身ガラス張りの建物が右に左にあちこちと存在し、そして巨大なディスプレイが存在している。その世界観はまるでSF映画にある近未来的な世界である。福岡出身の隆一にとっても西の都と言われる街の生まれのイメージであるが、実際はかなりの田舎育ちだ。そしてちっぽけな街に生まれたことも彼によって山下達郎の蒼氓の歌が親近感を感じるのだろう。

〜仕事場〜

「……」(…ふぅ〜あの世とは言えど身体の疲労は感じる!…でもなんかそこまで悪い気がしない!別にこき使われて働くようなものでもないし…それに一人でコツコツできる。まあ族やってたけど、そこまで悪をしたわけではないしな…酒…タバコ…シンナー遊びはしていない…ただ、親父のことを…いや、今はいいか…)

「あ〜【Bill】さん…」

「ん?どうしたんですか?」

「これをそこに持っていっといてくれんかね〜?」

「ああ、お安い御用だ!!」

隆一のことを【Bill】と呼ぶ者はこの世界に住むユートピア【Paradiso】の住人の一人、いわゆるユートピア人である。何故現世での名前ではなく違う名前で名乗らないといけないのは、この【Paradiso】でのルールの一つでもあるからだと隆一は知っている。現世でのネームを名乗ると、この世界では厳しく罰せられるという決まりがこの世界での入界審査にて言われた為、今は仕方なくこの名前に隆一はした。名前のきっかけは何かの戦争映画の軍曹がこの名前だったのでそれに影響され、この名前になったらしい。

「……」(…今思えば実名を伏せろとは言われてたけど、普通に名乗ってもアイツらが来る気配もないし……まあ【Bill】(ビル)って名前は洋画に出てきたある人から取った名前だし!ネトゲーでもあるような感じだし、嫌いじゃない!!)

カラン!カラン!

「さて、せっせと済ますか〜!」

そう言いながら黙々と作業をする隆一こと【Bill】は、今日の仕事を終え、今回の報酬を腕時計型デバイスで内容を確認する。

「ん〜とどれどれ…おっ!」

【Bill】  ランクF 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】

ランクアップまであと※※です。

すると、【Bill】はその結果に笑みを浮かべた。

「よーし!あと少しでランクが上がる。そうすれば今の家よりもまだマシな家に住むことができる!…やったぜ〜!」

【Bill】は喜んでいた。そしてウキウキと自分の帰路へと戻る。だがそこで、思いがけない出来事に遭遇する。


🎼Back Ground Music 》》》



「…ん?…!?…な!?なんだっ!?あれ!?」

【Bill】はその光景を目にして驚いた。それは自分の貧困街に住んでいるユートピア人がある白の服を着た者達によって連行されていく姿を目撃した。その様子に、【Bill】は何か嫌な予感がしたので、集団に見つからないように隠れながら慎重に進み、自分の家に戻ろうとした。だがそこで思わぬ事態に遭遇したーーー

ガラガラガラ……

「…!?…俺の家が…」

【Bill】は目を疑った。その家は跡形もなくなり撤去されていた。そして誰かの気配がしたので振り返った。

ジャキッ!!

「…!!…だ、誰だ!?」

「…【Bill】とはお前のことか?…そして…その妙な勲章…情報通り【現世人】だな…」

その男はどうやら【Bill】のことを知っていた。男は黒い肌をした黒髪で長めの黒コートを着用していたいかにも殺し屋のような風貌を漂わせており、腰には西洋のような一本のサーベルにも似た刀がぶら下がっていた。その男から敵意を感じたのか、【Bill】は答える。

「…これは一体どういう事だ!?あの人たちに一体何をしたんだ!?…!!…クウをどうした!?」

「…クウ?」

「ここにいた子犬だ!?…あいつになにしやがった!?」

すると男は真面目そうな口調でこう答えた。

「ああ、あの犬か…ユートピアにはいないからな…犬は珍しく高く売れるから業者に引き取ってもらった。どこにいるかは知らない…そしてこのゴミのような家は…俺が潰した」

「…!!」(ギリギリ!)

【Bill】は、目を鋭く睨みつけ、男に抵抗する素振りを見せる。

「…今の話の内容で大体わかった!…お前が敵であることを…!!」

「……」

「うぉぉーー!!」

「…はぁ〜…」

男は呆れたかのようにため息をつき、突進してくる【Bill】の身体を思いっきり掴み、強く地面に叩きつけた。

ダーーーン!!

「かはっ!!…あ…あが…」

すると男は鎮圧させた【Bill】に対し、懇切丁寧に説明した。

「…方針が変わったんだよ…今日からここはお前の知る貧困街ではなくなる…文句ならあの白い連中に言うんだな…」

「…白い連中…あいつらは一体…」

「【真・ユートピア創造士隊】を名乗る宗教団体だ。中には俺達よりも最上位のランクの地位にいる集まりの集団…今のお前のような底辺が、奴らに反逆するようならお前は間違いなく処刑される。それに奴らはお前のようなこのユートピア出身ではない別の世界から来たものを忌み嫌う者達…何より…Eらなまだしも一年間のままFランク続きで結果を出せないのなら尚更だ…そして俺は…」

「…お前…一体何もんだ!?」

すると男は、腰にあった西洋の刀を抜刀し、わかりやすく【Bill】にこう伝える。

「…俺はその組織に属する殺戮専門の傭兵…つまり奴らの…犬…一年間で結果の出せなかったFランクの【Bill】。……お前を始末に来た!」

「…!!」

ブン!

「…くっ!!死んでたまるか!!…くそが…!」(サッ!)

「…逃げたか…まあいい…ここではどのみちお前には逃げる場所などないのだからな…」

〜数時間後〜

「はぁ…はぁ…!!くそ!…だめだ、ゲートが封鎖されている……」

見つけたぞーー!!奴が現世人の【Bill】だ!!確保に移れ!!

「…!!くっ…!」(ダダダッ!)

【Bill】はユートピアの世界に来て史上初、最悪の危機に瀕していた。突然な平凡な日々が奪われ、この世界で結果を出せなかった自分が処分される日が来るとは思わなかったのであるーーー

「く…くそ…なんとか逃げ切れば…どこかで就労につければ…!」

「…!!いたぞ」

ガシッ!!

