「…よ〜し…ここまで来たらやるしかないでぇ〜!!…こうなりゃあ死ぬ気でオロアはんをギャフンと言わせたるで〜!!」
「なんでやね〜ん♪」(シュッ!!)
「おっと!!もうその手には乗らんで〜!!うぉらあ一本!!」(シュッ!)
パシーン!!
「またもやガッシリ!!…ふっふ〜ん♪」
「!!くっ!!またしてもかいな!?…って!?…うぉわああああ〜〜!!!!」
「そぉーーれ〜!!…今回はさらに回しますよ〜♪」(ブン!ブン!!)
オロアは、富美恵の両手を持っては、思いっきり遠心力を使ってはジャイアントスイングのように振り回し、そのまま光の中へと投げ飛ばした。
「ど!!…どえええ!!目がまわ〜〜!!あーーー!!」(ビュー!)
ポイっ!!
「いってらっしゃ〜い♪…あ〜スッキリ〜♪」(ニコニコ〜フリフリ〜!)
「こんの〜じゃじゃ馬娘〜!!……あ」
シュン!!
富美恵はまたもやオロアに対する不満の募った罵声を浴びせようとするも光の中へと消えていった。オロアはその様子を見ては笑みを浮かべてはこう思っていた。
(ふふ〜ん♪いよいよ最後の試練です!…さて…あなたの最後に見る景色は一体なんなのでしょうね〜♪…じゃじゃ馬娘ですか〜♪それも結構ですよ〜♪)
・・・
・・
・
🎼Back Ground
Music 》》》
〜ある森の中〜
《!!…今度は森の…中…ってことは…》
「グァああああ!!」(よ〜し…今日も我が子の為にも餌を取ってくる…お前はここで待っておけ…必ず…戻る…)
「グウウウ!!」(…あなた…行ってらっしゃい…)
《!!羆…!!…でも…なんか声が聞こえるで!?…まあ確かに鳴き声だけやとわからんわなぁ〜…それでも声が聞こえるとは…摩訶不思議やなぁ〜…》
富美恵は、森の中にいた。そこに羆の親子が鳴き声を発しながらも人が話すような心の声が聞こえていたようであった。
・・・
〜ある山の下流〜
「グワァああああ!!!」(…魚だ…味も…悪くない…持って帰ってやるとするか…)
《…自然界やなぁ〜…ま、記憶の中や…もうウチが襲われることはないやろ…そう思いたいわ…おとんとオカンを食い散らかして、それはおっかなくてトラウマも植え付けられてはアンタを憎みたい気持ちはあるけど…もうアンタとウチとの決着は着いたんや…今はアンタの生涯を見守ってやらんとなぁ…》
富美恵は自分の最期を思い出しては目の前にいる羆を見つめていた。その目には、羆の恐ろしさがあったが、それでも、その羆の様子をじっと見守っていた。
スタスタ…
「グァアア!!(…帰ってきた…魚だ…生まれてくる子供の為にもしっかり食べろ)」
「グォオオ…!」(…ありがとう…)
バクバク…
「グァアア…!」(…どうだ…?)
「グォオオ…!」(…美味しい…いつもありがとうね…あなた…)
「グァアアア!!」(…気にするな…お前は元気に私達の子を産んでくれたら…それでいい…我が子にも見せてやりたいのだ…この広大な山の景色を…)
「グォオオ…!」(……あなた…そうですね…元気に生まれてくることを祈るばかりだわ…)
「グァアア…!」(…大丈夫だ…私とお前の子だ…きっと逞しい子供が産まれてくる…だから私達は…これからも一緒だ…)
「グォオオ…!」(…あなた…ありがとう…本当に…ありがとう…)
《羆…なんだかんだ…奥さんと、今後生まれてくる子供に…えらい優しいかったんやな…せやけど…何故あんなことになったんや…》
・・・
ザザーーーッ!!
テクテク…
「グァ……」(雨か……!!…何かいるな…)
ダァーーーン!!
《じゅ!!銃声や!!…ハンターか!?》
突如、雨の降る視界の中、猟銃の鳴り響く音が聞こえてきた。すると木の影には一人の猟師が猟銃を持って発泡しては羆の肩を貫き、銃弾を補充しては仕留めようとする。
「外した!!…でかいな!!野放しにしていると危険だ!!ここで駆除する!!」(カチャン!!)
