GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》


A.:GiorGia 

〜第一章:白狼と誓いの儀礼刀〜


第6話:プロローグ〜ゆい編 Part3



プロローグ〜ゆい編 part2の続きです。




《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)



♪〜TODより・Holy light

〜???の世界〜

〜カラ〜ンカラン♪

「zzz…んっ…!!……!?え、なんですか!?…ここ!?…確か私…あの時…息を…」

鐘の音が聞こえ、ゆいは目を覚ました。中はとても狭く、周りには白い薔薇が囲まれており、顔の前にはドット状の穴があった。どうやら窒息を防ぐための措置かとゆいは考え、一度前の扉を押し出してみる。

「ここから開けれますね…!」(ガタン!)

ゆいは扉を開け、身体を起こして周囲を確認する。下を見るとそれは案の定、ゆいは棺で眠っていたようだ。周りは空間は薄暗く、もやがかかった空間が広がり、目の前には白い道が続いていた。そして天井は高さが見えない。そんな時、ゆいは何か物音の気配を感じたのか周囲を警戒した。

ガタッ… ゴゾッ…

「…!…だ、…だれ…!?」

「呼びました?」(ひょっこり!)

「!?」

「ん?」

「…え?…女の子…?でもなんで?」(キョトン)

「やっほ〜♪」(ニパ〜!)

「…こ、こんにちは…」

「こんにちは〜♪初めましてってやつです!」

ゆいは挨拶するとそれはシルバーブロンドの髪色でロングヘアー、肌は白く、胸元に十字架のワンポイントに青白のワンピースを着た笑顔の一人の少女がそこにいた。そして少女はすかさずニコニコと挨拶をした。

「私の名前は、導き人の一人、オロア!よろしく〜♪…そしてあなたをユートピアの世界へと勧誘に来ました!」

「え?導き人のオロア…さん?…あの〜ユートピアの世界ってなんですか?」

「あ〜知らないんですね〜では教えちゃいま〜す♪」

するとオロアは口頭で懇切丁寧に説明した。

「ユートピアの世界とはいわゆる天国と地獄ではないもう一つの死後の世界があります。あなた達の現世で【paradiso】という言葉聞いたことありませんか〜♪」

「い、いえ初めて聞きました。それで、私はなんでここに?」

するとオロアはどうやらゆいは自分が死んだ事は気づいているようだが、なぜここに呼ばれたのかのことで混乱しているようだ。だが導き人のオロアは死者を何度も送ってきたベテラン。こういうのは慣れっこなのだという気分で説明した。

「鈍いですね〜♪あなたは現世で死にましたね。そういうのは自覚ありますか〜?西野ゆいさん♪」

「は、はい。息を引き取ってしばらくして、意識がないように眠った?かのような感覚に襲われて…それで気がついたらここに…ってあれ?どうして私の名前を!?」

「ふふふ、私たち導き人にはあなた達死者の情報は全てお見通しなのですよ〜♪もし他の死者の人の中に知り合いがいるとしてもその人の情報提供をする事はプライバシーで守られているためお教えする事はできませ〜ん!そこはお忘れなきようお願いしま〜す♪」

「ああ…そうですか。」(あかりちゃんがここに来ているか知りたかったのですが…ここに来てるのかしら…?)

「まあでもそれだけ覚えていれば上出来です!ではあなたが起きたところで早速いきましょう♪ついてきてくださいね〜♪」(二コッ!)

「えッ!?」

「ではではよ〜いドン!!♪」(ピュー!!)

「えっえぇーっ!?」

オロアは勢いづいてスタートダッシュし、猛スピードで走り抜ける。そのスピードにゆいは驚く。どこにあの小さい身体でこんなスピードが出るのかと。

「は、はやいですよ!?」

「はっやく♪はっやく〜♪」(タッタッタ!)

「…仕方ありませんね…でも私、走れますかね…身体の方は大丈夫なのでしょうか…」(タッタッタ…)

ゆいは走り出す。しばらく走っているとあることに気づいていた。

「…え…?あれだけ走っていますが…疲れは感じているのに…発作が起こらない…それに身体がすごく軽いです…!!…もしかして…私の病弱体質が…なくなっている!?」

ゆいは実感した。どうやら、昔から抱えていた病弱体質はなくなり、この感覚は9歳の時一番活発であったあの頃を思い出していた。それを知り、調子が出てきたゆいは、すかさずもう少し早く走ってみようと試してみる。

「よ〜し!ではもう少し早く走っていきますね!はぁぁぁ〜!」(タッタッタ!)

ゆいはスピードを上げていく。そして後ろを見ていたオロアはその様子を見ていた。

(ふふふ…どうやら自分が病弱体質がなくなった今、自分が思うように走ることができて嬉しそうなんですね〜♪)

「どうやら大丈夫そうですね!でもこんなに思いっきり走るのは久しぶりな感じです!!…でもなかなかつきませんね…まあいいでしょうか!…ふふふ!こんなに走れる事はあの時に比べれば奇跡のようなものです!あ〜本当に気持ちがいいです…!お姉ちゃんが見たらびっくりするでしょうね〜♪」

ゆいは楽しそうに走っていた。現世での入院生活では少し歩くだけでも息切れの発作が起こった時があった。だが死後の世界となった今となっては病弱体質はなくなり、思う存分走れることにゆいはとにかく喜びを感じでいた。走っているとどんどん視界が暗くなり、ある場所についた。

「お〜到着しましたか〜♪どうですか思いっきり走ってきた感想は〜?」(ニコニコ〜!)

「はい!!とても気持ちがよかったです!生前では走る体力もなかったので…でも今となってはこれが普通なのだと思いましたね!」

「そうですか〜♪では準備体操が終わったところであれをご覧くださ〜い♪」

「え?…!?…なんですか…あれ?…スポットライトですか?」

オロアが指差したところをゆいが確認するとそこには真っ暗闇な道に天井に小さな光が等間隔に、スポットライトのように広がっている道が続いている。その道を見てゆいはオロアに問いかけた。
「あれは現世の世界の光の一部です!光を浴びると、あなたの生前の様子だとか、その他の人の身体を借りて、いろんな追体験できたりと…まあとにかく色々な価値観に触れるのがありますね〜♪あ、特に害はないのでご安心ください!」

「なるほど…という事はあの光に入れば言いという事なんですね。」

「は〜い♪では時間が押していますのでそろそろいきますか〜えい♪」(トン!)

「え?…!えぇぇ〜!」(ビューン!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「あ、あの!…あ…」

オロアは、ゆいの背中を軽く叩くとその直後、とてつもない突風が吹いたかのようにゆいの身体が吹き飛ばされる。そしてスポットライトのある方に近づき、ゆいが光に接触すると、光の中に消えていった。

(ふっふっふ。どうやら現世では世間知らずのお嬢様といったところですか…見たところあまり精神的に強いわけでなく不安定なように見受けられます。…今回の試練ではその弱さが命取りにならなければいいのですがね〜♪)

・・・
・・




There is also a high-ranking charity that behaves like malicious intent on the table.
(表にはさながら悪意のごとく振舞う、気位の高い慈愛もある。)

Few people do not reveal the secrets of their friends when they are in trouble.
(話題に窮したときに、自分の友人の秘密を暴露しない者は稀である。)

Friedrich Wilhelm Nietzsche
(フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ)



〜誰かの家の部屋〜


《んん…ここは…?あれ?…誰かの家?》

「あかり〜おいで〜!」

《あかり…ってまさかこれってあかりちゃんの記憶…》

「は〜いお母さん〜何〜?」

「ふっふ〜んはいこれ!」

するとあかりの母はあかりに何かを渡した。それは何かの袋に入っていた。

「開けていい?」

「ええ。いいわよ〜」

すると、中にはひまわりのヘアピンが入っていた!

「ひまわりだ〜でもなんで〜?」

《へぇ〜あのひまわりのヘアピン、お母さんからのプレゼントだったんだね!》

「うふふ。あなたに似合うと思ってね。どう?気にいってくれた?」

「うん!ぴったりだよん〜と…ほら!」

「あら本当よく似合っているわ!」(なでなで!)

「えへへ〜!」(ニコニコ!)

《あかりちゃん…うん…よく似合っているよ!…でも…》

そして記憶は進んでいき、急にあかりが倒れてしまった場面を見てしまったようだ。

「…!あ、あかり!?…どうしたの!」

《あかりちゃん!…まさかこの時に…!》

「う〜んなんかフラフラして…あと頭が痛いんだ〜…」

「!!ちょっと病院へ診てもらおう!」

「え〜大丈夫だよ〜…うぅ…痛い…!」

《あかりちゃん…そうか…あかりちゃんも明るくしていたけどやっぱりこんなに痛がるところがあるんだね…》

「やっぱり!ほら、私も今日は時間あるし行きましょう!」

「…うん…」

🎼Back Ground Music 》》》



〜竹内総合病院〜

あかりは竹内総合病院で精密な検査をした。検査終了後、医師は、とても険しい表情をしていた。

「お母さん…落ち着いて聞いてください…」

「はい。あのあかりはどうなんですか?」

「…どうやら脳に腫瘍が見つかりました。」

「!!」

《…脳腫瘍だったんですね…それで一年後には…足が…うぅ…グスッ!》

「なんとかできるんですよね先生!?」

「それが思った以上に深刻です。場所がとても複雑な場所にあり、摘出は困難です。無理して摘出すれば、神経を傷つけて重い後遺症が残るでしょう。おそらく一年後には…」

「ああ、そんな…そんな!」

《…あかりちゃん…》

その夜にあかりの母は父と相談した。父も険しい表情をしていた。

「…あかりがか…」

「はい。後一年だと…私、どうすればいいかと…うぅ…」

「…入院させよう!少しでも希望があるなら」

「…えっ…でも」

「あの子もまだ6歳だ。これからなんだ!…だから…」

あかりの父はとても悲しい声で話していた。愛する一人娘が突然のがん宣告を受け、ショックが隠しきれなかったのだ。

「…私も、あの子には生きていて欲しい。どうにかできるならしてあげたい!」

「…!お前…!」

「私も覚悟を決めるわ…入院させてあげないと…」

「ああ、二人であの子を支えていこう!親なんだから!」

《やっぱりあかりちゃんの両親…それだけあかりちゃんが好きなんですね。私の時もそうだったんでしょうね…》

そして両親が合意の上で、あかりが入院することになった。病院内ではあかりの明るいところは患者にとって励ましになっていた。だが実際のあかりはいつも明るいわけではなかった。