「ぐぁっ!!…くっ…離せぇっ!!」

「こちら!!……【Bill】を確保しました!これより、直ちに処分を実行します!」

するとその男はナイフを取り出し、【Bill】の背中に突きつけ、滅多刺しにした。

「ぐあぁぁっ!!あ…がぁ…!」

【Bill】は悲鳴をあげた。痛覚はあるが、ここはあの世の世界であるため、血は流れず、傷口から胞子状の光が一粒一粒空へと散っていく。そしてあれから2分以上の時間が過ぎ、腕時計型のデバイスから警告音が鳴り響いた。思わず【Bill】はメモリを確認する。

【Bill】  ランクF 
【♡♡】

(!!…嘘だろ…確かここで体力が無くなれば…【導き人】のオロア達から!…天国とか地獄にいける保証はないと聞いた…くそ!!ここまでなのか!!)

【Bill】は絶望した。そして今までの詳細の出来事が脳内に再生されたーーー

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》



隆一は幼少期から福岡県の田舎で育ち、昔からやんちゃであり、悪ガキとも言える悪行もした。しかし時に上の立場の横暴なことに屈することもなく友を庇うこともあった。親子関係では父とはあまり仲は良くない。中学校時代から喧嘩をして困らせたりもしていた。そんな日々が過ぎ、高校生の時にある出来事が起こるーーー

〜隆一高校時代〜

「あれ、おかんどこにいるんだ?」

隆一は父に母の所在を伝えたが、そこには衝撃の事実を告げる。

「…あいつは出て行った…」

「な、なんでだよ…なんでおかんが…おい!どう言うことなんだよ!?」

「…元々俺とは不釣り合いだった。……だから…!!」

バキッ!!

すると、隆一の父親は激しく身体を飛ばされた。

「ふざけるなよ…なんでおかん蔑ろなんだよ!!…どこにいるんだよ!?」

「…わからん…」

「…!!くそが…」

隆一は家を飛び出し、母親を探しに行った。しかし必死に探すも、それでも母の行方を知ることはできなかった。

「おかん…どこいっちまったんだよ…」

〜翌日〜

「おい、貴様!!これはなんだ!?」(手にタバコ)

「す、すみません…これは…」

「口答えするな!!」(パン!)

「…ぐっ!」

「あ!あいつ…!…またあいつらか…」

〜学校裏〜

「あいつおっせ〜な〜」

「どうせ生徒指導のやつに捕まったんだろうよ…ったく使えないな〜」

「…ん?」

学校裏で不良3人が屯していた。すると、そこに隆一が強い目で不良の方を見る。

「…んだテメェ…」

「おい、こいつ二年の皆川じゃないか〜!おい…何のようだよ!!」

「お前らか…あいつにタバコを持たせてお前らの運び屋ごっこさせてたのは…」

すると、不良のリーダー格の人間が笑いながら、隆一に接近してきた。

「だったら何だよ〜」(ケラケラ!)

「…!!」

ベキッ!!

すると隆一は拳を強く握り、リーダーを思いっきり殴り飛ばした。

「「てめえ!!おいやっちまえ〜!!!」」

オオ〜ッ!!

「…来いよ!!お前ら〜!!!」

・・・
・・


「全くとんでもないことをしてくれたな!!皆川…あぁ!?」

「…」

隆一はあの騒ぎの後、生徒指導に呼ばれた。

「タバコの運び屋をやらせていたのはあいつらが自供した。だがそれでも、手足を骨折させて病院送りにするのは異常だ!やり過ぎだ!!おかげで、相手の親御さんはカンカンなんだぞ…」

「…」

「何とか言ったらどうなんだ皆川!?」

「…!!」

すると皆川は指導担当の教員の胸ぐらを掴み、思いっきり殴り飛ばした。

「…な!?」

「あんたこそどこに目をつけてるんだ!?あいつらの親がそんなに偉いのかよ!?あいつらのせいで虐められてこき使われて、自分の居場所を見失うことをしてるあいつの気持ち…考えたことあるのかよ!?お前のような節穴だらけの教師がいるから、いじめとかこんな問題に気付けないんじゃないのかよ!?」

「…貴様…!!こんなことをしておいて…許せん!!」

その後、隆一は停学となり、その後に自分から自己退学した。だがそれでも隆一は後悔していない。その後は早急に家を出て一人暮らしを始めた。その一年後─────

ブブンブンブン〜パラリラパラリラ〜♪

「隆一〜!!今日もぶっ飛んでんな〜!!」

「まぁな〜山崎!でも俺達は真面目が一番を貫く!!!外道な事はしない真面目な族を目指すのが取り柄だ!!」

「さっすが正義感だけはあるな〜!!まあ俺はそれでお前に惹かれたのはあるな〜!!」

隆一は気がつけば暴走族になり、歳は18歳になっていた。そして居場所がない若者を引き連れ、決して非行に走らせないように未成年のうちはタバコ、酒、シンナー遊び、あとは人を蹴落とすような下衆なやり方をさせないよう厳しく取り締まるよう教育し、硬派を貫く暴走族として有名なチームを作っていた。

「ヘッド、大変です!!」

「どうした!?」

「今敵対してるチームが、俺の部下を一人拉致して、今ボコられているようなんです!…今すぐに来いと…」

「…下衆なことを!…よし分かった!!助けに行くぞ!おいお前ら〜戦だ〜!!置いてかれるなよ!!」

「「「「「オォーー!!」」」」」」

ブーーーーーン!!

