🎼Back Ground
Music 》》》
I don't like or hate it. I like it, I'm indifferent, isn't it?
(好き、嫌いじゃないですよね。好き、無関心ですよね反対語は。)
A little step will create a new point of change.
When a new change point is born, it becomes clear that there are no major things that I was worried
about, and that I understand and do not understand.
(ちょっと一歩やると新たな変化点が生まれる。新たな変化点が生まれると悩んでたことの大したことと無い事と、分かった事と分からないことが分かってくる。)
TOYOTA Akio
(豊田章男)
〜【Paradiso】歴2000年:7/22・朝方【E島】・【Velkana】・街外れの教会〜
コツン…コツン……!!
コトッ……
「……久しぶり。…半年ぶりだね。…ベルナ姐さん…」
「……お母……さん…」
時は、【Paradiso】歴2000年7/22───────【E島】の【Velkana】にある市民街の街外れにある教会で、【Beanne】と【Roar】が訪れていた。【Beanne】の手には梅酒の酒瓶、【Roar】は、《成功》を冠した白い《ネモフィラ》の花束が持たれていた。それらを【Bellna】の墓地の前に備え、彼女を供養するようにこう伝える。
「…姐さん。…無事に終わったわ。…ここでの任務。…でも私はあくまで【Dail】邸の主を確保に協力しただけ。…肝心の…あの男の情報を知る【Makiras】(マキラス)からは何も得る事は出来なかったわ。……ごめんなさい」
「……ベア…姐さん」(ギュッ!)
【Beanne】は【Bellna】に対し報告をする。隣で彼女の身体にしがみついている【Roar】は不安そうに見つめる。
「……〜♪」
なでなで♪
「!?///」(テレテレ///)
それを【Beanne】は、安心させるように彼女の頭を優しく撫でる。
「心配しないで、ロア。…私は大丈夫だから。……ありがとう♪」
ダキッ♡
「〜!?///…ベア姐さん…///苦しい…///」(プシュ〜!)
【Beanne】は【Roar】に思いっきり抱きつき、【Bellna】と過ごしていた日々の事を思い返しつつ、今の現状を更に伝える───────
「ふふ〜ん♪…あぁ〜!落ち着くな〜♪……昔こんなふうにベルナ姐さんが抱きしめてくれたな〜♪…よく《ちんちくりん》だとか《甘えん坊の鼻垂れ娘》とか色々言われてさ〜!…ふふ〜ん、でもこうして大人なアダルティーで、晴れてあの【Makiras】を倒した。…今、私が教育係としてスパイやアダルティーのノウハウを教えてる自慢のフィアンセ♡新人【現世人】《ハクローくん》とね〜♡ルーシスおじさんとベルナ姐さんと同じくらいイチャイチャラブラブ生活を満喫してるよ〜♡…ま、今は【Grazia】(グラージア)で入院中だけどね……」
「!?///……ハクロー…さん……早く身体が良くなって欲しい……です…///」
「ふふ〜ん、大丈夫だよ〜!ハクローくんなら私に会いたいが為にすぐに目が覚めてくれるよ〜!必ずね〜♡!」
タッタッタ…
「やっぱりここにいたのかい。…ベア、ロア?」
「んん〜?…あ、ルーシスおじさん遅〜い!」
「お父…さん」(ぺこり!)
二人に声を掛けた者は、【R・P】社ギルド室長の【Lu-cis・H】であった。その手には彼女の形見であるのか、ペンダントが持たれていた。
「…ごめんね。…迎えに来るのが遅くなってしまったようだ。……終わったんだな……」
ジャラッ!……
「………」
「……ルーシスおじさん…」
「…お父さん…」
【Lu-cis・H】は墓地の前にしゃがみ込み、一同を代表して彼らから手渡された色取り取りの花束を置き、今回の任務について心に念じ、黙祷する───────
「……」(ベルナ。……どうやら今回の任務は我々【R・P】社のギルドメンバーだけでなく、アガルタからの伝令でルーヴェスやフカベ君に…ルビアにルクナ…そしてオリアナのメンバーの一人の…アリア【Aria】という名の女性の協力もあって無事成功したみたいだ。……本当に良かった。……だが出来れば僕も今回の任務に居合わせたかった。…けど皆に止められてね。……ここは、将来を担う次の世代の部下に任せて託すべきだと……結果的に遂行する事が出来たみたいだ!…感謝している!)
《黙祷》
「……」(黙祷)
「……」(黙祷)
一同は黙祷し、その場面を見守る───────そして暫くしてから立ち上がり、【Beanne】に視線を合わせる。
「……ベア。…いいかい?」
「?…何、ルーシスおじさん?」
「…ついてくればわかるよ。……ロアも一緒に」
「…はい」
タッタッタ……
一同は教会の外に出る。そこには、ある現世でも見慣れたものがそこに安置されていた。
🎼Back Ground
Music 》》》
♪〜Gr4より・Moon Over the Castle
ブロロロロr………
「?……!?…ルーシスおじさん…この車って!?」
「!?…あの時……今回ターゲットの怖い男の人(【Dail】)…が乗っていた……黒い…車…!?」(ビクッ!!)
二人の目の前に現れたのは、【Dail】が乗車していた一台の車であった。しかし、それを【Lu-cis・H】は首を振り、こう説明する。
「これはあくまで仮初。…ダミーだよ。……本当の正体はね……」
ガチャッ!……バタン!
「…んん〜?」(首かしげ?)
「?」(首かしげ?)
二人は首を傾げていた。【Lu−cis・H】は車内にあった暗証番号のコードを打ち込む。入力を終え、一度車から降りる。
ガチャッ!…バタンッッ!!