「!!グゥオオオオオ!!!」(許さんぞぉ〜!!人間〜〜!!!)
ザシュッ!!バキョーン!!
「!!…」
ブシャーーー!!!…ガブリ!!
《あ…あ……なんてこったやで…》
「グァあああああ…!!」(人間…なかなか美味い肉だった…次の獲物は人間を襲うのもいいか…だがあいつには…魚を食べさせないと…)
《なんちゅうパワーや!?ハンターのく…首が…ホンマにおっかないで…羆って生物は…もしかしたら、このハンターさんを殺してしまって、人間の味を覚えては…三家別みたいな羆になったっちゅう訳か…》
富美恵は羆の力に改めて驚愕し、生に対する執着心を持つ執念深さを肌で実感した。そして羆は雨の降る中、魚を捕まえては、母親羆の元へと戻っていく。
「グォオオ……」(…戻った…!!…お…お前…!?)
《!!…な!?…母親羆…えらい怪我やで〜!!…まさか…撃たれたんか!?》
母親の羆は腹部や胸部に多量の出血が見られていた。そして富美恵の頭の中から声が聞こえてくる。
🎼Back Ground
Music 》》》
「グァアアア!!!」(しっかりしろ!!)
「グォオオ……」(ごめんなさいあなた…人間に突然撃たれて…この子を…守れなかったみたい…)
「グァアア!!」(諦めるな!!我々の子なんだ…それに…お前に死なれては…私は…)
「グォオオ……」(あなた…元気で生きるのよ…私の事は忘れて…)
「グァアア!!!」(そんな事はできない!!…お前は私の妻なのだ!!…それなのに…くっ!!…お前のみならず…我が子までも…何で…)
《羆…アンタ…くっ!!親の仇やったのに…なんかやるせられん気持ちや!!…何で、自然界というのは、こんなにも残酷なんや!!??》
富美恵は改めて自然の中で生きるには、それ相応の命の駆け引きが試されるということを実感した。そこには生命の神秘と、言葉を理解できない動物にも家族の絆があることを肌で実感した。そしてそれを食い物にする者達も生きることに必死になるため、自分の命を守るために武力を持つことの必要性を学んだ。
「グォ……」(あなた…好きよ…決して忘れない……わ………)
「……グァアアアアアアアア!!!」(…そ…そんな……くそ…くそーーー!!!!!
《……クソ…何で…親の仇やのに…なんで涙が出てくるねん!!…それでこの羆は…人を襲うように…》
富美恵はその後、羆の様子を見ていた。すると、登山客の者を見かけては狂ったように報復に取り憑かれた悪魔になったのか次々と襲う映像が流れ込んできた。富美恵は思わず目を背けたくなる映像もあったが決して目を離さず、涙を流しながらその光景を見ていた。
《奥さんも子供も人に殺されてから、狂ったように…人を襲うようになったな…復讐心がハンパやないな…これが…羆の執念深さっちゅうやつか!?…!!…アレは…》
「富美恵…あな…た…に…げて…!!ああああぁあ!!!」
グキリ!!…バキャン!!!!
「オカーーーン!!!!」「!!!?…嘘…だろ…!!熊だ!!」
《!!オカーーン!!…うぅ…オカン…》
「グォオオオオオオ!!!!!」(…美味い肉だ…そこにもいる…)
富美恵と父親の前に現れたのは体長2メートル以上はある羆であった。その羆は富美恵の母の首を力強く噛み、胸を鋭い爪で引き裂かれていたからか、多量の出血が見られていた。そしてしばらくすると出血多量によるショック状態に陥り、そのまま意識を失った。その獰猛さから、何度か人の味を覚えた獰猛な性格の羆であることが窺える。
「グォオオオオオオオ!!!!」(人間んん!!)
「!!富美恵ーー!!に…逃げろーー!!」(バッ!!)
ドーン!!
「あぐっ!!お…おとん!!」
「!!ぐあっ!!」
メキメキメキ…!!
「ぐあぁああ!!…ぁ!!…………」
ガブリ…グギリ!!…ゴギリ!!…!!!