隆一はバイクを走らせて、チームを引き連れて河原へと向かう。その場所で、隆一の運命が大きく左右する出来事が起こる事を、まだ彼自身知る由がなかったーーー

      

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🎼Back Ground Music 》》》

 

♪〜湘南乃風より・黄金魂

〜ある河原〜

「…おっ!…来やがったな〜♪」

「おまえが……!!よくもこいつの部下を痛ぶったな!?絶対に報いを受けさせる!!」

隆一は怒りに震えていた。自分の大事な仲間である部下の配下を人質に取り、挙句に暴行を働いた事に対し、相手への嫌悪感を示す。

「コイツは悪かったな。…だけどウチとしては族の長であるあんたと少し話したくてな…!」

「だったら正々堂々俺の前にくれば良いだろ!?なんで部下を巻き込むんだ!?」

すると相手のヘッドは隆一に自信よくこう発言する。

「お前のような男はこうでもしないと、燃えないんだろう?…俺はあんたと一回本気で拳を交えて話しをしたかったんだよ…全力でな!…だが俺も部下に対して流石にやりすぎだと思ってな…このけじめは必ずつけさせる…だからこの通りだ!!」

隆一は相手のヘッドの顔を確認する。確かに誠意が伝わる面構えをしている。そう思うと、隆一は相手のヘッドに宣言する。

「…そうか。…じゃあしっかりけじめつけさせないとな…あんたの血と汗を流させてな!!!」

すると相手のヘッドは高笑いしてこう返答した。

「はっは!!こいつは面白えな…おいお前ら!!…大丈夫だ!…こいつとは一騎打ちにする!!」

へ、ヘッド!?

「…男らしいヘッドだ!!お前気に入った!!」

ザッザッザ………

「ふふふ…さて…準備はできたかリーダーさんよ〜?」

「…お互い様だろう?」

「ふふふ」

「ククク…!」

「うぉぉ〜ら〜!!!」

「…ふふふ。まんまとかかりやがったなぁ〜♪…おいお前ら〜!こいつ轢き殺せ〜!!!」

ブーン!!ブンブン!!

「……!!なぁっ!?」

ドーーン!!

すると相手の暴走族の部下が、バイクにて猛スピードで隆一に接近し、轢き飛ばされてしまった隆一の身体はあたかも宙に飛んだ。そして、首から真っ逆さまへ落ちてしまった─────

ドサッ!!

「あ…あがが…!!」

するともう一台のバイクが、非道にも隆一の頭部を轢いてしまい、重傷を負わされ、そのまま意識を失った。その光景を見ていられなかったのか、他の族員が前に出てきて声をあげた。

「!!この外道共がァァ〜!!よくもヘッドを〜!!絶対に許さねえ〜!!」

「!!!…テメエらぁ〜〜!!!!生きて返さねえぇぇ!!!!!!」

「隆一……!!!…この山﨑!!…《副総長》として…絶対にけじめつけさせてやる!!」

ワーーーーー!! ワーーーーー!!

・・・
・・


その翌日、隆一は息を引き取った。その顔はとても安らかだった。とても清々しく葬式はひっそりと行われ、その葬式には暴走族の身分を隠し、参りに来るものまでいた。それだけ隆一に惹かれたものがいたのだろう。そしてここから隆一は奇妙な出来事と遭遇することになるーーー



B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)


♪〜TODより・Holy light

〜???の世界〜

「zzz…んっ…!!……!?な、何だここ!?…確か俺…あの時…気を失ってから…」

隆一は目を覚ました。中はとても狭く、周りには白い薔薇が囲まれており、顔の前にはドット状の穴があった。隆一は、一度前の扉を押し出してみる。

「…開くようだな…!」(ガタン!)

隆一は扉を開け、身体を起こして周囲を確認する。下を見るとそれは案の定、隆一は棺で眠っていた。周りは空間は薄暗く、もやがかかった空間が広がり、目の前には白い道が続いていた。そして天井は高さが見えない。そんな時隆一は何か物音の気配を感じたのか周囲を警戒した。

ガタッ… ゴゾッ…

「…!…誰だ!?」

「呼びました?」(ひょっこり!)

「!?」

「ん?」

「…女の子?なんでここにいるんだ?」(キョトン)

「やっほ〜♪」(ニパ〜!)

「ああ!」

「こんにちは〜♪初めましてってやつです!」

隆一は挨拶するとそれはシルバーブロンドの髪色でロングヘアー、肌は白く、胸元に十字架のワンポイントに青白のワンピースを着た笑顔の一人の少女がそこにいた。そして少女はすかさずニコニコと挨拶をした。

「私の名前は、導き人の一人、オロア!よろしく〜♪…そしてあなたをユートピアの世界へと勧誘に来ました!」

「…導き人のオロア?…ユートピアの世界ってなんのことなんだ?ここどこだ?」

「あ〜知らないんですね〜♪…では教えちゃいま〜す♪」

するとオロアは口頭で懇切丁寧に説明した。

「ユートピアの世界とはいわゆる天国と地獄ではないもう一つの死後の世界があります。あなた達の現世で【Paradiso】という言葉聞いたことありませんか〜♪?」

「?…!?…あ〜!!そういえば族のチームの中にそんなこと喋ってたオカルト好きな奴がいた!!…ってえ〜!?…じゃあ俺!!やっぱあん時死んでたのか!?」

「はい♪あなたはあの時思いっきりバイクに惹かれて宙に舞ってそこから首を見事負傷して、そこから追い討ちをかけるが如くバイクに轢かれてお亡くなりになりました〜♪」

「…そんな事気楽に言われてもな〜!……よし!全く実感が湧かない!」

隆一は当時のことを振り返る。確かにあの時バイクに轢かれてそこから頭から地面に強く叩きつけられて、体が動かなくなり、そこからまた轢かれてしまった事を頭の中で思い出すが、記憶が少しばかり曖昧な所もあるからか、自覚が少しばかりない様子である。

「アハハ!でもでも〜♪警戒もなしにただバカ正直に突っ込んだら、相手も汚い手を使ってくる事〜♪…考えなかったんですか〜?」

「…確かにそう言われたら、後から思い出してきた!…あのウソツキ野郎!!…卑怯なやり方しやがった!!」

「そうでしょうね〜♪まあというわけでこれからよろしくお願いしますね〜《皆川隆一》さん♪」

「お〜…ん?……!!え、なんで俺の名前をお前知ってるんだ!?」

隆一の言葉にオロアは笑みを浮かべた。

「よくぞ聞いてくれました!私たち導き人にはあなたの現世での行いについての記憶を全て知っています。あなたがどう言った経緯で学校を辞めて暴走族になっただとか全部です♪」

「…分かった!じゃあ、その【Paradiso】へはどうやっていくんだ?」

「どうぞこちらになりま〜す♪ついて来てくださいね〜♪」(ピューー!!)