「…これでよし!」
「?…ルーシスおじさ〜ん?一体どういうこと〜?」
「?……お父さん。……一体…これは…」
二人の質問に対し、【Lu-cis・H】はこう告げた───────
「…これはね。…元々ベルナの愛車だったんだ。…どうやら上手く姿を隠しつつ、今回の事件の情報を、極秘に手回ししてくれてね」
「!?」
「!?…え。…!!ええええ〜〜〜〜〜!!??」
二人は驚く。そして続きを語る───────
「懐かしいよ。…この車にはね。……《フォーム変換機能》を備えているんだ。…今はいない技師に頼み込んで、特別にオプションを備えてくれたんだ。……唯一お気に入りだったのは。…彼女と妹のネラが現世で両親から代わりばんこに助手席へ乗せてもらっていた……」
ブロロロロロr…………!!
ブォ〜〜〜ンン!!!!
「!?…す、スポーツカー!?」
「し、白い…です!!」(キラキラキラ!!)
暗黒の黒に染められたその車は、現世に存在したあるペガサスホワイトカラーに彩られた《スポーツカー》へとその姿を変える。フロント・リアにはメーカーのエンブレムは一才見当たらなかったが、《2000GT》と名残のある刻印が刻まれており、2ドアではあるがカスタムされていたのか、後部座席が存在しており、本来2人までの乗車制限が、最大《5人》までの乗車が可能な仕様となっている。駆動方式は《FR(後輪駆動)》で構成され、そのフォルムは当時の時代でも、そして現在の時代でも通用する革新的で洗練されたカーデザイン。
──────まさに《レジェンドカー》と呼ぶに相応しい仕様となっている。
「ルーシスおじさん…」
「…お父さん…!!」(キラキラ!)
「…サプライズだよ。…さて、ベア!運転頼めるかな?」
「!?え、ええ〜ッッ!?私でい、いいの!?」
「べ、ベア姐さん…!?」
「構わないよ。…君が運転してくれるならベルナもきっと喜ぶ。…それに、【V・Prestina】の他にも車の運転はお手のものだよね?」
「…あ、あはは。…〜♪…まあ〜ね〜♪」
「…!!」(ワクワク♪)(運転…ベア姐さんの運転……ちょっと怖そうですけど。……お母さんが乗っていた車…かっこいい…です!……この白い色…お母さんのようで……まるでハクローさんの髪の色みたい…です…!///)
黒い車は、白のペガサスホワイトへと変貌を遂げる。それは恰(あたかも)も、《色欲》と《強欲》に塗れた独裁政権により、黒に染め上げられ、支配されていた花の街【Velkana】が、来るべき清算されし時の訪れによって《神秘なる歌姫》による、オペラ合唱の恩恵と祝福が施され、生前彼女が愛していた白い潔白のイメージのある、元の花の街へと還元され、再び形ある姿として平和を象徴とする意を成しているようにも見受けられた。
キラキラキラ………
「…じゃあベア、頼んだよ」
「運転、お願いしました……ベア姐さん」(ぺこり!)
「任せて〜♪…ふふ〜ん!…腕が鳴るね〜♪」
ブンブォ〜ン!!………!!
ブロロロロロ!!!!!…!!
グォーーーンン!!!!!
「!?…〜♪」(Wo〜w〜♡…スタートダッシュも直線もはや〜い♪!!)
ブォーーーーン!!!!
車はとてつもないスピードで直線道路を疾走する。これには助手席に乗っていた【Lu-cis・H】と後部座席に座る【Roar】はすこぶる驚く───────
「!?……」(これは驚いた。…ベルナ以来だね。………軽く300km…いや、400は軽く出ているようだ。……それに…楽しそうだね…ロア!)
「っ!?…〜♪」(ワクワク!)(これが…速さの世界……!!…凄い…です!!お母さんが乗っていた…車!!)
ブロロロロロ!!!!
隼のように疾走する車。しかし目の前には急カーブが立ち塞がる──────
「……ベア。…もうすぐで急カーブだよ。…スピードを落とし……!?」
「!?」
「…………」(にぎにぎ…)
【Beanne】はある某走り屋漫画に出てくる豆腐配達を生業にしている者の如く、運転にめっきり集中してハンドルを握り締め、決して減速せず立ち塞がるカーブにそのまま直進し、曲がろうとする。
ブォオオオオオンン!!!!!
「よ、よせベア!!そんなスピードでは曲がれない!!!」
「き、危険です!!…ベア姐さん!!」
「……〜♪」
《ハクローくんの大切にしている《侍》スタイル……《居合道》のように…風を斬るかの如き曲線で……この峠のコーナーを制する!!》
ブロロロ………!!!
キキ〜ーーッ!!!
「!?…くっ!!」
「き、キャ〜〜〜ッ!!!!」(ブワァッ!!!)
「………!!」
《取った!!!》
キキ〜……!!
ブロロロロ!!!!……
ブォーーーン!!
【Beanne】は華麗なハンドル捌きで後輪を横滑りに摩擦させ、まるで技の一つである路肩の溝にタイヤを進入させ、ジェットコースターのようにほぼスピードを落とすこともなく大技のドリフトを決める。その様子に【Lu-cis・H】は笑みを浮かべ、【Roar】は涙目を浮かべる。
「…そうか、ベア。…《風と地の能力》を使ったようだね。…邪道ではあるけど…」
「大正解だよ〜ルーシスおじさん♪…流石に能力使わないと事故するからね〜♪…まあいいじゃん♪お陰でスリルあったでしょ〜?ロア?」
「は、…はい。……こ、怖かったです……うぅ〜……」(ぴえん…)
【Beanne】は森羅万象の地・水・火・風の能力の内、風と土の能力を使用し、華麗に事故する事もなくカーブを曲がり、そのまま超高速のスピードで道路を疾走していく───────
───────※あくまでフィクションかつファンタジーの世界です!危険運転の為、絶対に真似をしないで下さいッッ!!!
