GiorGiaNo

 
《Paradisoシリーズ〜導かれし七人の現世人の冒険譚》


A.:GiorGia 

〜第一章:白狼と誓いの儀礼刀〜


第12話:【R・P】社(追憶と命題)ギルド



【D島】のF街での死闘を乗り越え、【Hux・row】は【Beanne】の家で夜を明かす…そして【Hux・row】は浅い眠りに入り、夢の中へと───────




《Capitolo・1》
物語を開始しますか?

🎼Back Ground Music 》》》



Happiness is the meaning and goal of life, the ultimate purpose and aim of human existence.
(幸福は人生の意味および目標、人間存在の究極の目的であり狙いである。)

Everyone seeks wisdom by nature.
(すべての者は生まれながらに知恵を求める。)

Aristotelēs
(アリストテレス)



♪〜夏目友人帳より・ふるさとの匂い

〜【Hux・row】の夢の中〜

「…あれ、ここって…東京の渋谷か!?…でも何で!?…俺…確か【Paradiso】にいたんじゃあなかったか?……あ、そっか…俺、あの後ベアさんの家のソファーで寝てしまって…じゃあここは俺の…夢の中なのか…」

【Beanne】の部屋のソファーで浅い眠りの睡眠に入り、夢の中の世界にいた【Hux・row】は、現世の世界日本という国に存在する都市、東京の渋谷にいた。かつてここでゆいの実の姉である西野ありさと仕事をするはずであった街にひっそりと立ち尽くしていた。

「お〜い白狼!」

「ん?……あ!?」

するとそこに手を振って呼びかける者が姿を現した───────

「ち、千夜…千夜なのか!?」

それは【Hux・row】と親しい関係にあった千夜であった。二人は互いに両想いかつ愛しいと思える愛人の関係である。

「え!?…な、何よどうしたのよ白狼!突然…!?…今日は休みだから、一緒に久しぶりにデートしようってあなたから言って来たんじゃないの!!」

「…!!…ああ…ああ!…そうだったな!……!!」(ブワッ…)

(ダキッ…!)

「え!?…ちょっちょっと、どうしたのアンタ!?…どっか頭でも打ったの?///」

「…いや…何でもない…何でもないんだ…!!ただ…お前が無事で良かった…本当に良かった!!」

「ちょ、ちょっと…!!///」(テレテレ!)

夢の中とはいえ、愛しの人である千夜が現れ、思わず【Hux・row】は千夜に熱い抱擁を交わした。その光景をとても微笑ましく見ていた聖母のような清らかな女性は優しく二人に声を掛けてきた。

「うふふ。相変わらず二人共、熱くてお似合いのカップルだね!白狼くん!千夜ちゃん!」

「…え?…あ……!!に、西野さん!!」(二カッ!)「あ!西野さん!どうも、こんにちは!」(ぺこり!)

そこには、女性警備員として働くありさがそこにいた。その顔はとても穏やかで周りを明るく照らす温かい心に満ち溢れていた。その明るく優しい顔を見ていた【Hux・row】は思わず笑顔になり、元気に声をかける。千夜は律儀に頭を下げて挨拶をした。

「感謝してね〜白狼くん!♪今日の為に、私が代わりに勤務入ったんだから千夜ちゃんとしっかりデートを楽しんできてくださいね!」(ビシッ!)

「!!…はい!ありがとうございます!…あと…俺…西野さんにどうしても伝えたかったんです!!こんなこと、信じてくれないかもしれませんが、俺…!西野さんの妹のゆいちゃんに会うことができました!!…ゆいちゃん…病気もなくて…とても元気で…!…俺、必死になってあの子を守りました!……ですが、まだこの【Paradiso】の世界に来てからは【現世人】として認定を受けた彼女とはまだ会えていません!でも、必ず!あなたとの約束を…これからもゆいちゃんの事を守っていきますから…だから西野さんもお気をつけて頑張ってくださいっ!!」(ビシッ!ポロポロ!)

「……えっ…」

「ちょ、ちょっと白狼!?アンタ突然何言ってるの!?あ、ごめんなさい西野さん!…なんか今日の白狼、さっきからおかしくて…」

突然泣きながらありさの妹のゆいの近況報告をする【Hux・row】の様子に西野は何かを察したのか、ニッコリ微笑みを浮かべ、優しい声で感謝の意を述べるかのように話した。

「…ふふっ!ま〜た冗談を言って白狼くんったら…私はもう大丈夫♪!…でも元気付けようとしてくれたんだね…ありがとう!じゃあ仕事もあるし、私は行くわね!…あと…もしその冗談が本当だったら…ゆいのこと…お願いしておきますね。……じゃっ!これからも頼んだよ!白狼くん!」(ニコニコフリフリ〜!)

「…!…はい!」(ビシッ!)

「白狼〜!行くわよ〜!」(グイグイ!)

「え!?…ああ悪い悪い!」

「も〜うアンタ本当に西野さんの事が好きなのね〜!!……ハァ〜!これはうかうかしていたら西野さんに白狼が取られるな〜私も他の男考えとかないとな〜!」

「…だから仕事仲間だっての!…それに…西野さんには俺よりもきっといい人がいるよ。…それも…とても頼りがいのある人が!」

「…まあ確かに、西野さんって本当に優しくて美人よね〜!…あんなに美人だし、寄ってこない男の方がどうかしてるわよね…私も見習わないと!」

千夜はありさのことを特に嫌っている様子はなく、むしろ女性として敬愛するそぶりを見せていた。それを見て安心したのか、【Hux・row】は千夜を抱きしめながら話した。

「そうだな。それに…っ!…」(ポロッ!)

ギュッ!

「えっ!?し、白狼!?///…」(ドキドキ!)

「……!」

(…もう死んでしまって【Paradiso】に行っても俺にはお前がいるんだってことを…お前は…俺が愛した女だってことを。…俺は絶対に忘れない!…死んだ身だとしても…必ず…!)(ギュゥゥ!)

【Hux・row】は千夜を思いっきり抱きしめた。例え、自分が【Paradiso】で【現世人】という存在になり、現世で千夜と別れてしまったとしても、二人で過ごした時間は間違いなく本物である事を改めて実感する。

「ち、ちょっと白狼!!///こんなところで…!あ、そうだ折角だし、マスターの喫茶店に行かない!?…だから…はぁ〜…あ〜っ!!もういい加減離してっての!!///」(ブン!)

バキッ!!

「…ぐはッ!!…くぅ〜っ!!もろに入ったけど…はは、相変わらずいて〜な!!お前の手刀チョップ!…まったく…!そこは変わってないよな〜昔から!」

「…ふん!!///」(テレテレ///)

そしてあまりにしつこいのか千夜が久しぶりの直伝の手刀チョップをお見舞いする。それはクリーンヒットしたが【Hux・row】は心なしか懐かしそうに頭を抑えて笑いながら立ち上がった。そして千夜の質問に返答する。

「…でもそうだな。折角だし寄っていくか!」

「…私も、久しぶりにマスターの孫の顔を見てみたくなってね〜。なんか癒されるのよね〜!」

「行ったら喜ぶよ!お前あの子に気に入られてるからな〜!」

「そうね!じゃあいこ!」(ギュッ!)

「おっ!積極的だな〜!前までは恥ずかしいからか、手がつかまれてもすぐに赤くなって離したのに!」

「わ、私だってこう見えて看護師なのよ!もう手を繋ぐくらいのボディータッチなんか慣れてしまったわよ!!…それに…アンタの手…温かいから…好きなの…///」

「…!!…そっか!…じゃあ手を繋いでいくか!」

「…うん!///」

【Hux・row】と千夜は手を繋ぎ、マスターの喫茶店へと向かって行く。二人の表情はとても仲睦まじく、それだけで周りを魅了するほどでもあった。そして道を歩いていると一人の少女が千夜を見て喜んでいた。

「…!!あ〜千夜お姉ちゃんだーー!!」(ダキッ!!)

「あら!今日は外にいたのね〜これからマスターのとこに行くから一緒に行こうか!?」(なでなで!)

「うん♪えへへ〜千夜お姉ちゃんの手…温かいから好き〜♪」

「うふふ!ありがとね!」

「マスターのお孫さん…すっかり千夜に懐いてるな〜!…子供か〜!…いつかお前にも出来るんだろうな…家族が…」

「…え!?///…白狼…アンタ何言ってるの…突然!?」

【Hux・row】は首を横に振り、前を見ていた。その時の表情は何かを秘めているかのような目にも見えた。

「…何でもない。さっ!マスターのところに行こうぜ!」

「え、ええ…!」

(どうしたんだろう…なんかいつもの白狼じゃないわね…でも…何だかとても清々しい顔をしてるわね……何かいいことがあったのかしら…)

・・・
・・


〜マスターの喫茶店〜

「…着いたな〜何だか懐かしいよ」

「え?…最近行ったような気がするけど…あれ?」

「ねえ兵隊のお兄ちゃん、千夜お姉ちゃん♪入ろうよ〜!」

「あ、ああ!そうだな…」「え、ええ。そうね…!」

ガチャ

カランコロン♪

「いらっしゃいませ。…おぉ〜!!君たち!」

「あら、千夜さんと、彼氏の白狼くんね〜!いらっしゃい〜!」

店内に入ると、とても紳士的でダンディーな雰囲気を持った高齢なマスターがカウンター越しで挨拶した。その横に娘がマスターの手伝いをし、その奥さんは杖を持って座っており、その隣にはマスターより少し若いが円背気味の高齢男性がいた。

「マスター、あと娘さんも奥さんとあと昔のマスターの部下のおじいさんもこんにちは。」

「どうも!マスター!奥様も娘さんと友人さんもご無沙汰しております!」「おじいちゃん!ヤッホー♪」

「あ〜千夜ちゃん!それに彼氏の白狼くんじゃないか!それに愛しの…お〜孫よ〜!!…よぉ〜しよしよしよし!!」

「も〜おじいちゃん!だから髭痛いよ〜!」

「あ〜すまんすまん〜!」「もうお父さんったら、本当にその子が好きなのね〜♪」

「あら〜ようこそ…昔の主人に似たハンサムな若いのや〜…」「どうも、ジジイも来てます。」

娘は仲睦まじいマスターと孫が戯れているところを微笑んで見守っていた。すると【Hux・row】と千夜を見て話しかけた。

あ、そうだ。千夜さん!白狼くん!今日はね、君達の知り合いが来てるらしいの。今ここの特等席で待ってもらっているけど…会ってくれるかな?」

「え?」「だ、誰ですか?」

「どれどれ、案内してあげよう…ついてきたまえ…」

「「は、はい!」」

マスターは二人をこの喫茶店で一番の特等席へと案内する。それはマスターが昔空川少尉として零戦パイロットとして活躍していた貴重な写真があれば共に親友として、空の世界に介入するきっかけとなった無二の親友、榎河とのツーショットの写真も飾られている思い出深い部屋である。そして極め付けは、ネイビーのカーテンで装飾され、上の照明は小型のシャンデリア、付近には数多くの壁掛け時計が並んだ、レトロで幻想的な空間の席であることだ。夢の中とはいえ、またあの空間が観れると思うと【Hux・row】はうれしく感じていた。そして歩いていくうちに扉が見えてきた。その扉にマスターは三回ノックした。

コンコンコン!

「あ、は〜いどうぞ〜♪」「ん〜?はてマスターかな?まだコーヒーが残っているのですが…?」

「…!?…え…」「…この声って…まさか…!?」

その扉の向こうには、二人にとっても関わり深く、聞き覚えのある二人の声が聞こえてきた。【Hux・row】と千夜はこの声を聞いてとても驚いた。二人の表情を見てマスターは嬉しそうにドアノブを持ち、紳士的にドアを開けた。

「…是非行ってきてくれたまえ…!二人が来た時、千夜ちゃんからこの喫茶店を教えられたと聞いてね。喜んでこの席に招き入れたのだ。ごゆっくり」

「…はい!…マスター!!本当にありがとうございます!」「ありがとうございますマスター!本当に何から何まで…行ってきます!」

【Hux・row】と千夜は特等席の部屋に入った。そこには聞き覚えの声の通り、千里と遠方から居合道の恩師である菊川が来客していた。だが、ロベルの姿は見当たらないため、夢の中といえど、彼が亡くなった事実は変わらないと【Hux・row】は思った。

「あ、千夜先輩!!それと白狼先輩!もう相変わらず熱々ですね〜♪」「ん〜白狼くん、千夜さん二人共来たようだね…やはり絵になるね〜二人が揃うと、理想のカップルと言えばいえるね〜」

「ちょ、ちょっと!千里!それに、菊川先生も!来てるんなら連絡してくれたらよかったのに〜!ねぇ〜白狼も何か言いなさいよ〜!!…白狼?…え…あ、あんた…何で涙なんか…?」

「あれ〜?白狼先輩どうしたんですか?」「ふんむ〜…白狼くん最近何かお辛いことがありましたか?その顔は何かあったように思うね〜」

【Hux・row】は思わず、千里と菊川の姿を見て涙が出そうになった。だがその涙を拭き取り、堂々と前を見て千里と菊川に悔いのないように挨拶をした。

「……!…ああ!…何でもないよ…本当に!…千里!!久しぶりだな〜!!…心なしか少し背が伸びたなぁ…!…あと…菊川先生!…ご無沙汰しております!」(ブワッ!ふきふき!)