🎼Back Ground Music 》》》


「うぅ…いたた…でもみんなにいたい姿は見せたくない。元気に振る舞おうっと!それにゆいちゃんは、気を使うとこあるし、気をつけとかないとね…」

《あかりちゃん…ずっと我慢してたんだね…》

「ねえゆいちゃん!みてこれ!」

「ん?あ〜猫ちゃんですね〜!…へ〜ゆいちゃん絵描くの好きなんですね〜。他に何か書いて見せて!」

「う〜ん今日はこれくらいかな!時々描こうかなって決めているんだ!」

「そうですか…また何か描けたら見せてくださいね!」

「うん!」(本当は今日はなんか手が痺れてうまく描けないって事を内緒にしておかないと…)

《…そうだったんですか…時々手が動かなくなる時が…そういえば食べている時も、箸ではなくスプーンを使用する事が多かったですね…》

そして時が経ち、いよいよ歩行状態や手足の痺れが目立ってきたため、ゆいとは別室の個室への移動となった。

(う〜んうまく足が上がらない…なんか重りついているみたい…でも出来ないわけじゃ…あ!!)

バターン!!

《あ…あかりちゃん!!うぅ…こんなになるまで…》

物音が聞こえたのか、看護師が声をかけてきた。

「あかりさん、大丈夫ですか!?」

「大丈夫!ただよろけただけだから心配ないよ…!」(…こんなとこゆいちゃんに見られたら心配するだろな〜しばらく会ってないからすごく寂しんだろなあ…会いに行きたいけど…そうだ!)

《ん?なんでしょう?…あ、もしかして…!》

〜ゆいの病室〜

「ゆいさん少しいいですか?」

「はい。なんでしょうか?」

「これあかりさんから渡されたので。後血圧計らせていただきます。」

「…なんでしょうか?」

血圧測定を終えた後、ゆいは手紙を見た。すると手紙にはこう書かれていた。

「今日の昼の14時ぐらいに外のベンチで待ってて。お話ししようよ!」

「うふふ。わかりました。」

〜そして昼の14時〜

「ゆいちゃん久しぶり〜!」

「あ〜あかりちゃんお久しぶり!元気でしたか!?」

「うん!ゆいちゃんは?」

「私は…最近検査でどうも良くないと言われて…後骨髄注射がすごく痛みまして…」

「大変だね〜でも安心した〜!それでも、ゆいちゃんが元気そうで!」

「ふふ。ありがとうねあかりちゃん!」(なでなで!)

「えへへへ♪」(二コッ!)

《うぅ…グスッ!…あかりちゃん…でもやっぱり寂しいものですね…記憶といえど…》

「あ、そうだゆいちゃん!…次。何日の何時って決めとこっか?」

「そうですね。では2日後のこの時間でいいですか?」

「大丈夫だよ〜♪じゃあその日の時間によろしくね〜バイバイ!」

「はい…さよなら…」

〜その夜〜

(うぅ…前よりも痛みがひどくなってきたかな…もしかしたら…そうだ…明日フネばあちゃんに会って話しておかないと…)

《…!そうですか…ああ…あかりちゃん…うぅ…そうなる前にフネおばあちゃんに私を元気付けるように言ってくれたのですね…》

〜翌日〜

「ん?私にかい?」

「うん。こんな話はフネばあちゃんにしかいえないから。もし私に何かあってここに来れなくなったらベンチに亜麻色の髪をしたゆいって人が来るから!!頼んだよフネばあちゃん!」

「まあ覚えていたら考えとくわね…」

「絶対だよ!もしゆいちゃんが落ち込んでいたら絶対元気付けてね!!…約束だよ!」

「はいはい。もう年寄りはもう少し気を使ってくれたらいいだがね〜本当この子は空元気もいいとこだよ〜カッカ!」

「お願いしたからね!じゃあね〜」

「…ゆいさんね〜」

《…あかりちゃん…ありがとね…でも…明日は…ああ…ゆいちゃん…》

〜その夜〜

「けほ、けほっ!!…うぅ…苦しいよ…お母さん、お父さん…」

「!ゆいさん大丈夫ですか!!…先生!!ゆいさんが!」

〜翌日〜

「うぅ…足が動かない。でも手は動いてる…口も動いてる…まあ仕方ないよね。よし、車いすに乗ってゆいちゃんのとこに行こ!」

《…ゆいちゃん》

「ん?おんや…」

「フネばあちゃん…」

「確かに、これは深刻だねぇ〜」」

「昨日の約束、覚えてるよね!?」

「ああ!ほらはよいかんせ。あの子じゃろ。約束してる子。」

「そうだよ。相部屋の時は手袋作ってくれたり、絵を褒めてくれたり、食べ物とか色んなことを話したんだ。…後はお姉ちゃんがきてくれないからすごく寂しそうなの。そのせいか時々夜に泣いている日があるからすっごく寂しがり屋だと思うのゆいちゃんは…だから…」

《…見ていたのですね…内緒にして弱いところを見せないようにしていましたが…あかりちゃん…》

「ああわかったわかった!アンタさんがいなくなった後、あの子にガツンと言わせたるさかいにな、ほらはよ行きなはれや。」

「うん!じゃあお願いね!!」(スーッ……)

「ハァ〜全く最後に仕事を押し付けてくるんだからね〜まあお先の短い私だ。たまには人の役に立つことをしてみるかね…」

《あかりちゃん…フネおばあちゃん…ありがとう…!》

「あ、ゆいちゃ〜ん!」(フリフリ!)

「あ、あかりちゃん!…あれ?…!!」


「…あかりちゃん、足どうしたの?」

「うん、それが最近足が動きにくくなってね…私、どうやら頭に病気があるらしいの…でも大丈夫!まだ口と腕は元気だから!…ゆいちゃんは?なんか元気ないね…」

(そっか。…そうなんだ。)「あ、私は大丈夫!今日あかりちゃんと会えて嬉しいのか、身体の調子がすごく良いから!」

「そっか!それなら良かった!じゃ、お話しよ!!」

「…うん!何から話す?」

「ん〜?じゃあお姉ちゃんの薙刀の話!」

「え!?…ゆいちゃん渋いですね。もっと女の子らしい話の方が…」

「ううん、私は薙刀の話がいい!どうして、ゆいちゃんが薙刀を覚えたくなったのか知りたくなってね…話してくれるかな?」

「…あかりちゃんが言うならわかりました。前にも少し話したけど…薙刀はあかりちゃんと同じ歳くらいにね、私のおばあちゃんに教えてもらったの…少しでもこの病弱な身体を乗り越えようとしてね…でも、その薙刀術の見極めがすごく大変で…」

🎼Back Ground Music 》》》



(フワァーッ!!!)

《な、何ですか!?…頭の中に何が…》

ゆいの頭の中に何かが入り込んでくる。すると、あかりの昔体験した過去の出来事が再生された。

「ひっぐえっぐ!」(ポロポロ!)

《あかりちゃん!…えっ!?…泣いてる…》

「や〜い!ここまでこいよ〜アッハッハ〜!」

「ま、待って〜」

《あかりちゃん…どうやら男の子にいじめられているみたいなんですね…ひどいことをしますね…》

「…!!コラ!アンタ達!!またその子泣かして!その子のもの返しなさい!…返さないと…!」(ゴゴゴ…!)

「は、はい…!…ほ、ほらよ」(ビクッ!)

「あ、うん…!」

すると、いじめっ子達はあかりのものを返し、一目散に去っていった。すると声を掛けた細長のバックを背負った道着を着た女性がゆっくりあかりに近づいてくる。

《あれは、薙刀の方?女性》

「大丈夫けんの?」

「う、うん。大丈夫。庇ってくれてありがとね。お姉ちゃん…」

「いいわ別に…でもあいつらも懲りないわね〜」

「きっと私のこと嫌いなんだ。だからいつも…」

すると女性は首を横に振り、あかりにこう伝えた。

「逆よ!本当はアンタの事好きで遊びたいんやろ!」

「…!そうなの…!でも…うぅ…!」

「あ、ほらまた泣いて!はいハンカチ!」

「…ありがとう。」

「もうそんな悲しくて辛気臭い顔やめとき〜な。女の子なんやから笑っとかないかんけんの!ほらニカーッ!」

「…ニー!」

「まだ足りへんがね!…ほら!!ニー!!」

「ニー!!」

「そーそ〜!!やればできるやんか!それに女の子は簡単に涙見せるもんやないんよ。人に笑われようといつでも明るく、元気に!それが一番やねんがね!」

「元気にか…私できるんかな!?」

「ええきっと出来る!私も、いつも明るく過ごすことがモットーやから、あんた名前は?歳はいくつなん?」

「あかり。歳は5歳。」

「あかりちゃんね〜!明るい名前やないの〜大事にしとき!せっかく親がつけてくれた名前なんやし!アンタもいつまでもメソメソしていたらだめやで!人は笑ってナンボやねんがな!アンタは笑わんせ!あかりの名前が似合うような子になってね!」

「うん!…ところでお姉ちゃんの持ってるそれ何〜?」

「ああ…これね〜薙刀ちゅうやつ。あかりちゃん、牛若丸と弁慶の話知ってるやろ?」

「うん。それはご本で知ってる。」

「んで私はその弁慶さんの持ってる武器を習ってるんや。とは言っても刃物とは違って木で出来てる。でもそれを人にぶつけていじめたり、蹴落とすために習ってるんと違う。これは自分の大切な人を守るためでもあるし、そのために自分が強くなるためにやってるようなもんやね。昔…うちもあかりちゃんみたいに弱かったし、よく泣いてたよ。」

「お姉ちゃんみたいな人が!?そうなんだ!?…なんか意外!」

「そんな時、これじゃああかんな思って近くの薙刀道場に通って、薙刀術習ってそこから中高もずっと薙刀一筋って事!後は笑顔は欠かさず大切って事やね!とにかく人ってのは笑える生きもんやから生きてるうちは笑っとかなあかんよ。死んでもうたらもう笑えんようになる。今のうちに笑うもんよ!!笑ったもの勝ち!!」(ニッカリ!)