・・・
・・
・
〜数分後〜
ブロロロロロ……
「………」
ブォーーーン!!
「…そろそろトンネルの区間か。…恐らくは……!!」
チャカッ!!
「お、お父さん…!?」(ビクゥッ!!)
突然【Lu-cis・H】はハンドガンを持ち出す。その様子にロアは驚く。
「心配しないで、ロア……どうやら追手が来たようだからね。…これで撃ち落とさせてもらうよ」
ダァン!! ダァン!!
パキャン!!
『kdkf48439403』
『kdsldsjs85473』
チュドォーーン!!!
「………」(チャキッ!!…リロード…)
【Lu-cis・H】は車の窓から顔を出すと、ドローンの飛行体に弾丸を浴びせる。命中したからか、そのまま爆発し、トンネル内に轟音が鳴り響く。
「ヒュ〜♪…やるね〜ルーシスおじさん!」
「…伊達に身体は覚えているよ。室長といえど、鍛錬は疎かにしていないからね」
「すごい…です…お父…さん」(キラキラ!)
【Roar】は【Lu-cis・H】を父親としてしっかり信頼しており、理想とも言える存在であった。その様子を察したのか、少し意地悪そうにこう答える。
「はは、ロア。…君にもハクローくんという、いい兄さんが出来たから、もう親離れをしたらどうかな?」
「!?///…お父さんの意地悪…です…///」(プイッ!///)
「…〜♪」(久しぶりの一家団欒〜♪…良かったね〜!…ベルナ姐さん♪)
・・・
〜更に数分後〜
〜【Paradiso】歴2000年:7/22・昼方【D島】・【CronoSt】・【R・P】社・地下駐車場〜
ブロロロ……!!
キキーーッ!!!!
「〜♪ふぃ〜!…着いた着いた〜♪」
「…やれやれ、もう少し加減してほしかったよ、ベア。…ロア。…大丈……夫!?」
「〜……」(キュ〜……)
【R・P】社に着くも【Roar】はどうやら刺激的なドライブになったのか、運転の途中で気絶してしまったようだ───────
「…仕方ないね」
ダキッ!
「おっ!ルーシスおじさん!」
「普段ネラに任せっきりにさせていたから、相手してあげられなくて寂しそうにしていたからね。……今日くらいは面倒を見るよ。…助かったよベア。…それに…」
「?…んん〜?…それに〜?」
……ニコッ!
「…!!…はは!…なんでもないよ。……久しぶりに刺激的で、いい時間のドライブになったよ。…本当にありがとう。…今回の任務。…誠にご苦労だったね。…今日はゆっくり休んでよ」
タッタッタ…
「…?」(一体なんだろ〜?)
【Beanne】は【Lu-cis・H】が浮かべた笑みを見て何処かミステリー気分になっていた───────
・・・
・・
・
🎼Back Ground
Music 》》》
♪〜滝廉太郎より・荒城の月
〜その夜〜
「………zzz〜♪」
その夜【Beanne】は自宅で眠りについていた。しかし服装はというと─────
「…!?///…もう!!ベアさん!!///また下着姿のままで眠っているんですか〜!?///……もう……風邪引きますよ……」
ファサッ!!
【Beanne】が暮らしている自宅には、同居人として【Linea】が共に生活をしている。どうやら彼女は下着姿のままで就寝していた為、それを見過ごせなかった【Linea】は彼女に布団を被せる。
「……zzz〜♪…もう食べられましぇ〜んん〜♪…!!はぁ〜〜〜んんん♡ハクローくぅ〜ん♡そ、そこダァメぇ〜〜♡♡はぁ〜〜〜ンン♡」
「〜!?///…も〜うっ!一体どんなふしだらな夢を見てるんですかぁ〜!?///」
ペチペチ!!
「あぁ〜〜んん♡///もっとぉ〜♡……zzz…zzz……」
「うぅ〜〜っ!!///もう知りません!!///」
バサっ!!
「…zzz………っ!!……………」
季節的にも熱帯夜の為、彼女の身体は暑いのか、夢の中で【Hux・row】と愛を育む夢の中で浸っていたようであった。しかし眠りが浅くなるにつれ、何処か寂しげな表情を浮かべていた──────
・・・
〜【Beanne】の夢の中〜
「あれ?……こ、ここは?…確か私、ハクローくんが入院中で寂しいから……妄想に浸って…」
ガラガラガラ………ガタン……ガタン………
「?……歯車?……あれって。……城?」
【Beanne】が夢の中で立ち止まっていた場所は霧が立ち込めていた。目の前には霧に隠れる城が聳え立っており、周囲には巨大な歯車が時を刻んでいるかのように見せていた。その様は、まるで《天空の城》を連想させており、現世でもイタリアの国ローマに現存する《チヴィタ・ディバニョレージョ》と呼ばれる観光名所を連想させる、場所であった。
〜♪
「………この歌って……《荒城の月?》」
ブロロロロロrr………
「!?……え?」
ブォーーン!!