「!?は、はや〜っ!!」

「早くしないと日が暮れますよ〜♪」(ダダダダっ!!)

「く、くそ〜!バイクとかあればすぐなのにな〜!」(タッタッタ!)

「〜♪」(ふふふ…なんだかんだ言って、ついてきますね〜♪)

隆一は走り続けていた。すると視界は真っ暗闇になり、どうやら目的地に着いたようだ。

タッタッタ!!

「…ハァ…ハァ…着いた〜」

「ご苦労様です!!ではではあれをご覧くださ〜い♪」

「ん?…!?うぉっ!!あれはなんだ!?」

隆一は思わず、声をあげた。そこにはスポットライトのような光があった。

「何だあの光は?」

「あれは現世の世界の光の一部です!光を浴びると、あなたの生前の様子だとか、その他の人の身体を借りて、いろんな追体験できたりと…まあとにかく色々な価値観に触れるのがありますね〜♪あ、特に害はないのでご安心ください!」

「ふ〜ん、あれがそうなのか!」

「そうですよ〜♪…えい!」(ドン!)

「え?…!?ダーーッ!!」(ビュー!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「ちょっ!…おま…あ…」(シュン!)

隆一はオロアの不意打ちを受け、光の中へと消えていった。オロアはその様子を見てこう思った。

「〜♪」(現世では暴走族のリーダー…ふふふ。なかなか面白い方ですね〜その暴走族で鍛えたこと…どんなのか実物ですね〜♪)

🎼Back Ground Music 》》》




A person who can be devoted will complete his life.I think this is the secret of successful people in the world.
(一心になれる人というのは、自分の人生を完成しますな。世にいう成功者の秘訣というのは、これじゃないかと思う。)

After all, it's all about aiming.In such a case, even if you make a mistake, it will be a very good experience, or the next wisdom.
(やっぱり狙いをつけた一心さ、ですね。そういうときは、かりに失敗しても、非常にいい経験というか、つぎの知恵になります。)

Kozo Masuda
(升田幸三)


♪〜Sheepより・ナツノマボロシ

〜時は戻り、約半年も前の出来事〜

《…あれ?ここは…?》

「何?自分のチームを作るだと?」

「ああ!大門さん!俺!自分で族作りたい!どこも居場所がなかった俺を拾ってくれたアンタにしか!この事を言えないから!!」

「…そうか。…確かにお前ならその資格はあるかもな。…いいだろう。だがこれだけは言っておくぞ?」

「…!!」

「絶対に誰も非行に走らせるな!そしてメンバーを大事にしろ!他人を蹴落とすような下衆にさせるな!そしてそれをするような奴は容赦するな!…これだけだ…あとはお前が知っている事だよ!」

「…わかった。今までありがとうございました!」

「…元気でな…頑張れよ!」

「…!!おう!」

《大門さん…アンタが懐かしいよ》

・・・
・・


ブンブブーン♪

「やっぱバイクは気持ちがいい〜♪……ん?」

「………」

トボトボ…

「…!!あ、あいつは!…お〜い!!」

ブォーン!!

「!!…あっ!?」

《そうだ!…この時から俺と山崎が出会ったのって…あの時のいじめられっ子が今になって俺の副総長で族一番の頭脳だ》

「おっす!久しぶりだな!!」

「…ああ。…隆一君!…あの時は庇ってくれてありがとう。…僕もね。…あれから学校辞めたんだ…なんか居辛くなってさ。……それで今僕《定時制高校》に編入してさ。…今はその帰り道…」

「!!…そうか!…あ、そうだもしよかったら俺んとこ来ないか!?お前なら歓迎する!」

「…え?でもいいの?」

「ああ!ほら!後ろ乗った乗った!」

ブンブンブブブン!!

「…うん!」

ブーーーン!!

「どうだ!?風が気持ちいいだろ!?」

「…!ああ!ああ!!最高だぁぁ〜!!」

「!?…や、山﨑!?」

《あ〜!この時は本当にビビった!…山﨑がバイクに乗り出した時、かなり性格が変わったからな〜!》

「…あ。ごめんね、なんか変なテンションになった…///」

「〜♪…気にするな!もしかしたら、お前バイク乗ったら凄く様になる!今度免許でも取りに行けよ!絶対損ない!!」

「…分かった!」

その後、山崎は免許を取り、一緒にツーリングする仲となった。ついでに護身術として空手を習ぶに至った。すると驚異のスピードで上達し、今となって隆一と同等の力をつけるようになった。その後互いに弱い人の立場になって、その人を守る人になろうと心の中で誓ったのだ────

《今思えば、あいつの空手の技術は凄かった!意外に体が柔らかいから、よく俺、転ばされてた……》

ブンブブ〜ン!

〜あれから一年後の夏の日〜

ブォンブォン!!

「隆一ぃぃ〜!今日も気合入ってたな〜!」

「おう山崎〜お前もよく走れるようになったな〜!一年前とは大違いだぞ〜!」

「…お前のおかげだよ!」

「ああ。いつの間にか俺らに影響されてか、僕から俺になってたり、お前呼ばわりと色々成長したんだな!!」

「そうだよな〜!よ〜し!今日はどんどん行こう!」

「お〜う!」

ブォンブォン!!

いやぁ〜っ!!だ、誰かぁぁ〜!!

ブ〜ン………

「……ん?おい、誰かの声だ!?」

「そうだね!!助けに行こう、隆一!」

「おう!山崎!!」

《あ、この日は確か、コンビニで屯してた時に女の声が聞こえて、そのままバイクを置いてその場所に向かったんだ!!》

タッタッタ!!!

「ウヘヘェェ〜♪こんな時間に遅くまで歩いてるからだぜ〜!」

「大人しくしろ、な!?」

「ひぃっ!!…うぅぅ…だ…誰か〜」

ドカッ!

バキャッ!!

「!?」

「だ、誰だ!!……!?ゲッ…お前らは…まさか…!」

「その人から今すぐ離れろ!!…でないと…!!」(ギロッ!)

「容赦しないよ!!」(ギラッ!)

「ひ、ヒィぃぃぃ!!!」

ダダダダッ!

「」

「大丈夫かい?」

「怪我はないか?」

「は、はい!ありがとうございました〜!…そ、それでは!」

タッタッタ!!