《その気持ち…なぜかわかります。私も似たようなもので薙刀を習いましたから…本当明るい人ですね。そうですかそれで薙刀の話をして興味が湧いていたんですね〜おそらくあかりちゃんが明るくなったのはこの人のおかげなのでしょう…!》

「…うん。…うん!そうだね〜私もいつまでもメソメソしたらいけないよね!わかった私お姉ちゃんみたいに強くなる!それで困っている人たちを助けれるような人になりたい!それといつでも笑えて笑顔でいる私になりたい!」(ニコ〜ッ!)

「お〜いい笑顔するやんけアンタ!!期待してるで!!」

「うん!あ…ところでお姉ちゃんの名前は…?」

「名乗るほどのもんじゃないよ〜私の名はね…」

『誰よりも強くなって活躍してたら私の名前はいつか日本中、世界に届いて分かるもんやから…私は自分から名前は教えへんねん!!』

〜時は過ぎ…〜

「うぅ…いたい!!…頭が!!…あぁ…!!」

(…やっぱり頭が…もうこれで…でもフネばあちゃんに伝えることは伝えた!…後は任せたよ!!…ゆいちゃんを…うぅ!!)

《あかりちゃん!!…しっかりして!!…ああ無駄なんですよね。これは記憶の中なんですよね…でも…でも!!(ポタポタ!)》

「あかりちゃん…来てないな〜今日会うって約束したのに…あれ?」

「…こんにちは…ゆいさん…」「…こんにちは…」

「あ、こんにちは。あかりさんのお父さんとお母さん。…お久しぶりです。…あの…どうかされましたか?…あかりちゃんは。」

「…あかりは…今朝…亡くなった…」「…うぅ…あかり…!」

「…………え?……」

《…だめ、一度体験したこととはいえ、涙が止まりません!》

(聞いたかねーああ聞いたーあかりちゃんだったかね!ー小児ガンの子ー今日の今朝亡くなったらしいんだよ!!ーかわいそうに!!ー元気な姿をよくここで見かけたのにね)

「嘘…うそよあかりちゃん……嘘…だよね…昨日あんなに元気だったのに…今日も会うって約束したのに…いや…そんなのいや…いやーーーーー!!」(ポタポタ!)

「…くっ!!…なんで…!」(ポタポタ!)「あ、あぁぁぁ!!」(ポタポタ!)

《…あかりちゃん、さぞこの時両親も大変辛かったんでしょうね…私もです…!(ポロポロ!)》

「…これを…」「…もらってあげてください。」

「…これは……!あかりちゃんの髪につけていたひまわりのヘアピン……それとあかりちゃんの写真!」

「…あかりからゆいさんにと…」「手袋のお礼ですと…」
 
「あ…ああ…!…あかりちゃん…!!」

《…くっ…》

(もう!ゆいちゃんのお父さんお母さんおばあちゃん!…せっかくゆいちゃんの顔を見に来たんだからなんか元気づけてあげなよ〜!もうこんな時ぐらいだよ!元気そうで良かったと笑い合えるの!だから笑おうよ!!笑っていたら明るく前向きになって元気になれるよ。気持ちもスッキリするから!っね!!)(二パ〜ッ♪)

「う…うぁぁぁぁああああああ!!!」

《…うぅ…ああぁぁ…!》

・・・
・・


「……はっ!」(フッ!)

「あ、気付きました?どうでしたか〜?」

「…はい…導き人さん…思い返すととても辛かったです。でも悲しいからという理由で止まるのはそれではダメなんだと…でも私は…うぅ…」(ポロッ!)

「あれま!」(あらあら泣いてしまいましたか〜♪そうですか〜そんなに涙が出るほどの体験でしたか…♪)

ゆいはあかりの事を思い返し、涙を流していた。だがあかりはゆいに悲しみや苦痛を与えるために亡くなったのではない。それには意味があることをフネから教えられ、その言葉でゆいは立ち直ることができた。ゆい自身はそれを自覚していたが今回の試練で再びあかりの出来事を見て、涙はこみ上げてきた。その様子を導き人のオロアは非情にも選択を迫る。

「ではどうしましょうか!?そんなに辛い思いをするのでしたら〜次の試練をあきらめますか〜?」

ゆいは導き人の発言に対し、泣くのはすぐに止めてまっすぐ前を見つめた。

「いえ、いつまでも泣いてそこで進まないわけにはいきません!…あかりちゃんの分まで…私は…私は!!…行きます。必ず辿りついてみせます!その【paradiso】という世界へと!」

ゆいの意思は固かった。今回の試練であかりから命の尊さ、そして日々を前向きに生きることの大切さを学んだ。そして、【paradiso】へ絶対にたどり着いて見せるという意思表示を導き人に伝える。するとオロアは笑みを浮かべ、こう語った。

「わかりました〜♪では張り切って次の試練パート2!!どんどん行ってみましょ〜う♪よっ!どんどんパフパフ〜♪」

「えっ!?…忙しくないですか…?」

「はい♪こちらも忙しいので〜!そ・れ・と・も・辞めますか〜?」

「……」(…この導き人のオロアって子…割とせっかちなのですね…)

「はい♪よく言われます〜♪!別に言われても結構ですよ〜♪」

「…!!心が読めるんですね!……さて…」

ゆいは次の試練に足を運ぶのに躊躇していた。もしかしたら先ほどよりも悲しい出来事が待っているかもしれないと思っている様子であった。



B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?



「では行きましょう。立ち止まるわけには行きません!」

「は〜い!では…!あら…おっとっとっ…!」(ふら〜!)

「あっ!危ないですよ!」(ダッ!)

オロアはフラフラしてバランスを崩し、転倒しそうになった。その状態にすかさずゆいはオロアの身体を支えようと近づく。だがオロアは笑みを浮かべていた。

「…なんちゃって〜♪…とぉ!!」(ニヤリ! トン!)

「…え…?…!?キャーーッ!!」(ビューン!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「ふ、不意打ちとは…あ…」(シュッ!)

導き人に不意打ちをされてしまったゆいはそのまま現世の一部の光の中へと消えていった。それを見守る導き人のオロアはゆいに対し、思っていた。

(次は第二の試練。あなたは今度どんな体験をしていくのでしょうか…まああんな不意打ちに騙されるのは、あなたの観察不足か…純粋に優しすぎるのか甘いのか…どちらにしてもそれをどう強みにするかですね〜♪)


🎼Back Ground Music 》》》



To live life, you need training.Don't let your life go unnoticed with "a decent purpose, a lot of mistakes, and a wobbling will."
(人生を生きるには、修練が必要です。「まずまずの目的、過ち多き行為、ぐらぐらしている意志」のうちに人生をうやむやに過ごしてはなりません。)

Be independent, woman.Stand on your own feet.
(女性よ自立しなさい。自分の足で立ちなさい。)

Florence Nightingale
(フローレンス・ナイチンゲール)



〜時は戻り沖縄での戦争〜

* This content is just fiction!)
(※この内容はあくまでフィクションです!)

《…!…ここは…!…え…!?》

ゆいが次に目覚めたのは日本軍と米国の軍が沖縄の戦争をしていた場面であった。ゆいは歴史を学んでいたから多少の知識があった。終戦間近でその当時、沖縄で激しい戦争があったことを知っていた。

ダダダダダダダン!!

「うわぁぁ…!」

「ま…まずい…負傷だ!!…すぐに手当てを!搬送急げ」

《ひ…ひどい!!…こんな…くっ!…え、あれは洞穴?…!!こ、これは…なんてこと…(ゾワゾワ!)》

ゆいは思わず手を口に抑えた…そして全身に悪い鳥肌が出てきた。それはゆいが普段見ているものとは違う、恐ろしい光景が目に広がっていたからである。

「う…うぅ…」「あ…あぁあ!俺の腕が…!…腕が!!」「あ…あぁ死にたい〜」「く、ハァ…ハァ…苦しい!!」

「すぐに急いで!次の患者がくる!」

「はい!!」

《…日本ではかつて戦争があったのは学校で学びました…でもそれは字と映像、後は生き残った人の体験談でしかありませんでした。でも、実際は…こんな…(ポロポロ!)》

その現場はとても慌ただしく、この世の地獄のようにも思える光景であった。聞こえてくる唸り声、悲鳴、むせ返ってしまうような汗、血の生臭い匂い。そんな壮絶な現場で次々と負傷してくる兵士が運ばれてくる。中には目を背けたくなる光景まである。ゆいはその現場を見て思わず耐えきれず涙を流していた。すると、一人の女学生の声が聞こえた。

「誰か!!包帯持っていない!?こちらの方は足りなくなったわ!」

「フネ!」これ使って!!」

「ヨネ…ありがとう!」

《…!フネ…あの人が…フネおばあちゃん…若い時はこんな女性の方だったのですね…あの時は本当にお世話になりました…そしてあの人が…ヨネさん…》

ゆいはその様子を見ていた。その中で激痛で暴れていた兵士が学徒隊のメンバーの一人に手を挙げてしまった光景を目にした。

「うぉぉォォ!!」(ブンブン!)

「…くっ…危ない!」(サッ!)