「あ〜っ!!///白狼先輩ひどいですよ〜!またそうやって子供扱いするんですから〜!!///もう私は20歳で立派な大人です!お酒も飲めますし、キャビンアテンダントという夢もあるんですから!…あとは、ロベル先輩の分まで私は生きます!…そしてロベル先輩の代わりとしてではなく、私がこの人なら信じられる新しい男の人だって絶対見つけますから!先輩達がと〜っても嫉妬するくらいの!熱々カップルになってみせますから〜!!///」(プンプン!)

「…!!」「…な!?ち、千里!!お…落ち着きなさい!!それにここ喫茶店なのよ!?静かにしないとマスター達に迷惑でしょ〜!?///」

千里は自分の進むべき進路が見つかっているように【Hux・row】と千夜に主張した。そしてロベルのことをいつまでも悲観して引きずっている訳でもなく、しっかり自分の歩むべき将来の道と向き合っている様子であった。その様子を見ていた菊川が一言、千里に対してこう問いかけた。

「ほぉ〜千里さん、何と大胆な事を。…ですがロベルトくんの写真を持っているからか、何だか説得力に欠けるような気がしますがね〜」

「もう先生!せっかく私がかっこよく言ったのに台無しじゃないですか〜!?それに、ロベルトではなくロベル先輩です〜〜!!///」

「あ〜…このコーヒー美味しいですよね〜!なかなかコクのある…」

「も〜!!…うぅ〜!!///」(プンプン!!///)

「くっ、あ〜っははは!」(ゲラゲラ!)「…うふふふ!」(クスクス!)

「あ〜!!///もうそこの熱愛バカップルは笑わないでくださ〜い〜!!///」(ビシッ!!)

【Hux・row】は夢の中とはいえ、この仲睦まじい空間を久しぶりに味わえた事で安堵した気分になれたようだ。やはり居合道同士の仲間だからなのか、いつまでもこうしていたいという気持ちが出てきていた。あれから居合道に所属するもの同士、ゆっくりと話をした。菊川はどうやら龍川神社の行事の都合でこの東京へと出張がてら足を運んだ際に偶然千里が声をかけて合流し、その時に『千夜先輩から教えてもらった』ということで今日、ここの喫茶店に来たようだ。そしてマスターがさっき言ったように、千夜の友達であることを伝えたら快くこの部屋に案内してくれたそうだ。【Hux・row】はロベルの写真を見た。そこには白の道着を身につけてとても清々しい表情をしていた。その写真を見て、少し哀愁感を感じていた。

「…ロベルの写真、まだ持っていたのか…」

「千里…やっぱりロベルがいなくなって寂しいの?」

「…千里さん…」

「…はい。なんだかんだいっても…寂しくなる時だってあります。でもそれでも私はロベル先輩のことは絶対に忘れたくありません!人としてもそうですが、居合道仲間としてもです!私達五人はいつまでも、どこにいても…不慮の事故で亡くなって離れ離れになろうとも…絆があれば繋がっているんですから!…だから…私は寂しくありません!」

「…!!」

「…千里…!…あなた…」

千里はロベルがこの世から別れた後、その未練を断ち切れずにいた日もあった。それでも、いつまでも亡くなった人のことを悲観し続けてはいけない。これからは自分の道だと信じ、亡くなったという事実では終わらせず、その人から何を受け継き、生きていかなくてはならないのかという事を強く主張した。そして、ロベルが亡くなる前にちゃんとした居場所ができた。それはどこにいても自分達は絆で繋がっているのだというメッセージのようにも伝わってきた。その言葉を聞き、菊川は名残惜しそうな表情をしていたが、それでもその気持ちをじっと堪え、覚悟を決めて【Hux・row】に語りかけた。

「…そうですね。確かに彼の不幸事で別れが来ようとも、我々の縁はそう簡単に断ち切れないものです。だからこそ…あなたにはここで立ち止まっておらずにいて欲しいものです。…もう行きなさい白狼くん。君の本当に行くべき世界に…そしてそこで本当に何を目指し、何を為さなければいけないのかを。…ここからは…あなたの道ですよ…!白狼くん…いえ…」



《【Hux・row】(ハクス・ロウ)くん!》

「…!?」(…菊川…先生……?)

「ちょ、ちょっと菊川先生!?…い、いきなりどうしたの!?」

菊川は持ち前の、鋭い観察力と洞察力を持って【Hux・row】に主張した。その発言から、【Hux・row】はどうやら現実では考えもつかない世界から来た事を理解しているようであり、まるで、その内容から、いつまでも自分の理想の世界の殻の中に入っているような夢を見てはいけない。自分が生きていく世界を知ったのだから、ここで立ち止まらずに殻を破り、前を向いて歩いて欲しいという教えのようにも【Hux・row】は感じ取った。その発言に千里も何かを察したのか、【Hux・row】と千夜に話しかけてはこう指示を促した。

「…そうですね。では先輩方!…一度手を繋いでくれますか?」

「…え!?」「千、千里まで突然…一体何を!?」

「……」

「…ちょ、ちょっと白狼!?…あなたからも何か言いなさいよ!?…あ〜もう、さっきから意味が分からないわよぉ〜!?」

「……!!」(ググッ!)

(もしここで千夜と手を繋いだら、もう二度とみんなとこの時間を過ごせないような気がする。…でも菊川先生が今の俺の事を…今、どんな立ち位置にいるかを知り…判断した上で強く言ってくれたんだよな………っ!…俺は…俺は…!!)

【Hux・row】はこの決断に迷いが出た。この時間は確かに大切である。しかしだからといってその居場所に縋り付いてばかりではいつまでも自分の見ていく世界には辿り着けない。それを理解した上で意を決し、千夜に詰め寄った。

「…千夜…!!手を繋ごう!!」

「えっ!?ええっ…!?あ、アンタまで何を!?……あぁっ!!」

ガシッ!!

【Hux・row】はもう決断に迷いはないかのように千夜の手を握り、優しく抱きしめては軽くキスをした。千夜はみんなが見てるからか恥ずかしさのあまり、踠いている。

「ちょ!?ちょっと白狼!?///…は、離してって…!!みんな見てるんだから!!///」(ジタバタ!)

「…覚悟は出来ていますか…?白狼くん?」

「…白狼先輩…もう後戻りは出来ませんよ…それでもいいのですか?」

二人は【Hux・row】に最後の選択を委ねる。そして後悔も心残りもなく、準備が出来たかのように菊川と千里の二人に問いかける。

「ああ…決心はあの試練を受けてからとっくに決まってる!!…菊川先生!!…千里…そして千夜…ありがとうな…俺はもう大丈夫だ!!…戻るよ…!【Paradiso】へと…夢の中にまで会いにきてくれて、俺を励ましてくれて…本当にありがとな!…みんなの事は絶対に忘れないから!」(ポタポタ!)

「…わかりました。では白狼くん。ゆっくり目を閉じてください…」

菊川の言われた通りに【Hux・row】は目を閉じる。いまだ千夜を抱いている感触は残っている。そして目を閉じてしばらくして気づくととても優しい風の吹く場所に立っていた。思わず目を開いた時には千夜も一緒にいて【Hux・row】はその景色を見て驚愕した───────

B. いいえ


《Capitolo・2》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》




♪〜天気の子より・花火大会


ザザーー…………


「?……!!…ここは…!?千夜!!…見てみろよ!!」

「…え…?……何…ここ?…でも…綺麗な場所…!!…ここって何かの写真の雑誌で読んだボリビアのウユニ塩湖のような場所ね…日の出の朝日かしら…とても綺麗…!」

【Hux・row】と千夜が立っていた場所は、空と地面が一体化し、鏡写しになった空間である。地面はとても清らかで澄んだ透き通った水たまりになっており、それが果てしなく広がり、地平線まで続いている。まだ朝が近いのか、日の出が出てきており、より幻想的にその場所はドラマチックに彩られた。とても信じられないが、二人は確かにその場所に立っている。しばらくすると誰かの人影が見え、【Hux・row】と千夜の前に姿を現した。その人の姿を見て驚いた。それは二人が知っている人物であり、腰には二本の日本海軍の儀礼刀を持ち、一新された特別儀仗服の白の制服を身に纏った紳士が目の前に現れた。その男は、【Hux・row】と千夜を歓迎するかのように挨拶した。

ピチャン……ピチャン……フワ………

「…よく来たな…白狼!…それに千夜ちゃんも…!よく来てくれた!!」

「!?み、三橋三等海佐!!」「!?え…三橋三等海佐!!…でも…何でここに…!」

その男は、【Hux・row】のもう一人の恩師であり、尊敬しており、目標とする一人の男性である三橋であった。凛とした面構えとその服装から、まるで西洋の騎士の風格を感じられる。三橋は二人に挨拶をし、【Hux・row】と会話を続ける。

「…あれから…この【Paradiso】という名の世界に訪れ、まだ訪れて一日だとは言え、何事も恐れずに場数を踏んで戦ってきたようだな…白狼…この世界が今…君の中にあるのだな…まるで言葉にするなら…【明鏡止水】…本当に曇りのない澄んだ空間だ!…白狼…本当に大したものだ!」

三橋は【Hux・row】の心の中に秘めた、この果てしなく広大であり、絶景ともいえる鏡写しのような景色の心境の持ちように称賛と敬意を表して発言し、【Hux・row】もまた、三橋に、敬意を表するかのように、覚悟の意思表示の言葉も交え、語りかける。

「…あなたの指導のおかげでもありますよ。そのおかげで俺はもっと強くなれました!…いや、あなたが教えてくれたことだけじゃあない…菊川先生や千夜、千里、西野さん…そして親友のロベル!…他にもいろんな人と出会い、俺はここに立つことができて…このような景色を見ることができたのだと…!!そして俺はまたこれから【Paradiso】へと戻ります!…どうしても決着をつけなくてはならない相手がいるので…!!そして…あなたが現世で別れを告げた俺に伝えたように…!!落胆せず、常に向上の意欲を忘れずに前に行くことを約束します!」

「……ほおぉ…」

「し、白狼…あなた…」

【Hux・row】は三橋に自分の意志を的確に伝えた。それを聞いた三橋は【Hux・row】に対し、前へと歩み寄り、こう言い放った。

「よく言った。君の決意と覚悟!…確かに伝わった!!…だがその覚悟…半端ではないか…ここで確かめさせてもらう!!…剣を取れ!!」(ブン!)

チャキッ!!

「…!?…!!…こ、こいつは…なるほどな…」(パシッ!…シャー……!)

「し、白狼!?その軍刀って…!…ほ、本物じゃない!…本気でそれで勝負するの!?三橋三等海佐に!?」

「ああ!…だが心配するな…危ないからお前は下がっててくれ!…これはもう戦いなんだ!…お前が止めようとしても…俺は行く!!」(ピチャ…ピチャ…ピチャン…)

ズザ………

「…白狼。…!…くっ!!…」

三橋は二本ある内の、一本の日本海軍の儀礼刀兼軍刀を【Hux・row】に手渡した。刀の波紋を確認するとそれは模擬刀ではなく、本物の真剣であり、重みも伝わってくる。【Paradiso】でも【Varisk】のメンバーの一人【Jeik】からの戦利品の剣と重さはほぼ同じであるが、その質感はその剣とは比較にならないくらいの代物であり、まさしく神聖な真剣勝負にふさわしい一刀である。白狼は覚悟を決め、清らかな水溜りの地面を歩いて行き、三橋の方を真剣に見つめる。その様子を見守っていた千夜は【Hux・row】の勝利を祈るかのように女神のように手を握り、勝利を願っていた。

「…っ!」(…白狼…頑張って!…勝って!)(ギュッ!!)

「お待たせしました…三橋三等海佐!」(キッ!)

「…ほぉ…いい目をしているな。…折角の真剣勝負だ。……私との決戦にふさわしい服でかかってくるといい!…ハッ!!」(バッ!)

「…え…?…!?…なっ!?」(フワァ〜!)

キィィイィィーン…

「……え!?一体何が…?……あっ!!…服が…三橋三等海佐の着ている制服と…同じ…!…ふふ!…そっか…やっぱりアンタそれ…すごく似合うわね…!///」

「…!?…なっ!?…こ、この服!…ははは…そうですよね…!感謝します。三橋三等海佐!!…これなら!…あなたと思いっきりやれる!!」(ニッ!)