「……《2000GT》。……でもどうして?」
【Beanne】は、現世の作曲家《滝蓮太郎》が作曲した歌曲《荒城の月》が何処かで流れていた事に気づく。その音楽は、先程運転した《2000GT》であり、何故か彼女はその場にいた。車内からは悲しげなピアノにヴァイオリンで演奏された音源であり、儚く寂しげに見せていた様子であった。
〜♪
「……ベルナ姐さん…」
【Beanne】は《2000GT》のハンドルを優しく撫でる。彼女の瞳には少しばかりの涙の滴がこぼれ落ちていた。曲調から、《悲しみの再会》とも言えるものが心にあったのか、切なしげにこう言った。
「……うぅ……!!会いたい……会いたいよぉ〜!!!………会ってこの姿を一目でも……いや、何度でも見て欲しかったよぉ〜〜〜!!!………っ!………姐さん…!!ベルナ姐さん……」
ポロポロ………
【Beanne】は【Bellna】の事を思い、ひたすら泣く。彼女は目の前に広がる《天空の城》の周囲に時を刻んでいる歯車に対し、もう一度あの時、【Bellna】と共に過ごしていた時間に戻して欲しいという訴えがあるように見られた。しかし無慈悲にも歯車は動きを止めることはなかった。
ガタン…ガタン……
「……あれから10年…私は……結局……何も《奴》の事を………」
……ポタポタ……
……そんな姿になっても、まだあなたは泣いているのね?
「!?」
突如、【Beanne】に話しかける者が、助手席から姿を現す。
「……《白き羽衣》」
「………」
【Beanne】の目の前に現れたのは、《白き羽衣》と名乗る白いコートに身を包み、長いもみあげなのか、桜色の髪色をした一人の女性が立っていた。
「…久しぶりだね〜…ベア!」
「……うん。……銃剣【Arbitro】(アルビトーロ)の名付け以来だったね、確か……」
「そうね〜!今から2年前。…まだあなたが幼い姿をしていた。…ちょうど今日の日くらいの事ね〜!」
【白き羽衣】と【Beanne】との関係は、昔から交流があるようだ。
「……そして……ちゃんと理解してくれたのね……イタリア語で《審判》を冠する事柄として銃剣【Arbitro】と。………確かに、この《時間軸》でも、そう名付けてくれたのね。……ふふっ!…安心したわ」
「?」
【白き羽衣】の放った言葉には、何処か引っかかるワードがあるように彼女は感じ取った為、返答する。
「……《時間軸》?それって、どういう意味なの〜?」
【Beanne】は彼女から聞かされた《時間軸》に対する疑問について【白き羽衣】から聞こうとする。
「…残念だけれど。…あなた自身は、まだその領域には《干渉》する事は出来ないわ」(フリフリ!)
「……《干渉》…?」 (一体、何を…?)
【Beanne】は混乱する。その様子に対し、【白き羽衣】は─────
「……ひとまずは安心しなさい。………と、そう言いたい所なのだけれど……そうも言っていられないのよ…ベア。……あなた自身のおかげでね」
ドドドドドドド………
「!?」(な…何?……雰囲気が……変わった…?)
フード越しに隠していた本性を曝け出す─────
「……もうすぐ、あなたの存在によって誰かの命が犠牲になる未来が訪れる。…それは決して抗うことは出来ないわ」
「…っ!!」
ガシッ!!
「………」
「……ッ!!」(ギラァッ!!)
【Beanne】は咄嗟に【白き羽衣】の胸倉を掴んでいた。その瞳にはおちゃらけた彼女の表情はなく、クールで高潔な、もう一人の閃光の瞳を持つ自分が映し出されていた。
ギリギリ……
「…………」
「あなた。…さっきから、一体何《支離滅裂》な事を言ってるの?…知っている事があるのなら勿体ぶらないで、この場で素直に教えなさい!」
「………ふふ。……境遇は違えど、そのあなたが映す《閃光の瞳》は。……《あの人》と全く同じ色なのね……」
「……あの人?……どういう事かしら?」
その問いに対し【白き羽衣】は掴まれている胸倉を払い除け、【Beanne】にこう答える。
「……一度、車から降りてみたらどうかしら?…ただし、降りたらもうその場は《戦場》になる事を覚悟しなさい……」
「……それ。……私を試そうとしているのよね?」
【Beanne】の問いかけに相手は笑みを混ぜて返答する。
「…そうだというのなら?…ふふふっ……」(クスクス)
「……いいわよ」
ガチャッ!
【Beanne】は【白き羽衣】に言われるがまま、《2000GT》から下車する。地面は白い空間で広がっており、聳(そび)え立つ《天空の城》の景色が見える中、両者はその場で見つめ合う──────
「………」
ポイっ!
カランカラン……
「…レイピア………?」(…刃があるわ…)
「あなたは、本来彼女ベルナ(【Bellna】)が所持していた《拳銃剣【Clessfia】(クレスフィア)》に憧れて、細剣による突きを多用していた。…でも何故銃剣【Arbitro】の刃に。…斬りつける為の刃を採用したのかしら?」
「………」
「答えなさい」
「……ベルナ姐さんと同じで《奴》の被害者で今はいない【Velkuy】騎士団長…ルーくんとの出会いからよ。…彼自身、剣の関心がとても強くて。…私とは真逆で、現世では《居合道》を学んでいたから、斬る事にこだわって、高みを目指そうとしていたわ」
「…だからあなたも、突きだけでは奴…《武神》に太刀打ち出来そうにはないから斬る方向にも視野を広げたと?」
「ええ」
「……それだけかしら?」
「それだけよ」
【Beanne】の問いに対し【白き羽衣】の返答は、皮肉にもそれは《正解》とは言えない様子であった。
「…期待外れの解答ね」
「!?」
「……そんな事で誰かを守れると。……本気で思っているのかしら?…ベア?」
「…何が言いたいの?」
「そのままの意味よ。……かつてのあなたなら、本当に見通すべき本質を見出せている筈なのにね」
「……っ!!」
【白き羽衣】は【Beanne】という女性の人間性を、よく理解していた様子であった。そして更に追求を続ける。
「……あなた自身からは、あの時のような覇気がまるで感じられないわ。……【Makiras】(マキラス)との闘いでのあなたの腑抜け振りにも呆れてしまったのだけれど……その《仮初》の変わらない姿で私の前に現れてしまうとはね。……あなた…本当は《偽物》ではないの?」
「!!…違う!!…私は私よ!!」
「果たしてそうかしらね?…未だに《森羅万象伝説》を残した、かつて【R・P】社エージェントの英雄と語り継がれ、《【Ciel
noble・0】(シエル・ノービル・零)》…《気高き零の大空》の異名を持つ《彼女》に比べても。……あなたはまだその領域にも踏み込めてすらいないわね……未だ、その装いをした姿のあなた自身がそれを《証明》している」
「!!」
【白き羽衣】はフードを被り、身分を隠すも【Beanne】自身の指し示す本当の心と姿を、この目で確かに見たような顔をしていた。
「………っ!!」
その言葉に対し、【Beanne】は─────
🎼Back Ground
Music 》》》
♪〜TOM3より・Scutum-decisive battle
チャキッ!!