《あ!?危ないです!!…でもそれだけ抵抗するとは…とてつもない苦痛だったのでしょう…兵士の方…なんてかわいそうに…!…戦争とは…本当に残酷です…この光景を見て思います…》

「だ!大丈夫!?」

「…!いつっつ!…私のことはいいから兵士を優先して!!」

「…分かった!」

《…くっ!記憶の中なので介入出来ない…私は今すぐにでもこの現場を手伝えれたらと…昔は病弱で足手まといなのに…今は無くなり、もう…足手まといなんかではないのに…(ポタポタ!)》

「おい!!防空壕まで物資を取りに誰か行ってくれないか!?そろそろ行かないと、包帯、薬品が切れてしまう!!」

「!!」

《物資まで不足するなんて…それだけ負傷者の数が多いのですね…でも…誰が…》

「私が行きます!!」

「そうか!だが、もう一人誰か行けるか!?」

「フネが行くなら私も行きます!!」

「ヨネ…ありがとう。」

《…!ヨネさん…そうですか。そういえばフネおばあちゃんはヨネさんと幼なじみと言っていましたね…だから、一緒に…》

そう言って二人は洞穴から外に出た。だが外は発砲音の飛び交う戦場であった。上になれば戦闘機からの発砲も免れない。それらに細心の注意を払い、フネとヨネはひたすら道を歩いていく。

「どこを向いても発砲音だらけ…四方八方で気を配らないとね…」

「ええ。でも久しぶりに外の空気を吸えて、少し落ち着いた。」

「ヨネちゃん…もうこんな時にそれ言われたんば気が抜けるからやめなしてよ〜」

《…フネおばあちゃんとヨネさん、こんな時でも仲が良いですね…流石幼なじみといったようですね。…!あ、あれは…米軍!?》

Stop with the women there! !!
(そこの女共止まれ!!)

「「!!」」

《フネおばあちゃん!!ヨネさん!!》

ダーン!

「…oh…shit!!」
(く、くそ!!)

「「…え?」」

「お前達!!何をボサッとしている!早く逃げるんだ!!」

「「!!」」

《に…日本兵の方…若いですね…フネおばあちゃんとヨネさんと同じくらいの年の方ですね…あの若い兵士が二人を助けてくれたんですね…でも…フネおばあちゃんの話しを聞く限り…ヨネさんは…》

「…行こうヨネ!あの人の頑張り、無駄にしてはいけない!!」

「そうだね!…急ごう!」

〜物資のある防空壕〜

「「物資を補充にきました!」」(ビシッ!)

「ご苦労!無事に持ち帰ることを期待する!」(ビシッ!)

「「はいっ!」」

《無事に着いたようですね…でもここから帰るのが大変でしょうね…》

二人は約三時間後、やっとのことで防空壕まで辿り着き物資を持っていくことに成功した。そして帰路へと戻っていく。

「無事に戻るわよ。ヨネ。」

「うん、フネ!って…!!ヨネ…あれ…!?」

「え?…っ!!」

《!!い、いやあぁぁ…!!…こんなことって…!くっ!!…ひどい…!》

帰り道に、二人は衝撃的なものが帰路に落ちていたのを発見する。それは敗れた日本兵士の亡骸であった。腕や足、そして首まで分けて落ちていたのを発見する。あまりに衝撃なものを見たせいか、二人は気分を悪くする。そしてそれを見たゆいも思わず悲鳴を上げる。

「…ひどいわね…ここまでするなんて…戦争ってのは…人をこんなにしてまで…そこまでして…!」(ギリギリ!)

「…フネ…」

フネは怒り狂っていた。この惨状を起こしてまでそこまで血の争いの戦争をしたいのかと、人の命を預かる自分たち看護をする者に対し、冒涜ともいえるものまで伝わってきたようにもフネは思っていた。だが今更気にしても仕方ない。今は物資をなんとしてでも届けないとと思いとどまり、フネはふただび歩きだす。

「…先を急ぎましょう。早く戻らないと、さらに犠牲者は出てくるわ!!」(ザッザッ!)

「…うん行こう。早く!」

《フネおばあちゃん…いえ…フネさん…!(ギュッ!)》

拠点へと戻っていた中。すると頭上から戦闘機の音が聞こえてきた。

ブォーーーン!!

「!!ヨネ隠れて!!」

「!!」

二人は草むらへと身を隠し、戦闘機が過ぎ去るのを待った。運よく敵には気づかれなかったのか、発砲されることなく、戦闘機は過ぎ去っていった。過ぎたのを確認したのか、二人は顔を上げた。

「はぁ〜びっくりした。」

「でも運良く助かったね。さあ早く行こ。また見つかったら次はないかもしれない。」

「…そうだね行こう。」

そう言って二人は警戒しながら拠点へと戻っていく。するとやっと拠点が見えてきていた。

「ヨネ着いたよ!」

「ええ、やっと着い…!!」

ダーーン!

「え…!…!」

すると、どこかの流れ弾なのか、ヨネの頭を銃弾が貫いた。その拍子にヨネは無惨にも倒れてしまった。それを見てフネはすぐにヨネに歩み寄った。

「…あ!…ああ…!…ヨネ!!?…しっかりして!!」

《ヨネさん!!》

「…ご…ごめんね…フネ…ヘマしちゃった。もう私はいいから…早く物資を…」

「で、でも!」

「あなた…は私の分ま…頼んだ…よ…」

《ヨネさん!!あ…ああ…!フネさんから聞いているとはいえ…やはり…涙が…あぁ…ああ…(ポタポタ!)》

ヨネは絶命した。フネは苦しくなり、涙を流した。幼なじみの子をこの戦争で奪われた事を…とても絶望してしまった。だが、言いつけ通りに前を向き、物資を拠点まで持ち帰ることに成功し、兵士長に報告した。

「よくやった。…ヨネのことは残念だったな…」

「…はい。」

「だが落ち込んでいる場合ではないぞ!さらに兵士が運ばれてくるのだ。彼女の為にも尽力を尽くせ!」

「はい!」

「おい!!次の運ばれたぞ!手当てを頼む!!」

「はい!すぐ行きます!!」

《フネさん、諦めないで…ヨネさんの分まで…!…頑張ってください!》

フネは気持ちを切り替え、負傷者の兵士の救護をする。すると負傷した兵士はどこかで見た顔をしていた。

「あ、あなたは!?」

「…ああ、君学徒隊だったのか…よく無事だったな…もう一人の子は…」

「動かないで!すぐに処置するから!!」

《この人は確かあの時、フネさんとヨネさんを守ってくれた…あの若い兵士さん…》

「すまないな…うぅ…!!」

「あなただけは絶対死なせたくない!!必ず生きてもらいます!!」

《フネさん、頑張って!どうかその人を救ってください!》

〜その日の夜〜

「…そうか、もう一人の子…ヨネちゃんは亡くなったのか…」

「…はい…流れ玉に巻き込まれ、頭を貫かれて…」

「…そうか。それは気の毒だったな…」

すると若い兵士は、気を紛らわそうと、フネの頭を優しく撫で、そして優しく抱き寄せた。だがその兵士の手はとても震えていた。

「…なっ!?…え?」

《へ、兵隊さん!?》

「こればかりは…同情する。私も今日で部隊に所属していた同志とも呼べる戦友を何人も失った。私は仇を打とうと、米国の兵士の前に出てこの様なのだ…この怪我を負って死んだのではないかとも思った…だがそれを君が手厚く処置を施し、助けてくれた…感謝する。」

「……はい!」(ギュッ!)

フネはつくづく思った。戦争で人が失っていき、血を流して別れを経験して辛い思いをするもの達、そして看護の技術を学び、負傷した人たちを手厚く看病する慈悲の心を持って行うたびに、命の尊さをこの戦争でフネは学び実感した。だがそれと比例して知るたびにフネは涙を流していた。

「う…うぅ…!」

「今は泣くな…誰しも、泣きたい気持ちを堪えているんだ。泣く時は…我々が勝利した時でしかない。前を向くんだ。後ろ向きの気持ちでは君の友人も顔向け出来んだろう」

「…そうですよね…」

「それにこれは、個人的なことだが…私は君を守りたい。あの時君と初めて会って本能的に助けたいと…思えたのだ…!」

「…え!?///」

「…君名前は?」

「…フネと言います///」

「…いい名だ…私は…修一」

《…こんな時に不謹慎かもしれませんがこれがフネさんの人生初めての告白を受けたのかもしれませんね…お若い兵士さんの名前は修一という方だったのですね。》

〜一夜を明かし翌日〜

🎼Back Ground Music 》》》



「…!え!!学徒隊が…解散!?」

どうやら戦局は不利になり、日本軍は撤退し、学徒隊も解散を余儀なくされた。上官は自分の身は自分での一点張りであった。すると、米国の足跡がこちら側に近づき、攻めていることに気付いた。そして瓶を穴の中に投入され、あちこちに煙が立ち込めた。

「まずい!毒ガスだ!すぐに退避しろ!」

「…く、苦しい!!」「!!」「あああ!」

《ああっ!このままではみんなが…!!》

「こっちだ!早く出るんだ!!」

兵士の修一は、フネ、その他の学徒隊メンバーを洞穴の外へと誘導する。そして、こう言い放った。

「君達は無事に生き残れ!私が奴らを引き付ける!君たちは私を見ずに走り、逃げ切るのだ!!」

「そ、そんな…一緒に逃げましょう修一さん!!!」

「…健闘を祈る!!」(ビシッ!)

(フワァーッ!!!)

《な、また!?…頭の中に何が…》

ゆいは再び頭の中に何かが入り込んでくる。すると今度はフネの体験した過去の出来事が再生された。

〜時は流れ、広島のある古民家〜

《あれ、ここは古民家…誰かの家…ん?表札に三橋…修一、フネ…って!?…まさか…!》

「…というのが私の昔の話だよ。」

《フネさん!?…よかった無事!…ってそういえばこの先でお会いするんでしたよね…あはは…となるとあの修一さんも…無事だったんですね…!》

「ヘぇ〜おかんすごく苦労したんだね〜!