三橋が【Hux・row】の前に手を出すと、【Hux・row】の身体が突然聖なる光に包まれて輝き出した。光が消え去り、気がついたときに清らかな水の地面を覗き込むと、自分の服が目の前に立っている三橋と同じ白の特別儀仗隊の制服を身に纏っていた。【Hux・row】はその意図からは、目の前の恩師が自分と対等の立場で戦ってくれると思い、気分を高揚させて笑みを浮かべていた。千夜も、純白の制服を身に纏った【Hux・row】の姿を見て、三年前の事を思い出したかのように赤面し、その制服姿にうっとりしていた。そして両者はお互いに真剣な眼差しで両者は軍刀を抜刀する構えを取り、向かい合った。

「…覚悟はいいか…白狼!?」(ジャキッ!)

「…はい!!三橋三等海佐!!…俺は!!あなたを乗り越えて見せる!!…行くぞ!!!」(ジャキー!)

「…わかった!!…いざ…尋常に…」(ジャキー!)

「「勝負(だ!!)!!」」(キーーン!)

二人の掛け声と同時にお互いの軍刀が抜刀され、戦いの火蓋を知らせるが如く、軽く剣を交えて交差し合い、静かな空間から剣と剣がぶつかり合う音が響き渡った。そして、お互いの持つ軍刀が振り下ろされたーーー

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TOGfより・決戦!奮い立たせて!

「」(ブン!!)

「」(ブン!!)

キィーーォォォーン!!!!


《海上自衛隊幹部・三等海佐》
   《三橋宗一郎》


「…!!」(な、何この音…!これが…真剣同士がぶつかるとこんなに…!!)

「オラァァ!!」(ブン!!)

「…くっ!!…白狼…腕を上げたようだな!それに…いつの間にか立派な剣士の面構えになっているようだ」(ヒョイ!)

「…まだまだ。俺はこれからですよ…それに三橋三等海佐も…まだ本気ではないことが伝わりますよ!!」

「…そうだな。…では、少しだけ…君が知った世界での能力を…使わせてもらおうか!!」(シュン!!)

「…!!」

カン!キン!カ〜ン!

「……」(チャキン!)

「…ぐっ…!?腕が痺れる…さすが三橋三等海佐だ!…夢の中だから【P-watch】の魂の概念はなさそうだが、俺の特殊能力と同じだとはな…だがこの高速の三連撃…こんな使い方をするなんてな…」

「…よく受け止めたな。伊達に真剣で勝負をしたことがあるようだな!」

(…え!?あいつが居合道の藁以外で真剣を使っての斬り合いをしたような言い方ね。それに三橋さん…なんて早さなの…あれ…でも私、なんで三橋さんって…)

「うぉぉぉ!!」(ブン!)

「はぁっ!!」(ブン!)

キィン!!ギリギリ!!

「…白狼…!!」(ギリギリ!)

「三橋三等海佐…!!…俺は……!!」(ギリギリ!)

キィン!!

両者は気分を高揚させ、闘志を奮い立たせている。普段は冷静の三橋であったが本気の斬り合いとなれば、その表情には闘争心を隠せなかった。そして華麗に軍刀を使いこなし、素早く【Hux・row】に攻撃を開始する。

「ハァアッ!!」(シュシュシュシャ!)

「なっ!!…グアァ!!」(ザシュ!!)

「……!!」(し、白狼…!?…っ!…傷は浅いけど、…肩を怪我してるわね…)

三橋の神速の突きが白狼の肩に直撃した。肩からは少し出血が見られたが、それでも【Hux・row】は臆せず三橋の方を見る。そして先程の攻撃について思い返していたーーー

(…!!くっ!!…これは【Jeik】の神速の突き!!…流石は俺の夢の中だ!…三橋三等海佐…色々俺の体験してきた敵の能力や技を巧みに使ってくるな…だがもうここは戦場なんだ!戦いに卑怯だとか言っていられない。現実は極めて非情であることは…この全く意味が分からない世界【Paradiso】で既に学習済みだ!)

「…どうした白狼?…君の実力はその程度か!?」

「いえ…まだこれからです!!…うぉぉおらららぁぁ!!」(ダダダッ!!)

「来たか!!…だが、甘い!」(ブン!!)

「…!!……そこだ!!」(タンっ!グルン!ブン!)

ザシュッ!

「…!!う!!…ぐう…!!」(右肩押さえ…)

「ああっ!」(今度は白狼が一本…いえ…もう一本とか二本だとかじゃないわね…これはもはや真剣を用いた決戦!……どちらかが倒れるまでひたすら続く…果てしない戦いのようね。)

チャキッ!!

「……型でいう兜割りといったところです。あなたが教えてくれた前転やらバク宙の体術修行が役に立ちました!その応用で、剣術を加えて見せました!!」

「…なるほど…本当に面白いやつだ!…だが白狼…これはどうかな!?」(フッ!)

「!!…面白え…ハヤトの能力か…何としてでも見切ってやる!…!!来た!…ッ」(ゴロゴロ!)

「はっ!!……かわしたか…!…!ぬっ!!」(ブン!)

キィーーン!!

「…っち!!かわし際に一太刀と思いましたが…流石は三橋三等海佐だ!!…よく対応しましたね」

「…色々実践で自分なりに体得したのだな…だが…これはどうだろうか!!」(フッ!)

三橋の姿は消えた。だが決して逃避したわけではない。その口ぶりからまるで大技を仕掛けてくるかのように自身のある声で【Hux・row】に立ち向かってくる。

「…!!またか…!!…っ!!…!!!」

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュッー!!

ザザーーー!!

「……」(ブンブン…)

《チャキン!!》

ブシャーー!!!!

「!?…うぐぁっ!!……はぁ…はぁ…かはっ…っち…!!」(フラフラ…ポタポタ…!)

「ああっ!!…あぁ…し、白狼!!……あ…あぁ…いや…!!いやぁ〜〜っ!!」(ブワッ!!)

突如【Hux・row】は三橋の神速の攻撃に対応できず、七連撃の攻撃を直に受ける。身体中に血が流れ出し、体力が削られていく感覚に陥った。その状態の白狼を見た千夜は思わず悲鳴を上げる。看護師であるからか、白狼の身体はかなり致命傷であることを理解し、戦いを止めるように促す。

「…!!し…白狼!!…も…もう無茶はやめて!……このままじゃ…!!…またあの時のように…アンタが…!!」(ポロポロ!!バシャ!バシャ…!)

千夜は涙を流していた。それも現世の【Hux・row】の最期を思い出したかのように歩み寄ってくる。だがそれを【Hux・row】は千夜を抑えるかのように声を上げた。

「来るな!!…まだ終わっていないんだ!!…心配すんな千夜…俺は…絶対に三橋三等海佐を…いや…この戦いを乗り越えてみせる!!…この軍刀を持った以上…これくらいの血を流すのを…覚悟していた!!…危ないからお前は下がれ!!お前は命を預かる仕事をしているから尊い命を大切にするという気持ちは…俺も十分に理解している!!…だがな…もうここは戦場なんだ!…危ないだとか、そんな甘いことは通用しない世界なんだ!!」(クワッ!)

【Hux・row】は戦場にかける犠牲の思いを胸に三橋に刃を向ける。その覚悟は不屈の闘志でもあり、剣に懸ける強い想いが彼を後押ししてくれたと言っても過言ではない。すると千夜は、今度は三橋に戦いを止めるように促した。  

「三橋さん!…お願いです!!…もうこれ以上白狼を傷つけるのはやめてください!!…お願いします!!」(ポロポロ!)

その言葉に三橋は、首を横に振り、優しい言葉で千夜に問いかけ、彼を試すかのように言い放った。

「…千夜ちゃん…戻っておいて。白狼はさっき言っただろう。ここはもはや戦場…やるかやられるか、戦場で甘さがあればいつ首を斬られ、命を落としかねない場所なんだ。そして彼は、剣は何の為に、誰のために振るのか…それは彼自身が試されているんだ。彼は剣に賭ける覚悟を持ち、その問題からの答えを命を削ってでも導こうとしている。君が今やっていることはその彼の行動を阻害して道を通せなくしている。悪く言えば愚弄する行為にも当たることだ。…それとも…君の愛する人はそんなに弱いと思うのかい?…そこまで彼のことを信用できないのかい?…よく見ておくといい。人の命とはなんなのか、何の為に武力を持って命を賭けてまで人を守るのかの意義について…その答えがこの戦いの中で見つかるかもしれない…」

「…!!…三橋さん……」

三橋は千夜を説得する。その真意は決して【Hux・row】を痛めつける為にあるのではない。彼自身の覚悟が故の行動で、神聖な闘いを愚弄させた形で終わらせたくないといった騎士のような風格ある高潔な気高さをも感じ取れたーーー

「すみません……邪魔をしました…」

三橋からの言葉で千夜はその場から遠のいた。それを見計らって三橋は【Hux・row】の前に立ちはだかる。そして試すかのようにこう言った。

「…白狼!!…君はあの子に涙を流させ、傷つける為に剣を振るのか!?…それともただ純粋に殺戮を楽しむ為だけに剣を振るうのか!?…どうなんだ!!答えろ!?」

「……!!…俺は…!!…いや、俺の答えは…もうとっくに決まっていたか…!……」(……シャー…!)

「…黙秘か…!!…いや…フッ…そうか!!…なら私も能力は使わずに、小細工なしで自分の実力で勝負しよう!」(チャー…)

キン!! キン!!

(…!!…抜刀術の構え!!…白狼…お願い…死なないで!…もう…あんな思いは…したくないの…だから…!!)

「……」

「……」

(三橋三等海佐の実力は能力がなくても間違いなく本物だ!…だからこそ…俺は負けられない!!…それに…千夜の涙はこれっきりにさせないとな…!)

(白狼よ…よくぞ決意してくれた!私も平然を保っていたがどうやら右腕の負傷が来ているようでね…ここで決着とするぞ…!)

(…白狼!)(グッ!)

「……」(三橋三等海佐!!…俺は覚悟は出来ている!!!)

鏡写しとなり、水鏡が広がる空間──────それは四字熟語で表せば《明鏡止水》。その風景に合致するかのように邪念がなく、落ち着いた静かな心境のある境地の中【Hux・row】と三橋は帯刀し、抜刀を研ぎ澄ますが為に、一点集中している。【Hux・row】の心は、常に《明鏡止水》のように澄んだ水鏡の心得を大切にしている。そしてそれを迎え撃とうとする三橋も、同じような心境である。これはまさに二人に課せられた問題にもなる。何の為に、そして誰の為に、本当に人を守る為に剣を振るうのかと、その正義と正義のぶつかり合いが、二人の闘争本能を目覚めさせるようにも感じられる。そして、遂に二人が満を期して、決着の狼煙を上げるかのように合図が開始された──────

「!!」

「!!」

《カッ!!》

「ハァァァァッッ!!」(ジャキン!)

「ハァァァァァッ!!」(ジャキン!)

ブン!!

キーン!

「…!!…なぁっ!…鞘!?……っぐう!!」(ブン!)

ズバッ!ザシュッ!!

「…ハァァァァァ!!」(ブン!)

ズシャア!!

「ぐうっ!!……白狼……フッ…」

バタッ……

「ハァ…ハァ…ぐっ…!」(ガクッ…!)

【Hux・row】は抜刀の際、鞘を身代わりにし、素早く回り込んでは背後から横から一太刀を入れ、そこから前に突きを繰り出し、最後に下から豪快に切り上げる三連撃を浴びせた。三橋は心なしか、その連撃を浴びては満足そうに微笑み、その場から倒れ伏せた。そして【Hux・row】は膝をつき、剣を地面に突き刺して身体を支えた。その様子に思わず、千夜は【Hux・row】に駆け寄ってきた。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜犬夜叉より・Dearest〜Strings

「白狼!……大丈夫!?」

「ああ…大丈夫だ!…俺よりも三橋三等海佐の方を見て……や…れ……!?」

「…え。……!?」

バシャ…バシャ……

「私なら大丈夫だ!…心配ない」

「「!!」」

三橋の声が近くに聞こえて来たのでその方向を向く。そこには、斬られた筈の傷が塞がり、返り血の痕が綺麗さっぱりなくなっていた三橋がその場に立ちつくしていた。

「え!?…ええっ!?…み、三橋さん!?何で!?傷が治ってる!」

「…全く…本当にいつも驚かせてくれますね…三橋三等海佐…」

「白狼。……君は私に勝ったのだ。…階級呼びはもういい。三橋と呼んでくれたまえ…」(フッ!)

「…そんなわけにはいきません。…例え、ここが俺の夢の世界とはいえ…これからも尊敬しているあなたを三橋三等海佐…そう呼びます!!」

「そうか。…ふっ!…それでこそ、私がよく知る元海上自衛官…海士長…《二ノ宮白狼》だ!」

ヒィーーン!!

「…!?…な…治った!ど、どうなってるんだ…!?」

「!!」(三橋さんが手を翳した途端に、白狼の怪我も治ってる…!!でも何で…?)