「!!お……おと…ん…」(ブワァ…ゾワァ……)
《!!おとん!!…くっ!!…でもウチは…》
「ハァ…ハァ!!…くっ!!絶対に…死にたくあらへん!!…羆公の分際で…よくもウチの両親を…もう絶対に許せんとこやけど立ち向かっても奴のおやつになるだけや!…今は逃げるしかあらへん!!」(ポタポタ…)
タッタッタ…
「!!…なぁっ!!…が…崖!?…う…嘘やろ…!!」
富美恵は羆から逃亡を図ろうとする。しかしそこには、断崖絶壁の場所であり逃げ場はなかった。そして、匂いを嗅ぎつけたのか、捕食を終えた先程の羆が迫ってきた。
「グォオオオオオ…!!」(ギラッ!!)(…子供…だが…憎き人間だ…!!私の家族を殺した憎き…!!)
「…!!」(ゾクッ!!…ブワッ!!)(おとんとオカンを喰っては襲った羆!!…許せんとはいえど…やっぱおっかないでぇ…!!テディベアとかの比ではないわ〜…)
富美恵は、羆の放つ野生の本能の殺気に思わず迫力を感じては圧倒され、後ずさる。しかし羆は狙いを定めていたからか、ジリジリ迫ってくる。
「グォオオオオオ!!!」(人間んんん!!!)
「!!…くっ!!…羆…本とかで読んだ昔の三家別のようにホンマにおっかないでぇ…頼むから…来んといてぇ〜なぁ〜…」(ポタポタ…)
《この時のウチ…ホンマに怖い思いしたなぁ〜…でも今となっては…ちゃんと見れる!!…羆…アンタも家族を八つ裂きにされたんや…!!今となってはアンタの気持ちもわかる!!…せやから…》
「グォオオオオオ!!!!」(覚悟しろおお人間んんん!!!!)
「あ…あかーーーーん!!!!」
バキ……バキバキーガララララーー!!!!
「え?…!!うわぁああああ!!!!」
「!!グウォオオ!!!!」(!!崖が!!私としたことが…人間を見ていたあまりに…ぐあっ!!!)
ゴロゴロゴロゴロ!!!ザシュグサッ!!!
「!!あが…が…」(ピクピク…)
ドゴーーーン…!!!
「グォオオ…………」(ぐ…無念だ…すまない…お前…我が子よ…私も…そっちに行く…)
グデ…
「…は…はは…怖かったなぁ…羆…やけ…ど…おと…ん…オ…カン…仇は取ったでぇ…!……舞…香…ごめ…んなぁ…一緒に…中学には上がれんよ…うやわぁ……」(ポタポタ…)
ガクッ……
富美恵はそのまま視界が見えなくなり、激しく脈打つ動悸のする中、次第に目の前に暗闇が広がってはそのまま息を引き取った。
《グッ!!…羆…ウチもアンタとこうして気持ちを理解しあえたんや……お互いの命や…ウチは絶対に無駄にはせぇへんで…!!》
キィイーーン!!
「!!…よ〜し見ようやないか〜!!アンタの記憶を!!」
富美恵は、羆の記憶を頭の中でじっくりと眺めていた。そこには広大な景色が広がっていた。
・・・
🎼Back Ground
Music 》》》
《…!!これは…なんて絶景や…山と湖…それに空…まるで秘境やな…!!》
富美恵は羆の記憶を傍観していた。そこは春の山に囲まれては北海道の広大な自然環境を象徴するかのような秘境の湖があり、空の景色が鏡写しになっている大自然の景色であった。そこには夫婦の羆が、その景色を見ていた。
「グァアア…」(…綺麗だ…やはりこの景色は…)
「グォオオ…」(…そうね…あなた…私も…この景色が好き…)
「グァア…」(…この自然のありがたみを忘れては…脅かす人間もいるのだろうな…)
「グォオオ…」(…いるでしょうね…だから…私達は守っていきたいの…でも…できることなら…殺生を控えて…)
「グァア…」(…私も同じ気持ちだ…この自然の美しさを…いつか生まれてくる私達の子供にも見てほしい…そして…)
「グォオオ…」(…そして?…)
「グァアア…」(…受け継いでくれると嬉しいと思っているのだ…私達がいなくなった後も…この…美しい景色を守る者として…)
「グォオオ…」(…そうですね…きっと…)
《…そっか…羆…そんな気持ちがあったんやな…まあ確かにこんな絶景があれば守りたくもなるわな…》
「グァア!!」(さて、走ろうか!!)