「ああ、そうさ。あのあと偶然だったね〜。この街に来て、かつて日本海軍のある戦艦に乗っていたおとさんと結婚し、その名前がね…そのとき助けてくれた人と一緒でね…でもあの戦争で逝ってしまったよ…思わず運命と思った…あの人のおかげで私はこうして生きていると言っても過言ではないね〜」

《…そうでしたか…修一さんはあの時…》

「ふ〜ん…よーし決めた!」

「ん?どうしたって言うんだい?」

「私、オカンと同じ看護婦になる!そして今の時代で困っている人の手助けをするんだ〜」(二コッ!)

「…そうかい…まあ別に止めはしないよ。だけどね…命を粗末にするようなことしたらただではおかんよ!」

「わかっているよ〜!絶対いい看護婦になるから!」

《…そうですか、フネさんの家族はみんな看護関係で!…あれ…?…でも…どこかで…三橋…》

「おう。お母さん今帰った。」

「あらおかえり、あなた!…仕事はどう?」

「戦争を終えてから、もう銃弾に打たれることもなく、地道にやっているよ。で仲良く話していたが、何を話していた?」

「この子が私とおんなじで看護婦になるっていってね。聞かないの!」

「ほぉ〜看護婦か〜」

「うんおとんさん!…どうかな?」

「いいんじゃあないか?今の歳で目指すものがあるならいい事だ。だが大変な仕事だぞ!しっかり勉強するんだぞ!いいか!?」

「はい!」

「全くこの子ったら返事はいいんだから〜」

「はっはっは。いい事だ。さて飯にするか!」

すると三橋家は一家団欒しようと夕食の準備を進めようとしていた。すると三橋父はこう振り返っていた。

(…今思えばフネと出会い、こうして家族ができたのも、あの戦艦榛名に乗り組んでいたおかげのようにも思う。あの戦場の中、私は負傷もせず、なんとかここまで生き残れた。戦後にはここ広島に原爆が落とされ、復興と同時に榛名も解体され、ここ広島の復興資源として使われている。…今思えば私はあの戦艦に何かしらの縁があるのやもしれんな…それにフネにも昔沖縄で私と同じ名前の兵士に助けられ、その兵士が米軍の身代わりになってフネを逃してくれた。今この時間の出会いは一生モノかもしれないな…大事にしたいモノだ。)

《…そうですか…こんな立派な人がいる家庭で生まれる人…ふふっ三橋…なんだかお兄ちゃんの事を思い出しますね…》

〜そして数年後〜

フネの娘は20代後半になり、看護師になっていた。その時にある男性と結婚し、子供が生まれた。その子供は娘は宗一郎と名付けた。最初はうまくいった家庭ではあったがその十年後…

「あなた!っちょっと!いい加減に!」(ビクッ!)

「うるさい!!お前なんかに俺の何が!!」(パシッ!)

《ひ…ひどいです。……なんてことを!!…!あれは!?》

「……!!わーっ!」(ドン!)

「なっ宗一郎お前!」(ギロ!)

「父さん!母さんから離れろ!!嫌がってるじゃないか!!」(ギロッ!)

すると、宗一郎を名乗る子供は父親を強く睨みつけ、母親を守ろうとしていた。その様子に怯んだのか、宗一郎の父はこう訴えた。

「…子供に何がわかる!!?」(バッ!)

「!!」(グッ!!)

「宗ちゃん!!」

《宗一郎くん!!》

すると、宗一郎の母は宗一郎を強く抱きしめ、宗一郎を守ろうとしていた。

「か、母さん…」

「あんたは守る!何がなんでもね…さあ好きなだけ叩きなさいあなた!!気が済むまで!!」

「…チッ!!」(バタン!!)

宗一郎の父は舌打ちをし、ドアを強く叩きつけて出て行った。その様子を見て安堵したのか、宗一郎を強く抱きしめた。

「ごめんなさい、宗ちゃん…怖い思いをさせて。」

「大丈夫だよ母さん…それに僕決めたよ。将来どんな大人になりたいのか」

「…え?」

「僕、昔のフネばあちゃんや母さんの話を聞いて将来誰かの役に立つ仕事をしたいと思っていたんだ。いつかまたこの日本が困った時になれば、守れるようなそんな人に…だから安心してよ母さん!」

「うぅ…宗ちゃん…わかったわ。じゃあ今日はお祝いに広島焼きにしましょう。」

「わかった。じゃあ広島焼きの作り方教えてよ。僕も作りたくなった!」

「ふふふ。わかった。じゃあ一緒に作りましょうか!?」

「うん!一緒に食べよう!」

《宗一郎くん…えらいですね…お母さんを大切にしていたのですね!…え…広島焼き…!》

〜その八年後〜

「「防衛大学校生新入生諸君!君達を心から歓迎する!!」」

「はっ!」(ビシッ!)

《…!ここは…防衛大学校!!…ま、まさか宗一郎くんって…》

〜儀仗隊にて〜

「…!あっ!」ポロッ!「」クルクル 「」クルクル「」クルクル「」クルクル

「…!!」

三橋は儀仗隊でのある式典の予行練習で落銃の失態を起こしてしまい、しばらくして三橋は第四学年からの呼び出しを受ける。

「三橋!あの場面でガーランドを落銃させるとは何事だ!お前のやったことは大きい問題だぞ!!」

「…!!はい!!」

「腕立て100回用意!!」

「はい!1…2…!!」

《やっぱり…お兄ちゃん!!…そうだったんですね…お兄ちゃん…》

そして月日が重なり、三橋は、第二学年になり、部屋長の補佐とする小付に任命される。だがそこでも、果てしない苦労があった。

「三橋!!お前のとこの同部屋のやつの大山がプレス不備だったぞ!!二年にもなってあいつにどんなことを教えているんだ!!もう少し小付としての自覚をもて!!」

「はいっ!!」

(くそ、今度は大山…まずいな色々ありすぎて眠れていないのに…)

《…お兄ちゃん…くっ!頑張って…負けないで!》

「おい、三橋、あんまり無理するなよ!!」

「…わかっている。だが小付の僕がやらないと…あ…!」(ふらっ!)

バタン!!

「おい!?三橋!!…!!まずい!すごい熱だ!!医務室に運べ!」

《!!お兄ちゃん!!しっかりして!!…ああ…!お兄ちゃん…昔からこんなに苦労していたんですね…(ポロポロ!)》

ゆいは思った。宗一郎の過去を見て、自分が昔知り合った紳士的な振る舞いをする三橋にはその背景に壮絶な人生があったのだと。そしてそのほとんどは責任感の押し付けにも近い孤独にも思えてきたのだと。そして、あの時対面した時に三橋の孤独や寂しさを感じた理由が理解できたのだと。

「…あ!?」

「気がついたか三橋!!よかった。」

「ああ…だがうかつに休んではいけない。僕が行かないと…」

「そのことだが、もう俺たちがやっておいた」

「…え?」

「お前は何もかも背負い過ぎるんだよ!たまには俺たちがフォローしないとな〜」

「俺たちがいること忘れんなよ全く!…だからよたまには頼れって!仲間だろ俺たち!」

「…!…お前たち…ああ……ああ!」(ポロポロ!)

《…良かったですね…お兄ちゃん…》

〜そして開校祭2日目棒倒し〜

「蹴散らせ〜!!」

《…これは棒倒し!ああ!お兄ちゃんがいます!》

「…!」(グッ!なかなか前に進めないな…だが守るんだ。この棒は決して倒させない!ゆいちゃんやありささんのためにも…!!)

「うぉぉォォ!!」

「…!!大山!!」

「もらった〜!!」(ありささんやゆいちゃんのためにも絶対勝つんだ俺たちがな!!)

「グオ!?こいつ!!」

グラッ…バーーン!!

「!!」「!!」

ワーーー!!

「勝ったんだ俺たち!!なあ三橋!!」

「ああ!俺たちの勝利だ!!…見ているかなゆいちゃんそしてありささんも…」

「ああ。きっとな!」

《映像で見て結果を知っていましたが、実際ではこんなことになっていたのですね…とにかくおめでとうございます…お兄ちゃん…》

そして月日が経ち、三橋と大山は防衛大学校へと卒業し、幹部自衛官への道を歩むことになった。


・・・
・・


「……っ!」(フッ!)

「あ、気付きました?どうでしたか〜?」

「…はい…フネさん…とても壮絶な人生を歩まれているようですね…あの時私に簡単に死ぬなと言ったこと…少しだけわかったように思います。」

(そうですね〜♪それにゆいさん…心なしか、最初の時より少したくましくなっていますね〜今回の試練は無事に見事乗り越えたようですね)

「…くっフネさん…お兄ちゃん!」

ゆいは今回の第二の試練で辛い現実を生きてきたフネのことを知った。だがその辛い現実に負けることなく、気高い命の尊さを知り、自らの信念を持っていたこと。そして祖父や娘のことそして孫であった後に防衛大学校生の三橋のことを知った。その記憶を見ていくたびに、自分の生まれとは違い、一家一人一人苦労の連続であったこと。それでも彼らはお互いに助け合い自分達の傷を家族でかばい合う生活をし、今まで生きてきたこと。その家庭の事情を知り、ゆいの心にはどんな時でも諦めてはいけない不屈の闘志の意志を持つことができた。

「わかりました〜♪それではお待ちかねの最後の試練!!張り切って行ってみましょ〜う♪よっ!どんどんパフパフ〜♪」

「…!いよいよ最後ですね…」

「はい♪いよいよです〜♪まああなたのような世間知らずで温室で育った人はすぐに根を上げてギブアップするものと思いましたがね♪」

(…この導き人のオロアって子…腹黒いですね…)

「はい♪よく言われます〜!別に言われても結構ですよ〜♪」

「…はぁ〜っ……さて…そろそろ…」

ゆいは最後の試練に挑もうとする。最初の試練と先程受けた試験を見て思う。今度のはおそらく自分の中で重要な試練であることを思い、最後の光をじっと見る。

・・・
・・


 



B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?