【Hux・row】と千夜の疑問に三橋はこう言い放った。

「…忘れたのか白狼?…ここは君がいる世界【Paradiso】の夢の中だ…治癒と修復の【Fiducia】の能力を使い、君を回復させた。そして…ご名答。…私は君の心の中が認知している三橋だ。…だがな白狼……そこの千夜ちゃんは…どうやら《現世の千夜ちゃんの心》そのものの存在のようだ!……私も驚いたよ」

「!?…なっ…ほ…本当なのか…千夜!?」

「……」

千夜は何かしら、【Hux・row】は何故この世界にいるのかと色々疑問を感じていた。だがその疑問を押し消して【Hux・row】に自分のあるがままの気持ちを伝えた。

「…あなたが私達の前からいなくなった後、今どこにいて何をしているかはわからない。でもこれだけは言わせてもらうわ。…白狼。……私は、あなたを愛してる!!///ずっと…忘れない!!///…だから…!あなたも生きて…無事に元気に!!…いってらっしゃい…私の愛した男…白狼♡!!///」

ダキッ♡!!…トン!

「…!!///…わかった、千夜!!///…お前から貰った十手…大切にする!!…もう絶対に離さないからよ!!///」(ギュッ!!///)

「…うん!///」(ニコッ!…ポロポロ…)

二人はいいムードで盛り上がっていた。だがそんなムードを三橋はぶち壊すかのように千夜に【Hux・row】が抱えている【Paradiso】での女難問題について口頭で告げられるーーー

「ごほん!…千夜ちゃん。…この際だからハッキリ言っておこう!…白狼は、早速この世界に来て女難のためか浮気をしている!しかもその内の一人は胸を押しつけられたり下着姿を見られたり、寝る前に大胆にほっぺにキスをされるときた!思った以上に良いご身分だな…白狼よ!」(ニヤッ!)

「……!!………へぇ〜……そうなんだ。……」(ユラ〜)

「!?///…み、三橋三等海佐…!!…あ、あれはベアさんがしたことですよ!!本当にデリカシーがなくてあの人はぁ〜!!///…ハッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴ…!!

【Hux・row】は思わず後ろを振り向いた。するとそこには笑顔の千夜がいた。だが笑顔にしては殺気立っていた。そして、上から手刀を振り下ろそうとしていた。

「…ち、千夜…話せばわかる!!」

「遺言はそれだけかしら〜♪!!??」(ニコニコゴゴゴ!!)

「…う、うわ〜!!!ま、待ってくれ〜!!……あれ?」(ガード!)

【Hux・row】は手刀に備えて身を守る。だがいつまで待っても手刀が来ない。すると突然お腹を抑えていた様子の千夜が大笑いをしていた。

「ぷっ、ア〜ッハハハッ!!…ふふ!…そっか!そっか!…その様子だと向こうでもアンタは元気でやっているのね〜!!あ〜っ!…何だかそれを聞いてスッキリした!…良いわよ別に向こうで女の一人や二人くらい作っても!…特別に許す!!」

「…な!?…ま、マジか!?…でもよ。…俺、お前を忘れる事なんて…!!」(ギリッ!)

【Hux・row】はどうやら千夜の事で悩んでいた。千夜に好きと言っておきながら先に死後の世界【Paradiso】に辿り行き、千夜が現世の世界で【Hux・row】が死んで悲しんでいるのに、すぐさま女を作るような身勝手で傲慢な自分が許せなかったのだと自責の念に駆られていた。だがそれを千夜が頭を抱えてため息をつき、【Hux・row】の両肩を持ちその価値観を軌道修正するようにこう言った。

「…ハァ〜ッ!…あのね〜白狼〜!…言っておくけど、アンタは私の暮らしている世界ではもう死んでるの!もう会えないの!例えで言うなら先に他界されて一人ぼっちになった奥さんが、亡くなった旦那を復活させたいっていうそんな漫画みたいな好都合な事なんかないのっ!!…だから、いつまでも私の事で未練引き摺って、折角苦労して今の新しい自分の人生を見つけたんだから、無駄にしてどうすんの!?…アンタはここから始めないといけないのよ!?…わかった!?」(ガシッ!)

「…!!……千夜……」

「…うむ」(…ほぉ…流石は千夜ちゃんと言ったところか…)

千夜の言葉に白狼の心の中の霧が晴れるような感覚に襲われた。おそらく千夜を置いて先に逝った事による責任感はそれだけ感じていたのだろう。その言葉に、【Hux・row】は膝を降り、只ひたすらに涙を流していた。

「…千夜…!…俺は…俺は…!…あ、あああぁぁっっっ…!!」(ポタポタ!)

「…たく…アンタは死んだ後も本当に世話をかけさせるわね〜!…でも…次に好きになる愛しい人や守りたい大切な人…ちゃんと守ってあげないと…ただじゃおかないからね!!」(ダキッ!)

「……ああっ!…わかっている…任せてくれ!…絶対にあの子を…ゆいちゃんを守ってみせる!…そして…奴との決着を必ずつけるから…だからっ…!」(ギュッ!)

「…頼んだわよ!…きっと、その子もわかってくれるわ……それに…何だか誇らしいことじゃない!自分の元彼がこんな広大な死後の世界で活躍してるだなんて!折角来たんだから、私の愛した男として恥じないように、大きな男になりなさいよ〜!」

「…!!…ああ、約束する。絶対に奴らの惨劇で善良な人達に血を流させたりはしない!…俺は…この【Paradiso】で出会った仲間達と共に生きるよ!」

「ふふ…よろしい!……あ。…!!」(スーッ…)

ヒィーーン………

「…!なっ!?…お前…身体が…!?」

【Hux・row】は千夜の身体が透けているのを見た。その様を見て、いわゆる時間切れというものである。そして、千夜は微笑み、最後に【Hux・row】に強く抱きつき、名残惜しくもこう言い放った。

「…ふふ。…やっぱり…温かいな〜アンタの身体!!///」(ギュ〜!!)

「…俺も///…お前の美人なとこもそうだが、その性格…残念とか言ってたけど…本当は…そんなお前がすげえ好きだった!!///…ありがとな…おかげで目が覚めたよ!…俺!」(ポタポタ!ギュッ!)

「…そっか。…ありがとう…私…もう一度アンタに会えて…嬉しかった!!///」(ポタポタ!)

「…俺も同じだ!!///…千夜……お前もどうか身体に気をつけて…元気でな!!」(ポタポタ!)

「…アンタもね…!白狼♡!!///」(スッ!)

チュッ♡……フワァァ……

二人の甘い時間は、最後にキスを交わし、彼女の姿は白のモヤとなって消えていった。




ヒィーーンン……!!

「…!!…な、何だ!?」

【Hux・row】が持っている千夜の十手は白い光を帯び、輝いていた。

その光景に【Hux・row】は驚きを隠せなかった。すると、三橋が歩み寄り、丁寧に説明した。

「先程の。…現世の千夜ちゃんと君自身との厚い絆がその十手へ宿ったのだろう。…言葉にして表すのなら、【万物の霊長】に宿す《付喪神》のようなものだ。……分かりやすく言うのであれば、ここにいる認知上の私と同じように、この水鏡が広がる君自身の心の中の世界に、千夜ちゃん自身の分身を残し、もしもの時はきっと彼女が幻影になってでも現れ。…必ず君の力になってくれるはずだ!!」

キラーン…!!

「!!…そうか。…!!ありがとうな…千夜!!…俺は負けないから…お前も頑張れ!!…俺は…強くなってやる!…奴よりも…更にな…!」(ギュッ!)

【Hux・row】は千夜の十手を強く握りしめ、決意を新たにした。そして【Hux・row】の心の中の認知上の三橋はある提案をした。

「ところでだ。…白狼、君の剣術だが、流派はあるのか?」

「流派ですか?…いえ特には。…型とかはありますけど…名前とかはないです!」

「そうか。…じゃあ今日から、君の流派は…【白狼夜宗流】(シロウヤシュウリュウ)と名付けよう!そして私にかけた三連撃の剣技を【白狼夜宗流】一式一の型…千夜・【桜華】(センヤ・オウカ)…その様に名乗ると良い!!」

「…!!…白狼…夜宗流…?…!!あっ、俺の名前の…白狼…千夜の…夜…!そして…三橋三等海佐の名の宗一郎…の宗…!…くっ…!ありがとうございます!流派の名前…大切にします!…ってあれ?それをどこかで…!!あ!?…そうか…!」(ゴソゴソ!)

【Hux・row】は制服のポケットから、現世で生きていた時、三人で撮った写真を確認して涙を流した。この人は心の中でも三橋であることに変わりないのだと実感した。するとその時、隣に誰かが現れた。

ピチャ…ピチャ……

「ふふっ!…【白狼夜宗流】(シロウヤシュウリュウ)!…白狼くんらしいね♪…その名前だと、白狼くん、千夜ちゃん、三橋さん…これでいつも一緒ですね!」

「そうだなありささん!…お、その服で来たのかい!?…何だか、懐かしいな!」

声をかけてきたのは【Hux・row】の夢の心の中の認知上に存在する女性警備員のありさであった。だがその服装は、昔防衛大学校の開校祭で、写真部に声をかけられては綺麗に髪を結び、アンティークホワイトのパーティードレスを着て撮影したことがある服装であった。その様はとても上品で神聖であり、神々しい女神の様な女性であると評判を受けるくらいの絶世の美人であったと言われている。

「…!!…に、西野さん…!!…な、何で!?あ、服が違う…でも…すげぇ〜綺麗だ…///…本当に聖母みたいだ…!!///あ、仕事はどうしたんですか?」

「うふふ!ありがとう白狼くん!…白狼くんこそ、その白の制服姿…とても様になってて立派な騎士みたいだよ!流石は三橋さんの愛弟子さんですね!…仕事はもう終わりましたよ!…あと、三橋さんに呼ばれてきちゃったの!…それに…三橋さんがその服なら…やっぱり私は…この服じゃないとと思ってね!!」

「そうか。…ありささん。…本当に綺麗だ。……10年前から更に綺麗になったね!!///」(ダキッ!)

ギュッ!

「!…あ…///もう、三橋さんたら…!///…でも…あなたもその服…とっても素敵ですよ…!///…ね、白狼くん?」(テレテレ!!///)

「はい!二人共…すごく似合っています!…ッ!!…本当に…この景色とも…何故か……うぅ……ぅ…!三橋三等海佐…それに…西野さん…本当に…ありがとう…ございます!!…ッ!…俺…っ…!俺は…!!……くっ…!」(ポロポロ!)

「!!…ははは…!」「うふふ!…しょうがないですね〜!」(クスクス!)

ポンポン!!ダキッ!

「…!!…っ…!」(…っ…三橋三等海佐…西野さん!……本当に!…色々とありがとうございます!…俺…【Paradiso】に来てもまたあなた方に会えて…本当に良かった!)

二人からもらったかけがえの無い大切なものを思い出したかの様に、人の温かみを感じた【Hux・row】は涙を流した。そしてそれを慰める三橋とありさ。その光景はまるで、家族の様にも思える幻想的で澄んだ空間が広がっていた。そして、【Hux・row】の夢ももうすぐ覚める時だからか、周囲は夕方になり、目の前には何故か扉が出現した。

「さ、そろそろ行くんだ!…【Paradiso】でも元気でな…白狼!」(肩ポン!)

「…ゆいの事…宜しく頼むわね!…あなただけが本当に頼りだから…あの子の力になって守ってあげてね…白狼くん!」(ダキッ!…ポロッ!)

「…安心して任せてください!西野さん!…俺…絶対に…勤めを果たしてゆいちゃんを守っていきます!…あ、そうだ三橋三等海佐!…この軍刀!」(チャッ!)

【Hux・row】は三橋から渡された日本海軍の軍刀を返そうとする。だがそれを三橋は首を横に振り、こう答えた。

「それは君が大事に持つべきだ!…心の中に入れておくのだ。我々にとっても《誓いの儀礼刀》なのだからな!」

「…!!…はい!わかりました!…大切にします!…なら、最後に俺達の誓いをやりましょう!…三橋三等海佐!!」(チャキ!)

「…!!…そうだな!…白狼!」(チャキ!)