「黙りなさい!!」(ギラァッ!!)
「黙らないわ。…所詮あなた自身のこの十年間は……《無駄》でしかなかった。…ただそれだけ」
「っ!!……なら認めさせるまでよ!」
チャキッ!!
【Beanne】はレイピアの先端を相手に向け、《前言撤回》を要求するが、その要求を【白き羽衣】は無慈悲にも否定する。痺れを切らした彼女は、遂に攻撃の合図を始める。
「…………」(…名誉挽回…と言ったところかしら?…なら…)
チャキッ……
「………来なさい」
「…言われなくても!!」
シャッ!!
キィィーーン!!!!
「!?」(なぁっ!?)
ギリギリ……!!
「……」「……」「……」
【Beanne】の目の前には、突如として3人の【白き羽衣】が姿を現した。奥にいる彼女を合わせて《4人》の【白き羽衣】が立ちはだかり、【Beanne】と敵対する。
ギリギリギリギリ……
「…どうしたの?…その程度かしら?」
「…っ!!……あなた。…オーラルさんみたいなこんな技まで隠し持っていたなんて…本当に昔からずるい真似してくれるよね〜【白き羽衣】さん♪……気に入らないわね!」
キィンン!!
ボアァアアッッ!!!!
「!?」「!?」「!?」
「…早速火の能力を使うのね?」
【Beanne】は早速自らの【Fiducia】である《森羅万象》の火の能力を発動し、剣身に炎を宿す。
ゴゴゴゴゴ………
「…覚悟は…いいかしら?」
「そっちこそ。…余所見してるわよ」
ブォン!!
「…甘いわよ!」
ブン!!
ボアアアアア!!!!
【Beanne】は背後から奇襲を仕掛けてきた【白き羽衣】の分身を聖火の焔を灯したレイピアの剣身で迎え撃つ。
ザシュッ!!
「…!?」(ほ、他の分身!?)
その攻撃を目にも止まらぬ速さで、もう一人の分身が【Beanne】に迫り、脇腹に深く細剣を差し込む。
「……」「……」
ザシュザシュッ!!!!
「あぁぐっ!!……!?……っちっ!!」
更にその他の分身も、今が好機と言わんばかりに、隙だらけの彼女の身体の周囲を斬り付ける。
「…翻弄されているわよ。……未だにこの剣に愛着でもあるの?」
チャキッ!!
「…っ!!…別にないわよ」
【Beanne】は否定するも顔に出ていたのか、【白き羽衣】はすぐに察する。
「嘘は良くないわ。…形は違えど。…この剣は、あなたが親愛しているベルナの愛用武器…拳銃剣《クレスフィア》と何処か素材が酷似ているのだから。…伊達にこれまであなたを数年間、剣の修行に付き合った訳ではないのよ」
「………」
「…この剣、《アルビオーネ(【Arbione】)》が気になるの?」
「…どうでもいいわ。…ただ一つあるのは。……あなたの本性なのか、長年隠していたその横柄な態度が気に入らないだけよ!」
【Beanne】は意地でも諦める姿勢を見せない。すると【白き羽衣】は飛び込んだ質問を下す。
「……どうする気?…その炎の剣で私を斬る?…それとも《魔女裁判》でいう魔女を処刑するかのように。…貫いて炙り殺すのかしら?」
「……後者よ!」
シャッ!!
【Beanne】は意地でも敵を貫いて勝利を収める方法で強行突破の策を取る。それを【白き羽衣】は、呆れたように右手に持たれた【Arbione】を下げ、左手を前に出し、分身達に指示を下す。
「あの《お転婆娘》に分からせてあげなさい。……本当の現実をね」
「………」「………」「………」
コクッ!!
シャッ!!
「…!!」
《白き羽衣・一斉攻撃》
《【Santa benedizione】(サンタ・ベネジオーネ)!!》
シュンシュン!!
「…この技は!?」
「せめてあなた自身の技で《闇》に葬り…《光》となるように斬り裂き…切り拓いて。……そのまま行くべき道へと引導を渡してあげる」
【白き羽衣】は彼女自身の【Beanne Formula Sacred Sword】(べアンヌ式神聖剣)の内、Ⅱの奥義で聖なる洗礼の意味を持つ大技を繰り出し、彼女を追い詰めようとする。
「……っ!!」
ガキィーーン!!!!
「!?」「!?」「!?」
【白き羽衣】の分身達は【Beanne】を斬り付けようと攻撃を繰り出したが、その場に彼女の姿はなく、空振りした刃は互いの分身の持つ剣身がぶつかり合っていただけであった。
ジャキン!!