「では行きます!」

「は〜い!では…!あら…おっとっとっ…!」(ふら〜!)

「あっ!またそれですか!?」(ダキッ!)

オロアはフラフラしてバランスを崩し、すかさずゆいはオロアの身体を今度は素早く抱きしめる。するとオロアは笑みを浮かべていた。

「…ゆいさん…なかなかふくよか〜な身体していますね〜♪特にこことか特に…!」(モミ!)

「…え!えぇっ!?あの、こ、こんな時に何を…!?///」(かぁ〜っ!)

「…油断しましたね〜♪…ド〜ン!!」(ニヤリ! トン!)

「…え…?…!?あ〜れ〜!!」(ビューン!)

「いってらっしゃ〜い♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)

「…あの〜!…毎度不意打ちは!…あ…」(シュッ!)

導き人はゆいの豊満な部位を触り、不意打ちして突き飛ばしてそのまま現世の一部の光の中へと消えていった。それを見守る導き人のオロアはゆいに対し、思っていた。

(さ〜ていよいよ最後の試練。あなたは今度どんな体験をしていくのでしょうか…まあ不意打ちとはいえ、あんな豊満なもの持っていたら【paradiso】に行った時、悪徳な雇用者に騙されるかもしれませんね…もしその時は…ロマンチックに誰か頼りがいのある男の人に助けてもらってくださいね〜♪)


🎼Back Ground Music 》》》



People punish you for your virtues and forgive you for your mistakes.
(人々はあなたの美徳によってあなたを罰し、あなたの過ちによってあなたを許す。)

There is also a high-ranking charity that behaves like malicious intent on the table.
(表にはさながら悪意のごとく振舞う、気位の高い慈愛もある。)

Friedrich Wilhelm Nietzsche
(フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ)


〜あるオフィス〜

《ん?…ここは…あれ!?会社!?》

「おい西野くん!?これはどいうことかね!?さっき取引先の方から苦情があったんだぞ!?」

「すみませんすぐに修正を!」

「ああ、もういいよ!全く給料を昇給した上にこれではね…」

「すみませんでした…!」

《…!お、お姉ちゃん…ってことはこれ…お姉ちゃんの記憶…》

〜休憩室〜

prrrr!

ありさ:【あ、もしもし】

母:【ああ、ありさ、あんた大丈夫かい?無理してない?】

ありさ:【私は大丈夫!それよりゆいは?】

母:【あの子なら問題ないわ。隣に仲の良いまだ6歳のあかりって小さい子が一緒に入院してからこの半年間元気そうよ!】

ありさ:【そ、そうなんだ。ゆいが元気ならそれで良い。】

母:【ああ、けどありさ。】

あの〜西野さん、課長が呼んでいます。

ありさ:【…ああお母さんごめん切るね!!】

母:【あっ!ありさ…忙しそうだね…】

ありさは課長に何か重要そうな話なので、会議室に行き、こう問いかけられる。

「突然だが西野くんにはこれから海外出張に行ってもらう。約一年間だ。」

「!!」

《え…海外出張…え…嘘…お姉ちゃん…!》

「もし辞退すればどうなんですか…」

「断るなら明日から来なくて良いよ。だが行ってくれればそれ相応の地位と報酬を約束しよう…どうかね!?」

「…!!期限はいつまでですか!?いきなりすぎて今は心の整理がつきませんので!」

「…明日までに返事をくれたらいい。そして出発は明後日!…では頼んだよ!」

「…!!」(ググッ!)

課長が下したのはいわゆる左遷とも言えるものであった。会社の利益のために、部下を使い尽くすつもりだと。そしてありさは涙が出た。

「うぅ…!」(私…ごめんねお父さん、お母さん、おばあさま…そして…ゆい…!)

《…知らなかった…そんなことが…ごめんそんなことも知らずにあんなことを…本当にごめんなさいお姉ちゃん!!》

〜その夜〜

ありさ:【あ、もしもし】

母:【ああ。ありさ、あんた?どうしたの?】

ありさ:【私、海外出張になったの…約一年間はここに戻ってこれないの…】

母:【…え!…それ、どいうことなの!?】

ありさ:【ごめんなさい。断れば私…解雇されるの…】

母:【ああ、でもゆいのことどうするの…!?あの子、あなたが来てくれなくて寂しそうなのよ…】

ありさ:【…わかっているけど!!…フライトは明後日なの…ごめんなさい…本当にごめんなさい!…でもそれ相応の報酬はもらえるらしいから…それでゆいのことよろしくね!後、ゆいには内緒にしてて!】

母:【あっ…!?ありさ!!ありさ!!??】

ツーッツーッ!

「…ごめんね…みんな…行ってきます…」

・・・
・・


〜海外のある企業日本支部〜

「ゆいさんこちらお願いね」

「わかりました。」

「ありささん私外回りに行ってきます。」

「はい。お気をつけて」

(これを私一人で…でもできないことはないわね…)

ありさはめぐるましいスピードで多忙を極めた。ただ幸いだったのは社員が日本人で固まっていたからか。だがそれでも海外にいることに変わりがない。

「…くっ思ったより仕事が進まない…」

〜日本竹内総合病院・夜〜

「お姉ちゃん…なんで…なんで来てくれないの…うぅ…グス!」

(…ゆいちゃん…今日も泣いてる…よっぽどお姉ちゃんに会いたいんだね…)

《…あかりちゃん…やはり聞いていましたか…》

〜翌日〜

「ねえお母さん…お姉ちゃん大丈夫なの?」

「え!?…ええ。仕事でしばらく来れないって」

「…そうですか。」(そればかりですね…お姉ちゃんそんなに忙しいんですかね…)

《うぅ…自分で思ったことですが…やっぱり重く感じますね…仕方ないことなのに…》

〜海外のある企業日本支部〜

あれから半年の歳月が過ぎた。慣れない海外での出張は残り半年が来てからありさの体調は不良になる日が続いた。それでもありさは働いた。

「…くっ!」

「だ、大丈夫ですか西野さん!?休んだほうが…」

「大丈夫…大丈夫だから…あなた達は仕事に戻って!」

「は、はい。」

(まだ倒れてなるもんですか…まだ、あと半年であの子に顔を見せに行ける…必ず…やり遂げるから…待っててゆい、みんな…)

《お姉ちゃん…うぅ…うぅ…私は…私は…》

〜日本竹内総合病院〜

「…そっか。じゃあまたしばらく来月からお別れですね」

「うん。でも心配しないで…また天気の良い日に庭のベンチで会おうよ。」

「…そうですね…わかりました!」

あかりの体調が良好ではないからか、病室は個室対応となり、別の病室となった。それを聞きしばしのお別れをゆいは言った。。

「でも〜私ゆいちゃんのお姉ちゃん見たかったな〜ね、どんな人?」

「お姉ちゃんは優しい人ですよ。昔から…でも今は仕事が忙しくて…」

「ふ〜んそうなんだ…でも寂しいね、しばらく会いにきてくれなくて…」

「…仕方ないんですよ仕事ですから…」(…お姉ちゃん…今どうしてるの…どうして…来てくれないの…連絡の一つくらいしてくれたら良いのに!!)

《…私はこの時すごく寂しい気持ちでしたね…今思えば、お姉ちゃんのことをちゃんと見えていなかった…無理して連絡もできたけど…お姉ちゃんを心配させたくなかったからかな…》

〜海外のある企業日本支部〜

「ハァ…ハァ…あと一ヶ月…」

「…西野さん…あれから休んでいなさそうだね」

「…はい。あれから…睡眠を削っているようです。」

「……そうか…」

〜休憩室〜

「少し休憩ね…」

「こちらよろしいですか?」

「…あ。はいどうぞ。」

ありさは誰かに声をかけられたので、かけられた方を見る。すると40代の日本人女性であった。

「…あなた、昼には早退しなさい。そしてゆっくり休みなさい。」

「…え?」

「いや別にあなたの評価が低いわけではないのです。ただ…あなたの顔色を見て分かるのですよ…とても疲れ切った顔をしている。そのままだと…危ないですよ…」

「…!!」(ガタン!)

ありさは立ち上がった。そして言った相手を睨みつける。

「あなたに…何が…!?私の何がわかると…」

「…わかりますよ…私にも一人、亡くなった人がいました。そんな疲れ切った顔をしていたわけではありませんが…もし突然死んでしまったら…残った家族の苦しみは計り知れないのですよ。」

「…!」

《だ、誰でしょうか…この人は一体…!?》

「あなた…家族は?」

「…父、母、祖母、そして今入院中の妹がいます…私は妹の病気を治すために…ここで仕事をしています。」

「……」

すると、その女性は、何かを察したのか、ありさにこう伝えた。

「それで、あなたは家族のことを本当に大切にしていますか?」

「…!!…突然何を!?」

「あなたがここに来た覚悟があることはわかっていました。しかし…もし、あなたがその妹さんが入院しているというのに仕事に多忙のあまり、連絡一つもよこさなければ心配するでしょう…もしくはあなたの独断で来たとすれば…さぞ、家族は後悔するでしょう。」

「…!!あなたは一体…」

「…話は終わりです…どうぞ仕事を続けるなり、休むなり自由にしてください。ただし、私は伝えることは伝えましたので…それでは失礼します。」(タッタッタ!)