「…ッ!」キーーン!「フッ!」

「…うふふ!…本当に頼もしい二人の騎士ですね!……まさしく誓いを交わす儀礼刀!…あなた方の絆が本当に伝わってきますね!」

その光景は二人の騎士が聖母を守らんとする様にも見える。その美しさから、周りが見れば息を飲む事だろう。そして、【Hux・row】は扉を開け、その後ろ姿を三橋は敬礼し、ありさはニコニコと微笑み、律儀に手を振って見送っていた。夢の中で、千夜本人の心の存在ではあるが、千夜との再会を果たし、心の中で幻影として生き続けている事を知った【Hux row】。もう心残りがなくなったからか、その表情は荷が軽くなった様に感じた。そして、見送る三橋とありさの二人に、【Hux・row】は最後にこの様に挨拶を交わす───────

《三橋三等海佐!西野さん!いつまでもお元気で!》

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・3》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜犬夜叉より・ふたりの気持ち

〜現世の世界・千夜の住むマンション〜

ジリリリリ…AM 6:30

「…ん〜…あ、朝か…あれ?私…何で涙なんか…あ!…そうか私…あいつの夢を見たんだ…!」

「…なんか不思議ね…本当に!…さて、今度はあいつよりもいい男、探さないとな〜!って私のこんな性格気に入ってくれる人いるのかな…西野さんのようにあんな優しくて、まるで女神のようなイメージ…私にはあんまりないし…」

「…いやいやいるでしょ!あいつみたいに広い青空と地面が鏡になってるように果てしないくらいの広い心を持ったやつがいるくらいなんだから…絶対!…白狼…私達は住んでいる世界は違うけど、夢の中で千里が言った様に、絆で繋がっているんだから…私はいつでもアンタを応援しているから!」

千夜は昨日見た夢について色々思い出していた。そして最後に三橋が口にした【Hux・row】に対し、女難に対する愚痴も含めるも、それでも恋路を応援するように話す。

「…まったく…でもあいつの心の中といえど三橋さんもよく言ってくれたわよ〜!本当に女関係のトラブルが多いんだからあいつは〜!!…でも、向こうの世界では私の様な男勝りより、アンタが心から守りたくなるようなか弱い女の子の方が案外釣り合うかもね〜♪…頑張ってね…白狼!」

・・・
・・


🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ペルソナ4より・muscle blues

〜【Hux・row】の夢の中・もうすぐ目覚め〜

俺はあの後、現世での愛人の千夜、三橋三等海佐と西野さんとの別れを済ませて、扉を開いたのは良い。それは良いんだ。そのまま無事に真っ直ぐ進めば出口があったんだ。そう。やっと出口に辿り着いたと思い、安堵の気持ちで、その光の中に入ったんだ。だが…神ってやつは残酷にも…俺に対して最後に地獄とも言える試練を課してきたんだ。そう…俺が女難だという罪と罰があるにしても…確かに求愛はある。あるにはあるが…それは…求愛というには…あまりにも大きくて洗練されていたボディであった。本当に女性が恋しくなる様な…とても巨体でむさ苦しく…筋肉がお盛んなガタイの良いナイスガイで分厚くて重く…そして…禁断ともいえる花のような男達の宴会場だった…

・・・
・・

「あんら〜♡愛しの銀髪ボーイじゃな〜い♡!!〜会いたかったわ〜!!♡♡」(ダキッ♡!!)

「いギャーーーーッ!!は、離せぇ〜〜ッッ!!」(グググ……)

「あんら長様〜大胆〜!!///♡♡」

「うふふ〜いらっしゃいねぇ〜坊や〜♡」

そう。俺は運悪くこの忌まわしい記憶ともいえる三人の花男共からの襲撃に遭っていた。まあそれは俺が女ばかりのトラブルによる女難の相でもあるのか、千夜のこともあり、自業自得ともいえるからか、まさか俺の心の中に花男のこいつらが住んでいたとは予想外だった……

「うんふふ!!♡じゃあ〜♡そろそろ…お・め・ざ・め・のキスでもしちゃお〜かしら〜!?♡♡ん〜っまっ!!///♡ん〜っまっ!!///♡」

「あんらヤダ〜長様ってだ・い・た・ん!〜♡♡///」

「きゃ〜キスよ〜♡キース!♡キース!♡///」

「うふふ〜♡♡皆さ〜ん応援あ・り・が・と・ね〜♡…やっと念願の銀髪ボーイの唇を戴けるわね〜!!!♡…お・ま・た・せ♡…じゃ……んん〜っ!!♡♡//////」(ドキドキ!///)

「!!!!…げげっ!!!お、おい!!ふざっけんなぁ〜ッッ!!!!おい、お前らマジで離せ〜!!!!」(ジタバタ!!」)

「あんら駄目よ〜王子様〜!!♡動いちゃいやんいやん!♡♡」(うるうる…)

「そうよ〜♡長様の神聖なキスに♡…あ・な・た・もメロメロの虜よ〜キャ〜♡も〜う…嫌がる素振りして〜て・れ・な・い・の!!♡///」(キャー♡♡)

「何が神聖だぁ〜っ!!??お前らガチムチマッチョで見てるだけで暑苦しいし、存在そのものがむさ苦しい要素しかなくてこっちからすれば虫唾が走って不快感しかないんだよ!!って!?うわぁぁぁ〜!!ち、近っ!!近いって〜!!!!!」(ブワァ〜ッ!!)

【Hux・row】は花男の長のキス攻撃から逃れようと抵抗してはいるが、他の花男達が力強く身体を拘束しているためビクともしない。そして花男の長と白狼の唇が、約数センチと超至近距離の密状態であり、接触は避けられそうもなく絶望のあまり悲鳴を上げた。そして【Hux・row】の顔を固定され、いよいよ深い禁断の世界へと突入しようとしていた──────

「う・ふ・ふ♡…忘れられない一夜をと・も・に・あ・か・し・ましょうね〜♡ぎ・ん・ぱ・つ・ボ・ー・イ♡!!///ん〜♡♡♡//////」(ガッシリ!///)

《ヤメロォォォォーーーーーーーー俺は男に抱かれる趣味はねェェェェ!!!!!》

・・・
・・


〜【CronoSt】(クロノスト)居住区【Beanne】の家〜

「…!!!!!…あ〜オェ〜〜ッ!!…気持ちわリィィ〜〜……ったく、最後の最後で嫌な夢を見たぜぇ〜!………って………え?」(ぐったり!)

「zzz……zzz…もう〜たべらべれましぇ〜ん〜…zzz……zzz」

「………」

「……ふみゅ〜♪…… zzz…zzz」

カチッ!…カチッ!

「!!」(…な!?何で俺いつの間にベッドに!?ベアさんと一緒に寝てるんだ〜!!??)

時計の秒針が響き渡る静かな室内。【Hux・row】は目を覚ますと、そこはベットで隣には【Beanne】が寝ていた。そして最悪のリスクも備えて少し布団をめくると、胸は、暑苦しいからか、ボタンを二本外し、その他は特に服に乱れがないため、ノーカンといえばノーカンと言える。だが、もうあの花男共の夢だけはごめんだと心の底から思っていた。案の定、寝ぼけた【Beanne】が【Hux・row】を担ぎ込んでベットに運んできたのだろうと冷静になって推察する。

「…はぁ〜!…起きるか。…って…ん?」(くいっ!)

「パパ〜…ママ〜…わたしを…置いて行かないで…どこにも…行かないでよ……zzz…zzz…」(裾を持つ)

「…!!」(……そうか。…ベアさん…ハァ〜…仕方ない…枕をガードにして…寝たふりかまそ…)

ドサっ!

「ふぁ〜おやすみ〜ベアさん〜…zzz zzz」(くかー!)

「…zzz。……〜♪」(…やっぱり優しいんだね〜ハクローくん!…んん〜…でも残念だなぁ〜!ちょっと期待してたんだけどな〜♪…!そうだ〜♪)

「ん〜…」

・・・
・・


「…ん?…!!!!んんっ!?///」(ドキッ!///)

ボイ〜ん♡!!…ムニ♡ムニ♡

「ん〜?あ、おはよ〜ハクローく〜ん♡!やぁ〜ん♡私の自慢のここが好きなんだね〜?♪も〜う大胆だね〜♪さすがは狼の名前は伊達ではないのかな〜♪?もう素直に言ってくれたらいいのに〜♡…可愛いとこあるなぁ〜ハクローく〜ん♡///」(ギューー!!)

「んっ!?〜んん〜〜っ!!///」(し、死ぬ!!胸に圧迫されて息が出来ん!あん時の花男の抱擁を思い出すくらいに苦しい〜〜!!///)(パンパン!!///)

【Hux・row】は次に目が覚めた時、【Beanne】の自慢の部位が目の前にあった。彼女はそれを嬉しそうにニヤニヤと愛情表現たっぷりの笑みを浮かべ、【Hux・row】の顔をFカップはある、豊満なバストを深々と埋めていく。

むぎゅ〜♡

「…〜!!///…ってぇ!?…いいかげん…離れてくださいって〜!!…ハァ…ハァ…///」(バッ!!)

「あぁ〜ん♡」

さすがに息が苦しくなったのか、【Beanne】をやや強引に引き剥がす。

「んも〜う強引なんだから〜♡!…で、どうだった〜?♪私の胸の感触〜♡?♪」

「知りません!!///…ったく、いつまでもバカやってないで早く朝飯食べましょうや!」

「もう、ひ〜ど〜い♪…あ、そこに置いてるよ♪ほらトースト!♪」

「え?…あ…本当だ!…じゃあ俺二度寝してたのか…ベアさん、なんかすまないな…作ってもらってばっかで…」(頬ポリポリ!)

【Hux・row】はなんだかんだ言いつつ、朝飯を準備してくれた【Beanne】にお礼を言った。すると、【Beanne】は微笑むも、昨夜の【Hux・row】の事をとても心配そうに話した。

「構わないよ〜♪食べて元気出してね!…それにさ〜ハクローくん、昨日すごくうなされて…具合も悪そうだったから、私…心配になってそれでベットに運んだの!」(ギュッ!)

「…そうだったのか。それで俺はベットに…あ〜…昨日はちょっとした夢をな…ベアさん、シャワー先に浴びますか?」

「うん!いつも朝シャワーは日課なんだ〜!♪」

「了解。じゃあ浴び終わったらゆっくり話ししますわ!…俺、先に朝食食べてるんで!」

「わかった!ハクローくんが見た夢ねぇ〜!なんか気になるな〜!…じゃあちょっと浴びてくるね〜♪…あと…別に…ハクローくんになら…私の大事なm…///」

「は〜い!ハクロールームサービススタッフのもので〜す!これあなたのタオルと着替えでーす!…では…」

バタン!!

「(・ー・)」

「…チェ〜!…大人しく入ろっと…!」

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜TOXより・異文明都市

ブゥーーン!!

「……それにしても…死後の世界にこんなビル街があるんだな〜!!てっきり何だろうな…こう紀元前のような草木まみれの自然が多いファンタジー世界だとばかり思ったが…電気とか、水道のインフラもあるし本当に現実的で。……だが謎ばかりだな…まあオーラルも、島それぞれの文明や価値観が違うって言ってたから、その名残か…」

【Hux・row】は【CronoSt】の街の風景を眺める。それはまさしくオフィス街とも言えるくらい、数多くのビルがあった。下手をすると迷子になりかねないと思いながら片手にトーストを食べながら、街の風景をじっくり観察していた。

(…まさしく人によっては外見は理想とも言える。だが裏側は…どうなんだろうな…)

ガチャッ!

「…ふ〜!♡さっぱりした〜!ハクローくん上がったよ〜!♪」

「あ、は……!?……ハァ〜……ベアさん…何でまた下着で…」(頭抱え…)

「うんふふ♡朝からハクローくんが元気になるおまじないだよ〜♪♡…どう?元気出た〜?♪」(二コッ!)

「…俺は別に元気ですけど。…まさかベアさん。…他の男性にもそんなことしてるんですか!?…下手すると逆セクハラで捕まりますよ!!…それに、そんなことして乱暴な男に襲われたら一体どうすんですか!?」

【Hux・row】はさすがにデリカシーのない【Beanne】に口頭で注意する。だが【Beanne】はそれに対し、笑みを浮かべ、茶化すようにいった。

「へぇ〜♪…意外に心配してくれてるんだ〜?」(お着替え〜♪)

「…まあ…ベアさんには世話になっているし…でも異性慣れしてるのはなんか疑問があると言うか…ベアさんって独り身なのか?」

「そだよ〜♪…ねぇ…この際だから…私達…付き合う〜?」

「さーて食後のコーヒーでも飲むか〜!」

「あ〜!無視しないでよ〜!!」(プク〜!)