🎼Back Ground
Music 》》》
♪〜SAOより・Sacred Swords
「……もう容赦しないわよ」(ギラァッ!!)
ボアァアアア!!!!
「…無事躱したようね。…褒めてあげるわ」
チャキッ!!
【Beanne】はレイピアを銃剣【Arbitro】を持ち、構えるかのように目の前の【白き羽衣】に、現世の世界の国イタリアの言語の言葉で言い放った。
「……Siete pronti?(覚悟はいいかしら?)」
「!?」「!?」「!?」
「………」
・・・
〜【白き羽衣】の追憶〜
『……Siete pronti?(覚悟はいいかしら?)』
『…!!…ええ、来なさい!ベア!』
『………』
『よくも私の大切な仲間を……!!友達をっ!!…みんな、あなたが殺したんだっ!!…許さない…っ!!…絶対に許さないんだからぁ!!…覚悟しなさいべア!!…忌まわしい過去の厄災!!…《白き羽衣》の名にかけ……《四聖剣》のリーダーとして、あなたに報いを与え…ここで………殺すッ!!』
チャキ……!!ジャキッ!!
『……救われない娘ね。……なら道を正してあげるまでね』
『!!……っ!!』
うああああああぁぁぁぁっ!!!!!!
シャッ!!
・・・
「…ふふっ!…そうね。……その閃光の瞳に宿す気高い聖なる眼光。…それこそが、あなた自身に宿す本当の《心》……先代の《白き羽衣》がベア姐と敬愛した、かつて私が戦い…道を正そうとしたあのベアンヌ。……べアンヌ…」
《零(れい)!!》
「………!!」
ボアアアア〜〜〜!!!!!
ジャキン!!!!
《【Beanne Formula Sacred Sword】(べアンヌ式神聖剣)Ⅲの奥義》
『……ベア姐さん』
「……!!」
《リシア!!》
ブォン!!!
十・十・十
ザシュザシュザシュ!!!!
「!!」「!!」「!!」
「………!!」
《Finale!!》
ヒィーーン!!………!!!
ザシュッッ!!!!
「!!………」
ブンブン!!
ジャキーーン!!!!
【Beanne】は目の前にいた3人の分身を業火の焔を起こす聖火の炎を灯し、《十字架》状に目にも止まらぬ速さで斬りつけ、とどめとして剣身に宿された煌びやかな閃光の一閃を3人の分身達に放たれた。
「………」
ヒィーーン!!!!!
「!?」(…な…何?)
「……どうやら、《試練》を乗り越えたようね。……行ってきなさい。……本来のあなた自身の心を移す場所にね」
キィーーン!!!!!
「っ!!」
【Beanne】は目の前に放たれた光に介入する。それは決して自分へ危害を加えるものではない様子であった。
ヒィーーン………
「…!!」(なんだろ。…温かい…光……)
【Beanne】はそのまま光の中に介入していく────
・・・
・・
・
🎼Back Ground
Music 》》》
♪〜ブルリフより・OVERDOSE
「……ハッ!」
キラキラキラ………
「……ここは?…………オーロラ?…どこかの雪国…なのかしら?」
【Beanne】は目を覚ます。目の前には星々に散りばめられたオーロラの景色が星空となって広がり、場所はある水郷なのか、凍てついた湖の上に立っていた。しかし氷は透き通っており、水鏡となって彼女の顔を映し出していた。
《クスクス……》
「…!!…だ、誰?………!?」
《ニコッ!》
【Beanne】の目の前に微笑みを浮かべた一人の女性が立っていた。その女性はまるでおいでと言わんばかりに抱き寄せようと腕を広げていた。彼女の姿を観測した【Beanne】の瞳には自然と涙が溢れており、その女性の名前を呼ぶ。
コツン…コツン……
「……べ……ベルナ…姐さん……!!」(ポロっ!)
ベルナ姐さん!!!
【Beanne】の目の前には【Bellna】の面影が立っており、彼女の表情は、温かい微笑みを浮かべていた。
《ニコニコ!》
「……っ!!」
ベルナ姐さぁぁ〜〜〜ん!!!!!
ダキッ♡!!
スルッ!
「?……あら〜?」
ズザ〜〜ッ!!
「う、うわぁ〜〜〜っ!!!!!」
シュバ〜〜!!!!…………!!!
ドォーーン!!!
【Beanne】は勢いよく凍った湖の上をヘッドスライディングするかのように滑ってしまい、目の前にある雪の塊へダイブしてしまったようだ。辺りは雪の結晶で舞い散り、彼女は自らの頭を撫でて尻餅をついた姿勢を取っていた。
パラパラ……
「い、いたたぁ〜!……一体何がどうなって〜?……?」(スリスリ!)
《クスクスッ!》
スッ
「!!…っ!」
ガシッっ!
《〜♪》
「つ、掴めた!?…でも…!!んも〜う!!///酷いよぉ〜!!ベルナ姐さぁ〜〜んん!!!///」(ジョ〜ッ!!!)
【Beanne】は滝のような涙を流し、少女のような幼気(いたいけ)な表情を浮かべる。
《……クスっ!》
【Bellna】はやれやれ、仕方ないと言った呆れた表情をしているが、内心では『何年経っても相変わらずの鼻垂れのちんちくりんさんね〜♪…でも見直したわ。…本当に大きくなったわね〜♪ベア!』と、そう言わんばかりの心からのメッセージを確かに伝えていた様子であった。彼女は嬉しそうに彼女の手を掴むと、目の前に広がる零地点まで凍て付いた果てしなく続く水鏡の湖を見つめ、行動を起こす。
《〜♪》
ズザア〜!!!