「…くっ…何なんですか…一体あの人…」

《…あの人…お姉ちゃんのこと気を遣って…》

・・・
・・



「…ん?ああフィルさん!」

「…もうその名前はよしてと…まあ嫌いではないです。私の旦那の名前でもありますし…」(タッタッタ…)

「あぁ…フィルさん…相変わらずだな…」「ああ、そりゃあまだ19歳にもなる一人息子を最近亡くしているんだからな〜」

(……ロベル…あなたが亡くなってもう半年……うぅ…はっ!いけない…仕事しなくちゃ…)

「…確かにあの人の言うとおり…少し身体がフラフラしていますね…やむを得ませんか…」

その日、ありさは体調不良で早退した。だがさっき会った人の言葉が気になったのか、あまり休めなかった。しかし何かを伝えられたのは確かである。

〜海外出張最終日〜

「ついに今日で終わり…ですね」

「ありささん、一年間お疲れ様。今日はもう休んで明日の帰国の準備をしなさい。君の今後の活躍を期待しているよ。」

「…はい…」(空港はとりあえず広島行きにして直行で竹内総合病院に行かなきゃ…待っててね…ゆい…)

《!お姉ちゃん…そっか直接来てくれたんだね…でも…ごめんなさい…私…わたし…(ポロポロ!)》

〜帰国後広島空港〜

(やっとついた…一年半ぶりね…あの人の言うとおり、寂しい思いしてるよね…ゆい…待ってて)

《そう…ここから私…お姉ちゃんに…こんなに苦労してたのに…私もあかりちゃんのことがあって、分かってあげられなくてあんなことを!!(ポロポロ)》

〜竹内総合病院〜

「やぁ…ゆい…来たよ…!!…ゆい!?どうしたの!!…あなた…」

(…お姉ちゃん…)

《…ごめんなさい本当にごめんなさいお姉ちゃん!》

「ご飯食べてないんだね…食べる?」

「…いらないです…」

「そう言わずに…ほら…」

「…いいんです…!」

「食べないと元気が出ないの!食べなさい!!」

「……!!…いらないっていっているじゃあないですか!!!!」(ぱしっ!!)

「ちょ!ゆい!?どうしたっていうの!?」

「黙っていてください!!大体なんなんですか!?なんで今の一年過ぎになってやってくるんですか!!??本当に仕事なんですか!!??私の病気を治すとかいってホントは私のことを放っておいて遊んでいたんでしょう!?だから来てくれなかったんですよね!!??」

《…!もうやめてください…もう…これ以上お姉ちゃんを…》

「……!!…ゆい…私は…本当に!…本当に…!!!あなたの病気を治すために……ねぇいったい何があったっていうの、教えなさい!ゆい!!」

「もう言うことはありません!!…ここは病院です!!静かにしてすぐに出ていってください!!お姉ちゃんなんか、いや…あなたなんか来て欲しくなかった!!!」

「…!!…ゆい…私は…あなたのために…」

「……仕事をしていたの!!!」(パシーーン!!)

「………!」

「……あ!…あぁ…うっ…ごほっ!!けほっ…けほっ…くっ…はぁ…はぁ…」(ドバッ!)

バターーン!

「…!!お、お姉ちゃん!!!」

《…あの時はさすがに冷や汗をかきました。私の発言で…お姉ちゃんを傷つけて、そして私も傷ついていて…こんなことになり…あのお姉ちゃんのビンタは私への罰ですね…》

【手術中】

「先生!?こ、これは!?」「ああ、胃腸にひどい潰瘍ができている。」「おそらくよほど無理をしていたのでしょう…」「過剰な過労とストレスが考えられるな…とにかく患者を治すのだ!!」

「先生!!」「ありさは!?ありさは大丈夫なんですか!?」

「まだ何とも言えません。ただ…彼女よほど無理をしていたのでしょう…おそらく過剰な過労とストレスですね…しばらくちゃんとした睡眠も取れていない状態だったのでしょう…」

「…!!…ありさ…お前」「ああ…ありさ…あなたは…何でそんな無茶を…」

手術室前で悲しみに明け暮れる西野家の父母、そして悲しみにくれるのは両親だけではなかった。

(うぅ…ごめん…本当にごめんなさい!…お姉ちゃん…私…私のせいで…!!!)

《…あの時の私、今までの不満をぶつけてそれで、自分が悪いと思い込んでいたんですよね…今思えば…くっ…うぅ…!!》

〜翌日・ありさの病室〜

「…お姉ちゃん…ごめんね…」

ゆいはその時ありさの手に触った。その手にはとてつもない苦労があったような疲れ切った手をしていた。いつもの温かい手ではなく、冷たい手をしていた。

《…くっ!》

(フワァーッ!!!)

《な!?…今度はお姉ちゃんの記憶…》

ゆいは再び頭の中に何かが入り込んでくる。すると今度はありさの出来事が再生された。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜Lisaより・一番の宝物 ~Yui final ver.

〜時は戻りゆい6歳時の記憶〜

「ただいま戻りました。」

「あ、お姉ちゃんおかえり。」(ダキッ!)

「あ、ゆい…もうこの子はホント…」(なでなで!)

「えへへ…」(二コッ)

《あれは6歳の頃の私…そういえばこの頃からよく抱きついていましたね。いつもお姉ちゃんに…あの温かみが忘れなくて…よく抱いていましたね》

「ゆい!散歩に行きましょうか?」

「うん!」

「あ、ゆい」「な〜にお姉ちゃん?」

「ほらあれ!」「あ〜猫ちゃん、しかも二匹いますね」

「雌だから姉妹ですね」(二コッ!)「私たちと同じですね〜」(二コッ!)

《私があの猫ちゃん達に近寄ってすぐ逃げたんですよね〜…少しショックでしたね…》

〜その夜〜

「zzz」

「ふふ…よく寝てるわ…久しぶりに私と散歩したのが嬉しかったのね」(ギュッ!)

「zzz」(二コッ!)

《…寝るまでのはよく横にお姉ちゃんがついていたんですよね…おそらくいなくなって寂しい思いをしていたのはおそらくこの時からなんでしょうね…》

〜ゆい8歳の時〜

「めん!」(ブン!)「どう!」(ブン!)

「ゆい……頑張っていますね」「本当に、身体が弱いのによくここまで頑張りますね…」

「めん…っあ…」(スポッ!)

「」「」

・・・
・・


《あの時は手が滑って、薙刀が飛んでしまいましたね。まあ何もなくて良かったですが…ごめんなさい…》

〜ゆい11歳の時〜

「あ、ゆい見て!」

「ん!?どうしたのお姉ちゃん?」

「三橋さんからだよほら!?卒業生で首席卒業って書いてある!!」

「!?すごい!!お兄ちゃんすごいな〜メール送ってくれるなんて嬉しいよ…あそうだ!」(カシャ!)

「…え!?ゆい!?何するの!?」

「ふふふ!送信っと!」

「ちょ、ちょっと見せなさい!」

《確かその時、私とお姉ちゃんを写して、メールにおめでとうって打ったんですよね…》

「もうゆい〜」

ピロリン♪

「…え!?届いてきた!!」

「うわ〜見せて見せて〜!」

「…ヘぇ〜ほら見て!」

「わ〜お兄ちゃんと大山さんと他の人たちとで何か食べにいってるね〜」

ピロリン♪

「ん?大山さんからだわ…え〜と元気そうで何よりです!!もしもの時はあなた達を全力でお守りします!どうかこれからもよろしくお願いします!って!」

ピロリン♪

「あ。三橋さんだわ。ありがとう。久しぶりに二人の顔を見て安心した。これからもよろしく。…あの人らしいですね」

「お姉ちゃん、いつになったら三橋さんにプロポーズするの?」

「…え!?///」(ドキッ!)

「だってドラマとかでも好きな人に男の人に女の人が告白してましたしそろそろお姉ちゃんも…むぐぐ!!」(ジタバタ!!)

「うふふ…ませていますね〜もう誰に似たのかしらね〜」(ニコニコ!ギュッ!)

「ん〜!!」(ジタバタ!!)

《でもお姉ちゃんとお似合いなのは…やっぱりお兄ちゃんしかいませんね…》

〜ゆい12歳の時〜

【卒業式】

「ゆいちゃん。卒業おめでとう!」「ゆい。おめでとう!」「ゆい…」「ゆい!」

「みんな…ありがとう…グスッ!」

「次は中学生か〜早いものですね〜」

「本当に、あの小さくて身体が弱くてあまり元気ではなかったのにここまで大きくなってくれて…」

「ゆい…本当におめでとう!」

「おめでとう…」

「…うん…おじいちゃんも見てるのかな〜?」

「ええ、きっと見ていますよ〜ね!」

「お母さん…誰に言ってるの?」

「おほほ!」

《おばあちゃんには、何か私たちには見えていないものが見えるのかもしれませんね…》

〜ゆい13歳〜

ゆい:【お姉ちゃん、仕事どう?】

ありさ:【うん結構忙しいね。でも元気よ!】

ゆい:【なんかお姉ちゃん、少し崩すように話しますね】

ありさ【仕事上ではあんまり使わないようになって崩すようになってね。】

ゆい:【ふふっ!でもお姉ちゃん…楽しそう!】

ありさ:【…ありがとう!それじゃあ!】

ゆい:【うん。また…】

「…でも…お姉ちゃんが東京に行って…私が一人になって、少し寂しいですね…いやいや…いつまでもお姉ちゃん子ではいけません!…私もしっかりしないと!」

《…でもやっぱり…この頃からお姉ちゃんがいなくて…寂しくて…うぅ…グスッ!》

〜時は戻りゆいが15歳の時〜

ゆい【お姉ちゃん!私A判定取ったよ】

ありさ:【あらA判定だったの。それなら志望の有名女子校に行けそうね!良かったじゃないゆい!通院しながらでもすごいわ】

ゆい【はい!】

「あら〜今日はうんと美味しいものを作りましょうかね〜」

「もうお母さん!張り切りすぎて体痛めないでくださいね」

「…大丈夫だよ…!しっかり作ってあげますから!」

「…おばあちゃん。ありがとう」(二コッ!)