【Hux・row】はこの世界にあるテレビのような空間ディスプレイでニュースを見て、【Beanne】はその隣に座り、トーストを食べていた。

ーーー次のニュースです。昨日【D島】のF街で【真・ユートピア創造士隊】が所有している隔離施設でテロ行為による火災が発生しました。首謀犯の収束は不明です。

「…一応この世界にもテレビみたいのがあるんだな…しかも立体映像だとはな〜!…【V.Prestina】の時もそうだけど、やっぱすげえ技術だよな!」

「そうだね〜!でもその分、その技術を悪用している奴らもいるんだ…本来人を笑顔にしたりこうやって快適な生活をするためにあるものを、自分の利益のために人を傷つけたりするような奴がね…だから私達がいるんだ!街の治安を守る【R・P社】のギルドチーム【Agente】(エージェント)としてね。」

「…【Agente】(エージェント)?…スパイってことか…」

「う〜ん、まあ諜報活動が主になっているからスパイといえばそうだね!…ちなみにギルドに所属する社員にはそれぞれのチームがあって、私の所属するチームはそう呼んでるの♪その中にはロランも所属しててね!…他のギルドのことを簡単に説明すると、犯罪者を取り締まる法と秩序の専門部隊【Hunter】(ハンター)やら救済活動や治療のスペシャリストの集まりの【Grazia】(グラージア) ってチームもあるんだ〜!」

「ほへ〜!…色んなチームがあるんだな〜!自分達が所属するギルドの区分をハッキリさせるように考えているんだな〜!…まあ俺としてはベアさんの所属する【Agente】ってチームはなかなか良いかもな!気に入った!」

「ありがとう♪!…でもハクローくんは【Agente】よりも一番人気の剣士や騎士の人間が多い【Soldate】(ソルダーテ)が向いてそうだけどな〜!あ、ハクローくんもシャワー浴びたら〜!?…なんか汗臭いよ〜!…まあ私は嫌いじゃあないけど〜♪!///」

「え、そうか!?…まあ寝汗か…わかった。これからベアさんの職場にも行かないといけないし、清潔にしないとな…じゃあちょっと入ってくるわ。…覗かないでくださいよ…」

「は〜い♪ゆっくり入ってよ〜♪」

「…はぁ…入るか…」

バタン!

「…ふふふ!さ〜てこの隙に、ハクローくんの洗濯物でも〜♪」

【Beanne】は素早く的確に、洗い物を分けて所有物を整理しつつ、素早く【Paradiso】製の洗濯機で洗濯を行った。そして【Hux・row】の着替えを用意した。暫くして【Hux・row】はシャワーから上がってきたようだ。

「ふ〜!さっぱりしたぜ〜!」

「あ、ハクローくん!はいこれ着替えだよ〜♪」

「あ〜ありが…え?」

「やっほ〜♪…へぇ〜♪…意外と…///」

「…あの、着替え持ってきたのなら出てってくれませんか…?」(ジトー!)

「はいは〜い♪じゃごゆっくり〜!」(意外ね〜♪でも私は好きかな〜♡)

「…はぁ〜やれやれ…こんな言葉があるのか知らんが…《恥はこの上知らず》ってやつかね〜?……ん?」

【Hux・row】は着替えの衣類を確認する。するとそこには、【Hux・row】・千夜・三橋の写った写真と千夜の十手が置かれており、メモには『ハクローくんの大切なものなら、【P-Watch】の預け入れ機能を使ってなくさないようにしてね!♡』とその使用方法を書いた詳細メモが置いていた。それを見た【Hux・row】は笑みを浮かべ、感謝するかのように心の中で語った。

(ベアさん…まあデリカシーがないところもあるが、まあああ見えても面倒見がいい人だからな。…俺は嫌いじゃあない…ありがとな。)

その後、【Hux・row】は身支度を終えて、鏡を見て自分の着ている姿を見て驚いた。下はベージュのカーゴのジョガーパンツ。上はダッフルコートのような服で、フードがあり、淵に白い狼のようなファーが備わっており、後ろの裾は三つに分けられている。色は海上自衛隊独特のデジタル迷彩仕様のネイビーカラーで丈の長さは膝の少し下である【Hux・row】自身はデジタル迷彩を見ていると少し懐かしく感じた。トップスには海上自衛隊の白の制服に見立てた白のカラーシャツを着用していた。そして疑問は、これをいつどこで調達したのかということである。そしてそのままドアを開けた。

「着替えたぞ〜!」

「ん?あ〜!やっぱ良いじゃん!よっ流石は元マリンソルジャー!!」

「ああ。…でもよ〜こんな服、どこで調達したんだ?」

【Hux・row】の質問に、【Beanne】は自信満々に答えた。

「ふっふ〜ん♪それはね〜…パンパカパ〜ン!!…これを使いました〜♪」

「ん?ロッカーか?【Wear.CR】(ウェア・クリエイティブ)…って言うのか?」

「うん!生地はこのマシンの中にあるから、君のイメージで私が機械を操作して作ってみたの!…どうかしら〜?気に入ってくれた〜?」

「ああ悪くないな〜!かなり丈夫だし、着心地もいい!…だが久々だな〜デジタル迷彩の服を着るの!…そうだ、これって出費とかかかるんだろ?」

「本来そうなんだけど、ギルドに所属しているから出費は特にいらないんだ〜♪ちなみに私の服もそれで作ったの♪今回は記念すべきギルド加入の日だから、ハクローくんへのプレゼントとして受け取ってよ!」

「そうか!わかった!ありがとうなベアさん!あとウォッチの機能のことも教えてくれて、おかげさんで大切なモノも預けることができたよ!」

「ふっふ〜ん〜♪どういたしまして!よ〜し、じゃあ行こっか!」

「…この服のままだけど大丈夫なのか?」

「うん♪ウチは私服全然OKだから♪じゃあ歩きながら仲良く喋りながら行こうよ!…昨日ハクローくんが見た夢の話もなんだか聞いてみたいし!」

「…了解した!」

【Hux・row】と【Beanne】は家の戸締りを終えたあと、階段から降りて、通勤路を歩いていく。その間、街の景色を見ながら、自分の見た夢のことについて【Beanne】に話した。するとそれは【Fiducia】の能力の一部で、夢の中で自分の内に秘めている心の世界【Sognare】と呼ばれているのだそうだ。よく言われているのは、その世界の中に介入した際には現世で自分の関わりのある人が現れ、心からの感謝やアドバイスをくれたりする現象が多いらしい。【Beanne】からはそう滅多に見れないらしいから【Paradiso】では吉夢とも言われているーーー

「へぇ〜!…で、気づいたら東京にいて、喫茶店でハクローくんの昔の居合道の仲間の人達と会って話しをしたんだね〜!…で、その後に君自身の心の中の世界【Sognare】に現世で存在している千夜ちゃんの心そのものと一緒に介入して、気づいた時にはそこは鏡写しの空間で、現世の時に君がお世話になった恩師さんと戦って…その人から【白狼夜宗流】(シロウヤシュウリュウ)っていう流派と技の型、千夜ちゃんからもらった十手にその絆の想いが募ったってわけなんだね〜!…で、極みつけはその愛人との別れに決着をつけたと!…なんだかハクローくんの【Sognare】ってさ〜…結構ボリューミーなんだね〜!?…普通ならすぐに終わるもんなんだけどなぁ〜!!」

「まあざっとそんな感じだ。今思えば、現世でいろんな人に会ったよ!…そして大切な事も教えてくれたんだ」

「ふ〜ん…でも本当にそれだけ〜?恩師の三橋って人と戦った時のような感じの悲鳴じゃあなくて、昨日はなんか…本当の意味で地獄にいるようなこと言ってたよ〜?…なんかむさ苦しいとか、虫唾が走る〜!!と…あとは極め付けは俺は男を抱く趣味は〜…」

「あ…それは…本当に…勘弁してください!…気分が悪くなるんで…オェ………」(頭抱え…)

(ん〜?…あ〜なるほどね。…それで昨日の【Jeik】に男に対して色目使うような発言されてあんなに怒ってたんだね〜…)

【Beanne】は何かを感づいたのか、【Hux・row】に問いかける。

「…もしかしてハクローくんってさ?……雲の世界【Delka】の花男達に捕まりそうになったの?」

「…!!…なっ…!?」

「…あ〜oh my god だね…その反応からしてやっぱりそっか。……あれに捕まるとは君も災難だったね…」(頭抱え…)

(?……あれ?思ったより茶化してこない…普段なら悪ノリして、色々言って笑いものにするもんだと思ったが…ちょっと意外だ…)

【Beanne】は【Hux・row】が【Delka】の花男達について、てっきり茶化してくるかと思ったら、なんか辛そうに頭を抱え、ご愁傷さまと言わんばかりの顔をしながら事情を説明した。

「…実は、うちのロランもね…彼らの被害者らしいの…その時に、小さい女の子が引っ叩いてくれて助けてくれたらしいんだけどね…それでこの世界に来てさぁ〜!……色々愚痴を聞いて…あまりの内容で私でも流石に茶化す気にもなれなくてね〜……」(やれやれ…)

「…そっか。…まあそうなんだわ…あの花男共はある意味で俺のトラウマなんだ。おそらく…それで心の中に根強く記憶されて最後の最後に…ハァ…」

「…もう二度とごめんだ…」「…ホントにお疲れさんだね…」(ポン!)

意外にも【Beanne】は【Hux・row】に同情して話を合わせて右肩に手を乗せる。【Hux・row】自身、デリカシーがなくて、よく際どくてセクシーさのあるスキンシップで茶化してくる事もあるが、時に人情があり、気配りのできる一面がある人だと知って安心した。

「…でも、よく無事だったね!誰かに助けてもらったの?」

「ああ、さっきの話にあった西野さんって人に実の妹がいてな。…その子も病気で亡くなってから【Delka】で執行者に捕まっていた所を助けて、一緒に行動していた時に、俺が奴らに捕まっていた所を助けてくれたんだ!……まぁ〜でも、電車は別だから違う島のどこかに住んでるんだろうな…また会ったらお礼もしたいし…それに…あの子を守るって約束もあるからな」

「そっか〜!…また会えるといいね〜♪一体どんな子なの〜?…特徴は?」

「名前はゆい。亜麻色のロングヘアの髪が特徴で、あとはう〜ん、なんかフワ〜としてて、抜けているところもあるけど何か芯を持っているのはあるか」

「胸のサイズは〜?私とどっちが大きい?」

「…多分ゆいちゃんだな。…あ、言ってしまったよ〜!!///」(頭抱え!)

「へぇ〜!ちゃんと見てるんだね〜♪よっさすがは、その観察眼はすごいね〜!」

「…あ〜はいはい!んで、まだ着かないんですか?……その【R・P】社って名前の会社は?」

「もうすぐだよ〜♪……ん?あ、ロラン〜ビルくん〜!!…おーい!」

「ん?あ、教官!それにベア姉さん!!」「おうベア!ハクロー!」

「ベア姉さん?…へぇ〜【Bill】!…もうベアさんと打ち解けてたのか〜!」「そうなんだぁ〜♪!ビルくんってね!意外とノリが良くてね〜♪」

昨日の騒ぎから、【Bill】【Rolan】と合流して再会を喜んだ。そしていよいよ、四名は【R・P社】(追憶と命題)の玄関に着き、ギルドセンターへと赴く。

「…なんか緊張するな〜!」「問題ないよ〜♪リラックスしなさい♪」「でっけ〜建物だなあ!!」「かなり高層でな、約高さ200mはあるんだ!」

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・4》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜氷菓より・チェロ組曲〜第一番

〜【R・P社】1Fエントランスホール〜

四人は玄関からエントランスホールの中に入る。室内からは現世のクラシック曲、バッハのチェロが流れており、香りはハーブの香りのグリーンが漂い、エントランス内は一面ガラスになっており、光が差し込んでおり、周りには観葉植物も置かれ、カジュアルな空間が広がっていた。そして受付の方へはまず【Beanne】【Rolan】が訪ね、その後に【Hux・row】と【Bill】が呼ばれ、身分証明を聞かれ、導き人からもらった勲章と【P-Watch】を元にデータを解析し、数秒後に許可が下り、10Fのギルドのあるフロアまで会社の構造を知るのも兼ねてエレベーターは使用せず、階段で4人へ行くことになった。

「…でも手続きは早いもんだな〜!【P-Watch】って、個人情報もすぐに探知できるんだな…だが位置情報は…わからないんだな〜」「それだけこの世界の技術が発達してるってことだよ♪」「教官!ベア姉さん!ロラン兄貴!…俺!…なんかこの【paradiso】に来てから、すげえワクワクしっぱなしだ!」「はっは!ビルは本当に面白くてな〜!…昨日の仕事を終えた後にひたすらと【V.Prestina】の魅力について語り合ったんだよ!」

〜【R・P社】5F〜

「【Bill】も服変えたんだな〜オリーブに上襟は茶色、下は青の足元の広いジーンズか〜!似合うな!」「ロラン!ちゃんとビル君の面倒見てあげたね♪」「ありがとうございます!でもさすが教官です!そのネイビー迷彩柄のコートといい、下のカーゴパンツといい、ミリタリーファッションが様になって似合いますね!!」「まあな!俺の見てくれにハズレはなかったようだな!ロシアの服をモチーフにしてみた!」

〜【R・P社】10F〜

四人が談笑している間に10Fフロアのギルドに辿り着いた。するとそこは無人の受付であり、どうやら空間ディスプレイでの手続きであった。その技術に思わず、【Hux・row】【Bill】は驚いた。現世の世界ではまず見たことのない技術であるため、とても驚きだった。

「きょ、教官…なんかすげえな!」「ああ。【paradiso】に来て俺達…この世界の技術が凄くて何度もすげえって言ってるな。え〜とここに【P-Watch】を翳してと…」