「グォオオ!!」(…はい…あなた…)
ダダダダダダ!!!
《うぉおお!!は…早いな〜!!!!流石は羆やで〜!!…時速60キロは超えてるやろなぁ〜!!》
羆の家族は、そのまま山の周りを疾走して走り抜けていく。富美恵自身も羆の走り抜けるスピードを見ては驚愕した。
「グァアアア!!」(…風が気持ちいいな…)
「グォオオ!!」(…そうですね…あなた…)
・・・
ピチピチ…
「グァアアア!!」(…いい魚が取れた…味もなかなかだ…)
「グォオオ!!」(…そうですね…美味しいですね…あなたは本当に魚を捕まえるのが…得意ですね…頼り甲斐がありますね…)
富美恵は自分の両親の仇でもある羆の一部の生活を見ては、ある関心を覚え憎しみから自然の中で生きる術を教わり、その大切さに敬意を持っては強く宣言する。
《羆ってこんなに足が速いんやな〜…力も強いし…自分らの自慢の爪で魚も容易く捕まえるし、敵ながら天晴れとも言える!…よ〜し!!ウチだって…アンタらのように自然の中でも強くなる!!…憎しみは抜きにしてアンタら羆に敬意を評してウチも強くなるで〜!!…見ときや〜!!…絶対に負けへんで〜!!》
・・・
・・
・
🎼Back Ground
Music 》》》
God created heaven and earth, and everything that exists between them.
(神は天と地、およびその間に存在するすべてを創造した。)
Having a good spirit is not enough, it is important to use it well.
(良い精神を持っているだけでは十分ではなく、大切なのはそれを良く用いることだ。)
Rene Descartes
(ルネ・デカルト)
「……はっ!」
「あ、気付きました?どうでしたか?」
「…羆の強さ…それにあの速さは流石やと思うわ…それにあの執着心あっての、あの自然の中で生きていけるんやなと、じっくり学ばせてもろたで〜…」
「ほうほ〜う♪いい勉強になりましたね〜♪」
富美恵は最後の試練で、自分の両親を殺した羆に対し、確かに許されないことではある。しかしそれでも自然の中で生きていくためには、時に非情な場面があり、その環境で生き残るためには屈強な精神力と、その自然に順応できるサバイバル能力についての必要性について今回の試験で学んだ。それを見てオロアは笑みを浮かべ、富美恵にこう答えた。
「さ〜て、これであなたの三つの試練は全て乗り越えました!おめでとうございま〜す♪…そ・し・て…これを身に付けていただきま〜す♪」(サッ!)
「ん?何やこれ?…勲章かいな〜?」
富美恵はオロアに渡されたものを確認した。それは勲章であり、確認すると十字架のマークが刻まれ、下にはSpecific deadという文字が刻印されていた。
「これであなたも無事に死者から特定死者へとランクアップですね〜♪次は現世人を目指して頑張ってくださいね〜♪」
「…特定死者?現世人?なんやそれ?」
「特定死者は、わかりやすくいえば先ほど体験した三つの試練で、現世での行いを振り返り、何を学び、何を感じたのかを知り、その記憶と向き合い、試練を無事乗り越えたものに与えられるものです。階級は死者よりも上で、ユートピアの世界【paradiso】へ行くための試練を受けることができる資格の者といった立場ですね〜♪現世人とはユートピアの世界【paradiso】でのあなた達の種族の俗称となる名前です!…つまり今度は、その現世人の地位になるための試練を受けていただきま〜す♪」
「そういうことかいな〜…【paradiso】って世界に行くのはまだ長いんやな〜」
試練を全て乗り越え、富美恵自身はこれでユートピアの世界に行けると安堵していた。しかし導き人オロアの返答は予想外のものであり、富美恵はユートピアの世界は思った以上に過酷な道だということを知る。
「ではでは…最初の三つの試練はあくまで準備段階です!あなたにはこれから最終試練に挑んでもらいますよ〜♪」(ニッコリ)
「…よ〜し…こうなったらやったるで〜!!おとん!!オカン!!舞香!!…ウチは行くで〜!!」
「最終試練会場はすぐそこです!ではついて来てくださ〜い♪」(ピューーッ♪)
「!!…あ〜もう羆みたいに走るな〜!!」(ダダダダ)
富美恵は、神速の如く走り抜けるオロアを追いかける。そうしていくうちに一枚の扉が見えて来た。
「ここがその最終試練の扉で〜す♪」
「ここかいな…!」
「ですがその前に後ろをご覧ください〜♪」(ビシッ!)