「(・ー・)」「(・ー・)」

ショボーン〜

「少し傷つくよな〜!」

「そうだね〜……でも悪くない!危ない所を助けたから!!」

《はっはっは!あった!…こんな時も、それでも俺達はいつでも本当の相棒だ!!…でも俺は。……もう…》

(フワァーッ!!!)

《な!?…頭の中に何が…》

隆一は頭の中に何かが入り込んでくる感覚に襲われた。すると山崎の体験した過去の出来事が再生された。

「お〜らあ山崎〜はっはは!!」

「返しておくれよ〜」

《…!これって山崎の生い立ちか?…これは、小学生の頃の思い出か?…そっか。…この時からか…》

「…おら!」

ドン!

「あいてて!誰だ…って!」

「お前らまた弱いものいじめかよ〜懲りないな〜?」

「…!やべ〜上級生だ〜逃げるぞ〜」

「…全く…大丈夫か?」

「うん…ありがとう…」

「でも君…強いな〜!」

「え、そう?」

「ああ。だって君やり返さなかっただろ?人はね…あんなにされてもやり返さないだけ…人は強いんだ!」

「…!」

《…この人いいこと言うな〜!》

「喧嘩は弱いかもしれない!でもねここが強かったらそれでいいんだ!何だってやれるよ!」(ドンドン!)

「そっか…!分かった!僕頑張るよ!」

「ああ。それにいつか君のことを理解してくれる人がきっといるよ…だから負けるなよ!」

「…!…はい!」

《そうか…それであいつ…なんだかんだ言いつつ虐められるだけでなく、いい人に会ってるじゃあないか〜》

・・・

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜修二と彰より・青春アミーゴ

〜時は過ぎて暴走族との抗争の記憶へ〜

「うおぁ〜!!1」

バキャッ!!!

「ぐあっ!!」

「うぉらああああ!!!!!!」

ゲシッ!!!

「………」

《…!!山崎…》

「………」

ザッザッザ………

「……へっへっへ!…やるじゃねえか〜!」

「……後はテメエだけだぜ!!……この腐れ外道ッ!!……警察に首を差し出してやらぁ〜!!!!」

グキリ……!!ゴキリ…

「おう、面白え〜!……やれるもんならやってみろや〜!!」

「……お前。…名前は?」

「鬼頭(おにがしら)っていうんだ!!…へへっ!!」

《!!…鬼頭……!!聞いた事がある!!大門さんからも一度話を聞いている!!…鬼頭!確かコイツは、率いている族の部下を使って、裏で仕切っている半グレ達の仕事を請け負って、色々黒い事に手をつけているって聞いたぞ!!………山﨑!!》

「…分かった。…その名を聞いた以上。…引導を渡してやるぜ。……!!鬼頭ォォォ!!!!!!」

ダダダダ!!

「遅えぜ〜!!!…死ねやぁ〜!!!」

ブン!!

ドムッ!!

「グフッ!!!」

「へへっ!!……っ!?」

《!!…や、山﨑!?…お前アイツの足を!?》

「……遅えんだよ、のろま!!!……ウォラアアッ!!!」

ダゴォーーンン!!!!!

「ゲェはぁ〜!!!!!」

メリメリメリ!!

「!!………え?」

《……え?》

ガクッ!!

「……グフぅっ!………っ!!」

ばたり……

「!?!?」

「………お、おい!……まさか…」

「…ワンパンチで……仕留めた。……!!」

ワーッ! ワーッ!ワーッ!ワーッ!ワーッ!

「す、すげえぜ〜!!副総長ォォ!!!」

「流石は俺らのヘッド!!」

《やったな!…山……﨑…?》

フリフリ!

「…いや、…この鬼頭って外道は。…どうやらただの《デクの棒》みたいだ」

「………え?」

《え?…つまりどう言う事だってばよ!?》

「…コイツの蹴りは思った以上に全然響かなかったし、めり込むどころか、俺の腹に反発されてたよ」

「つ、つまり副ヘッド!……じゃあコイツは。…ただ部下に任せっきりの《裸の王様》……って事なのかよ!?」

「…そう言うことだ。……クソっ!!……期待外れもいい所だぜ!!そんな奴に!!……っ!!」

ガシッ!!…

「……隆一……!!クソガァ〜〜〜!!!!!!!!」

《!!……ごめんな。……山﨑……俺……》

ファウファウ!!!

「!?」

「やべえ、サツ(警察)だ!!」

「ずらかるぞ〜!!」

ブォンブォン!!

止まりなさい!! 止まりなさい!!

「誰が!……!!……くそ!!」

「…………」

ブォンブォン!!

「副ヘッド!!アンタは早く病院に!!」

「分かってる!!お前達も早く引き上げろよ!!」

ブォンブォン!!

《山﨑。……本当にごめんな。……俺を後ろに乗せて…もう死んでるってのに……》

ブゥーーンン!!!

「………」

「…なあ…隆一…いや、隆一くん」

《!!…山﨑…お前……》

「…そういえば。…隆一くん…今日の夜もさ。…こんな感じだったよな?……あの時俺をバイクの世界に誘ってくれたのは?」

《!!……》

「俺さ、嬉しかったよ!……そして今、夢のようだよ!今度は僕が隆一くんを後ろに乗せて…共にバイクに乗ってどこまでもこの道を突き進んでいるんだから!……君がどんなに身体がズタボロにされようとも、俺達は《二人で一人》なんだって。……やっと気づいたんだ!」

《や…山﨑……お前》

「……だから、俺もこれからの道を突き進んでいくよ!……君の背中に書いている初代隆一は…僕達の《永久欠番》だ!…それは君が轢き殺されようが、誰にも汚される事は決してない!!!」

《!!…ああ!》

キラキラキラ………

「…夜景…綺麗だね…隆一くん!…それに、風も気持ちがいい!!」

「………」

《…はは!…笑っているな!…俺!…山﨑…複雑だけど。……ありがとな…本当に…》

・・・

その後、隆一は病院に辿り着いた頃には息を引き取る。それでも、その表情には風を感じていたのか清々しい表情をしていた。山崎の記憶には、色々惨めらしい過去があった。それでも隆一との出会いが彼の人生を変えたのは確かだった。隆一は彼の事をいつまでも忘れない。かけがえの無い相棒としてその心を胸の中にしっかり刻み込んだ─────

・・・
・・


「……っ!」(フッ!)