《テ〜レレレッテ レ〜テレレッテ・テッテレ〜♪》《リンダリンダ〜♪》

二人は指示通りに【P-Watch】を翳した。すると【P-Watch】から通知が届いたようだ。

【Hux・row】 ランクE 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ーーー
ギルドへの入会手続きの許諾を確認しました。室長室へお進みください。

【Bill】ランクE 
【♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡】
ーーー
ギルドへの入会手続きの許諾を確認しました。室長室へお進みください。

「室長室へお進みくださいか…」「どこにあるんだ?」「案内するよハクロー君!♪」「ビル!ついてこい!」

【Hux・row】は【Beanne】と【Bill】は【Rolan】と一緒になり、室長室へと案内される。そして長く、広い廊下を進んでいくと、そこには【L.Direttore】(L.ディレクター)と書かれた部屋に辿り着いた。いよいよと【Hux・row】【Bill】とはかなり緊張している。

「…いよいよだな…!」「ああ…どんな人だろう…うう…なんか緊張しますよ…教官!」「うふふ!大丈夫♪…うちの室長、良い人だから」「うんむ!時に厳しい時もあるが、理想の上司でもある!!」

四人のうち、【Beanne】が先陣を切り、扉を三回ノックし、【Hux・row】と【Bill】の二人を連れてきた旨を伝えると、許可が下りたので、先に入室を【Beanne】【Rolan】が行い、少しだけ事情を説明するかのように話をつけるような会話が聞こえ、しばらくしてから前から足音が聞こえ、【Beanne】が顔を出して笑顔で二人に問いかける。

「どうぞ〜♪緊張せずに入ってきてくださいな!」

「…ああ!」「し、失礼し、します!」

【Hux・row】と【Bill】は堂々と、室長室に入った。するとそこは赤いカーペットが敷かれ、緑のカーテンがあり、周囲は白い空間で彩られた空間であった。そして窓を眺めていた男性が目の前にいた。そして、男性はそのまま、二人に声をかけた。

「君達が…我が【R・P社】(追憶と命題)のギルド加入希望者か?」

「はい!私は【Hux・row】と申します!【Fiducia】の能力は探知系能力。ランクEです!!」(ビシッ!)

「お、俺は【Bill】と言います。【Fiducia】の能力は肉体強化系能力。ランクE!」(ビシッ!)

「…フッ…そうか!」(クルン!)

「……え…!?」(…な!!…なんで…!?あなたが…この世界に!?)「きょ、教官…?」

すると、その男は振り返り、【Hux・row】と【Bill】の方を見る。その容姿は、西洋の紳士のような二つ分けの髪型をし、長いロングコートを羽織っていた。その顔つきや姿を見て、【Hux・row】はとても驚いた表情を見せていた。それは自分の恩師でもある三橋と顔と姿、体型が瓜二つであり、声も似ていたからである。思わず声を出しては目を大きく見開いて驚き、その隣にいた【Bill】もその様子に少しばかり驚いた様子だ。その様を見た男性はこう語りかける。

「ん?どうしたんだい?【Hux・row】君。…私の顔を見てそんなに驚いた顔をしているようだけれど?……その顔色から察するに、現世で君が住んでいた頃、私とそんなに似ている人でもいたのかな…?」

「…!!い、いえ何でもないです!失礼しました!」(ぺこり!)

「……?」(…普段落ち着いている教官が…あんなに驚いている!!…やっぱり室長…とてつもなく凄い人なんだ!)

【Hux・row】の様子を見て何かを察したのか、状況を理解し、少し落ち着いてから再び二人に話しかけた。

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜ゼルダの伝説風のタクトより・ハイラル城

「…話を戻そう。私の名前は【Lu-cis・ H】(ルーシス・ハーレクライン)。……この【Paradiso】で生まれたユートピア人でランクはS4。このギルドの管理を務める室長だ」


《【R・P】社ギルド部門室長【Lu-cis・H】(ルーシス・ハーレクライン)》


「君達の事は、導き人のオーラルからも話は聞いている。無事試練を乗り越え。…我がギルドに足を運ぶ日が来ると思っていたよ」

「…!!」

「お、オーラルの事知っているのか!?ど、どこで俺達の事を!?」

「お、おい!【Bill】!!相手は室長だ。言葉遣いに気をつけろ!【Lu-cis・ H】室長、すみません!私の仲間が騒がしくしてしまい…」

その態度に、【Lu-cis・ H】は寛大な心で、笑いながらこう話す。

「ふっふ。別に構わんよ。君には面白い仲間がいるのだな〜!…通りでベアとロランがスカウトした訳だ!…後、私のことは、【Paradiso】の名前ではいい辛いだろう。気楽に《ルーシス》と言ってくれ!…君達はどのような武器を使用するんだい?」

「私は剣です!」

「俺はこの拳!!」

「…なるほど。ではこれは極めて重要な質問だ。君達はこのギルドに来て一体何をしたいのか…何を成し遂げたいのかを答えてもらおうか。…ではまず【Hux・row】君」

「はい。私はこの世界に来て初めて…悲惨な現実を体験しました。自分達の世界の創造の為にと、意志確認の余地もなく、ユートピア人を無理やり隔離し、そして私達のように試練を乗り越え、【現世人】としてこの世界へ入界した者達を無差別に数々の殺戮を目論む【真・ユートピア創造士隊】所属の【Varisk】の者達とも敵対しました。戦闘の時に剣を振るうことに迷う事があり、敵の命を取ることも躊躇した時だってありました。ですがその度に剣は何の為にあるのか。…それを考え、私は私なりにその課題と向き合い乗り越える事が出来ました。現世でお世話になった大切な人達。そしてこの私を心から信頼し、愛してくれた人の分まで。……この【Paradiso】で私は強く生きて行き、【R・P社】(追憶と命題)のギルドの一員として加入する事を望んでおります!」

【Hux・row】の問いに、【Lu-cis・ H】は首を動かし、頷く。そして次は【Bill】に視線を置き、こう答える。

「わかった。では次に【Bill】君」

「は、はい!俺も大体言うことは教官と同じ。だけど俺は一年前に、この【Paradiso】に来て、自分の愛犬で、友達のクウと生活したりして自分なりに誰にも迷惑かけず日々を楽しく過ごしてた。だけど突然一年後に、方針が変わったとかで【真・ユートピア創造士隊】が引き連れてた殺し屋に俺の家を壊されて、友達だったクウも何処かに連れ去られた。…クウ…今も寂しくしてると思う!!…だから俺は、あんな悪い奴らを許せない!俺もこのギルドに入って、ベア姉さんとロラン兄貴、そして教官と一緒に戦って、この世界で起こっている問題に立ち向かう!そして、俺のいた現世で、俺が立ち止まらないように母さんが亡くなったことを内緒にしてて、ずっと苦労していた親父、そして親友の山崎、昔海で助けた涼子ちゃんの為にも…俺はこの世界で強くなりたいんだ!」

チク…タク……

「………そうか」

秒針が鳴り響く執務室。二人の決意を感じ取った【Lu-cis・ H】は笑みを浮かべ、このように伝えた。

「…よし!君達二人のその決意…確かに伝わった!…君達を我が【R・P社】(追憶と命題)のギルドへの加入を認めよう!」

「…!!ありがとうございます!」(ぺこり!)「あ、ありがとうございます!」(ぺこり!)

「よかったね〜ハクローくん♪」「おめでとう!ビル!」

「ああ、ありがとう!ベアさん!」「ありがとな!ロラン兄貴!俺!頑張るから!」

【Hux・row】【Bill】は【Beanne】【Rolan】の歓迎を受ける。そして、【Lu-cis・ H】は、二人に書類を渡した。

「ではハクローくん!ビルくん!…これを君達に渡す!これは、ギルドの加入の契約書と希望するギルドのチームについて書いてある。自分の希望するギルドのチームをじっくり決めることだ。では私は昨日は徹夜だったので少し仮眠に入らせてもらうよ。ベア、ロラン!二人の世話をよろしく頼む!」

ギィ…バタン!!

「……あれがベアさんのチームの元リーダーか…こりゃあ驚いた…!まさか三橋三等海佐と姿や声も瓜二つなほど似ているとはな…」

「へぇ〜そうなんだ!ハクローくんの恩師さんがルーシスおじさんとね〜!あ〜でもあの時、三人写った写真を見たけど、確かに似てたかもしれないね!…これはドッペルゲンガーってやつだね〜♪まあそのリーダーが今や室長だからね〜!」

「でも…あの人…威厳があった!俺…思わず噛んでしまった!」

「………」(やけに口数が少なかったな。相当眠たかったのだろうな…室長)

その後、四人は10Fのフロアに戻り、【Hux・row】【Bill】の二人は先程渡された契約書の内容を読んでいた。



【R・P社】《Recollections and propositions》 contract
(『追憶と命題のギルド』契約書)

I truly swear here to fight for the order and peace of the 【paradiso】 world in the guild of recollection and proposition.
(私は嘘偽りなく、追憶と命題のギルドで【paradiso】の世界の秩序と平和のために戦うことをここに誓います。)

About the guild team
(ギルドチームについて)

The guild teams that currently exist are as follows.
(現在存在するギルドチームは以下の通りです。)




1.【Soldate】(ソルダーテ)
《PR》Soldier and Knight Guild ... We are looking for proud soldiers and knights who will correct the peace and order of the world as brave swordsmen.
(兵士兼騎士ギルド・・・勇敢なる剣士として世界の平和と秩序を正す誇り高き兵士・騎士を募集しています。)

2.【Hunter】(ハンター) 《PR》Guild, the Guardian of Law and Order ... We are looking for someone who can crack down on crime and respond to criminal acts around the world.
(法と秩序の番人ギルド・・・犯罪を厳しく取り締まり、世界各地にある犯罪行為に尽力に対応できる人を求めています。)

3.【Grazia】(グラージア) 《PR》Guild specializing in medical care and treatment ・ ・ ・ Mainly specializing in medical treatment, as a medical team, we are looking for people who can quickly rush to treat residents who were injured in the event of a battle or disaster.
(医療・治療専門ギルド・・・主に治療を専門とし、医療班として、戦いや災害の際に負傷した住民を迅速に治療に駆けつけることのできる人を求めています。)

4.【Agente】(エージェント)
《PR》A guild specializing in intelligence activities ... In order to protect the security of people's towns, we are mainly engaged in activities to expose wrongdoing such as camouflage behind the scenes, and we are looking for people who are good at collecting information, stealth and searching.
(諜報活動専門ギルド・・・人々の街の治安を守るため、裏方で偽装等の悪事を暴くための活動を主に行っており、情報収集や隠密や探索を得意とする人を求めています。)



Rules.
(規則)



1.You can change the guild you belong to at any time. However, once you have decided, try to keep track of achievements as much as possible.
(所属するギルドはいつでも変更可能です。しかし、一度決めた以上はできるだけ実績を残すようにしてください。)

2.Don't fall into others to make a mark. Please do not forget to consult with each other and always work hard without conflicting with each other.
(実績を残すために他人を陥れることはやめましょう。互いに部署同士相談し、いがみ合うこともなく常に切磋琢磨する事を忘れないようにしてください。)

3.Take good care of your friends. Let's help each other in case of trouble so that you don't forget that it is the precious life of one important person before you are your colleague.
(仲間は大切にしましょう。あなたの仕事仲間である以前に大切な一人の尊い命であるという事を忘れないよう、困ったときは助け合いましょう。)

4.Normally, we crack down to prevent the murder of good citizens, but for traitors who are driven by power and greed and turn over to the side who plans unnecessary murder, it is strict based on the law, and in accordance with the law and order. I will judge.
(普段我々は善良な市民への殺戮を未然に防ぐ為に取り締まりますが、力と欲に駆られ、無用な殺戮を企てる側に寝返るような裏切り者には掟に基づいて厳しく、法と秩序に則って裁きます。)


Other
(その他)



1.There is a lot of dirty work in my work, so feel free to use (wear creative).
(仕事上、汚れ仕事が多いので、【Wear.CR】(ウェア・クリエイティブ)は自由に使ってください。

2.Wear the 【R・P・S・A】 armband during security activities. * If you attach it in case of an emergency, special emergency measures will be applied and exempted for financial troubles.
(治安維持活動中は【R・P・S・A】の腕章をつけましょう。※もしも緊急時の際に付けておくと、金銭面のトラブルに対し、緊急特例措置が適応され免除されます。)

3.The [RP company] guild has restaurants, daily necessities stores, and various complex facilities. There is no charge for using the training gym, battle simulation equipment, etc. Please use it positively as a discipline during your mission.
(【R・P社】のギルドにはレストラン、生活用品店等、様々な複合・娯楽施設があります。トレーニングジム、戦闘シミュレーション機器等の使用料は無料です。任務の際の鍛錬として積極的に使用してください。)