「ん?…!?な、なんやあれ!!」
導き人オロアが指を刺した方向を見ると、今まで眠っていた白い棺が天井にある満月に吸い込まれている。それは富美恵だけのものではない。とてつもない数の棺が宙を舞い、螺旋状に満月の模様に吸い込まれていく。
「なんなんやねんな〜あの棺桶は〜!?あのどデカい月は〜!?」
「あれは冥界の満月っていうもので、直接あの世とつながっています。中には私たちの言い分を無視して寝過ごしたものや、私のような導き人の試練に乗り越えられなかった人もいくつか混じっています♪」
「…もしかして…ウチがあの棺の中で眠り続けてたり、あの試練を乗り越えられんかったら…あれに連れて行かれていたんかいな〜?」
「その通りですよ〜♪あ〜!あとあれをご覧くださ〜い♪」
「ん?……!?…どえええっ!?…なんや…何か黒い服を着た奴らが浮いているで〜…」
「あれは執行者です。どうやら私達の試練に乗り越えられず連行されたようですね!主に死者を平等に裁いてもらうために、今から閻魔大王の元へ行き、裁いてもらう途中のようですね〜♪ちなみに私達のことを毛嫌いしていて、執行者の部署はあなたたちの現世での言い方だとブラックな部署でもありますよ〜♪」
「ブラック企業扱いかいな〜…」
「さて、本題に戻りまして…あなたは今回の試練を乗り越えて普通の死者から特定死者として認定されました!次の試練はいよいよ【paradiso】へと行くための重要な試練です!とても過酷な試練になりますが大丈夫でしょうか?」
「………」
富美恵はさっきの試練とここまでの経緯を思い返していた。おそらくこの試練を受けさせるからには自分の行く【paradiso】という世界は、ユートピアの世界とはかけ離れた反対のディストピアのようなものではないのかと思っている。だが行くからには、もう後戻りはしない。あの記憶を見てはたとえ別世界に行こうと、自分はどんな環境でも生きていき、羆という動物から両親を失うも、それでもその羆から生きることの厳しさを学んだ分まで、なんとしてでも強く生きるという目標を見出した…そしてこの言葉が、胸によぎった。
(もう…後戻りはせぇへん!!…意地でも生き残ったるで〜!!)
「準備はできてるんや!!…ウチは生き残ったるで〜!!」
「はぁ〜い。では行きますよ〜…って〜ッ♪!!」(ゲシッ!)
ドゴーーーン!!
「ウォッ!!…!?…な、なんやてぇ!?」
導き人のオロアはその扉を思いっきり蹴り飛ばし、粉々にした。その光景に人とは思えぬ恐ろしい怪力を見たあまり、富美恵は驚愕して放心した…
「あ、これ扉に見せかけた壁なので〜!では行きましょう〜♪」
「…オロアはんえらい馬鹿力やな〜…もしかしたら羆以上なんかもしれんな〜!」
富美恵はオロアの後を追う…そして出た外の光景は信じられない非現実な光景が広がっていた。
「な、何やこれ…!?…雲の世界か…!?…こりゃあラノベの世界みたいやでぇ〜…」
富美恵が見た景色はまるで昔、何か探し物をする本でみたことがあるファンタジー的で幻想的な雲の世界の光景が広がっていた。そしてこの世界で、富美恵は壮絶な逃走劇の戦いが幕が開けるーーー
《To Be Continued…→》
第1話:プロローグ〜富美恵編 Part1
《完読クリア!!》
次の話へ進みますか?