「あ、気付きました?どうでしたか〜?」

「…ああ、山崎…あいつにも色々あったんだなと…でも俺たちはいつでも繋がってるんだな!」

隆一は今回の試練で山崎との出会いにより、お互いに切磋琢磨して強くなるチームワークの必要性について学んだ。それを見てオロアは笑い、次の試練へと足を運ぶ。

「わかりました〜♪では次いきましょう〜♪」

「…!え!?もうするのか!?」

「は〜い♪こちらも早いほうがいいので…それともここまできて辞めるんですか〜?」

「……」

隆一は先程の試練を振り返っていた。先程見た記憶から推察するに、再び自分の現世で起こった出来事と向き合わないといけない。そう思い込んでいた。しかし彼の顔の表情には決して《後退》という二文字はない様子であったーーー



B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?




「分かった…よしいくか!」

「は〜いどうぞ♪」(トン!)

「え!?…!うおっ!またか!」(ビュー!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「行ってくる!」(スッ!)

隆一はまた光の中へ消えて行った。そしてオロアはこう思った。

「〜♪」(とりあえず第一の試練はクリアしましたね…次の試練はどうなることやら…実物ですね〜♪)

🎼Back Ground Music 》》》




Don't get the illusion, look closely.
(錯覚いけない、よく見るよろし。)

Everyone is unique and is endowed with the power to create something out of nothing.
(人はだれでも特異な存在であり、無から有を創り出す力を授かっている。)

Kozo Masuda
(升田幸三)


〜時は戻りどこかの病院〜

《ん?…あれここは病院か…?》

「よ。元気か!」

《え、親父…誰だ?誰のお見舞いなんだ…?》

「あらあなた…今日は仕事だったのね…」

「ああ…お前も体大丈夫か…」

《…!?まさか…おかんか!?》

「ええ。私は大丈夫だから…それよりもこの事を…あの子には…」

「…ああ言っていない。かわいそうだがもしこの事が知れたら、あいつはおそらく立ち直れないだろう…そして…すまんな。あいつには何一つ教えていないんだ」

《え…まさかおかんは出て行ったんじゃあなくて…》

「気にしないで。私の病気…もう助からないんだから…もうすぐ私は死ぬのよ…だからその時は…あの子を…」

《おかん…いや母さんは出て行ったんじゃなくて…病死だったのか…親父…じゃあ今までこのことを…》

「分かっている…とても手のかかる奴だが…それでも俺に似て困っている奴を放っていられない奴だから…」

「…そうよね…お願いね、あなた…あの子を…」(ダキポロポロ!)

「ああ…ああ!あいつには強く生きてもらうよ!」(ダキポロポロ!)

《そうだったのかよ…!!そうなら素直にそう言えよ!!…俺!親父を誤解していた!だがそんなこと内緒にすることもなかったのに…俺は…大丈夫なのによ〜!!(ポロポロ!)》

・・・

〜隆一高校時代〜

「あれ、おかんどこにいるんだ?」

《あれは高二の俺…!》

「…あいつは出て行った…」

《この時の親父確かにしんどそうだった。言いたくても言えなかったんだ!…全て俺のために》

「な、なんでだよ…なんでおかんが…おい!どういうことなんだよ!?」

「…元々俺とは不釣り合いだったのだ…だから…」

《…あの時もろに入ったんだよな…》

「ふざけるなよ…なんでおかん蔑ろなんだよ!!…どこにいるんだよ!?」

「…わからん…」

「…!!くそが…」

《…この時の俺すげえキレてたよな…今はもう親父一人だとすると…うぅ…くそ、やっぱり目の汗が止まらない…!…親父…痛い思いさせてごめんな…》

「ハァ…ハァ…だめだ見つからないな〜」

「おかん…どこいっちまったんだよ…よし決めた!俺も家出て行く!早く一人で暮らしていけるようにして一人前にならないとな!」

《その翌日になって俺は半分やけであんなことをな…本当人の道外れてるよな…ごめんな母さん、親父…》

・・・
・・


〜翌日〜

「全くとんでもないことをしてくれたな!!皆川…あぁ!?」

「…」

「タバコの運び屋をやらせていたのはあいつらが自供した。だがそれでも、手足を骨折させて病院送りにするのは異常だ!やり過ぎだ!!おかげで、相手の親御さんはカンカンなんだぞ…」

「…」

「何とか言ったらどうなんだ皆川!?」

「…!!」

ガシッ!!…バキッ!!

「…な!?」

「あんたこそどこに目をつけてるんだよ!?あいつらの親がそんなに偉いのかよ!?あいつらのせいで虐められてこき使われて、自分の居場所を見失うことをしてるあいつの気持ち…考えたことあるのかよ!?お前のような節穴だらけの教師がいるから、いじめとかこんな問題に気付けないんじゃないのかよ!?」

《俺はこの時つい熱くなってしまってな…先生もごめんな…》

「…貴様…!!こんなことをしておいて…許せん!!」

《今思えば…俺のやったことは許されることじゃあないんだよな…それでも俺は間違っていないと思うんだ。》

(フワァーッ!!!)

《な!?…頭の中に何が…》

隆一は頭の中に何かが入り込んでくる感覚に襲われた。すると今度は父母の体験した過去の出来事が再生された。

「この度はうちの息子が…」

「もう!おかげで骨を折るなどの怪我しましたよね!どうしてくれるんですか!?」

「本当にすみません!」

《…そうか。あれから親父は謝りに行ってくれたのか…クッ…親父…俺無責任だったな…一緒に謝りに行けばな…》

「…ただいま…そうか…あいつはもういないのか…今はあいつがいないから…やっぱり寂しいな…母さん…あいつを守ってやれなくてごめんな」

《…俺もごめんな親父…本当に…》

ペラッ!