4.The medical team will take responsibility for the treatment of injuries and injuries inflicted on the mission, but please prepare as much as possible for soul-replenishing agents and take action after considering the personal safety of the members.
(任務で負った負傷、治療には医療班が責任持って治療しますが、できるだけ充魂剤等の下準備をしてから加入メンバーの身の安全を考えた上で行動を心がけてください。)

5.Every time you clear a mission, you can get more battle result points and rewards than usual. When placing an order, be sure to receive a request that is commensurate with your ability.
(ミッションをクリアするごとに戦果ポイントや、報酬が普段より多く獲得できるものがあります。受注する際は、自分の実力に見合った依頼を受けるようにしてください。)

6.As for weapons, we also have a tie-up with the Blacksmith Guild, where we accept requests for strengthening weapons and repairs free of charge.
(武器については、鍛冶屋ギルドとも提携を組んでいるため、そこで武器の強化の依頼や修理を無償で引き受けております。)









Finally…
(最後に…)
We are trusted by the people as employees of [RP]. Please be aware that you are always grateful before you start your mission.
(我々は【R・P社】の社員として、国民から信用されています。日頃から感謝されているという気持ちを忘れずに自覚した上で任務に臨んでください。)


We recommend that you sign after understanding the above.
以上のことを理解した上でサインされる事を推奨します。
現在:【Paradiso】歴2000年 6月18日 名前:()
               
所属を希望するギルドチーム()


・・・
・・



「…やっぱり導き人の時の入界手続きみたく、細かく書いてるな。だが後は、どこのチームにするかか…【Bill】決めたのか?」

【Hux・row】は【Bill】にどのチームへ所属するかを確認した。するとすんなりわかるように署名を書いて【Hux・row】に提示した。

「ああ!俺はやっぱり!ベア姉さんやロラン兄貴のいるところにするよ!教官は?」

「フッ、やっぱ俺達はおんなじ考えだな!俺も同じく【Agente】(エージェント)にした!」

「…そうか二人共、予想通りに俺達のチームへ入るつもりか?」

二人がギルドチームを決めたやりとりを見て、【Rolan】は【Hux・row】【Bill】はやはり自分達のとこに来るかと思っていた。だが【Hux・row】の判断に【Beanne】は少しもったいなさそうにこう告げた。

「え〜っ!?ハクローくんは絶対【Soldato】(ソルダーテ)に行くべきだと思うんだけどな〜!強い人は多くて待遇もいいし、それにハクローくんの剣の腕なら向こうのチームですっごく活躍できそうなのに〜!」

「…いや、これでいいんだよ、俺は。…それに多分【Soldato】(ソルダーテ)は名門なだけあって組織の規律とかに厳しそうな気がするから、おそらく俺には向かないよ。やっぱ俺は俺自身の意志で行動が効いて、裏を暴いていき、そいつらの思惑や粗暴を静止させて町の住民を守って行く方が良いかな。幸い、俺は探知系能力者だから、諜報活動を主体にしている【Agente】の力にもきっとなるはずだ!…それに俺も【Bill】と同じ気持ちで…あの死戦をくぐり抜けてきた仲だからこそ、アンタ達と一緒の仕事がしたいんだ!!」

【Hux・row】は【Beanne】を説得するかのようにこのように問いかけ、【Beanne】は少し名残惜しいが、笑みを浮かべて納得するかのように話した。

「しょうがないな〜!でも私の所のチームは窓際部署みたいなもんだから、あんまり人はいないから期待はしないでね〜♪」

「うむ。ベアの言うとおりでな。契約書にも書かれているが、我々は4番だろ。これは人気順なのだ。我々の部署はそこまで待遇は良くなくてな。…それでも我々のところへ来ると言うのか?」

【Hux・row】と【Bill】は【Rolan】の問いに怯むこともなく、このように告げた。

「別にそんなことは構わないよ。チームの待遇とかは気にしない。悪事を働く奴らがいればこの剣を振る機会があるかぎり、戦うまでだ!」「俺も!この拳で悪いことをしてる奴をぶっ飛ばすだけだ!」

二人の意志は揺るがなかった。それを見て、【Beanne】と【Rolan】はお互い向き合いながら、諦めたようにこのように二人に伝えた。

「わかった!…じゃあついておいで!案内するから♪」「こっちだ、二人共!」

タッタッタ…

「…ここだよ!ちょっと待っててね〜♪」

コン!コン!コン!コン、コン、コン、コン!!

【Beanne】はリズミカルにドアをノックした。すると合図であると思われたのか、鍵が開き、向こうから声が聞こえてきた。

カチ! は〜い!どうぞ〜!

「な、なんだ…これ?」「暗号ってやつか?」「うむ。あ〜でもしないと中に入れてもらえんのだ…」(頭押さえ〜)

「じゃ、入って入って〜♪」(ガチャ!おいでおいで〜♪)

「失礼します!」「お、おじゃまします!」

二人はそのまま入室する。そしてここから、【R・P社】に属するギルドの流儀というものを、少しずつ学んでいくこととなるーーー

・・・
・・


B. いいえ


《Capitolo・5》
続きを読みますか?

🎼Back Ground Music 》》》



♪〜君の名はより・糸守高校

二人は【Beanne】に手招きされ、【Agente】(エージェント)の部署に入室した。そこはアンティークな雑貨が置かれ、年代を感じさせるレトロな雰囲気があり、何処か温かい雰囲気があった。目の前には緑のバンカーズランプにアンティーク調の机で誰かが手を振っていた女性がいた。容姿は赤毛気味の茶髪の髪色のストレートのロングヘアをしており、外見からするに【Beanne】と同年代くらいの容姿をしており、二人に元気に挨拶する。

「おっ!こんにちは〜♪!!初めまして〜君たちがベアとロランの言ってた二人〜?…へぇ〜!なかなかいいルックスしてるじゃ〜ん♪んじゃあさ、早速契約書見せてよ!」

「は、はいこちらです!」(受付嬢か?…にしては思った以上に明るいし、なんか馴れ馴れしいな…)「ど、どうぞ!」(赤毛か〜!なんか珍しいな!)

「どれどれ〜!……」(ふむふむ…ベアからはハクロー君とビル君って聞いてたけど…へぇ〜本当は【Hux・row】と【Bill】って言うのね…)

女性は、じっくりと契約書を確認しており、二人の体格を観察するかのようにチラチラとこちらを見ている。すると明るく笑顔で笑い、自己紹介を始める。

「そっかそっか!では改めまして…ようこそ〜♪諜報ギルドチーム【Agente】(エージェント)へ〜♪!私はここのギルドのリーダー兼参謀を務めている【Campanella】(カンパネラ)っていうの!君達と同じ【現世人】でベアとは同い年なんだ〜!よろしくね〜♪」


《【R・P】社・諜報ギルドチーム【Agente】(エージェント)リーダー・参謀》
          《【Campanella】(カンパネラ)》


「…なっ!?リ、リーダー!?その若さでか!?」「す、すげえ〜!!さ、参謀って…俺達族でもかなり上の言い方だから、すごく、凄腕なんだなっ!!」

「ふっふ〜ん♪!まあね〜!後、君たちの活躍のこともベアとロアンから聞いてるよ〜♪!特に!そこのハクローくん!【C島】と【D島】で【真・ユートピア創造士隊】の下っ端とか【Varisk】の一人とやり合って大暴れしたんだってね〜!?♪凄いじゃん!!」

「は、はぁ…ありがとうございます…」「まあ無事になんとか逃げ切ることはできたけど…」

二人は心の中で思ったが、【Campanella】(カンパネラ)がこのチームでリーダーを務め、そして二人と同じ現世人かつ参謀と聞いてとても驚いた様子である。そして何より諜報活動専門の部署にしては明るく賑やかということである。【Hux・row】自身はスパイということなので暗い感じのものを考えていたからか少しだけギャップを感じていた。そして【Bill】自身も、洋画に出てくるような、機密な感じの空間のイメージを持っていたようで、すこし拍子抜けした様子であったが、思い返してみると【Beanne】の明るい性格から、あれだけフレンドリーな性格をしていることから、それを考えれば、【Beanne】はこの明るい部署で育ってきたのだというのも説得力になると感じ、二人は概ね納得した。そして【Campanella】は【Beanne】と【Rolan】に話しかける。

「でさ〜ベア、ロラン!この新人二人の世話、ちゃんとこなしたの〜?」

「うんバッチリ〜♪昨日ハクローくんをウチに泊めてね〜!♪…もうちゃんと甘〜い♡スイーツのようなスキンシップが取れたよ〜♪」「俺はビルにひたすらこの世界のマシンについて色々と話をな!!」

「ちょ!ちょっとベアさん!?///誤解招くことを【Campanella】参謀に言わないでくださいよ!…すみませんホントベアさんには何も手は出していませんから!!///」

「おお〜!!教官って昨日ベア姉さんのところに寝泊まりしたのか〜!?大人だな〜!俺も教官をm……」

「【Bill】!!そこは見習うな!お前は普通にしていろ!///」

「あ〜っははは!!面白いね〜二人共〜♪後ハクローくん!別に私のことは、普通にネラって言ってくれて構わないよ〜♪ネラリーダーなりネラ参謀とか好きに呼んでよ♪!ウチは別にそんなに固いことは好きじゃあないからさ〜!……それとも…ダメかな〜?」(うるうる上目遣い…)

「うっ!……はぁ〜わかりました。じゃあネラ参謀と呼ぶことにします!」(ビシッ!)

「了解〜♪じゃあこれからよろしくね〜ハクローくん!!」(バッ!)

「よろしくお願いします!ネラ参謀!」(ガシッ!)

【Hux・row】は【Campanella】と握手を交わした。すると、【Campanella】は握られた手の感触から何かを感じ取った。

(…ふむふむ…この手の感触…なるほど〜伊達に何度も剣を振ってきたわけだね〜♪これは期待できそう!)

「はい!じゃあ次は〜ビルくん!よろしくね〜!!」(バッ!!)

「こちらこそよろしく頼みます!ネラさん!」(ガシッ!)

(ん〜?…これはこれは…うん!これからの成長に期待だね!)

「…【Bill】…さすがにこれから俺達の上官になる人にさん付けはまずいだろ!!」

「あ、ごめん教官!つい言ってしまった!!あ、あんまりこんなことに慣れてなくて…ネラさん!」

「おい!!またさん付けして言ってるぞ!!緊張しすぎだっての!!…あ、ネラ参謀すみません!」(ペコリ!)

「「「……w!」」」(プルプル…!)

二人の漫才ともいえるこのやりとりに【Beanne】【Rolan】【Campanella】は流石に笑いが堪えなくなったのか、盛大に大笑いした。

「あ〜っははは!!!!本当にこの二人面白いね〜!!ww」(腹押さえて指差しー!)「でしょ〜♪本当にハクローくんとビルくんいると退屈しなくてさ〜!ww」「ちょ!ビ、ビル…wっ緊張してるからって流石に二回は…くっ…!ww」

アーッハッハッハッハ!!あ〜腹いたい本当に〜!胃薬ある〜?w

「…はぁ…まあいいか…」(やれやれ…)「あ、あはは…」

【Agente】内の部署から笑い声がしばらく続き、その後、しばらくしてから三人は笑いが収まり、改めて、【Campanella】がある提案をした。

「…ふ〜っ!じゃあ君たちの新入歓迎も兼ねて、ちょっとテストをしてもいいかな〜?」

「テスト…?」「えっ!?ここまで来て筆記テストか!?…俺勉強は苦手なんだよな〜」

「あ〜違う違う!…君達の実践能力だよ〜!どれくらいの実力があるか…見てみたくなってね〜♪」

「あ〜なるほど腕試しか!」「…そういうことなら!」

「ふっふ〜ん♪…じゃあ張り切っていきましょう!こっちへ来て〜!」

すると、【Campanella】は部署の外から出て、二人を案内する。

「…で、どこまで行くんですか?ネラ参謀?」「ネラさん…いったい何処まで?」「も〜う!またネラさんって言ってるよ〜ビルくんw」「まあ許しが出たんだからいいだろう…w」

【Campanella】の後をついていく4人。すると辿り着いた場所はまるで金庫のように頑丈な扉が目の前にあった。

「よ〜し、ちょっと待っててね…」(ピッピッピ!)

ガシャーー!!ガコーーーン!!

「うぉっ!?開いた!」「すげぇ!!マジでSF映画の世界みたいだ!」「私も最初来たときに驚いたな〜!ロランとかすごく喜んでいたよね!」「そうだな!なんかこんなサイバー世界のような仕掛けは男心が擽られるんだ!ロマンてやつだな!」

「さてさて行こうか!ついて来てね〜♪」

無事に【R・P社】(追憶と命題)のギルド【Agente】(エージェント)への加入を果たした【Hux・row】【Bill】の二人。ギルド参謀【Campanella】の後を追っていき、奥へと突き進んでいく…その先に待つものはーーーー

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《To Be Continued…→》
 
 
 
 
 
 
 


第12話:【R・P】社(追憶と命題)ギルド
完読クリア!!



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