「!?えっ!?…う、うわぁ〜!!!」
クルクル〜!!
《〜♪ニコッ!》
「あ。…!!あはは!!へぇ〜♪…慣れると楽しいぃ〜♪…そっか。伝えたい言葉は聞こえないけど、その顔で分かったよ。こうして大きくなった私とアイススケートをしたかったんだね〜♪ベルナ姐さん!」
《クスクス♪》
【Bellna】は【Beanne】と共に凍て付く水鏡を滑っていく。二人は息の合ったコンビネーションで氷の湖を滑っていき、ターンやらトリプルアクセルと大技を決め、心ゆくまでスケートを楽しんだ。
ズザァ〜〜!!!!
《ニコッ〜♪》
ダキッ♡!!トントン!♪
「!?///…ふふっ!……ありがとう。…ベルナ姐さん……」
《クスクス!…………》
キラキラキラ………!!
「!?…っ!!…ベルナ姐さん!?」
《…ニコッ!》
『どうやらもう時間切れのようね。…ベア』そう言わんばかりに彼女の身体は光に包まれ、少しばかり名残惜しそうにするも笑顔の表情を見せる【Bellna】。その様子に【Beanne】は再び涙を流す。
「!!…待って!行かないでよベルナ姐さん!!私を置いて行かないでよぉ〜〜!!」
《…フリフリ!……ッッ!!》
ギョロッ!!
「ヒッ!!」(ビクッ!)
泣きべそをかく【Beanne】に【Bellna】は少しばかり《喝》を入れるような険しい表情を浮かべる。去り際の彼女は【Beanne】に対し、心からあるメッセージを送った─────
《いつまでもあの時のように引き摺ってウジウジしないのッ!!…あなたはもう立派なお姉さんなんだから、しっかりしなさい!!……ウフフ♪!…これからも鈴美や私の家族…若旦那のルーシス坊やと彼との間の愛する可愛い我が子。…ロアの事…私の代わりに頼んだわね…》
「…!!…っ!!」
コクッ!
ポタポタ……
【Beanne】はこくりと頷くと【Bellna】は安心したのか穏やかな表情になり、更にもう一つの話題を心の中で発言する────
《ベア。あなたにはこれから予想だにしない大きな闘いが待っているわ。…だから、これから出会い。…パートナーになる…ウフフ♪私のマブダチとよく似ているあの彼女の事。……あ・と・は☆あなたが今交流を深めているあの白狼坊やや、ダンディーな男前さんの事も。…そしてあなたが妹として護ってあげたい、あの亜麻色娘のお嬢ちゃんを含めた…みんなの事。……いつまでも仲良くして互いにしっかり護りあって進みなさい。……大丈夫よベア。私はいつでもあなたを見守っている……》
《あなたのそばにいるわ────》
ヒィーーン!!!!
・・・
・・
・
「…!!」
「…気がついたようね。…ベア」
「…白き羽衣…私…」
【Bellna】からのメッセージを受け取った【Beanne】は目の前に立っていた【白き羽衣】と目線を合わせる。相手はすかさず彼女自身の変化を伝える。
「…あなたの今着ている格好。…その目でよくご覧なさい」
「?……!?」
パタパタパタ………!!!
バサァ〜!!!
🎼Back Ground
Music 》》》
♪〜ロックマンゼロ4より・Esperanto
【Beanne】が着ていた服は純白に彩られていた。上はセーラー服のような服装に彼女【Bellna】の憧れでもあるからか、彼女のイメージングカラーである《フロストブルー》カラーのスカーフに、ラインは【Beanne】自身が持つ《気高き大空》のイメージングカラーに因み、蒼のラインが刻印されたフード付きのセーラー襟が施されたマリンチックに、極めて特殊な装いで洗練されたコート姿であった。下は彼女の自慢なスレンダーで引き締まった生足が露出した、白のショートデニムパンツが着用されていた。
「この服は…!……これは一体、何?」
「あなた自身の真なる《心》が持つ本質。…《Esperanto(エスペラント)》…その象徴となるあなた自身の意志が芽生えた証明となって具現化した装いの姿。…ただそれだけよ」
「……《Esperanto》」
【Beanne】は【白き羽衣】が発言した《Esperanto》というワードを、何処かで聞き覚えがあるようだ。現世ではその言葉を《人工言語》として持て囃されており、起源となる創案者は、ポーランド人《ルドヴィゴ・ザメンホフ》が1887年の時期にて、世界中にいる人類が容易に学び、習得出来る事を目的に、第二言語となる《国際補助語》に分類させ、これを提唱した。現世の国日本では1906(明治39年)日本エスペラント協会が設立されたという歴史がある。
「……それは即ち、《希望》っていう意味合いが込められていると。そう言いたいのかしら?」
「その通り。…その人は現世ではユダヤ人の《眼科医》だったそうよ。…その言語の象徴となる三つの《フラッグ》のイメージカラーはというと。…皮肉にも。…どれもあなたのその瞳に宿すエメラルドグリーンカラー。…無論【Velkuy】騎士団長の《彼》自身も然りなのだけれどね。…現世から来た【現世人】ハーフというのは、嫌でも《奇妙》かつ《過酷》で《悲惨》な運命を引き当てるようね……」(やれやれ…)
「………何が言いたいの?」