〜そして受験日〜

「受験票を持ちましたか?」

「はい!ここに!」

「では気をつけてな!」「いってらっしゃいゆい!」「受験頑張ってくださいね!」

「うん!行ってきます…!」(行ってくるね…お姉ちゃん!)

〜ありさの会社〜

(あ、そうか今日は受験か〜ゆい…頑張っているかな〜)

「ありささん。これ良いですか?」

「あ、はい!」

〜合格発表当日〜

「え〜と1011…!!あ、あった、ありました!」

「おめでとうゆい!!」「やったな!!」「おめでとうゆいちゃん!!」

「みんなありがとう!!…あそうだお姉ちゃんにも!!」

〜休憩室〜

「…♪…おめでとう…本当におめでとう…ゆい…!!!良かったね〜!!」(ギュッ!)

《お姉ちゃん…ありがとう…!!》

〜時は進み、ゆい18歳・ありさの病室〜

「…あ、あれ?ここは…病室?」(パチッ!)

《…目が覚めましたね…お姉ちゃん…おそらくさっきのはお姉ちゃんの見ていた夢…ってことで良いんでしょうね…》

「あ、西野さん!気がつかれましたか!?」

「あ〜よかった目が覚めて…ありささん、あれから一週間も眠り続けていましたから…疲れがあったのか、よっぽど睡眠が取れていなかったのでしょうね」

「えっ!?…そんなにですか…でもなんで私…あ、そうです!…ゆいは!?」

「ええ、少々お待ちを…ゆいさんどうぞ。」

「お、お姉ちゃん…!よかった…本当によかった!!…お姉ちゃん!!!」(ダキッ!)

「…わっ!!…ゆい…!ごめんね!…本当にごめんね!!あの時無理やりぶってしまって!…ゆい〜!!」(ポロポロ!)

「こちらこそごめんなさい!!…もういいの!私が悪かったの、間違えていたんですから!…お姉ちゃんが倒れた時は本当に心配しました!!…これは本当の気持ち…です!!…ああ…お姉ちゃん…!!」(ポロポロ!)

「心配かけたね…ゆい…もう大丈夫だから…あなたの言う通り…今になってあなたに会いにきて…ホントお姉ちゃん失格ね…!寂しい思いさせてごめんね…でもこんな私を許してくれて…ありがとう…!」(ポタポタ!)

「ううん……お姉ちゃんの身体…温かい…すごく安心します…やっぱり私…お姉ちゃんのこの温かみが好きです…」

「…ゆい…!」(ポタポタ!)( ギュッ!)

「…お姉ちゃん…!」(ポタポタ!( ギュッ!)

《…私たち…約何年ぶりにハグしたのでしょうね…ホントに…うぅ…お姉ちゃん…お姉ちゃん…!!!》

〜ありさの退院日〜

「ではそろそろ行きますね。しばらく休んだから仕事が溜まっていると思うから」

「気をつけてね。ほら…ゆい。ありさに何か行ってあげなさい。」

「……」

「どうしたゆい?」「ゆい?どうしたの?」「ゆいちゃん?」

「…お姉ちゃんもう無理しないでね!…私もできるだけ頑張るから…最期まで諦めないから…だから!」

「…ふふっ…分かった…元気にしておきなさいね!」(ダキッ!)

「…はい…!!」(二コッ!)

(((ニコッ!!)))

《ああ…やっぱり私は…こんなに家族に………愛されていたのでしょうね…私の病弱体質と病気のせいで、家族みんなが…すれ違うことがすごく多くて、喧嘩することだってあった…それでも私はこの人達を…愛していたんだ…本当に幸せだんたんですね…みんな…ありがとうございます…!》


・・・
・・


 



B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)

Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)

Rene Descartes
(ルネ・デカルト)

・・・
・・



「……っ!」(フッ!)

「あ、気付きました?どうでしたか〜?」

「…はい…私が寂しさを我慢できなくて…事情も知らずにお姉ちゃんに対してあんなひどいことを言ってしまいました。私の病弱体質や病気が原因で家族がバラバラになる時もありました。それでも私の家族はそれを温かい心で包んで許してくれました。私は今回の試練で、こんなにも温かい心で育ってきたのだと私は実感しました!」

「そうですか〜♪確かにゆいさん…心優しいところありますからね〜♪…慈愛かつ豊穣な心の持ち主の方かもしれませんね。とにかく最後の試練…無事に見事乗り越えたようですね〜♪」

ゆいは、最初の試練であかりの記憶から命の尊さ、そして日々を前向きに生きることの大切さを。次の試練でどんな時でも諦めてはいけない不屈の闘志の意志を、最後の試練で時に辛く、家族がバラバラになりそうな時でも支え合い、つながりがあればそれをつなぎとめ、暖かく抱擁する聖母の慈愛の心を知ることができた。そして、無事に三つの試練を乗り越えた。
br>「さ〜て、これであなたの三つの試練は全て乗り越えました!おめでとうございま〜す♪…そ・し・て…これを身に付けていただきま〜す♪」(サッ!)

「ん?何でしょうかこれ?…勲章ですか?」

ゆいはオロアに渡されたものを確認した。それは勲章であり、確認すると十字架のマークが刻まれ、下には【Specific dead】という文字が刻印されていた。

「これであなたも無事に死者から特定死者へとランクアップですね〜♪次は現世人を目指して頑張ってくださいね〜♪」

「特定死者?現世人?」

「特定死者は、わかりやすくいえば先ほど体験した三つの試練で、現世での行いを振り返り、何を学び、何を感じたのかを知り、その記憶と向き合い、試練を無事乗り越えたものに与えられるものです。階級は死者よりも上で、ユートピアの世界【paradiso】へ行くための試練を受けることができる資格の者といった立場ですね〜♪現世人とはユートピアの世界【paradiso】でのあなた達の種族の俗称となる名前です!…つまり今度は、その現世人の地位になるための試練を受けていただきま〜す♪」

「…なるほど【paradiso】の世界まで道は長いですね…」

試練を全て乗り越え、ゆい自身はこれでユートピアの世界に行けると安堵していた。しかし導き人オロアの返答は予想外のものだった。ユートピアの世界は思った以上に過酷な道だということをゆいは知った。

「ではでは…最初の三つの試練はあくまで準備段階です!あなたにはこれから最終試練に挑んでもらいますよ〜♪」(ニッコリ)

「…わかりました!!」

「最終試練会場はすぐそこです!ではついて来てくださ〜い♪」(ピューーッ♪)

「!!…相変わらず早いですね!」(タッタッタ)

ゆいは、神速の如く走り抜けるオロアを追いかける。そうしていくうちに一枚の扉が見えて来た。

「ここがその最終試練の扉で〜す♪」

「ここですか…大きな扉ですね…」

「ですがその前に後ろをご覧ください〜♪」(ビシッ!)

「ん?…!?な、なんですか…あれ!!」

導き人オロアが指を刺した方向を見ると、今まで眠っていた白い棺が天井にある満月に吸い込まれている。それはゆいだけのものではない。とてつもない数の棺が宙を舞い、螺旋状に満月の模様に吸い込まれていく。

「あれは一体…!?」

「あれは冥界の満月っていうもので、直接あの世とつながっています。中には私たちの言い分を無視して寝過ごしたものや、私のような導き人の試練に乗り越えられなかった人もいくつか混じっています♪」

「…では…私が知らず知らずのうちにあの棺の中で眠り続けていたり、あの試練を乗り越えていなければ…」

「連れて行かれ、あの世行きですよ〜♪あ〜!あとあれをご覧くださ〜い♪」

「え?……って!?あれは…人です!!何か黒い服を着た人に捕まって…浮いている…」

「あれは執行者です。どうやら私達の試練に乗り越えられず連行されたようですね!主に死者を平等に裁いてもらうために、今から閻魔大王の元へ行き、裁いてもらう途中のようですね〜♪ちなみに私達のことを毛嫌いしていて、執行者の部署はあなたたちの現世での言い方だとブラックな部署でもありますよ〜♪」

「そうですか…なんかかわいそうな方々ですね…」

「さて、本題に戻りまして…あなたは今回の試練を乗り越えて普通の死者から特定死者として認定されました!次の試練はいよいよ【paradiso】へと行くための重要な試練です!とても過酷な試練になりますが大丈夫でしょうか?」

「………」

ゆいはさっきの試練とここまでの経緯を思い返していた。おそらくこの試練を受けさせるからには自分の行く【paradiso】という世界は、ユートピアの世界とはかけ離れた反対のディストピアのようなものではないのかと思っている。だが行くからには、もう後戻りはしない。今はもう病弱体質はもうない。自分の力で、【paradiso】へ行き、誰かの手助けをするという目標を見出した…そしてこの言葉が、胸によぎった。

(私は…乗り越えて見せます。あの人たちから教わった。命の尊さと、どんな時でも諦めない意志を!)

「準備はできています…いつでもどうぞ!」

「はぁ〜い。では行きますよ〜…って〜ッ♪!!」(ゲシッ!)

ドゴーーーン!!

「」

導き人のオロアはその扉を思いっきり蹴り飛ばし、粉々にした。その光景に人とは思えぬ恐ろしい怪力を見たあまり、ゆいは驚愕した…

「あ、これ扉に見せかけた壁なので〜!では行きましょう〜♪」

「…私自身先程の試練で色々見た気になっていましたが…こんな光景は予想外でした…」

ゆいはオロアの後を追う…そして出た外の光景は信じられない非現実な光景が広がっていた。

「な、何ですか…!?ここは…雲の世界と言えばいいんでしょうか…!?」

そう…ゆいが見た景色はまるで昔、何か探し物をする本でみたことがあるファンタジー的で幻想的な雲の世界の光景が広がっていた。そしてこの世界で、ゆいは壮絶な逃走劇の戦いが幕が開けるーーー









《To Be Continued…→》



B. いいえ
第6話:プロローグ〜ゆい編 Part3 完読クリア!!
次の話へ進みますか?
A. はい。
B. いいえ。