「…そうか学校…辞めたのか…だがあいつは一人で生きようと…いつでも応援するぞ私は…」

《…父さん》

〜隆一の葬儀〜

《ここは…ああ…そうか…俺は死んだんだよな…》

「うぅ…隆一よ…暴走族になったとはいえ、お前が非行に走らなくてよかった!…本当に…」

《最後までごめんな…本当に…でも俺は…》

《いつの日か一人で自立して生きて行かなきゃあならなかったんだろうな…男としてその手で誰かを守ろうとして…だから俺は、止まらない!…いつまでも!バイクのように空をかけてやる!》

・・・
・・


「……っ!」(フッ!)

「あ、気付きました?どうでしたか〜?」

「…ああ…母さん、そして親父…俺のこと見てくれていた!!…どうせなら生きているときに謝りたかった……!!」

隆一は第二の試練で両親の真相を知り、自分の行った過ち、それに対する自分の責任について知り、これからの自分に対する更生の自立について学ぶ。それを見てオロアは笑い、次の試練へと足を運ぶ。

「ではあなたは自分の罪を認め、そのまま大人しく【Paradiso】へ行かずに裁きを受けますか〜?♪」

その問いに隆一は笑みを浮かべこう答えた。

「…いや…俺の罪は俺自身で償う!自分の親だけでない…人の親も泣かしてるんだ…!裁いてもらうんじゃあなくて…俺自身で自分の罪に向き合う!」

「……ふむふむなるほど〜♪」

オロアはその考えにとても興味が湧いたのか、隆一の様子を興味津々にうなづく。

「わかりました〜♪では次はいよい〜よ!最後の試練です!」

「…いよいよ最後…絶対乗り越えるぞ!」

「〜♪」(それにしても、隆一さんの服、不思議な服ですよね〜♪なんか白衣みたいですね!)



B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?



「さて行くか!」

「は〜い♪お〜こんなになってるんですね〜この服♪」

「あ!?ちょ、俺の特攻服!」

「では…そ〜〜れ〜い♪」(グルグル!)

「うぉぉ〜!!」(グルグル)

「えい♪」(ぽい!)

オロアは隆一の着ている特攻服を持ち、ハンマー投げのように回して光の方へ放り投げた。

「いってらっしゃ〜い♪あ〜楽しかった♪あはは〜♪!」(ニコニコ〜フリフリ〜!キラキラ!)

「こっちは危ねぉ〜よ!…あ」(スッ!)

隆一はまた光の中へ消えて行った。そしてオロアはこう思った。

「〜♪」(次で最終試練…どうなることやら実物ですね〜♪しかし現世にはあんな特殊で派手しい服が流行っているんですね〜♪)

🎼Back Ground Music 》》》



If the person's heart is not free, I don't think it's free to be released in any field.
(その人の心が自由じゃなければどんな野山に放たれても自由じゃないと思う。)

(I will live since I was born.)
生まれたからには生きてやる

Hiroto Komoto
(甲本ヒロト)



・・・
・・


〜隆一の墓〜

《!!ここは…!!俺の…墓なのか!?…そっか。…本当に死んだんだな》

バサァっ!!

《?…花?……!?や、山﨑!!》

ジャバジャバジャバ……

「こんなになっちゃったな…隆一。……あれから俺も定時制を卒業して無事に仕事してる。…あの鬼頭は、どうやら刑務所内で死んだって連絡が入ったよ。…まあそんな事を言ってもあの頃に戻す事は出来やしないけどな。………俺達の代は既に引退して違うのがやっている。…けどちゃんと意志を継いでいるよ!」

《!!…そうか!…安心した!》

コツン…コツン…

「…あの…すみません」

「え?」

《?……あ。…!?この人はあの時の!?》

「?…!!ああっ!アンタは確か…あの時俺達が助けた…」

「…はい!…あの時は助けていただきありがとうございます!」

「!!///い、いえこちらこそ!突然でびっくりしましたよね!?」(ドキドキ///)

《…山崎…鼻の下伸びてる!》

「だ、大丈夫です!…あのニュースを観ましたけど。…そちらの方は…本当に残念でしたね…でもわかります。きっと大きな問題から逃げずに戦ったのですからね!」

《な、なんか照れるし、は、恥ずかしい!///…うん!悪い気はしない!》

「はい。…でも、いつまでも落ち込んでばかりではダメだと…彼から教えてくれましたから…俺はずっと彼の事を忘れません!」

「そうですか。…!あ、すみません名乗りませんでしたね…私、《涼子》と言います!」

「あ〜涼子さんですね。俺は山崎と言います…もしよかったら彼の墓に参ってあげてください!」

「…!いいのですか!?」

「はい!どうぞ!」

「…では…失礼して…あら?…皆川…隆一…!」

「え?はいそうですが、あの何か?」

「いえ、なんか昔小学生の時に海で助けてくれた人と名前が一緒で…」

《なんか嬉しいもんだな〜!…え?…何だろう…この女の人…何処かで……涼子…海…あ!?》

フワァーッ!!!

《!?…また頭の中が…》

隆一は頭の中に何かが入り込んでくる感覚に襲われた。すると今度は涼子の体験した過去の出来事が再生された。

〜小学生の夏休み〜

「…ハァ…ハァ…」(バシャバシャ!)

《これは…ああ、そういえば小学生の頃、夏休みの時に海に行ったことあったな〜!!》

「ふぅ…泳いだな〜!」

「…!涼子〜どこ〜?」

「?なんだろ?」

「すみません!うちの娘が迷子になってしまって!ピンクに水着に名前を書いた子なんです!!」

「…迷子!…よし!!」

《この時、海を泳いでいたら浮き輪に浮かんで沖まで流されそうになったのを見てあ、もしかしてと思って泳いでたな!》

バシャバシャ!

「君、もしかして涼子ちゃん?」

「…うん…うぅ…グス…でも戻れなくて…」

「心配するな!向こうまで連れて行くよ!俺、皆川隆一!じゃあ行くぞ」

隆一は浮き輪に縄をくくり、自分の体に巻きつけて陸まで泳いでいき、涼子を救出することに成功する。

「涼子〜!!」

「お母さぁ〜ん!!…わぁ〜〜ん!!!」(ダキッ!)

「…よかった!本当に!…君、ありがとうね!!」

「助けてくれてありがとう隆一君!!…ちゅッ♪」(チュ!)