【Beanne】は少しばかり不機嫌そうな様子であった。《Esperanto》を象徴する三つのフラッグには、それぞれ《緑星旗》(緑の旗と呼ばれ、グリーンはシンボルカラーとして《希望》。白は平和と中立・ペンタグラム(星)はオリンピックでもお馴染み五大陸となるアジア・ヨーロッパ・アフリカ・アメリカ・オーストラリアと、それぞれの大陸を示している。)《ユビレーア・スィムボーロ》(直訳は記念シンボル。時は国際的対立抗争の《冷戦》時代────ソビエト連邦の共産主義の陣営とアメリカ合衆国の資本主義の陣営が対立していた為、平和を願う為、東洋と西洋が一つとなる《希望》の形をイメージし、採用された。)《緑の星》(緑星旗と意味合いが同じであり、エスぺランティストと呼ばれる者達が使用するシンボルの旗として1905年の時代に定められた。)の様々なマークが存在する。《エスペラント語》には、それぞれ《希望》という意味合いが込められており、新たなる《希望》ある時代を切り拓いていくにおいて、旋風のように世界を駆け抜け、《革新》的な発想で跳躍して進む者達。互いに手と手が取り合い、《調和》を目指す為にと救済の心を持ち《希望》を持つ者達。《真実》《理想》という《矛盾》の壁が立ちはだかろうとも希望を信じ続け、深淵の深闇を、閃光のように眩い瞳を放ち、斬り裂き、意志を貫き通し、道を開いて突き進んでいく。そう、《永遠の輝かしい現実》を目指すその日まで。その意味の込められた強い意志を【白き羽衣】は【Beanne】に回りくどくも肖(あやか)ってそう伝える。
「…それぞれの意味を踏まえ、《Esperanto》を知り、使用する彼らは…《エスぺランティスト》と……記述ではそう呼ばれていたわ」
現に《希望》という目的を持った《エスペランティスト》は、《エスペラントの聖歌》を。それは時として《エスペラント界の国家》として布教し、全世界で行われている大会や式典でも歌われ、各地に広められたそうだ。
「…それが私と何の関係があるっていうのかしら?」
「…まだ分からないのかしら?…あなた自身にも、その《希望》となる人。…その《者達》と同等の素養があると言いたいのよ」
【白き羽衣】の訴えに【Beanne】は首を横に振った。
「あなたの言い分は理解したわ。…でもね。…そんな事。…別にどうでもいいわ」
「!?」
「……ただね。…確かに私は…《希望》という言葉。…別に嫌いではないわね」
「……どういうことかしら?」
【白き羽衣】はその真意を【Beanne】に説いてみせる。
「……それはね。……この十年間の間に、幻想だとはいえ。…私はあの人に……!!憧れのあの人にまた会えた事が……嬉しいのだから!……これは、あなたが言った《Esperanto》を名乗っている人からくれた願いだとかじゃあ決してないのよ。……これはあくまで……ふふっ♪」
《私自身の本能が叫んでいて…ずっと心の中で……ただ願っていたの。…またあの人(あの子)に会いたいっていう…希望なの!(だから〜♪)》
ポロポロ……
カチッ!…カチッ!
カコーン♪…カコーン♪
「………」
時は刻み、遥か上空を漂う《天空の城》から大きな鐘が鳴らされる。【Beanne】は涙を流し、《2000GT》の向かい側にいる【Bellna】の幻影と目線を合わせ、対面する。心なしか空中には、先程見たオアシスに広がる煌びやかな砂漠の砂が星々となって宙を舞う。そのカラーは【Beanne】の髪色であるオレンジカラーに見立てられた金色。そして【Bellna】自身の氷の色であるフロストブルーに見立てられた煌びやかな光が舞い散り、先程の光景で観測したオーロラのように演出していた。
キラキラキラ……
「………」
ザッザッザ……
「………それが。…あなたの答えなのね?」
「……うん!」(コクリ)
「そっ。……ならいいわ」
ザッザッザ……
「?…【白き羽衣】?」
「…〜♪ふふっ!…!!あ〜はははははっ!!」
「!?…な、何っ!?」
突然【白き羽衣】はお腹を抑え、顔を抑えて高笑いをする。その様子に【Beanne】は驚いた。彼女自身、相手が一度も見せたことのない感情を見て驚きを隠せなかった様子であった。
「ウフフ!…ならベア。…示してみなさい。…あなた自身が目指すその《希望》の姿と、未来ある《幻界》(ビジョン)を。……私にね!」
……スッ!
「!!」
【白き羽衣】は手を差し伸べ、【Beanne】の意志を尊重する意向を示す。
「…言われなくとも。へへ〜ん♪」(ニコニコ!)
ガシッ!!
【Beanne】と【白き羽衣】は握手を交わす。それは互いに《希望》を願い、中立的な立場で実現を志す、強い繋がりを感じさせる。
「…あえて期待しておく、という言葉は使わないわ。……もし道を間違えるようならばその時は…」
「いちいち心配しないでよ。……ここで見ていなさい。…もう私は、あの歯車のように。…もう《止まれない》のだから。この【Paradiso】の世界の人々や、私の大切な人達を傷つけようと目の前に現れる刺客…《我欲の障壁》が立ち塞がってくるのなら容赦はしないわ。…必ず…」
《審判を下して……私自身の意志で裁くまでよ!》
「……その強がり…どこまで続くか実物ね。…みんなの《希望》のベア…」(…待っていたわ。…その姿。…そしてその閃光のような瞳が、《まやかし》ではない事を祈るばかりね。…いえ、どうやらその心は確かに本物のようね。……あの《厄災》を起こした彼女とは違う。…どの世界線でもあなたには、本質的な高潔な心は等しく存在しているようね。……彼女…《ベア姐さん》のように)
【Beanne】の意志は固い様子であった。それが彼女の本当の意志なのか、【白き羽衣】は彼女の行く末を見守ることにする。そしてここから、彼女自身の存在が、皆の《希望》となる壮大な冒険が幕を開ける────