「うぉわっ!?な、なんだ!?///」(カァ〜!)

「お礼〜♪」(二コッ!)

「…!!///」(まあ悪くないか…)

《…はは…まさかな俺の墓の前にいる人がな…まあでもこうして俺の人生の中で二回もこの人救ったんだな…なんか気持ちがいいな…人助けって…》

・・・
・・

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)




「……はっ!」

「あ、気付きました?どうでしたか?」

「…ああ!ずいぶん悪をしてきたと思ってた!…でも、誰かにあんなに頭をあんなに頭を下げられたのは初めてだった!…感謝される人の気持ちを知った!!」

「そうですか〜♪」

隆一は最後の試練で、自分は確かに悪行をしてきた。だがそれでも誰かを助けるという義務感を持ち、人命救助をしたり、族を作った時の山崎を救済しようとした時のことを思い出し、隆一は誰かを助けることの大切さについて今回の試験で学んだ。それを見てオロアは笑みを浮かべ、隆一にこう答えた。

「さ〜て、これであなたの三つの試練は全て乗り越えました!おめでとうございま〜す♪…そ・し・て…これを身に付けていただきま〜す♪」(サッ!)

「ん?何だ?…これ?」

隆一はオロアに渡されたものを確認した。それは勲章であり、確認すると十字架のマークが刻まれ、下にはSpecific deadという文字が刻印されていた。

「これであなたも無事に死者から特定死者へとランクアップですね〜♪次は現世人を目指して頑張ってくださいね〜♪」

「…特定死者?現世人?なんだ一体?」

「特定死者は、わかりやすくいえば先ほど体験した三つの試練で、現世での行いを振り返り、何を学び、何を感じたのかを知り、その記憶と向き合い、試練を無事乗り越えたものに与えられるものです。階級は死者よりも上で、ユートピアの世界【paradiso】へ行くための試練を受けることができる資格の者といった立場ですね〜♪現世人とはユートピアの世界【paradiso】でのあなた達の種族の俗称となる名前です!…つまり今度は、その現世人の地位になるための試練を受けていただきま〜す♪」

「…【paradiso】って世界に行くのはまだまだ長いんだな〜」

試練を全て乗り越え、隆一自身はこれでユートピアの世界に行けると安堵していた。しかし導き人オロアの返答は予想外のものだった。隆一は理解した。ユートピアの世界は思った以上に過酷な道だということを。

「ではでは…最初の三つの試練はあくまで準備段階です!あなたにはこれから最終試練に挑んでもらいますよ〜♪」(ニッコリ)

「…はぁ〜こうなったらやるしかない!!」

「最終試練会場はすぐそこです!ではついて来てくださ〜い♪」(ピューーッ♪)

「お、おい待てって!!」(ダダダダ)

隆一は、神速の如く走り抜けるオロアを追いかける。そうしていくうちに一枚の扉が見えて来た。

「ここがその最終試練の扉で〜す♪」

「ここか…!」

「ですがその前に後ろをご覧ください〜♪」(ビシッ!)

「ん?…!?な、なんだよあれ!!」

導き人オロアが指を刺した方向を見ると、今まで眠っていた白い棺が天井にある満月に吸い込まれている。それは隆一だけのものではない。とてつもない数の棺が宙を舞い、螺旋状に満月の模様に吸い込まれていく。

「あれは一体なんなんだよ!?」

「あれは冥界の満月っていうもので、直接あの世とつながっています。中には私たちの言い分を無視して寝過ごしたものや、私のような導き人の試練に乗り越えられなかった人もいくつか混じっています♪」

「…もしかして…俺が知らず知らずのうちにあの棺の中で眠り続けていたり、あの試練を乗り越えられなかったらあれに連れて行かれていたのか?」

「その通りですよ〜♪あ〜!あとあれをご覧くださ〜い♪」

「ん?……って!?…人だ!!何か黒い服を着た奴らが拘束して浮いている…」

「あれは執行者です。どうやら私達の試練に乗り越えられず連行されたようですね!主に死者を平等に裁いてもらうために、今から閻魔大王の元へ行き、裁いてもらう途中のようですね〜♪ちなみに私達のことを毛嫌いしていて、執行者の部署はあなたたちの現世での言い方だとブラックな部署でもありますよ〜♪」

「そうなんだな…」

「さて、本題に戻りまして…あなたは今回の試練を乗り越えて普通の死者から特定死者として認定されました!次の試練はいよいよ【paradiso】へと行くための重要な試練です!とても過酷な試練になりますが大丈夫でしょうか?」

「………」

隆一はさっきの試練とここまでの経緯を思い返していた。おそらくこの試練を受けさせるからには自分の行く【paradiso】という世界は、ユートピアの世界とはかけ離れた反対のディストピアのようなものではないのかと思っている。だが行くからには、もう後戻りはしない。あの思い出を見たからには隆一はたとえ別世界に行こうと、自分の意思を貫き、真っ直ぐに突き進んでいくだけだという目標を見出した…そしてこの言葉が、胸によぎった。

(ここから先は俺の道…風を切るように走り抜けるだけだ!)

「準備はできている…行くよ…俺は!」

「はぁ〜い。では行きますよ〜…って〜ッ♪!!」(ゲシッ!)

ドゴーーーン!!

「うぉっ!?」

導き人のオロアはその扉を思いっきり蹴り飛ばし、粉々にした。その光景に人とは思えぬ恐ろしい怪力を見たあまり、隆一は驚愕して放心した…

「あ、これ扉に見せかけた壁なので〜!では行きましょう〜♪」

「…オロアってすげぇんだな…さっき振り回されたのもあるし…なんてじゃじゃ馬なんだ…」

隆一はオロアの後を追う…そして出た外の光景は信じられない非現実な光景が広がっていた。

「な、何だ…!?…雲の世界…!?映像とかじゃないよな…」

隆一が見た景色はまるで昔、何か探し物をする本でみたことがあるファンタジー的で幻想的な雲の世界の光景が広がっていた。そしてこの世界で、隆一は壮絶な逃走劇の戦いが幕が開けるーーー









《To Be Continued…→》   



 


第7話:プロローグ〜隆一編 Part1
《完読クリア!!》



次の話へ進みますか?

A. はい 
B. いいえ